JP2008150228A - 無アルカリガラスおよびその製造方法 - Google Patents

無アルカリガラスおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】泡の少ない無アルカリガラスの提供。
【解決手段】SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラス。
【選択図】なし

Description

本発明は、液晶ディスプレイパネル用基板として好適な、泡の少ない無アルカリガラスおよびその製造方法に関する。
フラットパネルディスプレイ用のアルカリ金属酸化物を実質的に含有しない無アルカリガラス基板は、液晶ディスプレイ(LCD)、有機エレクトロ・ルミネッセンス・ディスプレイ(OLED)などに使用される。
そのうちのLCD用ガラス基板には、表面に金属または金属酸化物の薄膜などが成膜されるため、以下に示す特性が要求される。
(1)実質的にアルカリ金属イオンを含まない無アルカリガラスであること(ガラス基板中のアルカリ金属酸化物が、アルカリ金属イオンとして薄膜中に拡散し、膜特性を劣化させることがあるので、その劣化防止のため)。
(2)高い歪点を有していること(薄膜トランジスタ(TFT)の形成工程で、ガラス基板が高温にさらされることによるガラス基板の変形、収縮を最小限に抑えるため)。
(3)TFT形成に用いる各種薬品に対して充分な化学的耐久性を有すること。特にSiOXやSiNXのエッチングに使用するバッファードフッ酸(フッ酸+フッ化アンモニウム;BHF)、ITO(スズがドープされたインジウム酸化物)のエッチングに用いる塩酸を含有する薬液、金属電極のエッチングに用いる各種の酸(硝酸、硫酸等)、またはアルカリ性のレジスト剥離液に対して耐久性があること。
(4)ガラス基板の内部および表面に、ディスプレイ表示に影響を及ぼす欠点(泡、キズ等)をもたないこと。
近年、フラットパネルディスプレイ用ガラス基板の面積が大きくなるにつれ、仮に同じ欠点密度を有するガラス基板であっても、1枚あたりの欠点数が増えることから生産性に影響を及ぼすようになってきた。特に泡欠点が主な欠点として挙げられる。
従来、原料溶解時に発生する泡を低減するための清澄剤としてAs23、Sb23などを無アルカリガラスに添加して、無アルカリガラスの泡を低減させる方法が採られてきた。
しかし、As23およびSb23、特にAs23は溶融ガラスから気泡を取り除くという点で、きわめて優れた清澄剤であるが、環境への負荷が大きいため、その使用の抑制が求められている。
また、原料溶解時に発生する泡を低減するために、スズ酸化物を清澄剤としてガラス原料に添加し、ガラス中のSn2+/全Sn比(Sn−レドックス)が酸化還元滴定により0.13以上となる条件下でガラス原料を溶解する方法が提案されている(特許文献1)。該方法は、SnO2からSnOへの還元反応で生じる酸素ガスが溶融ガラス中の微小な泡とともに溶融ガラス表面に浮上し脱泡させるものである。
また、ガラス原料にSnO2を添加し、該ガラス原料を1350℃以上に加熱し、減圧下で脱泡する方法が提案されている(特許文献2)。該方法は、上記方法同様に、SnO2の還元反応で生じる酸素ガスが、溶融ガラス中の微小な泡とともに減圧下で大きな気泡となって溶融ガラス表面に浮上し脱泡させるものである。
特開2004−75498号公報 特開2000−239023号公報
しかしながら、酸化還元滴定法は測定条件によりSnレドックス値に誤差が生じやすく、管理値として適当とはいえないこと、さらに温度や時間のみで所定のレドックス値以上にしようとするとガラスの均質性や設備面に影響されることを見出し、酸化還元滴定法によるSn−レドックスの規定(特許文献1)だけでは泡の抑制効果が不十分であることを本願発明者は見出した。
また、SnO2の還元反応により酸素ガスが発生する温度はどのような組成のガラスでも同様というものではないこと、さらに脱泡効果は溶融ガラス粘度にも影響されることを見出し、減圧値等の規定(特許文献2)だけでは泡の抑制効果が不十分であることを本願発明者は見出した。
したがって、本発明は、泡の少ない無アルカリガラス及び効率的に泡を少なくする無アルカリガラスの製造方法を提供することを目的とする。
特に、一辺が2m以上の矩形の大きな面積を有するディスプレイ用ガラス基板に対して泡が少ないことは有効である。
本発明者は、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、特定の成分をガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、特定の範囲のガラス母組成の塩基性度を有し、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が特定の範囲であり、Snを含む無アルカリガラスが、泡の少ないものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラスを提供する。
また、本発明は、原料を溶解して、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラスを製造する方法であって、前記原料を1400〜1550℃に加熱して溶融ガラスとする溶解工程1と、前記溶解工程1の後、前記溶融ガラスを1530〜1680℃に加熱してガラス中の泡を脱泡させる溶解工程2とを具備し、前記溶解工程2における溶融ガラスの温度を、前記溶解工程1における溶解ガラスの温度より30℃以上高くする無アルカリガラスの製造方法を提供する。
本発明の無アルカリガラスは泡が少ない。また、本発明の無アルカリガラスの製造方法は、効率的に泡を少なくすることができる。
本発明の無アルカリガラスは泡が少ないので液晶ディスプレイパネル用の基板ガラスとして好適である。
特に、薄板、大型の基板ガラス(例えば、板厚0.3〜1.1mm、一辺が2m以上の矩形)に適用することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の無アルカリガラスは、
SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラスである。
塩基性度について以下に説明する。
本発明の無アルカリガラスにおいて、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOを含有するガラス母組成(以下、「母組成」という。)の塩基性度の値が、0.490〜0.505である。
本発明において、母組成の塩基性度はガラス中の酸素原子の電子供与性を示すものであり、下記数式(1)によって求められる値(Λcal)をいう。
Figure 2008150228
数式(1)において、Ζiはガラス中の陽イオンiの原子価であり、riはガラス中の全酸化物イオンに対する陽イオンiの割合であり、γiはbasicity moderating parameterで陽イオンiが酸化物イオンの電子供与性を低下させる程度を示すパラメーターである。
γiはPaulingの電気陰性度χと次の数式(2)で表される関係にある。
γi=1.36(χi−0.26) (2)
母組成の塩基性度Λcalは、ガラス中の酸化物イオンの平均的なルイス塩基性度を評価する尺度となる。
無アルカリガラスには通常酸化物として、SiO2、Al23、B23のようなガラスを形成する成分と、MgO、CaO、SrO、BaOのようなアルカリ土類金属酸化物が含有される。
SiO2、Al23、B23は、母組成の塩基性度を低くし、粘度ηを高くしうる成分である。
MgO、CaO、SrO、BaOは、母組成の塩基性度を高くし、粘度ηを低くしうる成分である。
この中で母組成の塩基性度を高くするという作用は、BaO>SrO>CaO>MgOの順で強い。
したがって、MgO、CaO、SrO、BaOの組成割合を調整することによって、ガラス母組成の塩基性度を詳細に制御することができる。
ガラス中に含まれる酸化物イオンとしては、O2-が挙げられる。
ガラス中の陽イオンiとしては、Si4+、Al3+、B3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+が挙げられる。
iは、ガラス中の全酸化物イオンに対する陽イオンiの割合であり、母組成から一義的に計算された値である。
ガラス中の全酸化物イオンは、(各成分1分子が有する酸素原子の個数×各成分のモル%)の和となる。
例えば、SiO2:50mol%、Al23:10mol%、CaO:40mol%のガラスの場合、ガラス中の全酸化物イオンは、[2×0.5(SiO2)+3×0.1(Al23)+1×0.4(CaO)]となり、ガラス中の全酸化物イオンに対する各陽イオン(Si4+、Al3+、Ca2+)の割合riは次のように計算できる。
si=[1(SiO21分子が有するケイ素原子の数)×0.5(SiO2のモル%)]/[2×0.5(SiO2)+3×0.1(Al23)+1×0.4(CaO)]
≒0.294
Al=[2(Al231分子が有するアルミニウム原子の数)×0.1(Al23のモル%)]/[2×0.5(SiO2)+3×0.1(Al23)+1×0.4(CaO)]
≒0.118
Ca=[1(CaO1分子が有するカルシウム原子の数)×0.4(CaOのモル%)]/[2×0.5(SiO2)+3×0.1(Al23)+1×0.4(CaO)]
≒0.235
なお、塩基性度Λcalは経験式による計算光学的塩基性度であり、J.A.Duffy and M.D.Ingram, J.Non-Cryst.Solids 21(1976)373において提案されている。
母組成の塩基性度が0.490〜0.505である場合、原料が溶融ガラスとなる、初期の温度からその後更に加熱される際に溶融ガラス中の、Sn2+/全Sn比(以下Sn2+/全Sn比の百分率を「Sn−レドックス」という。)が高くなり、SnO2からSnOへの還元反応により無アルカリガラス中に含まれる既存の泡の泡抜けを促進し、得られる無アルカリガラス中の泡を少なくすることができる。
尚、本発明において、Sn−レドックスはメスバウアー分光法により測定されるものである。
また、母組成の塩基性度は、0.493〜0.502が好ましく、0.496〜0.502がより好ましい。
粘度について以下に説明する。
本発明の無アルカリガラスにおいては、logη=2(ηは粘度[dPa・s])となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である。
本発明において、粘度ηは、溶解された溶融ガラスの粘度である。
logη=2となる溶融ガラス温度を以下「T2」ということがある。
2がこのような範囲の場合、溶融ガラス中の泡の浮上速度が速くなり、得られる無アルカリガラス中の泡を少なくすることができる。
2は、1550〜1650℃が好ましく、1560〜1620℃がより好ましい。
なお、本発明において、T2は、高温回転粘度計を用いて測定されるものである。
Snについて以下に説明する。
本発明において、SnO2は、清澄剤として加えられるものである。
SnO2は、原料を加熱し溶解する際に、下記反応式(3)に示すようにSnOに還元されて酸素を発生させ、発生した酸素は溶融ガラスに含まれる泡とともに溶融ガラス表面に浮上する。
Figure 2008150228
反応式(3)に示すように、SnO2からSnOへの還元反応は可逆的である。
本願発明者は、無アルカリガラスの塩基性度を0.490〜0.505とすることによって溶融ガラス中におけるSnO2からSnOへの還元反応を促進してSn−レドックスを増加させることができるという、塩基性度によるSn−レドックスの制御方法を見出した。
塩基性度によるSn−レドックスの制御方法について以下に説明する。
図1は、異なるガラス組成の無アルカリガラスの塩基性度に対する、Sn−レドックスおよび1/η(1/ηは溶融ガラス中の泡の浮上速度にほぼ比例するもの)の関係を示すグラフである。
実験は、それぞれの無アルカリガラスを1500℃で30分保持した後、溶解温度を1630℃に上げて30分保持させた際のSn−レドックス、粘度ηを測定している。
1630℃において、母組成の塩基性度が高いガラスであるとSn−レドックスが低いこと、また母組成の塩基性度が0.490〜0.505である場合、Sn−レドックスが15〜30%となることが示されている。
また、図1において、母組成の塩基性度が高いと1/ηが高くなることが示されている。
本発明の無アルカリガラスは、より泡を少なくするという観点から、また、液晶ディスプレイパネル用基板として好適であるという観点から、
下記成分をガラス母組成として含有し、
前記ガラス母組成の総量100質量部に対して、0.05〜1質量部のSnO2を含有し、
酸化物基準のmol百分率表示による成分が、
SiO2 58〜68mol%
Al23 7〜15mol%
23 0〜15mol%
MgO 3〜15mol%
CaO 3〜15mol%
SrO 2〜8mol%
BaO 0〜0.2mol%
MgO+CaO+SrO+BaO 13〜20mol%であるのが好ましい。
SiO2は、その量が、前記母組成の総量中、58〜68mol%であるのが好ましく、より好ましくは59〜67mol%、さらに好ましくは60〜66mol%である。
SiO2の量が68mol%以下である場合、失透傾向を抑制できる。
また、SiO2の量が58mol%以上の場合、耐酸性に優れ、密度が低く、高い歪点を有し、線膨張係数を低くし、ヤング率を高くすることができる。
Al23が、その量が、前記母組成の総量中、7〜15mol%であるのが好ましく、より好ましくは9〜13mol%、さらに好ましくは10〜12mol%、特に好ましくは10.5〜12mol%である。
Al23の量が7mol%以上である場合、分相性を抑制し、歪点を上げ、ヤング率を高くすることができる。
Al23の量が15mol%以下である場合、失透傾向を抑制し、耐酸性、耐BHF性に優れる。
23は、その量が、前記母組成の総量中、0〜15mol%であるのが好ましく、より好ましくは5〜10mol%、さらに好ましくは6〜9mol%である。
23をこのような範囲で含有させると密度を低下させ、密度を低下させ、耐BHF性を向上させ、ガラスの溶解反応性を向上させ、失透傾向を抑制できるので好ましい。
この含有率が高すぎると、ヤング率を低下させ、耐酸性を低下させる場合がある。
液晶ディスプレイ用ガラス基板として好ましい高い歪点、低い線膨張係数を得るためには、SiO2、Al23及びB23の総量が、前記母組成の総量中、80mol%以上であるのが好ましく、より好ましくは81mol%以上であり、さらに好ましくは82mol%以上であり、特に好ましくは83mol%以上である。
MgOは、その量が、前記母組成の総量中、3〜15mol%であるのが好ましく、より好ましくは4〜12mol%、さらに好ましくは5〜10mol%である。
MgOの量が4mol%以上である場合、密度を低下させ、溶解反応性を向上させ、線膨張係数を高くせず、歪点を低下させないので好ましい。
MgOの量が10mol%以下である場合、ガラスが分相しにくく、失透傾向を抑制でき、耐酸性に優れる。
CaOは、その量が、前記母組成の総量中、3〜15mol%であるのが好ましく、より好ましくは4〜12mol%、さらに好ましくは5〜10mol%である。
CaOをこのような範囲で含有させると密度を低下させ、線膨張係数を高くせず、歪点を低下させず、耐酸性を改善させ、溶解反応性を向上させ、粘性を低下させ、ガラスが分相しにくく、失透傾向を抑制できるので好ましい。
この含有率が高すぎると線膨張係数の増大、密度の増大を招く場合がある。
SrOは、その量が、前記母組成の総量中、2〜8mol%であるのが好ましく、より好ましくは2.5〜6mol%、さらに好ましくは3〜5mol%である。
SrOをこのような範囲で含有させると密度を低下させ、線膨張係数を高くせず、歪点を低下させず、耐酸性を改善させ、溶解反応性を向上させ、粘性を低下させ、ガラスが分相しにくく、失透傾向を抑制できるので好ましい。
この含有率が高すぎると線膨張係数の増大、密度の増大、耐酸性の低下を招く場合がある。
BaOは、粘性を低下させ、分相傾向及び失透傾向を抑制するために、前記母組成中0〜0.2mol%含有させることができるが、密度を大きくせず、線膨張係数を高くせず、歪点を低下させないことを考慮すると、好ましくは0〜0.1mol%、さらに好ましくは実質的に含有させない。
MgO、CaO、SrO及びBaOの合計量は、前記母組成の総量中、13〜20mol%であることが好ましく、14〜19mol%であることがより好ましく、14.5〜18.5mol%であることがさらに好ましく、15〜18mol%であることが特に好ましい。
MgO、CaO、SrO及びBaOの合計量が13mol%以上である場合、粘性が低くなるので好ましい。
MgO、CaO、SrO及びBaOの合計量が20mol%以下である場合、線膨張係数、歪点、耐酸性に優れる。
SnO2は、無アルカリガラス中の泡をより少なくする観点から、また、無アルカリガラス表面のSnの析出を安定して抑制する観点から、SnO2の無アルカリガラス中の含有量が、前記母組成の総量100質量部に対して、0.05〜1質量部であるのが好ましく、0.15〜0.5質量部であるのがより好ましい。
本発明の無アルカリガラスの製造方法は、
原料を溶解して、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラスを製造する方法であって、
前記原料を1400〜1550℃に加熱して溶融ガラスとする溶解工程1と、
前記溶解工程1の後、前記溶融ガラスを1530〜1680℃に加熱してガラス中の泡を脱泡させる溶解工程2とを具備し、
前記溶解工程2における溶融ガラスの温度を、前記溶解工程1における溶解ガラスの温度より30℃以上高くする無アルカリガラスの製造方法である。
無アルカリガラス中の泡をより少なくする観点から、また、無アルカリガラス表面のSnの析出を安定して抑制する観点から、前記母組成原料の総量100質量部に対して、0.06〜1.25質量部のSnO2を前記母組成原料に含有するように原料を調製するのが好ましく、0.19〜0.65質量部であるのがより好ましい。
本発明の無アルカリガラスは、無アルカリガラスの脱泡・清澄効果を促進・強化することができるという観点から、SnO2の他、さらに、SO3、Fe23、Cl、Fを含有することができる。
これらは、原料を加熱していく際に、多量の泡を発生し、溶融ガラス中の泡を大きくし脱泡を補助することができる。
SO3は、SO3の分解による酸素泡の発生が適正となる観点から、母組成原料の総量100質量部に対して、0.01〜1.0質量部含有するのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部であり、さらに好ましくは0.03〜0.4質量部である。
Fe23は、脱泡効果の飽和とガラスの着色が顕著になることを考慮し、母組成原料の総量100質量部に対して、0.01〜0.2質量部含有するのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1質量部である。
Fは、母組成原料の総量100質量部に対して、0.01〜0.5質量部含有するのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量部である。
Clは、母組成原料の総量100質量部に対して、0.01〜1.0質量部含有するのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.5質量部である。
本発明の無アルカリガラスは、次の方法で製造するのが好ましい。
まず、本発明の無アルカリガラスになるように工業用ガラス原料を調製する(調製工程)。
調製された原料を溶解窯に連続的に投入し、加熱し溶解し溶融ガラスとする(溶解工程)。
溶解工程は、原料を溶解窯へ投入し加熱し原料を溶融ガラスとする溶解工程1と、その後、溶融ガラスをさらに加熱してガラス中の泡を脱泡させる溶解工程2とを具備するのが、SnO2の還元反応による酸素を一挙に発生させ、泡がより少ない無アルカリガラスが得られるという観点から好ましい。
そして、溶解工程1において原料が溶融ガラスとなる温度(以下これを「初期温度」ということがある。)に対し、溶解工程2における溶融ガラスの温度(以下これを「到達温度」ということがある。)は、SnO2の還元反応による酸素を一挙に発生させ、泡がより少ない無アルカリガラスが得られるという観点から、30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましく、90℃以上高いことがさらに好ましい。
前記初期温度は、原料を溶解させるが、SnO2の還元反応による酸素の発生はまだ抑制しておくという観点から、1400〜1550℃であり、1450〜1530℃であるのが好ましい。
初期温度1500℃でのSn−レドックスは0%以上10%以下であることが好ましい。
また、初期温度1530℃でのSn−レドックスは0%超20%未満であることが好ましい。
溶解工程2における到達温度は、Sn−レドックスを上げてSnO2の還元反応による酸素を一挙に発生させ、さらに粘度ηを低くして泡浮上速度を早くし、より泡の少ない無アルカリガラスが得られるという観点から、1530〜1680℃であり、1550〜1650℃であるのが好ましい。
到達温度1630℃でのSn−レドックスは15〜30%であることが好ましい。
また、到達温度でのSn−レドックスは、初期温度でのSn−レドックスよりも10%以上高いことが好ましい。
無アルカリガラスのガラス母組成の塩基性度が0.490〜0.505であることによって、初期温度から到達温度においてSn−レドックスが高くなり効果的に酸素を発生させ、またlogη=2となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃であることから、ガラスの粘度ηを低くして泡の浮上速度を高くし、より泡の少ない無アルカリガラスが得られる。
溶融ガラスが置かれる雰囲気における絶対圧を低下させると、溶融ガラス中の泡が膨れ、溶融ガラス表面に浮上しやすくなるため、減圧脱泡を実施することが好ましい。
減圧脱泡における絶対圧は、160〜660torr(21,328〜87,978Pa、1torr=133.3Paとして計算)であるのが好ましく、より好ましくは200〜400torr(26,660〜53,320Pa)である。
溶解工程において、溶解工程1と溶解工程2とで温度差を30℃以上とするためには、例えば、(1)1つの溶解窯を使用して原料投入側からガラス排出側に溶融ガラスが流動していく中で溶解工程1を行い溶解工程2を行う方法、(2)1つの溶解窯の内部を原料投入側とガラス排出側とに2分して使用する方法、(3)2つの溶解窯を使用する方法が挙げられる。
溶解工程1、2において使用される、溶解窯の仕様、また原料、溶融ガラスを加熱する方法は特に制限されない。
本発明の製造方法によれば、泡が少ない無アルカリガラスが得られ、歩留まりを良くすることができる。
得られた溶融ガラスをフロート法により所定の板厚(例えば、0.1〜1.1mm、好ましくは0.3〜0.7mm)の板ガラスに成形し(成形工程)、徐冷後所望の大きさに切断し、必要に応じて研削、研磨などの加工をする(加工工程)ことで液晶ディスプレイパネル用基板を製造することができる。
本発明の無アルカリガラスは、耐還元性にすぐれているので、成形の際に還元雰囲気に晒されるフロート法に有効である。
また、本発明の無アルカリガラスは、ダウンドロー法、フュージョン法等のフロート法以外の方法を用いても成形することができるが、大型の板ガラスを安定して生産できるフロート法に特に適している。
本発明の無アルカリガラスは、その熱膨張係数が30×10-7/℃〜45×10-7/℃であるのが好ましく、より好ましくは32×10-7/℃〜40×10-7/℃である。
熱膨張係数がこのような範囲である場合、大型(例えば、一辺が2m以上の矩形)の液晶ディスプレイパネル用の基板として好適に使用することができる。
なお、本発明において、熱膨張係数は、指差熱膨張計(TMA)を用いて測定された、50℃〜350℃の平均線膨脹係数である。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
表1、2の例1〜10は実施例、例11〜13は比較例を示す。
1.原料の調製
成形後のガラスが表1、2の母組成(SiO2〜BaO(mol%))となるように母組成原料を調製すると共に、該母組成原料の総量100質量部に対して表1、2のSnO2〜F(質量部)が母組成原料に含まれるように原料を調製し、ガラス原料とする。
また、表1、2のSnO2〜Fの、カッコが付されていない数値は母組成原料の総量100質量部に対する各成分の量(質量部)を示す。
表1、2のSnO2〜Fの、カッコ内の数値は成形後のガラス中の母組成の総量100質量部に対する各成分の量(質量部)である。
また、表中、「<」は数値が定量限界未満であることを示す。
2.無アルカリガラスの作製
原料を白金るつぼに入れ、以下に示す評価に対応する方法で無アルカリガラスを作製した。
3.評価
ガラス母組成の塩基性度、T2(logη=2となる溶融ガラス温度)、T2.5(logη=2.5となる溶融ガラス温度)、1630℃におけるlogη、1630℃における1/η、Sn−レドックス、泡数、熱膨張係数、得られた無アルカリガラスの組成を下記の方法により測定、分析した。結果を表1、2に示す。
(1)ガラス母組成の塩基性度
母組成の成分から数式(1)、(2)より求めた。
(2)粘度η
溶融ガラスの粘度ηは、高温回転粘度計を用いて測定された。
また、このデータをもとに、T2(logη=2となる溶融ガラス温度)、T2.5(logη=2.5となる溶融ガラス温度)、1630℃におけるlogηを算出した。
また、例1、8、12、13の原料について1500℃で30分間溶解した後1630℃で30分間溶解させた際における1/ηを算出した。
1/ηは、溶融ガラス中における泡の浮上速度にほぼ比例する。
結果を表1、2および図1に示す。
また、例1、8、12、13の原料について、1500℃で30分間溶解した後、表4に示す温度で30分間溶解させた際の粘度ηを上述の方法で測定しlogηを算出した。結果を表4および図2に示す。
(3)Sn−レドックス
原料を白金るつぼに入れ、1500℃で30分間加熱し溶解し(溶解工程1)この後、1630℃で30分間溶解し(溶解工程2)、その後冷却して760℃で1時間保持後12時間かけて室温まで冷却して得られたガラスについて、Sn−レドックスを測定した。
Sn−レドックスは、Sn−メスバウアー分光法によってガラス中のSn2+量を室温で測定し、[Sn2+量/全Sn]で算出した値である。
結果を表1、2および図1に示す。
また、表1、2に示す例1、8、12、13の原料について、1500℃で30分間溶解した後、表3に示す温度で30分間溶解させた際のSn−レドックスを上記の方法で測定した。
結果を表3および図2に示す。
ここで、Sn−メスバウアー分光の測定方法について説明する。
119mSnから119Snへのエネルギー遷移に伴って発生するγ線(23.8keV)をプローブにして、透過法(ガラス試料を透過したγ線を計測)により、試料中のSnの2価と4価の存在割合(Sn−レドックス)を測定した。具体的には、以下の通りである。
放射線源のγ線出射口、ガラス試料、Pdフィルター、気体増幅比例計数管(LND社製、型番45431)の受光部を300〜800mm長の直線上に配置した。
放射線源は、10mCiの119mSnを用い、光学系の軸方向に対して放射線源を運動させ、ドップラー効果によるγ線のエネルギー変化を起こさせた。放射線源の速度はトランスデューサー(東陽リサーチ社製)を用いて、光学系の軸方向に−10〜+10mm/秒の速度で振動するように調整した。
ガラス試料は、前記の得られたガラスを3〜7mmの厚さに研磨したガラス平板を用いた。
Pdフィルターは、気体増幅比例計数管によるγ線の計測精度を向上させるためのものであり、γ線がガラス試料に照射された際にガラス試料から発生する特性X線を除去する厚さ50μmのPd箔である。
気体増幅比例計数管は、受光したγ線を検出するものである。気体増幅比例計数管からのγ線量を示す電気信号を増幅装置(関西電子社製)で増幅して受光信号を検出した。マルチチャンネルアナライザー(Wissel社CMCA550)で上記の速度情報と連動させた。
気体増幅比例計数管からの検出信号を縦軸に、運動している放射線源の速度を横軸に表記することで、スペクトルが得られる(メスバウアー分光学の基礎と応用 45〜64頁 佐藤博敏・片田元己共著 学会出版)。評価可能な信号/雑音比が得られるまでに、積算時間は2日から16日を必要とした。
0mm/秒 付近に出現するピークがSnの4価の存在を示し、2.5mm/秒と4.5mm/秒 付近に出現する2つに分裂したピークが2価の存在を示す。それぞれのピーク面積に補正係数(Journal of Non-Crystaline Solids 337(2004年) 232-240頁 「The effect of alumina on the Sn2+/Sn4+ redox equilibrium and the incorporation of tin in Na2O/Al2O3/SiO2 melts」 Darja Benner,他共著)(Snの4価:0.22、Snの2価:0.49)を乗じたものの割合を計算し、2価のSn割合をSn−レドックス値とした。
(4)泡数
原料を300ccの白金るつぼに入れ、1500℃の電気炉で30分間静置し溶解した後、1590℃の電気炉に移し替え、30分間静置した。その後、760℃の電気炉に移し替え、2時間かけて560℃までガラスを徐冷し、さらに約10時間かけて室温までガラスを徐冷した。るつぼ上部中央のガラスをコアドリルで直径38mm、高さ35mmの円柱状ガラスにくり貫き、該円柱状ガラスの中心軸を含む厚さ2〜5mmのガラス板に切り出した。切り出し面両面を光学研磨加工(鏡面研磨仕上げ)した。るつぼのガラス上面から1〜10mmの間に相当する部位について、光学研磨加工面を実体顕微鏡で観察し、ガラス板中の直径50μm以上の泡数を計測し、その値をガラス板の体積で割り、得られた数値を泡数とした。
泡数は、好ましくは200個以下、より好ましくは100個以下、さらに好ましくは50個以下である。
(5)熱膨張係数
熱膨張係数は、指差熱膨張計(TMA)を用いて測定された、50℃〜350℃の平均線膨脹係数である。
(6)無アルカリガラスの組成
得られた無アルカリガラス中の、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO、BaOの含有量、ならびにSnO2、SO3、FおよびClの無アルカリガラス中の残存量は、蛍光X線分析装置を用いて測定した。
図2は、溶解温度に対する、Sn−レドックスおよびlogηの関係を示すグラフである。
図2において、ガラス母組成の塩基性度が0.490未満でありT2が1680℃を超える例12は、原料が加熱され、約1400℃付近からSnO2のSnOへの還元反応が起こり始め、約1450℃付近(Sn−メスバウアー分光の測定法によるSn−レドックス約10%)から、SnO2のSnOへの還元反応が活性化するため、原料がガラス化する1500℃付近では、還元反応による酸素泡(初期泡)が、既に溶融ガラス内に含まれ、1530℃〜1680℃の溶解温度における酸素発生による泡抜けが効果的に行えない。また、粘度ηも高いため泡浮上しにくい。
そして、溶融ガラス内の泡と初期泡とが系内に共存して共存泡となるため、該共存泡を溶融ガラスから抜くために溶融ガラスを長時間溶解槽に滞在させなければならず、生産性が低下してしまうという問題を本発明者は見出した。
また、ガラス母組成の塩基性度が0.505を超えT2が1530℃未満の例13は、1530℃〜1680℃の溶解温度においてSn−レドックスが低いため酸素が発生しにくく、また粘度ηが低い。この結果無アルカリガラスに泡が多く残存し、酸素を発生させようとして溶融ガラスの温度を高温とすると粘度ηが更に低くなり、ガラス成分の一部が揮散し、ガラスが不均質になりやすくなる。
これらに対して、例1、8は、ガラス母組成の塩基性度が0.490〜0.505であることによって1530℃〜1680℃の溶解温度におけるSn−レドックスを適正に調節してSnO2の還元反応による酸素を一挙に発生させ泡抜きを行い、さらにlog=2となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃であることによって泡を溶融ガラスから浮上させやすくすることによって、得られる無アルカリガラス中の泡数が少ない。
Figure 2008150228
Figure 2008150228
Figure 2008150228
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図1は、異なるガラス組成の無アルカリガラスの塩基性度に対する、Sn−レドックスおよび1/粘度ηの関係を示すグラフである。 溶解温度に対する、Sn−レドックスおよびlogηの関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラス。
  2. 下記成分を前記ガラス母組成として含有し、
    前記ガラス母組成の総量100質量部に対して、0.05〜1質量部のSnO2を含有する請求項1に記載の無アルカリガラス。
    酸化物基準のmol百分率表示による成分:
    SiO2 58〜68mol%
    Al23 7〜15mol%
    23 0〜15mol%
    MgO 3〜15mol%
    CaO 3〜15mol%
    SrO 2〜8mol%
    BaO 0〜0.2mol%
    MgO+CaO+SrO+BaO 13〜20mol%
  3. 熱膨張係数が30×10-7/℃〜45×10-7/℃である請求項1または2に記載の無アルカリガラス。
  4. 原料を溶解して、SiO2、Al23、B23、MgO、CaO、SrO及びBaOをガラス母組成として含有し、アルカリ金属酸化物を実質的に含有せず、前記ガラス母組成の塩基性度が、0.490〜0.505であり、logη=2(ηは粘度)となる溶融ガラス温度が1530〜1680℃である、Snを含む無アルカリガラスを製造する方法であって、
    前記原料を1400〜1550℃に加熱して溶融ガラスとする溶解工程1と、
    前記溶解工程1の後、前記溶融ガラスを1530〜1680℃に加熱してガラス中の泡を脱泡させる溶解工程2とを具備し、
    前記溶解工程2における溶融ガラスの温度を、前記溶解工程1における溶解ガラスの温度より30℃以上高くする無アルカリガラスの製造方法。
  5. 下記成分を前記ガラス母組成として含有するように母組成原料を調製し、
    前記母組成原料の総量100質量部に対して、0.06〜1.25質量部のSnO2を前記母組成原料に含有するように原料を調製する請求項4に記載の無アルカリガラスの製造方法。
    酸化物基準のmol百分率表示による成分:
    SiO2 58〜68mol%
    Al23 7〜15mol%
    23 0〜15mol%
    MgO 3〜15mol%
    CaO 3〜15mol%
    SrO 2〜8mol%
    BaO 0〜0.2mol%
    MgO+CaO+SrO+BaO 13〜20mol%
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