JP2008172277A - 固体電解コンデンサ - Google Patents

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勝憲 野上
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Abstract

【課題】耐電圧特性を向上させた固体電解コンデンサを提供する。
【解決手段】モノマー又はモノマー溶液を酸化剤で重合してなる導電性ポリマーを電解質とする巻回型の固体電解コンデンサにおいて、導電性ポリマーからなる固体電解質層が親水性の酸化剤を含み、モノマーと酸化剤のモル比を10:1〜10:20とする。このコンデンサを製造するには、陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にEDT又はEDT溶液を含浸し、さらに30〜50%の親水性の酸化剤を含浸して、20〜180℃、30分以上加熱し、両電極間にPEDTポリマー層を形成する。このコンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間に硬化時に吸湿性を有する樹脂を充填して、コンデンサ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成する。そして、電圧印加と加熱を同時に行い、再化成と樹脂硬化を同時に行う。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐電圧特性の向上を図るべく改良を施した巻回型の固体電解コンデンサに関するものである。
タンタルあるいはアルミニウム等のような弁作用を有する金属を利用した電解コンデンサは、陽極側対向電極としての弁作用金属を焼結体あるいはエッチング箔等の形状にして誘電体を拡面化することにより、小型で大きな容量を得ることができることから、広く一般に用いられている。特に、電解質に固体電解質を用いた固体電解コンデンサは、小型、大容量、低等価直列抵抗であることに加えて、チップ化しやすく、表面実装に適している等の特質を備えていることから、電子機器の小型化、高機能化、低コスト化に欠かせないものとなっている。
この種の固体電解コンデンサにおいて、小型、大容量用途としては、一般に、アルミニウム等の弁作用金属からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介在させて巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子に駆動用電解液を含浸し、アルミニウム等の金属製ケースや合成樹脂製のケースにコンデンサ素子を収納し、密閉した構造を有している。なお、陽極材料としては、アルミニウムを初めとしてタンタル、ニオブ、チタン等が使用され、陰極材料には、陽極材料と同種の金属が用いられる。
また、固体電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、二酸化マンガンや7、7、8、8−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体が知られているが、近年、電導度が高く、陽極電極の酸化皮膜層との密着性に優れた導電性ポリマーが固体電解質として着目されるようになった(特開平2−15611号等)。
このような導電性ポリマーを電解質として用いるコンデンサにおいて、導電性ポリマーを形成する方法には、電解重合法と化学酸化重合法とがある。この電解重合法においては、モノマーと支持電解質を含有する電解液中に、酸化皮膜を有する陽極体を浸漬し、電解反応によって酸化皮膜上にポリマーの重合、形成を行う。一方、化学酸化重合法においては、モノマーと、カチオン成分とアニオン成分を有する酸化剤を用い、酸化剤のカチオン成分の酸化作用によってポリマーの重合、形成を行う。
しかしながら、上記電解重合法においては、未反応のモノマーや支持電解質が酸化皮膜上に残留し、また、化学酸化重合法においても、未反応のモノマー、未反応の酸化剤及び酸化反応に関与した酸化剤の残余物が残留する。これらの残留物はコンデンサの寿命特性等に悪影響を及ぼすので、従来から、これらの残留物を水や有機溶媒で洗浄していた。
また、巻回型の電解コンデンサの場合は、コンデンサ素子内のポリマーの形成量を増大させるために、コンデンサ素子にモノマーと酸化剤を含浸してポリマーを形成した後、水洗し、さらにモノマーと酸化剤を含浸してポリマーを形成するという工程を数回繰り返すという方法が用いられている(特許文献1〜5)。
ところで、酸化皮膜の厚さに対して耐電圧を高くとることができるという理由から、小型化が図れる導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェン(以下、PEDTと記す)が注目されている。このPEDTを用いるコンデンサにおいては、製造上、化学酸化重合が有利であり、その製法は以下のようである。すなわち、EDT及び塩化第二鉄等の酸化剤の溶液を、有機プラスチック等からなる基体にスプレー等で塗布し、溶媒を蒸発させた後、加熱して重合反応を促進させる。その後に過剰の酸化剤を水で洗浄して、導電性のPEDTの膜を形成する(特許文献6,7)。
また、電解コンデンサとして形成する場合には、陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にEDT及び酸化剤溶液を含浸し、加熱して、両電極間にPEDTポリマー層を形成し、残留した酸化剤を洗浄除去する。なお、この状態では、コンデンサ素子内のポリマーの充填率は50%以下であり、静電容量は低く、ESRは高い。そこで、このコンデンサ素子内の空間にさらにPEDTを形成するために、再度、EDTと酸化剤溶液を含浸し、加熱してPEDTを形成し、洗浄するという操作を数回繰り返すことによって、PEDTの充填率を向上させる。そして、このコンデンサ素子を樹脂封止して固体電解コンデンサを形成する(特許文献8)。
特開昭63−197319号 特開昭63−253614号 特開昭64−49211号 特開平3−73509号 特開平3−198316号 特開平1−313521号 特開平2−15611号 特開平9−293639号
しかしながら、上記のような方法によって作製されたPEDTを用いた固体電解コンデンサは、PEDTの充填率が上昇するため、静電容量が上昇し、ESRは低減していくものの、耐電圧が低下し、漏れ電流が増大するという問題点があった。また、漏れ電流の高いコンデンサは、出荷検査時にデバッグを行う必要があり、製造効率が非常に悪くなっていた。
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、耐電圧特性を向上させた固体電解コンデンサを提供することにある。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、耐電圧特性を向上させることができる固体電解コンデンサについて鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至ったものである。すなわち、本発明の固体電解コンデンサは、モノマー又はモノマー溶液を酸化剤で重合してなる導電性ポリマーを電解質とする巻回型の固体電解コンデンサにおいて、前記導電性ポリマーからなる固体電解質層が親水性の酸化剤を含み、前記モノマーと酸化剤のモル比が、10:1〜10:20であることを特徴とする。
また、前記モノマーが3,4−エチレンジオキシチオフェンであること、前記酸化剤がパラトルエンスルホン酸第二鉄であること、及びホウ酸又はその塩、マンニット、リン酸二水素アンモニウムから選択された一種又は二種以上の添加剤を使用することも、本発明の一態様である。
本発明によれば、巻回型の固体電解コンデンサにおいて、その初期特性、寿命特性を従来と同等に維持しつつ、耐電圧特性及び漏れ電流特性を向上させることができる。さらに、重合反応が1回で済むので、使用するEDTの量が低減でき、原価率の低減及び製造工程の短縮が図れる。
本発明に係る巻回型の固体電解コンデンサの製造方法の一例について説明する。この製造方法は、本発明を適用したコンデンサ素子を外装ケースに収納したあと、コンデンサ素子の外周面に樹脂層を形成し、エージング(再化成)と樹脂硬化を同時に行うものである。
すなわち、陽極箔を陰極箔及びセパレータと共に巻回してコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子にEDT又はEDT溶液を含浸し、さらに30〜50%の親水性の酸化剤を含浸して、20〜180℃、30分以上加熱し、両電極間にPEDTポリマー層を形成する。その後、洗浄を行わずに、親水性の酸化剤を残した状態で、コンデンサ素子の表面に、素子重量に対して0.1〜2.0%の水分を付着させる。そして、このコンデンサ素子を、アルミニウム等からなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間に、硬化時に吸湿性を有する樹脂を充填して、コンデンサ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成する。そして、電圧印加と加熱を同時に行って、再化成と樹脂硬化を同時に行う。
なお、上記の製造方法に限らず、本発明を適用したコンデンサ素子を外装ケースに収納して、開口部を封止するだけで、コンデンサ素子の外周面に樹脂層を形成しない方法を用いることもできる。この場合、コンデンサ素子の表面に付着させた水分は樹脂層に吸収されないので、付着させる水分量は、上記の製造方法に比べて少なくて良く、その水分量は、素子重量に対して0.01〜1.0%が望ましい。
コンデンサ素子に含浸するEDTとしては、EDTモノマーを用いることができるが、EDTと揮発性溶媒とを1:1〜1:3の体積比で混合したモノマー溶液を用いることもできる。前記揮発性溶媒としては、ペンタン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類、アセトニトリル等の窒素化合物等を用いることができるが、なかでも、メタノール、エタノール、アセトン等が好ましい。
酸化剤としては親水性の酸化剤を用いることが必要である。その理由は以下の通りである。すなわち、通常、(a)酸化剤はカチオン成分とアニオン成分とから構成されており、(b)EDTモノマーが重合する際に、酸化剤のカチオン成分がポリマーから電子を受け取って+の価数が減少し、アニオン成分の一部が生成されたポリマーに電子供与的に接合して、ポリマーは導電性を有することができる。したがって、(c)反応後の残留物は、未反応の酸化剤、及び、価数の減少したカチオン成分とポリマーに接合しなかったアニオン成分からなることになる。そのため、本発明に用いられる酸化剤は、(b)のような働きをする酸化剤であって、(c)のような残留物が親水性であることが必要である。
親水性の酸化剤としては、例えば、パラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液、トルエンスルホン酸第二鉄の水溶液、トルエンスルホン酸第二鉄のメタノール溶液、トルエンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液、トルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液、トルエンスルホン酸第二鉄の変性アルコール溶液、ナフタレントリスルホン酸第二鉄のエタノール溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄のメタノール溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄のプロパノール溶液、ベンゼンスルホン酸第二鉄のエタノール溶液、ベンゼンスルホン酸第二鉄のメタノール溶液、フェノールスルホン酸第二鉄の水溶液、5−スルホイソフタル酸第二鉄の水溶液、スルホサリチル酸第二鉄のメタノール溶液、スルホ安息香酸第二鉄の水溶液、ドデシルベンゼンスルホン酸第二銅のメタノール溶液、ブチルナフタレントリフルホン酸第二鉄の水溶液、エチルベンゼンスルホン酸第二鉄の水溶液、ナフタレン2,7−ジスルホン酸第二鉄の水溶液等を用いることが望ましい。なかでも、パラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を用いることがより望ましい。この場合、ブタノールとパラトルエンスルホン酸第二鉄の比率は任意で良いが、30〜50%溶液が望ましい。
例えば、酸化剤としてパラトルエンスルホン酸第二鉄(FePTS)を用いた場合の作用は、以下の通りである。すなわち、FePTSの化学式は、Fe(PTS)3であって、Fe3+と(PTS-3からなる。そして、重合の際に、Fe3+はFe2+に変化し、(PTS-3のうちPTS-が電子供与的にポリマーに接合する。このようにFePTSは重合の酸化剤として作用する。さらに、反応後の残留物は未反応のFePTS及びFe2+と(PTS-2からなることになり、未反応のFePTS及びPTS-が親水性であるので、本発明の効果をもたらすことができる。
この場合、本発明においては、EDTと酸化剤溶液のモル比は10:1〜10:20の範囲とする。EDTの量がこの範囲より多くても少なくても、PEDTの生成量は低減し、静電容量が低下し、ESRは増大するからである。
コンデンサ素子の表面への水分の付着量は、樹脂層を形成する場合は、素子重量に対して0.1〜2.0%が望ましい。また、樹脂層を形成せず、コンデンサ素子を外装ケースに入れるだけの場合は、素子重量に対して0.01〜1.0%が望ましい。なお、水分の付着量がこの範囲より少ないと酸化皮膜の修復が十分ではなくなり、漏れ電流が増大し、場合によってはショートが発生する。反対に、この範囲を超えると、この水分がPEDTの劣化を促進し、静電容量が低下し、ESRは増大する。
また、コンデンサ素子の表面に水分を付着させる方法としては、水蒸気を満たした耐湿槽等にコンデンサ素子を放置し、コンデンサ素子の表面に水分を付着させた後、外装ケースに収納し、その後、コンデンサ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成する方法が望ましい。なお、耐湿槽としては、例えば恒温恒湿槽を用いることができ、その湿度は40〜95%、温度は20〜85℃、放置時間は10〜180分が望ましい。
コンデンサ素子の少なくとも外周面に形成される樹脂層としては、エポキシ樹脂を用いることが望ましい。エポキシ樹脂は、その硬化過程で吸湿する性質があるため、コンデンサ素子に付着した水分は、この硬化過程で樹脂内に取り込まれ、コンデンサ素子の表面には微量の水分が残留する。この微量の水分がコンデンサ素子内に浸透して、酸化皮膜の性能を良好に保ち、耐電圧特性、漏れ電流特性等を良好に保つと考えられる。さらに、高温寿命試験においては、水分が多いと特性を低下させることが知られており、再化成の後には水分量が低減することが望ましい。
これらの点に鑑み、本発明においては、重合反応に親水性の酸化剤を用い、残留した酸化剤を洗浄せずに、さらにコンデンサ表面に所定量の水分を付着させ、エポキシ樹脂層を形成した後、電圧印加と加熱を同時に行って、再化成と樹脂硬化を同時に行うこととしたものである。すなわち、本発明の樹脂層は、外装を目的とするものではなく、樹脂が硬化する際の吸湿性を利用して、固体電解質層の表面に一定量の水分を付着させる目的で形成されるものである。そして、電圧印加と加熱を同時に行って、樹脂硬化中に再化成を行うと、再化成時には水分を存在させ、再化成後には水分を低減させることができるものである。
再化成の電圧印加条件は、以下の通りである。まず、樹脂の本硬化温度より低く、且つ硬化可能な温度で、定格電圧の1/2以下の電圧を印加し、その後、定格電圧の1〜2倍の電圧を印加する。さらに、本硬化温度で、定格電圧の1〜2倍の電圧を印加すると好適である。
このような条件とした理由は、以下の通りである。すなわち、再化成開始時は、再化成の電流が多量に流れるので、定格電圧の1/2以下の電圧を印加し、電流値が低減してきた時点で、定格電圧の1〜2倍の電圧を印加する。この段階では、水分が存在するので、再化成が良好に進行し、水分は樹脂層に吸収されていく。したがって、再化成終了時には、水分は低減されている。続いて、樹脂の本硬化を行うが、この本硬化中乃至本硬化後に、電圧を印加すると、漏れ電流はさらに低減し、効果的である。
なお、樹脂層を形成する前に再化成を行っても、コンデンサ素子に存在する水分が蒸発してしまうため、再化成は良好に進行しなかった。
このような構成を有する本実施形態の効果は、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、コンデンサ素子内の陽極箔と陰極箔との間には、PEDTと酸化剤が混在した状態で存在する。そして、コンデンサの表面に付着させた水分は、親水性の酸化剤に浸透していき、陽極箔の誘電体酸化皮膜にまで到達することができる。したがって、電圧を印加して陽極酸化皮膜の再化成を行う際に、この水分によって陽極酸化反応を促進させることができるため、損傷した酸化皮膜の修復の効率を大幅に向上させることができる。その結果、耐電圧及び漏れ電流特性が向上すると考えられる。
さらに、コンデンサ素子の少なくとも外周面に樹脂層を形成した場合は、再化成後には、残留した水分は樹脂層に吸収されるため、水分が低減するので、高温寿命試験においても良好な結果が得られたと考えられる。なお、本発明においては、重合反応後のポリマーと酸化剤の残留状態が、水分の浸透に好適な状態になっており、固体電解質層の表面に付着させた水分が、陽極箔の誘電体酸化皮膜にまで到達し、再化成時にこの水分が有効に作用しているものと考えられる。
一方、後述するように、従来法において、酸化剤を洗浄除去した後に、本発明と同様にして水分を付着させても、耐電圧、漏れ電流特性は向上しなかった。これは、PEDTが疎水性なので、たとえ水分を付着させても、その水分がコンデンサ素子内へ浸透していかないためであると考えられる。
また、従来技術のように、重合反応の後で酸化剤を洗浄除去した場合には、この洗浄によって、酸化皮膜の表面に形成された微量なPEDTも除去されてしまう。これに対して、本発明においては、重合反応の後で酸化剤を洗浄除去しないので、酸化皮膜の表面に形成された微量なPEDTが残留し、さらに、これらのPEDTが酸化剤によって固定されて、電気的に接続した状態となるため、静電容量の向上、ESRの低減に作用すると考えられる。
本発明においては、本出願人が先に出願した特願平10−309817号に記載した発明を適用することにより、より優れた効果が得られることが判明した。すなわち、コンデンサ素子内に、ホウ酸又はその塩、マンニット、リン酸二水素アンモニウムから選択される1種又は2種以上の添加剤を存在させると、さらに、耐電圧、漏れ電流特性が向上することが判明した。
これらの添加剤をコンデンサ素子内に存在させる方法は、以下の通りである。すなわち、コンデンサ素子にEDTモノマー、酸化剤を含浸し、加熱して、両電極間にPEDTポリマー層を形成するが、この工程の前に、前記の添加剤を含有する水溶液に含浸して、乾燥する。この工程において、コンデンサ素子内に添加剤を存在させることができる。そして、この添加剤が酸化皮膜にも存在することになって、酸化皮膜の特性を向上させることにより、耐電圧特性が向上すると考えられる。
なお、上記の添加剤をコンデンサ素子内に存在させるのは、修復化成の工程でもよいし、PEDTポリマー層を形成する工程以降でも良い。すなわち、修復化成の化成液中に含有させても良いし、モノマー、酸化剤の中に含有させても良い。さらに、PEDTポリマー層を形成する工程の後、樹脂層を形成する前に、上記の添加剤を含む水溶液に含浸して、乾燥しても良い。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明に係る固体電解コンデンサは、以下の実施例1及び実施例2のように作成した。また、比較例1として、重合反応を1回行った後、残留する酸化剤を洗浄除去せず、水分を付着させない固体電解コンデンサを用い、比較例2として、重合反応を1回行った後、残留する酸化剤を洗浄除去し、水分を付着させた固体電解コンデンサを用い、比較例3として、重合反応を1回行った後、残留する酸化剤を洗浄除去し、水分を付着させない固体電解コンデンサを用いた。また、従来例として、重合反応を行った後、残留する酸化剤を洗浄除去する工程を2回行った固体電解コンデンサを用いた。
(実施例1)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して巻回して、素子形状が4φ×7Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子にEDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱して、PEDTからなる固体電解質層を形成した。続いて、洗浄を行うことなく、このコンデンサ素子を、湿度50%、30℃の恒温恒湿槽に60分間放置し、水分を付着させた。なお、この際の水分付着量は0.5mg(素子重量に対して、0.4%)であった。
そして、このコンデンサ素子を、アルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間にエポキシ樹脂を充填して、コンデンサ素子の外周面にエポキシ樹脂層を形成し、仮硬化中に、120℃で10Vを10分印加した後、35Vを100分印加した。その後、本硬化中に、160℃で35Vを180分印加した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は6.8μFである。
(実施例2)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して巻回して、素子形状が4φ×7Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子をホウ酸の5%水溶液に1分間浸漬し、80℃で2時間乾燥した。その後の工程は、実施例1と同様である。
(比較例1)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して巻回して、素子形状が4φ×7Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子にEDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱して、PEDTからなる固体電解質層を形成した。そして、このコンデンサ素子を、洗浄を行うことなく、水分を付着させずに、アルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間にエポキシ樹脂を充填して、コンデンサ素子の外周面にエポキシ樹脂層を形成し、樹脂硬化後、160℃で35Vを180分印加した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は6.8μFである。
(比較例2)
比較例1と同様にしてPEDTからなる固体電解質層を形成した。続いて、このコンデンサ素子を、室温で水に1時間浸漬し、残留した酸化剤を洗浄し、100℃、1時間加熱した。その後、実施例1と同様の方法で、このコンデンサ素子に水分を付着させた。そして、このコンデンサ素子を、アルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間にエポキシ樹脂を充填して、コンデンサ素子の外周面にエポキシ樹脂層を形成し、仮硬化中に、120℃で10Vを10分印加した後、35Vを100分印加した。その後、本硬化中に、160℃で35Vを180分印加した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は6.8μFである。
(比較例3)
比較例1と同様にしてPEDTからなる固体電解質層を形成した。続いて、このコンデンサ素子を、室温で水に1時間浸漬し、残留した酸化剤を洗浄し、100℃、1時間加熱した。その後、水分を付着させずに、アルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間にエポキシ樹脂を充填して、コンデンサ素子の外周面にエポキシ樹脂層を形成し、樹脂硬化後、160℃で35Vを180分印加した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は6.8μFである。
(従来例)
表面に酸化皮膜層が形成された陽極箔と陰極箔とを、セパレータを介して巻回して、素子形状が4φ×7Lのコンデンサ素子を形成した。そして、このコンデンサ素子にEDTモノマーを含浸し、さらに酸化剤溶液として40%のパラトルエンスルホン酸第二鉄のブタノール溶液を含浸して、100℃、1時間加熱して、PEDTからなる固体電解質層を形成した。続いて、このコンデンサ素子を、室温で水に1時間浸漬し、残留した酸化剤を洗浄し、100℃、1時間加熱した。そして、上記EDTモノマーを含浸する工程から、残留した酸化剤を洗浄し、加熱する工程を2回繰り返した。その後、水分を付着させずに、アルミニウムからなる有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースとコンデンサ素子との間にエポキシ樹脂を充填して、コンデンサ素子の外周面にエポキシ樹脂層を形成し、樹脂硬化後、160℃で35Vを180分印加した。なお、この固体電解コンデンサの定格電圧は25WV、定格容量は6.8μFである。
上記の方法により得られた実施例1、実施例2、比較例1乃至比較例3及び従来例の固体電解コンデンサの初期特性と、105℃1000時間、25V印加の高温寿命試験を行った結果を表1に示す。
Figure 2008172277
表1から明らかなように、初期特性において、重合を1回行い、残留した酸化剤を洗浄除去することなく、水分も付着させない比較例1では、30例中15例にショートが発生し、また、重合を1回行い、残留した酸化剤を洗浄した後、水分を付着させた比較例2では、30例中16例にショートが発生し、さらに、重合を1回行い、残留した酸化剤を洗浄した後、水分を付着させない比較例3では、30例中17例にショートが発生した。また、重合と洗浄を2回繰り返した従来例では、30例中20例にショートが発生しており、これら各比較例及び従来例は、定格25WV仕様に対しては耐電圧特性は十分ではなかった。一方、実施例1、2においては、漏れ電流特性(LC)は良好で、共にショートの発生もなく、定格25WV仕様を満足しており、従来例及び比較例1乃至比較例3と比べて耐電圧特性が向上した。また、高温寿命特性も良好に維持されていた。
次に、実施例1と比較例1について検討すると、両者は、水分の付着の有無及びエージングの方法が異なっている。しかし、比較例1においては、実施例1に比べて、30例中15例にショートが発生し、また、ESRも1.2倍となった。その理由は、水分を付着させず、樹脂硬化後にエージングを行った場合には、コンデンサ素子の外周面に形成されたエポキシ樹脂層に水分が吸収されてしまい、再化成に必要な水分が保持されていないためであると考えられる。
また、実施例1と比較例2について検討すると、両者は、洗浄の有無が異なっているにすぎない。しかし、比較例2においては、実施例1に比べて、30例中16例にショートが発生し、また、ESRも1.6倍となった。このように、比較例2において、残留した酸化剤を洗浄除去した後に、実施例1と同様にして水分を付着させても、耐電圧、漏れ電流特性が向上しなかった理由は、PEDTが疎水性なので、たとえ水分を付着させても、その水分がコンデンサ素子内へ浸透していかないためであると考えられる。
さらに、実施例1と比較例3について検討すると、両者は、洗浄の有無、水分付着の有無及びエージングの方法が異なっている。しかし、比較例3においては、実施例1に比べて、30例中17例にショートが発生し、また、ESRも1.7倍となった。このように、比較例3において、残留した酸化剤を洗浄除去した後に、水分を付着させず、樹脂硬化後にエージングを行った場合に、耐電圧、漏れ電流特性が向上しなかったのは、コンデンサ素子の外周面に形成されたエポキシ樹脂層に水分が吸収されてしまい、再化成に必要な水分が保持されていないためであると考えられる。また、比較例3は、従来例に比べて、静電容量は低く、ESRは高い。これは、重合反応、洗浄除去を1回しか行っていないので、PEDTの形成量が少ないことによるものと考えられる。
さらに、重合工程の前に、コンデンサ素子をホウ酸溶液に浸漬、乾燥した実施例2においては、この工程を行わない実施例1に比べて、漏れ電流特性は半分となった。このように、実施例2の方が実施例1より良好な効果が得られたのは、以下の理由によるものと考えられる。すなわち、最終製造工程のエージングにおいて、製造中に受けた酸化皮膜の損傷の修復を行うが、この際に、コンデンサ素子内に存在させたホウ酸等の添加剤が、エージング工程における修復作用を高めるため、耐電圧特性が向上するものと考えられる。
また、実施例1及び実施例2においては、重合反応は1回しか行っておらず、これらのコンデンサ素子内に存在するPEDTの量は従来法の1回の重合の場合と同等であるにもかかわらず、その静電容量はそれぞれ“6.8”、“6.7”となり、重合反応を2回行った従来例と同等の静電容量を得ることができた。さらに、実施例1及び実施例2においては、ESRはそれぞれ“50”、“40”となり、比較例が“60〜85”、従来例が“70”であったのに比べて大幅に低減された。その理由は、実施例1及び実施例2においては、重合反応の後で酸化剤を洗浄除去しないので、酸化皮膜の表面に形成された微量なPEDTが残留し、さらに、これらのPEDTが酸化剤によって固定されて、電気的に接続した状態となるため、静電容量が向上し、ESRが低減したと考えられる。
なお、従来、残留した酸化剤は寿命特性等に悪影響を与えると考えられていたが、理由は明らかではないが、本発明の構成においては、残留した親水性の酸化剤は寿命特性に悪影響を与えないことが判明した。

Claims (4)

  1. モノマー又はモノマー溶液を酸化剤で重合してなる導電性ポリマーを電解質とする巻回型の固体電解コンデンサにおいて、
    前記導電性ポリマーからなる固体電解質層が親水性の酸化剤を含み、
    前記モノマーと酸化剤のモル比が、10:1〜10:20であることを特徴とする固体電解コンデンサ。
  2. 前記モノマーが、3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項1に記載の固体電解コンデンサ。
  3. 前記酸化剤が、パラトルエンスルホン酸第二鉄であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の固体電解コンデンサ。
  4. 前記コンデンサ素子内に、ホウ酸又はその塩、マンニット、リン酸二水素アンモニウムから選択された一種又は二種以上の添加剤を存在させたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
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