次に、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に説明する。
本発明の有機半導体装置は、絶縁層及び有機半導体層を有し、絶縁層は、高分子粒子を含有し、無機粒子をさらに含有してもよい。なお、絶縁層は、高分子粒子からなる場合を含む。
絶縁層には、無数の粒子接点が存在する。このような接点においては、リーク電流の流路が細くなると共に、粒子界面が存在するために、伝導機構は、ホッピング伝導が支配的となる。その結果、単位長さ当たりの抵抗値が連続膜に比べて大きくなり、良好な絶縁特性が得られる。
本発明において、高分子粒子の最大粒子径は、通常、500nmであり、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。高分子粒子の粒子径が小さくなると、粒子接点の密度が増えるために抵抗率が大きくなる。さらに、抵抗率の空間的ばらつきを抑えることができると共に、絶縁層の表面粗さを小さくすることができる。また、高分子粒子の最大粒子径は、絶縁層の膜厚によって調整する必要があり、膜厚の10%以下に設定することが好ましい。また、高分子粒子の形状は、特に限定されず、球状、針状、円盤状、不定形等のいずれであってもよい。
また、本発明の効果は、絶縁層及び有機半導体層の界面近傍の曲面形状に起因していると考えられる。高分子粒子の表面は、曲面形状であるため、比表面積が大きく、その結果として、絶縁層の静電容量が増加する。これにより、絶縁層及び有機半導体層の界面に蓄積されるキャリア数が増加し、その結果として、ソース電極及びドレイン電極間を流れる電流値(Ion)が増加する。
また、絶縁層及び有機半導体層の界面が曲面形状であるため、実効的なゲート長が増加すること、絶縁層に含まれる分子数が少ないため、固定電荷の総量が少ないこと、絶縁層中の空気により絶縁性が向上すること等の効果が相乗的に作用し、リーク電流(Ioff)を減少させることが可能となる。
また、可撓性基板に絶縁層を形成した場合、曲げ、捩れ等のストレスにより、絶縁層が基板から剥がれることがあるが、絶縁層に高分子粒子が存在することにより、ストレスを吸収し、剥がれを抑制することが可能となる。
本発明において、絶縁層は、下地層と共に積層されて、2層以上の積層構造を形成してもよい。なお、絶縁層が積層構造を形成する場合には、絶縁層が有機半導体層と接するような構成であることが好ましい。
下地層に用いられる材料としては、絶縁性の材料であれば、無機材料及び有機材料のいずれも使用可能である。具体的には、ポリクロロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、シアノエチルプルラン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリビニルフェノール、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリ(p−キシレン)、ポリアクリロニトリル等の有機材料、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、窒化酸化シリコン等の無機材料、各種絶縁性Langmuir−Blodgett膜等が挙げられる。また、これらの材料を2種類以上併用しても構わない。
下地層を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、CVD法、プラズマCVD法、プラズマ重合法、蒸着法、スピンコーティング法、ディッピング法、クラスタイオンビーム蒸着法、Langmuir−Blodgett法等が挙げられる。
図1及び図2に、本発明の有機半導体装置の一例を示す。図1の有機半導体装置は、基板1上にゲート電極2及び絶縁層3が順次積層され、絶縁層3上にソース電極4及びドレイン電極5が互いに分離して設けられ、ソース電極4及びドレイン電極5の間に有機半導体層6が介在する。図2の有機半導体装置は、基板1上にゲート電極2、絶縁層3及び有機半導体層6が順次積層され、有機半導体層6上にソース電極4及びドレイン電極5が互いに分離して設けられている。本構成例では、絶縁層3は、有機半導体層6よりも基板1に近い側に設けられている。このため、絶縁層3を形成した後に有機半導体層6を積層することになり、絶縁層を形成する際に、ドライプロセスやウエットプロセスを用いても、有機半導体層6の表面にダメージを与えるのを抑制することができ、素子特性が向上する。
図3及び図4に、本発明の有機半導体装置の他の例を示す。ここでは、有機半導体層6は、絶縁層3よりも基板1に近い側に設けられている。このため、キャリアの誘起される有機半導体層6が絶縁層3により覆われているため、有機半導体材料の電気特性を劣化させる水分、酸素等が有機半導体層6に接触するのを抑制することができ、素子の耐久性が向上する。
図5及び図6に、本発明の有機半導体装置の他の例を示す。ここでは、絶縁層3は、下地層7上に形成されている。絶縁層3を構成する高分子粒子の平均粒子径が小さくなると、電界が高分子粒子間の界面に集中しやすくなり、絶縁破壊の強さが小さくなることがある。このような場合には、絶縁特性に優れた材料からなる下地層7上に絶縁層3を形成することが好ましい。
なお、基板の材料としては、ガラスやポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン等のプラスチック、シリコンウェハ、金属等を用いることができる。
本発明において、ゲート電極の材料は、導電性材料であれば、特に限定されないが、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO)、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、カーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム・銅混合物、マグネシウム・銀混合物、マグネシウム・アルミニウム混合物、マグネシウム・インジウム混合物、アルミニウム・酸化アルミニウム混合物、リチウム・アルミニウム混合物等が挙げられる。また、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーも用いることができ、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。また、これらの材料を2種類以上併用してもよい。
本発明において、ソース電極及びドレイン電極の材料は、有機半導体層との界面におけるエネルギー障壁を減少させるために、オーミック接触が可能な材料であることが好ましい。有機半導体材料にキャリアがホールであるP型半導体を用いる場合に、オーミック接触を得るためには、ソース電極及びドレイン電極の仕事関数が有機半導体の仕事関数よりも大きいことが好ましい。有機半導体材料にキャリアが電子であるn型半導体を用いる場合に、オーミック接触を得るためには、ソース電極及びドレイン電極の仕事関数が有機半導体の仕事関数よりも小さいことが好ましい。具体的には、有機半導体層との接触面において電気抵抗がより小さくなるかどうかを電流−電圧特性を調べることで決定される。
ソース電極及びドレイン電極の材料としては、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、スズ、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ−酸化アンチモン(ATO)、酸化インジウム−酸化スズ(ITO)、酸化インジウム−酸化亜鉛(IZO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペースト、カーボンペースト、リチウム、ベリリウム、ナトリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、アルミニウム、マグネシウム・銅混合物、マグネシウム・銀混合物、マグネシウム・アルミニウム混合物、マグネシウム・インジウム混合物、アルミニウム・酸化アルミニウム混合物、リチウム・アルミニウム混合物等が挙げられるが、中でも、白金、金、銀、銅、アルミニウム、インジウム、ITO、IZO及び炭素が好ましい。また、ドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマーも用いることができ、例えば、導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン、ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体等が挙げられる。また、これらの材料を2種類以上併用しても構わない。さらに、カーボンブラック、C60、カーボンナノチューブ等のカーボン材料を用いることもできる。
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を形成する方法としては、蒸着法、スパッタリング法等により形成した導電性薄膜から、公知のフォトリソグラフ法やリフトオフ法を用いて電極を形成する方法、アルミニウム、銅等の金属箔上に熱転写、インクジェット等によるレジストを用いてエッチングする方法が挙げられる。また、導電性ポリマーの溶液又は分散液、導電性微粒子の分散液をインクジェットによりパターニングしてもよいし、塗工膜から、リソグラフ、レーザーアブレーション等を用いて電極を形成してもよい。さらに、導電性ポリマーや導電性微粒子を含有するインク、導電性ペースト等を凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等の印刷法でパターニングする方法も用いることができる。
本発明における有機半導体材料としては、π電子共役系の芳香族化合物、鎖式化合物、有機顔料、有機ケイ素化合物等を用いることができる。
具体的には、ポリピロール、ポリ(N−置換ピロール)、ポリ(3−置換ピロール)、ポリ(3,4−二置換ピロール)等のポリピロール類、ポリチオフェン、ポリ(3−置換チオフェン)、ポリ(3,4−二置換チオフェン)、ポリベンゾチオフェン等のポリチオフェン類、ポリイソチアナフテン等のポリイソチアナフテン類、ポリフェニレンビニレン等のポリフェニレンビニレン類、ポリ(p−フェニレンビニレン)等のポリ(p−フェニレンビニレン)類、ポリアニリン、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(3−置換アニリン)、ポリ(2,3−置換アニリン)等のポリアニリン類、ポリアセチレン等のポリアセチレン類、ポリジアセチレン等のポリジアセチレン類、ポリアズレン等のポリアズレン類、ポリピレン等のポリピレン類、ポリカルバゾール、ポリ(N−置換カルバゾール)等のポリカルバゾール類、ポリセレノフェン等のポリセレノフェン類、ポリフラン、ポリベンゾフラン等のポリフラン類、ポリ(p−フェニレン)等のポリ(p−フェニレン)類、ポリインドール等のポリインドール類、ポリピリダジン等のポリピリダジン類、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレン、サーカムアントラセン等のポリアセン類及びポリアセン類の炭素原子の一部を窒素、硫黄、酸素等の原子、カルボニル基等の官能基に置換した誘導体(トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジン、ヘキサセン−6,15−キノン等)、ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニレンスルフィド等のポリマー、特開平11−195790号公報に記載されている多環縮合体等を用いることができる。また、これらのポリマーと同じ繰り返し単位を有する、例えば、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、スチリルベンゼン誘導体等のオリゴマーも用いることができる。さらに、銅フタロシアニン、特開平11−251601号公報に記載されているフッ素置換銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類;1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−パーフルオロオクチル)−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(1H,1H−パーフルオロブチル)−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ジオクチル−1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド等のナフタレンテトラカルボン酸ジイミド類;2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸ジイミド等のアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類等の縮合環テトラカルボン酸ジイミド類;C60、C70、C76、C78、C84等のフラーレン類;SWNT等のカーボンナノチューブ;メロシアニン色素類、ヘミシアニン色素類等の色素等が挙げられる。
また、その他の有機半導体材料としては、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BEDT−TTF)−過塩素酸錯体、BEDT−TTF−ヨウ素錯体、TCNQ−ヨウ素錯体等の有機分子錯体も用いることができる。さらに、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマーや有機・無機混成材料も用いることができる。
なお、有機半導体材料は、単独で用いてもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
また、本発明においては、有機半導体層に、アクリル酸;アセトアミド;ジメチルアミノ基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基等の官能基を有する材料;ベンゾキノン誘導体、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタンやそれらの誘導体等の電子を受容する材料(アクセプター)又はアミノ基、トリフェニル基、アルキル基、水酸基、アルコキシ基、フェニル基等の官能基を有する材料;フェニレンジアミン等の置換アミン類;アントラセン、ベンゾアントラセン、置換ベンゾアントラセン類、ピレン、置換ピレン、カルバゾール及びその誘導体、テトラチアフルバレン及びその誘導体等の電子を供与する材料(ドナー)を含有させ、いわゆるドーピング処理を施してもよい。
アクセプターとしては、Cl2、Br2、I2、ICl、ICl3、IBr、IF等のハロゲン、PF5、AsF5、SbF5、BF3、BCl3、BBr3、SO3等のルイス酸、HF、HCl、HNO3、H2SO4、HClO4、FSO3H、ClSO3H、CF3SO3H等のプロトン酸、酢酸、蟻酸、アミノ酸等の有機酸、FeCl3、FeOCl、TiCl4、ZrCl4、HfCl4、NbF5、NbCl5、TaCl5、MoCl5、WF5、WCl6、UF6、LnCl3(Ln:La、Ce、Nd、Pr等のランタノイド)等の遷移金属化合物、Cl−、Br−、I−、ClO4 −、PF6 −、AsF5 −、SbF6 −、BF4 −、スルホン酸アニオン等の電解質アニオン等が挙げられる。
また、ドナーとしては、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Yb等の希土類金属、アンモニウムイオン、R4P+、R4As+、R3S+、アセチルコリン等が挙げられる。
ドーパントのドーピング方法としては、予め有機半導体層を作製しておき、ドーパントを後で導入する方法、有機半導体層を作製する時にドーパントを導入する方法のいずれも使用可能である。前者の方法としては、ガス状態のドーパントを用いる気相ドーピング、溶液又は液体のドーパントを薄膜に接触させてドーピングする液相ドーピング、固体状態のドーパントを薄膜に接触させてドーパントを拡散ドーピングする固相ドーピング等が挙げられる。また、液相ドーピングにおいては、電解を施すことによって、ドーピングの効率を調整することができる。後者の方法としては、有機半導体材料とドーパントの混合溶液又は分散液を塗布、乾燥する方法等が挙げられる。また、真空蒸着法を用いる場合には、有機半導体材料と共に、ドーパントを共蒸着することにより、ドーパントを導入することができる。さらに、スパッタリング法を用いる場合には、有機半導体材料とドーパントの二元ターゲットをスパッタリングして薄膜中にドーパントを導入することができる。さらに、他の方法として、電気化学的ドーピング、光開始ドーピング等の化学的ドーピング、イオン注入法(工業材料、34巻、第4号、55頁、1986年参照)等の物理的ドーピングのいずれも使用可能である。
有機半導体層の作製方法としては、真空蒸着法、分子線エピタキシャル成長法、イオンクラスタービーム法、低エネルギーイオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法、スパッタリング法、プラズマ重合法、電解重合法、化学重合法、スプレーコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、キャスト法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、LB法等が挙げられる。
有機半導体層の膜厚は、特に限定されないが、得られたトランジスタの特性は、有機半導体層の膜厚に大きく左右される場合が多く、その膜厚は、有機半導体により異なるが、通常、1μm以下であり、5〜300nmが好ましい。
本発明において、高分子粒子は、1種類以上の高分子材料からなることが好ましい。これにより、絶縁層の耐薬品性、耐酸化性及び機械的強度を向上させることができる。
高分子材料としては、ポリイミド樹脂、スチレン樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、塩化ビニル系樹脂、ポリエステルアルキド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、PFA、PTFE、PVDF等のフッ素系樹脂、パリレン樹脂、エポキシアクリレート、ウレタン−アクリレート等の光硬化性樹脂等が挙げられる。中でも、優れた化学的安定性、絶縁性を有するポリイミド樹脂を主成分とすることが好ましい。これらの材料は、単独又は二種以上混合して用いることができる。
本発明において、絶縁層が高分子粒子及び無機粒子を含有する場合、無機粒子の添加量を変えることで、絶縁層の比誘電率を調整することができる。ここで、無機粒子の添加量は、高分子粒子に対して、20重量%以下であることが好ましい。無機粒子の添加量が20重量%を超えると、良好な絶縁特性が得られなくなることがある。
無機粒子の最大粒子径は、通常、500nmであり、100nm以下が好ましく、50nm以下がさらに好ましい。無機粒子の粒子径が小さくなると、比抵抗及び誘電率の空間的ばらつきを抑えることができる。また、最大粒子径は、絶縁膜の膜厚によって調整する必要があり、絶縁膜の膜厚の10%以下にすることが好ましい。また、無機粒子の形状は、特に限定されないが、球状、針状、円盤状、不定形等のいずれであってもよい。
無機粒子の材料は、特に限定されず、例えば、二酸化チタン、五酸化二タンタル、ガラス等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明において、高分子粒子の平均粒子経は、10nm以上100nm以下であることが好ましい。これにより、絶縁層の機械的強度を高くすることが可能となる。
本発明において、絶縁層は、空孔を有することが好ましい。空気は、高分子材料よりも比抵抗が大きいので、リーク電流の流路は、高分子粒子の凝集体に限定され、接触抵抗により抵抗率が増大する効果が顕著になる。また、空孔を有する絶縁膜は、連続膜に比べて実効的な比誘電率を低減させる効果も有している。
絶縁層における空孔の占める体積の比率は、20%以上50%未満であることが好ましい。これにより、有機半導体層及び絶縁層の界面での接触面積を大きくすることが可能となり、ソース電極及びドレイン電極間に流れるオン電流Ionを大きくすることができる。また、絶縁層中に電気絶縁性に優れた空気を含むことから、絶縁層の電気絶縁性を向上させることが可能となる。なお、空孔の占める体積の比率が50%以上になると、絶縁層の機械的強度が低下することがある。なお、空孔の占める体積の比率は、絶縁層を形成する高分子粒子の平均粒子径と粒子径分布で調整することができる。
本発明において、平均粒子径は、3軸平均径で表したものと定義する。具体的には、断面の走査型電子顕微鏡像や透過型電子顕微鏡像から求めることができる。また、電子顕微鏡像を得ることが困難な試料の場合は、X線小角散乱法により粒子径分布を測定し、最頻値を平均粒子径とすることもできる。また、空孔の占める体積の比率は、X線小角散乱法により空孔径分布を測定し、求めることができる。
単位体積の絶縁層に占める高分子粒子の総表面積をS[m−1]、単位体積の絶縁層に占める高分子粒子の数をn[m−3]、高分子粒子の半径の平均値をr[m]、絶縁層の全体積に占める高分子粒子の体積の割合、即ち、高分子粒子の充填率をNとすると、高分子粒子が球形であると近似した場合、式(1)及び(2)が成り立つ。
N=(4/3)πr3×n・・・(1)
S=4πr2×n・・・(2)
式(1)及び式(2)からnを消去してSについて整理すると、
S=3N/r・・・(3)
となる。式(3)から、単位体積の絶縁層に占める高分子粒子の総表面積Sは、高分子粒子の充填率Nに比例し、高分子粒子の半径の平均値rに反比例することがわかる。したがって、有機半導体層及び絶縁層の界面における接触面積を大きくするためには、高分子粒子の充填率Nを大きくして、高分子粒子の半径の平均値rを小さくすればよいことがわかる。
絶縁層を作製する際に、高分子粒子の半径の平均値rと、高分子粒子の充填率Nを変えて有機半導体装置を作製し、ソース電極及びドレイン電極間に流れる電流のオン/オフ比Ion/Ioffを調べたところ、
N/r≧0.02[nm−1]・・・(4)
を満たした時に、Ion/Ioffは、高分子粒子からなる絶縁層を有さない有機半導体装置の約100倍以上になることがわかった(図8参照)。同一の粒子径を有する球形の高分子粒子を最密充填した場合、充填率は74%であることから、絶縁層における空孔の占める体積の比率は、通常、20%以上である。このため、高分子粒子の平均粒子径は、100nm以下であることが好ましく、50nm以下がさらに好ましい。
本発明において、絶縁層は、空孔を有さなくてもよい。この場合、高分子粒子間の接点の面積が大きくなるために、比抵抗が若干低下するが、実効的な比誘電率を高くすることができる。なお、本構成においては、空孔を有する構成における空孔に相当する部分には、樹脂を存在させることができる。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、高分子粒子が分散されている分散液又は無機粒子及び高分子粒子が分散されている分散液を用いて、絶縁層を形成する工程を有する。これにより、本発明の有機半導体装置を簡便に製造することが可能となる。
成膜方法としては、スピンコート法、キャスト法、ディップコート法が挙げられる。これらの方法は、基板の材質に制限がなく、例えば、金属基板、半導体基板、樹脂基板等に、絶縁層を形成することができる。これにより、真空蒸着法のような煩雑なプロセスを用いる必要がなく、また、高温プロセスを用いることなく、絶縁層を形成することが可能であるため、製造コストを低く抑えることができる。
この他の成膜方法としては、分散液を、例えば、樹脂基板上に滴下した後、必要に応じて、減圧環境下又は不活性ガス雰囲気下で溶媒が充分揮発する温度において、溶媒成分を除去する方法が挙げられる。
分散液の分散媒は、高分子粒子が難溶であれば、特に限定されないが、純水であることが好ましい。
高分子粒子を分散した分散液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、Jpn.J.Appl.Phys.,31,L1132−L1134(1992)に記載されている方法を用いることが可能である。
また、粒子径が20〜900nmのポリスチレン粒子(モリテクス社製)、平均粒子径が20nmのポリスチレン粒子(セラダイン社製)、平均粒子径が112nmのポリスチレン粒子(セラダイン社製)等の市販の高分子粒子を分散した分散液を用いることも可能である。
高分子粒子と無機粒子を分散した分散液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記の高分子粒子を分散した分散液に、平均粒子径が30nmの二酸化チタン(真空治金社製)、平均粒子径が58nmの酸化チタン(ホソカワミクロン社製)、平均粒子径が30nmの五酸化二タンタル(高純度化学社製)、粒子径が500nm以上のシリカ(モリテクス社製)等の市販の無機粒子を混合分散する方法を用いることができる。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、絶縁層のガラス転移点以上の温度で絶縁層を加熱する工程をさらに有することが好ましい。これにより、高分子粒子間の接点が増え、機械的強度が増すため、クラックの発生しにくい絶縁層を形成することが可能となる。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、絶縁性の基板上にゲート電極を形成する工程、ゲート電極が形成された基板上に絶縁層を形成する工程、絶縁層上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程並びにソース電極及びドレイン電極が形成された絶縁層上に有機半導体層を形成する工程を有することが好ましい。これにより、図1及び図5の有機半導体装置を製造することができる。この場合、有機半導体層を最後に形成するプロセスであるため、電極や絶縁層のパターニングを行う際に溶媒を用いても、有機半導体材料が溶媒に溶解することがなく、素子特性に影響を与えることがない。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、絶縁性の基板上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程、ソース電極及びドレイン電極が形成された基板上に有機半導体層を形成する工程、有機半導体層上に絶縁層を形成する工程並びに絶縁層上にゲート電極を形成する工程を有することが好ましい。これにより、図3の有機半導体装置を製造することができる。この場合、ソース電極及びドレイン電極を形成した後に、有機半導体層を積層するので、ソース電極及びドレイン電極のパターニングを行う際に溶媒を用いても、有機半導体材料が溶媒に溶解することがなく、素子特性に影響を与えることがない。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、絶縁性の基板上に有機半導体層を形成する工程、有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程、ソース電極及びドレイン電極が形成された有機半導体層上に絶縁層を形成する工程並びに絶縁層上にゲート電極を形成する工程を有することが好ましい。これにより、図4の有機半導体装置を製造することができる。ソース電極及びドレイン電極が形成された絶縁層上に有機半導体層を形成する場合、有機半導体層の膜厚によっては、両電極間の段差により均一な成膜が妨げられることがある。また、電極の高さよりも有機半導体層の膜厚が厚くならない場合、電極との接触面積が減少し、電界効果に寄与する実効面積が減少するため、素子特性を充分に引き出せない場合がある。図4の素子構成とすることにより、有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極が形成されているので、上記のような問題がない。
本発明の有機半導体装置の製造方法は、絶縁性の基板上にゲート電極を形成する工程、ゲート電極が形成された基板上に絶縁層を形成する工程、絶縁層上に有機半導体層を形成する工程並びに有機半導体層上にソース電極及びドレイン電極を形成する工程を有することが好ましい。これにより、図2及び図6の有機半導体装置を製造することができる。この場合、図4の有機半導体装置と同様に、ソース電極及びドレイン電極が形成されているので、上記のような問題がない。
本発明の表示装置は、本発明の有機半導体装置を有する。本発明の有機半導体装置は、電界駆動型及び電流駆動型の表示装置のスイッチング素子やゲート駆動素子として用いることができる。具体的には、有機EL表示装置、液晶表示装置、電気泳動表示装置等の表示装置用のスイッチング素子が挙げられる。
本発明の有機半導体装置を、例えば、液晶表示装置に用いる場合、良好な視認性と、低消費電力の表示装置を低コストで作製することが可能となる。
図5に、本発明の表示装置の一例を示す。これは、本発明の有機半導体装置をポリマー分散型液晶表示装置に用いた構成例である。基板1と透明導電膜8を有する基板9との間に表示素子10が設けられ、TFTによって画素電極を兼ねるドレイン電極5上の表示素子10がスイッチングされる。基板9としては、ガラスやポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルスルホン等のプラスチックを用いることができる。また、表示素子10には、液晶、電気泳動、有機EL等の方式を用いることができる。
液晶表示素子は、電界駆動であることから消費電力が小さく、また、駆動電圧が低いことからTFTの駆動周波数を高くすることができ、大容量表示に適している。液晶表示素子の表示方式として、TN、STN、ゲスト・ホスト型、高分子分散液晶(Polymer−dispersed Liquid Crystal=PDLC)等が挙げられるが、反射型で明るい白色表示が得られることから、PDLCが好ましい。
電気泳動表示素子は、例えば、第一の色(例えば、白色)を呈する粒子と、第二の色(例えば、黒色)を呈する粒子が溶媒中に分散した分散液からなるもので、第一及び第二の色を呈する粒子は、分散媒中で帯電することにより、電界の作用で存在位置を変えることができ、それによって呈する色が変化する。この表示方式によれば、明るく、視野角の広い表示が可能となり、また、表示メモリー性があるため、特に、消費電力の観点から好ましく使用される。
上記分散液を高分子膜で包んだマイクロカプセルとすることにより、表示動作が安定化すると共に、表示装置の製造が容易になる。マイクロカプセルは、コアセルベーション法、In−Situ重合法、界面重合法、グラフト重合法等公知の方法で作製することができる。白色粒子としては、酸化チタンが、特に好適に用いられ、必要に応じて、表面処理又は他の材料との複合化等が施される。分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、臭化エチル等のハロゲン化炭(化水)素類、含フッ素エーテル化合物、含フッ素エステル化合物、シリコーンオイル等の抵抗率の高い有機溶媒を使用することが好ましい。分散媒を着色するためには、所望の吸収特性を有するアントラキノン類、アゾ化合物類等の油溶性染料が用いられる。なお、分散液中には、分散安定化のために界面活性剤等を添加してもよい。
有機EL素子は、自発光型であるため、鮮やかなフルカラー表示を行うことができる。また、EL層は、非常に薄い有機薄膜であるので、柔軟性に富み、特に、フレキシブルな基板上に形成するのに適している。
(抵抗率の評価1)
可溶性ポリイミドCT4112(京セラケミカル社製)をアセトンに溶解させ、1重量%のポリイミド溶液を調製した。サンプル管に10mlの純水を入れ、攪拌子を用いて攪拌しながら、ポリイミド溶液を徐々に滴下し、ポリイミド粒子の分散液を得た。なお、ポリイミド粒子の作製は、室温、大気中で行った。動的光散乱法により得られたポリイミド粒子の平均粒子径は、100nmであった。
ポリイミド粒子の分散液をガラス基板上に滴下し、室温、大気中で乾燥させ、ポリイミド粒子からなる絶縁膜を得た。触針計により測定した膜厚は、250nmであった。
上記のポリイミド溶液をガラス基板上に滴下し、スピンコート法により、ポリイミド連続膜を作製した。この際、膜厚が250nmになるよう、溶液の濃度とスピンコートの回転速度を調整した。
ポリイミド粒子からなる絶縁膜及びポリイミド連続膜の抵抗率を4端子法により測定したところ、それぞれ2.5×1015[Ω・cm]及び1.3×1014[Ω・cm]であった。ポリイミド連続膜に対して、ポリイミド粒子からなる絶縁膜では、抵抗率が一桁以上向上し、絶縁特性が向上することが確認された。
(抵抗率の評価2)
平均粒子径が112nm、301nm及び843nmのポリスチレン粒子の分散液(セラダイン社製)をそれぞれガラス基板にキャストし、ポリスチレン粒子からなる絶縁膜を作製した。この際、膜厚が1μmになるように、分散液の濃度を純水で希釈することにより、調製した。
それぞれの膜の抵抗率を4端子法により測定し、比較を行った結果を表1に示す。なお、抵抗率の比は、平均粒子径が843nmのポリスチレン粒子からなる絶縁膜の抵抗率3.7×1014[Ω・cm]を基準とした。
表1から、平均粒子径が小さくなるにつれて絶縁特性が向上することが確認された。
(実施例1)
以下のようにして、図3に示すような有機半導体装置を作製した。
ガラス製の基板1に、メタルマスクを介して、真空蒸着により1mm×10mm×50nmの金矩形電極(ソース電極4及びドレイン電極5)を形成した。蒸着時の真空度は、1×10−6Torrであり、成膜速度は、3〜5Å/秒であった。基板1の温度の制御は、特に行っていない。反射型光学顕微鏡により電極を観察したところ、電極間の距離(チャネル長)は、50μmであった。
ソース電極4及びドレイン電極5が形成された基板1上に、ペンタセン(アルドリッチ社製)を膜厚が100nmとなるように蒸着して有機半導体層6を形成した。なお、ペンタセンは、購入したものをそのまま使用した。蒸着時の真空度は、3×10−6Torrであり、基板1の温度は、25℃であり、蒸着源の温度は、220℃であり、成膜速度は、3Å/秒であった。このとき、蒸着源上にシャッターを用意し、成膜温度以下において昇華した不純物を取り除くようにした。なお、有機半導体層6は、パターニングを行っていない。
有機半導体層6上に、上記と同様に、キャスト法により、ポリイミド粒子からなる絶縁層3を形成し、その後に、真空蒸着により1mm×8mm×70nmのアルミニウム矩形電極(ゲート電極2)を形成した。
作製した有機半導体装置の電流−電圧特性を、半導体パラメータアナライザー4145B(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。
ソース−ドレイン電圧が−5Vの飽和領域において、ゲート電圧が−15Vである時のIon/Ioffが105であることが確認された。
(比較例1)
絶縁層3の代わりに、上記と同様に、スピンコート法により、ポリイミド連続膜を形成した以外は、実施例1と同様に、有機半導体装置を作製した。
実施例1と同様に、電流−電圧特性を測定したところ、ソース−ドレイン電圧が−5Vの飽和領域において、ゲート電圧が−15Vである時のIon/Ioffは、103であった。
(実施例2)
以下のようにして、図5に示すような有機半導体装置を作製した。
30mm×30mm×1.1mmのガラス製の基板1の表面に厚さ70nmのアルミニウム電極(ゲート電極2)を真空蒸着により形成した。蒸着時の真空度は、5×10−6Torrであり、成膜速度は、3〜5Å/秒であった。基板1の温度は、特に制御せず、室温(25℃)とした。膜厚は、真空蒸着装置に備え付けの水晶振動子によりモニターした。
ゲート電極2上に、電子ビーム蒸着法により、SiO2からなる下地層7を、膜厚が300nmの厚さになるように形成した。蒸着時の真空度は、8×10−6Torrであり、成膜速度は、100nm/分であった。加速電圧は、4.5kVであり、エミッション電流は、30mAであった。なお、下地層7は、パターニングを行っていない。
下地層7上に、上記のポリスチレン粒子の分散液をスピンキャスト成膜して、乾燥し、平均粒子径及び充填率を変えたサンプルを用意した。
次に、実施例1と同様に、ソース電極4及びドレイン電極5を形成し、その上に有機半導体層6を形成した。
得られた有機半導体装置の電流−電圧特性を、半導体パラメータアナライザー4145B(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。図8に測定結果を示す。ここで、横軸は、前述のN/rであり、X線小角散乱法から求めた。縦軸は、ソース−ドレイン電圧が−5Vの飽和領域において、ゲート電圧が−15Vである時のIon/Ioffを表す。
図8から、N/rの値が0.02を超えると、高分子粒子からなる絶縁層を有さない素子(N=0)の約100倍のIon/Ioffとなる素子が得られることがわかる。
(実施例3)
以下のようにして、図4に示すような有機半導体装置を作製した。
ポリイミド製の基板1に、クロロホルム溶液に溶解させたポリヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製)をスピンコート法により成膜した。次に、メタルマスクを介して、真空蒸着により1mm×10mm×50nmの金矩形電極(ソース電極4及びドレイン電極5)を形成した。蒸着時の真空度は、1×10−6Torrであり、成膜速度は、3〜5Å/秒であった。基板1の温度の制御は、特に行っていない。反射型光学顕微鏡により電極を観察したところ、電極間の距離(チャネル長)は、50μmであった。
ソース電極4及びドレイン電極5が形成された有機半導体層6上に、実施例1と同様に、キャスト法により、ポリイミド粒子からなる粒子層を形成した後、二酸化チタン(石原産業社製)を10重量%含有する40重量%ポリスチレン溶液(溶媒:トルエン)をスピンコート成膜した。次に、ポリスチレンのガラス転移点(82℃)及びポリイミドのガラス転移点(190℃)よりも高い200℃のホットプレート上で2時間キュアーし、絶縁層3を得た。集束イオンビーム加工(FIB)法により絶縁層3の断面を切り取り、透過型電子顕微鏡(TEM)により観察したところ、絶縁層3に空孔は見当たらなかった。
続いて、真空蒸着により1mm×8mm×70nmのアルミニウム矩形電極(ゲート電極2)を形成した。
作製した有機半導体装置の電流−電圧特性を、半導体パラメータアナライザー4145B(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。ソース−ドレイン電圧が−5Vの飽和領域において、ゲート電圧が−10Vである時のIon/Ioffが105であることが確認された。これは、比誘電率の大きい二酸化チタンが絶縁層3中に存在することにより、絶縁層3の実効的な比誘電率が大きくなるためである。
この有機半導体装置の基板1の両端をクリップで挟み、R=5cm程度に折り曲げたところ、絶縁層3にクラックの発生は見られなかった。
(比較例2)
キャスト法により、ポリイミド粒子からなる粒子層を形成した後、40重量%ポリスチレン溶液(溶媒:トルエン)をスピンコート成膜し、50℃のホットプレート上で2時間キュアーし、絶縁層3を得たこと以外は、実施例3と同様にして、有機半導体装置を作製した。
実施例3と同様に、電流−電圧特性を測定したところ、ソース−ドレイン電圧が−5Vの飽和領域において、ゲート電圧が−10Vである時のIon/Ioffは、103であった。これは、二酸化チタンが絶縁層中に存在しないことにより、比誘電率が大きくならないためである。
この有機半導体装置の基板1の両端をクリップで挟み、R=5cm程度に折り曲げたところ、絶縁層3に多数のクラックが見られた。これは、ポリスチレン及びポリイミドをガラス転移点以下の温度でキュアーしたために、粒子間の接点が少なく十分な機械強度が得られないためである。
(参考例4)
以下のようにして、図2に示すような有機半導体装置を作製した。
ガラス基板1に、真空蒸着により1mm×8mm×70nmのアルミニウム矩形電極(ゲート電極2)を形成した。次に、ポリスチレンセグメントとポリイミドセグメントを有するブロック共重合体(ポリスチレンの導入率18%)をNMP(n−メチル−2−ピロリドン)に溶解させた液をスピンコート成膜し、230℃のオーブンで2時間加熱することにより、絶縁層3を形成した。FIB法を用いて絶縁層3の断面を切り取り、TEMにより観察したところ、多数の空孔とポリイミドセグメント由来の高分子粒子が見られた。画像処理により全画像面積中の空孔の割合を測定したところ、27%であった。この空孔は、ミクロ相分離したポリスチレンセグメントが熱分解によって分解消失したところと考えられる。
次に、クロロホルム溶液に溶解させたポリヘキシルチオフェン(アルドリッチ社製)をスピンコート法により成膜した。続いてメタルマスクを介して、真空蒸着により1mm×10mm×50nmの金矩形電極(ソース電極4及びドレイン電極5)を形成した。蒸着時の真空度は、1×10−6Torrであり、成膜速度は、3〜5Å/秒であった。基板1の温度の制御は、特に行っていない。反射型光学顕微鏡により電極を観察したところ、電極間の距離(チャネル長)は、50μmであった。
作製した有機半導体装置の電流−電圧特性を、半導体パラメータアナライザー4145B(ヒューレット・パッカード社製)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。
ソース−ドレイン電圧が−20Vの飽和領域において、ゲート電圧が−20Vである時のIon/Ioffが106であることが確認された。
(参考例5)
絶縁層3において、ポリスチレンの導入率を変えて種々のものとし、参考例4と同様に成膜した。参考例4と同様にキュアーし、絶縁層3の断面を観察したところ、全画像面積中の空孔の割合が12%、48%及び63%のものが得られた。参考例4と同様にして、有機半導体装置を作製した。この電気特性を参考例4と同様に測定した。
空孔率が12%では、Ion/Ioffが1桁であり、オフリークが大きかった。一方、空孔率が63%では、Ion/Ioffが5桁となる場合もあったが、全くトランジスタ特性の得られない有機半導体装置もあった。このような有機半導体装置を金属顕微鏡で観察したところ、絶縁層3がへこんだり、崩れたりしていた。これは、空孔率が高く、十分な機械強度が得られていないためである。また、空孔率が48%では、Ion/Ioffが6桁であり、良好なトランジスタ特性が得られた。