JP2006303423A - 電界効果トランジスタ - Google Patents

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Abstract

【課題】 有機半導体部を有し、且つ該有機半導体部の駆動安定性を高くすることにより、駆動による特性変化の小さな電界効果トランジスタを提供する。
【解決手段】 ゲート絶縁部、有機半導体部、並びにソース電極及びドレイン電極とを含有する電界効果トランジスタであって、70℃でゲート絶縁部中の電界強度が100±5MV/mになるような電圧をゲートに5.0±0.1時間印加したときの、スレショルド電圧の変化が5V以内であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
【選択図】なし

Description

本発明は、電界効果トランジスタに関し、更に詳しくは、有機半導体を用いて形成された有機半導体部を有する電界効果トランジスタに関する。
支持基板上に、ゲート絶縁部により隔離されたゲート電極及び半導体部と、該半導体部に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有する電界効果トランジスタにおいて、その半導体部に有機材料が使用されている。有機材料は、溶液の塗布により半導体部を形成でき、従前のシリコン等の無機材料を用いた真空プロセス等による形成方法に比して、コスト面での優位性に加えて、ポリマー等の使用による軽量化、耐衝撃性の付与等が可能であることから注目されている。
しかしながら、有機半導体を用いた素子は、無機半導体の素子と比較して、一般に駆動安定性が悪いことが知られている。駆動安定性の一項目としては、スレッショルド電圧のシフトが挙げられる。これは、スレッショルド電圧が、ゲート電圧の印加によるストレスにより変化することである。無機半導体材料の場合、スレッショルド電圧のシフトが3V以内で有れば、電界効果トランジスタの代表的な用途である表示材料の寿命内で実用性の面で許容範囲とされている。しかしながら、半導体にペンタセンやポリフルオレン系のポリマーといった有機材料を用いた電界効果トランジスタでは、スレッショルド電圧のシフトが大きく実用上問題があった(非特許文献1〜3)。
Journal of Applied Physics 2003年,93巻,p.347-354 Physical Review B,2003年,68巻,085316 Applied Physics Letters,79巻,No.8,p.1124−1126
従来の有機半導体では、電圧ストレスによるスレッショルド電圧の変化が大きく、液晶ディスプレイ等、動画を表示するための駆動回路用の素子として用いるには到り得ていないものであった。特に、有機ELに代表される電流駆動素子の場合には、有機EL素子に電流を流すトランジスタ(ドライバートランジスタ)は、表示中は常にゲートに電圧が印加されたオン状態であるため、ゲート電圧へのストレス条件が厳しい。又、電界効果トランジスタを組み合わせて、インバータやAND回路などの回路を作製し、ディスプレイのシフトレジスタ等の周辺回路に利用する際には、スレッショルド電圧のシフトに由来する特性変化の為、駆動電流の低下を引き起こし、応答速度の低下等が問題になる。
このようなことから、長期間のゲート電圧の印加(ストレス)によるスレッショルド電圧のシフトの小さな有機電界効果トランジスタが求められていた。従って、本発明は、有機半導体部を有し、且つ、該有機半導体部の駆動安定性を高くすることにより、駆動による特性変化の小さな電界効果トランジスタを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、有機電界効果トランジスタにおいて、スレッショルド電圧のシフトが特定値以下である場合に、電界効果トランジスタの駆動安定性が得られ、実用上有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の要旨は、ゲート絶縁部、有機半導体部、並びにソース電極及びドレイン電極とを含有する電界効果トランジスタであって、70℃でゲート絶縁部中の電界強度が
100±5MV/mになるような電圧をゲートに5.0±0.1時間印加したときの、スレショルド電圧の変化が5V以内であることを特徴とする、電界効果トランジスタに存する。
本発明によれば、有機半導体溶液を用いて形成された有機半導体部を有し、且つ、該有機半導体部の駆動安定性を高くすることにより、長寿命の電界効果トランジスタ、さらにはそれを用いた表示デバイスや電子回路を提供することができる。
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内であれば種々に変更して実施することができる。
本発明の電界効果トランジスタは、少なくとも、ゲート絶縁部、有機半導体部、並びにソース電極及びドレイン電極とを含有する。好ましくは、更に、支持基板、及びゲート電極を有する。更に好ましくは、支持基板上に、ゲート絶縁部により隔離されたゲート電極及び有機半導体部と、該有機半導体部に接して設けられたソース電極及びドレイン電極とを有するものである。電界効果トランジスタは、ゲート電極に電圧が印加されると、ソース電極とドレイン電極との間の有機半導体部とゲート絶縁部の界面には電流の流路(チャネル)が形成され、この構成により、ゲート電極から印加する入力電圧によってソース電極とドレイン電極との間を流れる電流を制御する機構となっているものである。
(電界効果トランジスタのスレショルド電圧の変化)
本発明の電界効果トランジスタは、70℃でゲート絶縁部中の電界強度が100±5MV/mになるような電圧をゲートに5.0±0.1時間印加した時の、スレショルド電圧の変化が5V以内であることを特徴とする。
ゲート絶縁部中の電界強度が100±5MV/mになるような電圧をゲートに印可するとは、ソース電極とドレイン電極間に印加する電圧をゲート絶縁膜の膜厚で割って求められる電界強度(単位V/m)が(100±5)×106となる事を意味する。印加時間は
、5.0±0.1時間であるが、印加中のスレッショルド電圧の変化をモニターする為に、50秒以上印加した後に1秒以内でFET特性を調べる事は許容である。
スレショルド電圧は、電界効果トランジスタの電流電圧特性から求めることができる。例えば、電荷効果トランジスタの飽和領域のドレイン電流は、次の式(1)で与えられる。
Figure 2006303423
(式中、Idはドレイン電流、Wは電極の幅、Lは電極の長さ、Ci は静電容量、μは移
動度、Vgはゲート電圧、Vtはスレッショルド電圧である。)
上記式より、飽和領域でのドレイン電流の平方根とゲート電圧に対してプロットして、直線部分の傾きから移動度が、直線部分を外挿したドレイン電流=0の切片の電圧がスレッショルド電圧として求めることができる。また、一定のゲート絶縁膜でのドレイン電流は、電極の形状(W,L)や絶縁膜の静電容量(Ci)が変化しなければ、移動度μとスレッショルド電圧Vtで決まる。移動度μが変化しない事が確認されれば、ドレイン電流の変化はスレッショルド電圧の変化に還元できる。
電圧印加によるドレイン電流の変化が小さいのが望ましいのであるが、これはスレショルド電圧の変化が5V以内、好ましくは4V以下、さらに好ましくは3V以下が望ましい。
スレショルド電圧のシフトの原因は十分に明らかになってはいないが、半導体中のトラップ準位の形成等が考えられており、一般に温度を上げると大きくなる傾向がある。たとえば、アモルファスシリコンを半導体部に用いたトランジスタでは、スレショルド電圧のシフトは次の実験式で表わされる(TFT/LCD Liquid-Crystal Displays Addressed by Thin-Film Transistors,1996年,p67,T.Tsukada著、Gordon and Breach Science Publishers)。
Figure 2006303423
ここで、βは1〜2、γは0.3〜0.4、Eaは0.2〜0.3eVである。有機半導体もこれに近い温度依存性とゲート電圧依存性を仮定して、β=1.5、Ea=0.25eVを用いることができる。
一般に、室温でのスレショルド電圧のシフトが3V以内ならば、表示素子の寿命から考えて、実用上許容範囲とされている。スレショルド電圧のシフトは、トランジスタ特性が変化して外部の駆動回路の許容範囲を超えてしまうと、所望のディスプレイの動作ができなくなってしまう。従って、スレショルド電圧シフトは小さいほうが好ましいのであるが、特に3V以内であれば、ゲート電圧設定が小さくでき、それに伴い消費電力が小さくなり、それに伴い駆動回路用ICのプロセス/設計を低耐圧のものが用いることができ低コストになる効果が顕著であり、実用上非常に有利になる。
通常ディスプレイを駆動する際には、50MV/m程度の電場になるような電圧が印加される。つまり式2で、70℃でゲート絶縁部中の電界強度が100MV/mになったものでは、室温駆動の場合のスレショルド電圧シフトの10倍程度の加速になると見積もられる。
また、ディスプレイの縦方向のライン数分の1(XGAでは768線なので1/768)しか印加されないので、ディスプレイの寿命を20,000時間とすると、実際にゲート電圧が印加されている時間は26時間程度になる。
以上のことから、70℃でゲート絶縁膜中の電界強度が100MV/mとなるような電圧をゲートに5時間印加した時、スレショルド電圧の変化が(3/26)×10×5=5.7V以内におさまるという条件を満たせば、一般的に言われている室温での動作寿命の要求特性を十分満たすことができる。
液晶ディスプレイでは、交流駆動しているので、ゲート電圧は逆極性の電圧も印加されその場合は逆方向のスレショルド電圧シフトが起こる為、全スレショルド電圧の変化は相殺されて、一つの極性の電圧の印加によるシフトよりも小さくなる事が期待される。しかしながら、有機ELや電気泳動型のディスプレイ等、逆極性が印加されない駆動方法もあるため、本発明に記載されているような、一つの極性の電圧の印加によるスレショルド電圧シフトが小さいことが望ましい有機トランジスタである。
有機ELのような電流駆動型ディスプレイのピクセル回路には、通常スイッチングトランジスタと呼ばれるピクセルを選択する際にオンになるトランジスタと、画素(有機EL)への電流を制御する駆動トランジスタの駆動トランジスタが用いられる。この駆動トランジスタは、常にゲート電圧が印加されて有機EL素子部分に電流を供給しているのであり、スレショルド電圧の変化がスイッチングトランジスタよりも問題になる。そのためにスレショルド電圧に依存しない回路が工夫されているが、そのような回路でもあまりにスレッショルド電圧が変化しすぎると対応できなくなってしまう。スレショルド電圧変化が3V以内であれば、問題なく有機ELの駆動トランジスタとして利用できるようになる。
スレショルド電圧の変化を大きくさせる要因としては、半導体部に存在する深いトラップが考えられる。深いトラップに捕獲された電荷は、動けない電荷となり、これがスレショルド電圧の変化を大きくさせる。0.01cm/Vs以上の比較的高い移動度を有する通常の有機半導体膜は、単結晶である場合以外は、多結晶体や秩序構造を有するポリマー構造体である事が多い。有機物の単結晶は非常に作製しにくく扱いにくい為に実用的でないので除外して考える。深いトラップの原因となるのは、不純物によるもの、粒子間の接続点付近に存在するもの、粒子内の構造欠陥によるもの等が挙げられる。従って、塗布で形成される有機半導体の電圧ストレスによって起因されるスレショルド電圧の変化を小さくするには、次の方法があげられる。
(1)純度の高い有機半導体材料を使用する。
不純物由来の深いトラップを少なくするために純度の高い有機材料を使用する。95wt%以上の純度が好ましく、さらに好ましくは97wt%以上である。
(2)結晶粒の大きさを大きくして、粒子の接続点を少なくする。
例えば、結晶粒が大きくなる有機半導体材料を選択する、または、結晶粒が大きくなるような製膜条件を選択する事により、粒子の接続点そのものを少なくする。
(3)結晶粒子間に存在するトラップを制御する。
例えば、適切なオーバーコート処理を行うことにより、粒子間のトラップを浅くしたり、なくす事が考えられる。オーバーコート処理をすると、オーバーコート剤が粒子間のすきまを通して、有機トランジスタの電気的特性に関係する、半導体膜の絶縁膜近傍であるチャネル形成領域まで到達し、粒子間に存在するトラップ部分に直接作用し、そのトラップを浅くしたり、なくす事ができる。半導体材料により組み合わせるべき適切な材料を選ぶ必要がある。
(4)ボトムゲート構造の素子において、絶縁膜に有機ポリマーを使用して、その上に有機半導体を形成する。
これは、有機ポリマー絶縁膜の上に有機半導体を製膜する際に、ポリマーと有機半導体の間の濡れ性や接着性が、無機酸化物等の無機絶縁膜材料と有機半導体の間のそれよりも良好なことから、トラップの少ない有機半導体膜が形成されるためと考えられる。ただし、ポリマー材料の極性の低いもの、吸水率の低いもののが好ましい。
(5)トランジスタをエージング処理する。
深いトラップが、構造欠陥によるものである場合、エージング処理により材料構造を十分に緩和させることによって、そのトラップを減少させることができる。このエージング処理には、長時間放置する、加熱する事に加え、実際に電流を流して電荷の存在する状態に長時間置いておく事も有効である。
これらの手法は、材料によって有効性が異なり、これらを組み合わせることによって所望の特性を得ることができる事が多い。出来るだけ多くの項目を組み合わせることが望ましいのであるが、そのための手間(コスト)や素子を作製するための他のプロセスとの兼ね合いから、適切なものを選ぶことも可能である。
以下、本発明の電界効果トランジスタにおける各構成要素について説明する。
<支持基板>
本発明の電界効果トランジスタにおいて、支持基板としては、従来の電界効果トランジスタに用いられているものを用いることができる。
本発明における支持基板の材料としては、電界効果トランジスタ及びその上に作製される表示素子、表示パネル等を支持できるものであればよく、公知のガラス、酸化珪素、及び珪素等の金属等の無機材料、並びに各種有機ポリマー等の有機材料が挙げられる。これらは、例えば、無機材料の基板の表面に有機ポリマー等をコーティングして表面に絶縁層
を形成した基板等の無機材料と有機材料との併用も含めて2種以上を組み合わせて用いることもできる。尚、有機ポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルスルフォン、エポキシ樹脂、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸、ポリシルセスキオキサン、及びポリオレフィン等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリパラバン酸等の縮合系ポリマーや、ポリビニルフェノール等の架橋体が耐熱性や耐溶剤性の点から好ましい。ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾールが更に好ましく、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、又はポリイミドが特に好ましい。尚、これらの有機ポリマーは、必要に応じて、充填材、添加剤等を含んでいてもよい。
又、前記基板材料による基板の厚みは、0.01〜10mmの範囲であるのが好ましく、0.05〜2mmの範囲であるのが特に好ましい。これら範囲の中で、例えば、有機ポリマーの基板の場合は、0.05〜0.1mm程度とし、ガラス、珪素等の基板の場合は、0.1〜10mm程度とするのが好ましい。又、基板は、複数の層からなる積層体であってもよい。
又、本発明においては、後述する有機半導体部は有機半導体溶液を用いてその塗布等により形成され、比較的低温下での電界効果トランジスタ製造プロセスが採られることから、支持基板として無機材料に比して耐熱性等が劣る有機ポリマーのフィルム等を用い易い。その場合、無機材料に比して軽量で柔軟性に優れ、耐衝撃性等にも優れた電界効果トランジスタとすることができる。
又、これら基板の表面には、例えば、親水性と疎水性のバランスを調整すること等によりその上に形成される層の特性を変化させるための表面処理が施されていてもよい。例えば、半導体部は、分子の配向の状態等によって特性が大きく変わるので、基板の表面処理によって、基板と半導体部との界面部分における分子配向が制御され、特性を改善することができる。そのような基板の表面処理手段としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、シクロヘキセン、オクタデシルトリクロロシラン等による疎水化処理、塩酸や硫酸、酢酸等による酸処理、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア等によるアルカリ処理、オゾン処理、弗素化処理、酸素やアルゴン等のプラズマ処理、Langmuir-Blodgett膜の形成処理、その他の絶縁体や半導体等の薄膜の形成処理、コロナ放電等の電気的処理、機械的処理等が挙げられる。
<ゲート電極>
本発明の電界効果トランジスタにおいて、ゲート電極の材料としては、従来の電界効果トランジスタに用いられている導電性材料を用いることができる。例えば、白金、金、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属;InO2 、SnO2 、ITO等の導電性金属酸化物;ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;又は、それらに塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF5 、AsF5 、FeCl3 等のルイス酸、沃素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等のドーパントを添加したもの;さらに、カーボンブラック、グラファイト粉、金属微粒子等がバインダーに分散された導電性複合材料等が挙げられる。
これらの導電性材料によるゲート電極は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、塗布法、印刷法、ゾルゲル法等により形成された膜を、必要に応じて所望の形状にパターンニングすることにより形成される。そのパターンニング法としては、例えば、フォトレジストのパターンニングと、エッチング液によるウェットエッチングや反応性のプラズマによるド
ライエッチング等のエッチングを組み合わせたフォトリソグラフィー法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィーの手法、及びこれらの手法を複数組み合わせた手法等が挙げられる。又、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して材料を除去したり、材料の導電性を変化させることにより、直接パターンを形成することも可能である。
これらゲート電極の厚みは、1nm以上であるのが好ましく、10nm以上であるのが特に好ましい。又、100nm以下であるのが好ましく、50nm以下であるのが特に好ましい。
<ソース電極、ドレイン電極>
ソース電極は、配線を通じて外部から電流が流入する電極であり、ドレイン電極は、配線を通じて外部に電流を送り出す電極であり、後述する有機半導体部に接して設けられており、本発明の電界効果トランジスタにおいて、ソース電極及びドレイン電極の材料としては、従来の電界効果トランジスタに用いられている導電性材料を用いることができ、例えば、前記ゲート電極の材料として挙げたと同様の材料が挙げられる。
又、これらの導電性材料によるソース電極、及びドレイン電極の形成方法も、前記ゲート電極の成膜法及び必要に応じたパターンニング法として挙げたと同様の成膜法及びパターンニング法により形成される。又、レーザーや電子線等のエネルギー線を照射して電極外の部分を除去したり、電極材の導電性を変化させたりすることにより、直接にパターンを形成することもできる。中で、ソース電極及びドレイン電極におけるパターンニング法としては、フォトリソグラフィー法による方法が好ましい。そのフォトリソグラフィー法としては、電極材を成膜し、成膜の電極外の部分をエッチングにより除去する方法、及び、電極外の部分にレジスト等を塗布等によりパターンニングした後、その上に電極材を成膜し、しかる後、レジスト等を溶解する溶剤で溶出することにより、その上に成膜された電極材を除去する方法(リフトオフ法)が挙げられる。
又、これらソース電極及びドレイン電極の厚みも、1nm以上であるのが好ましく、10nm以上であるのが特に好ましい。又、100nm以下であるのが好ましく、50nm以下であるのが特に好ましい。又、ソース電極とドレイン電極間の間隔(チャネル長さL)は100μm以下として形成するのが好ましく、50μm以下として形成するのが特に好ましい。チャネル幅Wは2,000μm以下として形成するのが好ましく、500μm以下として形成するのが特に好ましい。L/Wは0.1以下として形成するのが好ましく、0.05以下として形成するのが特に好ましい。
<ゲート絶縁部>
本発明の電界効果トランジスタにおいて、ゲート絶縁部は、ソース電極及びドレイン電極とゲート電極のオーバーラッピング領域、並びにゲート電極上のチャネル領域が電気的絶縁領域として維持する機能を有するものである。尚、ここで、電気的絶縁とは、電気伝導度が10-9S/cm以下のことを言う。
そして、本発明において、そのゲート絶縁部の材料としては、従来の電界効果トランジスタに用いられている材料を用いることができる。例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリベンゾキサゾール、ポリイミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリシルセスキオキサン等の有機ポリマー等の有機材料、及び、二酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、窒化珪素等の窒化物、SrTiO3 、BaTiO3 等の強誘電性酸化物等の無機材料が挙げられ、無機材料としては二酸化珪素が好ましい。
ゲート絶縁部材料の中でも、特に好ましいのが有機材料であり、さらに好ましくは高分子材料である。高分子材料とは通常数平均分子量5000以上、好ましくは1万以上のものである。高分子材料の中でも、耐溶剤性や耐熱性に優れた、ポリイミド材料やスチレンが好ましく、さらに好ましくは吸水性の小さなフッ素原子を含むポリイミド材料がさらに望ましい。
有機材料としては、溶液としての層形成時における流動性の面から、ガラス転移点が80℃以上であるものが好ましい。
ゲート絶縁部材料は、ゲート絶縁部としての脆性や膜強度等の面から、有機材料を5重量%以上含むのが好ましく、15重量%以上含むのが更に好ましく、50重量%以上含むのが特に好ましく、90重量%以上含むのが最も好ましい。有機材料と無機材料の混合物も用いられ、例えば、上記酸化物や窒化物、強誘電性酸化物等の粒子を分散させた上記有機ポリマー等が挙げられる。
絶縁部の吸水率は低い方が好ましく、好ましくは1mg/cm3以下、さらに好ましく
は0.65mg/cm3以下である。吸水率が高すぎると有機半導体と組み合わせた場合
、オンオフ比が低かったり、高い移動度得られないような問題点がある。
尚、支持基板を溶解しない溶剤に可溶で、且つ、後述する有機半導体部の形成時の溶剤に侵食されない耐溶剤性を有するものが好ましい。
又、ゲート絶縁部は、スピンコーティングやブレードコーティング等の塗布法、蒸着法、スパッタ法、スクリーン印刷やインクジェット等の印刷法、アルミ上のアルマイトのように金属上に酸化膜を形成する方法等、材料特性に合わせた方法で形成することができる。
又、ゲート絶縁部の厚みは、膜厚が薄すぎるとリーク電流が発生するおそれが生じることから、0.1μm以上であるのが好ましく、0.2μm以上であるのが特に好ましく、又、厚すぎるとゲート絶縁部としての容量が低下し、ゲート電圧印加時のキャリア誘起量が低下することから、4μm以下であるのが好ましく、2μm以下であるのが特に好ましい。
尚、一般にゲート絶縁部の静電容量が大きくなる程、ゲート電圧を低電圧で駆動できることになるので有利になる。これには、誘電率の大きな絶縁材料を用いるか、絶縁部の厚さを薄くすることで対応できる。又、ゲート絶縁部は、ゲート電極への漏れ電流、電界効果トランジスタの低ゲート電圧駆動に関係することから、室温での電気伝導度が10-12 S/cm以下、更には10-14 S/cm以下、比誘電率が2.0以上、更には2.5以上を示すのが好ましい。
これまでは、主に半導体に由来するスレッショルド電圧変化に着目し、絶縁膜に由来する半導体のトラップの制御について説明してきた。スレッショルド電圧変化は、半導体材料に関係するものに加え、絶縁膜のみが原因で引き起こされるものがある。これは、絶縁膜内の誘電特性や電荷分布の変化によるものである。ゲート電極に長時間電圧が印加されると、長時間のうちには絶縁膜内の双極子(例えばポリマー中に含まれる極性基等)の向きが変化したり、あるいは、絶縁膜内に含まれる易動性のイオンが移動して内部の電化分布が変化したりすることによって、スレッショルド電圧変化が引き起こされる。組み合わされる絶縁膜の特性は、先に挙げた特性に加えて、不純物イオンの濃度が十分低いこと(例えば10ppm以下)、絶縁膜が室温付近で十分に硬いこと(軟化点やガラス転移温度が室温より十分に高いこと)、が望ましい。
<有機半導体部>
本発明の電界効果トランジスタにおいて、有機半導体部は特に限定はないが、好ましくは移動度が0.01cm2 /(V・s)以上、好ましくは0.1cm2 /(V・s)以上
である。
さらに好ましくは、移動度が1.0cm2 /(V・s)以上である。
電界効果トランジスタにおける半導体部の移動度(μ)は、ドレイン電圧(Vd )がゲート電圧(Vg )よりも大きいピンチオフ領域でのドレイン電流(Id )を表す下記式(3)
d = 〔WCi /(2L)〕μ(Vg−Vt2 (3)
〔式(1)中、Ci はゲート絶縁部の単位面積当たりの静電容量、Lはソース電極とドレイン電極間の間隔(チャネル長さ)、Wはチャネル幅、Vg はゲート電圧、Vt はスレショルド電圧である。〕
に基づき、異なるVg に対するId の変化を測定し、Id 1/2 とVg とをプロットしたグラフにおける傾きとして求められる。
μの異なる有機半導体部を設けた電界効果トランジスタをスイッチング用素子として駆動を行った場合は、液晶(LCD)、Paper Display(PD)、Digit
al Paper(DP)の3種の表示デバイスにおける、表示ピクセルの駆動電圧(Von)に対する表示ピクセルに印加される電圧(V)の比(V/Von)の値が十分に高い値
、具体的には0.99以上でないと表示デバイスを駆動することができないことが知られている。
ここで、スイッチング用素子のドレイン電流(表示ピクセルに通電される電流に等しくなる)Id は、公知の下記式
d = Cpx・∂V/∂t= μ(W/L)Ci (Von−V)(Vg −Vt
〔式中、Cpxは表示ピクセルの容量、Vは表示ピクセルに時刻tにおいて印加されている電圧、μは移動度、Wはチャネル幅、Lはチャネル長さ、Ci はゲート絶縁部の静電容量、Vg はゲート絶縁部への印加電圧、Vt は有機半導体部のスレショルド電圧である。〕
から、
∂V/(Von−V)=μ(W/L)(Ci /Cpx)(Vg−t )∂t
が導かれ、これを積分すると、
∫〔1/(Von−V)〕dV=∫μ(W/L)(Ci /Cpx)(Vg −Vt )dt
となり、ここで、t= 0においてV= 0となる条件から積分定数が定まり、結果として、
V=Von〔1−exp(−t/τ)〕となる。 (4)
尚、式(4)において、
τ=1/〔μ(W/L)(Ci /Cpx)(Vg −Vt )〕である。
この結果から、3種の表示デバイスの駆動回路において、異なるμの値を持った有機半導体部を有する電界効果トランジスタを用いた時に、V/Von値がどのように変わるかが分かる。それを、実際の表示デバイスに対して適用した結果を図3に示す。尚、LCD、PD、DPのそれぞれについて、〔フレーム周波数(Hz),ライン数(本)〕は、〔60,1000〕、〔60,1000〕、〔5,2000〕である。図3によれば、μ≧1.0cm2 /(V・s)であることでLCDの駆動も可能となることが分かる。
本発明において、有機半導体部の移動度を1.0cm2 /(V・s)以上とする方法について説明する。移動度を低下させる要因としては、多結晶中で結晶粒子間に存在する浅いトラップが考えられる。浅いトラップは、先に説明した深いトラップと同様の原因で生じるが、その深さが浅いために熱的に逃れることが可能で、電荷の輸送に影響するために移動度に影響する。すなわち、浅いトラップに捕獲された電荷は、それから逃れるのに時間がかかり、移動度が遅くなる。さらに、電極と半導体の界面の障壁が大きくて半導体から十分な電流が流せないと、見かけの移動度が低くなってしまう事も見られるので、電極の材料、形状等も適切に選択する必要がある。
(1)純度の高い有機半導体材料を使用する。
不純物由来の浅いトラップを少なくするために純度の高い有機材料を使用する。このましくは95wt%以上、さらに好ましくは97wt%以上である。
(2)結晶粒の大きさを大きくして、粒子の接続点を少なくする。
例えば、結晶粒が大きくなる有機半導体材料を選択する、結晶粒が大きくなるような製膜条件を選択する事により、粒子の接続点そのものを少なくする事が考えられる。結晶粒子間に存在するトラップを制御する。
(3)ボトムゲート構造の素子において、絶縁膜に有機ポリマーを使用して、その上に有機半導体を形成する。
これは、有機ポリマー絶縁膜の上に有機半導体を製膜する際に、ポリマーと有機半導体の間の濡れ性や接着性が、無機酸化物等の無機絶縁膜材料と有機半導体の間のそれよりも良好なことから、トラップの少ない有機半導体膜が形成されるためと考えられる。ただし、ポリマー材料の極性の低いもの、吸水率の低いもののが好ましい。絶縁膜に有機ポリマーを使用する。
(4)適切な電極の組み合わせ
電極と半導体の間の電荷の注入がスムーズになるような電極を組み合わせる。例えば、正孔の注入には仕事関数が大きい金や白金、ITO等の材料選択する。また、電極の形状に
盛り上がったエッジ部(バリ)が無いように、フォトリソグラフィーでもバリの出やすいリフトオフよりも金属のエッチングでのパターンニングが望ましい。
本発明の電界効果トランジスタの有機半導体部は、特に限定されるものではないが、α−セキシチオフェン、ジアルキルセキシチオフェン、に代表される、チオフェン環を4個以上含むオリゴチオフェン類;チオフェン環、ベンゼン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾチアゾール環を合計4個以上連結したもの;ナフタレン、ペンタセン、ピレン、ペリレン、フラーレン等の縮合芳香族炭化水素;アントラジチオフェン、ジベンゾチエノビスチオフェン、α、α'−ビス(ジチエノ[3,2-b':2'、3'-d]チオフェン)等の縮合チオフェン及びその誘導体;ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の、芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物;フタロシアニン、パーフルオロフタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその銅や亜鉛等の金属塩等の大環状化合物;ポリチオフェン、ポリフルオレン、ポリチエニレンビニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリフェニレン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、特に、レジオレギュラーポリチオフェンのような自己組織化を示すものや、ポリフルオレンやその共重合体に代表される液晶性を示す高分子が挙げられる。
これらの中でもフタロシアニン、ナフタロシアニン、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン、アザポルフィリン、チアポルフィリン、オキサポルフィリン、混乱ポルフィリン等に代表される環状アザアヌレン化合物が好ましい。
これらの中でも、フタロシアニン、パーフルオロフタロシアニン、テトラベンゾポルフィリン及びその銅や亜鉛等の金属塩等の大環状化合物が好ましく、特に好ましくは下記一般式で表され金属配位ポルフィリン化合物が好ましい。
Figure 2006303423
〔前記一般式中、R1 、R2 、R3 、R4 、R5 、R6 、R7 、及びR8 はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、1価の有機基、又はハロゲン原子を示し、R9 、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して、水素原子、1価の有機基、又はハロゲン原子を示し、Mは金属原子を示す。〕
前記一般式において、R1 〜R8 のアミノ基の置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基等が挙げられる。又、R1 〜R8 の1価の有機基としては、炭素数1〜10のものであるのが好ましく、具体的には、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アシル基、カルボキシル基と炭素数1〜10のアルコールとのエステル基、ホルミル基、カルバモイル基等が挙げられ、これらの有機基は置換基を有していてもよい。又、R1 〜R8 のハロゲン原子としては、例えば、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。
又、隣り合うR1 とR2 、R3 とR4 、R5 とR6 、及びR7 とR8 とは、結合して環を形成していてもよく、その場合に形成される環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族環;ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の複素環;シクロヘキセン環等の脂環式環等が挙げられる。
又、R9 〜R12の1価の有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、カルボキシル基と炭素数1〜10のアルコールとのエステル基、アリール基等が挙げられ、これらの有機基は置換基を有していてもよい。又、R9 〜R12のハロゲン原子としては、例えば、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられる。
又、Mの金属原子としては、Cu、Ni、Fe、Znであるのが好ましく、Cuであるのが特に好ましい。前記一般式において、MがCuの場合の好適な化合物の例を以下に示す。尚、対称性のよい分子構造のものを主に例示しているが、非対称構造のものであってもよい。
Figure 2006303423
以上の金属配位ポルフィリン化合物は、1種が単独で用いられていてもよく、2種以上の混合物として用いられていてもよい。又、有機半導体部には、酸化防止剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
本発明の電界効果トランジスタにおける前記有機半導体部は、前記有機半導体の溶液を用いて塗布法、或いは印刷法等により溶液層を形成した後、乾燥させることにより形成される。
その際の溶媒としては、前記有機半導体を溶解させ得るものであれば制限はなく、有機半導体の種類等に応じて任意の溶媒を用いることができる。
又、溶液の層を形成する方法としても、特に制限はなく、例えば、キャスティング、スピンコーティング、ディッピング、ブレードコーティング、ワイヤバーコーティング、スプレーコーティング等の塗布法、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、凸版印刷等の印刷法、マイクロコンタクトプリンティング法等のソフトリソグラフィー法等が挙げられる。尚、これらの手法は適宜2種以上組み合わせて用いてもよい。更に、塗布に類似する手法として、水面上に形成した半導体材料の単分子膜を基板に移して積層するLangmuir−Blo dgett法、液晶や融液状態の半導体材料を2枚の基板で挟んだり毛管現象で2枚の基板間に導入したりする方法等も挙げられる。
尚、前記方法により金属配位ポルフィリン化合物の有機半導体部を形成する場合、金属配位ポルフィリン化合物自体を溶媒に溶解した溶液を塗布等する方法の他に、金属配位ポルフィリン化合物の前駆体を溶媒に溶解した前駆体溶液を調製し、この前駆体溶液を塗布等した後、該前駆体の化学構造を変化させて最終的な金属配位ポルフィリン化合物として半導体部を形成する方法を採ることもできる。この方法は、特に溶媒に難溶な金属配位ポルフィリン化合物の有機半導体部を形成する場合に有効である。
前駆体を用いて金属配位ポルフィリン化合物の有機半導体部を形成する場合のその前駆体としては、例えば、次に示すビシクロ構造を有する金属配位ポルフィリン化合物は、加熱によりエチレン分子が解離して、ベンゼン環に変化する。尚、下記ビシクロ構造及びそれが変化したベンゼン環の2本の結合手は、ポルフィリンに連結する結合手である。
Figure 2006303423
ビシクロ構造は立体的に嵩高いため、結晶性が低く、そのため、ビシクロ構造を有する分子は溶解性が良好であり、その溶液を塗布した際に、結晶性が低い、又は無定形な塗布膜が得られやすい。又、ビシクロ構造は、加熱工程を経ることによりベンゼン環に変化すると平面性の良好な分子構造になるために、結晶性が良好になる。従って、ビシクロ構造を有する前駆体からの化学変化を利用することにより、溶媒への溶解性が低いポルフィリン化合物を用いて有機半導体部を溶液から形成する場合でも、結晶性の良好なポルフィリン化合物よりなる有機半導体部を、塗布等により得ることができる。尚、前駆体を最終的なポルフィリン化合物に変換する際の加熱は、塗布溶媒を留去する等の他の目的を兼ねていてもよい。
一般に、溶液を用いた有機半導体部の形成では、成膜性が高くならず、結晶性の高い有機半導体部が得られにくいとされているが、上記前駆体を用いる方法によれば、溶液を用いて結晶性の高い優れた特性を有する有機半導体部を得ることができる。そして、このようにして形成された有機半導体部を有する電界効果トランジスタは、キャリア移動度が高く、且つ、On/Off比が高いという好ましい特性を有する。尚、上記前駆体を用いる方法は、ポルフィリン化合物に限らず、他の有機半導体材料一般に適用しうる方法である。
このような前駆体を塗布するための溶媒は、特に制限は無いが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、テトラリン、アニソール等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、安息香酸エチル等のエステル類;ピリジン、キノリン等の含窒素有機溶媒類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素類;エチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類の溶媒などが挙げられる。この中でも、安全性や取り扱いやすさ、各種塗布法との組み合わせの容易さの面から、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類が好ましい。
また、沸点や粘度等の物性を調整する為に、2種以上の溶媒を混合して用いる事も可能である。
前記ポルフィリン化合物における前駆体の例を挙げると、ピロール環にベンゼン環が縮合しているベンゾポルフィリン化合物は、ビシクロ構造を有する前駆体から生成することができるので、上記の方法を用いて塗布等により有機半導体部を形成するのに有利である。
尚、前駆体を用いて有機半導体部を形成する場合には、前駆体溶液の塗布や印刷等の形成工程と加熱等の化学構造変化工程とを繰り返せば、前駆体と有機半導体材料との溶解性が異なることを利用して有機半導体部が前駆体溶液に溶解しないようにしながら積層し、厚い膜を形成することが可能となる。
又、有機半導体部の結晶の向きを制御する手法として、エピタキシャル成長法、塗布後のラビング等の手法を用いることができる。これらの手法によって、半導体層のキャリア移動度を向上させチャネルの電気抵抗率を低下させること等が可能となる。
又、有機半導体部は、半導体部の特性を変化させることを目的として微量の元素や原子団、分子、高分子等の不純物を含有させる、所謂、ドーピングがなされていてもよい。その際のドーピング方法としては、形成しようとする有機半導体部の特性等に応じて公知のものを任意に用いることができる。ドーパントとしては、具体例には、酸素、水素等のガス、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、PF5 、AsF5 、FeCl3 等のルイス酸、沃素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子等が挙げられる。また、ドーピングの方法としては、例えば、有機半導体材料や前駆体の溶液にそれらドーパントを混合したり、前駆体部の形成の段階でそれらドーパントのガスや溶液に接触或いは浸漬させたりする、有機半導体部形成前に処理する方法、及び、形成した有機半導体部をそれらドーパントのガスや溶液に接触或いは浸漬させたり、又は電気化学的な処理をしたりする、有機半導体部形成後に処理する方法等が採られる。
これらのドーピング処理により、キャリア密度の増加或いは減少による電気伝導度の変化、キャリアの極性(p型又はn型)の変化、Fermi準位の変化等の効果が得られる。
更に、このようにして形成された有機半導体部は、例えば、加熱処理により、成膜時に生じた半導体部中の歪みを緩和したり、酸素や水素等の酸化性或いは還元性の気体や液体に晒すことにより、酸化或いは還元による特性変化を誘起し、半導体部中のキャリア密度を増加或いは減少させたり、機械的処理を施したり、或いは、コロナ放電等の電気的処理を施したりする後処理が施されてもよい。
本発明の電界効果トランジスタにおいて、有機半導体部は、単一の層から形成されていてもよく、2以上の層から形成されていてもよい。又、有機半導体部の膜厚は、厚くなるほど漏れ電流が増加するおそれが大きくなることから、必要な機能を果たせる範囲で薄いほど好ましく、10μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが更に好ましく、500nm以下であるのが特に好ましく、50nm以下であるのが最も好ましい。又、1nm以上であるのが好ましく、5nm以上であるのが更に好ましく、10nm以上であるのが特に好ましい。
本発明における電界効果トランジスタは、次の(a)、(b)をともに満たすものが好ましい。
(a)70℃でゲート絶縁部中の電界強度が100±5MV/mになるような電圧をゲ
ートに5.0±0.1時間印加した時の、スレショルド電圧の変化が5V以内である。
(b)有機半導体部が有機半導体溶液を用いて形成され、且つ、該有機半導体部の移動度が1.0cm2 /(V・s)以上である。
駆動によるスレッショルド電圧変化小さく、かつ移動度が大きければ、デバイスの設計
に余裕が出るので好ましい。すなわち、小さな(ゲート幅の狭い)トランジスタで、スレッショルド電圧変化の補正回路も不要あるいは、単純なものになるためである。さらに有機ELのような電圧駆動型の素子を駆動する場合には、大きな電流を流すことに加え、アクティブマトリクス液晶ディスプレイのトランジスタと異なりいつもゲートに電圧が印加されている素子にも有利に利用できることになるため、特に好ましい。また、ディスプレイだけでなく、ドライバ回路に用いるためには、(a)と(b)を共に満たすものが好ましい。ドライバ回路にはディスプレイよりも早い応答性と高い安定性が必要であるからである。
片方しか満たさなくても、トランジスタの構造(ゲート幅や長さ)の設計に余裕を持たせることにより、実用に供するものを得る事ができる場合もあるが、トランジスタ部分が大きくなる事は開口率の低減や短寿命化、あるいは周辺ドライブ回路の高コスト化を引き起こすことになり、不利になる。
(a)(b)をともに満たす電界効果トランジスタを得るためには、次のような手段が挙げられる。
先に説明したように、(a)、(b)共に半導体が関連している場合には、深い、浅いの程度の差はあるが、トラップが関係している。従って、このトラップの数を低減する方法やトラップを消滅させる方法は共通であるため、それらを単独、あるいは組み合わせて用いることにより、達成することが出来る。すなわち、
・高純度の半導体材料を用いる。好ましくは、純度95wt%以上、さらに好ましくは97wt%以上の半導体材料を用いる。
・大きな結晶粒ができる、あるいは高次の秩序構造を形成することのできる半導体材料を選択する。
・適切なポリマー絶縁膜を用いる。
・適切なオーバーコートを組み合わせる。
・エージング処理を行う。
さらに好ましくは、次の方法を用いる。
・前駆体の膜を変換して結晶性の低分子半導体膜を得る材料を用いる。
・半導体材料にアザアヌレン化合物を用いる。
・エッチングによりパターンニングした金属電極を用いる。
<電界効果トランジスタの構造>
本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造を図面に基づいて説明すると、図1(A)〜(D)は、各々、本発明の電界効果トランジスタにおける横型電界効果トランジスタ(「FET」と称されている。)の実施例を示す縦断面図である。図1(A)〜(D)において、本発明の電界効果トランジスタは、支持基板1上に、ゲート絶縁部3と、該ゲート絶縁部3により隔離されたゲート電極2及び有機半導体部4と、該有機半導体部4に接して設けられたソース電極5及びドレイン電極6とを有している。その構造は特に限定されず、代表的には、図1(A)に示されるボトムゲート・ボトムコンタクト型、図1(B)に示されるボトムゲート・トップコンタクト型、図1(C)に示されるトップゲート・ボトムコンタクト型、及び図1(D)に示されるトップゲート・トップコンタクト型等が挙げられる。
更に、図2は、本発明の電界効果トランジスタにおける静電誘導トランジスタ(「SIT」と称されている。)の実施例を示す縦断面図である。前述のFETでは、ソース電極5及びドレイン電極6が支持基板1上に並列に配置され、電流の流れる方向がゲート電極
2により誘起される電場に垂直方向であるのに対して、SITでは、ソース電極5とドレイン電極6がその間に有機半導体部4を挟んで支持基板1上に縦列に配置され、その間の有機半導体部4中にゲート絶縁部3(図示せず)により絶縁されたゲート電極2が網目状、縞状、或いは格子状等に所定の間隔を保って配置されており、電流の流れる方向はゲート電極2により誘起される電場に平行方向である点で、前述のFETとは異なる。
そして、SITにおいては、FETに比べて、チャネル領域のソース−ドレイン方向に垂直な平面の断面積の総和であるチャネルの断面積を大きくとることができるので、一度に多数のキャリアをソース電極からドレイン電極へ、又、ドレイン電極からソース電極へ、移動させることができると共に、ソース電極とドレイン電極とが縦列されているので、ソース電極とドレイン電極間の距離を小さくできるので、応答が高速となり、大電流を流したり、高速のスイッチングを行ったりする用途に用いるのに好適となる。
尚、SITにおいて、ゲート電極2同士間の間隔は任意であるが、通常は、ソース電極5及びドレイン電極6間の距離(有機半導体部4の厚み)よりも小さいことが好ましい。又、ゲート電極2の厚みは、10nm以上であるのが好ましく、20nm以上であるのが特に好ましく、又、10μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのが特に好ましい。
本発明の電界効果トランジスタの基本的な構造は、上述の通りであるが、本発明の電界効果トランジスタは、図1、図2に示される構造の電界効果トランジスタに何ら限定されず、前記の部間や最外部上に前記の部以外の層が更に形成されていてもよい。例えば、図1(A)、図1(B)に示される電界効果トランジスタのように、有機半導体部4が表出している電界効果トランジスタにあっては、有機半導体部4に対する湿気等の外気の影響を最小限にするため、あるいは半導体特性そのものを改良する為に、その上に更に保護層が形成されているのが好ましい。その場合、保護層の材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルナフタレン、ポリ(4−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)、ポリアセナフチレン等の芳香族を含む炭化水素高分子、ポリメチルメタクリレートやポリベンジルメタクリレート等のメタクリル樹脂やアクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリオレフィン、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の有機系ポリマーあるいはこれらの共重合体、シロキサン樹脂、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等の酸化物や窒化物等の無機物が挙げられる。これらの中で、半導体と接して形成される保護層としては芳香環を含む有機ポリマーが好ましく、さらにはベンゼン環を含むポリマー、中でもポリスチレンが特に好ましい。また、これらを積層にして、特性改良効果とガスバリア性を持たせることも可能である。さらに、低分子化合物を混合しておき、半導体膜に作用させることにより半導体膜のキャリア移動度やキャリア密度等の特性を制御することも可能である。
保護層の形成方法としては、公知の各種方法を任意に用いうるが、保護層が有機ポリマーからなる場合は、例えばその溶液を塗布した後、乾燥させて有機ポリマー層とする方法、それらのモノマーを塗布した後、重合してポリマー層とする方法等が挙げられ、又、成膜後に架橋処理等の後処理を適宜行ってもよいし、パリレンやポリイミドに代表される気相で積層しながら重合して製膜する方法も可能である。又、保護層が無機物からなる場合は、例えば、スパッタリング法、蒸着法、化学気相成長(CVD)法等のドライプロセスを用いる方法や、ゾルゲル法に代表される溶液を用いた方法等が挙げられる。
又、FETを構成する材料、特に、有機半導体部に用いられる有機半導体材料が光を吸収して電荷を発生するような場合、所望の領域に、例えば、クロム、アルミニウム、銀、金等の金属の膜、カーボンブラック等の顔料を分散した樹脂膜、有機色素の膜等により、
光の透過率の小さいパターン(所謂、ブラックマトリクス)を形成することもできる。
(電圧印加処理)
本発明において、スレショルド電圧の変化が5V以内の電界効果トランジスタを作成するには、電圧印加(エージング)処理を行うのが好ましい。この処理は、電界効果トランジスタの各部を形成した後に行われるこので、電界効果トランジスタを実際に加えられる電圧ストレスに近い条件で電圧を印加して長時間処理することで行える。処理温度、印加電圧、処理時間等の処理条件は用いる半導体材料、ゲート絶縁膜材料や層構成によるが、温度は高いほうが処理時間が短くなり、20℃以上、好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上で処理するのが望ましい。高温では素子の劣化の懸念があるため、150℃以下、好ましくは100℃以下が望ましい。また、処理時間は、無機絶縁膜では、2時間以上、好ましくは10時間以上、さらに好ましくは50時間以上が望ましく、ポリマー絶縁膜では1分以上行うことが望ましい。
エージング処理によるメカニズムは不明であるが、スレショルド電圧シフトが不可逆に変化する成分と可逆に変化する成分があり、エージングによりこの不可逆に変化する成分を十分に小さくすることが、高い駆動安定性を得るのに有効である為と考えられる。このエージングの際には、ゲートとドレイン電圧をどちらも印加して、ドレイン電流を流してエージングするのが好ましい。理由は定かではないが、流す電流によりスレショルド電圧を不安定化を引き起こす部分(例えばトラップ等)が除去される効果があると推定される。
本発明の電界効果トランジスタのOn/Off比は、800以上を有するのが好ましく、1,000以上を有するのが特に好ましい。
(電界効果トランジスタの用途)
電界効果トランジスタはアクティブマトリクス駆動の表示素子に用いられ、液晶ディスプレイ、ポリマー分散型液晶ディスプレイ、電気泳動型ディスプレイ、トナーディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイ、発光ダイオードディスプレイ等を挙げることができ、その画素スイッチとして用いられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<ビシクロポルフィリン銅錯体の合成>
S.Ito,N.Ochi,T.Murashima,H.Uno,N.Ono,Heterocycles,vol.52,399(2000)に記載の方法に準じて、下記ルートでビシクロポルフィリンから銅ビシクロポルフィリン錯体を合成した。即ち、下記構造のビシクロポルフィリン92.8mg(0.16mmol)と酢酸銅(II)2水和物313.6mg(1.6mmol)をクロロホルム150mL/メタノール15mLの混合液に溶解し、約1時間攪拌した。アルミナTLC(展開溶媒クロロホルム/ヘキサン=1/1)により、原料は消失して新規化合物が生成しているのが確認されたので、水を加えて反応を停止し、そのまま水で洗浄し、有機層を分離した。更に飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。乾燥剤を濾紙により濾過した後に溶媒を留去し、アルミナゲルによりクロマトグラフィー(展開溶媒クロロホルム/ヘキサン=1/1)を行い、目的物のみを含むフラクションのみを集めて濃縮した。濃縮の途中でメタノールを加え、更に濃縮を続けると目的物の沈殿が生成した。これを、濾紙を用いて濾別し、真空乾燥した。こうして得られたビシクロポルフィリン銅錯体の収量は76.5mg、収率は75%であった。
Figure 2006303423
得られたビシクロポルフィリン銅錯体0.8mgをクロロホルム1.25gに溶解して、ガラス基板上に2,000rpmでスピンコートして膜を形成し、得られた膜を、4℃/分で加熱しながら吸収スペクトルを測定した。その結果を図4に示す。これから、下記に示すように、120〜180℃の間でビシクロポルフィリン銅錯体からベンゾポルフィリン銅錯体への変換が起こっていることが分かる。
Figure 2006303423
(実施例1)
ITOガラス板(豊和産業社製、2.5cm×2.5cm)上にフォトレジスト(日本ゼオン社)ZPN1100を用いてパターニングを行い、次いで1wt%の塩化鉄(II)を溶解させた1規定
の塩化水素水溶液で不用のITOをエッチングした後、基板洗浄を施してゲート電極を作製
した。
下記構造のフッ素化ポリイミドをシクロヘキサノンに10wt%濃度になるように溶解させ
、溶液を調整した。次いで、0.2umのPTFEフィルターで加圧濾過を行った。この溶液をITOガラス基板上に1600rpmの回転数でスピンコートを行い、180℃で乾燥を行いポリイミドからなるゲート絶縁層を形成した。膜厚計(Tencor社製「Alpha−Step500」)で測定した膜厚は3,100Åであった。
Figure 2006303423
引き続いて、このゲート絶縁層上に、ソース電極及びドレイン電極を形成するためチャネル(L:1,000μm、W:40μm)のシャドーマスクで覆い、クロムを50Å、金を1,000Åの厚さで蒸着することにより、図1に示されるボトムコンタクト構造の素子を作製した。次いで、ボトムコンタクト構造の素子上に、下記の分子構造を有する銅テトラビシクロポルフィリンを窒素雰囲気下、室温においてクロロホルムに溶解させて作製した0.7重量%クロロホルム溶液を1,000rpmでスピンコートし、乾燥させて層を形成した後、180℃で10分間加熱処理して半導体層に変換して有機半導体層を形成した。
Figure 2006303423
この半導体層の上にポリスチレン(Aldrich社製)を室温でトルエンに溶解させた10重量%トルエン溶液を2,000rpmでスピンコートし、100℃で10分間加熱処理してオーバーコート層を形成し、電界効果トランジスタを作製した。
このようにして得られた電界効果トランジスタ素子を、70℃で、ゲート電圧Vg=−30V、ソースVs及びドレイン電圧Vdを0Vとしてゲート電圧のストレスをかけた。この間、ゲート絶縁部中の電界強度は、Vg/ゲート部の膜厚より算出でき、97MV/mであった。60秒毎に1秒間のみドレイン電圧Vd=−60Vを印加してドレイン電流Idを測定して、そのIdの値からスレショルド電圧Vtを求めた。この測定を5時間繰り返して、その間のIdの変化から、Vtの変化を測定した。その結果、この測定の間に変化したVtは2.8Vであり、非常に良好な駆動安定性を示すことが分かる。
又、得られた電界効果トランジスタ素子のソース電極とドレイン電極間に印加された電圧Vd に対して流れる電流をId 、ソース電極とゲート電極に印加される電圧をVg 、スレショルド電圧をVt 、ゲート絶縁層の単位面積当たりの静電容量をCi 、チャネル長さをL、チャネル幅をW、有機半導体層の移動度をμとすると、それらは前述した下記(1)式の関係で表すことができ、異なるVg に対するId の変化を測定し、Id 1/2 とVg とをプロットしたグラフにおける傾きとして移動度μを求め、又、そのグラフのId 切片からスレショルド電圧Vt を求めた。
d = 〔WCi /(2L)〕μ(Vg −Vt 2 (1)
又、ソース電極とドレイン電極間に印加された電圧Vd を−30Vに固定し、ソース電極とゲート電極に印加される電圧Vg を、−50V、+30Vにした時のソース電極とドレイン電極間に流れる電流Id (−50V)、Id (+30V)をそれぞれ測定し、これらの比Id (−50V)/Id (+30V)によってOn/Off比を算出した。
結果、この電界効果トランジスタの移動度μは1.19cm2 /(V・s)であった。スレショルド電圧Vtは17.8V、On/Off比は1.45×10であった。
(実施例2)
表面に厚み300nmの酸化被膜をゲート絶縁部として形成したN型のシリコン支持基板(Sbドープ、抵抗率0.02Ωcm以下、住友金属工業社製)の酸化被膜の全面に、真空蒸着により厚み10nmのクロム及び厚み100nmの金をこの順序で成膜し、エッチングにより、ソース電極、ドレイン電極以外の部分の金膜を除去することにより、長さ(L)10μm、幅(W)500μmのチャネルを有するように、ソース電極及びドレイン電極を形成した。又、この電極と異なる位置の酸化被膜の一部を弗酸/弗化アンモニウム液でエッチングし、むき出しになった部分のシリコン支持基板上に厚み100nmで金を蒸着し、これをゲート電極への接点とした。
次いで、以下の製膜、及び電気特性の評価を、酸素や湿度の影響を避けるために、すべて窒素雰囲気下で行い、前記合成例で得られたビシクロポルフィリン銅錯体0.8mgをクロロホルム1.25gに溶解した溶液を上記電極を形成した支持基板上に1000rpmでスピンコートした後、120℃に加熱したホットプレートの上に置き、その後15分毎に10℃ずつステップ状に200℃まで昇温し加熱することにより、厚み100nmのベンゾポルフィリン銅錯体からなる有機半導体層を形成した。この半導体層の上にポリスチレン(Aldrich社製)を、室温でトルエンに溶解させた10重量%トルエン溶液を2,000rpmでスピンコートし、100℃で10分間加熱処理してオーバーコート層1μmを形成し、電界効果トランジスタを作製した。
この後で、次の表に示すような条件でエージング処理を行った。
Figure 2006303423
その後、1日放置したサンプルについて実施例1と同様に、70℃でのVtシフトを測定した。その結果、スレショルド電圧シフトは3.7Vであり、非常に良好な駆動安定性を示すことが分かる。
(比較例1)
実施例2でベンゾポルフィリン銅錯体の製膜の代わりに、ペンタセン(東京化成製)を昇華精製したものを真空蒸着により100nmの膜厚で蒸着し、電界効果トランジスタを作製した。その後実施例1と同様にスレショルド電圧シフトの測定を行ったところ、15.1Vであり、駆動安定性に欠けた。
(比較例2)
実施例2で、長時間のエージング処理を行う前にスレショルド電圧シフトの測定を行ったところ、5.9Vであり、駆動安定性に欠けた。
(比較例3)
実施例2で、ポリスチレンのオーバーコートをしない素子のスレショルド電圧シフトの測定を行ったところ、12.6Vであり、駆動安定性に欠けた。
上記実施例、比較例の結果を下表にまとめて示す。
Figure 2006303423
本発明の電界効果トランジスタは、例えば、電子デバイスを用いる広い産業分野において使用することができる。具体例としては、液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子、電子ペーパー、有機LED表示素子、電気泳動表示素子、無機EL表示素子、エレクトロクロミック素子等のディスプレイのアクティブマトリクスとして用いることができる他、ICタグ、ICチップ、センサ等にも用いることができる。
本発明の電界効果トランジスタにおける横型電界効果トランジスタ(FET)の実施例を示す縦断面図である。 本発明の電界効果トランジスタにおける静電誘導トランジスタ(SIT)の実施例を示す縦断面図である。 移動度μの異なる有機半導体部を有する電界効果トランジスタを、液晶(LCD)、Paper Display(PD)、Digital Paper(DP)の3種の表示デバイスに用いたときの、表示ピクセルの駆動電圧(Von)に対する表示ピクセルに印加される電圧(V)の比(V/Von)の値を示すグラフである。 実施例1で用いたビシクロポルフィリン銅錯体の、120〜180℃の温度での吸収スペクトルである。
符号の説明
1支持基板
2ゲート電極
3ゲート絶縁部
4有機半導体部
5ソース電極
6ドレイン電極

Claims (9)

  1. ゲート絶縁部、有機半導体部、並びにソース電極及びドレイン電極とを含有する電界効果トランジスタであって、70℃でゲート絶縁部中の電界強度が100±5MV/mになるような電圧をゲートに5.0±0.1時間印加したときの、スレショルド電圧の変化が5V以内であることを特徴とする電界効果トランジスタ。
  2. 有機半導体部が有機半導体溶液を用いて形成され、且つ、該有機半導体部の移動度が1.0cm2 /(V・s)以上であることを特徴とする請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
  3. 有機半導体部に、環状アザアヌレン化合物を含む請求項1又は2に記載の電界効果トランジスタ。
  4. 有機半導体部に、ポルフィリン系またはフタロシアニン系化合物を含む請求項1又は2に記載の電界効果トランジスタ。
  5. 有機半導体部に、有機半導体前駆体から変換した有機半導体を含む請求項1〜4いずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
  6. オーバーコート層を有する請求項1〜5いずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
  7. ゲート絶縁部に高分子材料を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタ。
  8. ゲート電極に電場を印加する処理を行う請求項1及び3〜7のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の電界効果トランジスタを用いた表示素子。
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