以下、本発明の実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る無線通信装置の構成を図1、図5を参照して説明する。図1は第1の実施形態に係る無線通信装置の受信部のブロック図の一例であり、図5はIQインバランス補正部104の構成例を示している。
図1の無線通信装置はアンテナ98、増幅器99、直交復調部100、アナログローパスフィルタ101a、101b、A/D変換部102a、102b、デジタルローパスフィルタ103a、104b、IQインバランス補正部104、直並列変換部105、フーリエ変換部106、OFDM信号など、所定の変調信号を復調する復調部107、受信部のIQインバランスを推定するIQインバランス推定部108、制御部109、発信器110を含む。
アンテナ98で受信された直交変調信号は、増幅器99において、増幅され、受信レベルの補正等が行われた後、直交復調部100に出力される。ここで、アンテナ98および増幅器99は本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。また、図1には示していないが、受信した信号を周波数変換し、RF(Radio Frequency)信号をIF(Intermediate Frequency)信号に変換しても構わない。
直交復調部100は、発信器110から供給されるローカル信号を用いて、受信信号(直交変調信号)を直交復調し、I(In-Phase)チャネル信号とQ(Quadrature)チャネル信号とを抽出する。
直交復調部100は一般的な直交復調を行うが、本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。発信器110は、制御部109からの制御により、出力するローカル信号の周波数を切り替える機能を備える。発信器110は、この機能と、所望の周波数の信号を生成する機能とを備えていれば、どのような発信器でも構わない。
直交復調部100で直交復調された信号は高周波成分が含まれるため、Iチャネル信号・Qチャネル信号にそれぞれローパスフィルタ101a、101bを適用し、高周波成分を抑圧する。ローパスフィルタ101aと101bは、制御部109からの制御によって、通過させる信号帯域幅を切り替える機能を有する。このようにフィルタの帯域幅を切り替える理由は、後述する。ローパスフィルタ101a、101bはいかなる構成でもよく、本発明の要旨ではないため詳細な説明は省略する。
ローパスフィルタ101a、101bで高周波成分が抑圧されたIチャネルの信号とQチャネルの信号はそれぞれA/D変換部102a、102bでデジタル信号に変換される。このとき、A/D変換部102aと102bは信号帯域幅の2倍以上のサンプリングレートで信号をサンプリングする。2倍以上のサンプリングレートが必要な理由は、IQインバランスを推定する際の動作を説明するときに説明する。
A/D変換部はいかなる構成でもよく、本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
A/D変換部102a、102bでデジタル信号に変換されたIチャネルおよびQチャネルの信号にそれぞれデジタルローパスフィルタ103a、103bを適用する。ローパスフィルタ103aと103bには、制御部109からの制御によって、帯域幅を切り替えることが可能なフィルタを用いる。デジタルフィルタの場合、フィルタのタップ係数を切り替えることによってこのような機能は容易に実現可能である。なお、フィルタの帯域幅を切り替える理由は後述する。ローパスフィルタ103a、103bはどのようなフィルタを適用してもよい。FIR(Finite Impulse Response)フィルタでもよいし、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタでもよい。
以上の信号に対して、IQインバランス補正部104は、受信部で生じるIQインバランスの補正を行う。IQインバランス補正部104は、図5に示すように乗算部501a、501b、501c、501dと加算部502a、502bから構成され、Iチャネル信号とQチャネル信号を加重合成して出力する。加重合成の係数はIQインバランス推定部108で推定され、推定した値が乗算部501a、501b、501c、501dで乗算される係数として用いられる。なお、これらの係数の推定法については、IQインバランス推定の動作を説明する際に詳細に述べる。
図1では、A/D変換部102a、102bでデジタル信号に変換した信号に対して先にローパスフィルタ103a、103bを適用し、フィルタ通過後の信号に対してIQインバランス補正部104でIQインバランスの補正を適用しているが、IQインバランス補正部104でIQインバランスの補正を適用した後にローパスフィルタを適用してもよい。なお、アナログのローパスフィルタ101aと101bを適用することで、十分に高周波成分が抑圧されている場合には、デジタルフィルタ103aと103bは不要となる。
OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)信号を受信する場合、一般に、AGC(Auto Gain Control)を適用するための受信電力の測定、フレーム先頭の検出、OFDM信号を復調するためのFFT(Fast Fourier Transform)を適用する位置を求めるタイミング同期、送受信端末間のローカル周波数の差異を補正するためのAFC(Auto Frequency Control)、ダウンサンプリング、送信時にマルチパス遅延による符号間干渉を防ぐために挿入されるガードインターバルの除去などが適用される。ここでは、これらOFDM信号を受信する際に一般的に用いられる処理は、本発明の要旨ではないため、図1には図示しておらず、詳細な説明も省略する。
IQインバランス補正部104でIQインバランスを補正した結果得られたIチャネル信号及びQチャネル信号は、直並列変換部(S/P変換部)105でそれぞれ並列信号に変換される。直並列変換器105は、信号帯域幅と等しいサンプリングレートの信号を直並列変換する機能と、信号帯域幅の2倍のサンプリングレートの信号を直並列変換する機能とを備え、制御部109からの制御により、これら2つの機能を切り替える。直並列変換部105は、サンプリングレートが信号帯域幅に等しい信号の場合には、該信号を、送信されたOFDM信号の全サブキャリア数と同数の並列信号に変換し、サンプリングレートが信号帯域幅の2倍の信号の場合には、該信号を全サブキャリア数の2倍の並列信号に変換する。
このように、直並列変換部105が、制御部109からの制御により上記2種類の機能を切り替えて、2つのサンプリングレートの信号をそれぞれS/P変換する理由は、後述する。
直並列変換部105から出力された並列信号に対して、フーリエ変換部106は、離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform)あるいはFFT(Fast Fourier Transform)を適用し、時間領域における信号を周波数領域における信号に変換する。OFDM伝送では複数のサブキャリアを用いて信号が送信されており、DFTあるいはFFTを適用することによって各サブキャリアで送信された信号を抽出することができる。
フーリエ変換器106ではDFTを用いて演算してもFFTを用いて演算しても構わない。
フーリエ変換部106は送信されたOFDM信号の全サブキャリア数と同数のサンプル数の信号に対してDFTあるいはFFTを適用する機能と、2倍のサンプル数に対してDFTあるいはFFTを適用する機能とを備え、制御部109からの制御によって、これらの機能を切り替える。フーリエ変換部106の詳細は後述する。
復調部107は、周波数領域の信号に変換された信号に対して、サブキャリア毎に復調する。一般にOFDM伝送では、マルチパス遅延波が無視できない環境を想定しており,サブキャリア毎に伝搬路応答が異なる。そこで、同期検波を用いてOFDM信号を復調するためにはサブキャリア毎に伝搬路応答を推定する必要がある。なお、伝搬路推定は本発明の要旨では無く、いかなる手法を適用しても構わないので説明は省略する(図示せず)。
OFDM伝送では、一般に伝搬路変動に対する追従や周波数オフセットの補正、クロックオフセットの補正などを目的として、全てのサブキャリアでデータが送信されるのではなく、一部のサブキャリアで、受信側通信装置が既知のパイロット信号が送信される。受信側通信装置はこのパイロット信号を用いて、伝搬路変動、周波数オフセット、クロックオフセットの補正を行った後、復調を行う。これらの補正は本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
なお、図1には省略しているが、伝搬路推定部、上記補正部などが追加されていてもよい。
復調部107は、受信信号の硬判定値を出力したり、あるいは受信信号の軟判定尤度値を出力したり、あるいは両者を出力する。
復調部107の動作は、送信される信号と、受信処理の過程で復調の後に適用される復号方式によって異なる。例えば、伝搬路符号化が適用されていない場合や後段の復号部が硬判定復号部の場合は硬判定出力を行い、伝搬路符号化が適用されており、軟判定復号部が実装されている場合は軟判定出力を行う。なお、硬判定出力動作または軟判定出力動作については本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。また、復調部107での復調動作はどのような手段を用いても構わず、データが送信されているサブキャリアに対して復調が適用できればいかなる手段を用いても構わない。
次に、このような構成を有する受信装置において、IQインバランスを推定する際の動作及び補正する際の動作について、図15、16、17、21を用いて説明する。
まず、OFDM伝送において送信装置および受信装置のIQインバランスが受信信号に与える影響について説明する。
送信装置から送信されるOFDM信号は、デジタル信号をD/A(Digital to Analogue)変換部でアナログ信号に変換した後、直交変調することによって無線周波数の信号に変換して送信される。このとき、直交変調後のIチャネル信号とQチャネル信号の利得を同一に保つことが理想的であるが、アナログ回路の不完全性により実現は困難である。また、Iチャネル信号のD/A変換部とQチャネルのD/A変換部に個体差が生じると、Iチャネル信号とQチャネル信号に異なる利得が付加されたのと等価になる。また、直交変調部においてIチャネル信号とQチャネル信号を生成する際に、正確に90度の位相差を発生することが理想的であるが、実際には困難である。この結果、直交変調部の出力において、Iチャネル信号とQチャネル信号は振幅が異なり、位相差も90度からずれてしまう。
以上の現象は、図15のようにモデル化できる。図15において、ui(t)およびuq(t)はIチャネル信号とQチャネル信号で送信するベースバンド信号をそれぞれ表している。乗算部1505a、1505bはこれらのベースバンド信号に対して、キャリア信号をそれぞれ乗算する。図15では、先に説明したようにD/A変換部の個体差を含めたIチャネル信号とQチャネル信号の利得の差を、Iチャネル信号とQチャネル信号とにそれぞれ異なる利得Gi (t)とGq (t)を乗算することによって表現している。また、図15では、先に説明したIチャネル信号とQチャネル信号との位相差が90度にならない現象をQチャネルに位相がθ(t)ずれた正弦波を乗算することによって表現している。
この結果、無線送信装置の出力は次式(1)で表される。
ただし、fはキャリア周波数を表している。以上の信号を等価低域系で行列表記すると、次式(2)のように表すことができる。
ただし、m
i(t)、m
q(t)はそれぞれIチャネル、Qチャネルの送信信号を表し、IQインバランスの影響を考慮した等価低域系の複素送信信号
m(t)=m
i(t)+jm
q(t) (ただし、j
2=−1)
は次式(3)、(4)、(5)、(6)で表すことができる。
このように、送信信号u(t)の複素共役u*(t)を用いることによって、IQインバランスの影響で直交性が崩れた環境下においても信号を複素表記することができる。なお、式(3)から明らかなように、IQインバランスの影響で送信信号はα(t)の歪みが生じるだけでなく、複素共役信号u*(t)が不要放射されていることがわかる。後述するようにこの複素共役信号が干渉となり、OFDM伝送の性能を制限してしまう(例えば、式(19)〜式(21))。
次に、受信装置におけるIQインバランスについて考える。受信装置では、直交復調部100と発信器110を用いて、受信信号に位相が90度異なる二つの正弦波をそれぞれ乗算し、ローパスフィルタ101a、101bをそれぞれ適用することによってIチャネル信号とQチャネル信号を得る。
しかし、送信装置の場合と同様に、90度の位相差を正確に発生させることが理想的であるが、実際には困難である。また、フィルタの利得やA/D(Analog to Digital)変換器の個体差によってIチャネル信号とQチャネル信号の利得も一般に異なってしまう。以上の結果生じるIQインバランスを直交復調部100の不完全性でモデル化した図が、図16である。
図16において、帯域信号を、
y
i(t)cos(2πft)−y
q(t)sin(2πft)
とおくと、
直交復調部100から出力されるIチャネル信号r
i(t)とQチャネル信号r
q(t)は次式(7)で表すことができる。
よって、IQインバランスの影響を考慮した等価低域系の受信信号
r(t)=r
i(t)+jr
q(t)
は次式(8)、(9)、(10)、(11)で表すことができる。
このように、受信装置においても送信装置と同様に直交性が崩れた環境下における等価低域系信号を複素表記することができる。また、無線送信装置と同様に無線受信装置においても、IQインバランスの影響で受信信号に式(10)で示されるα(r)の歪みが生じるだけでなく式(8)で示されるように複素共役信号y*(t)が付加されることがわかる。
次に、送信装置、受信装置間のマルチパス伝搬路の影響について説明する。
伝搬路のパス数をL、各パスの遅延時間をτ
1、各パスの複素振幅をh
1とおくと、受信信号y(t)は次式(12)で表すことができる。
式(12)に式(3)で示される送信装置の歪みの影響を加えると、次式(13)のように表される。
さらに、式(8)で示される受信装置のIQインバランスの影響を加えることにより、マルチパス伝搬環境下におけるIQインバランスの影響を次式(14)、(15)、(16)で表すことができる。
式(14)より、送信装置や受信装置の歪みを示したときと同様に、伝搬路応答の影響を加味してもIQインバランスの影響は送信信号u(t)とu*(t)の線形和で表せることがわかる。
最後にOFDM伝送を行う場合にIQインバランスが与える影響について説明する。
OFDM伝送の場合、式(14)で表される受信信号をフーリエ変換し、周波数領域の信号に変換した後、復調を行う。フーリエ変換の時間移動則および複素共役信号のフーリエ変換には、次式(17)、(18)の関係がなりたつ。
よって、式(14)、(17)、(18)からk番目のサブキャリアで受信するmシンボル目の信号x
k(m)は、次式(19)、(20)、(21)のように表すことができる。
ここで、hk、h-kは、IQインバランスの影響を含まないk番目、−k番目のサブキャリアの伝搬路応答をそれぞれ表す。Δfは隣接するサブキャリアとの周波数間隔を表す。また、sk(m)、s-k(m)は、k番目、−k番目のサブキャリアで送信したmシンボル目の変調信号をそれぞれ表している。
以上説明したように、OFDM伝送において、無線通信装置にIQインバランスが生じると、受信信号に、中心周波数を軸として対称な位置にあるサブキャリアの信号が干渉として含まれることがわかる。以上の現象は−k番目のサブキャリアでも同様に発生し、−k番目のサブキャリアの受信信号にはk番目のサブキャリアの信号が干渉信号として含まれる。
このように、受信信号に干渉信号が含まれると通信品質が制限され、特に高次の多値変調方式を用いて通信を行う場合には大きな問題となる。
本実施形態の受信装置は、IQインバランスを推定して補正係数wii、wiq、wqi、wqqを計算し、図5のIQインバランス補正部104で補正を行う。以下、図21に示すフローチャートに従って、図1の受信装置の処理動作を説明する。
補正係数を求めるために、IQインバランスによるひずみを推定する場合(図21のステップS100)、ステップS101へ進み、まず制御部109が制御信号を送り、発信器110で生成されるローカル信号の周波数を、受信された送信信号の中心周波数よりもW/2Hz高くする(ステップS101)。ここで、Wは送信信号の信号帯域幅を表している。
以上のローカル信号を用いて直交復調部100で受信信号を直交復調し、Iチャネル信号とQチャネル信号を抽出する(ステップS102)。
この結果、受信信号は高周波成分とベースバンド信号が存在するため、ローパスフィルタ101a、101bで高周波成分を抑圧することによって、IチャネルとQチャネルのベースバンド信号が得られる。このとき、複素受信信号の周波数スペクトルは、図12に示すように下側波帯のみ成分を持つようになる。よって、制御部109は制御信号を送り、ローパスフィルタ101a、101bの、片側帯域幅(通過帯域)をW/2からWに変更する(ステップS103)。この結果得られるIQインバランスの影響については、後ほどフーリエ変換出力について説明する際に詳細に述べる。
アナログローパスフィルタ101a、101bを通過した信号は、A/D変換器102a、102bでデジタル信号に変換される。ここで、受信信号の周波数スペクトルは、図12のように表されるため、A/D変換は、信号帯域幅Wの2倍以上のサンプリングレートでサンプリングする必要がある。
また、図1のようにA/D変換後にデジタルフィルタを適用する場合、2Wの2倍以上のサンプリングレートでサンプリングする必要がある。よって、制御部109は、制御信号を送信し、A/D変換部102a、102bでのサンプリングレートを4W以上に設定する(S104)。
デジタルフィルタの帯域幅も信号帯域幅の2倍の信号を通過させる必要があるため、制御部109は、制御信号を送信し、ローパスフィルタ103a、103bのタップ係数を2W以上の信号を通過させるフィルタのタップ係数に切り替える(ステップS105)。
IQインバランスの補正係数が既に推定されており、推定された補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う場合は、ローパスフィルタ103a、103b通過後の信号に対し、図5に示した構成のIQインバランス補正部104において、IQインバランスの補正を行う。しかし、補正係数が推定されておらず、IQインバランスによるひずみを推定する場合(IQインバランス推定モードの場合)は、IQインバランス補正部104によるIQインバランス補正処理をスキップする。
または、次式(22)に示すように補正係数の初期値を設定しておくことにより、IQインバランス補正をスキップした場合と等価の信号を出力する。
直並列変換器105は、ローパスフィルタ103a、103b通過後の信号、あるいは、補正係数が式(22)に示した初期値に設定されているIQインバランス補正部104を通過した後の信号を直並列変換し、フーリエ変換を適用するための並列信号を生成する(ステップS106)。ここで、IQインバランスを推定する場合は、信号スペクトルが図12に示されるように周波数変換されているため、信号帯域幅Wの2倍のサンプリングレート(2W)の信号を並列信号に変換する。また、送信されたOFDM信号のサブキャリア数がガードバンドや中心周波数などの通信に用いないサブキャリアも含めてNの場合、直並列変換後の並列数が2Nになるように変換を行う。
以上の直並列変換された信号をフーリエ変換器106でフーリエ変換(離散フーリエ変換あるいは高速フーリエ変換)する(ステップS107)。受信するOFDM信号の全サブキャリア数がNであるため、通常は、Nサンプルの信号に対して離散フーリエ変換/高速フーリエ変換を適用するが、IQインバランスによるひずみ成分を推定する場合は、2Nサンプル数の信号を離散フーリエ変換/高速フーリエ変換する。
この結果、発信器110の周波数がW/2高く設定されており、A/D変換やフィルタも2倍の帯域幅の信号に合わせて動作しているため、図12に示すように、フーリエ変換(離散フーリエ変換/高速フーリエ変換)後の信号は負のサブキャリアに集中することになる。
ここで、フーリエ変換後の信号について説明する。
送信信号および受信信号がIQインバランスの影響でそれぞれ式(3)、式(8)のように表せることは前述したとおりである。しかし、マルチパス伝搬路を介したOFDM信号が式(19)のように表せるのは、送信端末におけるローカル周波数と受信端末におけるローカル周波数が等しい場合であり、上述したように、受信端末のローカル周波数をW/2高くしている場合は式(19)の関係は成立しない。
図17は、本実施形態において、送信端末と受信端末にIQインバランスが生じる原理を説明するための図である。式(19)では、−k番目のサブキャリアの受信信号に、k番目のサブキャリアの受信信号が干渉することを表しているが、発信器のローカル周波数をずらすことによって、k番目のサブキャリアでは信号が送信されていないことになる。その結果、k番目のサブキャリアからの干渉は存在しない。
一方、送信装置のIQインバランスによる干渉は生じるため、−k番目のサブキャリアには、−N+k番目のサブキャリアで送信した信号が干渉することになる。また、k番目のサブキャリアの受信信号には、−k番目のサブキャリアの受信信号が干渉するため、k番目のサブキャリアでは、−k番目のサブキャリアと−N+k番目のサブキャリアで送信した信号が受信される。
以上の結果、−k番目のサブキャリアの受信信号x
(-k)(m)とk番目のサブキャリアの受信信号x
(k)(m)は次式(23)(24)で表すことができる。
次に、ステップS108に進み、フーリエ変換後の周波数領域に変換された信号を用いて、IQインバランス推定部108が、IQインバランスを補正する補正係数を推定する(計算する)。一方、OFDM伝送の場合、復調部107は、フーリエ変換部106から出力された周波数領域の信号を復調する(ステップS109)。
ここで、IQインバランス推定部108におけるIQインバランスを補正する補正係数の推定方法について説明する。
図5に示すような構成のIQインバランス補正部104の場合、次式を満たす補正係数wii,wiq,wqi,wqqを求めればよい。
なお、α
(r)とβ
(r)は式(10)、式(11)で表すことができるため、次式の関係を満たす。
ここで、式(8)、式(30)を、式(25)、式(26)に代入することによって次式を得る。
式(31)、式(32)は、式(25)、式(26)を満たさなければならないため、IQインバランス補正係数は次式を満たす必要がある。
以上の結果から、IQインバランス補正係数は次式のように表すことができる。
よって、α(r)とβ(r)を推定することができれば、IQインバランスを補正する係数を推定できることがわかる。
次に、α(r)とβ(r)の推定法について説明する。
式(23)、式(24)で表される−k番目のサブキャリアの受信信号とk番目のサブキャリアの受信信号を用いて、−k番目のサブキャリアの受信信号を第1の要素とし、k番目のサブキャリアの受信信号の複素共役信号を第2の要素とする、次式で表される受信ベクトルを定義する。
式(39)において、a
k(m)は、サブキャリアおよび送信信号に依存する変数であるが、α
(r)とβ
(r)はサブキャリアに依存しない。そこで、次式のように複数のサブキャリア、複数のシンボルを用いて相関行列を求める。
ただし、雑音とIQインバランスおよび送信信号の相関を「0」とした。このとき、受信側で未知の情報シンボルや、伝搬路推定用の既知信号などの少なくとも1つのシンボルを用いて、式(41)から相関行列を計算する。
次に、式(41)の相関行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを求める。ここで、固有ベクトルは次式の関係を満たす。
式(44)から、当該固有ベクトルの第1要素e
1はα
(r)に、第2要素e
2はβ
(r)に比例することがわかる。また、式(10)と式(11)を用いると、α
(r)とβ
(r)は次式のように表すことができる。
すなわち、α(r)とβ(r)は、α(r)とβ(r)*の比を用いて表すことができる。
また、β
(r)*とα
(r)の比は、式(44)の固有ベクトルの第1要素e
1と第2要素e
2の比から求めることができる。
以上説明したように、−k番目のサブキャリアで受信した信号と、k番目のサブキャリアで受信した信号の複素共役信号とを要素とするベクトルの相関行列を、複数のサブキャリア、複数のシンボルにわたって計算し、最大固有値に対応する固有ベクトルを求めることによって(式(35)〜式(38)、式(45)〜式(47)にしたがって計算することにより)、図5に示したIQインバランス補正部104の各係数を求める。
IQインバランス推定モードの場合には(ステップS110)、IQインバランス推定部108で推定されたIQインバランス補正係数は、IQインバランス補正部104に設定される(ステップS111)。その後、ローカル周波数を送信信号の中心周波数に設定(ステップS112)し、無線通信装置が信号受信モードに移行した場合には、IQインバランス補正部104に設定された上記補正係数を用いてIQインバランスの補正が行われる。
なお、式(37)に示したように、Qチャネル信号に乗算し、Iチャネル信号に付加する信号の係数wqiは「0」となる。従って、IQインバランス補正部104は、図5の乗算部501c及び加算部502aを含まない、図6に示すような構成でもよい。さらに、次式(49)〜(51)を満たすようにwii、wiq、wqqを規格化してもよい。この場合、wqqが「1」になるように規格化することにより、IQインバランス補正部104は、図7に示すように、加算部502b、乗算部501a、501bのみを含む構成となる。
このように、ローカル周波数をW/2高くすることによって、受信装置のIQインバランスを補正する係数を求めることができる。
上述のIQインバランスの推定を行わない場合、すなわち、後述する通常の信号受信モードの場合には、(a1)ローカル信号の周波数は、受信された送信信号の中心周波数(a2)アナログローパスフィルタ101a、101bの通過帯域幅はW(受信信号の信号帯域)/2、カットオフ周波数は該中心周波数、(a3)A/D変換部102a、102bのサンプリング周波数は2W、(a4)デジタルローパスフィルタ103a、103bのカットオフ周波数はW/2、(a5)S/P変換部106での並列数はN(例えばOFDMの場合には、Nはサブキャリの数)である。
しかし、上述のIQインバランス推定モードでは、(b1)ローカル信号の周波数は、受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高い周波数、(a2)アナログローパスフィルタ101a、101bのカットオフ周波数はW、(a3)A/D変換部102a、102bのサンプリング周波数は4W、(a4)デジタルローパスフィルタ103a、103bのカットオフ周波数はW、(a5)S/P変換部106での並列数は2Nとなっている。
上述のIQインバランス推定モードの設定のままで、信号を受信することも可能である。この場合、受信信号は全て下測波帯に含まれるため、通常のOFDM信号の復調とは異なり、下測波帯のサブキャリアのみを用いて復調することによって、IQインバランスによるひずみを推定しながら受信した信号を復調することができる。このとき、送信装置は受信装置にとって上測波帯となるサブキャリアで信号を送信していないため、信号を復調する際に受信装置のIQインバランスによるサブキャリア間干渉を受けずに信号を復調することができる。
次に、以上のようにして推定された(計算された)IQインバランス補正係数を用いて、図1の無線通信装置がIQインバランスを補正し、受信を行う場合(無線通信装置が信号受信モードの場合)の手順について説明する。
信号受信モードの場合には(ステップS100)、ステップS201へ進む。
一方、IQインバランス補正係数を求める際は、発信器110が生成するローカル信号の周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定していた。しかし、上述したように補正係数が既に設定されている場合は、従来の一般的な装置と同様に、発信器110が生成するローカル信号の周波数は送信信号の中心周波数に合わせて受信を行う。
直交復調部100は、アンテナ98、増幅器99を介して受信された信号を、受信された送信信号の中心周波数と同じ周波数のローカル信号を用いて直交復調する(ステップS201)。この場合、周波数スペクトルは、図12のように下測波帯のみに信号が集中するのではなく、信号帯域の中心に中心周波数が存在する。従って、一般的な受信装置と同様に、アナログフィルタ101aと101bのカットオフ周波数をW/2に設定する(ステップS202)。この結果、直交復調によって生じる高周波成分が抑圧され、所望信号のベースバンド信号のみが抽出される。
A/D変換部102a、102bは、アナログフィルタ101a、101bを通過した信号をデジタル信号に変換する。IQインバランスを推定する際はA/D変換部102a、102bのサンプリングレートを2W以上に設定していたが、ローカル信号の中心周波数を受信された送信信号の中心周波数に合わせている場合には、サンプリングレートはW以上に設定する。なお、A/D変換後にデジタルフィルタを適用するため、A/D変換部102a、102bのサンプリングレートを2Wに設定し、アナログフィルタ101a、101bから出力された信号をデジタル信号に変換する(ステップS203)。
A/D変換後に適用するデジタルローパスフィルタ103a、103bも通過させる信号帯域幅はWで十分である。従って、デジタルローパスフィルタ103a、103bのカットオフ周波数をIQインバランス推定モード時のWからW/2に変更し、A/D変換後の信号を通過させる(ステップS204)。
なお、ここでフィルタのカットオフ周波数を正確にW/2に設定する必要はない。帯域幅Wの信号を通過させ、帯域外の信号を抑圧するのに十分であればフィルタの帯域幅を若干広くしても構わないし、若干狭くしても構わない。
次に、IQインバランス補正部104は、デジタルフィルタ103a、103bが適用された後の信号に対し、IQインバランスの補正を行う(ステップS205)。IQインバランス補正のために用いる補正係数は、IQインバランス推定部108で計算された補正係数を用いる。IQインバランス補正部104が図5に示したような構成の場合は、式(25)、式(26)に示したように、Iチャネルの信号とQチャネルの信号を加重合成することにより補正を行う。なお、IQインバランス補正部104が図6に示したような構成の場合は、式(52)に従い補正を行う。IQインバランス補正部104が図7に示したような構成の場合は、式(53)に従って補正を行う。
IQインバランスを補正した後の信号は、フーリエ変換を適用するために直並列変換部105で並列信号に変換される。IQインバランスを推定する場合は信号の帯域幅が2Wだったため、サンプリングレート2Wで並列信号に変換した。しかし、ローカル信号の周波数を受信された送信信号の中心周波数に合わせている場合は、信号帯域幅はWになっているため、直並列変換を適用する信号のサンプリングレートはWに設定する。また、OFDM信号の全サブキャリア数はNであるため、直並列変換後の並列数がNになるように直並列変換する(ステップS206)。
フーリエ変換部106は、並列信号に変換された信号をフーリエ変換(離散フーリエ変換/高速フーリエ変換)し、周波数領域の信号に変換する(ステップS207)。ここで、IQインバランスを推定する場合はサンプル数2Nのフーリエ変換を適用していたが、発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数に合わせている場合はサンプル数Nのフーリエ変換を適用する。
復調部107は、フーリエ変換部106で周波数領域に変換された信号に対してサブキャリア毎に復調を行う(ステップS109)。このとき、IQインバランスを推定している場合は下側波帯のサブキャリアにのみ信号が含まれていたが、発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数に合わせている場合は、上側波帯と下側波帯それぞれに信号が存在する。従って、適用しているシステムの仕様に応じてデータ信号が送信されているサブキャリアの信号に対して復調を適用する。
なお、一般にOFDM伝送では伝搬路の変動や周波数オフセットや位相雑音、クロックオフセットによる位相誤差を補正するため、受信端末が既知の信号を一部のサブキャリアで送信している(ここでは当該サブキャリアをパイロットサブキャリアと呼ぶ)。よって、一般に復調の前にパイロットサブキャリアを用いて伝搬路の変動や位相誤差を推定し、補正を行ってから復調が適用されるがこれらの補正は本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
また、一般にOFDM伝送は誤り訂正が適用されているため、復調処理の後に復号が適用されるが、本発明の要旨ではないため詳細な説明は省略する。その他、無線通信では一般にフレーム検出やタイミング同期、周波数同期などが適用され、OFDM伝送ではガードインターバルを除去する処理が適用されるが、いずれも本発明の要旨ではないため、説明は省略した。
以上説明したように、信号受信モードでは、IQインバランス推定モードで計算された補正係数を用いて、IQインバランスを補正することができる。
IQインバランス補正係数の推定は、無線通信装置を製造したときのみ、上述のIQインバランスの推定手法を用いて(該無線通信装置を上述のIQインバランス推定モードに設定して)補正係数を算出し、該補正係数をROMに保存してもよい。この場合、該無線通信装置の利用時にはIQインバランスの推定は行わずに、IQインバランスの補正のみ行う。また、上述の無線通信装置の電源投入時に、上述のIQインバランスの推定を行い、その後は補正のみを行うようにしてもよいし、定期的にIQインバランスを推定し、補正係数を更新してもよい。IQインバランスの推定時に、発信器110のローカル周波数をずらして、IQインバランスおよび補正係数の推定を行い、得られた補正係数を用いてIQインバランスを補正するのであれば、いかなる頻度/タイミングでIQインバランスの推定を行ってもよい。
以上説明したように、上記第1の実施形態によれば、所望信号とIQインバランスによるイメージ信号(干渉信号)が同一のサブキャリアに重複しないように、受信部のローカル信号の周波数を所望信号の中心周波数からずらすことにより、無線通信装置の受信部のIQインバランスを高精度にしかも容易に推定することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。また、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要がなく、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。
IQインバランス推定モードと、信号受信モードとを切り替えることにより、IQインバランス推定モードで計算された補正係数を用いて補正を行いながら信号を受信する際の(信号受信モード時)消費電力を低減することができる。
また、上記第1の実施形態は、OFDM変調方式の採用された伝送システムで用いられる無線通信装置を例にとり説明したが、この場合に限らず、直交変調信号を送受信するのであれば、複数のサブキャリアに分割して伝送するマルチキャリア変調方式及び1つ(シングル)の搬送波(キャリア)を使用して無線通信を行うシングルキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置にも、前述同様にして適用可能である。
シングルキャリア変調方式に適用されている直交変調信号を受信する無線通信装置の場合のIQインバランス推定及び補正について、図23を参照して簡単に説明する。この場合も、上述のOFDM伝送の場合と同様、上述のIQインバランスの推定を行わない場合、すなわち、後述する通常の信号受信モードの場合には、(a1)ローカル信号の周波数は、受信された送信信号の中心周波数(a2)アナログローパスフィルタ101a、101bのカットオフ周波数はW(受信された送信信号の信号帯域)/2、(a3)A/D変換部102a、102bのサンプリング周波数は2W、(a4)デジタルローパスフィルタ103a、103bのカットオフ周波数はW、(a5)S/P変換部106での並列数はN(Nは2以上の任意の整数)である。また、上述のIQインバランス推定モードでは、(b1)ローカル信号の周波数は、受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高い周波数、(a2)アナログローパスフィルタ101a、101bのカットオフ周波数はW、(a3)A/D変換部102a、102bのサンプリング周波数は4W、(a4)デジタルローパスフィルタ103a、103bのカットオフ周波数はW、(a5)S/P変換部106での並列数は2Nである。
IQインバランスを推定する場合、上述のIQインバランス推定モードの設定あるいは構成で、アンテナ98及び増幅器99で受信された直交変調信号を、直交復調部100で直交復調する。そして、得られたIチャネル信号及びQチャネル信号は、ローパスフィルタ101a、101b、A/D変換部102a、102b、デジタルローパスフィルタ103a、103bを経た後、直並列変換及びフーリエ変換されて、周波数領域の信号(周波数成分)に変換される。この周波数領域の信号を用いて、IQインバランス推定部108は、前述同様にして、補正係数を算出する。算出された補正係数は、IQインバランス補正部104に設定される。
上述の信号受信モードに切り替えた後、算出された補正係数を用いたIQインバランスの補正を行いながら信号を受信する場合、アンテナ98及び増幅器部99で受信された直交変調信号を、直交復調部100で直交復調する。そして、得られたIチャネル信号及びQチャネル信号は、ローパスフィルタ101a、101b、A/D変換部102a、102b、デジタルローパスフィルタ103a、103bを経た後、IQインバランス補正部104で上記補正係数を用いたIQインバランスの補正がなされる。その後、復調部107は、IQインバランスを補正した後のIチャネル信号及びQチャネル信号に、所定の復調処理を施して、ユーザデータを得る。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る無線受信装置について説明する。
第2の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であり、IQインバランス補正部104の構成も図5〜図7のいずれかと同様である。さらに、IQインバランスを推定するために発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定し、A/D変換部、フィルタ、直並列変換部及びフーリエ変換部における帯域幅、サンプリングレートを通常の信号受信時の2倍に設定する点も第1の実施形態と同様である。
第2の実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、IQインバランスの推定法である。
第1の実施形態では−k番目のサブキャリアとk番目のサブキャリアで受信した信号を用いて式(39)のような受信ベクトルを定義し、式(41)のように相関行列を求め、当該行列の最大固有値に対応する固有ベクトルからIQインバランスを推定していた。一方、第2の実施形態では、次式(54)に示すような相関ベクトルr
xxを用いて推定を行う。
式(54)の計算は全てのサブキャリアを用いて計算しても構わないし、一部のサブキャリアのみを用いて計算しても構わない。また、推定に用いるOFDMシンボルもプリアンブル信号など受信装置が既知の信号を用いても構わないし、データ信号が送信されている情報シンボルを用いても構わないし、両者を用いて推定を行っても構わない。
なお、−k番目およびk番目のサブキャリアの受信信号は式(23)、式(24)を用いて表すことができるため、式(54)の相関ベクトルは次式(55)のように展開することができる。
すなわち、式(54)から、複数の−k番目のサブキャリアについて、−k番目のサブキャリアの受信信号の複素共役信号に該受信信号を乗じることにより、第1の相関値rxx(1)が得られ、−k番目のサブキャリアの受信信号の複素共役信号に、ローカル周波数を軸に各−k番目のサブキャリアと対称の位置にあるk番目のサブキャリアの複素共役信号を乗じることにより、第2の相関値rxx(2)が得られる。
第1の実施形態で相関行列を計算したときと同様に、送信信号およびIQインバランスによるひずみと雑音は無相関なため、複数のサブキャリアおよび複数のOFDMシンボルを用いて平均化がなされる場合、式(55)の右辺の第2項と第3項は無視できるようになる。従って、式(55)は、次式(56)のように書きなおすことができる。
式(45)、式(46)からα
(r)とβ
(r)*の比を求めることができれば、α
(r)とβ
(r)*をそれぞれ求めることができ、さらに式(35)〜式(38)に従い、IQインバランスの補正係数も求めることができる。本実施形態では、式(54)に従って求めた相関ベクトルから、次式(57)にしたがってα
(r)とβ
(r)*の比を求めることができる。
式(57)で得られたα(r)とβ(r)*の比を用いて、IQインバランスの補正係数を求める方法は第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。
このように、本実施形態の場合、相関行列の計算や固有分解を用いる必要がないため、少ない演算量でIQインバランスの補正係数を求めることができる。
以上のようにして求めた補正係数を用いてIQインバランスを補正する方法や信号を復調するまでの手順は第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
以上説明したように、上記第2の実施形態によれば、受信装置のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。また、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要がなく、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。さらに、IQインバランスを推定する際に相関行列を求める演算や固有解析を行う必要がないため、少ない演算量でIQインバランスを補正する係数を求めることができる。
なお、上記第2の実施形態で説明した手法は、図1に示したような、OFDM変調方式のようなマルチキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図1)のみならず、シングルキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図23)にも、同様に適用可能である。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第3の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であり、IQインバランス補正部104の構成も図5〜図7のいずれかと同様である。さらに、IQインバランスを推定するために発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定し、A/D変換部、フィルタ、直並列変換部及びフーリエ変換部における帯域幅、サンプリングレートを通常の信号受信時の2倍に設定する点も第1および第2の実施形態と同様である。
第3の実施形態において第1及び第2の実施形態と異なる点は、IQインバランスの推定法である。
第2の実施形態では、式(54)に従い相関ベクトルrxxをもとめ、式(57)のようにα(r)とβ(r)*の比を計算することによって、IQインバランスの補正係数を算出した。
ここで、式(56)に着目する。Aは信号電力に相当し、雑音電力に対して信号電力が十分大きい場合は、式(56)の右辺の第2項は無視できる。従って、相関ベクトルr
xxは次式(59)のように表すことができる。
よって、α
(r)とβ
(r)*の比は、次式(60)から求めることができる。
この結果、雑音電力を推定する必要が無くなる。
以上のようにして求めたα(r)とβ(r)*の比から、IQインバランス補正係数を求める方法は、第1および第2の実施形態と同様であり、説明は省略する。また、求めた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う方法や信号を復調するまでの手順も第1および第2の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
以上説明したように、上記第3の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。また、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要がなく、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。さらに、IQインバランスを推定する際に相関行列を求める演算や固有解析、雑音電力の推定を行う必要がないため、少ない演算量でIQインバランスを補正する係数を求めることができる。
なお、上記第3の実施形態で説明した手法は、図1に示したような、OFDM変調方式のようなマルチキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図1)のみならず、シングルキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図23)にも、同様に適用可能である。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第4の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であり、IQインバランス補正部104の構成も図5〜図7のいずれかと同様である。さらに、IQインバランスを推定するために発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定し、A/D変換部、フィルタ、直並列変換部及びフーリエ変換部における帯域幅、サンプリングレートを通常の信号受信時の2倍に設定する点も第1乃至第3の実施形態と同様である。
第4の実施形態において第1及至第3の実施形態と異なる点は、IQインバランスの推定法である。
第1及至第3の実施形態では、式(39)に示した受信ベクトルに従い推定を行っていた。
一方、受信電力が雑音電力よりも十分大きく、雑音が無視できる場合、式(23)と式(24)は次式(61)及び(62)のように書きなおすことができる。
よって、α
(r)とβ
(r)*の比は、次式(63)を用いて計算することができる。
ただし、Dは、平均化に用いたサブキャリア数×OFDMシンボル数を表している。
第4の実施形態によれば、複数の−k番目のサブキャリアの受信信号と、ローカル周波数を軸に各−k番目のサブキャリアと対称の位置にあるk番目のサブキャリアの受信信号の複素共役信号との比から、α(r)とβ(r)*の比を求めることができる。
以上のようにして得られたα(r)とβ(r)*の比から、IQインバランス補正の係数を求める方法は第1及至第3の実施形態と同様であり、説明は省略する。また、求めた補正係数を用いて補正を適用する方法や信号を復調するまでの手順も第1及至第3の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
以上説明したように、上記第4の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。また、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要がなく、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。さらに、IQインバランスを推定する際に相関行列を求める演算や固有解析、雑音電力の推定を行う必要がないため、少ない演算量でIQインバランスを補正する係数を求めることができる。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態に係わる無線通信装置について説明する。
第5の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1と同様であり、IQインバランス補正部104の構成も図5〜図7のいずれかと同様である。さらに、IQインバランスを推定するために発信器110のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定し、A/D変換部、フィルタ、直並列変換部及びフーリエ変換部における帯域幅、サンプリングレートを通常の信号受信時の2倍に設定する点も第1乃至第4の実施形態と同様である。
第5の実施形態が第1及至第4の実施形態と異なる点は、IQインバランスの推定に用いるサブキャリアである。
第1及至第4の実施形態では、IQインバランスの推定に用いるサブキャリアに特に制限を設けずに、正のサブキャリア番号のサブキャリアは負のサブキャリア番号のサブキャリア信号のイメージ信号(干渉信号)であることを利用して推定を行ってきた。
しかし、送信装置で適用されたフィルタが十分に高域の信号を抑圧できていない場合、図19に示すように送信信号のスペクトルが受信端末のローカル周波数よりも大きい正のサブキャリア番号のサブキャリアにもれこんでしまう。この結果、IQインバランスの推定のために発信器110の中心周波数をずらして受信を行う際に、正のサブキャリア番号のサブキャリアで受信される信号に送信信号のイメージ信号だけではなく送信信号の帯域外放射成分も含まれてしまい、IQインバランスによるひずみの推定精度が劣化してしまう。
また、隣接チャネルを他の端末が使っている場合、当該端末の信号の帯域外放射の影響を受けてしまい、受信端末の帯域両端近傍のサブキャリアも不要信号を受信してしまう。
第5の実施形態では、以上の問題を鑑み、IQインバランスの推定に用いるサブキャリアを送信信号の中心周波数近傍で、且つ受信端末のローカル周波数を軸として対称な位置にあるサブキャリアのみに制限する。以上の結果、推定に用いるサブキャリアは以下の4K個になる。
ここで、KはN/2より小さい任意の正の整数であり、帯域外放射の影響を考慮して設定する。
なお、その他の計算については第1及至第4の実施形態のいずれかの方法を用いて、α(r)とβ(r)*の比を求め、補正係数を求めればよく、詳細な説明は省略する。また、求めた補正係数を用いてIQインバランスを補正する方法や信号を復調するまでの手順も第1及至第4の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
以上説明したように、上記第5の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な無線通信装置を提供することができる。また、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要がなく、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。さらに、送信信号または隣接チャネルを用いた他の端末の帯域外放射の影響を考慮して推定に用いるサブキャリアを制限する事によって帯域外放射が無視できない環境下でも精度の高いIQインバランスの補正を実現し、高精度な受信装置を提供することができる。
なお、上記第5の実施形態で説明した手法は、図1に示したような、OFDM変調方式のようなマルチキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図1)のみならず、シングルキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図23)にも、同様に適用可能である。
(第6の実施形態)
第6の実施形態にかかる無線通信装置について説明する。
第6の実施形態では、図1の無線通信装置におけるIQインバランス推定モードで機能の固定された(IQインバランス推定モードと信号受信モードとを切り替えることのない)、無線通信装置について説明する。
第6の実施形態も、IQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を受信された送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定し、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを補正するための補正係数を計算する点は第1及至第5の実施形態と同様である。また、求めた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も第1及至第5の実施形態と同様である。
第6の実施形態において、第1及至第5の実施形態と異なる点は、アナログフィルタ、A/D変換部、デジタルフィルタ、直並列変換部、フーリエ変換部がIQインバランスを推定する場合もそうでない場合も同一の機能で動作する点である。
第6の実施形態に係る無線通信装置の受信部の構成を図2を参照して説明する。なお、図2において、図1と同一部分は同一符号を付している。
図2の無線通信装置は、直交復調部100、アナログローパスフィルタ201a、201b、A/D変換部202a、202b、デジタルローパスフィルタ203a、203b、IQインバランス補正部104、直並列変換部205、フーリエ変換部206、復調部107、IQインバランス推定部108、制御部109、発信器110を備えている。
直交復調器100で直交復調された信号は高周波成分が含まれるため、Iチャネル信号・Qチャネル信号にそれぞれローパスフィルタ201a、201bを適用し、高周波成分を抑圧する。ここで、ローパスフィルタ201aと201bは送信信号の帯域幅Wに対して2倍の帯域幅2Wの信号を通過させる必要があるため、カットオフ周波数はW以上である必要がある。
ローパスフィルタ201a、201bで高周波成分が抑圧されたIチャネル信号とQチャネルの信号は、それぞれA/D変換器202a、202bでデジタル信号に変換される。このとき、A/D変換器202aと202bは信号帯域幅Wの2倍以上のサンプリングレートで信号をサンプリングする。
A/D変換器202a、202bでデジタル信号に変換されたIチャネルおよびQチャネルの信号に対してそれぞれデジタルローパスフィルタ203a、203bを適用する。ここで、ローパスフィルタ203aと203bは送信された信号の帯域幅Wの2倍の帯域の信号を通過させる必要があるため、カットオフ周波数がW以上のフィルタを適用する。なお、ローパスフィルタ203a、203bは第1乃至第5の実施形態と同様にどのようなフィルタを適用しても構わない。FIRフィルタやIIRフィルタでもよい。
デジタルフィルタ203a、203bを適用したIチャネルおよびQチャネルの信号を用いてIQインバランス補正部104で補正を行う。ここで、IQインバランス補正部104は第1及至第5の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
IQインバランスが補正された信号は、直並列変換部205で並列信号に変換される。直並列変換部205は、送信信号の2倍のサンプリングレートの信号を直並列変換する機能を備えており、全サブキャリア数の2倍の並列信号に変換する。
フーリエ変換器206は、直並列変換部205で並列信号に変換された信号に対して、フーリエ変換(離散フーリエ変換/高速フーリエ変換)を適用する。ここで、フーリエ変換部206は、送信されたOFDM信号の全サブキャリア数の2倍のサンプル数に対してフーリエ変換(離散フーリエ変換/高速フーリエ変換)を適用する。
復調部107は、周波数領域に変換された信号を復調する。復調部107の動作は第1及至第5の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
次に、図2に示した構成の無線通信装置の受信部のIQインバランスを推定する際の動作と、推定した補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う際の動作について説明する。
まず、発信器110が発生するローカル信号の周波数(ローカル周波数)を第1及至第5の実施形態と同様に、送信される信号の中心周波数よりもてW/2高く設定する。このローカル周波数を用いて、直交復調器100で直交復調する。直交復調については第1及至第5の実施形態と同様であり、説明は省略する。
第1及至第5の実施形態では、IQインバランス推定時にアナログフィルタおよびデジタルフィルタのカットオフ周波数を通常の信号受信時のカットオフ周波数の2倍に設定していたが、第6の実施形態では、予め2倍のカットオフ周波数のフィルタが適用されている。また、第1及至第5の実施形態におけるA/D変換器102a、102b、直並列変換器105は、IQインバランス推定時に、通常の信号受信時のサンプリングレートの2倍のサンプリングレートで動作するように設定していたが、第6の実施形態におけるA/D変換器202a、202b、直並列変換部205は、予め2倍のサンプリングレートで動作するものが用いられている。直並列変換部205は、入力された信号を2Nの並列信号に変換する。さらに、フーリエ変換部106は、サンプル数2Nの信号を周波数領域に変換する。
このように、図2の構成は、図1と異なり、各構成部の機能を切り替える動作は含まれないものの、図2の構成は、IQインバランス推定モードにおける図1の無線通信装置の受信部の設定と同一である。
よって、第6の実施形態において、IQインバランスを推定する際は、第1及び第5の実施形態のうちのいずれかを適用することにより、受信部で発生したIQインバランスを補正するための補正係数を計算することができる。
次に、得られた補正係数を用いて、IQインバランスを補正する、信号受信動作について説明する。
発信器110は、第1及至第5の実施形態と同様に、ローカル周波数を、送信信号の中心周波数に設定し、直交復調器100で直交復調する。
以上の信号に対し、アナログローパスフィルタ201a、201bをそれぞれ適用する。このとき、第1及至第5の実施形態と異なり、アナログローパスフィルタ201a、201bのカットオフ周波数が信号受信モードのカットオフ周波数の2倍になっているため、フィルタ通過後の雑音電力は2倍になっている。また、通過帯域幅が広いため、隣接チャネルを用いて通信を行っている他の端末の信号が含まれる可能性がある。しかしながら、直交復調によって生じる高周波成分は抑圧することができるため、所望信号を抽出することは可能である。
以上のアナログフィルタ201a、201b通過後の各信号を、A/D変換部202a、202bでデジタル信号にそれぞれ変換する。このとき、第1及至第5の実施形態ではA/D変換部のサンプリングレートをIQインバランス推定時の半分のサンプリングレートに調整していたが、第6の実施形態ではIQインバランス推定時と同じサンプリングレートでA/D変換する。
A/D変換後に適用されるデジタルローパスフィルタ203a、203bについても、アナログフィルタ201a、201bと同様に、第1及至第5の実施形態のデジタルフィルタ103a、103bに比べ、カットオフ周波数が信号受信モードのカットオフ周波数の2倍になっている。この結果、アナログフィルタ201a、201bと同様に隣接チャネルの抑圧効果や雑音指数は劣化するが、所望信号を抽出することは可能である。
デジタルローパスフィルタ適用後の信号は、IQインバランス補正部104でIQインバランスの補正が施される。IQインバランス補正部104の動作については第1及至第5の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
その後、フーリエ変換を適用するために直並列変換部205で並列信号に変換する。本実施形態では、IQインバランスの補正係数を推定する場合と同様に、サンプリングレート2Wの信号に対し、直並列変換後の並列数が2Nになるように変換を行う。
並列信号に変換された信号は、フーリエ変換器206でフーリエ変換(離散フーリエ変換/高速フーリエ変換)し、周波数領域の信号に変換する。フーリエ変換についても第1及至第5の実施形態の信号受信モードと異なり、サンプル数2Nの信号に対して離散フーリエ変換を適用する。
復調部107は、フーリエ変換部206で周波数領域に変換された信号に対して、サブキャリア毎に復調を行う。このとき、IQインバランスを推定している場合は下側波帯のサブキャリアにのみ信号が含まれていたが、発信器110のローカル周波数を受信信号の中心周波数に合わせている場合は、上側波帯と下側波帯それぞれに信号が存在し、適用しているシステムの仕様に応じてデータ信号が送信されているサブキャリアの信号に対して復調を適用する。
さらに、アナログフィルタやデジタルフィルタのカットオフ周波数が2倍になっているため受信してしまった雑音成分や隣接チャネルの信号は、所望信号が含まれるサブキャリアではなく、帯域両端のサブキャリアに存在するため、フーリエ変換後の信号については、フィルタのカットオフ周波数が高いために生じる劣化の影響を受けない。よって、図2ではデジタルフィルタを適用しているが、第6の実施形態の場合、デジタルフィルタを適用しなくても構わない。
このように、第1及至第5の実施形態のように、図1の無線通信装置におけるIQインバランス推定モードの設定・構成のまま(IQインバランス推定モードと信号受信モードとを切り替えることなく)、IQインバランス補正係数を計算したり、得られた補正係数を用いたIQインバランスの補正を行った信号受信を実現することができる。この結果、図1の無線通信装置に比べ、簡単な構成で、第1乃至第5の実施形態と同様の効果が得られる。
上記第6の実施形態では、アナログローパスフィルタ201a、201b、A/D変換部202a、202b、デジタルローパスフィルタ203a、203b、直並列変換部205、フーリエ変換部206の機能を全て固定しているが、これら構成部のうちの一部の機能を固定し、その他の構成部については、第1及至第5の実施形態のように機能を切り替えて動作させても構わない。制御が困難な、A/D変換部やアナログローパスフィルタなどの機能を固定し、デジタルローパスフィルタや並直列変換部、離散フーリエ変換部は、IQインバランス推定時とその他の場合とで機能を切り替えて動作させてもよい。消費電力を削減するために、A/D変換部や離散フーリエ変換部、およびフーリエ変換部に付随する直並列変換部の機能は切り替えて動作させ、その他の構成部は切り替え制御を行わないようにしてもよい。用途に応じて、機能を切り替える構成部と、機能を固定して動作させる構成部とを組み合わせればよい。
以上説明したように、上記第6の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信装置を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムに適用することが可能である。さらに、IQインバランス推定時に必要な機能を組み合わせた構成により、IQインバランス推定時の制御が簡易になり、装置も簡易化される。
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第7の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数からずらし、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第6の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第7の実施形態において、第1及至第6の実施形態と異なる点は、IQインバランスを推定する際に発信器のローカル周波数を、送信信号の中心周波数よもW/2低く設定する点である。
第7の実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1、図2と同様である。
次に、本実施形態におけるIQインバランスを推定する動作について説明する。
本実施形態においてIQインバランスを推定する際は、まず、発信器110で生成するローカル信号の周波数を、受信する送信信号の中心周波数よりもW/2低く設定する。その後、第1乃至第6の実施形態と同様にして、直交復調、アナログローパスフィルタの適用、A/D変換、デジタルローパスフィルタの適用、直並列変換、フーリエ変換を適用する。
本実施形態においても、フーリエ変換して得られた周波数領域の信号を用いてIQインバランスを補正するための補正係数を計算する。ただし、第1及至第6の実施形態と異なり、発信器110のローカル周波数が、受信した送信信号の中心周波数よりもW/2低く設定されているため、周波数スペクトルは、図12に示したように下側波帯のサブキャリアに存在するのではなく、上側波帯のサブキャリアに存在することになる。また、無線通信装置の受信部のIQインバランスによって生じるイメージ信号(干渉信号)は、上側波帯のサブキャリアではなく、下側波帯のサブキャリアに発生する。よって、−k番目のサブキャリアの受信信号とk番目のサブキャリアの受信信号は式(23)、式(24)とは異なり、次式(65)及び(66)で表される。
また、−k番目のサブキャリアの受信信号とk番目のサブキャリアの受信信号を要素とする受信ベクトルも式(39)とは異なり、次式(67)のように定義する。
式(67)の受信ベクトルを用いて、IQインバランスの推定を行う。ここで、第1の実施形態で説明したIQインバランスの推定方法を用いる場合は、式(67)の相関行列を式(41)に従って計算し、当該行列の最大固有値に対応する固有ベクトルを用いて、式(47)に従い、α
(r)とβ
(r)*の比を計算する。
また、第2の実施形態で説明したIQインバランスの推定方法を用いる場合は、式(54)ではなく、式(67)の受信ベクトルを用いて次式(68)で定義する相関ベクトルを求める。
得られた相関ベクトルを用いて、式(57)にしたがって、α(r)とβ(r)*の比を計算する点は、第2の実施形態と同様である。
第3の実施形態で説明したIQインバランスの推定方法を用いる場合は、式(68)で得られた相関ベクトルを用いて、式(60)にしたがって、α
(r)とβ
(r)*の比を計算する。第4の実施形態で説明したIQインバランスの推定方法を用いる場合は、式(63)ではなく次式(69)を用いてα
(r)とβ
(r)*の比を計算する。
以上のようにして得られたα(r)とβ(r)*の比を用いて、式(35)〜式(38)、式(45)、式(46)に従い、IQインバランスの補正係数を計算する点は、どの推定方法を用いても共通である。
このように、発信器110のローカル周波数を低く設定する場合も第1及至第6の実施形態と同様な手法でIQインバランスの補正係数を求める事ができる。
また、得られた補正係数を用いてIQインバランス補正部104で補正を行い、OFDM信号を復調する手順は第1及至第5の実施形態、または第6の実施形態と同一であるため、説明は省略する。
以上説明したように、上記第7の施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信装置を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。
なお、上記第7の実施形態で説明した手法は、図1に示したような、OFDM変調方式のようなマルチキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図1)のみならず、シングルキャリア変調方式の伝送システムの無線通信装置(図23)にも、同様に適用可能である。
(第8の実施形態)
第8の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第8の実施形態においても、IQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数からずらし、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第7の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第8の実施形態において、第1及至第7の実施形態と異なる点は、IQインバランスを推定する際の発信器のローカル周波数を状況に応じて、送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定する場合とW/2低く設定する場合に切り替える点である。
第1乃至第7の実施形態では、発信器110で発生するローカル周波数を送信信号の中心周波数からずらすことによって、所望信号と受信部のIQインバランスによる干渉信号が干渉しないようにし、IQインバランスを推定する点に特徴がある。しかし、隣接チャネルを他の端末が利用している場合、本来IQインバランスによるイメージ信号(干渉信号)のみが存在して欲しいサブキャリアに、隣接チャネルの干渉が含まれ、IQインバランスの推定精度が劣化する場合がある。
例として、無線通信装置が利用しているチャネルよりも1つ高いチャネルを他の無線通信装置が利用している場合を考える。このとき、第1及至第6の実施形態のように発信器110のローカル周波数を、受信すべき送信信号の中心周波数よりもW/2高く設定してしまうと、前記一つ隣のチャネルを利用している無線通信装置の信号を上側波帯のサブキャリアで受信してしまう。この結果、所望信号とイメージ信号の比を正しく計算することが困難になり、IQインバランスの推定精度が劣化してしまう。
このとき、1つ低いチャネルが利用されていない場合は、第7の実施形態で説明したように、ローカル周波数をW/2低く設定することによって、1つ高いチャネルを利用している信号の干渉を防ぐことができる。逆に、1つ低いチャネルを他の無線通信装置が利用しており、高い方のチャネルは利用されていない場合は、ローカル周波数をW/2高く設定することによって干渉を防ぐ事ができる。
このように、隣接チャネルの利用の有無に応じて、発信器110のローカル周波数を変えることによって、IQインバランスの推定精度を高めることができる。
無線LANを高速化することを目的としたタスクグループであるIEEE802.11TGnに提案されたシステム(非特許文献、Joint Proposal: High throughput extension to the 802.11 Standard: PHY, IEEE P802.11-05/1102r04, Jan. 2006.およびJoint Proposal: High throughput estension to the 802.11 Standard: MAC, IEEE P802.11-05/1095r4, Jan. 2006.)では、信号帯域幅20MHzの信号と40MHzの信号のいずれかが送信される。このシステムでは、20MHzの信号を送信するときに用いられるチャネルをcontrol channel、40MHzの信号を送信するときにcontrol channelとともに用いられるチャネルをextension channelと呼ぶ。
上記システムに、本発明を適用する場合、信号帯域幅40MHzの信号を受信できるように無線通信装置を構成し、20MHzの信号を用いて第1及至第7の実施形態で示したように発信器110のローカル周波数を受信する20MHzの信号の中心周波数とは異なる周波数へずらして、IQインバランスの補正係数を求める。アナログフィルタやデジタルフィルタ、A/D変換部やフーリエ変換部などは、40MHzの信号を受信するために必要不可欠な機能を実装すれば、第1乃至第7の実施形態と同様の効果が得られる。
しかし、IQインバランスを推定する際にcontrol channelとextension channelが上側波帯と下側波帯に含まれるように発信器110のローカル周波数を設定してしまうと、40MHzの信号が送信されてきた場合、所望信号と、受信装置のIQインバランスによるイメージ信号(干渉信号)の比を推定することができなくなってしまう。また、control channelのみを用いて20MHzの信号が送信される場合も、送信装置が本発明における無線通信装置と同様に発信器のローカル周波数を中心からずらし、上側波帯または下側波帯のサブキャリアのみを用いて信号を送信すると、extension channelには受信部のIQインバランスによるイメージ信号だけではなく、送信端末のIQインバランスによるイメージ信号も含まれてしまうため、無線通信装置の受信部で生じているIQインバランスが推定できなくなってしまう。
以上の問題を鑑み、第8の実施形態では、control channelのみ上側波帯か下側波帯のいずれかに存在し、extension channelが帯域外に存在するように発信器110のローカル周波数を設定する。control channelとextension channelの位置はビーコンと呼ばれる信号で定期的に報知されるため、ビーコン信号を受信することによって認識することができる。
この結果、図18に示すように、control channelの信号と無線通信装置の受信部のIQインバランスによって生じるイメージ信号のみをフィルタで抽出することができ、40MHz信号が送信されている場合のextension channelの信号や送信端末のIQインバランスによるイメージを抑圧することができる。
また、上記のように制御し、干渉信号を避けるように発信器110が生成する周波数を制御しても、イメージ信号のみが生じて欲しいチャネルで他の端末が信号を送信してしまう場合がある。このような場合は、他の端末が一定期間信号を送信しないように制御信号を送信し、他の端末が当該チャネルを利用しない間に所望のチャネルで信号を送信させることによってIQインバランス補正係数を推定することができる。
このような制御信号の一例として、前述のシステムではRTS(Request To Send)やCTS−Self(Clear To Send-Self)があげられる。いずれも信号送信権を獲得するための制御信号であり、この信号を受信した端末は一定期間信号を送信することができなくなる。
例として、所望信号の中心周波数よりも発信器110が発生するローカル周波数をW/2高く設定し、下側波帯のサブキャリアに所望信号、上側波帯のサブキャリアで所望信号のイメージ信号を受信する場合を考える。このとき、無線通信装置は上側波帯のサブキャリアのみを用いてRTSまたはCTS−Selfを送信し、上側波帯で他の端末が一定期間信号を送信できなくする。
その後、下側波帯のサブキャリアを用いて、特定の端末に対してRTSを送信する。RTSを受信した端末は、CTSと呼ばれる信号を返信することになっているため、当該端末が送信するCTSを利用して、無線通信装置は受信部のIQインバランスを推定する。
このように、上側波帯が他の端末に使われている場合も、制御信号を利用することによって他の端末が一時的に信号を送信できないような状態を作り、下側波帯で送信された信号を利用してIQインバランスを補正する係数を推定することができる。
なお、IQインバランスの推定法やIQインバランスの補正および信号の復調は第1及至第6の実施形態のいずれかの手法を適用することによって実現可能なため、詳細な説明はここでは省略する。
以上説明したように、上記第8の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。また、隣接チャネルが利用されている場合でも当該チャネルを避けることが可能であり、高い精度でIQインバランスを補正することができる。その他、送信装置が2倍の帯域幅の信号を送信する場合でもIQインバランスの推定を行うことが可能であり、IQインバランスを補正し、高い精度でOFDM信号を復調する無線通信装置を提供することが可能になる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態に係る無線受信装置について説明する。
第9の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数とは異なる周波数に設定し、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第8の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第9の実施形態において、第1及至第8の実施形態と異なる点は、IQインバランスを推定する際の発信器のローカル周波数を、送信信号の中心周波数よりW/2ではなくWまたは−Wずらす点である。
第5の実施形態で、図19を用いて説明したように、送信端末で適用されるフィルタの特性次第で帯域外に信号が漏れこんでしまう。この結果、発信器110のローカル周波数を、送信信号の中心周波数からW/2ずらすだけでは、全てのサブキャリアを用いてIQインバランスの推定を行うことが困難であった。
そこで、第9の実施形態では、発信器110が発生するローカル周波数を、送信信号の中心周波数よりW高く設定する。その結果、図20に示すように、帯域外の漏れ込みがイメージ信号に与える影響が小さくなり、第5の実施形態の場合よりも多くのサブキャリアをIQインバランスの推定に適用することが可能になる。
しかし、より広帯域の信号処理が要求され、帯域幅3Wの信号を処理しなくてはならない。その結果、図1及び図2のA/D変換部は、第1及至第8の実施形態の1.5倍以上のサンプリングレートが要求される。さらに、図1及び図2のアナログローパスフィルタ、デジタルローパスフィルタも、第1及至第8の実施形態の1.5倍以上のカットオフ周波数のフィルタを適用する。
また、図1及び図2の直並列変換部は、サンプリングレート3Wの信号を並列数3Nに変換し、図1及び図2のフーリエ変換部は、サンプル数3Nの信号に対しフーリエ変換を適用する。
さらに、フーリエ変換部でFFTを適用するためには、サンプル数を2のべき乗にする必要があるため、A/D変換部を第1及至第8の実施形態の2倍のサンプリングレートで動作させ、直並列変換部をサンプリングレート4W、並列数4Nになるように動作させる。
このとき、第1の実施形態で示したように、IQインバランス推定モードと信号受信モードとで、各構成部の機能を切り替えて使用してもよい。第6の実施形態で説明したように、一部または全ての構成部の機能をIQインバランス推定モード時の機能で固定して利用してもよい。
なお、−k番目のサブキャリアの受信信号とk番目のサブキャリアの受信信号を用いてIQインバランスを推定する方法は、適用するサブキャリアが異なるだけで、第1及至第4の実施形態で示した手法のいずれかを適用することによって実現できるため、詳細な説明はここでは省略する。
また、ここでは発信器で発生するローカル周波数を、送信信号の中心周波数よりもW高く設定する場合について説明したが、第7の実施形態で説明したように、W低く設定してもよい。状況に応じて、Wだけ高く設定したり、Wだけ低く設定してもよい。
ここでは発信器のローカル周波数をWだけ高く、または低く設定する場合について説明したが、IQインバランスを推定する際には、ローカル周波数を送信信号の中心周波数よりもW以上高い周波数に設定してもよいし、−Wより低く設定してもよい。ローパスフィルタのカットオフ周波数、A/D変換部のサンプリングレート、直並列変換部のサンプリングレートおよび出力する信号のサンプル数、フーリエ変換部のサンプル数をそれに応じて設定することが可能であるならば、周波数をW以上またはW以下ずらしても構わない。
以上説明したように、上記第9の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。また、送信信号のフィルタ特性が不十分で帯域外の信号が十分抑圧されていない場合でも、高い精度でIQインバランスを推定することができ、精度の高い無線通信装置を提供することができる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態に係る無線受信装置について説明する。
第10の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数からずらし、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第9の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第10の実施形態において、第1及至第9の実施形態と異なる点は、IQインバランスの補正をA/D変換前のアナログ部で適用する点である。
図3は、第10の実施形態に係る無線通信装置の受信部の構成例を示したものである。なお、図3において、図1と同一部分には同一符号を付している。図1と異なる点は、IQインバランス補正部300が、アナログローパスフィルタ101a及び101b、と、A/D変換器102a及び102bとの間に設けられている点である。
IQインバランス推定部108では、第1及至第9の実施形態のいずれかのIQインバランス推定手法を適用して、補正係数を計算する。
図3の無線通信装置が、このIQインバランス推定部108で計算された補正係数を用いて、IQインバランスを補正する場合の動作について説明する。
IQインバランス補正部300の構成は、図5〜図7のいずれかであり、乗算部および加算部で構成される。よって、補正係数が定まってしまえば複雑な信号処理は必要としないため、アナログ回路でも簡易に構成することができる。
そこで、第10の実施形態では、A/D変換部102a及び102bの前に、IQインバランス補正部300を設け、アナログ信号に対して、直交復調部100で生じた位相及び振幅の歪み(IQインバランス)を補正する。
このように、アナログ部でIQインバランスを補正することによって、アナログフロントエンド単体の精度を高めることができる。よって、アナログフロントエンドを単体で動作させる際に、製造時に第1及至第9の実施形態で示したようなIQインバランス推定部106を備えたデジタル部に接続し、IQインバランス補正係数を求め、IQインバランス補正部300のROMに書き込むことによって、IQインバランスの小さいアナログフロントエンドを提供することができる。
以上説明したように、上記第10の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。また、IQインバランスの補正係数をROMに書き込むことによってアナログフロントエンドを単体で動作させる際に、IQインバランス推定機能を備えていないデジタル部と接続しても受信部のIQインバランスが極めて小さいアナログフロントエンドを提供することができる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第11の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数とは異なる周波数に設定し、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第10の実施形態と同様である。また、求められた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第11の実施形態が、第1及至第10の実施形態と異なる点は、受信部が複数の系統を所持しており、ダイバーシチ受信を行っている点である。
図4は、第11の実施形態に係る無線通信装置の2つの受信系統数を備える受信部の構成例を示したものである。なお、図4において、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。
図4の無線通信装置の各受信系統の構成は、発信器110、制御部109、復調部107が、2つの受信系統で共用されている点を除けば、図1とほぼ同様である。
復調部107は、ダイバーシチ受信を行うこと以外、図1と同様である。復調部107で適用されるダイバーシチ受信についても、選択ダイバーシチや等利得合成、最大比合成など一般的なダイバーシチ方式が適用でき、いかなる方式を適用してもよく、本発明の要旨ではないため詳細な説明は省略する。
図4の無線通信装置の受信部では、2つのアンテナ98a及び98bを用いて送信信号を受信し、増幅器99a及び99bに設けられている低雑音増幅器及びバンドパスフィルタなどを介して得られた、2つの受信信号(第1の受信信号、第2の受信信号)が、2つの受信系統の直交復調部100a、100bにそれぞれ入力される。
各受信系統では、入力された受信信号に対し、直交復調、アナログローパスフィルタ、A/D変換、デジタルローパスフィルタ、IQインバランスの補正、直並列変換、フーリエ変換が適用された後、ダイバーシチ合成がなされ、OFDM信号の復調が適用される。
図4の無線通信装置におけるIQインバランスの影響について考える。図4において、第1の受信信号をデジタル信号に変換し、フーリエ変換を適用する系統を第1の受信系統、第2の受信信号をデジタル信号に変換し、フーリエ変換を適用する系統を第2の受信系統と呼ぶ。
図4では、各受信系統は、異なる直交復調部、アナログローパスフィルタ、A/D変換部を備えている。このとき、各受信系統で同一の特性を実現しようとしても、完全に特性が等しい2つの受信系統を構成することは極めて困難である。この結果、受信系統毎に特性のばらつきが生じ、IQインバランスも受信系統毎に異なる。
よって、受信系統毎にIQインバランスを推定し、受信系統毎に異なる補正係数でIQインバランスの補正を行う必要がある。このため、IQインバランス推定部108a、108bでは、各受信系統のフーリエ変換後の信号を用いて、受信系統毎のIQインバランスを推定し、受信系統毎のIQインバランス補正係数を求める。ここで、IQインバランス推定方法は、第1及至第10の実施形態のいずれかと同一の方法を用いることができる。
IQインバランス推定部108a、108bで受信系統毎に求めた補正係数を用いて、IQインバランス補正部104a、104bは、それぞれの受信系統の信号に対しIQインバランスを補正する。IQインバランス補正部104a及び104bは、受信系統毎に補正することを除いて、図5〜図7に示した構成と同様であり、第1及至第10の実施形態のいずれかの方法を用いて補正を行う。
以上説明したように、複数の受信系統を用いてダイバーシチ受信を行う場合、受信系統毎にIQインバランスを推定し、受信系統毎にIQインバランスを補正することによって、受信精度の高い無線通信装置を提供することができる。なお、第11の実施形態では、2つの受信系統数の場合を例に説明したが、この場合に限らない。受信系統毎にIQインバランスを推定し、受信系統毎にIQインバランスを補正するのであれば、3つ以上の受信系統を備える無線通信装置にも適用できる。
以上説明したように、上記第11の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な受信部を備えた無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。また、複数の受信系統を備えた無線通信装置に対して、受信系統毎にIQインバランスを補正することによって、高精度な無線通信装置を提供することができる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態に係る無線受信装置について説明する。
第12の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数とは異なる周波数に設定し、該ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第11の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。さらに、複数の受信系統を用いて受信を行う点は第11の実施形態と同様である。
第12の実施形態に係る無線通信装置は、複数の送信系統で生成された送信信号を受信する点で、第11の実施形態と異なる。
第12の実施形態に係る無線通信装置の構成は、復調部107の処理動作以外は、図4と同様である。
第12の実施形態では、複数の送信アンテナから送信された信号を複数の受信アンテナで受信して復調する、所謂MIMO−OFDM(Multiple Input Multiple Output OFDM)伝送システムに適用可能である。復調部107は、MIMO−OFDM信号を復調する機能を備えていなければならない。ここで、MIMO−OFDM復調方式としては一般的にMIMO−OFDM伝送で適用される方式を適用すればよく、本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
第1の実施形態と同様に、発信器110が出力するローカル信号の周波数(ローカル周波数)を、送信信号の中心周波数よりもW/2高くしてIQインバランスを推定する場合を例にとり、MIMO−OFDM信号を受信する際の受信系統毎のIQインバランスの推定方法について説明する。
各受信系統では、第1の実施形態と同様に、受信信号に対し、直交復調、アナログローパスフィルタ、A/D変換、デジタルローパスフィルタ、IQインバランス補正、直並列変換、フーリエ変換を適用する。
フーリエ変換後に得られる−k番目のサブキャリアとk番目のサブキャリアの受信信号について考える。前述したように、1つの送信系統で信号が生成された場合の受信信号は、式(23)、式(24)で表すことができる。一方、複数の受信系統で信号を受信する場合、受信系統毎にIQインバランスおよび伝搬路応答が異なる。また、複数の送信系統で送信された信号も送信系統毎にIQインバランスおよび伝搬路応答が異なる。その結果、i番目の受信系統で受信するm番目のOFDMシンボルにおける−k番目のサブキャリアおよびk番目のサブキャリアの受信信号x
i (-k)(m)、x
i (k)(m)は次式(70)、(71)で表すことができる。
ただし、αj (t)とβj (t)は、j番目の送信系統における式(5)、式(6)で表されるIQインバランスによるひずみを表す。αi (r)とβi (r)は、i番目の受信系統における式(10)、式(11)で表されるIQインバランスのひずみを表す。sj (-k)、sj (-N+k)はj番目の送信系統から送信される−k番目のサブキャリア、−N+k番目のサブキャリアの送信信号を表す。
hij (-k)は、j番目の送信系統とi番目の受信系統間の−k番目のサブキャリアにおける伝搬路応答を表す。ni (-k)(m)、ni (k)(m)は、i番目の受信系統のm番目のOFDMシンボルにおける−k番目、k番目のサブキャリアの雑音信号をそれぞれ表している。
第1の実施形態と同様に、−k番目のサブキャリアの受信信号と、k番目のサブキャリアの受信信号とを要素とする、i番目の受信系統の受信ベクトルを次式(73)で定義する。
式(73)の受信ベクトルを用いて、第1及至第4の実施形態のいずれかの手法を適用することによって、受信系統毎のIQインバランスを推定することができる。第1の実施形態の推定手法を用いる場合、式(73)の相関行列を式(41)のように受信系統毎に計算し、最大固有値に対応する固有ベクトルを求め、第1要素e
1と第2要素e
2の比からα
i (r)とβ
i (r)*の比を計算することができる。また、第2の実施形態の推定方法を用いる場合は、式(74)に示すように−k番目のサブキャリアの複素信号を式(73)の受信信号に乗算し、相関ベクトルを計算し、相関ベクトルの第1要素e
1と第2要素e
2の比を式(75)のように計算することによって、α
i (r)とβ
i (r)*の比を計算することができる。
第3の実施形態の推定方法を用いる場合は、式(77)に従い、第4の実施形態の推定方法を用いる場合は式(78)に従うことによって、α
i (r)とβ
i (r)*の比を計算することができる。
以上の結果得られたαi (r)とβi (r)*の比を用いて式(35)〜式(38)、式(45)、式(46)から、i番目の受信系統のIQインバランス補正係数を求めることができる。
以上の演算を各受信系統毎に行うことによって、MIMO−OFDM伝送においても第11の実施形態と同様に受信系統毎にIQインバランスを補正する係数を求めることができる。
以上のように推定されたIQインバランス補正係数を用いてIQインバランスを補正する際の各受信系統毎の動作は第1の実施形態と同一であるため、詳細な説明は省略する。
以上、本実施形態における受信系統毎のIQインバランスの推定、受信系統毎のIQインバランスの補正を第1及至第4の実施形態を例に、MIMO−OFDMに拡張する手法について説明したが、上述のMIMO−OFDM伝送におけるIQインバランス推定方法、IQインバランス補正方法を第1及至第4の実施形態の方式に制限するものではない。第5及至第10の実施形態で示した方法を複数の受信系統に拡張してもよい。
また、図4は、2つの受信系統の場合を示したが、第12の実施形態の手法は、この場合に限らない。受信系統毎にIQインバランスを推定し、補正を適用するのであれば、3つ以上の受信系統の場合にも適用可能である。
以上説明したように、上記第12の実施形態によれば、無線通信装置の受信部のIQインバランスを補正することができ、高精度な無線通信装置を提供することができる。なお、IQインバランスを推定する際に特別な信号を送信する必要が無く、任意の信号に対して推定することができるため、任意のOFDM伝送システムで適用することが可能である。また、複数の受信系統を備えたMIMO−OFDM伝送用の無線通信装置に対して、受信系統毎にIQインバランスを補正することによって、高精度な無線通信装置を提供することができる。
(第13の実施形態)
第13の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第13の実施形態においてもIQインバランスを推定するために発信器のローカル周波数を送信信号の中心周波数とは異なる周波数に設定し、ローカル周波数を軸として対称な位置にある2つのサブキャリアを用いてIQインバランスを推定する点は、第1及至第12の実施形態と同様である。また、得られた補正係数を用いてIQインバランスの補正を行う点も同様である。
第13の実施形態に係る無線通信装置は、受信部と送信部を備え、前述のようにしてIQインバランスの補正係数の算出された該受信部を用いて該送信部のIQインバランスを推定し、該送信部のIQインバランスの補正も行う点で、第1及至第12の実施形態と異なる。
第13の実施形態に係る受信部1及び送信部2を備える無線通信装置の構成例を図8に示す。図8の送信部2のIQインバランス補正部804の構成例を図5、図10、図11に示す。
図8の無線通信装置の受信部1の構成は、図1とほぼ同様であり、図1と同一部分には同一符号を付し、異なる部分について説明する。すなわち、図8では、発信器110、制御部109が、受信部1及び送信部2で共用されている。また、直交復調部100への入力を増幅器99からの出力と送信部2の直交変調部800からの出力とのいずれか一方に切り替えるスイッチ808aが、増幅器99と直交復調部100との間に設けられている。さらに、IQインバランス推定部809は、該IQインバランス推定部809で計算された補正係数を受信部1のIQインバランス補正部104へ出力したり、送信部2のIQインバランス補正部804へ出力するためのスイッチ808cに接続されている。
図8の無線通信装置の送信部2は、サブキャリア毎に変調し、OFDM信号を生成する変調部807、変調部807から出力された信号に対し、逆フーリエ変換を施す逆フーリエ変換部806、逆フーリエ変換部805から出力された並列信号を直列信号に変換する並直列変換部805、IQインバランス推定部809で計算された送信部2の補正係数を用いて、送信部2のIQインバランスを補正するIQインバランス補正部804、デジタル信号をアナログ信号に変換するD/A(Digital to Analog)変換部802a、802b、D/A変換部802a、802bから出力された信号を発信器110で生成されたローカル信号を用いて直交変調する直交変調部800、直交変調部800から出力された直交変調信号を増幅する増幅器810、直交変調部800で得られる直交変調信号の出力先を、受信部1のスイッチ808aと送信部2の増幅器810のうちのいずれか一方に切り替えるスイッチ808bを含む。その他、図8の無線通信装置はアンテナ98で受信した信号を受信部1に出力し、送信部2で生成した送信信号をアンテナ98に出力する方向性結合部811を含む。
変調部807は、入力されたビット列をもとにサブキャリア毎に変調を施す。ここで適用される変調方式は通信システムに応じてさまざまな変調方式が考えられるが、ここでの変調方式は特別な変調方式ではなく一般的なものであり、本発明の要旨ではないので、詳細な説明は省略する。
逆フーリエ変換部806は、変調部807でサブキャリア毎に変調が施された周波数領域の信号に対し逆フーリエ変換(逆離散フーリエ変換(Inverse Discrete Fourier Transform (IDFT))あるいは逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform (IFFT))など)を施し、時間領域の系列に変換する。
並直列変換部805は、逆フーリエ変換して得られた時間領域の信号を直列信号に変換する。この結果、IチャネルとQチャネルの時系列の信号が生成される。
IQインバランス補正部804は、直並列変換がなされた信号に対して、送信部2のIQインバランスにより生じる歪みを補正を行う。送信部2のIQインバランス補正は後段のD/A変換部802a、802b、アナログローパスフィルタ801a及び801b、直交変調部800で生じるIQインバランスを打ち消すように、歪みを付加するものである。
IQインバランス補正部804の構成は、図5に示した受信部1のIQインバランス補正部104と同様である。ここで、加重合成の補正係数はIQインバランス推定部809で計算される。得られた補正係数は、乗算部501a、501b、501c、501dで乗算される。なお、これら補正係数の推定方法は後述する。
IQインバランス補正部804から出力される信号は、サンプル間を0補間された後、デジタルローパスフィルタ803a、803bが適用される。デジタルローパスフィルタは後段のD/A変換で生じるエイリアジング信号をアナログのローパスフィルタのみで適用することが困難なため適用されるフィルタである。デジタルローパスフィルタは、アナログローパスフィルタ801a、801bとあわせて信号のスペクトルを所望の形状に整形することができればいかなるフィルタを適用しても構わない。
デジタルローパスフィルタ803a及び803bのそれぞれから出力されたIチャネル信号及びQチャネル信号は、D/A変換部802a及び802bのそれぞれで、アナログ信号に変換される。
アナログ信号に変換された信号には、エイリアジング信号と呼ばれる不要な高周波信号が含まれるため、デジタル信号に変換されたIチャネル信号及びQチャネル信号に対し、アナログローパスフィルタ801a及び801bをそれぞれ適用して高周波成分を抑圧する。
ここで、アナログローパスフィルタ801a及び801bは、デジタルローパスフィルタ803a及び803bとあわせて送信信号を所望のスペクトルの信号に整形することができればいかなるフィルタを適用しても構わない。
直交変調部800は、アナログローパスフィルタ801a及び801bのそれぞれから出力されたベースバンドのIチャネル信号とQチャネル信号を直交変調し、RF信号を生成し、所望の帯域の信号のみ抽出される。直交変調部800はで行う直交変調は、従来と同様であり、本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
直交復調された信号は、増幅器810で増幅が施された後、方向性結合部811を介してアンテナ98から送信される。
受信部1のスイッチ808aは、受信部1のIQインバランスを推定する場合や信号を受信する場合は、増幅器99から出力される受信信号を直交復調部100に入力するように制御部109から制御される。また、送信部2のIQインバランスを推定する場合には、直交変調部800から出力される信号を直交復調部100に入力するように制御部109から制御される。
送信部2のスイッチ808bは、信号を送信する場合には、直交変調部800から出力される信号を増幅器810に入力するように制御部109から制御され、送信部2のIQインバランスを推定する場合には、直交変調部800から出力される信号を受信部1の直交復調部100に接続されたスイッチ808aに入力するように制御部109から制御される。
スイッチ808cは、送信部2のIQインバランスを推定している場合には、IQインバランス推定部809が計算したIQインバランス補正係数をIQインバランス補正部804に出力するように制御部109から制御され、受信部1のIQインバランスを推定している場合には、IQインバランス推定部809が計算したIQインバランス補正係数をIQインバランス補正部104に出力するように制御部109から制御される。
次に、図8の無線通信装置が送信部2および受信部1のIQインバランスを推定する際の動作について、図22に示すフローチャート参照して説明する。
図8の無線通信装置は、まず、第1乃至第12の実施形態のいずれかの方法を用いて、受信部1のIQインバランス補正係数を計算し、求めた補正係数をIQインバランス補正部104に設定する(ステップS301、ステップS302)。このとき、スイッチ808aは、増幅器99から出力される受信信号を直交復調部100に入力するように制御され、スイッチ808cは、IQインバランス推定部809の出力(補正係数)をIQインバランス補正部104に入力するように制御されている。
ステップS302では、IQインバランス推定部809により前述したように受信部1のIQインバランス補正係数が計算され、この補正係数が、受信部1のIQインバランス補正部104に設定されると、受信部1のIQインバランスが高精度に補正される。すなわち、受信部1のIQインバランス補正部104で補正された受信信号には、受信部1のIQインバランスの影響は無視することができる。そこで、受信部1のIQインバランスを補正することが可能になった後、送信部2で生成した送信信号を増幅器810及び方向性結合部811を介して送信せずに、受信部1に入力し、受信部1で、該送信部2から出力された送信信号を基に、送信部2のIQインバランスを推定する。
一般に、送信信号を受信部1に入力して、歪みを推定する方法は、受信部1にIQインバランスが存在すると、送信部2のIQインバランスの推定精度が劣化し、送信部2のIQインバランス補正の精度が制限されるという問題がある。しかし、本実施形態では、受信部1のIQインバランスは高精度に補正されるため、純粋に送信部2のIQインバランスを推定することが可能になる。
次に、IQインバランス補正部804で用いる補正係数の算出手法、すなわち、送信部2のIQインバランス推定方法について説明する。
受信部1で送信部2のIQインバランス補正係数を算出する場合には、発信器110で生成するローカル信号の周波数は、送信部2の直交変調部800で用いた周波数、すなわち、送信部1から入力される送信信号の中心周波数に等しい。
送信部2のIQインバランス補正部804が、図5に示したように、受信部1のIQインバランス補正部104と同様である場合、IQインバランス補正後のIチャネル信号u
i(t)、及びQチャネル信号u
q(t)は、次式(79)、(80)で表すことができる。
ここで、ui’(t)およびuq’(t)は、IQインバランス補正前のフーリエ変換後のIチャネル送信信号とQチャネル送信信号を表している。
送信部2のIQインバランスによって送信信号は式(3)に示したような歪みが生じるが、IQインバランス補正部804で送信部2のIQインバランスを打ち消すように歪みが付加されている場合、直交変調後の等価低域系の信号は次式(81)、(82)を満たす。
よって、式(81)、式(82)を満たす補正係数wii、wiq、wqi、wqqを求めれば送信部2のIQインバランスを相殺することができる。
以上の関係を満たす補正係数について考える。まず、α
(t)とβ
(t)は、式(5)、式(6)で表すことができるため、次式(83)〜(86)の関係を満たす。
ここで、式(79)及び式(80)を、式(3)に代入することによって次式を得る。
式(87)、式(88)は、式(81)、式(82)を満たさなければならないため、IQインバランス補正係数は次式を満たす必要がある。
このことから、α(t)とβ(t)を推定することができれば、送信部2のIQインバランスを補正する係数を推定できることがわかる。
次に、α(t)とβ(t)の推定方法について説明する。
送信部2にIQインバランスが生じると、式(3)に示したように、送信信号の複素共役信号が干渉となり、式(17)、式(18)に示したフーリエ変換の特性から、中心周波数を軸として対称なサブキャリアの信号が干渉する。よって、送信信号を受信部1へ入力し、受信部1で該送信信号に対し受信処理をした後、フーリエ変換して得られるk番目のサブキャリアの1シンボル目の受信信号x
(k)(1)は次式(93)のように表すことができる。
さらに2シンボル目の信号を送信し、1シンボル目の受信信号x
k(1)と2シンボル目の受信信号x
k (2)を要素とする受信ベクトルx
(k)を次式(94)のように定義する。
ここで、送信信号行列S
(k)がフルランクになるようにk番目のサブキャリアと−k番目のサブキャリアで送信される2シンボルの信号を設定する。その結果、S
(k)の逆行列を式(94)の両辺に乗算することにより次式(99)のIQインバランス成分のベクトルz^
(k)を得る。
式(99)は、受信部1のIQインバランスを推定する際の式(39)に示した受信ベクトルと類似のベクトルであることがわかる。よって、受信部1のIQインバランスを推定した場合と同様の手法を適用することによって、送信部2のIQインバランスを推定することができる。なお、式(96)で示した行列S(k)の条件数(最大固有値と最小固有値の比)が大きいと逆行列を乗算する際に雑音強調が生じる可能性があるため、条件数は小さいことが望ましい。特に、式(96)の第1列と第2列が直交することが望ましい。このような直交する(相関が「0」となる)系列の一例として、図13に示すように1シンボル目は下側波帯のサブキャリアのみで信号を送信し、2シンボル目は上側波帯のサブキャリアのみで信号を送信する方法や、図14に示すように上側波帯の信号のみ2シンボル目に位相を反転させる方法があげられる。ただし、本実施形態における送信信号を図13や図14に制限するものではない。式(96)で示した行列S(k)がフルランクになるのであればいかなる系列を用いても構わない。
次に、図22を参照して、図8の無線通信装置において、ステップS302で計算された受信部1の補正係数がIQインバランス補正部104に設定された後に行われる、送信部2のIQインバランスの推定処理動作について説明する。
送信部2のIQインバランスを推定するための信号は逆フーリエ変換部806で時間領域の信号に変換された後、並直列変換部805で、IチャネルとQチャネルの時系列の信号が生成される。並直列変換部805から出力されるIチャネル信号及びQチャネル信号は、通常の送信時にはIQインバランス補正部804で入力されるが、まだ補正係数が定まっていないため、IQインバランス補正部804での補正処理がスキップされるか、式(22)に示した補正係数を用いて補正処理を施していない場合と等価の処理が施される。
その後、送信信号は、デジタルローパスフィルタ803a及び803b、D/A変換部802a及び802b、アナログローパスフィルタ801a及び801bを経由した後、直交変調部800で直交変調される(ステップS303)。
直交変調部800から出力された直交変調信号を受信部1に入力するために、制御部109は、スイッチ808b及び808aを制御する。
直交変調部800から出力された直交変調信号(送信信号)は、スイッチ808b及び808aを経由して、直交復調器100に入力され、ここで、直交復調される。直交復調された信号は、アナログローパスフィルタ101a及び101b、A/D変換部102a及び102b、デジタルローパスフィルタ103a及び103bを経由して、IQインバランス補正部104に入力される。IQインバランス補正部104では、既に設定されている補正係数を用いて、入力された信号に対し、受信部1のIQインバランスの補正を行う。
なお、以上の受信部1の受信処理は、前述の第1及至第12の実施形態と同様である。
IQインバランス補正部104でIQインバランスが補正された信号は、さらに、直並列変換部105及びフーリエ変換部106を経由して、式(93)に示したような、周波数領域の受信信号に変換される(ステップS204)。
IQインバランス推定部809は、このようにして1シンボル目の受信信号x(k)(1)を得ると(ステップS205)、これを一時記憶し、さらにステップS303へ戻り、上述同様にして、2シンボル目の受信信号x(k)(2)を得る(ステップS303〜ステップS305)。
その後、ステップS306へ進み、IQインバランス推定部809は、得られた1シンボル名の受信信号x(k)(1)と2シンボル目の受信信号x(k)(2)とから、式(95)に示した受信ベクトルを生成する。さらに、得られた受信ベクトルに式(100)で示した送信信号行列の逆行列を乗算して、1シンボル目及び2シンボル目の受信信号のそれぞれについて、ベクトルz(k)を得る(ステップS306)。ここで、送信部2のIQインバランスを推定するために送信する信号は既知の信号である。従って、ここでは、k番目のサブキャリアの1シンボル目及び2シンボル目の送信信号s(k)(1)、s(k)(2)と、これらの複素共役信号を要素とする送信信号行列S(k)や、その逆行列(式(100))S(k)-1は予め計算されて、IQインバランス推定部809のROMなどに予め記憶されているものとする。
得られた2次元ベクトルz^
(k)を用いて、第1の実施形態と同様に相関行列の固有ベクトルを求める場合、相関行列は次式(101)のように表すことができる。
式(101)の最大固有値に対応する固有ベクトルは、式(103)に示す関係が成り立つため、α
(t)とβ
(t)の比は、式(104)で求めることができる(ステップS307)。
また、式(5)と式(6)を用いると、α
(t)とβ
(t)は次式(105)(106)のように表すことができる。
以上説明したように、送信信号の中心周波数(=ローカル周波数)を軸として対称なサブキャリア間で2シンボルにわたり一次独立な組み合わせの信号を、送信部2を介して受信部1に入力し、各サブキャリアで1シンボル目の受信信号と2シンボル目の受信信号を要素とするベクトルの相関行列を複数のサブキャリアにわたって計算し、最大固有値に対応する固有ベクトルを求め、式(105)〜式(106)にしたがって計算することにより、α(t)とβ(t)を得る。
さらに、得られたα(t)とβ(t)と、式(89)〜(92)とから、図5に示したIQインバランス補正部804の各補正係数wii,wiq,wqi,wqqを求めることができる(ステップS308)。
一方、第2の実施形態と同様な手法で、IQインバランスの補正係数を求めることもできる。すなわち、ステップS307では、まず、
式(99)に示したように、各kについて、受信ベクトルx
(k)にS
(k)の逆行列を乗算して、2次元ベクトルz^
(k)を求めた後、該ベクトルの第1の要素z^
(k)(1)の複素共役を、該ベクトルz^
(k)に乗算することにより、次式(107)の相関ベクトルを求める。
雑音と信号は無相関なため、式(107)は式(102)のAを用いて、次式(109)のように表すことができる。
よって、次式(110)から、式(107)で得られた相関ベクトルr
zzの第1の要素r
zz(1)から、推定された雑音電力を減算した結果と、相関ベクトルr
zzの第2の要素r
zz(2)との比を計算することにより、α
(t)とβ
(t)の比を求めることができる(ステップS307)。
式(110)から得られた、α(t)とβ(t)の比を用いて、式(105)〜式(106)にしたがって計算することにより、α(t)とβ(t)を得る。さらに、得られたα(t)とβ(t)と、式(89)〜(92)とから、IQインバランス補正部804の各補正係数wii,wiq,wqi,wqqを求めることができる(ステップS308)。
送信部2で生成した信号を直接受信部1に入力しているため、受信電力は十分大きい。従って、ステップS307では、第3の実施形態のように、式(110)において雑音電力を無視して、式(112)のように計算を行うことによって、α
(t)とβ
(t)の比を求めることもできる。
さらに、ステップS307では、式(99)の右辺の第2項の雑音成分を無視し、式(113)のように、2次元ベクトルz^
(k)の第2の要素(すなわち、2シンボル目のz^
(k)(2))を、2次元ベクトルz^
(k)の第1の要素(すなわち、1シンボル目のz^
(k)(1))で除算して、α
(t)とβ
(t)のの比を求めることもできる。
ただし、式(113)においてDは平均化処理に用いたサブキャリア数を表している。
以上、4つのIQインバランス補正係数の計算方法について説明したが、本実施形態は、これらに限定するものではない。受信部1のIQインバランスの補正係数を求め、送信部2で生成した信号を受信部1に入力し、受信部1のIQインバランスを補正しながら送信部2のIQインバランスを求めることができればいかなる方法を用いても構わない。
以上のようにして推定したIQインバランス補正係数はIQインバランス補正部804に設定される。
このとき、式(90)に示したように、Iチャネル信号に乗算し、Qチャネル信号に付加する信号の補正係数wiqは「0」なので、IQインバランス補正部804は、図10に示す構成でもよい。また、 wqqが「1」になるように補正係数を規格化し、図11に示すように、乗算部501a、501c、加算部502aのみで構成でもよい。
以降、送信部2が信号を送信する際は、IQインバランス補正部804で、上記設定された補正係数を用いて、入力されたIチャネル信号及びQチャネル信号に対し、式(79)、式(80)で示した補正処理を行い、信号を送信する。このとき、スイッチ808bにより、直交変調部800からの出力は、無線送信部810へ入力される。
なお、本実施形態では、送信部2のIQインバランスを推定する際に、2シンボルの信号を送信して推定する方法を例に説明したが、この場合に限らない。送信するシンボル数を増やすことによって雑音への耐性が強くなるため、2シンボル以上の信号を用いてもよい。この場合、式(96)に示した行列は、行数が送信シンボル数、列数が「2」の行列になり、ランクが「2」になればいかなる信号を用いてもよい。また、式(99)においてS(k)の逆行列ではなく、一般化逆行列を用いて以降の処理を適用する。
また、図8では、送信部2のIQインバランスをデジタル信号で補正しているが、第10の実施形態で受信部1のIQインバランスをアナログ部で補正したように、送信部2のIQインバランスもアナログ部で補正してもよい。
以上説明したように、上記第13の実施形態によれば、受信部1のIQインバランスを補正するための補正係数を求めた後、送信部2で生成した信号を受信部1に入力して、得られた受信部1の補正係数を用いて受信部で生じるIQインバランスの補正を行った後に、送信部2のIQインバランスを補正するための補正係数を計算する。この結果、無線通信装置の受信部1のみならず送信部2のIQインバランスを補正することができ、高精度な無線通信装置を提供することができる。
(第14の実施形態)
第14の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
第13の実施形態では、送信部1で生成/直交変調した信号を受信部1へ入力して、送信部1のIQインバランスを推定したが、第14の実施形態では、送信部1のIQインバランスを推定する際に、あらかじめ保存しておいた時間領域の信号を用いて推定を行う点で、第13の実施形態と異なる。
図9は、第14の実施形態に係る無線通信装置の構成例を示したものである。なお、図9において、図8と同一部分には同一符号を付し、異なる部分ついて説明する。すなわち、図9では、信号記憶部901と、デジタルローパスフィルタ803aから出力される信号と、信号記憶部901に記憶された信号とのうちのいずれか一方をD/A変換部802aに入力するためのスイッチ808dと、デジタルローパスフィルタ803bから出力される信号と、信号記憶部901に記憶された信号とのうちのいずれか一方をD/A変換部802bに入力するためのスイッチ808eとが追加されている。
OFDM信号を送受信する無線通信装置は、受信部1と送信部2とで一部の構成部を共有することがある。例えば、アナログローパスフィルタは送信と受信で信号の帯域幅が等しい場合、送信部1と受信部2で要求される機能が等しくなるため、ローパスフィルタ101a及び801aの機能を1つのローパスフィルタで実現し、ローパスフィルタ101b及び801bの機能を1つのローパスフィルタで実現する場合がある。また、フーリエ変換部106と逆フーリエ変換部806は、乗算される係数が若干異なるものの、適用される演算は同一であるため、1つの構成部で、送信時は逆フーリエ変換処理を実行し、受信時はフーリエ変換処理を実行することがある。
このように、受信部1と送信部2とで一部の構成部を共有することによって、回路規模の肥大化を防ぐ効果がある。
無線通信装置をこのような構成にすると、送信部2が生成する信号を受信部1に入力して受信処理を行うことができなくなってしまう。本実施形態では以上の問題点に鑑み、送信部2のIQインバランスを推定する際は、デジタル部の送信処理を停止する。そして、信号記憶部901に予め記憶されている、デジタルローパスフィルタ通過後の時間領域の信号を、D/A変換部802d及び802eに入力し、補正係数推定用の信号を生成する。
次に、図9の無線通信装置のIQインバランス補正係数の推定およびIQインバランスを補正する際の動作について説明する。
第13の実施形態と同様に、まず、受信部1のIQインバランスの推定を行い、IQインバランス補正部104の補正係数を設定する。受信部1のIQインバランスの推定動作は第13の実施形態と同様である。
送信部2のIQインバランスを推定する際には、第13の実施形態でも説明したように、受信部1のIQインバランスは補正することができるため、送信部2で生成した信号を受信部1に入力して受信処理を行うことによって、送信部2のIQインバランスのみを推定することができる。
このとき、第13の実施形態では送信部2のIQインバランスを推定するための複数のOFDMシンボルを変調部807、逆フーリエ変換部806、並直列変換部805、デジタルローパスフィルタ803a、803bを用いて生成していたが、第14の実施形態では、すでに、これら処理が施された時間領域の信号を信号記憶部901に記憶しておく。そして、スイッチ808d、808eにより、信号記憶部901に記憶されている該時間領域の信号をD/A変換部802a及び802bに入力することによって、変調部807、逆フーリエ変換部806、並直列変換部805、デジタルローパスフィルタ803a、803bの動作を停止させることが可能になる。
D/A変換部802a及び802bは、信号記憶部901から出力された信号をD/A変換し、アナログ信号に変換する。なお、通常はその後、エイリアジング信号を除去するためアナログローパスフィルタ801a、801bがIチャネル信号とQチャネル信号のそれぞれ適用されるが、アナログローパスフィルタ801a、801bが受信部1のアナログローパスフィルタと共有されている場合は、処理を適用せずに、信号を通過させる。
直交変調部800は、アナログローパスフィルタ801a、801bから出力された信号を直交変調し、得られた直交変調信号をスイッチ808b、スイッチ808aを介して受信部1の直交復調部100に入力させる。
以降の処理は、第13の実施形態と同様である。
上記第14の実施形態によれば、送信時は、送信部2のデジタル部(逆フーリエ変換部、デジタルローパスフィルタ)を動作させていないため、デジタル部が送受信部で共用されている場合も、受信部1で送信部2から出力される信号を利用して、送信部2のIQインバランスを補正するための補正係数を計算することができる。
(第15の実施形態)
第15の実施形態に係る無線通信装置について説明する。
本実施形態においても、第13および第14の実施形態と同様に受信部のIQインバランスを補正する係数を推定し、受信部のIQインバランスを補正しながら送信部のIQインバランスを補正する係数を求める点は同一である。
第15の実施形態が第13および第14の実施形態と異なる点は、無線通信装置が複数の受信系統、複数の送信系統を含む場合に、第13及び第14の実施形態で説明したように、各受信系統のIQインバランス補正係数、各送信系統のIQインバランス補正係数を算出して、各受信系統及び各送信系統でIQインバランスを補正する点である。
無線通信装置が複数の送受信系統を含む場合も、第13および第14の実施形態と同様である。すなわち、まず、受信部の受信系統毎に、IQインバランスを補正するための補正係数を求める。このとき、複数の受信系統の補正係数を求める方法は、第11および第12の実施形態で説明したとおりなので、詳細な説明はここでは省略する。
求めた受信系統毎のIQインバランス補正係数を用いて、受信系統毎にIQインバランスを補正しながら、送信部のIQインバランスを推定する。無線通信装置の各送信系統はそれぞれ個別にD/A変換部やアナログのローパスフィルタ、直交変調部を備えているため、一般に送信系統毎にIQインバランスの値も異なる。このため、送信系統が複数ある場合、送信系統毎に異なる補正係数でIQインバランスを補正する必要がある。
よって、第13および第14の実施形態で説明した送信部のIQインバランス補正係数の推定方法を送信系統毎に適用し、送信系統毎のIQインバランス補正係数を求める。
このようにして求めた送信系統毎のIQインバランス補正係数を用いて、送信系統毎にIQインバランスを補正することによって、第13および第14の実施形態と同様に、高精度な送信部を備えた無線通信装置を提供することができる。
第14の実施形態でも説明したように、OFDM信号を送受信する無線通信装置は送信部と受信部で一部の構成部が共用されることがある。
例えば、無線通信装置が2つの送信系統および2つの受信系統を含む場合を考える。この場合、まずは第1の送信系統から補正係数を求める。このとき、第1の送信系統のみ動作させ、第2の送信系統は機能を停止し、第1の送信系統で生成した信号を、第1の受信系統ではなく、第2の受信系統に入力する。第2の送信系統と第2の受信系統とで、一部の構成部が共用されていても、第2の送信系統は動作していないため、第2の受信系統が第1の送信系統で生成した信号を受信する際に問題は生じない。
次に、第2送信系統のみ信号を生成し、生成した信号を第1の受信系統に入力する。この結果、第1の送信系統の補正係数を求めた場合と同様に、第2の送信系統が生成した信号を用いて第1の受信系統で、第2の送信系統のIQインバランス補正係数を計算することができる。
このように、各送信系統が生成する信号を、該送信系統と対をなす受信系統とは異なる受信系統で受信することによって、第13の実施形態と同様にして、該送信系統のIQインバランス補正係数を算出することができる。
無線通信装置が、4つの送信系統と4つの受信系統を含む場合、第1の送信系統が生成した信号を第3の受信系統に入力し、第2の送信系統で生成した信号を第4の受信系統に入力することによって、2つの送信系統のそれぞれのIQインバランス補正係数を同時に計算することもできる。
以上説明したように、上記第15の実施形態によれば、複数の送信系統と複数の受信系統を含む無線通信装置の場合も、受信系統毎のIQインバランス補正係数と、送信系統毎のIQインバランス補正係数とを計算することができる。また、得られたIQインバランスの補正係数を用いて、信号受信時は受信系統毎にIQインバランスを補正し、信号送信時には送信系統毎にIQインバランスを補正することにより、高精度な受信部及び送信部を備えた無線通信装置を提供することができる。
なお、第14の実施形態のように、送信系統毎に信号記憶部901を備えれば、各送信系統が生成した信号を、それと対をなす受信系統に入力して、該送信系統のIQインバランス補正係数を求めることができる。
本発明は上記第1乃至第15の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
98…アンテナ、99…増幅器、100…直交復調部、101a、101b…アナログローパスフィルタ、102a、102b…A/D変換部、103a、103b…デジタルローパスフィルタ、104…IQインバランス補正部、105…直並列変換部、106…フーリエ変換部、107…復調部、108、809…IQインバランス推定部、109…制御部、110…発信器