JP2008179163A - 液体圧力発生機構の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 比較的簡易な工程で製造可能であって、耐久性の高いアクチュエータユニットを得る。
【解決手段】 圧電アクチュエータプレート6aに円柱状の電極17a〜17dが埋め込まれている。電極17a〜17dの軸方向の長さは圧電アクチュエータプレート6aの厚みの半分よりやや短く、電極17a〜17dは圧電アクチュエータプレート6aを貫通していない。圧電アクチュエータプレート6aはその面方向に分極されている。電極17a、17cが正の所定電位となると圧電アクチュエータプレート6aの面方向に電界が印加され、圧電アクチュエータプレート6aを含むアクチュエータユニット6は電極17a〜17dが配置された上側と配置されていない下側との面方向への伸長差により上側に膨らむように湾曲する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、例えばインクジェットプリンタにおいてインク室に収容されたインクに圧力を付与するために用いられる液体圧力発生機構に関する。
インクジェットヘッドにおいて圧力室に収容されたインクに圧力を付与するために用いられる液体圧力発生機構の一例として、ピエゾ方式が知られている(特許文献1、2)。図9に、ピエゾ方式の液体圧力発生機構をアクチュエータユニットとして有するインクジェットヘッドの断面図を示す。図9に描かれたインクジェットヘッド101においては、図示されない駆動回路で発生した駆動パルス信号(グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる)により駆動されるアクチュエータユニット106と、インク流路を形成する流路ユニット107とが積層されている。アクチュエータユニット106と流路ユニット107は、エポキシ系の熱硬化性の接着剤によって接着されている。また、アクチュエータユニット106の上面には、図示されない駆動回路で発生した駆動パルス信号を印加するためにフレキシブル配線基板(図示せず)等が接合されている。
流路ユニット107は、金属材料からなる薄板状の3枚のプレート(キャビティプレート107a、スペーサプレート107b、マニホールドプレート107c)と、インクを噴射するノズル109を備えたポリイミド等の合成樹脂製のノズルプレート107dとが積層されることによって構成されている。最上部のキャビティプレート107aは、アクチュエータユニット106に接している。
キャビティプレート107aの表面には、アクチュエータユニット106の動作により選択的に噴射されるインクを収容する複数の圧力室110が長手方向に沿って2列に形成されている。複数の圧力室110は、隔壁110aによって相互に隔てられ、その長手方向を平行に並べて配列されている。また、スペーサプレート107bには、圧力室110の一端をノズル109に連通させる連通孔111と、圧力室110の他端を図示しないマニホールド流路に連通させる連通孔(図示せず)とがそれぞれ形成されている。
また、マニホールドプレート107cには、圧力室110の一端をノズル109に連通させる連通孔113が形成されている。さらに、マニホールドプレート107cには、インクを各圧力室110に供給するマニホールド流路が複数の圧力室110がなす列の下方においてその列方向に長く形成されている。また、マニホールド流路の一端は、図示されないインク供給源に接続されている。このようにして、マニホールド流路から図示しない連通孔、圧力室110、連通孔111、連通孔113を経てノズル109に至るインク流路が形成されている。
アクチュエータユニット106においては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる6枚の圧電セラミックスプレート106a〜106fが積層されている。そして、圧電セラミックスプレート106bと圧電セラミックスプレート106cとの間、及び、圧電セラミックスプレート106dと圧電セラミックスプレート106eとの間にはそれぞれ共通電極121、123が、流路ユニット107の圧力室110に対応した範囲内のみに配置されている。一方、圧電セラミックスプレート106cと圧電セラミックスプレート106dとの間、及び、圧電セラミックスプレート106eと圧電セラミックスプレート106fとの間にはそれぞれ個別電極122、124が、流路ユニット107の圧力室110に対応した範囲内にのみ配置されている。
共通電極121、123は常にグランド電位に保持されている。一方、個別電極122、124には駆動パルス信号が与えられる。共通電極121、123と個別電極122、124とによって挟まれた圧電セラミックスプレート106c〜106eの当該挟まれた領域は予めこれら電極によって電界が印加されることによって積層方向に分極した活性部125となっている。そのため、個別電極122、124の電位が正の所定電位になると、圧電セラミックスプレート106c〜106eの活性部125は電界が印加されて積層方向に伸びようとする。ところが、圧電セラミックスプレート106a、106bにはこのような現象が現れないので、アクチュエータユニット106の活性部125に対応した部分は、全体として圧力室110側に伸びるように膨らむ。すると圧力室110の容積が小さくなるので、圧力室110内に充填されたインクに噴射圧力が付与されてノズル109からインクが噴射される。
図9に示された2つの圧力室110のうち左側は、このように個別電極122、124に正の所定電位が与えられて圧力室110側に伸びたアクチュエータユニット106によって圧力室110の容積が縮小することで、当該圧力室110に連通したノズル109からインクが噴射されようとする様子を描いたものである。また、右側は、駆動パルス信号が共通電極121、123の電位と同じくグランド電位に保持されているために、圧力室110に連通したノズル109からインクが噴射されない様子を描いたものである。
また、特許文献3には、インクジェットヘッドのアクチュエータユニットとしていわゆるユニモルフ構造を有するピエゾ方式のアクチュエータユニットが記載されている。特許文献3に記載されたユニモルフ構造のアクチュエータユニットにおいては、厚み方向に分極された圧電素子からなる薄層を挟むように導電性皮膜と可撓板とが貼り合わされており、導電性皮膜と可撓板との間に電界が印加されると圧電素子の薄層が厚み方向に伸びることによって面方向に縮もうとする。すると、薄層は可撓板と共に可撓板側(即ち、圧力室側)に膨らむように湾曲する。そして、電界が解除されると、薄層及び可撓板は自身の持つ弾性により共に平らな状態に戻る。これにより、圧力室内のインクを噴射させることができる。
特開2002−59547号公報(図11) 特開2002−127420号公報(図6) 特開平6−316070号公報(図1、図2)
特許文献1〜3に記載されたアクチュエータユニットは、いずれも圧電素子の厚み方向に電界を印加することによって圧電素子を変形させるようにしているので、圧電素子が電極で挟み込まれた構造を有している必要がある。しかしながら、このような構造を有するアクチュエータユニットを得るためには複雑な製造工程が必要になって、アクチュエータユニットの製造コストが大きなものとなってしまう。
また、特許文献1、2に記載のアクチュエータユニットは、非常に薄い圧電素子の板状体を積層した構造になっているために板状体に微細なクラックが存在するとインク漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が発生しやすく、耐久性に問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、比較的簡易な工程で製造可能であって、耐久性の高い液体圧力発生機構を提供するものである。
本発明の液体圧力発生機構は、圧電材料からなる板状体と、前記板状体を貫通することなくその表面から厚み方向に延びるように前記板状体内に配置された第1の電極と、前記板状体の面方向について前記第1の電極と対向するように前記板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記板状体内に配置された第2の電極とを備えている(請求項1)。
この液体圧力発生機構によると、第1の電極が圧電材料からなる板状体を貫通していないので、第1の電極と第2の電極との間に電位差を与えると板状体の第1の電極と第2の電極とに挟まれた領域(以下、本明細書において「電極領域」ということがある)は面方向の電界が印加されることにより圧電作用により変形しようとするが、電極領域に対して板状体の厚み方向に隣接した第1の電極及び第2の電極が配置されていない領域(以下、本明細書において「非電極領域」ということがある)は電界が印加されず電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、板状体はその厚み方向に凹又は凸となるように変形する。そして、電界が解除されると、板状体は弾性により元の形状に戻る。このように動作することにより、液体に圧力を与えることが可能となる。
本発明の液体圧力発生機構は、板状体内にその厚みの途中まで第1の電極及び第2の電極を配置するという簡易な工程で容易に製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができる。
本発明の液体圧力発生機構は、前記板状体の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた領域が両電極の対向方向に分極されており、前記領域にその分極方向と同じ方向の電界が加えられると、前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置された側とその反対側との面方向への伸長差により前記板状体が湾曲するものであってよい(請求項2)。
これによると、電極領域が分極方向と同じ方向の電界により面方向に伸長し且つ非電極領域が面方向に伸長しないので、板状体は電極領域が凸となるように厚み方向に湾曲変形し、これにより液体に圧力を与えることができる。
別の観点では、本発明の液体圧力発生機構は、圧電材料からなる第1の板状体と、前記第1の板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記第1の板状体内に配置された第1の電極と、前記第1の板状体の面方向について前記第1の電極と対向するように前記第1の板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記第1の板状体内に配置された第2の電極と、前記第1の板状体と積層されており、前記第1の電極と前記第2の電極との間にある前記第1の板状体に面方向の電界を加えたときに前記第1の板状体がその面方向に伸びるのに抵抗する第2の板状体とを備えている(請求項8)。
この液体圧力発生機構によると、第1の電極及び第2の電極が圧電材料からなる第1の板状体内に配置されていて第2の板状体内に配置されていないので、第1の電極と第2の電極との間に電位差を与えると第1の板状体の第1の電極と第2の電極とに挟まれた領域(以下、本明細書において「電極領域」ということがある)は面方向の電界が印加されることにより圧電作用により変形しようとするが、電極領域に対して第1の板状体の厚み方向に隣接した第1及び第2の板状体の第1の電極及び第2の電極が配置されていない領域(以下、本明細書において「非電極領域」ということがある)は電界が印加されず電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、第1及び第2の板状体の積層体はその厚み方向に凹又は凸となるように変形する。そして、電界が解除されると、積層体は弾性により元の形状に戻る。このように動作することにより、液体に圧力を与えることが可能となる。
本発明の液体圧力発生機構は、第1の板状体内に第1の電極及び第2の電極を配置し且つ第1の板状体と第2の板状体とを積層するという簡易な工程で容易に製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができる。請求項1と比較すると、2枚の板状体を積層するという工程が加わるものの、第1の板状体には非貫通孔ではなく貫通孔を形成してもいいという点で製造工程を簡略化できる利点がある(もちろん、第1の板状体に非貫通孔を形成してもいい)。
本発明の液体圧力発生機構において、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、前記板状体又は前記第1の板状体の所定領域内に配置されていてよい(請求項3、請求項9)。
この構成によると、圧電素子からなる板状体と電極とが積層される液体圧力発生機構のように大きな電極を用いる場合に比べて電極間距離及び電極面積を小さくすることができるために駆動電圧及び静電容量を小さくすることができ、その結果、ドライバICや電気回路のコストを低く抑えると共にエネルギー消費量及び発熱量を削減することが可能となる。
本発明の液体圧力発生機構において、複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、交互に同心環状に又はライン状に配置されていてよい(請求項4、請求項10)。この構成によると、板状体の変形量を大きくすることができる。
本発明の液体圧力発生機構において、前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置された側の面に、前記所定領域を取り囲むように複数の凹部が設けられているか、或いは、前記第1の板状体の前記第2の板状体とは反対側の面に、前記所定領域を取り囲むように複数の凹部又は貫通孔が設けられていてよい(請求項5、請求項11)。この構成によると、凹部又は貫通孔によって1つの領域での変形が隣接する領域に伝播する、いわゆるクロストークを抑制することができる。
本発明の液体圧力発生機構において、前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置されていない側の面に、圧力が付与されるべき液体を収容する圧力室が配置されているか、或いは、前記第2の板状体の前記第1の板状体とは反対側の面に、圧力が付与されるべき液体を収容する圧力室が配置されていることが好ましい(請求項6、請求項12)。
この構成によると、液体を噴射する際に圧力室の容積を一旦常態よりも大きくしてから元の大きさに戻すいわゆる引き打ちを行う場合において、常態において板状体又は第1の板状体に電界を印加せず、一旦電界を印加して圧力室の容積を増大させ、その後板状体又は第1の板状体に印加された電界を解除して圧力室の容積を元に戻すことで液体に大きな圧力を与えることができるので、トータルの電界印加時間が著しく短くなってエネルギー消費量を削減することが可能となると共に安全性が高くなる。また、電極が液体から大きく離れて位置することになるため、板状体に微細なクラックが存在しても液体漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が生じることが少なく、耐久性が高いものとなる。
本発明の液体圧力発生機構は、前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置されていない側の面に、互いに隔壁によって隔てられた複数の前記圧力室が配置されており、複数の前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記板状体の複数の前記圧力室に対応した複数の領域内にそれぞれ配置されたものか、或いは、前記第2の板状体の前記第1の板状体とは反対側の面に、互いに隔壁によって隔てられた複数の前記圧力室が配置されており、複数の前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記第1の板状体の複数の前記圧力室に対応した複数の領域内にそれぞれ配置されたものであってよい(請求項7、請求項13)。この構成によると、複数の圧力室内の液体に対して、それぞれ効率よく圧力を与えることができる。
なお、本発明において、板状体又は第1の板状体の分極方向はその面方向であってもよいし、或いは、厚み方向であってもよい。板状体又は第1の板状体の分極方向をその面方向とすると、液体圧力発生機構はユニモルフ型となり、厚み方向とするとシェアモード型となる。また、第1の電極及び第2の電極は、圧力が付与されるべき液体を収容する圧力室1つに対してそれぞれ1つだけ配置されていてもよいし、圧力室1つに対してそれぞれ複数配置されていてもよい。また、第1の電極及び第2の電極の形状や分布は、圧力室の具体的な形状に応じて変更されることが好ましい。さらに、液体に圧力が与えられるのは、板状体又は第1の板状体に電界が印加された際であってもよいし、電界が解除された際であってもよい。
以上説明したように、本発明によると、板状体内にその厚みの途中まで第1の電極及び第2の電極を配置する、又は、第1の板状体内に第1の電極及び第2の電極を配置し且つ第1の板状体と第2の板状体とを積層するという簡易な工程で容易に液体圧力発生装置を製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができる。また、多数の板状体と電極とを積層した構造になっていないために、板状体又は第1の板状体若しくは第2の板状体に微細なクラックが存在してもインク漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が生じることが少なく、耐久性が高いものとなる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドについて説明する。図1は、本実施の形態に係るアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。図2は、このインクジェットヘッドをその幅方向に沿って切断した部分断面図である。図1に示す圧電式のインクジェットヘッド1は、ほぼ直方体の流路ユニット7上にこれとほぼ同形状のアクチュエータユニット6が積層され、アクチュエータユニット6上に外部回路との接続のためのフレキシブルフラットケーブル又はフレキシブルプリント回路(FPC)(図示せず)が貼付されたものである。インクジェットヘッド1は、流路ユニット7の下面側に開口したノズル9から下向きにインクを噴射する。
流路ユニット7の上面には、上方に開口した多数の圧力室(インク収容室)10が設けられている。また、流路ユニット7の長手方向についての一端部近傍には、後述するマニホールド流路15にそれぞれ連通した一対の供給孔(図示せず)が穿設されている。これら供給孔は、インクカートリッジ(図示せず)から供給されるインク中の塵除去のためのフィルタ(図示せず)で覆われている。
図1及び図2に示すように、インクジェットヘッド1においては、図示されない駆動回路で発生した駆動パルス信号(グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる)によりFPCを介して駆動されるアクチュエータユニット6と、インク流路を形成する流路ユニット7とが積層されている。アクチュエータユニット6と流路ユニット7は、エポキシ系の熱硬化性の接着剤によって接着されている。なお、FPC側の端子はアクチュエータユニット6側の対応する端子21a、22a、21b、22bと接続されている。
流路ユニット7は、金属材料からなる薄板状の3枚のプレート(キャビティプレート7a、スペーサプレート7b、マニホールドプレート7c)と、インクを噴射するノズル9を備えたポリイミド等の合成樹脂製のノズルプレート7dとが積層されることによって構成されている。最上部のキャビティプレート7aは、アクチュエータユニット6に接している。
キャビティプレート7aの表面には、アクチュエータユニット6の動作により選択的に噴射されるインクを収容するほぼ円盤型形状を有する複数の圧力室10が長手方向に沿って2列に形成されている。複数の圧力室10は、隔壁10aによって相互に隔てられている。また、スペーサプレート7bには、圧力室10の一端をノズル9に連通させる連通孔11と、圧力室10の他端を後述するマニホールド流路15に連通させる連通孔12とがそれぞれ形成されている。
また、マニホールドプレート7cには、圧力室10の一端をノズル9に連通させる連通孔13が形成されている。さらに、マニホールドプレート7cには、インクを圧力室10に供給するマニホールド流路15が複数の圧力室10がなす列の下方においてその列方向に長く形成されている。また、マニホールド流路15の一端は、上述した供給孔のいずれか一方を介して図示されないインク供給源に接続されている。このようにして、マニホールド流路15から連通孔12、圧力室10、連通孔11、連通孔13を経てノズル9に至るインク流路が形成されている。
図3は、アクチュエータユニット6の部分拡大斜視図である。アクチュエータユニット6は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる1枚の圧電セラミックスプレート6aを有している。図1及び図3に示すように、圧電セラミックスプレート6a内には、その厚み方向が軸方向となった円柱形状を有する多数の電極17a、17b、17c、17dが配置されている。これらの電極17a、17b、17c、17dは、軸方向について圧電セラミックスプレート6aの厚みの1/2よりもやや短い長さを有している。そして、全ての電極17a、17b、17c、17dは、その長手方向一端面が圧電セラミックスプレート6aの上面(流路ユニット7とは反対側の面)から突出することなく露出するように、圧電セラミックスプレート6a内において上方に偏在して配置されている。そのため、電極17a、17b、17c、17dは、圧電セラミックスプレート6aを貫通することなくその厚み方向に延びている。
電極17bは電極17aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されており、電極17cは電極17bがなす円よりも一回り大きい電極17aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されており、電極17dは電極17cがなす円よりも一回り大きい電極17aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されている。このように、電極17b、17c、17dは電極17aを中心点として3重の同心円環状に配置されている。
図1からも分かるように、複数の電極17dが配置されてできた円は、圧力室10とほぼ同じ直径を有している。そして、複数の電極17dは、圧力室10内にほぼ収まるように配置されている。つまり、多数の電極17a、17b、17c、17dは、流路ユニット7の圧力室10に対応した領域内に実質的に一様に配置されている。なお、電極はその間隔が上記のように均一でなくても、圧力室10に対応した領域内全体にわたって分布していればよい。
圧電セラミックスプレート6aの電極領域6c(電極17dが配置されてできた円内にあって、圧電セラミックスプレート6aの上面(圧力室10とは反対側の表面)から電極17a、17b、17c、17dの長さ分の距離までの領域)は、面方向に沿って電極17aから電極17bに向かう方向、電極17cから電極17b、17dに向かう方向というように、電極17aを中心とした径方向に交互に分極した活性部となっている。
電極17aは、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子22aに接続されている。全ての電極17bは、複数の電極17bが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線24を介して、常にグランド電位に保持された端子21aに接続されている。全ての電極17cは、複数の電極17cが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線25を介して、端子22aに与えられるのと同じ駆動パルス信号が与えられる端子22bに接続されている。全ての電極17dは、複数の電極17dが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線26を介して、常にグランド電位に保持された端子21bに接続されている。つまり、本実施の形態において、電極17a及び電極17cの電位は常に同じであり、電極17b及び電極17dの電位も常に同じである。したがって、4種類の電極17a、17b、17c、17dは、電極17a及び電極17cからなる第1の電極と、電極17b及び電極17dからなる第2の電極とに分類することができる。
上述の説明から分かるように、電極17a、17cがグランド電位となっているときには、径方向に隣接する電極間(つまり、電極17a−電極17b間、電極17b−電極17c間、電極17c−電極17d間)に電界が発生しない。ところが、電極17a、17cが正の所定電位となっているときには、径方向に隣接する電極間に電界が発生する。
図1に示された2つの圧力室10のうち、左側は電極17a、17cが正の所定電位となっているときの様子を描いたものであり、右側は電極17a、17cがグランド電位となっているときの様子を描いたものである。このように、電極17a、17cが正の所定電位になると、径方向に隣接する電極間に図1中の矢印で示すような方向(圧電セラミックスプレート6aの面方向)の電界が生じる。この電界の方向は圧電セラミックスプレート6aの分極方向と同じであるので、圧電セラミックスプレート6aの電極17a、17b、17c、17dによって挟まれた電極領域は、圧電作用により面方向に伸びようとする。
一方、電極領域に対して圧電セラミックスプレート6aの厚み方向に隣接した電極17a、17b、17c、17dが配置されていない非電極領域6dには、電界が印加されず面方向に伸びようとする力が働かない。したがって、電極領域と非電極領域とに面方向への伸長差が生じ、非電極領域は電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、特許文献3に記載されたユニモルフ構造のアクチュエータユニットと類似した作用が生じて、図1の左側に示すように、圧電セラミックスプレート6aは、電極領域側が凸となるように厚み方向に湾曲する。このとき、圧電セラミックスプレート6aの下面(圧力室10側の面)は圧力室10を拡大する方向に湾曲する。したがって、圧力室10内にマニホールド流路からインクが流入して、圧力室10がインクで満たされる。
その後、電極17a、17cがグランド電位になると電界が解除され、圧電セラミックスプレート6aは図1の右側に示すようにそれ自体が有する弾性により元の平板形状に戻る。すると、圧電セラミックスプレート6aの下面の位置も元の位置に戻るので、圧力室10の容積が図1の左側の状態から減少する。これにより圧力室10内のインクに圧力が与えられて、圧力室10に連通したノズル9からインク滴が噴射される。
図1〜図3に示したインクジェットヘッド1からインクを噴射させる方式としては、いわゆる押し打ち及び引き打ちのいずれを用いてもよい。押し打ちを行う場合、常態において、全圧力室10に対応する部分において電極17a、17cを正の所定電位としておくことで電極領域に電界を印加し、圧電セラミックスプレート6aを図1の左側に示すように湾曲させておく。そして、インクを噴射しようとする圧力室10に対応する電極17a、17cのみグランド電位とすることで電極領域の電界を解除し、図1の右側のように圧力室10を縮小して圧力室10内のインクに圧力を付与する。
一方、引き打ちを行う場合、常態において、全圧力室10に対応する部分において電極17a、17cをグランド電位としておくことで電極領域に電界を印加せず、圧電セラミックスプレート6aを図1の右側に示すように平坦にしておく。そして、インクを噴射しようとする圧力室10に対応する電極17a、17cのみ一旦正の所定電位として電極領域に電界を印加し、その部分において圧電セラミックスプレート6aを図1の左側に示すように湾曲させて圧力室10を拡大する。このとき、圧力室10内には圧力波が生じ、それが圧力室10内を長手方向に伝播する。その後圧力波が正圧となるタイミングで再び電極17a、17cをグランド電位に戻して電極領域の電界を解除し、図1の右側のように圧力室10を縮小して圧力室10内のインクに圧力を付与する。引き打ちを行うと、圧力を重ね合わせることができるので比較的小さなエネルギーで大きな噴射圧をインクに与えることができる。
次に、このインクジェットヘッド1の製造方法について簡単に説明する。図1〜図3で説明したようなインクジェットヘッド1を製造するには、流路ユニット7及びアクチュエータユニット6などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。
流路ユニット7を作製するには、図1及び図2に描かれた4枚のプレート7a〜7dをそれぞれ独立して作製した後に、これらが位置合わせされて積層された状態で接着剤を用いてこれらを互いに接着する。なお、プレート7a〜7cに圧力室10や連通孔11などを形成するのにはエッチング加工が用いられ、プレート7dにノズル9を形成するのにはレーザ加工が用いられる。
一方、アクチュエータユニット6を作製するには、まず、圧電セラミックスのグリーンシートを用意し、そのグリーンシートの圧力室に対応した部分に電極配置用の多数の円柱状凹部をプレス加工又はレーザ加工で形成する。プレス加工は、グリーンシートをアクチュエータユニット6に対応した所定形状に成形する際に同時に行うことができるという点で利点が大きい。
その後、円柱状凹部内にペースト状の導電性材料を流し込んでから圧電セラミックスのグリーンシートを公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、円柱状凹部内に電極17a、17b、17c、17dが配置された圧電セラミックスプレート6aが得られる。そして、電極17a、17b、17c、17dに金属配線24〜26を印刷又は蒸着により施すことにより、アクチュエータユニット6が得られる。なお、圧電セラミックスのグリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで設計される。
しかる後、流路ユニット7とアクチュエータユニット6とが、電極領域の位置と圧力室10の位置とを合わせて、熱硬化性接着剤を用いて貼り合わされ、アクチュエータユニット6の隣接する電極グループ間の下面すなわち各電極領域の外周部分が隔壁10a上に固着される。そして、アクチュエータユニット6と別途用意されたFPCとが対応する端子同士がそれぞれ重なるように半田を用いて貼り合わされる。
その後、電極17b、17dの電位をグランド電位に保持した状態において電極17a、17cに高電位を与えることで、電極領域内の圧電セラミックスプレート6aを電極の対向方向つまり面方向に沿って電極17aを中心とした径方向に分極させ、この領域を活性部とする。以上の工程を経ることによって、インクジェットヘッド1が完成する。
なお、上述した製造工程において、グリーンシートの焼成後にレーザ加工で円柱状凹部を形成するようにしてもよい。また、グリーンシートの焼成後に円柱状凹部内に電極を配置するようにしてもよい。さらに、分極工程の後でFPCの貼り合わせ行ってもよい。この場合、電極17a、17b、17c、17dへはFPC以外から電位を与える必要がある。
このように、本実施の形態による液体圧力発生機構であるアクチュエータユニット6によると、1枚の圧電セラミックスプレート6a内にこれを貫通しないように配置された電極17a、17cと電極17b、17dとの電位差を制御することで、圧電セラミックスプレート6aをその厚み方向に湾曲した状態と湾曲していない状態とのいずれかに切り替えることができる。したがって、所望の圧力室10内のインクに圧力を与えてインクを噴射させることができる。
また、本実施の形態のアクチュエータユニット6は、圧電セラミックスプレート6a内にその厚みの途中まで電極17a、17b、17c、17dを配置するという簡易な工程で容易に製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができるという優れた利点を有する。また、アクチュエータユニット6は、特許文献1及び特許文献2のように多数の圧電セラミックスプレートと薄層電極とを積層した構造になっていないために、電極を十分な厚さの非電極領域6dを介してインクと隔てることができ、圧電セラミックスプレート6aに微細なクラックが存在してもインク漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が生じることが少なく、耐久性が高い。
また、圧電セラミックスプレート6aの電極領域の分極方向が電界の方向と同じく電極の対向方向、つまり圧電セラミックスプレート6aの面方向に沿って電極17aを中心とした径方向であるので、圧電セラミックスプレート6aはユニモルフ型と類似した原理で電極領域側が凸となるように厚み方向に湾曲し、これにより圧力室10内のインクに圧力を与えることができる。
さらに、アクチュエータユニット6において、多数の電極17a、17b、17c、17dが圧電セラミックスプレート6aの電極領域内に配置されているので、特許文献1及び特許文献2に記載された圧電セラミックスプレートと電極とが積層されたアクチュエータユニットのように大きな電極を用いる場合に比べて電極間距離及び電極面積を小さくすることができる。そのため、電極17a、17cに与えられる電位及びアクチュエータユニット6の静電容量を小さくすることができ、その結果、インクジェットヘッド1のドライバICや電気回路のコストを低く抑えると共にエネルギー消費量及び発熱量を削減することが可能となる。
しかも、本実施の形態によるアクチュエータユニット6は、電極17a、17b、17c、17dがこの順番で第1の電極と第2の電極とが交互となるように同心円環状に配置されたものであるので、電界強度が強くなって圧電セラミックスプレート6aの変形量を大きくすることができる。
また、本実施の形態のアクチュエータユニット6において、圧電セラミックスプレート6aの非電極領域6d側の面に圧力室10が配置されているので、上述した引き打ちを行う場合には常態において圧電セラミックスプレート6aに電界を印加しておく必要がなくなる。そのため、圧電セラミックスプレート6aの電極領域側の面に圧力室10が配置されている場合と比較して、トータルの電界印加時間が著しく短くなってエネルギー消費量を削減することが可能となると共に安全性が高くなる。
さらに、本実施の形態のアクチュエータユニット6では、互いに隔壁10aによって隔てられた複数の圧力室10が圧電セラミックスプレート6aの非電極領域側の面に配置されており、電極17a、17b、17c、17dが圧力室10に対応した各領域内にそれぞれ配置されているので、各圧力室10内のインクに効率よく圧力を与えることができる。
次に、本実施の形態によるアクチュエータユニットの一変形例について、その斜視図である図4を参照して説明する。本変形例のアクチュエータユニットは、図1〜図3で説明したのと同様にインクジェットヘッドの一部品として流路ユニット及びFPCと共に用いられるものとする。
図4において、アクチュエータユニット36は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる1枚の圧電セラミックスプレート36aを有している。圧電セラミックスプレート36a内には、その厚み方向が軸方向となった円柱形状を有する多数の電極47a、47b、47c、47d、47e、47f、47gが配置されている。これらの電極47a〜47gは、軸方向について圧電セラミックスプレート36aの厚みの1/2よりもやや短い長さを有している。そして、全ての電極47a〜47gは、その長手方向一端面が圧電セラミックスプレート36aの流路ユニット7とは反対側の面から突出することなく露出するように、圧電セラミックスプレート36a内において上方に偏在して配置されている。そのため、電極47a〜47gは、圧電セラミックスプレート36aを貫通することなくその厚み方向に延びている。
電極47a〜47gはそれぞれ複数個ずつ一直線上に互いに等間隔に配置されている。そして、電極47aがなすラインと電極47bがなすラインとの間隔、電極47bがなすラインと電極47cがなすラインとの間隔、電極47cがなすラインと電極47dがなすラインとの間隔、電極47dがなすラインと電極47eがなすラインとの間隔、電極47eがなすラインと電極47fがなすラインとの間隔、電極47fがなすラインと電極47gがなすラインとの間隔は、互いに同じである。このように、電極47a〜47gはマトリックス状に配置されている。そして、電極47a〜47gが配置された範囲が流路ユニットの圧力室10と対応した位置となるように、アクチュエータユニット36と流路ユニットとが貼り合わされているとする。これにより、多数の電極47a〜47gは、流路ユニットの圧力室10に対応した領域内に実質的に一様に配置されている。
圧電セラミックスプレート36aの電極領域(電極47a〜47gが配置された範囲内にあって、圧電セラミックスプレート36aの上面(圧力室とは反対側の表面)から電極47a〜47gの長さ分の距離までの領域)は、圧電セラミックスプレート36aの面方向に沿って電極47bから電極47a、47へ向かう方向、電極47dから電極47c、47eへ向かう方向、電極47fから電極47e、47gへ向かう方向というように、各電極47a〜47gがなすラインと直交する方向に交互に分極した活性部となっている。
全ての電極47aは、複数の電極47aがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線54を介して、常にグランド電位に保持された端子51aに接続されている。全ての電極47bは、複数の電極47bがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線55を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子52aに接続されている。全ての電極47cは、複数の電極47cがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線56を介して、常にグランド電位に保持された端子51bに接続されている。全ての電極47dは、複数の電極47dがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線57を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子52bに接続されている。全ての電極47eは、複数の電極47eがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線58を介して、常にグランド電位に保持された端子51cに接続されている。全ての電極47fは、複数の電極47fがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線59を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子52cに接続されている。全ての電極47gは、複数の電極47gがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線60を介して、常にグランド電位に保持された端子51dに接続されている。
そして、端子52a、52b、52cには、同じ駆動パルス信号が与えられる。つまり、本実施の形態において、電極47b、47d、47fの電位は常に同じであり、電極47a、47c、47e、47gの電位も常に同じグランド電位である。したがって、7種類の電極47a〜47gは、電極47b、47d、47fからなる第1の電極と、電極47a、47c、47e、47gからなる第2の電極とに分類することができる。
上述の説明から分かるように、電極47b、47d、47fがグランド電位となっているときには、各電極47a〜47gがなすラインと直交する方向に隣接する電極間(つまり、電極47a−電極47b間、電極47b−電極47c間、電極47c−電極47d間、電極47d−電極47e間、電極47e−電極47f間、電極47f−電極47g間)に電界が発生しない。ところが、電極47b、47d、47fが正の所定電位となっているときには、各電極47a〜47gがなすラインと直交する方向に隣接する電極間に電界が発生する。
この電界の方向は圧電セラミックスプレート36aの分極方向と同じであるので、圧電セラミックスプレート36aの電極47a〜47gによって挟まれた電極領域は、圧電作用により面方向に伸びようとする。一方、電極領域に対して圧電セラミックスプレート36aの厚み方向に隣接した電極47a〜47gが配置されていない非電極領域には、電界が印加されず面方向に伸びようとする力が働かない。したがって、電極領域と非電極領域とに面方向への伸長差が生じ、非電極領域は電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、特許文献3に記載されたユニモルフ構造のアクチュエータユニットと類似した作用が生じて、圧電セラミックスプレート36aは、電極領域側が凸となるように厚み方向に湾曲する。このとき、圧電セラミックスプレート36aの下面(圧力室側の面)は圧力室を拡大する方向に湾曲する。したがって、圧力室内にマニホールド流路からインクが流入して、圧力室がインクで満たされる。
その後、電極47b、47d、47fがグランド電位になると電界が解除され、圧電セラミックスプレート36aはそれ自体が有する弾性により元の平板形状に戻る。すると、圧電セラミックスプレート36aの下面の位置も元の位置に戻るので、圧力室の容積が減少する。これにより圧力室内のインクに圧力が与えられて、圧力室に連通したノズルからインク滴が噴射される。
本変形例のアクチュエータユニット36を用いた場合も、上述した第1の実施の形態と同様の利益が得られる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドについて説明する。なお、上述した実施の形態と同様の部材には同じ符号を付けてその説明を省略する。図5は、本実施の形態に係るアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。図5に示す圧電式のインクジェットヘッド61は、ほぼ直方体の流路ユニット7上にこれとほぼ同形状のアクチュエータユニット66が積層され、アクチュエータユニット66上に外部回路との接続のためのフレキシブルフラットケーブル又はフレキシブルプリント回路(FPC)(図示せず)が貼付されたものである。インクジェットヘッド61は、流路ユニット7の下面側に開口したノズル9から下向きにインクを噴射する。なお、流路ユニット7は第1の実施の形態のものと同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
図5に示すように、インクジェットヘッド61においては、図示されない駆動回路で発生した駆動パルス信号(グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる)によりFPCを介して駆動されるアクチュエータユニット66と、インク流路を形成する流路ユニット7とが積層されている。アクチュエータユニット66と流路ユニット7は、エポキシ系の熱硬化性の接着剤によって接着されている。なお、FPC側の端子はアクチュエータユニット66側の対応する端子71a、72a、71b、72bと接続されている。
図6は、アクチュエータユニット66の部分拡大斜視図である。アクチュエータユニット66においては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなるほぼ同じ厚みを有する2枚の圧電セラミックスプレート66a、66bが積層されている。図5及び図6に示すように、圧電セラミックスプレート66a内には、その厚み方向が軸方向となった円柱形状を有する多数の電極77a、77b、77c、77dが配置されている。これらの電極77a、77b、77c、77dは、軸方向方向について圧電セラミックスプレート66aの厚みとほぼ同じ長さを有している。つまり、電極77a、77b、77c、77dは、圧電セラミックスプレート66aの厚みと同じ長さで圧電セラミックスプレート66bにはみ出すことなくこれらの厚み方向に延びている。
電極77bは電極77aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されており、電極77cは電極77bがなす円よりも一回り大きい電極77aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されており、電極77dは電極77cがなす円よりも一回り大きい電極77aを中心とした1つの円上に互いに等間隔に配置されている。このように、電極77b、77c、77dは電極77aを中心点として3重の同心円環状に配置されている。
図5からも分かるように、複数の電極77dが配置されてできた円は、圧力室10とほぼ同じ直径を有している。そして、複数の電極77dは、圧力室10内にほぼ収まるように配置されている。つまり、多数の電極77a、77b、77c、77dは、流路ユニット7の圧力室10に対応した領域内に実質的に一様に配置されている。
圧電セラミックスプレート66aの電極領域(電極77dが配置されてできた円内にある領域)は、図1のものと同様に、面方向に沿って電極77aを中心とした径方向に交互に分極した活性部となっている。
電極77aは、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子72aに接続されている。全ての電極77bは、複数の電極77bが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線74を介して、常にグランド電位に保持された端子71aに接続されている。全ての電極77cは、複数の電極77cが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線75を介して、端子72aに与えられるのと同じ駆動パルス信号が与えられる端子72bに接続されている。全ての電極77dは、複数の電極77dが配置されてできた円と同じ直径を有する円環形状の金属配線76を介して、常にグランド電位に保持された端子71bに接続されている。つまり、本実施の形態において、電極77a及び電極77cの電位は常に同じであり、電極77b及び電極77dの電位も常に同じである。したがって、4種類の電極77a、77b、77c、77dは、電極77a及び電極77cからなる第1の電極と、電極77b及び電極77dからなる第2の電極とに分類することができる。
上述の説明から分かるように、電極77a、77cがグランド電位となっているときには、径方向に隣接する電極間(つまり、電極77a−電極77b間、電極77b−電極77c間、電極77c−電極77d間)に電界が発生しない。ところが、電極77a、77cが正の所定電位となっているときには、径方向に隣接する電極間に電界が発生する。
図5に示された2つの圧力室10のうち、左側は電極77a、77cが正の所定電位となっているときの様子を描いたものであり、右側は電極77a、77cがグランド電位となっているときの様子を描いたものである。このように、電極77a、77cが正の所定電位になると、径方向に隣接する電極間に図5中の矢印で示すような方向(圧電セラミックスプレート66aの面方向)の電界が生じる。この電界の方向は圧電セラミックスプレート66aの分極方向と同じであるので、圧電セラミックスプレート66aの電極77a、77b、77c、77dによって挟まれた電極領域は、圧電作用により面方向に伸びようとする。
一方、電極領域に対して圧電セラミックスプレート66aの厚み方向に隣接した電極77a、77b、77c、77dが配置されていない非電極領域(圧電セラミックスプレート66b内にあって電極領域の下方に当たる領域)には、電界が印加されず面方向に伸びようとする力が働かない。したがって、電極領域と非電極領域とに面方向への伸長差が生じ、非電極領域は電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、特許文献3に記載されたユニモルフ構造のアクチュエータユニットと類似した作用が生じて、図5の左側に示すように、圧電セラミックスプレート66a、66bは、電極領域側が凸となるように厚み方向に湾曲する。このとき、圧電セラミックスプレート66bの下面(圧力室10側の面)は圧力室10を拡大する方向に湾曲する。したがって、圧力室10内にマニホールド流路からインクが流入して、圧力室10がインクで満たされる。
その後、電極77a、77cがグランド電位になると電界が解除され、圧電セラミックスプレート66a、66bは図5の右側に示すようにそれ自体が有する弾性により元の平板形状に戻る。すると、圧電セラミックスプレート66bの下面の位置も元の位置に戻るので、圧力室10の容積が図5の左側の状態から減少する。これにより圧力室10内のインクに圧力が与えられて、圧力室10に連通したノズル9からインク滴が噴射される。本実施の形態のインクジェットヘッド61の場合も、インクを噴射させる方式として押し打ち及び引き打ちのいずれを用いてもよい。
次に、このインクジェットヘッド61の製造方法について簡単に説明する。インクジェットヘッド61を製造するには、流路ユニット7及びアクチュエータユニット61などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。
流路ユニット7を作製する手順は上述した第1の実施の形態のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。アクチュエータユニット61を作製するには、まず、圧電セラミックスのグリーンシートを2枚用意し、そのうちの1枚のグリーンシートの圧力室に対応した部分に電極配置用の多数の円柱状貫通孔をプレス加工又はレーザ加工で形成する。プレス加工は、グリーンシートをアクチュエータユニット6に対応した所定形状に成形する際に同時に行うことができるという点で利点が大きい。
その後、2枚のグリーンシートを重ね合わせた後、円柱状貫通孔内にペースト状の導電性材料を流し込んでから圧電セラミックスのグリーンシートを公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、円柱状貫通孔内に電極77a、77b、77c、77dが配置された圧電セラミックスプレート66a、66bが得られる。そして、電極77a、77b、77c、77dに金属配線74〜76を印刷又は蒸着により施すことにより、アクチュエータユニット61が得られる。なお、圧電セラミックスのグリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで設計される。
しかる後、流路ユニット7とアクチュエータユニット61とが、電極領域の位置と圧力室10の位置とを合わせて、熱硬化性接着剤を用いて貼り合わされると共に、アクチュエータユニット61と別途用意されたFPCとが対応する端子同士がそれぞれ重なるように半田を用いて貼り合わされる。
その後、電極77b、77dの電位をグランド電位に保持した状態において電極77a、77cに高電位を与えることで、電極領域内の圧電セラミックスプレート66aを電極の対向方向つまり面方向に沿って電極77aを中心とした径方向に分極させ、この領域を活性部とする。以上の工程を経ることによって、インクジェットヘッド1が完成する。
なお、上述した製造工程において、グリーンシートの焼成後にレーザ加工で円柱状凹部を形成するようにしてもよい。また、グリーンシートの焼成後に円柱状凹部内に電極を配置するようにしてもよい。さらに、分極工程の後でFPCの貼り合わせ行ってもよい。この場合、電極77a、77b、77c、77dへはFPC以外から電位を与える必要がある。
このように、本実施の形態による液体圧力発生機構であるアクチュエータユニット61によると、圧電セラミックスプレート66a内に配置された電極77a、77cと電極77b、77dとの電位差を制御することで、圧電セラミックスプレート66a、66bをその厚み方向に湾曲した状態と湾曲していない状態とのいずれかに切り替えることができる。したがって、所望の圧力室10内のインクに圧力を与えてインクを噴射させることができる。
また、本実施の形態のアクチュエータユニット61は、圧電セラミックスプレート66aに電極77a、77b、77c、77dを配置し且つ圧電セラミックスプレート66aと圧電セラミックスプレート66bとを積層するという簡易な工程で容易に製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができるという優れた利点を有する。本実施の形態を第1の実施の形態と比較すると、2枚の圧電セラミックスプレート66a、66bを積層するという工程が加わるものの、圧電セラミックスプレート66aには凹部(非貫通孔)ではなく貫通孔を形成してもいいという点で製造工程を簡略化できる利点がある。
また、アクチュエータユニット61は、特許文献1及び特許文献2のように多数の圧電セラミックスプレートと薄層電極とを積層した構造になっていないために、電極を十分な厚さの非電極領域を介してインクと隔てることができ、圧電セラミックスプレート66a、66bに微細なクラックが存在してもインク漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が生じることが少なく、耐久性が高い。その他、第1の実施の形態と同様の利益が得られる。
なお、本実施の形態では、電極77a〜77dの軸方向の長さを圧電セラミックスプレート66aの厚みと同じとしたが、電極77a〜77dの軸方向の長さを圧電セラミックスプレート66aの厚みよりも小さくしても同様の結果が得られる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドについて説明する。なお、上述した実施の形態と同様の部材には同じ符号を付けてその説明を省略する。図7は、本実施の形態に係るアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。図7に示す圧電式のインクジェットヘッド81は、ほぼ直方体の流路ユニット7上にこれとほぼ同形状のアクチュエータユニット86が積層され、アクチュエータユニット86上に外部回路との接続のためのフレキシブルフラットケーブル又はフレキシブルプリント回路(FPC)(図示せず)が貼付されたものである。インクジェットヘッド81は、流路ユニット7の下面側に開口したノズル9から下向きにインクを噴射する。なお、流路ユニット7は第1の実施の形態のものと同じであるので、ここではその詳細な説明を省略する。
図7に示すように、インクジェットヘッド81においては、図示されない駆動回路で発生した駆動パルス信号(グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる)によりFPCを介して駆動されるアクチュエータユニット86と、インク流路を形成する流路ユニット7とが積層されている。アクチュエータユニット86と流路ユニット7は、エポキシ系の熱硬化性の接着剤によって接着されている。なお、FPC側の端子はアクチュエータユニット86側の対応する端子91a、92a、91b、92b、91c、92c、91d(図7には92aのみが描かれている。残りのものについては図8参照)と接続されている。
図8は、アクチュエータユニット86の部分拡大斜視図である。図8において、アクチュエータユニット86は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)のセラミックス材料からなる1枚の圧電セラミックスプレート86aを有している。圧電セラミックスプレート86a内には、その厚み方向が軸方向となった円柱形状を有する多数の電極87a、87b、87c、87d、87e、87f、87gが配置されている。これらの電極87a〜87gは、軸方向について圧電セラミックスプレート86aの厚みの1/2よりもやや短い長さを有している。そして、全ての電極87a〜87gは、その長手方向一端面が圧電セラミックスプレート86aの上面(圧力室10とは反対側の面)から突出することなく露出するように、圧電セラミックスプレート86a内において上方に偏在して配置されている。そのため、電極87a〜87gは、圧電セラミックスプレート86aを貫通することなくその厚み方向に延びている。
電極87a〜87gはそれぞれ複数個ずつ一直線上に互いに等間隔に配置されている。そして、電極87aがなすラインと電極87bがなすラインとの間隔、電極87bがなすラインと電極87cがなすラインとの間隔、電極87cがなすラインと電極87dがなすラインとの間隔、電極87dがなすラインと電極87eがなすラインとの間隔、電極87eがなすラインと電極87fがなすラインとの間隔、電極87fがなすラインと電極87gがなすラインとの間隔は、互いに同じである。このように、電極87a〜87gはマトリックス状に配置されている。そして、電極87a〜87gが配置された範囲が流路ユニットの圧力室10と対応した位置となるように、アクチュエータユニット86と流路ユニット7とが貼り合わされているとする。これにより、多数の電極87a〜87gは、流路ユニット7の圧力室10に対応した領域内に実質的に一様に配置されている。
圧電セラミックスプレート86aの電極領域(電極87a〜87gが配置された範囲内にあって、圧電セラミックスプレート86aの上面から電極87a〜87gの長さ分の距離までの領域)は、圧電セラミックスプレート86aの面方向に沿って各電極87a〜87gがなすラインと直交する方向に交互に分極した活性部となっている。
全ての電極87aは、複数の電極87aがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線94を介して、常にグランド電位に保持された端子91aに接続されている。全ての電極87bは、複数の電極87bがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線95を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子92aに接続されている。全ての電極87cは、複数の電極87cがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線96を介して、常にグランド電位に保持された端子91bに接続されている。全ての電極87dは、複数の電極87dがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線97を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子92bに接続されている。全ての電極87eは、複数の電極87eがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線98を介して、常にグランド電位に保持された端子91cに接続されている。全ての電極87fは、複数の電極87fがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線99を介して、グランド電位及び正の所定電位のいずれかを選択的にとる駆動パルス信号が与えられる端子92cに接続されている。全ての電極87gは、複数の電極87gがなすラインに沿って配置された直線形状の金属配線100を介して、常にグランド電位に保持された端子91dに接続されている。
そして、端子92a、92b、92cには、同じ駆動パルス信号が与えられる。つまり、本実施の形態において、電極87b、87d、87fの電位は常に同じであり、電極87a、87c、87e、87gの電位も常に同じグランド電位である。したがって、7種類の電極87a〜87gは、電極87b、87d、87fからなる第1の電極と、電極87a、87c、87e、87gからなる第2の電極とに分類することができる。
上述の説明から分かるように、電極87b、87d、87fがグランド電位となっているときには、各電極87a〜87gがなすラインと直交する方向に隣接する電極間(つまり、電極87a−電極87b間、電極87b−電極87c間、電極87c−電極87d間、電極87d−電極87e間、電極87e−電極87f間、電極87f−電極87g間)に電界が発生しない。ところが、電極87b、87d、87fが正の所定電位となっているときには、各電極87a〜87gがなすラインと直交する方向に隣接する電極間に電界が発生する。
この電界の方向は圧電セラミックスプレート86aの分極方向と同じであるので、圧電セラミックスプレート86aの電極87a〜87gによって挟まれた電極領域は、圧電作用により面方向に伸びようとする。一方、電極領域に対して圧電セラミックスプレート86aの厚み方向に隣接した電極87a〜87gが配置されていない非電極領域には、電界が印加されず面方向に伸びようとする力が働かない。したがって、電極領域と非電極領域とに面方向への伸長差が生じ、非電極領域は電極領域が面方向に伸びるのに抵抗する。その結果、特許文献3に記載されたユニモルフ構造のアクチュエータユニットと類似した作用が生じて、図8の左側に示すように、圧電セラミックスプレート86aは、電極領域側が凸となるように厚み方向に湾曲する。このとき、圧電セラミックスプレート86aの下面(圧力室側の面)は圧力室を拡大する方向に湾曲する。したがって、圧力室内にマニホールド流路からインクが流入して、圧力室がインクで満たされる。
その後、電極87b、87d、87fがグランド電位になると電界が解除され、圧電セラミックスプレート86aはそれ自体が有する弾性により、図8の右側に示すように、元の平板形状に戻る。すると、圧電セラミックスプレート86aの下面の位置も元の位置に戻るので、圧力室の容積が図8の左側の状態から減少する。これにより圧力室内のインクに圧力が与えられて、圧力室に連通したノズルからインク滴が噴射される。本実施の形態のインクジェットヘッド81の場合も、インクを噴射させる方式として押し打ち及び引き打ちのいずれを用いてもよい。
また、図7に描かれているように、複数の電極87bがなすラインの両側には、電極87bと同じ形状の凹部88がそれぞれ形成されている。同様に、図8に描かれているように、複数の電極87b〜87fがなす各ラインの両側には、電極87b〜87fと同じ形状の凹部88がそれぞれ形成されている。凹部88は各ラインの最も外側の電極87b〜87fから、ライン方向に隣接する電極間の距離と同じだけ離れている。このように、圧電セラミックスプレート86aの電極領域は、複数の凹部88によって面方向に部分的且つ不連続的に囲まれている。
次に、このインクジェットヘッド81の製造方法について簡単に説明する。インクジェットヘッド81を製造するには、流路ユニット7及びアクチュエータユニット81などの部品を別々に作製し、それから各部品を組み付ける。
流路ユニット7を作製する手順は上述した第1の実施の形態のものと同じであるので、ここでは説明を省略する。アクチュエータユニット81を作製するには、まず、圧電セラミックスのグリーンシートを1枚用意し、このグリーンシートの圧力室に対応した部分に電極配置用の多数の円柱状凹部及び凹部88をプレス加工又はレーザ加工で形成する。プレス加工は、グリーンシートをアクチュエータユニット6に対応した所定形状に成形する際に同時に行うことができるという点で利点が大きい。
その後、円柱状凹部内にペースト状の導電性材料を流し込んでから圧電セラミックスのグリーンシートを公知のセラミックスと同様に脱脂し、さらに所定の温度で焼成する。これにより、円柱状凹部内に電極87a〜87gが配置され且つ複数の電極87b〜87fがなす各ラインの両側に凹部88が形成された圧電セラミックスプレート86aが得られる。そして、電極87a〜87gに金属配線94〜100を印刷又は蒸着により施すことにより、アクチュエータユニット86が得られる。なお、圧電セラミックスのグリーンシートは、予め焼成による収縮量を見込んで設計される。
しかる後、流路ユニット7とアクチュエータユニット86とが、電極領域の位置と圧力室10の位置とを合わせて、熱硬化性接着剤を用いて貼り合わされると共に、アクチュエータユニット86と別途用意されたFPCとが対応する端子同士がそれぞれ重なるように半田を用いて貼り合わされる。
その後、電極87a、87c、87e、87gの電位をグランド電位に保持した状態において電極87b、87d、87fに高電位を与えることで、電極領域内の圧電セラミックスプレート86aを電極の対向方向つまり面方向に沿って各電極87a〜87gがなすラインと直交する方向に分極させ、この領域を活性部とする。以上の工程を経ることによって、インクジェットヘッド81が完成する。
なお、上述した製造工程において、グリーンシートの焼成後にレーザ加工で円柱状凹部及び凹部88を形成するようにしてもよい。また、グリーンシートの焼成後に円柱状凹部内に電極を配置するようにしてもよい。さらに、分極工程の後でFPCの貼り合わせ行ってもよい。この場合、電極87a〜87gへはFPC以外から電位を与える必要がある。
このように、本実施の形態による液体圧力発生機構であるアクチュエータユニット81によると、圧電セラミックスプレート86a内に配置された電極87a、87c、87e、87gと電極87b、87d、87fとの電位差を制御することで、圧電セラミックスプレート86aをその厚み方向に湾曲した状態と湾曲していない状態とのいずれかに切り替えることができる。したがって、所望の圧力室10内のインクに圧力を与えてインクを噴射させることができる。
また、本実施の形態のアクチュエータユニット81は、圧電セラミックスプレート86aに電極87a〜87gを配置するという簡易な工程で容易に製造可能である。そのため、製造コストを低く抑えることができるという優れた利点を有する。なお、凹部88は電極配置用の多数の円柱状凹部と同時に形成できるので、第1の実施の形態に比べて製造工程が複雑になることはない。また、アクチュエータユニット81は、特許文献1及び特許文献2のように多数の圧電セラミックスプレートと薄層電極とを積層した構造になっていないために、電極を十分な厚さの非電極領域を介してインクと隔てることができ、圧電セラミックスプレート86aに微細なクラックが存在してもインク漏れなどのために隣接する電極同士がショートするなどの故障が生じることが少なく、耐久性が高い。
また、本実施の形態においては、圧電セラミックスプレート86aの電極領域が複数の凹部88によって面方向に部分的且つ不連続的に囲まれているために、圧電セラミックスプレート86aの1つの電極領域の変形が隣接する電極領域に伝播するのを抑制することができる。したがって、インクが噴射されるノズル9に隣接したノズル9からのインク噴射が悪影響を受けずらくなって、クロストークが抑制される。その他、第1の実施の形態と同様の利益が得られる。
なお、本実施の形態では、凹部88の軸方向の長さを電極87a〜87gの軸方向の長さと同じとしたが、凹部88の軸方向の長さを電極87a〜87gの軸方向の長さよりも長くすることでクロストーク低減効果を高めることができる。また、電極領域を円柱状の凹部88によって不連続的に囲むよりも溝状の凹部で電極領域を連続的に囲むようにすればクロストーク低減効果をさらに高めることができる。この凹部88は、図3のように電極を円形に配置したものの外周に設けることもでき、また、図2の2層のものにも適用できる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいてさまざまな変更が可能なものである。例えば、電極は同心環状やライン状だけでなく、同心楕円形状や同心長方形状に圧電セラミックスプレート内に配置されてよく、環状に配置する場合であっても同心でなくてもよく、どの場合も等間隔でなくてもよい。また、第1及び第3の実施の形態では圧電セラミックスプレートを1層とし、第2の実施の形態では圧電セラミックスプレートを2層としたが、圧電セラミックスプレートを3層以上積層してもよい。このとき、電極は全ての層を貫通しないように少なくとも最外層内に配置されていればよい。
また、圧電材料からなる板状体内に配置される電極の形状、分布は任意である。例えば、上述の実施の形態では比較的小さな電極を用いてこれらを適宜分布させるようにしたが、大きな帯状の電極を互いが対向するように1組配置してもよい。また、上述した実施の形態では電極がその一端が露出するようにアクチュエータユニットの上面側に偏在しているが、電極がアクチュエータユニット内に埋め込まれていて電極の一端が露出していなくてもよい。また、電極はアクチュエータユニットの下面(圧力室側の面)側に偏在していてもよい。こうすると、電界をかけたときに圧力室の容積が減少する。
また、上述の実施の形態では圧電セラミックスプレートの分極方向が電界方向と同じであるが、分極方向を電界方向と交差する方向にしてもよい。例えば、図1のものにおいて、電極17aと電極17bとの間、電極17bと電極17cとの間、電極17cと電極17dとの間を圧電セラミックスプレートの厚み方向でかつ交互に逆方向に分極し、さらに電極17aを中心として左右対称に分極する。このようにすると、各電極間はシェアモード変形し、電極領域全体としては電極17aを頂点とした円錐型に変形する。なお、このとき、圧電セラミックスプレートを分極させるのに電極を用いることができなくなるので、FPCを貼り付ける前に別の手段で圧電セラミックスプレートを分極させる必要がある。また、上述した実施の形態において、多数の電極に印加する正電位及びグランド電位の関係を入れ替えてもよく、正電位と負電位或いは負電位とグランド電位を印加するようにしてもよい。
また、上述した実施の形態で説明したインクジェットプリンタと同様に構成された液滴噴射装置において、噴射媒体として導電ペーストを用いることにより、極めて微細な電気回路パターンを印刷したり、或いは、噴射媒体として有機発光体を用いることにより有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD)などの高精細ディスプレイデバイスを作成したりすることもできる。そのほか、上述した実施の形態で説明したインクジェットプリンタと同様に構成された液滴噴射装置は、微小なドットを被印刷媒体上に形成する用途であれば、極めて広範に用いることができる。
本発明の第1の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。 図1に示すインクジェットヘッドをその幅方向に沿って切断した部分断面図である。 図1に示されたアクチュエータユニットの部分拡大斜視図である。 図3に示されたアクチュエータユニットの変形例を示す斜視図である。 本発明の第2の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。 図5に示されたアクチュエータユニットの部分拡大斜視図である。 本発明の第3の実施の形態に係る液体圧力発生機構であるアクチュエータユニットを含むインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。 図7に示されたアクチュエータユニットの部分拡大斜視図である。 従来のインクジェットヘッドをその長手方向に沿って切断した部分断面図である。
符号の説明
1 インクジェットヘッド(流体圧力発生機構)
6 アクチュエータユニット
6a 圧電セラミックスプレート(板状体)
7 流路ユニット
9 ノズル
10 圧力室
10a 隔壁
17a、17c 電極(第1の電極)
17b、17d 電極(第2の電極)
21a、22a、21b、22b 端子
24、25、26 金属配線

Claims (13)

  1. 圧電材料からなる板状体と、
    前記板状体を貫通することなくその表面から厚み方向に延びるように前記板状体内に配置された第1の電極と、
    前記板状体の面方向について前記第1の電極と対向するように前記板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記板状体内に配置された第2の電極とを備えていることを特徴とする液体圧力発生機構。
  2. 前記板状体の前記第1の電極と前記第2の電極とに挟まれた領域が両電極の対向方向に分極されており、前記領域にその分極方向と同じ方向の電界が加えられると、前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置された側とその反対側との面方向への伸長差により前記板状体が湾曲することを特徴とする請求項1に記載の液体圧力発生機構。
  3. 複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、前記板状体の所定領域内に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体圧力発生機構。
  4. 複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、交互に同心環状に又はライン状に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体圧力発生機構。
  5. 前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置された側の面に、前記所定領域を取り囲むように複数の凹部が設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の液体圧力発生機構。
  6. 前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置されていない側の面に、圧力が付与されるべき液体を収容する圧力室が配置されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液体圧力発生機構。
  7. 前記板状体の前記第1の電極及び前記第2の電極が配置されていない側の面に、互いに隔壁によって隔てられた複数の前記圧力室が配置されており、
    複数の前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記板状体の複数の前記圧力室に対応した複数の領域内にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項6に記載の液体圧力発生機構。
  8. 圧電材料からなる第1の板状体と、
    前記第1の板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記第1の板状体内に配置された第1の電極と、
    前記第1の板状体の面方向について前記第1の電極と対向するように前記第1の板状体の表面からその厚み方向に延びるように前記第1の板状体内に配置された第2の電極と、
    前記第1の板状体と積層されており、前記第1の電極と前記第2の電極との間にある前記第1の板状体に面方向の電界を加えたときに前記第1の板状体がその面方向に伸びるのに抵抗する第2の板状体とを備えていることを特徴とする液体圧力発生機構。
  9. 複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、前記第1の板状体の所定領域内に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体圧力発生機構。
  10. 複数の前記第1の電極及び複数の前記第2の電極が、交互に同心環状に又はライン状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の液体圧力発生機構。
  11. 前記第1の板状体の前記第2の板状体とは反対側の面に、前記所定領域を取り囲むように複数の凹部又は貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項9又は10に記載の液体圧力発生機構。
  12. 前記第2の板状体の前記第1の板状体とは反対側の面に、圧力が付与されるべき液体を収容する圧力室が配置されていることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の液体圧力発生機構。
  13. 前記第2の板状体の前記第1の板状体とは反対側の面に、互いに隔壁によって隔てられた複数の前記圧力室が配置されており、
    複数の前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記第1の板状体の複数の前記圧力室に対応した複数の領域内にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項12に記載の液体圧力発生機構。
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