以下、この発明の放射線画像処理装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明するが、この発明は、この実施の形態に限定されない。
この発明の放射線画像処理装置では、またPCI放射線画像検出処理装置、PCI放射線画像出力装置及びPCI画像診断支援装置では、デジタルデータであるPCI放射線画像が用いられ、このPCI放射線画像は直接デジタル画像として得られる場合と、アナログ画像として得たものをデジタル化した場合とがある。
このPCI放射線画像は、特願平11−203969号の装置、特願平11−266605号の装置、特願2000−44381号の装置、特願2000−53562号の装置等で撮影して得られた画像であり、特願平11−203969号の方法、特願平11−266605号の方法、特願2000−44381号の方法等の撮影方法により得られた画像である。
特願平11−203969号に記載の装置は、焦点サイズ(Dμm)が30μm以上であるX線管と、被写体位置を固定する固定手段と、被写体を透過したX線画像を検出するX線検出器とを有し、固定手段は、X線管から固定手段により固定された被写体までの距離R1(m)をR1≧(D−7)/200(m)の式の範囲に、且つ固定手段により固定された被写体からX線検出器までの距離R2が0.15m以上に設定可能に構成されているX線画像撮影装置である。
また、特願平11−203969号に記載の方法は、X線管から照射され、被写体を透過したX線画像をX線検出器で検出し、半影によって低下する鮮鋭性を、屈折コントラスト強調による画像エッジ強調によって高めるX線画像撮影方法であり、また、焦点サイズ(Dμm)が30μm以上であるX線管を用いるX線画像撮影法であって、前記X線管から被写体までの距離R1(m)をR1≧(D−7)/200(m)
の式の範囲とし、且つ前記被写体からX線検出器までの距離R2を0.15m以上として撮影するX線画像撮影方法である。
前記特願平11−203969号に記載の装置及び方法については、前記距離R1が10>R1≧(D−7)/200(m)であること、さらに0.7≦R1≦5(m)であること、前記X線管の焦点サイズが30μm以上1000μm以下であること、さらに前記X線管の焦点サイズが50μm以上500μm以下であること、被写体に照射されるX線の輝線スペクトルのエネルギーが10keV以上60keV以下であること、前記X線管の陽極がモリブデンもしくはロジウムを有すること、前記X線検出器の画素サイズが1μm以上200μm以下であること、などがさらに好ましい態様である。
特願2000−44381号の装置は、発散するX線を照射するX線管と、X線管に対して被写体を固定するための被写体保持具と、被写体を透過したX線画像を検出するX線画像検出器とを有し、X線画像の半影によるボケ幅をB(μm)、X線回折コントラストによるエッジ強調幅をE(μm)とするとき、X線管より照射されるX線を被写体に透過させてX線拡大撮影を行う際、9E≧Bとなるように被写体保持具及びX線画像検出器を設置可能としたX線画像撮影装置である。
また、特願2000−44381号に記載の方法は、発散するX線を放射するX線管を用い、このX線管から放射するX線を被写体に透過させてX線拡大撮影を行い、このX線拡大撮影で得られるX線画像の半影によるボケ幅をB(μm)、X線屈折コントラストによるエッジ強調幅をE(μm)とすると、9E≧BであるようにしたX線画像撮影方法である。
前記特願2000−44381号に記載の装置及び方法については、X線管と被写体との距離R1を0.5m以上離すこと、被写体とX線画像検出器との距離R2を1m以上離すこと、さらに前記R1+R2が5m以下であること、前記X線拡大撮影が1.0〜10倍であること、前記X線管の焦点サイズが10μm以上1000μm以下であること、さらに前記X線管の焦点サイズが30μm以上300μm以下であること、被写体に照射されるX線の設定管電圧が50〜150kVpであること、前記X線管がタングステン回転陽極X線管であること、前記X線検出器の画素サイズが1μm以上200μm以下であること、などがさらに好ましい態様である。
また、前記エッジ強調幅Eは、例えば以下の3つの式で表すことができる。ここで、R1:X線源−被写体距離(m)、R2:被写体−X線画像検出器(m)、λ:X線量の最大値の波長(Å)、A:被写体を円柱としたときの断面の円の直径(mm)、δ:物体と空気の屈折率差、である。
E=39×R2(1+0.045/R1)×λ2×√A E=27×(1+R2/R1)1/3×(λ2×R2×√A)2/3 E=2.3×(1+R2/R1)1/3×(R2×δ×√A)2/3 特願平11−266605号に記載の装置は、支持部材上に移動可能で且つ一時的に固定することのできる被写体支え器具及びフィルムカセッテ保持具を備え、クーリッジX線管とフィルムカセッテ保持具のスクリーン・フィルムシステムとの距離を70cm以上離すことが可能であり、且つ被写体支え器具の被写体とフィルムカセッテ保持具のスクリーン・フィルムシステムまでの距離を20cm以上離すことが可能であり、X線屈折コントラスト画像を撮影するX線画像撮影装置である。
また、特願平11−266605号に記載の方法は、支持部材上に移動可能で且つ一時的に固定することのできる被写体支え器具及びフィルムカセッテ保持具を備え、クーリッジX線管とフィルムカセッテ保持具のスクリーン・フィルムシステムとの距離を70cm以上離し、且つ被写体支え器具の被写体とフィルムカセッテ保持具のスクリーン・フィルムシステムまでの距離を20cm以上離し、X線屈折コントラスト画像を撮影するX線画像撮影方法である。
特願2000−53562号の装置は、被写体に放射線を照射する小焦点放射線源と、被写体を保持する保持部材と、被写体を透過した放射線に基づく放射線画像情報を読み取る読み取り手段と、小焦点放射線源と保持部材との間の第1の距離または保持部材と読み取り手段との間の第2の距離を変更する距離変更手段と、小焦点放射線源の放射条件を制御する制御手段とを有し、制御手段は少なくとも第1の距離または第2の距離に関する距離情報に応じて小焦点放射線源の放射条件を制御する放射線画像撮影装置であり、また被写体に放射線を照射する小焦点放射線源と、被写体を保持する保持部材と、被写体を透過した放射線に基づく放射線画像情報を読み取る読み取り手段と、放射線画像情報を表示する画像表示手段または放射線画像情報を出力する画像出力手段とを有し、放射線画像撮影時の画像拡大率から変更して放射線画像情報を画像表示手段により表示または画像出力手段により出力を行う制御手段を有する放射線画像撮影装置である。
通常撮影とは、被写体をディテクタに密着して、場合によりグリッドを介して撮影することであり、通常撮影画像とは、通常撮影により得られた画像のことである。
また、PCI放射線画像を直接デジタル画像として得ることができるPCI放射線画像撮影装置は、通常撮影(通常行われている一般の撮影)とともに、PCI放射線画像の撮影も可能な装置である。
この発明では、実施の形態を説明する図面を示すが、それぞれの図は一例でありこれに限定されない。
まず、PCI放射線画像処理装置及びPCI放射線画像検出処理装置の実施の形態について説明する。
図1はPCI放射線画像処理装置及びPCI放射線画像検出処理装置の構成を示す図である。この実施の形態のPCI放射線画像処理装置及びPCI放射線画像検出処理装置は、コントロール部10を有している。放射線発生源30はコントロール部10によって制御されるが、このコントロール部10による制御に限定されない。放射線発生源30から放射された放射線は、被写体5を通して、放射線画像検出手段200である放射線画像読取器40の前面に装着されている撮像パネル41に照射される。
放射線発生源30としては、Mo管球、Rh管球、W管球等が用いられるが、PCI撮影では、管球の焦点径が小さくかつ高出力のX線源が望ましい。高出力化の一つの例としては、回転陽極(ターゲット)に照射される電子線が回転陽極の同心円上の同じ位置に当たらないように、電子線が照射されている間回転陽極が少しずつ移動するという方法が考えられる。PCI放射線画像を撮影するには、放射線管焦点径が30〜500μmで、最大管電流が50mA以上の放射線発生源が好ましい。
次に、X線管焦点の配置について望ましい態様を説明する。乳房や体に近い腕の撮影において、通常の撮影では被写体とディテクタとが密着しているので、X線管焦点の位置によらずディテクタに載せた部分を撮影することができる。すなわち、乳房撮影ならば胸壁まで撮影することができる。一方、PCI放射線画像などの拡大撮影では被写体とディテクタが離れるので、被写体に対してX線管焦点とディテクタ位置が適切でないと希望する部分が撮影できない。すなわち、X線管焦点またはディテクタの配置の最適化が必要となる。
例えば乳房撮影装置では、図2(a)に示すようにX線管焦点900は被写体支持体部の端部の垂直上方より若干支柱901側(被写体から遠い側)に配置されている。この場合PCI放射線画像などの拡大撮影では、胸壁の放射線情報まできちんとディテクタ902でとらえようとすると、ディテクタ902が被写体支持体部の端部の垂直下方より被写体側にくるため、撮影し辛いという不具合点が生じる。
このため、図2(b)に示すようにPCI放射線画像などの拡大撮影では通常の撮影に対し、X線管焦点900が被写体903側にくるように配置することが望ましい。
前記のX線管焦点900の配置については、デジタルPCI放射線画像の撮影に限られたものではなく、スクリーン/フィルムなどのアナログシステムや、一般の拡大撮影についても適用されるものである。
放射線画像読取器40では、PCI放射線画像を直接デジタルデータとして得るためのディテクタが用いられ、輝尽性蛍光体プレート(イメージングプレート)、フラットパネルディテクタ:FPD(直接方式、間接方式)などの固体撮像素子、蛍光体(Gd2O2S:Tb、CsI等)とレンズ(またはテーパー)とCCDを用いたもの等がある。これらのディテクタを用いた場合、PCI放射線画像は拡大撮影なので、ディテクタの画素サイズを小さくしたことに相当する。すなわち高精細読み取りをしたことに相当し、画像情報が増えるという利点がある。
輝尽性蛍光体プレートは、放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を照射するとこの放射線エネルギーの一部が蓄積され、その後可視光等の励起光を照射すると蓄積されたエネルギーに応じて輝尽発光を示す蓄積性蛍光体(輝尽性蛍光体)を利用して、人体等の被写体の放射線画像情報を一旦シート上の蓄積性蛍光体に記録し、この蓄積性蛍光体シートをレーザー光等の励起光で走査して輝尽発光光を生ぜしめ、得られた輝尽発光光を光電的に読み取って画像信号を得、この画像データに基づき被写体の放射線画像を写真感光材料等の記録材料、CRT等に可視像として出力させることができる(特開昭55−124929号、同56−163472号、同56−104645号、同55−116340号等)。
フラットパネルディテクタ等の固体撮像素子としては、例えば特開平6−342098号公報に記載されているように、照射されたX線の強度に応じた電荷を生成する光導電層と、生成された電荷を2次元的に配列された複数のコンデンサに蓄積する方式が用いられる。また、特開平9−90048号公報に記載されているように、X線を増感紙等の蛍光体層に吸収させて蛍光を発生させ、その蛍光の強度を画素毎に設けたフォトダイオード等の光検出器で検知する方式も用いられる。蛍光の検知手段としては他にCCDやC−MOSセンサを用いる方法もある。また、X線の照射により可視光を発するX線シンチレータと、レンズアレイ及び各々のレンズに対応するエリアセンサとを組み合わせた構成も用いられる。
また、図1の構成とは異なるが、例えば集団検診において放射線画像の撮影が通常X線フィルムを用いて行われ、これらのX線写真をこの実施の形態のシステムに入力するためには、レーザディジタイザを用いる。これは、フィルム上をレーザビームで走査し、透過した光量を測定し、その値をアナログデジタル変換することにより、デジタル画像データとして入手するものである。この画像データをコントロール部10に入力することにより、上記と同等にデジタル画像として扱うことができる。
前記の種々の構成によりデジタルX線画像を得る際には、撮影部位や診断目的にもよるが、画像の実効画素サイズが200μm以下であることが好ましく、特にマンモグラムに対しては100μm以下であることが好ましい。また、画像の階調数は10bit以上が好ましく、12bit以上が特に好ましい。
PCI撮影において拡大撮影は必須であり、そのため場合によってはディテクタも大面積のものが必要となる。その場合の一つの応用例として、複数枚のイメージングプレートまたはスクリーン/フィルムを並べて撮影し、撮影後画像を重ね合わせ、その画像に対して処理を加える方法もある。また上述の、蛍光体とレンズとCCDを用いたユニットを多数並べたディテクタは大面積化に有効である。これらの場合、画像のつなぎ目(隙間)は適切な補間処理で補間する必要がある。
通常撮影では撮影部位にもよるが、グリッドを概ね使用するが、PCI撮影ではエアギャップにより散乱線が除去できるので、グリッドは使用しない。このため、グリッドによる放射線吸収がないので、放射線情報にロスがない。
コントロール部10には、入力インタフェース17を介してキーボード等の入力手段27が接続されており、入力手段27を操作することで、得られた画像データを識別するための情報や撮影に関する情報等の管理情報の入力などが行われる。
また、コントロール部10には、出力インタフェース18を介して出力手段28が接続される。出力手段28としては、ハロゲン化銀写真感光材料を用いて自動現像機等で現像することにより画像が得られるもの、ハロゲン化銀写真感光材料であるが放射線画像情報に応じた加熱によって画像が描かれるもの等も好ましい実施態様である。また常温で固体のインクを加熱した液体状態のものをノズルから噴射して画像を描く固体インクジェット記録方法、常温で液体である染料もしくは顔料をノズルから噴射して画像を描くインクジェット記録方法、インクリボンを加熱により昇華させて記録媒体に固着させて画像を描く方法、カーボンなどを一面に塗布したシー卜を画像情報に基づきレーザー光などで過熱蒸発させることによるアブレイション画像形成方法などによるハードコピーを使用することは好ましい実施態様である。
また、出力手段28による画像出力または画像表示に関しては、通常、処理後の画像を1枚だけ出力または表示する。それ以外に、処理前と処理後の画像を並列で出力または表示したり、同一被写体の画像がある場合はそれらを並べて出力または表示したりすることができる。
コントロール部10には、撮影が行われる被写体5の識別や撮影に関する情報を示す管理情報が入力手段27を用いて入力される。この入力手段27を用いた管理情報の入力は、キーボードを操作したり、磁気カード、バーコード、HIS(病院内情報システム:ネットワークによる情報管理)等を利用して行われる。この管理情報は、例えばID番号、氏名、生年月日、性別、撮影日時、撮影部位および撮影体位(例えば、放射線を人体のどの部分にどの方向から照射したか)、撮影方法(単純撮影、造影撮影、断層撮影、拡大撮影等)、撮影条件(管電圧、管電流、照射時間、X線管焦点−被写体間距離:R1、被写体−ディテクタ間距離:R2、拡大率、散乱線除去グリッドの使用の有無等)、撮影した画像がPCI放射線画像か通常撮影画像か、ディテクタのサンプリングピッチ、診断目的等の情報から構成される。さらにこれらに限定されるものではない。
コントロール部10は、CPU11及び画像処理手段100を有し、撮影日時は、CPU11に内蔵されている時計機能を利用して、CPU11からカレンダーや時刻の情報を自動的に得ることもできる。なお、入力される管理情報は、その時点で撮影される被写体に関するものだけでも良く、一連の管理情報を予め入力しておいて、入力順に被写体を撮影したり、必要に応じて入力された管理情報を読み出して用いるものとしてもよい。
コントロール部10は、PCI放射線画像及び通常撮影画像に画像処理を施す画像処理手段100を有し、撮像したPCI放射線画像及び通常撮影画像に対応する画像信号を出力する放射線画像検出手段200である放射線画像読取器40から出力された画像信号に画像処理を施し、また入力手段27から入力されたPCI放射線画像及び通常撮影画像に対応する画像信号に画像処理を施すことができる。
画像処理手段100は、PCI放射線画像に画像処理を施すPCI画像処理手段110と、通常撮影の画像に画像処理を施す通常撮影画像処理手段120とを有する。PCI放射線画像と通常撮影の画像とであるか否かにより画像処理条件が異なるので、それぞれに対応するPCI画像処理手段110と通常撮影画像処理手段120が設けられている。
また、撮影に関する管理情報を記憶する撮影情報記憶手段300を有し、画像処理手段100は、撮影情報記憶手段300に記憶された撮影に関する情報を用いて画像処理条件を決定し、それに基づき処理を行なう。
この撮影に関する管理情報は、撮影情報記憶手段300内で保有しても良いし、ヘッダー情報等として画像自身が保有しても良い。
PCI画像処理手段110及び通常撮影画像処理手段120は、それぞれ図3に示す画像処理回路12で構成される。この画像処理回路12では、PCI放射線画像または通常撮影の画像の画像データのレベルの分布が変動しても、診断等に適した濃度及びコントラストの放射線画像を得るために階調処理が行われる。
なお、図示せずも、画像処理回路12では、画像データDTregに対して放射線画像の鮮鋭度を制御する周波数強調処理や、ダイナミックレンジの広い放射線画像の全体を、被写体の細かい構造部分のコントラストを低下させることなく見やすい濃度範囲内に収めるためのダイナミックレンジ圧縮処理を行うものとしてもよい。
ところで、放射線画像の撮影に際しては、例えば診断に必要とされない部分に放射線が照射されないようにするため、あるいは診断に必要とされない部分に放射線が照射されて、この部分で散乱された放射線が診断に必要とされる部分に入射されて分解能が低下することを防止するため、被写体5の一部や放射線発生器30に鉛板等の放射線非透過物質を設置して、被写体5に対する放射線の照射野を制限する照射野絞りが行われる。
この照射野絞りが行われた場合、照射野内領域と照射野外領域の画像データを用いてレベルの変換処理やその後の階調処理を行うものとすると、照射野外領域の画像データによって、照射野内の診断に必要とされる部分の画像処理が適正に行われなくなってしまう。このため、照射野内領域と照射野外領域を判別する照射野認識が行われる。
照射野認識では、例えば特開昭63−259538号で示される方法が用いられて、図4(A)に示すように撮像面上の所定の位置Pから撮像面の端部側に向かう線分上の画像データを用いて例えば微分処理が行われる。この微分処理によって得られた微分信号Sdは、図4(B)に示すように照射野エッジ部で信号レベルが大きくなるため、微分信号Sdの信号レベルを判別して1つの照射野エッジ候補点EP1が求められる。この照射野エッジ候補点を求める処理を、撮像面上の所定の位置を中心として放射状に行うことにより複数の照射野エッジ候補点EP1〜EPkが求められる。このようにして得られた複数の照射野エッジ候補点EP1〜EPkの隣接するエッジ候補点を直線あるいは曲線で結ぶことにより照射野エッジ部が求められる。
また、特開平5−7579号で示される方法を用いることもできる。この方法では、撮像面を複数の小領域に分割したとき、照射野絞りによって放射線の照射が遮られた照射野外の小領域では、略一様に放射線の放射線量が小さくなり画像データの分散値が小さくなる。また、照射野内の小領域では、被写体によって放射線量が変調されることから照射野外に比べて分散値が高くなる。さらに、照射野エッジ部を含む小領域では最も放射線量が小さい部分と被写体によって変調された放射線量の部分が混在することから分散値は最も高くなる。このことから、分散値によって照射野エッジ部を含む小領域が判別される。
また、特開平7−181609号で示される方法を用いることもできる。この方法では、画像データを所定の回転中心に関して回転移動させて、平行状態検出手段によって照射野の境界線が画像上に設定された直交座標の座標軸と平行となるまで回転を行うものとし、平行状態が検出されると、直線方程式算出手段によって回転角度と回転中心から境界線までの距離によって回転前の境界の直線方程式が算出される。その後、複数の境界線に囲まれる領域を直線方程式から決定することで、照射野の領域を判別することができる。また照射野エッジ部が曲線である場合には、境界点抽出手段で画像データに基づき例えば1つの境界点を抽出し、この境界点の周辺の境界候補点群から次の境界点を抽出する。以下同様に、境界点の周辺の境界候補点群から境界点を順次抽出することにより、照射野エッジ部が曲線であっても判別することができる。
このようにして照射野認識が行われると、認識された照射野内領域は、画像データの分布を所望のレベルの分布に変換する際に画像データのレベルの分布を決定するための領域(以下「関心領域」という)に設定される。この関心領域内の画像データから代表値を決定し、この代表値を所望のレベルに変換することで、所望のレベルの画像データを得ることができる。
この関心領域は、照射野内領域と等しい場合に限られるものではない。例えば診断を行う上で最も重要な部分を照射野の中央として撮影を行うことが一般的に行われていることから、照射野内領域の中央に円形あるいは矩形等の領域を設定して関心領域とするものとしてもよい。ここで、円形あるいは矩形等の領域は、円の直径や矩形の一辺の長さが、例えば照射野の長辺や短辺あるいは対角線の「1/2〜「1/5」として設定される。
さらに、照射野内領域に所定の人体構造に対応する関心領域を設定してもよい。例えば、特開平3−218578号で示されているように、縦方向と横方向とのプロジェクション(画像データの一方向の累積値)を求め、このデータから解剖学的領域決定手段によって肺野部分の領域を決定し、この決定された領域が関心領域として設定される。また特開平5−7578号で示されているように、各画素の画像データと閾値を比較して、比較結果に基づき識別符号を画素毎に付加するものとし、閾値以上であることを示す識別符号の連続する画素群毎にラベリングを行って領域を決定し、この決定された領域が関心領域として設定される。次に、設定された関心領域内の画像データから代表値D1、D2が設定されて、この代表値を所望のレベルS1、S2に変換する処理が行われる。また、関心領域内から代表値を設定するための領域(以下「信号領域」という)を抽出して、抽出された信号領域内の画像データから代表値D1,D2が設定される。
この関心領域から信号領域を抽出する方法としては、画像データのヒストグラムを作成して、このヒストグラムに基づいて信号領域の抽出が行われる。例えば図5(A)は人体股関節部分の放射線画像を示しており、領域PAは照射野絞りが行われて放射線が照射されなかった領域である。図5(B)は、照射野認識を行い、認識された照射野内の領域を関心領域に設定した図である。図5(C)は、この関心領域の画像のヒストグラムを示している。図5(B)に示す関心領域内の直接照射領域PBは、放射線が被写体を透過することなく直接照射された領域であり放射線量が大きい。このため、直接照射領域PBは、図5(C)に示すように画像データのレベルの高い領域Pbと対応する。また、関心領域内の放射線遮蔽領域PC(放射線防護具等で放射線の遮蔽が行われた領域)は、放射線が遮蔽されていることから放射線線量が小さい。このため、放射線遮蔽領域PCは、画像データのレベルの低い領域Pcと対応する。さらに、関心領域内の被写体領域PDでは、被写体によって放射線が変調されており、この被写体領域PDは、画像データのレベルの高い領域Pbと低い領域Pcの間の領域Pdと対応する。このように画像データのヒストグラムによって、被写体領域を判別することができるので、図5Cに示す画像データのレベルの高い領域Pbとレベルの低い領域Pcを除去して、領域Pdが信号領域とされる。
また、信号領域の抽出では、特開昭63−262141号で示される方法を用いることもできる。この方法では、画像データのヒストグラムを判別基準法等を用いた自動しきい値選別法により複数の小領域に分割し、分割された小領域のうち所望の画像部分が信号領域として抽出される。
代表値D1,D2の設定では、例えば関心領域内や抽出された信号領域内の略最小値と略最大値が代表値として用いられる。また信号領域内の累積ヒストグラムが所定の値、例えば20%と80%となるような信号値が代表信号値として用いられる。また代表値を1つとして例えば信号領域内の累積ヒストグラムが60%となる信号値が代表信号値として用いられる。代表値D1,D2の設定では、信号領域内の画像データを用いることで関心領域内の画像データを用いる場合よりもさらに被写体に適した処理を行うことができる。
このようにPCI放射線画像を解析することにより所望の関心領域を設定する関心領域設定手段を有し、設定された関心領域内の画像信号に基づいて、画像処理条件を決定し、それに基づき処理を行なう。関心領域内の画像信号により画像処理条件を決定するので、最適な処理条件を決定することができる。
なお、関心領域設定手段は、通常撮影画像も同様に解析することにより所望の関心領域を設定し、設定された関心領域内の画像信号に基づいて、画像処理条件を決定し、それに基づき処理を行なうことができる。
次に、図3に示すように画像データDTregを用いて階調処理がおこなわれる。階調処理では、例えば図6に示すような階調変換曲線が用いられて、画像データDTregの基準値S1、S2をレベルS1’,S2’として画像データDTregが出力画像データDToutに変換される。このレベルS1’,S2’は、出力画像における所定の輝度または写真濃度と対応するものである。
階調変換曲線は、画像データDTregの全信号領域にわたって連続な関数であることが好ましく、またその微分関数も連続であることが好ましい。また、全信号領域にわたって、その微分係数の符号が一定であることが好ましい。
また、撮影部位や撮影体位、撮影条件、撮影方法等によって好ましい階調変換曲線の形状やレベルS1’,S2’が異なることから、階調変換曲線は画像毎にその都度作成してもよく、また例えば特公平5−26138号で示されているように、予め複数の基本階調変換曲線を記憶しておくものとし、いずれかの基本階調変換曲線を読み出して回転および平行移動することにより所望の階調変換曲線を容易に得ることができる。なお、図3に示すように画像処理回路12では、複数の基本階調変換曲線に対応する階調処理ルックアップテーブルが設けられており、画像データDTlegに基づいて階調処理ルックアップテーブルを参照して得られた画像データを、基本階調変換曲線の回転および平行移動に応じて補正することで階調変換が行われた出力画像データDToutを得ることができる。なお、階調変換処理では、2つの基準値S1,S2を用いるだけでなく、1つの基準値や3つ以上の基準値を用いるものとしてもよい。
ここで、基本階調変換曲線の選択や、基本階調変換曲線の回転および平行移動は、撮影部位や撮影体位、撮影条件、撮影方法等に基づいて行なわれる。これらの情報が入力手段27を用いて管理情報として入力されている場合には、この管理情報を利用することで、容易に基本階調変換曲線を選択することができる。また、撮影部位や撮影体位、撮影条件、撮影方法に基づいて基準値S1,S2のレベルを変更するものとしてもよい。
さらに、基本階調変換曲線の選択や基本階調変換曲線の回転あるいは平行移動は、画像表示装置の種類や画像出力のための外部機器の種類に関する情報に基づいて行うものとしてもよい。これは、画像の出力方式に依存して、好ましい階調が異なる場合があるためである。
階調変換の上記以外の方法としては、特開昭55−116339号、特開昭55−116340号、特開昭57−66480号、特開昭59−83149号、特開昭63−31641号、特開昭63−262141号、特開平2−272529号、特開平3−218578号、特開平5−75925号、特開平5−174141号、特開平5−344423号、特開平6−233755号、特開平7−255012号、特開平7−271972号、特開平8−62751号、特開平8−331385号、特開平9−261471号、特開平9−266901号、特開平10−32756号、特開平10−63831号、特開平11−88688号、特開平11−316832号、特開2000−23950号、特開2000−30046号、特開2000−33082号、特開2000−79110号、などに記載されている方法を用いることができる。勿論、これらの方法に限らず様々な階調変換方法を適用することができる。また、階調変換曲線の形状としては、例えば特公昭63−20535号に示されるものが用いられる。
このように階調処理は、PCI放射線画像であるか否か、またそれ以外の情報により処理条件が異なることから、画像処理手段100が、階調を変換する処理を行なう階調処理手段を有する。
また、複数の階調変換曲線を記憶する階調変換曲線記憶手段を有し、階調処理手段では、階調変換曲線記憶手段に記憶された複数の階調変換曲線からいずれかの階調変換曲線を選択し、選択した階調変換曲線に基づいて階調を変換する処理を行なう。
階調処理手段では、階調変換曲線記憶手段に記憶された複数の階調変換曲線から撮影に関する管理情報に基づいて階調変換曲線を選択する。
また、複数の基本階調変換曲線を記憶する基本階調変換曲線記憶手段を有し、階調処理手段では、基本階調変換曲線記憶手段に記憶された複数の基本階調変換曲線からいずれかの基本階調変換曲線を選択し、選択した基本階調変換曲線を変形することにより所望の階調変換曲線を作成し、作成された階調変換曲線に基づいて階調を変換する処理を行なう。
階調処理手段では、基本階調変換曲線記憶手段に記憶された複数の基本階調変換曲線から撮影に関する管理情報に基づいて基本階調変換曲線を選択する。
階調処理手段では、PCI放射線画像に対するコントラスト係数が通常撮影画像に対するコントラスト係数よりも小さい条件で処理する。コントラスト係数とは、横軸がX線照射量の対数、軸がディテクタの信号値としたときの特性曲線のある2点間の勾配をいう。また、コントラスト係数の別の定義として、特性曲線において「カブリ濃度+0.25」の濃度となる点と、「カブリ濃度+2.0」の濃度となる点の2点を結んだ直線の勾配をいう。放射線画像がPCI放射線画像の場合、通常撮影の画像よりも画像コントラストが高いので階調処理におけるコントラスト係数はより小さく設定し、その結果、粒状性が良い画像になる。
次に、周波数強調処理及びダイナミックレンジ圧縮処理について説明する。
画像処理手段100は、周波数強調処理を行なう周波数強調処理手段を有する。この周波数強調処理では、例えば式(1)に示す非鮮鋭マスク処理によって鮮鋭度を制御するために、関数Fが特公昭62−62373号や特公昭62−6237号で示される方法によって定められる。
Soua=Sorg+F(Sorg−Sus)・・・(1)
なお、Souaは処理後の画像データ、Sorgは周波数強調処理前の画像データ、Susは周波数強調処理前の画像データを平均化処理等によって求められた非鮮鋭データである。
この周波数強調処理では、例えばF(Sorg−Sus)がβ×(Sorg−Sus)とされて、β(強調係数)が図7に示すように基準値S1、S2間でほぼ線形に変化される。
また、図8の実線で示すように、低輝度を強調する場合には基準値S1〜値「A」までのβが最大とされて、値「B」〜基準値S2まで最小とされる。また値「A」〜値「B」までは、βがほぼ線形に変化される。高輝度を強調する場合には破線で示すように、基準値S1〜値「A」までのβが最小とされて、値「B」〜基準値S2まで最大とされる。また値「A」〜値「B」までは、βがほぼ線形に変化される。なお、図示せずも中輝度を強調する場合には値「A」〜値「B」のβが最大とされる。このように周波数強調処理では、関数Fによって任意の輝度部分の鮮鋭度を制御することができる。
ここで、基準値S1,S2および値A,Bは、上述した周波数強調処理条件の設定における基準値S1,S2の決定方法と同様の方法により求められる。また、周波数強調処理の方法は上記非鮮鋭マスク処理に限られるものではなく、特開昭55−87953号、特開昭55−163472号、特開昭56−104645号、特開平5−174141号、特開平5−252444号、特開平6−233755号、特開平6−235982号、特開平7−21364号、特開平7−51257号、特開平7−160876号、特開平10−63812号、特開2000−4398号、特願平4−048825号、特願平7−42277号、特願平7−73433号、特願平7−73497号、特願平7−94693号、特願平7−316679号、特公昭62−62373号、特公昭62−62376号、特公昭62−62379号などに記載されている方法や、多重解像度法(特開平5−244508号、6−301766号、特開平9−44645号)を用いることができる。勿論、これらの方法に限らず様々な周波数強調処理方法を適用することができる。
また、周波数強調処理において、撮影に関する管理情報をもとに周波数強調処理条件を決定し、それに基づき処理を行なうようにしてもよい。
なお、周波数強調処理では、強調する周波数帯域や強調の程度は、階調処理での基本階調変換曲線の選択等と同様に撮影部位や撮影体位、掃影条件、撮影方法等に基づいて設定される。
この周波数強調処理において、PCI放射線画像に対する強調の度合いが通常撮影画像に対する周波数強調係数よりも小さい。強調の度合いとは、式(1)の係数のβである。放射線画像がPCI放射線画像の場合、通常撮影の画像よりも高周波成分を多く含んでいるので、周波数強調処理における周波数強調係数はより小さく設定し、その結果、高周波成分のノイズを低減することができる。
また、画像処理手段100は、ダイナミックレンジ圧縮処理を行なうダイナミックレンジ圧縮処理手段を有する。このダイナミックレンジ圧縮処理では、式(2)に示す圧縮処理によって見やすい濃度範囲に収める制御を行うため、関数Gが特許公報266318号で示される方法によって定められる。
Stb=Sorg+G(Sus)・・・(2)
なお、Stbは処理後の画像データ、Sorgはダイナミックレンジ圧縮処理前の画像データ、Susはダイナミックレンジ圧縮処理前の画像データを平均化処理等によって求められた非鮮鋭データである。
ここで、G(Sus)が図9(A)に示すように、非鮮鋭データSusがレベル「La」よりも小さくなるとG(Sus)が増加するような特性を有する場合には、低濃度領域の濃度が高いものとされて、図9(B)に示す画像データSorgは図8(C)に示すように低濃度側のダイナミックレンジが圧縮された画像データStbとされる。また、G(Sus)が図9(D)に示すように、非鮮鋭データSusがレベル「Lb」よりも小さくなるとG(Sus)が減少するような特性を有する場合には、高濃度領域の濃度が高いものとされて、図9(B)に示す画像データSorgは図9(E)に示すように高濃度側のダイナミックレンジが圧縮される。ここで、レベル「La」,「Lb」は、上述した階調処理条件の設定における基準値S1,S2の決定方法と同様の方法により求められる。
なお、ダイナミックレンジ圧縮処理も、撮影部位や撮影体位、揖影条件、撮影方法等に基づいて補正周波数帯域や補正の程度が設定される。
このように、上述の実施の形態によれば、得られた画像データに対して階調処理が行うことで診断等に適した濃度及びコントラストの放射線画像を常に安定して得ることができると共に、ダイナミックレンジ圧縮処理によって、被写体の細かい構造部分のコントラストを低下させることなく見やすい濃度範囲内の放射線画像を得ることができる。
このようにダイナミックレンジ圧縮処理において、PCI放射線画像に対する補正の度合いが通常撮影画像に対する係数よりも大きい。
式(2)、図9(A)の関数Gは、例えば、G=β・(La−Sus)
β:定数 Sus≦Laβ=0 Sus>Laと表すことができる。
補正の度合いとは、式(2)の係数βである。補正の度合いが大きいとは、βが大きいこと、またはLaが大きいことをいう。
放射線画像がPCI放射線画像の場合、通常撮影の画像よりも鮮鋭性が良いので、ダイナミックレンジ圧縮処理における係数はより大きく設定しても鮮鋭性の低下を防ぐことができる。
ダイナミックレンジ圧縮処理の方法としては上記以外の方法として、特開昭63−189043号、特開昭63−189854号、特開平3−222577号、特開平5−174141号、特開平5−300376号、特開平6−121795号、特開平6−292008号、特開平6−292009号、特開平6−292013号、特開平6−339025号、特開平7−38758号、特開平8−294006号、特開平9−266901号、特開平11−41541号、特開平11−191150号、特開平11−191150号、などに記載されている方法を用いることができる。勿論、これらの方法に限らず様々な階調変換方法を適用することができる。
また、ダイナミックレンジ圧縮処理において、撮影に関する管理情報をもとにダイナミックレンジ圧縮処理条件を決定し、それに基づき処理を行なうようにしてもよい。
次に、放射線画像処理装置の実施の形態について説明する。
まず、エネルギーサブトラクションについて説明する。同一被写体に対して相異なるエネルギー分布を有する放射線を照射せしめ、被写体の特定の構造物(例えば、臓器、骨、血管等)が特有の放射線エネルギー吸収特性を有することを利用して特定の構造物が異なって描出された2つの画像信号を得、その後この2つの画像信号に適当な重み付けをした上で両信号間で引き算(サブトラクト)を行い特定の構造物の画像を抽出する。
このエネルギーサブトラクションの具体的な方法は、例えば、2枚のディテクタにそれぞれ放射線の高エネルギー成分、低エネルギー成分を担持する放射線画像を同時に記録する1ショットエネルギーサブトラクションを行い、各ディテクタから被写体の放射線画像を担持する画像信号を得、各画像信号間で減算処理を行うことにより、被写体の特定の構造物が強調された画像を得るものである。また、複数枚の放射線画像を得るには、必ずしも1ショットである必要はなく、複数のショット数であっても良い。
図10はPCI放射線画像処理装置の構成を示す図である。この実施の形態のPCI放射線画像処理装置は、放射線画像読取器が検出器構成単位140,141を有する。検出器構成単位140,141は、平面状のシンチレータ140a,141aのそれぞれと積層させた固体光検出器140b,141bとからなるディテクタで構成される。
放射線発生源130より発せられた放射線105は被写体106に照射され、被写体106を透過する。被写体106を透過した放射線105は、放射線画像読取器の検出器構成単位140に照射される。検出器構成単位140に照射された放射線105は、まずシンチレータ140aに照射される。
シンチレータ140aは照射された放射線105の強度に応じた強度の可視光を発光し、固体光検出器140bにより受光される。そしてこの可視光が光電変換され発光強度に応じて固体光検出器140bに信号電荷が蓄積される。その後転送部からこの信号電荷が読み出され、電気信号としての画像信号SAが出力される。この画像信号SAは、通常撮影画像の画像信号となる。
一方、検出器構成単位140に照射された放射線105のうち、シンチレータ140aにより変換されなかったものは、固体光検出器140bを透過して検出器構成単位141に到達し、シンチレータ141aにより可視光に変換され、固体光検出器141bにより受光される。そして、この可視光が光電変換され発光強度に応じて固体光検出器141bに信号電荷が蓄積される。その後この信号電荷が固体光検出器141bから読み出され、電気信号としての画像信号SBが出力される。この画像信号SBは、PCI放射線画像の画像信号となる。
この実施の形態では、複数の放射線画像を1回のX線照射で撮影し、それらの画像より減算画像を得る。被写体の後ろに複数のディテクタを配置するようにし、1回のX線照射で同時に複数の画像を得るようにする。複数の放射線画像は形が同じ画像なので、画像の位置合わせの際の形のずれがない。
また、図11に示すように、放射線画像読取器の各ディテクタである検出器構成単位140,141の間の少なくとも一カ所に放射線の低エネルギー成分吸収物質を含有するフィルタ143を介在せしめることができる。
具体的には、検出器構成単位140の固体光検出器140bのすぐ後に配置することが好ましい。フィルタ143はX線の低エネルギー成分吸収物質を含んでいるため、フィルタ143を透過したX線は低エネルギー成分が低減し、高エネルギー成分を多く含む状態になっている。このため、検出器構成単位141には、検出器構成単位140よりも、X線の低エネルギー成分に関わる画像情報が低減した情報が到達する。
一方、上記の変わりにエネルギー吸収特性が異なるディテクタを用いても良い。その場合、放射線発生源130に近い方に低エネルギー成分の吸収特性が高いディテクタを用いるようにする。
前記出力された画像信号SA,SBは、コントロール部150に入力されて所定の重み付けがなされて差分が行われる。すなわち、S=k1・SA+k2・SB・・・(3)
但し、k1,k2:重み係数なる演算が行われ、画像信号Sが得られる(差分なので、ここではk1またはk2が負の値である)。さらにこの画像信号Sに対して画像処理等がなされ、処理がなされた処理済画像信号S´は、例えば出力手段151に入力されて被写体106の放射線画像が可視像として出力される。
このように得られた複数の放射線画像に対して、所定の重み付けを行う重み付け手段を有することが好ましく、必要な部分を残して差分できるように各画像に重み付けをする。すなわち、好ましい態様である2枚の画像を用いる場合、通常撮影画像の信号であるSAとPCI放射線画像の信号であるSBとで減算処理をすることにより所定の差分画像を得ることができる。
また、コントロール部150は複数の画像の大きさ及び位置合わせを行う大きさ位置合わせ処理手段150cを有する。PCI放射線画像と通常撮影の画像は画像の大きさが異なるので、使用する画像の大きさ及び位置を正確に合わせる必要がある。大きさが変わるため対応する画素が変わってくる。対応する画素を合わせるためには、補間処理を施す必要がある。
撮影に関する管理情報を記憶する撮影情報記憶手段152を有し、撮影に関する管理情報に拡大率が含まれている場合、拡大率の情報と任意の補間処理により複数の画像の大きさを合わせ、その後位置合わせ処理を行なう。
位置合わせの方法としては、平行移動とテンプレート・マッチングの方法、マーカーを同時に撮影しマーカーの位置を合わせることにより位置を合わせる方法等がある。
テンプレート・マッチングの方法は、図12に示すように、検出しようとする対象を表すテンプレートt(x,y)を画像f(x,y)中の点(i,j)にその中心が重なるようにし、t(x,y)とそれと重なる画像の部分パターンとの類似度を測り、その値を点(i,j)に対象が存在する確からしさとする方法である(総研出版株式会社発行 コンピュータ画像処理入門、第149頁参照)。
マーカーを同時に撮影しマーカーの位置を合わせることにより位置を合わせる方法は、特開平6−22219号、特開平10−108073号の公報に記載されるものを用いることができる。
特開平6−22219号に記載されるものは、2つの画像信号SO1´,SO2´がそれぞれ担持する各X線画像の相対的な位置合わせが画像信号上で行なわれ(特開昭58−163338号公報参照)、この位置合わせは、図13に示す2つのマーク500が重なるように2つのX線画像を相対的に直線的な移動及び回転移動を行なうことにより行なわれる。
特開平10−108073号に記載されるものは、位置合わせ処理としては、対象の画像を撮影する際に所定の位置合わせ用マーカーを写し込んでいる場合はそのマーカーを一致させる処理や、文献Medical Imaging Technology(メディカル・イメージング・テクノロジー)Vol.11No.3 July 1993pp.373〜374に示されている2次元の非線形画像変形による位置合わせ処理等種々の公知の方法を適用することができる。
また、この実施の形態では、撮影に関する管理情報を記憶する撮影情報記憶手段152を有し、撮影に関する管理情報に拡大率が含まれていない場合、解析結果をもとに拡大率を求め、求めた拡大率と任意の補間処理により複数の画像の大きさを合わせ、その後に位置合わせ処理を行なう。
上記の拡大率を求める解析方法としては、複数のマーカー、または被写体の一部または全体の距離を求め、その距離の比率から拡大率を求める方法がある。この場合、自動または手動の両方が考えられる。被写体の一部としては、肺の幅の長さ等がある。別な方法として、少しずつ拡大率を変えてもう一方の画像に合わせ、最も合う倍率を求めるという方法が考えられる。また、拡大率がわからなくとも、管理情報としてR1とR2をもっていれば、拡大率=1+R2/R1により拡大率を得ることができる。
コントロール部150は、同一被写体106について撮影した、少なくとも一枚のPCI放射線画像を含む複数の放射線画像の減算処理を行ない減算画像を得る減算処理手段150aを有し、複数枚のディテクタにそれぞれ放射線の高エネルギー成分、低エネルギー成分を担持する放射線画像を(同時に)記録する1ショットエネルギーサブトラクションを行い、各ディテクタから被写体の放射線画像を担持する画像信号を得、各画像信号間で減算処理を行うことにより、被写体の特定の構造物が強調された画像を得ることができる。
PCI放射線画像は血管等の描出能に特に優れているので、例えば通常撮影画像との差分により血管等の部位を抽出することが可能となる。結果として、血管撮影などで撮影していた画像を造影剤無しで撮影することが可能となる。
この実施の形態では、通常撮影とPCI撮影の2枚の画像で差分画像を作成することが望ましい。
またこの実施の形態では、通常撮影画像とPCI放射線画像で画質が異なるので、すなわちPCI放射線画像は血管等の輪郭がはっきり写し出されるので、特に特性の異なるディテクタを用意する必要はなく、同じエネルギー吸収特性のディテクタを使用しても良い。勿論、エネルギー吸収特性が異なるディテクタを用いても良いし、X線のエネルギーを変換しても良い。
このPCI放射線画像処理装置の仕様としては、被写体保持具、すなわち人体が動かず、ディテクタ及び放射線源が移動する形が好ましい。人体が動かず、ディテクタが動いて距離の設定を行なうのが、被写体の人には楽である。ディテクタが通常撮影用とPCI撮影用の2つ有し、通常撮影用ディテクタは被写体保持具位置に固定されており、PCI撮影用は被写体保持具位置から一定距離離れており、移動できるようになっていることが好ましい。
また、上述した実施例においては、シンチレータと固体光検出器との組み合わせからなる放射線画像読取器を用いているが、特にこれに限定されるものではなく、前述した各タイプの放射線画像読取器を用いることができる。
また、上述した放射線画像読取器においては、各検出器構成単位の間に放射線の低エネルギー成分を吸収するフィルタを配するようにしているが、各検出器構成単位のシンチレータの間であればいかなる位置に介在せしめるようにしてもよい。
また、上述した実施例においては、被写体を透過して照射された放射線を検出することによって被写体の放射線画像を得るために用いられているが、これに限定されるものではなく、例えば、被検体自身から発せられる放射線を検出することにより被検体の放射線画像を得るいわゆるオートラジオグラフィーにも適用できる。
次に、放射線画像処理装置の他の実施の形態について説明する。
図14は放射線画像処理装置の構成を示す図である。この実施の形態のPCI放射線画像処理装置は、図10に示す実施の形態と同様に構成されるが、図10に示す実施の形態の減算処理手段150aに変えて、コントロール部150が、同一被写体106について撮像した、少なくとも一枚のPCI放射線画像を含む複数の放射線画像の加算処理を行ない加算画像を得る加算処理手段150bを有する。PCI放射線画像は鮮鋭性が高い画像であるが、さらに画像の加算を行なうことにより、ノイズ成分の少ない粒状性が良い画像を得ることができる。
この実施の形態では、複数の放射線画像を1回のX線照射で撮影し、それらの画像より加算画像を得る。被写体の後ろに複数のディテクタを配置するようにし、1回のX線照射で同時に複数の画像を得るようにする。複数の放射線画像は形が同じ画像なので、画像の位置合わせの際の形のずれがない。
得られた複数の放射線画像に対して、所定の重み付けを行なう重み付け手段を有し、これにより、前記(3)式にしたがい各画像に重み付けをする。
また、複数の画像の大きさ及び位置合わせを行う大きさ位置合わせ処理手段150cを有する。PCI放射線画像と通常撮影の画像は画像の大きさが異なるので、使用する画像の大きさ及び位置を正確に合わせる必要がある。大きさが変わるため対応する画素が変わってくる。対応する画素を合わせるためには、補間処理を施す必要がある。
撮影に関する管理情報を記憶する撮影情報記憶手段152を有し、撮影に関する管理情報に拡大率が含まれている場合、拡大率の情報と任意の補間処理により複数の画像の大きさを合わせ、その後位置合わせ処理を行なう。
位置合わせ及び大きさを合わせる方法としては、上記と同様の方法で行われる。
なお、PCI放射線画像処理装置には、図10に示す実施の形態の減算処理手段150aと、図14に示す実施の形態の加算処理手段150bとを共に備え、必要に応じて同一被写体106について撮像した、少なくとも一枚のPCI放射線画像を含む複数の放射線画像の減算処理を行ない減算画像を得、また複数の放射線画像の加算処理を行ない加算画像を得えるようにしても良い。
次に、PCI放射線画像出力装置の他の実施の形態について説明する。
この実施の形態のPCI放射線画像出力装置を、図15に示す。この実施の形態のPCI放射線画像出力装置は、図1に示す実施の形態と同様に構成されるが、拡大撮影されたPCI放射線画像を縮小率α以上1以下で出力する出力手段60を有する。この縮小率αとは、撮影した画像を被写体と等倍にするための縮小倍率、すなわち撮影した画像の拡大率の逆数である。PCI放射線画像は拡大撮影であるため画像上の被写体が大きくなるが、診断上見慣れた大きさである方が良いので、縮小して出力することが好ましい。特に被写体と実物大の大きさで出力することが望ましい。画像出力の縮小率は仮に上記のようにデフォルトで設定されていても、デジタル画像であるのでユーザーの希望により変更が可能であることはいうまでもない。
コントロール部10で適切な画像処理を行った後に、例えば出力手段60であるレーザイメージャ等の画像出力装置を用いて、ハードコピーを得ることができる。このとき、例えばコントロール部10から、レーザイメージャに画像データを送ることにより、自動的に所定サイズに縮小して、画像出力することが好ましい態様である。
また、出力手段としては、前記したPCI放射線画像処理装置及びPCI放射線画像検出処理装置の実施の形態に記載されているものと同等のものを用いることができる。
また、この実施の形態のPCI放射線画像出力装置は、複数の補間処理条件を記憶する補間処理条件記憶手段61を有し、出力手段60では、補間処理条件記憶手段61に記憶された複数の補間処理条件から何れかの補間処理条件を選択し、選択した補間処理条件を用いて補間処理を行ない放射線出力画像を出力する。
補間処理は、最近傍補間、直線補間、スプライン補間、キュービック・コンボリューション補間、ベル・スプライン補間から選ばれる少なくとも一つの補間処理である。
また、撮影に関する管理情報を記憶する撮影情報記憶手段62を有し、撮影に関する管理情報の情報に基づき補間処理条件を決定し、それに基づき補間処理を行なうことができる。例えば、撮影した画像の拡大率Aの情報をもとに、実物大に出力するならば、画像を1/A倍して出力するようにする。撮影に関する管理情報をもつことにより、撮影に関する管理情報をもとに最適な画像処理条件が決定され処理が行われ、診断に適した画像を得ることができる。例えば、R1とR2の情報より、拡大率MはM=1+R2/R1として求めることができ、画像を1/M倍に縮小して出力する。具体的には、入力装置のサンプリングピッチが100μmで画像を1/2倍に縮小し出力する場合には、画像のサンプリングピッチが50μm(=100μm×1/2)とし、後は通常と同じ方法で出力するなどの方法が考えられる。
また、この実施の形態では、入力手段27のサンプリングピッチ、出力手段60のサンプリングピッチ、撮影した画像の拡大率の情報をもとに補間処理を行ない、撮影した被写体と等倍で出力することが好ましい。
出力画像の最も診断しやすい大きさは、被写体と同じ大きさである。上記のように、入力手段27のサンプリングピッチを画像の拡大率で除算することにより、出力画像の1画素の大きさが決まる。この大きさと出力手段60のサンプリングピッチの大きさを比較し、必要に応じて補間処理を行ない、最終画像を出力する。
入力手段27のサンプリングピッチ、出力手段60のサンプリングピッチ、出力画像の入力画像に対する拡大率(縮小率)、補間処理条件、等の情報から出力手段60より出力される画像データを作成する画像処理手段63を有するが、その画像処理手段63はコントロール部10内にあっても良いし、出力手段60の中に処理する手段を有しても良い。
また、撮影に関する管理情報のうち指定した情報を出力画像に添付し出力する。撮影した画像の拡大率や、拡大率の逆数である縮小率等を添付すると診断時に参考になる。
上記画像出力とは、フィルムや紙等に画像をプリント出力することであり、CRTなどに表示することではない。
ここで、サンプリングピッチとは画素間隔のことであり、通常は画素サイズと同じ大きさである。
画像の複数枚出力においては、等倍と部分拡大画像を並べて出力する方法もある。この場合、拡大されている部分を等倍画像中で表示するとわかりやすい。画像出力方法としては、等倍画像1つ、等倍画像と一部拡大画像を並列で、などがある。
上記とは別に、CRTなどへの表示方法も、等倍画像1つ、等倍画像と一部拡大画像を並列で、などがある。CRTの場合は、デフォルト画像を表示後、使用者が自由に変更して観察することができる。
次に、PCI画像診断支援装置の他の実施の形態について説明する。
例えば、医師が放射線画像を用いて画像診断を行う際、CRTなどの画像表示装置にX線画像を表示し読影を行うことが行われるようになってきた。特に近年、コンピュータによるデジタル画像処理技術を用いて画像データの解析を行い、肺癌や乳癌などの異常陰影を検出する技術が開発されており、検出した異常陰影候補の情報を医師に提示し診断の支援を行うことが可能となってきている。
このような画像診断支援装置の実施の形態を図16に示す。この実施の形態のPCI画像診断支援装置は、画像データ入力手段602、画像出力制御信号入力手段603、画像処理手段604、画像記憶手段605、異常陰影候補検出手段606、異常陰影記憶手段607、画像出力制御手段610、画像表示手段608及び画像プリント手段609を有している。この画像処理手段604には撮影情報記憶手段652が接続されている。
画像データ入力手段602からの画像データの入力は、例えば集団検診において、放射線画像の撮影が通常X線フィルムを用いて行われる。これらのX線写真を、この実施の形態のシステムに入力するためには、レーザディジタイザを用いている。これは、フィルム上をレーザビームで走査し、透過した光量を測定し、その値をアナログデジタル変換することにより、デジタル画像データとして入力するものである。
画像の入力には、CCDなどの光センサを用いる装置を使用することも可能である。またフィルムを読み取るのではなく、特開昭55−12429号公報に記載されているような、蓄積性蛍光体を用いたデジタル画像を直接出力することのできる撮影装置を接続することも可能である。
また、2次元的に配列された複数の検出素子によりX線画像を撮像して電気信号として出力するフラットパネルディテクタ(FPD)から得たX線画像を人力することもできる。これらのディテクタついては、上記で詳しく述べているので、ここでは省略する。
前記の種々の構成によりデジタルX線画像を得る際には、撮影部位や診断目的にもよるが、例えばマンモグラムに対しては画像の実効画素サイズが200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。この発明の画像診断支援装置の性能を最大に発揮させるには、例えば実効画素サイズ50μm程度で入力した画像データを記憶し表示する構成が好ましい。異常陰影候補検出手段において異常陰影候補検出のための解析に使用する画像データの画素サイズは入力された画像の画素サイズと等しくする必要はなく、例えば入力画像の実効画素サイズを50μmとし、異常陰影候補検出に使用する画像データは入力画像を間引き処理して実効画素サイズ100μmに変換したものを使用しても良い。
画像記憶手段605では、入力された画像データが必要に応じてデータ圧縮を施されて格納される。ここでデータ圧縮としては公知のJPEG、DPCM、ウエーブレット圧縮等の手法を用いた可逆圧縮または非可逆圧縮が用いられる。可逆圧縮はデータ圧縮に伴う診断情報の劣化が無いため好ましい。
小規模な診断では、データ量はさほど多くはないので、画像データを圧縮せずに磁気ディスクに格納することもできる。この場合、光磁気ディスクに比べて、画像データの格納、読み出しは非常に高速にできるようになる。画像の読影時には、高速なサイクルタイムが必要であるため、必要な画像データを半導体メモリに格納することも行われる。
画像記憶手段605に格納された画像は順次読み出され、画像処理手段604によって画像処理が行われるとともに、異常陰影候補検出手段606によって異常陰影候補が検出される。
異常陰影候補検出手段606は、画像記憶手段605から読み出した画像データを解析することにより、例えば図17に示すような微小石灰化クラスタ及び腫瘤陰影の検出を行なう。図17(a)に微小石灰化クラスタの例を示す。微小石灰化が集まって(クラスタ化して)存在すると、そこが、初期のがんである可能性が高いため、早期の乳癌を見つけるために重要な所見の一つである。マンモグラム上では、略円錐構造をもった小さく白い陰影としてみられる。また、図17(b)に示す腫瘤陰影は、ある程度の大きさを持った塊、マンモグラム上では、ガウス分布に近い、白っぽく丸い陰影としてみられる。
このように乳癌の2大所見として、腫瘤陰影と微小石灰化クラスタがあげられ、腫瘤陰影の検出法には、左右乳房を比較することによって検出する方法(Med.Phys.,vol.21.no.3,pp.445−452)や、アイリスフィルタを用いて検出する方法(信学論(D−11),Vol.J75−D−11,no.3,pp.663−670,1992)、Quoitフィルタを用いて検出する方法(信学論(D−11),Vol.J76−D−ll,no.3,pp279−287,1993)、分割した乳房領域の画素値のヒストグラムに基づく二値化をして検出する方法(JAMIT Frontier95講演論文集,pp84−85,1995)、方向性のある多数のラプラシアンフィルタの最小出力をとる最小方向差分フィルタ(信学論(D−ll),Vol.J76−D−ll,no.2,pp.241−249,1993)等があげられる。
また、微小石灰化クラスタの検出法には、乳房領域から石灰化の疑いがある領域を局部化し、陰影像の光学濃度差や境界濃度差の標準偏差等から偽陽性候補を削除する方法(IEEE Trans Biomed Eng BME−26(4):213−219,1979)、ラプラシアンフィルタ処理を行った画像を用いて検出する方法(信学論(D−ll),Vol.J71−D−ll,no.10,pp.1994−2001,1988)、乳腺等の背景パターンの影響を抑えるためにモルフォロジー解析した画像を使用する検出方法(信学論(D−ll),Vol.J71−D−ll.no.7,pp.1170−1176,1992)等がある。
表示する画像は画像処理手段604によって画像処理されたものである。画像処理手段604によって画像処理されるものには、階調処理、周波数強調処理、ダイナミックレンジ圧縮処理のいずれか一つを含む。階調処理には、特に、微小石灰化クラスタが乳房内のどの領域に存在していても、安定したコントラストで出力することを特徴とした画像処理を含む。また、周波数強調処理には、特に、スキンラインからの距離関数を作成し、この距離関数に基づいてダイナミックレンジ圧縮を行なうことを特徴とするものも含む。また、画像処理は、同一患者の同一方向及び/または同一乳房で同じ条件の画像処理を施すことを特徴とする。また、画像処理は画像毎に条件を決定してもよいし、予め決定しておいた条件に従って決定してもよい。
複数の画像を同時に画像表示手段608に表示する場合には、複数の画像の全てに対して同じ条件の画像処理を施すことが好ましい。
a.階調処理階調処理においては、画像データの解析結果に基づいて、原画像データ(入力)と階調処理画像データ(出力)との対応を表す階調変換曲線を決定し、この階調変換曲線を用いて階調処理を行う。
階調処理に先立って、放射線の照射野領域を検出する照射野認識処理を行うと、認識された照射野領域内の画像データを用いて種々の画像処理条件を設定することにより、診断に必要とされる画像部分の画像処理を適正に行うことができるので好ましい。
MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY Vol.14 No.6 Novenmber 1996 第66頁〜第671頁にもとづき、さまざまな領域に存在する微小石灰化像のコントラストがほぼ同レベルに補正できるコントラスト補正曲線を作成する。この補正曲線によって乳房領域画像上の全画素の画素値を変換することにより、コントラストが小さくなる乳腺(fibroglandular tissue)や腫瘤(mass)の低濃度領域(low−density area)の濃度階調を拡大し、逆に微小石灰化像が存在する可能性が少ない脂肪領域(fatty area)の濃度諧調を圧縮するように補正を行なう。
このコントラスト補正処理は、自動検出性能の向上に貢献するだけでなく、視覚的にも乳腺組織内の観察が容易になるという点で有効であり、画像処理法としての応用も可能である。
b.周波数強調処理周波数強調処理では、非鮮鋭マスク処理や、多重解像度法等の手段によって、画像の鮮鋭度を制御することができる。
c.ダイナミックレンジ圧縮処理ダイナミックレンジ圧縮処理では、例えば特許2509503号または特許2663189号に示される手法を用いて、任意の信号領域のダイナミックレンジ圧縮することができる。別の実施例として、マンモグラムにおけるスキンラインからの距離関数を作成し、距離関数に基づいてダイナミックレンジ圧縮を行う。
スキンライン付近は非常に高濃度であるため、黒くつぶれる可能性が高い。これは、マンモグラムの撮影方法が、乳房を挟んで撮影するためである。乳房を挟んで撮影した場合、スキンライン付近では、乳房の厚みが充分でないため、他の部位に比べて、薄い人体領域をX線が通過することになり、透過率が高くなる。また、スキンラインに近づくにつれ、乳房の厚みも薄くなる。このため、スキンラインからの距離によって決定する距離関数を作成し、その距離関数にしたがって、スキンライン付近の画素値を小さくすることによって、ダイナミックレンジを圧縮する。階調処理、周波数強調処理、ダイナミックレンジ圧縮処理の処理条件を変更する処理条件変更手段を持ち、それを用いて変更した条件を記憶しておいてもよい。
画像出力制御信号入力手段603では、画像表示手段608に付属のマウスにより、例えば階調の変更が可能で病変の可能性のある部分のコントラストを立ててより診断し易い階調に変更することができる。この場合、マウスの上下方向の動きでコントラストが、横方向の動きで明るさが、それぞれ連続的に変化するため、容易に所望の階調に変更することができる。また、マウスの操作によりこの他に画像の拡大の処理ができるほか、画像の切替、階調の変更などの処理を行う。画像の拡大はハードウェアにより行われ、ポインタが指し示した場所を中心にマウスの動きにより任意の倍率に瞬時に拡大することができる。また補間処理が行われるため、拡大してもモザイク状にはならず診断が容易に行える。前記のように決定した画像処理条件を記憶しておいてもよい。
例えば集団検診では1枚あたり5〜20秒で読影が行われ、次々に画像が切り替えられるが、画面上の右上に設定したボタン状の領域をポインタで指示しマウスのボタンを押すことにより瞬時に切り替わる。通常は順番に次の画像に切り替わっていくだけであるが、隣接した領域をクリックすることにより直前の画像に戻すことも可能である。
医師は表示された画像データに対し読影を行う。読影の結果、異常が発見された場合は、異常所見のあった箇所を表示画像上で指示することにより入力を行い、入力された所見情報を所見情報記憶手段に記憶する構成としてもよい。
画像表示手段608としては、CRT、液晶ディスプレイ 、プラズマディスプレイなどの公知の画像表示手段を用いることができ、中でも医療画像専用の高精細高輝度のCRTまたは液晶ディスプレイが最も好ましい。さらに、表示画素数が約1000×1000以上である高精細ディスプレイが好ましく、さらに、表示画素数が約2000×2000以上である高精細ディスプレイが最も好ましい。
また、表示されている画像の各々について、画像の表示位置、画像の反転、画像の回転を制御する表示制御番号入力手段を有し、表示されている画像の各々について、画像の表示位置、画像の反転、画像の回転を行なうことで、種々の方向から画像を比較、検討等を行なうことができ、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
画像出力制御手段610は、画像出力制御信号入力手段603の画像出力制御信号に基づき、画像表示手段608または画像プリント手段609に画像の出力を行なう。
画像記憶手段605から読み出された画像データが、画像表示手段608に表示される。画像表示手段608は、図18に示すように切替表示され、全画像のマンモグラム画像を同時に表示する全画像表示モードと、全画像を複数の画像を含む少なくとも2つのグループに分け、このグループに含まれる画像を表示するグループ表示モードとを有し、各表示モード間の切替を行う表示モード切替手段を有する。
この実施の形態では、画像の表示モードを予め定められた順序に従って切り替えて表示する表示モード切替手段を備える。CRT620は、初めの画面aに左右乳房の同じ撮影方向のもの同士、例えば左右乳房の上下方向の撮影CC画像を対向させ、また斜め方向の撮影MLO画像を対向させた4分割表示(全画像表示)が行なわれる。次に、2系列に分かれ、b系列では、表示b1で左右乳房のMLO画像を対向させた2分割表示(グループ表示)、表示b2で左右乳房のCC画像を対向させた2分割表示、表示b3で右乳房のCC画像とMLO画像を対向させた2分割表示、表示b4で左乳房のCC画像とMLO画像を対向させた2分割表示、表示b5で最後に左右乳房のCC画像を対向させ、またMLO画像を対向させた4分割表示で、画像の異常陰影候補位置にマーク621を付加して表示し、次に最初の画像表示に戻るようになっている。
また、c系列では、表示c1で左右乳房のCC画像を対向させ、またMLO画像を対向させた4分割表示で、画像の異常陰影候補位置にマーク621を付加して表示、表示c2で左右乳房のMLO画像を対向させた2分割表示、表示c3で左右乳房のCC画像を対向させた2分割表示、表示c4で右乳房のCC画像とMLO画像を対向させた2分割表示、表示c5で左乳房のCC画像とMLO画像を対向させた2分割表示し、次に最初の画像表示に戻るようになっている。
2つの系列b、cでの相違点は、異常陰影検出手段を早い段階で表示するのか、遅い段階で表示するのかの違いがある。早い段階で表示する場合には、コンピュータが指摘した異常陰影の検出結果を特に注意して読影することができるため、医師の負担軽減に役立つ。遅い段階で見せる場合には、医師が診断した後に、異常陰影検出結果を表示するため、二重読影の効果があり、見落とし減少に役立つ。また、二つの系列を自由に変更できることによって、医師の好みや診断の状況などで、選ぶことができるため、診断性能の向上に役立つ。
また、グループに含まれる画像は、同一患者の左乳房の撮影方向が異なる少なくとも2画像、または同一患者の右乳房の撮影方向が異なる少なくとも2画像、または同一患者の左乳房と右乳房の撮影方向が異なる少なくとも2画像、または同一患者の左乳房と右乳房の撮影方向が同じである少なくとも2画像である。
このように全画像のマンモグラム画像を同時に表示する全画像表示と、全画像を複数の画像を含む少なくとも2つのグループに分け、このグループに含まれる画像を表示するグループ表示とを行なうことで、1つのグループの画像を比較して読影することが可能であり、迅速かつ容易かつ正確に診断することができる。
また、画像の表示モードを予め定められた順序に従って切り替えて表示する表示モード切替手段を備え、画像の表示モードを予め定められた順番に切り替えて表示するから、例えば医師に予見を与えることがなく、あるいは漏れなく画像の比較等ができ、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、画像診断の順序を予め記憶しておく診断順序記憶手段を有し、この画像診断の順序に従って表示モードを切り替えて表示する。このように画像診断の順序を予め記憶しておき、この画像診断の順序に従って表示モードを切り替えて表示するから、医師ごとに好みの順番を設定し、診断することができるため、診断性能の向上に役に立ち、迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、画像表示手段608には、図19に示すようなタッチパネルで構成される操作表示640が設けられている。タッチパネルには、4分割表示キー640a、右乳房表示キー640b、左乳房表示キー640c、MLO画像表示キー640d、CC画像表示キー640e、all検出表示キー640f、mass表示キー640g、calc表示キー640h、cluster表示キー640iが設けられている。
この4分割表示キー640a、右乳房表示キー640b、左乳房表示キー640c、MLO画像表示キー640d、CC画像表示キー640e等による表示モード選択手段641aの操作により、予め画像診断に必要な画像表示の並びを決定し、各撮影方向、表示方向を自由に選択可能である。このように予め画像診断に必要な画像表示の並びを決定し、各撮影方向、表示方向を自由に選択可能であるから、例えば医師が自由に必要とする画像等を表示して比較等ができ、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、all検出表示キー640f、mass表示キー640g、calc表示キー640h、cluster表示キー640i等の検出結果表示手段641bによりマンモグラム検出結果を表示する。all検出表示キー640fで全ての検出結果を表示し、mass表示キー640gの操作で腫瘤陰影のmass検出結果、calc表示キー640hの操作で微小石灰化のcalc検出結果、cluster表示キー640iの操作で微小石灰化のcluter検出結果の表示を行なう。
また、必要なキーを押して検出結果を表示した後、例えば、同じキーを押すことによって、容易に、表示結果を消すことができるようにすることで、必要な結果だけを表示し、診断に役立てることができる。
また、画像の表示モードを予め定められた順序に従って切り替える切替方法と、前述した表示モード選択手段641aにより選択された表示モードへと切り替える切替方法とのいずれかの切替方法へ切り替えることで、例えば医師に予見を与えることがなく、あるいは漏れなく画像の比較等ができ、または例えば医師が自由に必要とする画像等を表示して比較等ができ、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、画像に対応づけて患者情報及び検査情報を記憶し、同一患者かつ同一検査の複数画像を表示するから、例えばそれぞれの画像を比較することで、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
患者情報は比較的暗い色であることが望ましい。明るい色である場合は、医師の目が疲れることなどが考えられるため、診断性能が悪くなることが考えられる。
また、同一患者かつ同一検査の画像群に含まれる画像について、撮影方向及び左右乳房の別に応じて表示位置または表示画像向きを決定することができ、種々の方向から画像を比較、検討等を行なうことで、医用画像を用いて容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、図18及び図20に示すように、同一患者かつ同一撮影方向の左乳房の画像と右乳房の画像とを乳頭が外側を向くように左右に並べて配置して表示することができる。このように同一患者かつ同一撮影方向の左乳房の画像と右乳房の画像とを乳頭が外側を向くように左右に並べて配置して表示することで、それぞれの画像を比較して容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。
また、乳頭側をトリミングする。このように画像の乳頭側をトリミングすることによって、画像サイズを縮小することができるため、表示速度の向上、メモリの節約効果がある。また、患者情報55を画像の乳頭側の被写体が写っていない領域の一部にオーバーレイ表示することによって、患者情報と被写体を重ねることなく表示するために、容易、かつ、正確に診断可能である。
また、左乳房と右乳房の上下方向の位置合わせが行なわれ、左乳房と右乳房の上下方向の位置合わせを行なうことで、画像を正確に対称状態で表示し、左右の乳房の比較を容易にすることによって、診断性能の向上が期待できる。
この左乳房と右乳房の上下方向の位置を合わせは、自動位置合わせ手段により行なわれる。この実施の形態として、図20に示すように、画像のスキンライン660,661に基づいて同一撮影方向の左右乳房の位置合わせをする。乳房のスキンライン660,661は、同一撮影方向の画像では、胸壁667方向に対して、ほぼ対称となる。スキンラインの形状を比較することや、同一列の胸壁からスキンラインまでの距離の累積絶対値差などが最小になる位置で左右乳房を合わせることができる。また、胸筋領域663と乳房領域664の境665を利用して、同様に位置を合わせることができる。このような位置合わせ手段により、医師の比較読影が容易になり、より正確な診断が期待できる。
また、画像データの解析または識別標識によりMLO画像とCC画像の撮影方向を自動的に判別する撮影方向判別手段を有し、また画像データを解析または識別標識により左乳房と右乳房を自動的に判別する左右乳房判別手段を有しており、使用者が必要に応じてグループ化する必要がなく、容易に適切なグループ化が行われるため、迅速かつ正確な診断を行うことができる。
また、画像の異常陰影候補を検出する異常陰影候補検出手段606を有し、異常陰影候補検出手段606により検出された情報を異常陰影記憶手段607に記憶する。このように画像の異常陰影候補を検出し、異常陰影候補を表示する。この異常陰影候補の表示は、図21乃至図23に示すように、画像の異常陰影候補位置にマークを付加して表示する。図21は腫瘤陰影のmass検出の異常陰影候補位置にマークを付した例であり、図22は微小石灰化のcalc検出の異常陰影候補位置にマークを付した例であり、図23は微小石灰化のcluter検出の異常陰影候補位置にマークを付した例であり、このような画像の異常陰影候補位置にマークを付加して表示するから、簡単かつ確実な異常陰影を認識することができ容易にかつ迅速、正確な画像診断を行うことができる。マークの形状は図21乃至図23に示すものに限るものではなく、例えば矢印でもよい。また、異常陰影の種類に応じて、形や色を変えるのが望ましい。
また、図24に示すように画像にスケール目盛り670を付加することができる。画像にスケール目盛り670を付加することで、スケール目盛りにより例えば異常陰影等の大きさを容易に認識することができる。
さらに、図25に示すように画像には、撮影時に鉛板等の遮蔽材により白い部分671、素抜け672等が生じ、医師は白い領域が広いと読影しにくいため、鉛遮蔽部分画像の鉛遮蔽部分を黒く塗りつぶして表示する。このように画像の鉛遮蔽部分を黒く塗りつぶして表示するから、例えば画像の鉛遮蔽部分を異常陰影等と誤解することがなく、目の疲れを減らす効果も期待でき、読影の性能向上に役立つ。
また、図26に示すように、拡大表示窓681の内側の領域と外側の領域とに異なる画像処理を施し、例えば拡大表示窓681の異常陰影を目立せることができ、異常陰影の検出がより容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
この画像処理は、階調処理、周波数強調処理、ダイナミックレンジ圧縮処理、補間処理があり、これらについては先に詳細に説明した。
例えば、拡大表示窓681の内側の領域と外側の領域とで異なる階調処理を施す。具体的には、予め拡大表示窓681の内側の領域と外側の領域とに対してそれぞれ異なる階調変換曲線に対応する階調処理ルックアップテーブルを記憶させ、表示の際に各々の階調処理ルックアップテーブルを参照して得られた処理データを表示させる。その際に、拡大表示窓の内側の領域に対応する階調変換曲線のコントラストが、外側の領域に対応する階調変換曲線のコントラストよりも高いことが好ましい。
また、拡大表示窓の内側の領域に対応する階調変換曲線を予め定めておくかわりに、拡大表示窓が確定された時点で拡大表示窓内の画像データを統計的に解析し、その結果に基づいて階調変換曲線を作成するようにしてもよい。具体的には、拡大表示窓内の画像データの略最大値及び略最小値が所定の輝度で表示されるように階調変換曲線のコントラストを決定したり、拡大表示窓内の画像データの集積ヒストグラム値が所定の値になるような信号値を求めてその信号値が所定の輝度で表示されるように階調変換曲線を作成したり、あるいは拡大表示窓内の画像データのヒストグラムを計算して公知のヒストグラムイコライゼーション手法に基づく階調変換曲線を作成する。
また、拡大表示窓の内側の領域のみを白黒反転した階調で表示してもよい。
別の例として、拡大表示窓681の内側の領域と外側の領域とで異なる周波数強調処理を施す。例えば周波数強調処理として非鮮鋭マスク処理手法を用いる場合には、予め拡大表示窓の内側の領域と外側の領域とに対してそれぞれ異なるマスクサイズ及び強調係致を記憶させ、表示の際に各々のマスクサイズ及び強調係数を用いて計算された処理データを表示させる。周波数処哩として多重解像度法を用いる場合には、予め拡大表示窓の内側の領域と外側の領域とに対してそれぞれ異なる強調周波数調帯域及び強調係数を記憶させ、表示の際に各々の強調周波数帯域及び強調係数を用いて計算された処理データを表示させる。それらの際に、拡大表示窓の内側の領域に対応する強調係数が、外側の領域に対応する強調係数よりも大きいことが好ましい。また、拡大表示窓の内側の領域に対応する主要な強調周波数が、外側の領域に対応する主要な強調周波数よりも高くなるように周波数強調処理条件を定めることが好ましい。
別の例として、拡大表示窓681の内側の領域と外側の領域とで異なるダイナミックレンジ圧縮処理を施す。例えば、拡大表示窓の外側の領域のみにダイナミックレンジ圧縮処理を適用し、内側の領域にはダイナミックレンジ圧縮処理を適用しない。
さらに、補間処理に関しては、画像表示手段8に表示する際に、画像データのマトリックスサイズと表示領域のマトリックスサイズとが異なる場合には、補間処理が必要となる。補間処理としては、最近傍補間、直線補間、スプライン補間、キュービック・コンボリューション補間、ベル・スプライン補間等の公知の補間演算方法を用いることができる(IEEE Trans on Acoustics and Signal Processing,vol.ASSP=29,no.6,1981.IEEE Trans, on Medical Imaging .vol.M1−2,no3,1983,SPIE proc,M1−11,1988)。補間演算に用いられる補間関数の次数は、例えば最近傍補間では0次、直線補間では1次、スプライン補間、キュービック・コンボリュ−ション補間、ベル・スプライン補間等では3次であり、一般に高次の関数を用いるほど補間処理に伴う画像情報の劣化を小さくすることが可能になる。
このように画像処理は、階調処理、周波数強調処理、ダイナミックレンジ圧縮処理、補間処理等の画像処理を行なうことで、異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
また、拡大率に基づいて画像処理条件を決定する。一般に、同一画像でも拡大率が小さいほうが視覚的にコントラストが高く見える。このため、拡大率を大きくするとコントラストを高くし、また拡大率を大きくすると周波数強調処理の強調度を大きくし、拡大率を大きくすると補間処理の補間関数の次数を高くする。このように拡大率に基づいて画像処理条件を決定するから、拡大による画像乱れや情報の劣化が小さく異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
また、異常の種類に基づいて画像処理条件を決定する。このように異常の種類に基づいて画像処理条件を決定するから、異常の種類に応じて異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
具体的には、微小石灰化は腫癌陰影に比べて被写体コントラストが低いので、微小石灰化に対応する階調変換曲線のコントラストを腫癌陰影に対応する階調変換曲線のコントラストよりも高くする。また、微小石灰化は腫癌陰影に比べて高周波の構造を含むので、微小石灰化に対応する周波数強調処理の強調係数を腫癌陰影に対応する強調係数よりも大きくしたり、微小石灰化に対応する周波数強調処理の主要な強調周波数を腫癌陰影に対応する主要な強調周波数よりも高くする。
また、拡大表示窓681の大きさを、異常陰影候補のサイズに基づいて決定し、この例として腫瘤全体を表示できるサイズに設定し、また微小石灰化クラスタに含まれる微小石灰化陰影の全てを表示できるサイズに設定する。このように拡大表示窓681の大きさを、異常陰影候補のサイズに基づいて決定するから、異常陰影がより見やすくなる。
また、画像の拡大率を、画像の画素サイズ及び画像表示手段608の解像度に基づいて決定し、これにより画像の拡大によって画像が乱れることがなく異常陰影がより見やすくなる。
また、実物大の整数倍になるよう決定する。例えば、実物大に対する拡大率は、モニタサイズ/(モニタ解像度×入力画像の画素サイズ)により決めることができる。このように実物大の整数倍になるよう決定することで、従来のフィルムによる診断では画像は実物大なので、実物大またはその整数倍のサイズは診断医にとって直観的に理解しやすい。
また、画像の拡大率に関する情報を画像とともに表示すると、異常陰影の部位の特定や大きさ等の判断が容易で、異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
例えば、拡大率をモニタの画像表示領域以外の領域に数値で表示する。あるいは表示画像の辺縁部に数値で表示する。拡大率は、拡大表示窓の外側の拡大率と内側の拡大率の両方を示してもよい。また、ポインタが拡大表示窓の外側を指示している間は拡大表示窓の外側の拡大率を表示し、内側を指示している間は拡大表示窓の内側の拡大率を表示するように切り替えてもよい。
別の例として、拡大表示窓の内側の拡大率を、拡大表示窓681に隣接して数値で表示する。あるいは拡大表示窓681の辺縁部や、拡大表示窓681を囲む枠に重ねて表示する。また、拡大率を数値で示す以外に、拡大率に応じて大きさを変えた図形等のアイコンで示してもよい。
また、画像の画素サイズ及び画像表示手段608の解像度を用いて、実物大に対する拡大率に換算して表示する。このように実物大を基準にして換算して表示するからサイズを診断医にとって直観的に理解しやすい。
また、拡大表示窓681の位置、拡大表示窓681の大きさ、拡大表示窓681内の画像の拡大率、拡大表示窓681内の画像の画像処理条件のいずれかを変更するための拡大表示制御信号入力手段を有する。
この拡大表示制御信号入力手段は、画像出力信号入力手段603により構成される。また、拡大表示制御信号入力手段として、例えばマウス、キーボード、タッチパネル等が用いられる。例えば、マウスの移動に同期して拡大表示窓の位置をスクロールする。あるいはマウスの移動に同期して拡大表示窓内の拡大率を連続的に変化させる。あるいはマウスの移動に同期して階調処理条件を連続的に変化させる。具体的には、マウスの左右移動に同期して平均輝度を変倍させ、マウスの上下移動に同期してコントラストを変化させることにより、階調処理条件を自由かつ容易に調整できる。あるいは、マウスの移動に同期して周波数強調処理条件を連続的に変化させる。具体的には、マウスの左右移動に同期して非鮮鋭マスク処理のマスクサイズを変化させ、マウスの上下移動に同期して非鮮鋭マスク処理の強調係数を変化させることにより、周波数強調処理条件を自由かつ容易に調整できる。
拡大表示状態の変化は連続的である必要はなく、マウスボタンのクリック等に伴って段階的に変化する構成としてもよい。マウスボタンのクリックに伴って階調が自黒反転する構成としてもよい。また、拡大表示制御信号入力手段である画像出力制御信号入力手段603により種々の拡大表示条件が変更された後に、「確定」信号を送ることにより、最終的な拡大表示条件が画像データに対応付けられて画像記憶手段605に記憶されるようにしてもよい。
このように異常陰影の状態等に応じて拡大表示窓681の位置、拡大表示窓681の大きさ、拡大表示窓681内の画像の拡大率、拡大表示窓681内の画像の画像処理条件のいずれかを変更することで、異常陰影がより見やすくなり異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
また、異常陰影候補位置にマークを付加して表示する。このマークを付加する例として、例えば、拡大表示窓681が設定されている異常陰影候補以外の異常陰影候補にマークを付加する。現在設定されている拡大表示窓の次に、拡大表示窓681が設定される予定の異常陰影候補にマークを付加する。また、異常の種類毎または異常の確信度毎に異なる形状のマークを付加する。異常の種類毎または異常の確信度毎に異なる色のマークを付加する。異常の種類毎または異常の確信度毎に異なる大きさのマークを付加する。拡大表示窓が既に適用された異常陰影候補と、まだ適用されていない異常陰影候補とで互いに異なる色のマークを付加する等がある。このように異常陰影候補位置にマークを付加して表示するから、マークにより異常陰影をより見つけやすくなり異常陰影の検出を容易にかつ正確で、しかも迅速に行うことができる。
図26においては、マークを異常陰影候補と重ならない近傍に矢印マークとして表示しているが、それに限らず、図21、図22、図23に示すように異常陰影候補を囲む閉曲線マークとして表示してもよい。また、例えば画面上に設定したボタンマウスを用いて選択することにより、マークの表示と非表示とを切り替えられる構成としてもよい。
画像表示手段608に表示される画像は、そのまま、あるいは編集して画像プリント手段609によりフィルムまたは紙等にプリントできる。
この実施の形態のPCI画像診断支援装置の画像記憶手段605は、PCI放射線画像データを記憶する。異常陰影候補検出手段606は、PCI放射線画像データを解析することにより異常陰影候補を検出し、PCI放射線画像は通常撮影の画像よりも鮮明であるので、より精度が高く異常陰影を見つけることができる。画像表示手段608は、記憶されたPCI放射線画像データ及び検出された異常陰影候補を表示する。
次に、PCI画像診断支援装置のさらに他の実施の形態について説明する。
この実施の形態のPCI画像診断支援装置は、図27に示すように、図16乃至図26に示す実施の形態と同様に構成されるが、画像処理手段604は、減算処理手段604aと、大きさ位置合わせ処理手段604cとを有する。この減算処理手段604a及び大きさ位置合わせ処理手段604cは、図9に示す実施の形態の減算処理手段150a及び大きさ位置合わせ処理手段150cと同様に構成されるから説明を省略する。
PCI放射線画像は血管等の描出能に特に優れているので、例えば通常撮影画像との差分により病変などを抽出することが可能となる。結果として、診断支援の精度が向上する。
次に、PCI画像診断支援装置のさらに他の実施の形態について説明する。
この実施の形態のPCI画像診断支援装置は、図28に示すように、図16乃至図26に示す実施の形態と同様に構成されるが、画像処理手段604は、加算処理手段604bと、大きさ位置合わせ処理手段604cとを有する。この加算処理手段604b及び大きさ位置合わせ処理手段604cは、図15に示す実施の形態の減算処理手段150B及び大きさ位置合わせ処理手段150cと同様に構成されるから説明を省略するが、この実施の形態により鮮鋭性が高く、さらに画像の加算を行なうことによりノイズ成分の少ない粒状性が良い画像を得ることが可能となる。結果として、診断支援の精度が向上する。
さらに、PCI画像診断支援装置は、上述した減算処理手段604aと加算処理手段604bとを有するようにしても良く、より精度が高い診断支援が可能になる。
また、この発明は医用分野に限られたものではなく、例えば工業用の非破壊検査の分野においても応用することができる。