JP2008159666A - 有機電子デバイス、有機薄膜トランジスタ、及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡便なウェットプロセスで製造でき、トランジスタ特性に優れ、大気中あるいは高温、高湿度下においても経時安定性に優れた有機電子デバイス、特に有機薄膜トランジスタ、及びそれらの製造方法を提供すること。
【解決手段】有機電子デバイスを保護するための保護層を有する有機電子デバイスにおいて、該保護層に有機結晶性膜を用いることを特徴とする有機電子デバイス。
【選択図】なし

Description

本発明は有機電子デバイス、有機薄膜トランジスタ、及びその製造方法に関する。
情報端末の普及に伴い、コンピュータ用のディスプレイとしてFPD(フラットパネルディスプレイ)に対するニーズが高まっている。また、情報化の進展に伴い、従来、紙媒体で提供されていた情報が電子化される機会が増え、薄くて軽い、手軽に持ち運びが可能なモバイル用表示媒体として、電子ペーパーあるいはデジタルペーパーへのニーズも高まりつつある。
一般に平板型のディスプレイ装置においては、液晶、有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)、電気泳動等を利用した素子を用いて表示媒体を形成している。また、こうした表示媒体では画面輝度の均一性や画面書き換え速度等を確保するために、画像駆動素子としてアクティブ駆動素子(TFT素子)を用いる技術が主流になっている。例えば、通常のコンピュータディスプレイではガラス基板上にこれらTFT素子を形成し、液晶、有機EL素子等が封止されている。
ここでTFT素子には、主にa−Si(アモルファスシリコン)、p−Si(ポリシリコン)等の半導体を用いることができ、これらのSi半導体(必要に応じて金属膜も)を多層化し、ソース、ドレイン、ゲート電極を基板上に順次形成していくことでTFT素子が製造される。こうしたTFT素子の製造には、通常スパッタリング、その他の真空系の製造プロセスが必要とされる。
しかしながら、このようなTFT素子の製造では、真空チャンバーを含む真空系の製造プロセスを何度も繰り返して各層を形成せざるを得ず、装置コスト、ランニングコストが非常に膨大なものとなっていた。例えば、TFT素子では、通常それぞれの層の形成のために真空蒸着、ドープ、フォトリソグラフ、現像等の工程を何度も繰り返す必要があり、何十もの工程を経て素子を基板上に形成している。
スイッチング動作の要となる半導体部分に関しても、p型、n型等、複数種類の半導体層を積層している。こうした従来のSi半導体による製造方法ではディスプレイ画面の大型化のニーズに対し、真空チャンバー等の製造装置の大幅な設計変更が必要とされる等、設備の変更が容易ではない。
また、このような従来からのSi材料を用いたTFT素子の形成には高い温度の工程が含まれるため、基板材料には工程温度に耐える材料であるという制限が加わることになる。このため実際上はガラスを用いざるを得ず、先に述べた電子ペーパーあるいはデジタルペーパーといった薄型ディスプレイをこうした従来知られたTFT素子を利用して構成した場合、そのディスプレイは重く、柔軟性に欠け、落下の衝撃で割れる可能性のある製品となってしまう。ガラス基板上にSi系TFT素子を形成することに起因するこれらの特徴は、情報化の進展に伴う手軽な携行用薄型ディスプレイへのニーズを満たすにあたり望ましくないものである。
一方、近年において高い電荷輸送性を有する有機化合物として、有機半導体材料の研究が精力的に進められている。これらの化合物は有機EL素子用の電荷輸送性材料の他、例えば、有機レーザー発振素子や、多数の論文にて報告されている有機薄膜トランジスタ素子(有機TFT素子)への応用が期待されている。
これらのような有機材料が半導体層であるデバイスを実現できれば、低温での真空ないし低圧蒸着による形成や、更にその分子構造を適切に改良することによって溶剤に可溶化することができればインクジェット法、または印刷法などといった簡便な溶液プロセスによって製造できると考えられる。
このような低温プロセス・溶液プロセスによる製造は、透明樹脂基板上へのTFT素子の形成を可能とし、ディスプレイを従来のものよりも軽く、柔軟性に富み、落としても割れない(もしくは非常に割れにくい)安価なディスプレイとすることができると考えられる。
これまでに半導体層として検討されてきた有機材料としては、ペンタセンやテトラセンといったアセン類、またこれらに置換基を導入した化合物、フタロシアニンやポルフィリン類、及びこれらの前駆体、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体といった低分子化合物や、α−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、ナフタレン、アントラセンに5員の芳香族複素環が対称に縮合した化合物、モノ、オリゴ及びポリジチエノピリジン、更にはポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子などが挙げられる。
有機薄膜トランジスタに求められる特性としては、ソース電極、ドレイン電極間のチャネル領域を移動するキャリアの移動度が高いこと、及びゲート電極に電圧を印加したときの電流(以下、オン電流という)が大きく、且つオン電流とゲート電極に電圧を印加しないときの電流(以下、オフ電流という)との比(オン/オフ比)が大きいことが要求される。
しかしながら、有機半導体層は空気中に放置すると劣化し、素子のトランジスタとしての特性が低下してしまうという課題を有している。このような課題を解決する手段の一つとして、有機半導体層あるいは有機薄膜トランジスタを、例えば、酸化珪素や窒化珪素等の無機材料、あるいはポリビニルアルコール等のポリマー材料からなる封止膜により、保護することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかし、これらの封止技術をもってしても、高温、高湿度下における有機薄膜トランジスタの安定性を保持するには不十分であり、このように高温、高湿度下における経時安定性を改良した技術に関する提案はほとんどなされていないのが現状である。
特開2002−314093号公報 特表2003−525521号公報
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、簡便なウェットプロセスで製造でき、トランジスタ特性に優れ、大気中あるいは高温、高湿度下においても経時安定性に優れた有機電子デバイス、特に有機薄膜トランジスタ、及びそれらの製造方法を提供することである。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成された。
1.有機電子デバイスを保護するための保護層を有する有機電子デバイスにおいて、該保護層に有機結晶性膜を用いることを特徴とする有機電子デバイス。
2.前記有機結晶性膜が有機溶媒に対して実質不溶な膜であることを特徴とする前記1に記載の有機電子デバイス。
3.前記有機結晶性膜が水に対して実質不溶な膜であることを特徴とする前記1に記載の有機電子デバイス。
4.前記有機結晶性膜が低分子有機材料から構成されることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
5.前記低分子有機材料がπ共役系有機材料からなることを特徴とする前記4に記載の有機電子デバイス。
6.前記π共役系有機材料がポルフィリン類であることを特徴とする前記5に記載の有機電子デバイス。
7.前記有機結晶性膜が溶液プロセスにて形成されることを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
8.前記有機結晶性膜が低分子有機材料の前駆体を用いて形成されることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
9.前記前駆体の溶液を用いて製膜後、エネルギーを付与して変換反応を行い、有機結晶性膜を形成することを特徴とする前記8に記載の有機電子デバイス。
10.支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層、保護層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、該保護層に前記1〜9のいずれか1項に記載の有機電子デバイスにおける有機結晶性膜を用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
11.有機電子デバイスを保護するための保護層を有する有機電子デバイスの製造方法において、前記1〜9のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの保護層を溶液プロセスにて形成することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
12.支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層、保護層を有する有機薄膜トランジスタの製造方法において、前記10に記載の有機薄膜トランジスタの保護層を溶液プロセスにて形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
本発明により、簡便なウェットプロセスで製造でき、トランジスタ特性に優れ、大気中あるいは高温、高湿度下においても経時安定性に優れた有機電子デバイス、特に有機薄膜トランジスタ、及びそれらの製造方法を提供することができた。
以下、本発明に係る各構成要素の詳細について、順次説明する。
《有機結晶性膜》
本発明において、有機結晶性膜とは支持体上に形成した有機化合物からなる膜が結晶構造を有することをいう。有機化合物膜が結晶構造を有しているかどうかは、AFM(原子間力顕微鏡)による膜観察やX線回折法による分析などにより、確認することができる。より配向性の高い結晶膜であるかどうかは、例えば、ペンタセン膜のAFM観察時に見られるようなステップ構造や、偏光顕微鏡による観察、X線回折法で得られた結晶格子の面間隔d値などを解析することにより、より詳細に確認できる。
本発明に係る有機結晶性膜は、有機溶媒に対して実質不溶な膜であることが好ましく、実質不溶とは、例えば、有機結晶性膜上に一般的な有機溶媒を室温付近で滴下しても、有機化合物が溶け出して膜が壊れることがない状態を指す。また、本発明に係る有機結晶性膜は水に対して実質不溶な膜であることが好ましく、有機溶媒の場合と同様、例えば、有機結晶性膜上に水を滴下しても、有機化合物が溶け出して膜が壊れることがない状態を指す。
また、本発明に係る有機結晶性膜を構成する有機材料が低分子有機材料からなることが好ましく、有機材料がπ共役系有機材料からなることがより好ましい。
本発明に係る有機結晶性膜を構成する有機材料としては、前述したような有機半導体層に用いられる有機材料を挙げることができるが、高い結晶性を有する点で、ペンタセンやテトラセンといったアセン類、フタロシアニンやポルフィリン類、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体、テトラチアフルバレン(TTF)類、チオフェンオリゴマーなどの芳香族オリゴマー類、アントラジチオフェンなどのアントラセンに5員の芳香族複素環が対称に縮合した化合物類、及びそれらの誘導体などが好ましい。
特に、形成した結晶性膜が有機溶媒に不溶となるためには、結晶性膜を構成する有機材料が有機溶媒に不溶であることが好ましいが、結晶性膜を溶液プロセスで形成可能にするためにも、有機溶媒への溶解性が高い前記有機材料の前駆体を用いて膜を形成後、エネルギーを付与するなどして有機結晶性膜に変換することが最も好ましい。
このように、前駆体を変換して高結晶性膜を形成できる材料としては、例えば、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に開示されているようなペンタセン前駆体、特開2004−319982号公報、特開2005−322895号公報等に開示されているようなポルフィリン前駆体などが挙げられるが、変換反応が塗膜形成後確実に行えるという点でポルフィリン前駆体を用いることが最も好ましい。
《有機薄膜トランジスタ》
有機薄膜トランジスタは、支持体上に有機半導体層(有機半導体チャネル)で連結されたソース電極とドレイン電極を有し、その上にゲート絶縁層を介してゲート電極を有するトップゲート型と、支持体上に先ずゲート電極を有し、ゲート絶縁層を介して有機半導体チャネルで連結されたソース電極とドレイン電極を有するボトムゲート型に大別される。
本発明の有機薄膜トランジスタは、これらトップゲート型またボトムゲート型のいずれでもよく、またその形態を問わない。また、有機半導体層とソース電極及びドレイン電極との接触方法としては、有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を有するトップコンタクト型と、支持体あるいはゲート絶縁層上にソース電極及びドレイン電極を形成し、その上に有機半導体層を有するボトムコンタクト型とに大別される。
以下に、有機薄膜トランジスタを構成する各要素について説明する。
《有機半導体材料》
本発明に係る有機半導体材料は、半導体として機能するものであればどのような有機化合物を選択してもよい。
有機半導体材料としては、例えば、特開平5−55568号公報等にて開示されているペンタセンやテトラセンといったアセン類、特開平4−167561号公報等に開示されている鉛フタロシアニンを含むフタロシアニン類、特開2004−319982号公報等に開示されているベンゾポルフィリン等のポルフィリン類、その他、ペリレンやそのテトラカルボン酸誘導体、テトラチアフルバレン類等といった低分子量化合物や、特開平8−264805号公報等に開示されているα−チエニールもしくはセクシチオフェンと呼ばれるチオフェン6量体を代表例とする芳香族オリゴマー、またポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ−p−フェニレンビニレンといった共役高分子など(これらの多くは「アドバンスド・マテリアル」(Advanced Material)誌2002年、第2号99頁に記載されている)が一般的に知られている。
その中でも、有機半導体材料として低分子量化合物を用いた場合に本発明の効果がより発揮され、特に重量平均分子量が5000以下の低分子量有機半導体材料を用いると、高移動度で駆動する有機薄膜トランジスタを得る上でより好ましい。
前述した有機半導体材料の中でも、低分子量化合物として、例えば、ピレン、コロネン、オバレン等やその誘導体、アントラセン、ペンタセン等やその誘導体(アセン類)、ルブレンやその誘導体等に代表される縮合多環式炭化水素類、ベンゾジチオフェン、アントラジチオフェン等やその誘導体等に代表されるヘテロ原子を含む縮合多環式芳香族化合物類、チオフェンオリゴマー等が好ましい例として挙げられる。
ペンタセン類の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,4986等に記載のアセン類及びその誘導体等が挙げられる。
これらの中でも、特にJ.Amer.Chem.Soc.,vol.127,No.14,4986等に記載されるようなエチニル置換基を有する縮合多環式芳香族化合物類が好ましく用いられる。
これらの例としては下記の有機半導体化合物が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2008159666
また、本発明においては、有機半導体層(有機半導体膜ともいう)に、例えば、アクリル酸、アセトアミド、ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基等の官能基を有する材料や、ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン及びテトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体等のように電子を受容するアクセプターとなる材料や、例えば、アミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基等の官能基を有する材料、フェニレンジアミン等の置換アミン類、アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレンとその誘導体等のように電子の供与体であるドナーとなるような材料を含有させ、所謂ドーピング処理を施してもよい。
前記ドーピングとは電子授与性分子(アクセプター)または電子供与性分子(ドナー)をドーパントとして該薄膜に導入することを意味する。従って,ドーピングが施された薄膜は、前記の縮合多環芳香族化合物とドーパントを含有する薄膜である。本発明に用いるドーパントとしては公知のものを採用することができる。
(有機半導体材料の分子量)
本発明に係る有機半導体材料としては、半導体として機能するものであればどのような有機化合物を選択してもよいが、分子量100〜5000の範囲が好ましい。
ここで、分子量は当該業者周知の質量分析装置を用いて測定するが、分子量分布を示す化合物(オリゴマーや高分子等)の分子量(本願では、オリゴマー、高分子の分子量としては、重量平均分子量Mwを用いる。)、該分子量分布の測定は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)法などを用いて測定する。
(重量平均分子量(Mw)の測定及び分子量分布(Mw/Mn)について)
本発明に係る有機半導体材料の分子量は、上記のように100〜5000の範囲が好ましい。更に、前記有機半導体材料がオリゴマー、高分子のように分子量分布(Mw/Mn)を有するような場合、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(分子量分布)は3以下であることが好ましい。
本発明に係る有機半導体材料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行うことができる。
本発明に係る有機半導体材料の重量平均分子量(Mw)の測定について説明する。
具体的には、測定試料を1mgに対してTHF(脱気処理を行ったものを用いる)を1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。次いで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)装置に注入する。
GPC測定条件は40℃にてカラムを安定化させ、THF(テトラヒドロフラン)を毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。
カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組み合わせや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard column等の組み合わせ等が好ましい。
検出器としては、屈折率検出器(RI検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
本発明では、下記の測定条件にて分子量測定を行った。
(測定条件)
装置:東ソー高速GPC装置 HLC−8220GPC
カラム:TOSOH TSKgel Super HM−M
検出器:RI及び/またはUV
溶出液流速:0.6ml/分
試料濃度:0.1質量%
試料量:100μl
検量線:標準ポリスチレンにて作製:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500迄の13サンプルを用いて検量線(校正曲線ともいう)を作成、分子量の算出に使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔にすることが好ましい。
《有機半導体層の形成方法》
本発明に係る有機半導体層の形成方法について説明する。
有機半導体層を形成する方法としては、公知の方法で形成することができ、例えば、真空蒸着、MBE(Molecular Beam Epitaxy)、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、スパッタ法、CVD、レーザー蒸着、電子ビーム蒸着、電着、スピンコート、ディップコート、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、及びLB法等、またスクリーン印刷、インクジェット印刷、ブレード塗布等の方法を挙げることができる。
この中で、生産性の点で有機半導体層を塗布により形成することが好ましい。塗布法としては、有機半導体の溶液を用いて簡単、且つ精密に薄膜が形成できるスピンコート法、ブレードコート法、デイップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット印刷等が好まれる。
なお、Advanced Material誌1999年第6号、480〜483頁に記載のように、ペンタセン等前駆体が溶媒に可溶であるものは塗布により形成した前駆体の膜を熱処理して目的とする有機材料の薄膜を形成してもよい。
(塗布に用いられる有機溶媒)
有機半導体液滴を作製する際に使用される有機溶媒は、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素または脂肪族ハロゲン化炭化水素が好ましく、芳香族炭化水素、芳香族ハロゲン化炭化水素または脂肪族炭化水素がより好ましい。
芳香族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、メチルナフタレン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
芳香族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジブロモベンゼン、m−ジブロモベンゼン、o−ジヨードベンゼン、m−ジヨードベンゼン、クロロトルエン、ブロモトルエン、ヨードトルエン、ジクロロトルエン、ジブロモトルエン、ジフルオロトルエン、クロロキシレン、ブロモキシレン、ヨードキシレン、クロロエチルベンゼン、ブロモエチルベンゼン、ヨードエチルベンゼン、ジクロロエチルベンゼン、ジブロモエチルベンゼン、クロロシクロペンタジエン、クロロシクロペンタジエン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
脂肪族炭化水素の有機溶媒としては、例えば、オクタン、4−メチルヘプタン、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、デカン、2,2,3,3−テトラメチルヘキサン、2,2,5,5−テトラメチルヘキサン、3,3,5−トリメチルヘプタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、4−エチルヘプタン、2,3−ジメチルヘプタン、2−メチルオクタン、ドデカン、ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等の鎖状脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロペンタン、p−メンタン、デカリン、シクロヘキシルベンゼン等の環状脂肪族炭化水素等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。本発明に用いられる脂肪族炭化水素としては環状脂肪族炭化水素が好ましい。
脂肪族ハロゲン化炭化水素の有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ブロモホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ジフルオロエタン、フルオロクロロエタン、クロロプロパン、ジクロロプロパン、クロロペンタン、クロロヘキサン等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されない。
本発明で用いられるこれらの有機溶媒は、1種類あるいは2種類以上混合して用いてもよい。また、有機溶媒は50〜250℃の沸点を有するものが好ましい。
(有機半導体層の膜厚)
これら有機半導体層の膜厚としては特に制限はないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は有機半導体により異なるが、一般に1μm以下、特に10〜300nmが好ましい。
《電極》
本発明の有機薄膜トランジスタにおいて、ソース電極、ドレイン電極、及びゲート電極の形成材料としては導電性材料であれば特に限定されず、公知の電極材料にて形成される。
電極材料としては導電性材料であれば特に限定されず、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト及びカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が用いられる。
また、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等)も好適に用いられる。
ソース電極またドレイン電極を形成する材料としては、上に挙げた中でも有機半導体層との接触面において電気抵抗が少ないものが好ましく、p型半導体の場合は特に白金、金、銀、ITO、導電性ポリマー及び炭素が好ましい。
ソース電極またドレイン電極とする場合は、上記の導電性材料を含む溶液、ペースト、インク、分散液等の流動性電極材料を用いて形成したもの、特に導電性ポリマー、または白金、金、銀、銅を含有する金属微粒子を含む流動性電極材料が好ましい。
また、溶媒や分散媒体としては、有機半導体へのダメージを抑制するため水を60%以上、好ましくは90%以上含有する溶媒または分散媒体であることが好ましい。
金属微粒子を含有する流動性電極材料としては、例えば、公知の導電性ペースト等を用いてもよいが、好ましくは粒子径が1〜50nm、好ましくは1〜10nmの金属微粒子を必要に応じて分散安定剤を用いて、水や任意の有機溶剤である分散媒中に分散した材料である。
金属微粒子の材料としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、亜鉛等を用いることができる。
このような金属微粒子の分散物の製造方法として、ガス中蒸発法、スパッタリング法、金属蒸気合成法等の物理的生成法や、コロイド法、共沈法等の、液相で金属イオンを還元して金属微粒子を生成する化学的生成法が挙げられるが、好ましくは、特開平11−76800号、同11−80647号、同11−319538号、特開2000−239853号の各公報に示されたコロイド法、特開2001−254185号、同2001−53028号、同2001−35255号、同2000−124157号、同2000−123634号の各公報に記載されたガス中蒸発法により製造された金属微粒子の分散物である。
これらの金属微粒子分散物を用いて電極を成形し、溶媒を乾燥させた後、必要に応じて100〜300℃、好ましくは150〜200℃の範囲で形状様に加熱することにより、金属微粒子を熱融着させ、目的の形状を有する電極パターンを形成するものである。
電極の形成方法としては、上記を原料として蒸着やスパッタリング等の方法を用いて形成した導電性薄膜を公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極形成する方法、アルミニウムや銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等により、レジストを形成しエッチングする方法がある。また、導電性ポリマーの溶液あるいは分散液、金属微粒子を含有する分散液等を直接インクジェット法によりパターニングしてもよいし、塗工膜からリソグラフやレーザーアブレーション等により形成してもよい。
更に導電性ポリマーや金属微粒子を含有する導電性インク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
また、無電解メッキ法による電極形成法は、電極を設ける部分にメッキ剤と作用して無電解メッキを生じさせる触媒を配した後にメッキ剤を接触させるものである。
これにより前記触媒とメッキ剤とが接触し、前記部分に無電解メッキが施されて、電極が形成される。電極形成に無電解メッキを利用する方法は、低抵抗の電極を煩雑な工程なしに簡便、低コストで形成することができる点で好ましい。
本発明においては、ソース電極及びドレイン電極表面を更にアルキルチオール化合物等で表面修飾してもよい。
また、本発明においては、チャネルが形成される絶縁層表面をシランカップリング剤などの表面処理剤で処理することが好ましい。前記シランカップリング剤としては、基板上に自己組織化単分子膜を形成するものであれば特に限定はないが、一般的に知られるヘキサメチルジシラザンや、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシランなどのアルキルトリクロロシラン等が好ましく用いられる。
シランカップリング剤を用いた表面処理方法については、特開2004−327857号、同2005−32774号、同2005−158765号の各公報等に開示されているような公知の方法を適用することができる。例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition、化学蒸着)法等の気相法、スピンコート法やディップコート法等の液相法、更にスクリーン印刷法、マイクロモールド法、マイクロコンタクト法、インクジェット法等の印刷法などを適用することができる。
中でも本発明に好ましく用いられる方法としては、表面処理剤の溶液に基体を浸漬、または表面処理剤の溶液を基体に塗布して乾燥する湿式法が好ましい。
(湿式法)
湿式法では、例えば、基体を表面処理剤の1質量%トルエン溶液に10分浸漬後、乾燥する、またはこの溶液を基体上に塗布して、乾燥する。
(プラズマCVD法、大気圧プラズマCVD法)
表面処理剤(プラズマCVD法では薄膜形成材料を原料ともいう)を含む反応ガスを50〜500℃の範囲で加熱された基体上に供給し、熱的反応により薄膜を形成する熱CVD法や、前述の大気圧プラズマ法の装置と放電ガス、反応ガスを用いて、0.01〜100Paの減圧下で行う一般的なプラズマCVD法を用いた場合にも、本発明の効果を得ることができるが、移動度の向上、薄膜の均一性、薄膜の形成速度、非真空系での効率的生産という観点から大気圧プラズマ法が好ましい。
《ゲート絶縁層》
ゲート絶縁層としては種々の絶縁膜を用いることができるが、特に比誘電率の高い無機酸化物皮膜が好ましい。
無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化錫、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム、チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。これらの内、好ましいのは酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタンである。窒化珪素、窒化アルミニウム等の無機窒化物も好適に用いることができる。
上記皮膜の形成方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、大気圧プラズマ法(大気圧プラズマCVD法)、ディップコート法、キャスト法、リールコート法、バーコート法、ダイコート法等の塗布による方法、印刷やインクジェット等のパターニングによる方法等のウェットプロセスが挙げられ、材料に応じて使用できる。
ウェットプロセスは、無機酸化物の微粒子を任意の有機溶剤あるいは水に必要に応じて界面活性剤等の分散補助剤を用いて分散した液を塗布、乾燥する方法や、酸化物前駆体、例えば、アルコキシド体の溶液を塗布乾燥する、所謂ゾルゲル法が用いられる。
これらの内、好ましいのは大気圧プラズマ法である。
大気圧プラズマ法による絶縁膜の形成方法は、大気圧または大気圧近傍の圧力下で放電し、反応性ガスをプラズマ励起し、基材上に薄膜を形成する処理で、その方法については特開平11−61406号、同11−133205号、特開2000−121804号、同2000−147209号、同2000−185362号の各公報に記載されている。これによって、高機能性の薄膜を生産性高く形成することができる。
また、有機化合物皮膜の形成法としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、あるいはアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、及びシアノエチルプルラン等を用いることもできる。
有機化合物皮膜の形成法としては前記ウェットプロセスが好ましい。
無機酸化物皮膜と有機酸化物皮膜は積層して併用することができる。また、これら絶縁膜の膜厚としては一般に50nm〜3μm、好ましくは100nm〜1μmである。
《支持体》
支持体を構成する基体材料としては種々の材料が利用可能であり、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、サファイア、チッ化珪素、炭化珪素等のセラミック基体、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム燐、ガリウム窒素等半導体基体、紙、不織布等を用いることができる。
中でも、本発明に係る支持体は樹脂からなることが好ましく、例えば、プラスチックフィルムシートを用いることができる。プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリイミド、ボリカーボネート(PC)、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)等からなるフィルム等が挙げられる。
プラスチックフィルムを用いることで、ガラス基体を用いる場合に比べて軽量化を図ることができ、可搬性を高めることができるとともに衝撃に対する耐性を向上できる。
特にプラスチックフィルムを支持体として用いる場合は、例えば、特開2004−134694号公報に開示されているようなガスバリア層を始めとして、酸素、液体(水)、光等から有機薄膜トランジスタ素子を保護するための少なくとも一層、あるいは多層構成のバリア層(下引き層)を更に有することが好ましい。
下引き層に含有される無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウムストロンチウム、ジルコニウム酸チタン酸バリウム、ジルコニウム酸チタン酸鉛、チタン酸鉛ランタン、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム、フッ化バリウムマグネシウム,チタン酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ストロンチウムビスマス、タンタル酸ニオブ酸ビスマス、トリオキサイドイットリウム等が挙げられる。また、無機窒化物としては窒化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
それら内、好ましいのは酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化チタン、窒化珪素である。
本発明において、無機酸化物及び無機窒化物から選ばれる化合物を含有する下引き層は上述した大気圧プラズマ法で形成されるのが好ましい。
ポリマーを含む下引き層に用いるポリマーとしては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノキシ樹脂、ノルボルネン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニルとビニルアルコールの共重合体、部分加水分解した塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、塩素化ポリ塩化ビニル、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体、ポリアミド樹脂、エチレン−ブタジエン樹脂、ブタジエン−アクリロニトリル樹脂等のゴム系樹脂、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
《第2保護層》
また、本発明では、本発明に係る有機結晶性膜の他に支持体上、有機半導体層上、あるいは有機薄膜トランジスタ上に更なる第2保護層を設けることが好ましい。第2保護層としては、下引き層として前述したような無機酸化物や無機窒化物、ポリマー等が挙げられる。これにより、有機薄膜トランジスタの耐久性、特に有機溶媒耐性がより向上する。
《有機薄膜トランジスタ素子の製造》
本発明に係る有機結晶性膜を保護層として有する有機薄膜トランジスタの具体的な素子の層構成例を、図1〜図7に示す。図1、図2はボトムゲート、ボトムコンタクト型の構成例であり、図3、図4(a)、図4(b)はボトムゲート、トップコンタクト型の構成例であり、図5(a)、図5(b)、図6はトップゲート、トップコンタクト型の構成例であり、図7はトップゲート、ボトムコンタクト型の構成例であるが、本発明はこれらに限らない。
本発明に係る有機結晶性膜は、一般的に保護層として用いられるような無機酸化物や無機窒化物、ポリマーなどでは不十分であった水分からの保護をより強固にする効果がある。これにより、高温、高湿度下における有機薄膜トランジスタの耐久性が格段に向上する。
図8は、本発明の有機薄膜トランジスタが複数配置される有機薄膜トランジスタ素子シート10の1例の概略の等価回路図である。
有機薄膜トランジスタシート10は、マトリクス配置された多数の有機薄膜トランジスタ11を有する。16は各有機薄膜トランジスタ11のゲート電極のゲートバスラインであり、17は各有機薄膜トランジスタ11のソース電極のソースバスラインである。各有機薄膜トランジスタ11のドレイン電極には、出力素子12が接続され、この出力素子12は、例えば、液晶、電気泳動素子等であり、表示装置における画素を構成する。図示の例では、出力素子12として液晶が抵抗とコンデンサからなる等価回路で示されている。13は蓄積コンデンサ、14は垂直駆動回路、15は水平駆動回路である。
このような、基板上に有機TFT素子を2次元的に配列した薄膜トランジスタシートの作製に本発明の方法を用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
〔有機薄膜トランジスタ素子(TFT素子)1の製造〕
本発明の有機薄膜トランジスタの一態様である、ボトムゲート、ボトムコンタクト型(図2)の有機薄膜トランジスタ素子1を製造した。
《下引き層の形成》
支持体6として、ポリエーテルスルホン樹脂フィルム(200μm)を用い、該フィルム上に先ず50W/m2/分の条件でコロナ放電処理を施した。
次いで、下記組成の塗布液を乾燥膜厚2μmになるように塗布し、90℃で5分間乾燥した後、60W/cmの高圧水銀灯下10cmの距離から4秒間硬化させた。更に、その層の上に下記条件で連続的に大気圧プラズマ処理して厚さ50nmの酸化珪素膜を設け、これらの層を下引き層7とした。
(下引き層形成用塗布液の組成)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート単量体 60g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート2量体 20g
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート3量体以上の成分 20g
ジエトキシベンゾフェノンUV開始剤 2g
シリコーン系界面活性剤 1g
メチルエチルケトン 75g
メチルプロピレングリコール 75g
(大気圧プラズマ処理条件)
〈使用ガス〉
不活性ガス:ヘリウム 98.25体積%
反応性ガス:酸素ガス 1.5体積%
反応性ガス:テトラエトキシシラン蒸気(ヘリウムガスにてバブリング)
0.25体積%
〈放電条件〉
放電出力:10W/cm2
〈電極条件〉
電極は冷却水による冷却手段を有するステンレス製ジャケットロール母材に対して、セラミック溶射によるアルミナを1mm被覆し、その後テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により封孔処理を行い、表面を平滑にしてRmax5μmとした誘電体(比誘電率10)を有するロール電極であり、アースされている。一方、印加電極としては、中空の角型のステンレスパイプに対し上記同様の誘電体を同条件にて被覆した。
《ゲート電極の形成》
次いで、ゲート電極4を形成する。
即ち、上記の下引き層7上に下記組成の光感応性樹脂組成液1を塗布し、100℃にて1分間乾燥させることで厚さ2μmの光感応性樹脂層を形成した後、発振波長830nm、出力100mWの半導体レーザーで200mJ/cm2のエネルギー密度でゲートバスライン及びゲート電極のパターンを露光し、アルカリ水溶液で現像してレジスト像を得た。
更に、その上にスパッタ法により厚さ300nmのアルミニウム皮膜を一面に成膜した後、MEKで上記光感応性樹脂層の残存部を除去することでゲートバスライン及びゲート電極4を作製する。
(光感応性樹脂組成液1)
色素A 7部
ノボラック樹脂(フェノールとm−、p−混合クレゾールとホルムアルデヒドを共縮合させたノボラック樹脂(Mw=4000、フェノール/m−クレゾール/p−クレゾールのモル比がそれぞれ5/57/38)) 90部
クリスタルバイオレット 3部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 1000部
Figure 2008159666
次いで、以下の陽極酸化皮膜形成工程により、平滑化、絶縁性向上のための補助的絶縁膜として、ゲート電極4上に陽極酸化被膜を形成した(図では省略)。
(陽極酸化被膜形成工程)
ゲート電極を形成した後、基板をよく洗浄し、30質量%硫酸水溶液中で2分間、30Vの低電圧電源から供給される直流を用いて、陽極酸化皮膜の厚さが120nmになるまで陽極酸化を行った。よく洗浄した後に、1気圧、100℃の飽和した蒸気チャンバーの中で蒸気封孔処理を施した。このようにして、陽極酸化被膜を有するゲート電極を下引き処理したポリエーテルスルホン樹脂フィルム上に作製した。
《ゲート絶縁層の形成》
次いで、更にフィルム温度200℃にて上述した大気圧プラズマ法の使用ガスを下記に変更し、厚さ30nmの酸化珪素層を設け、前記した陽極酸化アルミニウム層を併せて、厚さ150nmのゲート絶縁層5を形成した。
〈使用ガス〉
不活性ガス:アルゴン 98.9体積%
反応性ガス:水素ガス 0.8体積%
反応性ガス:テトラプロポキシチタン蒸気(150℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング) 0.3体積%
《ソース電極、ドレイン電極の形成》
次いで、ソース電極2、ドレイン電極3を形成する。
下記無電解メッキ触媒液をインクとして用い、回転ロール(支持ロール)にはバイアス電圧2000Vの電圧を印加し、更にパルス電圧(400V)を重畳させてソース、ドレイン電極パターンに従ってインクを吐出した。ノズル吐出口の内径は10μmとし、ノズル吐出口と基材とのギャップは500μmに保持した。メッキ触媒含有インクとして下記処方のものを用いた。
(無電解メッキ触媒液)
可溶性パラジウム塩(塩化パラジウム) 20質量%(Pd2+濃度1.0g/L)
イソプロピルアルコール 12質量%
グリセリン 20質量%
2−メチルペンタンチオール 5質量%
1,3−ブタンジオール 3質量%
イオン交換水 40質量%
更に乾燥定着させて、触媒パターンを形成した。
次いで、スクリーン印刷法により、下記無電解金メッキ液をインクとして用いて、メッキ触媒パターンが形成された領域を含む領域に印刷を行った。メッキ剤がメッキ触媒と接触することでメッキ触媒のパターン上に無電解メッキが施され、金薄膜が形成された。
(無電解金メッキ液)
ジシアノ金カリウム 0.1モル/L
蓚酸ナトリウム 0.1モル/L
酒石酸ナトリウムカリウム 0.1モル/L
上記を溶解し、均一溶液とする。
金薄膜が形成された基板表面を純水で充分に洗浄、乾燥して、ソース電極2、ドレイン電極3を形成した。
《有機半導体層の形成》
ソース電極2、ドレイン電極3が形成されたゲート絶縁層5上に、窒素雰囲気下、ホットプレート上で60℃に加熱しながら、有機半導体化合物(1)のトルエン溶液(0.1質量%)を滴下し、有機半導体膜(厚さ50nm)を形成した。
《第2保護層の形成》
続いて、ポリビニルアルコール(PVA、Aldrich製、Mw=31000〜50000(GPC法))水溶液(5質量%)を、前工程で作製した有機半導体膜上に1ml展開し、3000rpmで120secの間スピンコートを行った後、減圧下80℃にて乾燥することで、第2保護層9を形成した。
《有機結晶性膜の形成》
更に、窒素雰囲気下、有機結晶性膜を形成するための前駆体化合物(C1)のクロロホルム溶液(0.5質量%)を、前工程で作製した第2保護層上に1ml展開し、1000rpmで60secの間スピンコートを行うことで、前駆体化合物(C1)の膜を形成した後、ホットプレート上で180℃、30分間加熱することにより、有機結晶性膜8を形成した。
Figure 2008159666
以上により、有機薄膜トランジスタ素子1を製造した。
〔有機薄膜トランジスタ素子(TFT素子)2の製造〕
有機薄膜トランジスタ素子1の製造において、有機結晶性膜の形成を行わなかった以外は有機薄膜トランジスタ素子1と同様にして、有機薄膜トランジスタ素子2を製造した。
〔有機薄膜トランジスタの評価〕
得られた有機薄膜トランジスタ素子1(本発明)、2(比較)の各々について、トランジスタ特性の評価を行った。有機薄膜トランジスタ素子1、2は、いずれもpチャンネルのエンハンスメント型FETの動作特性を示した。各々の有機薄膜トランジスタ素子について、I−V特性の飽和領域からキャリア移動度を求め、更にON/OFF比(ドレインバイアス−40Vとし、ゲートバイアス−50V及び0Vにしたときのドレイン電流値の比率)を求めた。
また、25℃、湿度45%の条件下で1ヶ月放置したとき、及び50℃、湿度60%の条件下で1ヶ月放置したとき、それぞれのキャリア移動度及びON/OFF比についても評価した。
その結果、作製直後のトランジスタ特性は、有機薄膜トランジスタ素子1:キャリア移動度0.35(cm2/V・s)、ON/OFF比4×106、有機薄膜トランジスタ素子2:キャリア移動度0.33(cm2/V・s)、ON/OFF比4×106であり、有機薄膜トランジスタ素子1、2ともに優れた性能が得られたが、25℃、湿度45%の条件下で1ヶ月放置後のトランジスタ特性は、有機薄膜トランジスタ素子1:キャリア移動度0.31(cm2/V・s)、ON/OFF比2×106、有機薄膜トランジスタ素子2:キャリア移動度0.15(cm2/V・s)、ON/OFF比8×105となり、有機結晶性膜を保護層として有する本発明の有機薄膜トランジスタ素子1の方が経時安定性に優れていることが分かった。
更に、50℃、湿度60%の条件下で1ヶ月放置後のトランジスタ特性は、有機薄膜トランジスタ素子1:キャリア移動度0.22(cm2/V・s)、ON/OFF比1×106、有機薄膜トランジスタ素子2:キャリア移動度0.01(cm2/V・s)、ON/OFF比1×104となり、有機薄膜トランジスタ素子2において移動度の低下、及びオフ電流増加によるON/OFF比の低下が見られた一方で、有機薄膜トランジスタ素子1は高温、高湿度下においても、トランジスタ特性の劣化はほとんど見られなかった。
以上の結果より、本発明の有機薄膜トランジスタ素子1は、比較の有機薄膜トランジスタ素子2と比べて、特に高温、高湿度下における経時安定性に優れていることが分かった。
本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(ボトムゲート、ボトムコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(ボトムゲート、ボトムコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(ボトムゲート、トップコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(ボトムゲート、トップコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(トップゲート、トップコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(トップゲート、トップコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタの構成例(トップゲート、ボトムコンタクト型)を示す図である。 本発明の有機薄膜トランジスタシートの一例の概略の等価回路図である。
符号の説明
1 有機半導体層
2 ソース電極
3 ドレイン電極
4 ゲート電極
5 ゲート絶縁層
6 支持体
7 下引き層
8 有機結晶性膜
9 第2保護層
10 有機薄膜トランジスタシート
11 有機薄膜トランジスタ
12 出力素子
13 蓄積コンデンサ
14 垂直駆動回路
15 水平駆動回路
16 ゲートバスライン
17 ソースバスライン

Claims (12)

  1. 有機電子デバイスを保護するための保護層を有する有機電子デバイスにおいて、該保護層に有機結晶性膜を用いることを特徴とする有機電子デバイス。
  2. 前記有機結晶性膜が有機溶媒に対して実質不溶な膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機電子デバイス。
  3. 前記有機結晶性膜が水に対して実質不溶な膜であることを特徴とする請求項1に記載の有機電子デバイス。
  4. 前記有機結晶性膜が低分子有機材料から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
  5. 前記低分子有機材料がπ共役系有機材料からなることを特徴とする請求項4に記載の有機電子デバイス。
  6. 前記π共役系有機材料がポルフィリン類であることを特徴とする請求項5に記載の有機電子デバイス。
  7. 前記有機結晶性膜が溶液プロセスにて形成されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
  8. 前記有機結晶性膜が低分子有機材料の前駆体を用いて形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機電子デバイス。
  9. 前記前駆体の溶液を用いて製膜後、エネルギーを付与して変換反応を行い、有機結晶性膜を形成することを特徴とする請求項8に記載の有機電子デバイス。
  10. 支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層、保護層を有する有機薄膜トランジスタにおいて、該保護層に請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機電子デバイスにおける有機結晶性膜を用いることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
  11. 有機電子デバイスを保護するための保護層を有する有機電子デバイスの製造方法において、請求項1〜9のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの保護層を溶液プロセスにて形成することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
  12. 支持体上にゲート電極、絶縁層、ソース電極及びドレイン電極、有機半導体層、保護層を有する有機薄膜トランジスタの製造方法において、請求項10に記載の有機薄膜トランジスタの保護層を溶液プロセスにて形成することを特徴とする有機薄膜トランジスタの製造方法。
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