JP2008144159A - ポリアミック酸溶液の製造方法およびポリアミック酸溶液 - Google Patents

ポリアミック酸溶液の製造方法およびポリアミック酸溶液 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明の目的は、ポリアミック酸を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のポリアミック酸溶液を再現性よく、安定的に製造する新規な製造方法を提供することである。
【解決手段】 前工程で、ジアミンと前記ジアミンに対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを、前記テトラカルボン酸二無水物に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してポリアミック酸溶液を調製し、次いで、後工程で、このポリアミック酸溶液へジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが実質的に等モル量になるようにジアミン及び/又はテトラカルボン酸二無水物を加えて更に反応してポリアミック酸溶液を製造することにより、ポリアミック酸を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のポリアミック酸溶液を再現性よく安定的に製造することができる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリイミド前駆体溶液であるポリアミック酸溶液を調製する新規な製造方法に関する。この製造方法によれば、特に高濃度でありながら低粘度のポリアミック酸溶液を安定して製造することができる。
ポリアミック酸溶液はポリイミド前駆体溶液として種々の用途で用いられている。ポリアミック酸溶液は、通常ジアミンとテトラカルボン酸二無水物との略等モルを溶媒中低温でイミド化反応を抑制しながら反応させることによって好適に調製できる。しかし、この方法ではポリアミック酸が容易に高分子量化して溶液が高粘度化するために、高濃度ポリアミック酸溶液を得ることは困難であった。
特許文献1には、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミンとを実質的に等モル量使用して、その酸無水物1モルに対して約0.5〜40モル倍の水を含有する有機極性溶媒中で、100℃以下の反応温度で反応させ、その反応液が均一な溶液となった後、その反応溶液から遊離の水を除去して、その反応溶液中の遊離の水の含有率を、核磁気共鳴スペクトル法で測定して0.5重量%以下にすることを特徴とするポリアミック酸溶液組成物の調製方法が記載されている。しかしながら、この方法では、酸二無水物基とアミノ基との反応と酸無水物基と水との反応を競争的に行わせるために反応制御が難しく、得られるポリアミック酸の分子量調節を再現性よく且つ安定的に制御するのは容易ではなかった。しかも、低分子量化はポリアミック酸の対数粘度が0.43まで(実施例13)、高濃度化はポリマー濃度が26.0wt%まで(実施例9)、実施例で達成されたけれども、さらに高濃度化且つ低分子量化したポリアミック酸溶液の調製においては限界があった。加えて、この方法では、反応終了後にその反応液から水を除去する必要があり、煩雑な工程を必要とするものであった。
特開昭57−131248号公報
本発明の目的は、ポリアミック酸を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のポリアミック酸溶液を再現性よく、安定的に製造する新規な製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、対数粘度が0.4以下の低分子量に好適に制御された新規なポリアミック酸溶液を提供することである。
本発明は以下の事項に関する。
1. ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液を製造する方法であって、
ジアミンと前記ジアミンに対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを、前記テトラカルボン酸二無水物に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してポリアミック酸溶液を調製する前工程と、次いで、前記ポリアミック酸溶液へジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが実質的に等モル量になるようにジアミン、又はジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を加えて更に反応する後工程とを含むことを特徴とするポリアミック酸溶液を製造する方法。
2. 前工程において、テトラカルボン酸二無水物がジアミンに対してモル比(テトラカルボン酸二無水物/ジアミン)で1.2以上であることを特徴とする上記1に記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
3. 前工程において、0.05〜2重量%の水を含有する溶媒を用いることを特徴とする上記1〜2のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
4. 後工程において、ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下であるポリアミック酸溶液を調製することを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
5. 溶液中に1重量%以下の水を含有するポリアミック酸溶液を得ることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
6. 固形分濃度が25〜50重量%であって且つ30℃における溶液粘度が50Pa・sec以下であるポリアミック酸溶液を得ることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
7. 前工程において反応させるテトラカルボン酸二無水物が、前工程及び後工程において反応させるテトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜70モル%であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
8. 実質的に等モルのジアミン成分とテトラカルボン酸成分とからなるポリアミック酸溶液であって、
ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下であり、さらにアミック酸結合を形成していないテトラカルボン酸二無水物由来の酸無水物基が加水分解されて2つのカルボキシル基になっているポリアミック酸溶液。
9. 溶液中に1重量%以下の水を含有することを特徴とする上記8に記載のポリアミック酸溶液。
10. 固形分濃度が25〜50重量%であって且つ30℃における溶液粘度が50Pa・sec以下であることを特徴とする上記8〜9のいずれかに記載のポリアミック酸溶液。
本発明の新規な製造方法によって、ポリアミック酸を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のポリアミック酸溶液を再現性よく、安定的に製造することができる。さらに、本発明によって、ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下に制御された新規なポリアミック酸溶液を得ることができる。
本発明のポリアミック酸溶液を製造する方法は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液を製造する方法であって、前工程でジアミンと前記ジアミンに対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを、前記テトラカルボン酸二無水物に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してポリアミック酸溶液を調製し、次いで、後工程で前記ポリアミック酸溶液へジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが実質的に等モル量になるようにジアミン、又はジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を加えて更に反応することを特徴としている。
なお、本発明の「ポリ」アミック酸は極めて低分子量であり、必ずしもポリマーを意味しない。アミック酸オリゴマー、1分子のジアミンに1分子又は2分子のテトラカルボン酸二無水物が反応した程度の低分子量アミック酸化合物、さらにテトラカルボン酸二無水物が加水分解したテトラカルボン酸などの原料成分からなる、アミック酸構造を持った成分を含むポリイミド前駆体を意味する。
本発明において、ジアミンは、ポリイミドに用いられるジアミンであれば制限なしに使用することができる。芳香族ポリイミドを形成する芳香族ジアミンが好適であり、例えば、m又はp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエンなどの一つのベンゼン環を有するジアミン、o−オルトトリジンスルホン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルなどのビフェニル構造からなる二つのベンゼン環を有するジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、5(6)−アミノ−1−(4−アミノメチル)−1,3,3−トリメチルインダンなどのベンゼン環が−O−、−S−、−CO−、−SO−、−SO−、−CH−などの基で結合した構造を有する二つのベンゼン環からなるジアミン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンなどの三つ以上のベンゼン環を有するジアミンを好適に挙げることができる。また、イソホロンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサンなどの脂環式ジアミンも好適に使用することができる。
本発明において、テトラカルボン酸二無水物は、ポリイミドに用いられるテトラカルボン酸二無水物であれば制限なしに使用することができる。芳香族ポリイミドを形成する芳香族テトラカルボン酸二無水物が好適であり、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物などを好適に挙げることができる。
溶媒はポリアミック酸を溶解し得るものであって、常圧での沸点が300℃以下の有機極性溶媒が好ましく、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタムなどの窒素原子を分子内に含有する溶媒、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ヘキサメチルスルホルアミドなどの硫黄原子を分子内に含有する溶媒、例えばクレゾール、フェノール、キシレノールなどフェノール類からなる溶媒、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、テトラグライムなどの酸素原子を分子内に含有する溶媒、その他、アセトン、ジメチルイミダゾリン、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ピリジン、テトラメチル尿素などを挙げることができる。
本発明のポリアミック酸溶液を製造する方法の前工程では、ジアミンと前記ジアミンに対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを、前記テトラカルボン酸二無水物に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してポリアミック酸溶液を調製する。ここでは主にジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル比に依存した分子量(低分子量)のポリアミック酸が形成される。そして、このポリアミック酸は概ね両末端にテトラカルボン酸二無水物成分が配置し、この末端に配置したテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基のうちでアミック酸結合の形成に関与しなかった無水物基は、溶媒中に存在する水によって加水分解されて2つのカルボキシル基になる。ここで、水の量が少な過ぎると、無水物基の多くがそのまま残り、後工程で追加されたジアミンと反応して高分子量のポリアミック酸を形成することになるので、低分子量のポリアミック酸を得るのが難しくなる。また、ポリアミック酸が高分子量化して溶液が高粘度化し、後工程で追加されたテトラカルボン酸二無水物成分の一部が溶解せず、均一なポリアミック酸溶液を得ることができないこともある。
前工程においては、0.05〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の水を含有する溶媒を用いるのが好適である。2重量%を越える水を含有する溶媒中では、酸二無水物基とアミノ基との反応と酸無水物基と水との反応がより競争的になるので、所定の低分子量のポリアミック酸を再現性よく調製することが難しくなる。しかも、得られたポリアミック酸溶液中に多量の水が存在すると溶液安定性が悪くなることがある。また、反応後に過剰の水を除去するのは、イミド化反応を抑制するために低温且つ減圧下に行う必要があり、工程が複雑になるので好ましくない。
この前工程では、ジアミンとジアミン量に対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを反応するが、テトラカルボン酸二無水物量のジアミン量に対するモル比(テトラカルボン酸二無水物モル量/ジアミンモル量)は、好ましくは1.2以上であり、より好ましくは1.5以上であり、通常は1.5〜5.0程度である。モル比が2以上の場合には、反応後のポリアミック酸溶液内にジアミンと反応しなかったテトラカルボン酸二無水物が溶媒中の水によって加水分解されて主としてテトラカルボン酸になって共存するが、均一に溶解しているのであれば特に問題はない。
また、この前工程でポリアミック酸溶液を調製するのに用いるテトラカルボン酸二無水物の全量を溶媒に加えて反応し、後工程ではテトラカルボン酸二無水物を加えないようにすることもできるが、通常、前工程で反応させるテトラカルボン酸二無水物の量は、前工程及び後工程において反応させるテトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜70モル%であることが好ましく、20〜50モル%であることがより好ましい。前工程で用いるテトラカルボン酸二無水物がこの範囲外になると、得られるアミック酸溶液の溶液安定性(粘度安定性)が悪くなることがある。
この前工程の反応条件は、イミド化を抑制し付加反応によってポリアミック酸を生成する反応条件であれば特に限定はない。常圧下で行うのが好適であるが、加圧又は減圧条件下でも構わない。温度条件は好ましくは100℃以下、より好ましくは20〜80℃の温度範囲であり、通常の前工程では、前記温度条件下で1〜100時間程度反応させる。また、反応は窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気中で好適に行うことができる。
この前工程で得られるポリアミック酸の対数粘度は好ましくは0.4以下、より好ましくは0.01〜0.4、特に0.01〜0.3、更に0.05〜0.2である。前工程で得られたポリアミック酸の対数粘度が0.4を越える時は、前工程のジアミンとテトラカルボン酸二無水物とのモル比が比較的等モルに近い場合であり、後工程でもジアミンとテトラカルボン酸二無水物とが等モルに近いモル比で反応するから、得られるポリアミック酸は当然高分子量化したものである。特に高濃度溶液で反応する場合には、前工程のポリアミック酸が高分子量化すると、得られた溶液が著しく高粘度化し、その結果、後工程で追加したジアミンやテトラカルボン酸二無水物の反応が妨げられ、ポリアミック酸溶液中に未反応で溶解せずに残留するなどの問題を生じることがある。
本発明のポリアミック酸溶液を製造する方法の後工程では、前記前工程で得られたポリアミック酸溶液へ、ジアミンの合計量とテトラカルボン酸二無水物の合計量とが実質的に等モル量になるように、好ましくはモル比(テトラカルボン酸二無水物/ジアミン)が1.05〜0.95程度になるように、ジアミン、又はジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を加えて更に反応する。この後工程は、前記前工程の反応条件と同様の反応条件下で好適に行うことができる。なお、後工程で加えるテトラカルボン酸二無水物は、その一部をテトラカルボン酸或いはテトラカルボン酸の低級アルコールエステルで置き換えることもできる。
この後工程の結果、対数粘度が0.4以下、好ましくは0.01〜0.4、より好ましくは0.05〜0.4、特に好ましくは0.05〜0.3のアミック酸からなるアミック酸溶液を再現性よく好適に得ることができる。このアミック酸溶液では、アミノ基と反応してアミック酸結合を形成していないテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基の実質的にすべて(90%以上、好ましくは95%以上)が加水分解されて2つのカルボキシル基になっている。また、極めて低分子量のアミック酸であるから溶液粘度の増大を抑制できるので、高濃度化が容易である。その結果、固形分濃度が25重量%以上、好ましくは25〜50重量%、より好ましくは27〜50重量%、特に30〜45重量%の高濃度ポリアミック酸溶液を好適に得ることができる。この高濃度ポリアミック酸溶液は、30℃における溶液粘度が50Pa・sec以下、好ましくは0.5〜50Pa・sec、より好ましくは1〜40Pa・secの低粘度溶液であるから、実用上極めて有用である。
さらに、このポリアミック酸溶液は、前工程において0.05〜2重量%、より好ましくは0.05〜1重量%の水を含有する溶媒を用いているが、この水はテトラカルボン酸二無水物の無水物基を加水分解するために消費され、残りが溶液中に残るが、もともと少量しか用いていないので、反応終了後特に水の量を調節(除去)しなくても構わない。水を除去しなくても、例えば水の含有量が1重量%以下であるポリアミック酸溶液を得ることができる。このアミック酸溶液中の水の量は前述のとおり十分少量であることに加えて、更に、アミノ基と反応してアミック酸結合を形成した無水物基以外のテトラカルボン酸二無水物由来の無水物基が実質的にほとんど全て加水分解されて2つのカルボキシル基になっているから、このポリアミック酸溶液中の各成分は少なくとも低温下の保存中に何らかの反応を起こす可能性が少なく、その結果、溶液安定性が極めて良好である。
本発明のポリアミック酸溶液は、高濃度でありながら低粘度のポリイミド前駆体溶液として極めて有用であるが、高濃度溶液にのみ限定されるものではない。ポリイミド前駆体として種々の用途に種々の濃度で好適に用いることが可能である。そして、溶媒除去を伴う加熱処理による熱重合イミド化法や、同様に溶媒除去を伴う無水酢酸などによる化学イミド化法などの既に公知の方法で重合・イミド化反応することによって容易にポリイミドにすることができる。
本発明のポリアミック酸溶液は、イミド化触媒、無機充填材、有機充填材、補強用繊維、カーボンブラック、消泡剤、染料及び顔料などのポリイミド前駆体組成物で通常用いられる他の成分を含有したポリアミック酸溶液組成物として好適に用いることができる。また、例えば、フィルム、特に膜厚が厚いフィルム或いは充填材を比較的多量に含有するフィルムの形成、銅箔と組合せたCCLの製造、及び接着剤組成物や保護膜用インク組成物の調製などに好適に用いることができる。
本発明のポリアミック酸溶液は、ポリイミドフィルム特にポリイミドシームレスベルトの製造に用いるのに好適な低粘度であって、且つ高濃度で、含まれる溶媒の量が少ない。本発明のポリアミック酸溶液を用いることにより、ポリイミドフィルム特に優れた物性のポリイミドシームレスベルトを生産性よく製造することができる。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の例で用いた測定方法について説明する。水の含有量については、前工程の反応については、用いた溶媒(NMP)に不純物として含まれる水の含有量は無視できるので、加えた水の量を基に算出した「水の含有率」で示した。一方、得られたポリアミック酸溶液の水の量は、ポリアミック酸溶液の水の量を以下の測定方法で測定した「含水率」で示した。
〔固形分濃度〕
試料溶液(その重量をw1とする)を、熱風乾燥機中120℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で30分間加熱処理して、加熱処理後の重量(その重量をw2とする)を測定する。固形分濃度[重量%]は、次式によって算出した。
固形分濃度=(w2/w1)×100
〔対数粘度〕
試料溶液を、固形分濃度に基づいて濃度が0.5g/dl(溶媒はNMP)になるように希釈した。この希釈液を、30℃にて、キャノンフェンスケNo.100を用いて流下時間(T)を測定した。対数粘度は、ブランクのNMPの流下時間(T)を用いて、次式から算出した。
対数粘度={ln(T/T)}/0.5
〔溶液粘度(回転粘度)〕
トキメック社製E型粘度計を用いて30℃で測定した。
〔含水率〕
シグマアルドリッチ社製カールフィッシャー試薬(ハイドラナールコンポジット5K)を用いて平沼産業社製水分測定装置(AQV−2000)によって測定した。
〔溶液安定性〕
試料を、5℃の温度に調整された雰囲気中に保管し、1ケ月後の試料溶液を目視によって観察し、濁りや相分離・析出の有無を確認した。濁りや相分離・析出があるものは×、変化がないものを○とした。
〔製膜性〕
ガラス基板上に、得られるポリイミド膜の厚みが50μmとなるように試料溶液を塗布し、熱風乾燥機中で120℃で30分間、150℃で10分間、200℃で10分間、250℃で10分間、次いで350℃で10分間加熱処理して、溶媒の除去及び重合イミド化反応を行わせてポリイミド膜を製造した。この時、目視によってフクレ、割れ、粉化等の不具合の有無を確認し、フクレ、割れ、粉化等の不具合がないものを○とし、不具合が生じるものを×とした。
以下の例で使用した化合物の略号について説明する。
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
a−BPDA:2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、
BPTA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、
DADE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、
PPD:p−フェニレンジアミン、
MPD:m−フェニレンジアミン、
2,4−TDA:2,4−ジアミノトルエン、
NMP:N−メチル−2−ピロリドン。
〔実施例1〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3399.27g、水11.89g、s−BPDA194.19g、及びDADE66.09g(水のモル比[水/酸成分]が1/1、水の含有率が0.35重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、窒素ガスを流しながら、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE600gを溶解させ、さらにs−BPDA582.55gとa−BPDA194.19gとを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.375、溶液粘度が37Pa・sec、固形分濃度が30.7重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例2〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3387.27g、水11.89g、s−BPDA388.37g、及びDADE132.17g(水のモル比[水/酸成分]が1/2、水の含有率が0.33重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE528.69gを溶解させ、さらにs−BPDA388.37gとa−BPDA194.19gとを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.288、溶液粘度が12Pa・sec、固形分濃度が30.1重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例3〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3387.27g、水23.79g、s−BPDA485.50g、及びDADE132.17g(水のモル比[水/酸成分]が2/5、水の含有率が0.63重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が5/2)を秤取り、50℃の反応温度で17時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE528.69gを溶解させ、さらにs−BPDA291.24gとa−BPDA194.19gとを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.171、溶液粘度が2Pa・sec、固形分濃度が30.7重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例4〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3411.06g、水17.84g、s−BPDA388.37g、及びDADE132.17g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、50℃の反応温度で17時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE528.69gを溶解させ、さらにs−BPDA388.37gとa−BPDA194.19gとを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.246、溶液粘度が6Pa・sec、固形分濃度が30.2重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例5〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3331.96g、水17.45g、s−BPDA196.35g、a−BPDA196.35g、及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で17時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE534.59gを溶解させ、さらにs−BPDA589.06gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.199、溶液粘度が3Pa・sec、固形分濃度が31.3重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例6〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3331.96g、水17.45g、s−BPDA196.35g、a−BPDA196.35g、及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、50℃の反応温度で17時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE534.59gを溶解させ、さらにs−BPDA589.06gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.229、溶液粘度が6Pa・sec、固形分濃度が31.1重量%、含水率が0.22重量%の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例7〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3331.96g、水17.45g、s−BPDA196.35g、a−BPDA196.35g、及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.49重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE534.59gを溶解させ、さらにs−BPDA589.06gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.263、溶液粘度が10Pa・sec、固形分濃度が30.9重量%、含水率が0.31重量%の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例8〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3330.11g、水19.53g、s−BPDA216.52g、a−BPDA216.53g、及びDADE147.37g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE221.05g及びPPD198.99gを溶解させ、さらにs−BPDA649.55gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.273、溶液粘度が17Pa・sec、固形分濃度が30.4重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例9〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3289.87g、水60.13g、s−BPDA294.53g、a−BPDA196.35g、及びDADE100.24g(水のモル比[水/酸成分]が1/1、水の含有率が1.62重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が10/3)を秤取り、50℃の反応温度で4時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE568.00gを溶解させ、さらにs−BPDA490.88gを添加して、反応温度50℃で1時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.154、溶液粘度が2Pa・sec、固形分濃度が30.6重量%、含水率が0.79重量%の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例10〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3289.87g、水60.13g、s−BPDA294.53g、a−BPDA196.35g、及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が1/1、水の含有率が1.61重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が10/4)を秤取り、50℃の反応温度で4時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE534.59gを溶解させ、さらにs−BPDA490.88gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.169、溶液粘度が2Pa・sec、固形分濃度が30.2重量%、含水率が0.87重量%の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例11〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3289.87g、水18.04g、s−BPDA196.35g、a−BPDA196.35g、及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.50重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、50℃の反応温度で17時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE534.59gを溶解させ、さらにs−BPDA589.06gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.245、溶液粘度が6Pa・sec、固形分濃度が30.8重量%、含水率が0.44重量%の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例12〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3225.75g、水36.04g、s−BPDA588.44g、及びDADE120.16g(水のモル比[水/酸成分]が1/1、水の含有率が1.01重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が10/3)を秤取り、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE680.88gを溶解させ、さらにs−BPDA353.06g及びa−BPDA235.38gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.154、溶液粘度が8Pa・sec、固形分濃度が36.0重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例13〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水3.61g、s−BPDA78.54g、及びDADE26.73g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE106.92gを溶解させ、さらにs−BPDA117.81gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.240、溶液粘度が9Pa・sec、固形分濃度が31.0重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例14〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水3.92g、s−BPDA85.27g、及びDADE29.02g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.58重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE43.53g及び2,4−TDA44.27gを溶解させ、さらにs−BPDA127.91gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.260、溶液粘度が8Pa・sec、固形分濃度が31.0重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例15〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水4.28g、s−BPDA93.27g、及び2,4−TDA19.37g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.63重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へ2,4−TDA77.47gを溶解させ、さらにs−BPDA139.01gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.150、溶液粘度が5Pa・sec、固形分濃度が31.5重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例16〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水3.74g、s−BPDA81.58g、及びDADE22.21g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.56重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE88.84g及びMPD15.00gを溶解させ、さらにs−BPDA122.37gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.230、溶液粘度が8Pa・sec、固形分濃度が30.5重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔実施例17〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水3.98g、s−BPDA86.61g、及びDADE14.74g(水のモル比[水/酸成分]が3/4、水の含有率が0.60重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2/1)を秤取り、70℃の反応温度で3時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE58.95g及びMPD39.80gを溶解させ、さらにs−BPDA129.91gを添加して、反応温度50℃で20時間撹拌しながら反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.220、溶液粘度が9Pa・sec、固形分濃度が30.8重量%、含水率が1重量%以下の溶液であった。この溶液の溶液安定性は○であり、製膜性も○であった。
〔比較例1〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた1LのセパラブルフラスコにNMP670.00g、水12.03g、s−BPDA157.08g、a−BPDA39.27g及びDADE133.65g(水のモル比[水/酸成分]が5/4、水の含有率が1.19重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が1)を秤取り、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が1.018、溶液粘度が1000Pa・sec以上、固形分濃度が30.4重量%の溶液であった。この溶液は、製膜性の試験において、溶液粘度が高いためにキャストが困難であり、均一な塗布膜を得ることができなかった。
〔比較例2〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP3399.27g、水11.89g、s−BPDA582.56g、及びDADE198.26g(水のモル比[水/酸成分]が1/3、水の含有率が0.31重量%、酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が2)を秤取り、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。次いで、この反応溶液へDADE462.60gを溶解させ、さらにs−BPDA194.18gとa−BPDA194.19gとを添加して、反応温度50℃で25時間撹拌しながら反応させたが、添加したテトラカルボン酸二無水物成分が溶解せず、ポリアミック酸溶液を得ることができなかった。
〔比較例3〕
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却器、窒素ガス導入管を備えた5LのセパラブルフラスコにNMP1343.75g、s−BPDA280.45g、a−BPDA76.50g及びDADE260.34g(酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]が0.93)を秤取り、50℃の反応温度で15時間撹拌して反応させた。
得られた反応溶液は、対数粘度が0.44、溶液粘度が51.3Pa・secと高粘度化していた。この反応溶液に、BPTA31.75gを加えて、合計の酸成分のモル比[酸成分/ジアミン成分]を1にしようとしたが、BPTAが溶解せず均一なポリアミック酸溶液を得ることができなかった。
本発明によって、ポリアミック酸を所定の低分子量に制御して、高濃度且つ低粘度のポリアミック酸溶液を再現性よく安定的に製造する新規な製造方法を得ることができる。さらに、本発明によって、ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下に制御された新規なポリアミック酸溶液を得ることができる。このポリアミック酸溶液は、例えば、フィルム、特に膜厚が厚いフィルム或いは充填材を比較的多量に含有するフィルムの形成、銅箔と組合せたCCLの製造、及び接着剤組成物や保護膜用インク組成物の調製などに好適に用いることができる。

Claims (10)

  1. ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを溶媒中で反応させてポリアミック酸溶液を製造する方法であって、
    ジアミンと前記ジアミンに対して過剰モル量のテトラカルボン酸二無水物とを、前記テトラカルボン酸二無水物に対して1/3モル倍を越える量の水を含有する溶媒中で反応してポリアミック酸溶液を調製する前工程と、次いで、前記ポリアミック酸溶液へジアミン成分とテトラカルボン酸成分とが実質的に等モル量になるようにジアミン、又はジアミン及びテトラカルボン酸二無水物を加えて更に反応する後工程とを含むことを特徴とするポリアミック酸溶液を製造する方法。
  2. 前工程において、テトラカルボン酸二無水物がジアミンに対してモル比(テトラカルボン酸二無水物/ジアミン)で1.2以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  3. 前工程において、0.05〜2重量%の水を含有する溶媒を用いることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  4. 後工程において、ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下であるポリアミック酸溶液を調製することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  5. 溶液中に1重量%以下の水を含有するポリアミック酸溶液を得ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  6. 固形分濃度が25〜50重量%であって且つ30℃における溶液粘度が50Pa・sec以下であるポリアミック酸溶液を得ることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  7. 前工程において反応させるテトラカルボン酸二無水物が、前工程及び後工程において反応させるテトラカルボン酸二無水物の全量に対して10〜70モル%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミック酸溶液を製造する方法。
  8. 実質的に等モルのジアミン成分とテトラカルボン酸成分とからなるポリアミック酸溶液であって、
    ポリアミック酸の対数粘度が0.4以下であり、さらにアミック酸結合を形成していないテトラカルボン酸二無水物由来の酸無水物基が加水分解されて2つのカルボキシル基になっているポリアミック酸溶液。
  9. 溶液中に1重量%以下の水を含有することを特徴とする請求項8に記載のポリアミック酸溶液。
  10. 固形分濃度が25〜50重量%であって且つ30℃における溶液粘度が50Pa・sec以下であることを特徴とする請求項8〜9のいずれかに記載のポリアミック酸溶液。
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