JP5233153B2 - 固体高分子形燃料電池用膜電極接合体 - Google Patents
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Description
(i)触媒である白金が減った分だけ出力電圧が低下してしまう。
(ii)従来の電極触媒は、高密度に反応を行うために、白金の担持率が電極触媒(100質量%)中50〜70質量%とされている。該担持率を維持したまま白金の量を低減していくと、触媒層を構成する主成分の1つであるカーボン担体の量も減り、触媒層が薄くなってしまう。触媒層が薄くなると、電極触媒が凝集しやすくなり、触媒層の均一性が低下する。その結果、触媒層の反応面積が減少し、さらに出力電圧が低下する。
(1)グラファイト化度を高めたカーボン担体を用いた電極触媒に造孔剤を混合した電極触媒(特許文献1)。
しかし、(1)の電極触媒は、カーボン担体の腐食を抑制させるため、高温処理によってグラファイト化を施している。そのため、カーボン担体の比表面積が小さくなり、カーボン担体の表面における白金の分散性が悪くなり、その結果、初期の発電特性が低下する問題を有する。
前記カソードの触媒層の厚さは、2〜25μmであり、前記カソードの触媒層に含まれる前記白金および白金合金の合計の量は、前記カソードの触媒層1cm2あたり0.05〜0.5mgであることが好ましい。
前記繊維状炭素の繊維径は、1〜150nmであることが好ましい。
図1は、本発明の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体(以下、膜電極接合体と記す。)の一例を示す概略断面図である。膜電極接合体10は、触媒層11およびガス拡散層12を有するアノード13と、触媒層11およびガス拡散層12を有するカソード14と、アノード13とカソード14との間に、触媒層11に接した状態で介在する電解質膜15とを具備する。
触媒層11のうち、少なくとも一方の触媒層は、特定の電極触媒、特定の繊維状炭素およびイオン交換樹脂を含み、電極触媒と繊維状炭素とが特定の比率である特定の触媒層である。該特定の触媒層は、少なくともカソード14の触媒層11であることが好ましく、アノード13およびカソード14の触媒層11であることが特に好ましい。
イオン性基を有する含フッ素重合体としては、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体(エーテル性酸素原子を含んでいてもよい。)が好ましく、テトラフルオロエチレン(以下、TFEと記す。)に基づく単位と、スルホン酸基を有する繰り返し単位とを有する共重合体(以下、共重合体Hと記す。)が特に好ましい。スルホン酸基を有する繰り返し単位としては、下式(1)で表される繰り返し単位が好ましい。
CF2=CF(OCF2CFX)m−Op−(CF2)n−SO2F ・・・(2)。
ただし、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0または1であり、XはFまたはCF3 である。
CF2=CFO(CF2)qSO2F ・・・(2−1)、
CF2=CFOCF2CF(CF3)O(CF2)rSO2F ・・・(2−2)、
CF2=CF(OCF2CF(CF3))tO(CF2)sSO2F ・・・(2−3)。
ただし、q、r、sは1〜8の整数であり、tは1〜3の整数である。
触媒金属の担持率は、電極触媒(100質量%)のうち、1〜30質量%が好ましい。触媒金属の担持率が1質量%以上であれば、カーボン担体の比率が大きくなりすぎず、触媒層11の形成時にクラックを生じにくい。また、触媒層11が厚くなりすぎず、触媒層11における電極触媒の密度が高くなり、充分な出力電圧を維持できる。触媒金属の担持率が30質量%以下であれば、触媒層11が薄くなりすぎることがなく、触媒層11の均一性を維持できる。
カーボン担体の比表面積は、BET比表面積装置を用い、カーボン表面への窒素吸着により測定される。
カーボン担体のd002は、粉末X線回折装置に電極触媒の粉末をサンプルとしてセットし、電極触媒の回折パターンから算出する。
繊維径を500nm以下とすることによって、触媒金属との接触が取りやすい。繊維長を100μm以下とすることにより、触媒層11から繊維状炭素が大きく突出することなく、電解質膜15のダメージが抑えられる。
繊維状炭素としては、微細でかつ電子伝導性を有する繊維状炭素が好ましく、気相成長炭素繊維、カーボンナノチューブ(シングルウォール、ダブルウォール、マルチウォール、カップ積層型等。)等が挙げられる。
ガス拡散層12としては、カーボンクロス、カーボンペーパー、カーボンフェルト等が挙げられる。
ガス拡散層は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEと記す。)等によって撥水処理されていることが好ましい。
アノード13およびカソード14は、触媒層11とガス拡散層12との間にカーボン層(図示略)を有していてもよい。カーボン層を配置することにより、触媒層11の表面のガス拡散性が向上し、固体高分子形燃料電池の発電性能が大きく向上する。
カーボンとしては、繊維径1〜1000nm、繊維長1〜1000μm以下のカーボンナノファイバーが好ましい。
非イオン性含フッ素重合体としては、PTFE等が挙げられる。
電解質膜15としては、イオン交換樹脂の膜が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、触媒層11のイオン交換樹脂と同様のものが挙げられる。
膜電極接合体10は、たとえば、下記方法にて製造される。
(a)電解質膜15と触媒層11とからなる膜触媒層接合体を製造し、該膜触媒層接合体をガス拡散層12で挟み込む方法。
(b)ガス拡散層12と触媒層11とからなる電極(アノード13、カソード14)を製造し、固体高分子電解質膜15を該電極で挟み込む方法。
(x−1)前駆体ポリマーFを膜状に成形した後、−SO2F基をスルホン酸基に変換する方法。
(x−2)共重合体Hを膜状に成形する方法。
前駆体ポリマーFを膜状に成形する方法としては、押出成形法、加圧プレス成形法、延伸法等が挙げられる。
共重合体Hを膜状に成形する方法としては、共重合体Hの液状組成物を基材に塗工、乾燥する方法(キャスト法)が挙げられる。
液状組成物は、水酸基を有する有機溶媒および水を含む分散媒に、共重合体Hを分散させた分散液である。
(y−1)塗工液を、電解質膜15またはガス拡散層12の上に塗布し、乾燥させる方法。
(y−2)塗工液を基材フィルムの上に塗布し、乾燥させ触媒層11を形成し、該触媒層11を電解質膜15またはガス拡散層12の上にホットプレス法等によって転写し、基材フィルムを剥離する方法。
塗工液には、塗工安定性を向上させるために、必要に応じて分散処理を施してもよい。分散処理としては、ボールミル粉砕、ホモジェナイザー粉砕、遊星ミル粉砕、超音波粉砕等が挙げられる。
塗布方法としては、アプリケータ、バーコータ、ダイコータ等を用いる方法;スクリーン印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。
乾燥温度は、60〜100℃が好ましい。
また、触媒層11が、特定の繊維状炭素を含み、かつ電極触媒と繊維状炭素とが特定の比率であることによって、下記の付随的効果が得られる。
アノード13においても、水素の供給が不充分となった場合、所定の電流密度を維持するため、水素の酸化反応の代わりに、カーボン担体の酸化反応が起こる可能性がある。本発明においては、カソード14と同じように、アノード13の触媒層11中にも繊維状炭素を混合することにより、上述したカソード14と同じ効果が得られる。
本発明の膜電極接合体の両面に、ガスの流路となる溝が形成されたセパレータを配置することにより、固体高分子形燃料電池が得られる。セパレータとしては、金属製セパレータ、カーボン製セパレータ、黒鉛と樹脂とを混合した材料からなるセパレータ等、各種導電性材料からなるセパレータが挙げられる。
該固体高分子形燃料電池においては、カソードに酸素を含むガス、アノードに水素を含むガスを供給することにより、発電が行われる。また、アノードにメタノールを供給して発電を行うメタノール燃料電池にも、本発明の膜電極接合体を適用できる。
例1、3、6は実施例であり、例2、4、5、7は比較例である。
触媒層を形成する前の基材フィルムのみの質量と、触媒層を形成した後の触媒層および基材フィルムの質量とを測定することにより、触媒層に含まれる単位面積あたりの白金の量を算出した。
基材フィルムの上に形成された触媒層の表面を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製、VHX−200/100F)にて観察し、下記の基準で評価した。
○:クラック占有面積率10%未満。
△:クラック占有面積率10%以上〜30%未満。
×:クラック占有面積率30%以上。
膜電極接合体を発電用セルに組み込み、常圧にて、水素(利用率70%)/空気(利用率40%)を供給し、セル温度80℃にて、電流密度0.2A/cm2における初期のセル電圧を測定した。ただし、アノード側には露点80℃の水素を供給し、カソード側には露点80℃の空気を供給した。また、同じ加湿条件において、電流密度を0.2A/cm2に固定して耐久発電試験を実施した。
触媒層(1)の形成:
カーボン担体(d002:0.339nm、比表面積:210m2/g)に白金が担持された電極触媒(白金担持率:22質量%)10gを、蒸留水75.1gに加え、よく撹拌した。これに、エタノール12.0gを加え、よく撹拌した。これに、共重合体H1(旭硝子社製、商品名:フレミオン、イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂、TFEに基づく単位と下式(1−1)で表される繰り返し単位に基づく単位とからなる共重合体。)をエタノールに分散させた固形分濃度9質量%の液(以下、共重合体H1の液状組成物と記す。)69.3gを加え、さらに超音波分散装置を用いて混合、粉砕し、分散液(a)を調製した。
塗工液(1)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させて厚さ14μmの触媒層(1)を形成した。触媒層(1)に含まれる単位面積あたりの白金の量は、0.2mg/cm2であった。触媒層(1)に含まれる電極触媒と繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)は、4.7/5.3(質量比)であった。触媒層(1)の均一性を評価した。結果を表1に示す。
電解質膜として、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体からなる厚さ30μmのイオン交換膜(旭硝子社製、商品名:フレミオン、イオン交換容量1.1ミリ当量/g乾燥樹脂)を用意した。
電解質膜の両方の表面に、基材フィルム上に形成された触媒層(1)をアノード側の触媒層、カソード側の触媒層として配置した。該積層体をホットプレス法によりプレスし、触媒層を電解質膜に転写した後、基材フィルムを剥離し、電極面積が25cm2である、電解質膜と触媒層とからなる膜触媒層接合体を得た。
膜触媒層接合体を、厚さ350μmのカーボンクロスからなるガス拡散層の2枚で挟んで膜電極接合体を得た。
該膜電極接合体について、初期のセル電圧を測定した。また、耐久発電試験を実施した。結果を表1に示す。
触媒層(2)の形成:
カーボン担体(d002:0.377nm、比表面積:800m2/g)に白金が担持された電極触媒(田中貴金属工業社製、商品名:TEC10E50E、白金担持率:47質量%)10.0gを、蒸留水67.5gに加え、よく撹拌した。これに、エタノール22.5gを加え、よく撹拌した。これに、共重合体H1の液状組成物50.0gを加え、さらに超音波分散装置を用いて混合、粉砕し、塗工液(2)を調製した。
アノード側およびカソード側の触媒層として、触媒層(2)を用いた以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を製造し、例1と同様に膜電極接合体を製造した。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定した。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施した。結果を表1に示す。
触媒層(3)の形成:
カーボン担体(d002:0.339nm、比表面積:210m2/g)に白金が担持された電極触媒(白金担持率:10質量%)10gを、蒸留水75.1gに加え、よく撹拌する。これに、エタノール12.0gを添加し、よく撹拌する。これに、共重合体H1の液状組成物80.0gを添加し、さらに超音波分散装置を用いて混合、粉砕し、分散液(c)を調製する。分散液(c)10gと分散液(b)8.5gとを混合、撹拌して、塗工液(3)を調製する。
アノード側の触媒層として、触媒層(3)を用い、カソード側の触媒層として、触媒層(1)を用いる以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を作製し、例1と同様に膜電極接合体を製造する。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定する。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施する。結果を表1に示す。
触媒層(4)の形成:
塗工液(2)20.0gと分散液(b)20.0gとを混合、撹拌して、塗工液(4)を調製する。
塗工液(4)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させて厚さ10μmの触媒層(4)を形成する。触媒層(4)に含まれる単位面積あたりの白金の量は、0.2mg/cm2である。触媒層(4)に含まれる電極触媒と繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)は、5/5(質量比)である。触媒層(4)の均一性を評価する。結果を表1に示す。
アノード側およびカソード側の触媒層として、触媒層(4)を用いた以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を製造し、例1と同様に膜電極接合体を製造する。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定する。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施する。結果を表1に示す。
触媒層(5)の形成:
分散液(a)10gと分散液(b)2.3gとを混合、撹拌して、塗工液(5)を調製する。
塗工液(5)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させて厚さ11μmの触媒層(5)を形成する。触媒層(5)に含まれる単位面積あたりの白金の量は、0.2mg/cm2である。触媒層(5)に含まれる電極触媒と繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)は、8/2(質量比)である。触媒層(5)の均一性を評価する。結果を表1に示す。
アノード側およびカソード側の触媒層として、触媒層(5)を用いた以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を製造し、例1と同様に膜電極接合体を製造する。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定する。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施する。結果を表1に示す。
触媒層(6)の形成:
分散液(a)5gと分散液(b)24.9gとを混合、撹拌して、塗工液(6)を調製する。
塗工液(6)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させて厚さ16μmの触媒層(6)を形成する。触媒層(6)に含まれる単位面積あたりの白金の量は、0.2mg/cm2である。触媒層(6)に含まれる電極触媒と繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)は、1.5/8.5(質量比)である。触媒層(6)の均一性を評価する。結果を表1に示す。
アノード側およびカソード側の触媒層として、触媒層(6)を用いた以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を製造し、例1と同様に膜電極接合体を製造する。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定する。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施する。結果を表1に示す。
触媒層(7)の形成:
分散液(a)2gと分散液(b)24.2gとを混合、撹拌して、塗工液(7)を調製する。
塗工液(7)を、ポリプロピレン製の基材フィルムの上にダイコータで塗工した後、80℃の乾燥器内で10分間乾燥させて厚さ18μmの触媒層(7)を形成する。触媒層(7)に含まれる単位面積あたりの白金の量は、0.2mg/cm2である。触媒層(7)に含まれる電極触媒と繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)は、0.7/9.3(質量比)である。触媒層(7)の均一性を評価する。結果を表1に示す。
アノード側およびカソード側の触媒層として、触媒層(7)を用いた以外は、例1と同様にして、電極面積が25cm2である膜触媒層接合体を製造し、例1と同様に膜電極接合体を製造する。
該膜電極接合体について、例1と同様の条件で初期のセル電圧を測定する。また、例1と同様の条件で耐久発電試験を実施する。結果を表1に示す。
11 触媒層
12 ガス拡散層
13 アノード
14 カソード
15 電解質膜
Claims (4)
- 触媒層およびガス拡散層を有するアノードと、
触媒層およびガス拡散層を有するカソードと、
前記アノードと前記カソードとの間に介在する電解質膜とを具備し、
前記アノードおよび前記カソードの少なくとも一方の触媒層が、電極触媒、繊維状炭素およびイオン交換樹脂を含み、
前記電極触媒が、カーボン担体、およびカーボン担体に担持された白金または白金合金を含み、
前記白金および白金合金の合計の担持率が、電極触媒(100質量%)中、1〜30質量%であり、
前記繊維状炭素の繊維径が、1〜500nmであり、
前記繊維状炭素の繊維長が、1〜100μmであり、
前記繊維状炭素には金属が担持されておらず、
前記電極触媒と前記繊維状炭素との比率(電極触媒/繊維状炭素)が、6.5/3.5〜1.5/8.5(質量比)である、固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。 - 前記カーボン担体の比表面積が、100〜800m2/gである、請求項1に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
- 前記カソードの触媒層の厚さが、2〜25μmであり、
前記カソードの触媒層に含まれる前記白金および白金合金の合計の量が、前記カソードの触媒層1cm2あたり0.05〜0.5mgである、請求項1または2に記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。 - 前記繊維状炭素の繊維径が、1〜150nmである、請求項1〜3のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池用膜電極接合体。
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