JP2008133499A - 高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼 - Google Patents

高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼 Download PDF

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茂紀 植田
Shuji Narita
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Abstract

【課題】高硬度を有し、耐食性に優れ、しかも、耐焼割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼を提供すること。
【解決手段】0.15≦C≦0.50mass%、0.20<Si≦1.0mass%、0.05≦Mn≦2.0mass%、P≦0.03mass%、S≦0.01mass%、0.05≦Cu≦3.0mass%、0.05≦Ni≦3.0mass%、13.0≦Cr≦20.0mass%、0.10≦Mo≦5.0mass%、Al≦0.02mass%、Ti≦0.02mass%、0.20≦N≦0.80mass%、0.001≦B≦0.01mass%、O≦0.01mass%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、残留オーステナイト量が3%以上30%以下である高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼は、
【選択図】なし

Description

本発明は、高硬度マルテンサイト系ステンレスに関し、さらに詳しくは、SUS420J2と同等以上の硬さを有し、SUS304と同等以上の耐食性を有し、SUS440Cと同等の衝撃特性を有し、かつ、耐焼き割れ性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼に関する。
マルテンサイト系ステンレス鋼とは、オーステナイト領域から焼き入れしてマルテンサイト組織とし、適当な温度で焼き戻して使用するCr系鋼をいう。マルテンサイト系ステンレス鋼は、一般に、硬さが高く、耐食性及び耐摩耗性に優れているので、シリンダーライナー、シャフト、軸受、歯車、ピン、ボルト、ねじ、ばね、ロール、タービンブレード、金型、ダイス、バルブ、弁座、刃物、ノズルなどに使用されている。従来、この種の用途には、マルテンサイト系ステンレス鋼の一種であるSUS420J2、SUS440Cなどの鋼種が一般に用いられている。
しかしながら、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼は、Cを含有させることにより硬さを確保しているため、SUS304、SUS316に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼に比較して耐食性に劣る。そのため、水滴や水溶液が付着する環境下(例えば、屋外)では使用できないという問題があった。また、SUS440Cは、ステンレス鋼の中では最も高い硬さが得られるが、巨大な炭化物が生成しているために、極端に冷間加工性が劣るという問題があった。
一方、オーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性に優れているが、一般にマルテンサイト系ステンレス鋼より冷間加工性が悪い。しかも、強加工を加えてもHRC40程度までしか硬さが上がらず、マルテンサイト系ステンレス鋼と同等の硬さは得られない。
そこでこの問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、重量%で、C:0.15%未満、Si:0.10〜1.0%、Mn:0.10〜2.0%、Cr:12.0〜18.5%、N:0.40〜0.80%、Al:0.030%未満、及び、O:0.020%未満を含有し、残部が実質的にFeからなる組成を有する耐食性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼が開示されている。同文献には、C含有量をより少なくし、加圧溶解によりN含有量をより多くすると、耐食性がより優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼が得られる点、及び、窒素を多量に含ませると、550℃付近まで焼入れままの硬さと同等以上の硬さが得られる点が記載されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.15%未満、Si:0.05%以上0.20%未満、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cu:0.05%以上3.0%以下、Ni:0.05%以上3.0%以下、Cr:13.0%以上20.0%以下、Mo:0.2%以上4.0%以下、V:0.01%以上1.0%以下、Al:0.030%以下、Ti:0.020%未満、O:0.020%以下、N:0.40%以上0.80%以下、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼が開示されている。同文献には、C量を低減させる一方でN量を増加させ、さらにSi、Al、Ti量をより低減させ、またVを添加することによって、焼戻し硬さの確保、耐食性及び冷間加工性の向上、靱性の確保が可能になる点が記載されている。
さらに、特許文献3には、質量%で、C:0.15%以上0.50%以下、Si:0.05%以上0.20%未満、Mn:0.05%以上2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.03%以下、Cu:0.05%以上3.0%以下、Ni:0.05%以上3.0%以下、Cr:13.0%以上20.0%以下、Mo:0.2%以上4.0%以下、V:0.01%以上1.0%以下、Al:0.030%以下、Ti:0.020%未満、O:0.020%以下、N:0.40%以上0.80%以下、を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなるマルテンサイト系ステンレス鋼が開示されている。同文献には、Si、Al、Ti量をより低減させ、またVを添加することによって、焼戻し硬さの確保、耐食性及び冷間加工性の向上、靱性の確保が可能になる点が記載されている。
特開2002−256397号公報 特開2005−248263号公報 特開2005−344184号公報
特許文献1〜3に記載されるように、マルテンサイト系ステンレス鋼中のN含有量を増加させると、55HRC以上の高硬度と、SUS304と同等以上の耐食性を確保することができる。しかしながら、これらの材料は、焼入れ後又はそれに続くサブゼロ処理後に焼割れが生ずることがあった。大きな焼割れが生じると、部品としての機能を果たさないという問題がある。また、小さな焼割れであっても、部品として使用するためには割れ部を除去する必要があるので、材料歩留まりが低くなるという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、高硬度を有し、耐食性に優れ、しかも、耐焼割れ性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係る高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼は、
0.15≦C≦0.50mass%、
0.20<Si≦1.0mass%、
0.05≦Mn≦2.0mass%、
P≦0.03mass%、
S≦0.01mass%、
0.05≦Cu≦3.0mass%、
0.05≦Ni≦3.0mass%、
13.0≦Cr≦20.0mass%、
0.10≦Mo≦5.0mass%、
Al≦0.02mass%、
Ti≦0.02mass%、
0.20≦N≦0.80mass%、
0.001≦B≦0.01mass%、
O≦0.01mass%、
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
残留オーステナイト量が3%以上30%以下であるものからなる。
N含有量の多いマルテンサイト系ステンレス鋼に対し、適量のBを添加すると、マルテンサイト変態時の焼割れを抑制することができる。また、適量のSiを添加すると同時に、窒化物を生成しやすいAl及びTi量を一定値以下にすると、酸化物・窒化物系介在物に起因する焼割れを抑制することができる。さらに、残留オーステナイト量が一定量となるように焼入れ条件を最適化すると、高硬度及び高耐食性を両立させ、かつ、焼割れも抑制することができる。
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
本発明に係る高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼は、以下のような元素を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる。成分元素の種類、その成分範囲、及び、その限定理由は、以下の通りである。
(1) 0.15≦C≦0.50mass%。
Cは、侵入型元素であって強度の向上に寄与し、焼入れ焼戻し時に後述のCr、Mo、W、V、Nb、Taと結合して焼戻し硬さを向上させる。そのためには、C含有量は、0.15mass%以上が好ましい。C含有量は、さらに好ましくは、0.20mass%以上である。
一方、C含有量が過剰になると、Nの固溶量を低下させると共に、Cr炭化物の形成により母相の固溶Crを低下させ、耐食性を低下させる。また、粗大な一次炭化物の生成により、焼鈍後の冷間加工性や靱性を低下させるだけでなく、焼入れサブゼロ処理時に過剰な残留オーステナイトを生成させ、硬さの低下を招く。従って、C含有量は、0.50mass%以下が好ましい。
(2) 0.20<Si≦1.0mass%。
焼割れを回避するためには、酸化物・窒化物系介在物の生成を抑制する必要がある。しかしながら、脱酸元素であるAlは、優先的にAlNを生成し、Nを添加する効果が減少してしまうため、添加量を抑える必要がある。そこで、本発明では、脱酸元素としてSiを積極的に使用する。脱酸効果を得るためには、Si含有量は、0.2mass%超が必要である。Si含有量は、さらに好ましくは、0.3mass%以上である。
一方、Si含有量が過剰になると、鍛造時に有害となるだけでなく、靱延性を著しく低下させる。従って、Si含有量は、1.0mass%以下が好ましい。Si含有量は、さらに好ましくは、0.9mass%以下である。
(3) 0.05≦Mn≦2.0mass%。
Mnは、N固溶量を増加させるのに有効な元素である。また、脱酸、脱硫元素としても有効である。このような効果を得るためには、Mn含有量は、0.05mass%以上が必要である。Mn含有量は、さらに好ましくは、0.08mass%以上である。
一方、Mn含有量が過剰になると、残留オーステナイト量を過剰に増大させ、硬さの低下を招くだけでなく、耐食性の劣化を招く。従って、Mn含有量は、2.0mass%以下が好ましい。Mn含有量は、さらに好ましくは、0.9mass%以下である。
(4) P≦0.03mass%。
Pは、焼割れを助長するだけでなく、熱間加工性、靱延性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましい。但し、必要以上の低減は、コストの上昇を招く。従って、P含有量は、0.03mass%以下が好ましい。
(5) S≦0.01mass%。
Sは、硫化物系介在物を生成し、焼割れを助長するだけでなく、熱間加工性、靱延性、耐食性を低下させるため、できるだけ低減することが望ましい。但し、必要以上の低減は、コストの上昇を招く。従って、S含有量は、0.01mass%以下が好ましい。
(6) 0.05≦Cu≦3.0mass%。
Cuは、オーステナイト生成元素であるため、窒素ブローの抑制に有効である。また、焼入れ・サブゼロ処理時の残留オーステナイト量を増加させ、焼割れを抑制する効果がある。さらに、耐食性向上の効果もある。これらの効果を得るためには、Cu含有量は、0.05mass%以上が必要である。
一方、Cu含有量が過剰になると、残留オーステナイト量が過剰になるため、焼戻し硬さの低下を招くだけでなく、熱間加工性を低下させる。従って、Cu含有量は、3.0mass%以下が好ましい。
(7) 0.05≦Ni≦3.0mass%。
Niは、オーステナイト生成元素であるため、窒素ブローの抑制に有効である。また、焼入れ・サブゼロ処理時の残留オーステナイト量を増加させ、焼割れを抑制する効果がある。さらに、耐食性向上及び靱性向上の効果もある。これらの効果を得るためには、Ni含有量は、0.05mass%以上が必要である。
一方、Ni含有量が過剰になると、残留オーステナイト量を過剰にし、焼戻し硬さの低下を招く。従って、Ni含有量は、3.0mass%以下が好ましい。
(8) 13.0≦Cr≦20.0mass%。
Crは、N溶解度を増加させ、強度及び耐食性を向上させるのに有効な元素である。また、焼戻し時にC、Nと結合して硬さの向上にも寄与する。このような効果を得るためには、Cr含有量は、13.0mass%以上が必要である。
一方、Cr含有量が過剰になると、残留オーステナイト量を過剰にし、焼戻し硬さの低下を招く。従って、Cr含有量は、20.0mass%以下が好ましい。Cr含有量は、さらに好ましくは、18.0mass%以下である。
(9) 0.10≦Mo≦5.0mass%。
Moは、N溶解度を増加させ、耐食性を向上させると共に、固溶強化元素として強度を向上させる。また、焼戻し時にC、Nと結合して硬さの向上にも寄与する。このような効果を得るためには、Mo含有量は、0.10mass%以上が必要である。Mo含有量は、さらに好ましくは、0.40mass%以上である。
一方、Mo含有量が過剰になると、窒素ブローの抑制に有効なオーステナイト相の確保が困難になる。また、焼入れ処理時の未固溶Cr窒化物を増大させ、靱延性の低下を招く。従って、Mo含有量は、5.0mass%以下が好ましい。Mo含有量は、さらに好ましくは、4.0mass%以下、さらに好ましくは、3.0mass%以下である。
(10) Al≦0.02mass%。
Alは、脱酸元素であるが、AlNを生成し、Nを添加する効果を減少させる。また、AlNは、焼割れを助長するため、低減すべき元素である。但し、微量であれば焼入れ時の結晶粒粗大化を防止し、靱性の向上に寄与する。従って、Al含有量は、0.02mass%以下までは許容することができる。
(11) Ti≦0.02mass%。
Tiは、Alと同様に脱酸元素であるが、TiNを生成し、Nを添加する効果を減少させる。また、TiNは、焼割れを助長するため、低減すべき元素である。但し、微量であれば焼入れ時の結晶粒粗大化を防止し、靱性の向上に寄与する。従って、Ti含有量は、0.02mass%以下までは許容することができる。
(12) 0.20≦N≦0.80mass%。
Nは、侵入型元素であり、マルテンサイト系ステンレス鋼の硬さ、耐食性を著しく向上させる。また、焼戻し時に微細なCr窒化物を形成してさらに硬さを向上させる効果を有するので、本発明において最も重要な元素の一つである。このような効果を得るためには、N含有量は、0.20mass%以上が必要である。N含有量は、さらに好ましくは、0.30mass%以上である。
一方、N含有量が過剰になると、窒素ブローの生成を誘発するとともに、焼入れ処理時に未固溶Cr窒化物を残存させ、耐食性、靱延性の著しい低下を招く。従って、N含有量は、0.80mass%以下が好ましい。N含有量は、さらに好ましくは、0.70mass%以下である。
(13) 0.001≦B≦0.01mass%。
Bは、焼割れ及びサブゼロ処理時の焼割れ回避に重要な元素である。また、靱性及び熱間加工性を向上させるために有効である。このような効果を得るためには、B含有量は、0.001mass%以上が好ましい。
一方、B含有量が過剰になると、BNを生成し、N添加の効果を減少させる。また、B含有量が過剰になると、熱間加工性が害されるおそれがある。従って、B含有量は、0.01mass%以下が好ましい。
(14) O≦0.01mass%。
Oは、鋼の清浄度を低下させ、耐食性及び耐焼割れ性を著しく劣化させる。従って、O含有量は、0.01mass%以下が好ましい。
本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼は、成分元素が上述の範囲にあることに加えて、残留オーステナイト量が3%以上30%以下であることを特徴とする。
残留オーステナイト量が少なすぎると、焼入れ時又はサブゼロ処理時に焼割れが生ずるので好ましくない。従って、残留オーステナイト量は、3%以上が好ましい。
一方、残留オーステナイト量が過剰になると、硬さの低下を招く。従って、残留オーステナイト量は、30%以下が好ましい。
なお、「残留オーステナイト量」とは、焼入れ、サブゼロ処理時の未変態オーステナイトの量を指し、X線回折法により測定した値をいう。
本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼は、上述の元素に加えて、以下のような1種又は2種以上の元素(第2成分元素)をさらに含んでいても良い。
(15) 0.01≦V≦1.0mass%。
Vは、C、Nと結合し、硬さの向上に寄与するとともに、焼入れ時の結晶粒粗大化を防止し、靱性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、V含有量は、0.01mass%以上が必要である。
一方、V含有量が過剰になると、鋼中に多量の酸化物、窒化物を残存させ、靱性を低下させる。従って、V含有量は、1.0mass%以下が好ましい。
(16) 0.01≦Nb≦1.0mass%。
Nbは、Vと同様にC、Nと結合し、焼入れ時の結晶粒粗大化を防止し、靱性の向上に寄与する。このような効果を得るためには、Nb含有量は、0.01mass%以上が好ましい。
一方、Nb含有量が過剰になると、比較的粗大な炭化物又は窒化物を析出させ、焼割れを助長するため、Vほど望ましい元素ではない。但し、1.0mass%以下までの添加は、耐焼割れ性を阻害することなく、靱性向上に有効であるため、添加しても良い。
本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼は、上述の第2成分元素に加えて、又は、これらに代えて、以下のような1種又は2種以上の元素(第3成分元素)をさらに含んでいても良い。
(17) 0.10≦Co≦5.0mass%。
Coは、オーステナイト生成元素であるため、窒素ブローの抑制に有効であり、耐食性も向上する。また、固溶強化元素としてマトリックスを強化する効果がある。このような効果を得るためには、Co含有量は、0.10mass%以上が必要である。
一方、Co含有量が過剰になると、コストの上昇を招くと共に、焼入れ処理時の未固溶Cr窒化物を増大させ、耐食性、靱延性を低下させる。従って、Co含有量は、5.0mass%以下が好ましい。
(18) 0.10≦W≦5.0mass%。
Wは、固溶強化元素としてマトリックスを強化する効果がある。また、Wは、耐食性を向上させる効果もある。このような効果を得るためには、W含有量は、0.1mass%以上が必要である。
一方、W含有量が過剰になると、コストの上昇を招くと共に、M6C型の粗大な炭化物を生成させ、焼割れを助長する。従って、W含有量は、5.0mass%以下が好ましい。
本発明に係るマルテンサイト系ステンレス鋼は、溶解鋳造、及び、必要に応じて加工を施した後、焼入れ及びサブゼロ処理をすることにより得られる。残留オーステナイト量は、焼入れ温度及びサブゼロ処理温度を最適化することにより、制御することができる。但し、サブゼロ処理温度の制御は、事実上、困難な場合が多いので、残留オーステナイト量は、焼入れ温度で制御するのが好ましい。
一般に、焼入れ温度が低すぎると、オーステナイト単相状態が得られない。また、マトリックス中に固溶する元素量が相対的に少なくなるので、Ms点が上昇し、残留オーステナイト量が過小となる。従って、焼入れ温度は、1000℃以上が好ましい。
一方、焼入れ温度が高くなりすぎると、マトリックス中に固溶する元素量が相対的に過剰となり、Ms点が過度に低くなる。そのため、残留オーステナイト量が過剰となり、十分な硬さが得られない。従って、焼入れ温度は、1150℃以下が好ましい。
サブゼロ処理は、通常、−78〜−196℃で行われる。
このような条件下で焼入れ及びサブゼロ処理を行うと、硬度が55HRC以上、58HRC以上、あるいは、60HRC以上である高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼が得られる。
次に、本発明に係る高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼の作用について説明する。
マルテンサイト系ステンレス鋼中のN含有量を増加させると、55HRC以上の高硬度と、SUS304と同等以上の耐食性を確保することができる。しかしながら、N含有量を増加させると、焼入れ後又はそれに続くサブゼロ処理後に焼割れが生ずることがあった。
これに対し、N含有量の多いマルテンサイト系ステンレス鋼に対して適量のBを添加すると、マルテンサイト変態時の焼割れを抑制することができる。また、適量のSiを添加すると同時に、窒化物を生成しやすいAl及びTi量を一定値以下にすると、酸化物・窒化物系介在物に起因する焼割れを抑制することができる。さらに、残留オーステナイト量が一定量となるように焼入れ条件を最適化すると、高硬度及び高耐食性を両立させ、かつ、焼割れも抑制することができる。
(実施例1〜14、比較例1〜6)
[1. 試料の作製]
加圧可能な高周波誘導炉により表1に示す化学成分(残部はFe)の合金を溶解し、50kgのインゴットを得た。均質化熱処理後、熱間鍛造でφ75の丸棒とした。さらに、Ac3点+50℃で4時間加熱した後、15℃/hの冷却速度で650℃まで冷却し、空冷する焼鈍処理を行った。その素材から、外形φ63、内径φ28.7のドーナツ状試験片を切り出し、950〜1200℃で30分保持/油焼入れと、−76℃でのサブゼロ処理を行った。
Figure 2008133499
[2. 試験方法]
試験片の割れの有無を浸透探傷試験により調べた。
また、サブゼロ処理後の残留オーステナイト量及び450℃で1時間の焼戻し後の硬さを測定した。なお、残留オーステナイト量は、X線回折法により測定した。
[3. 試験結果]
表2に、1100℃で30分保持/油焼入れした試料の割れの有無、残留オーステナイト量、及び、硬さの測定結果を示す。
比較例1〜4は、Si量及びB量が少ないために、いずれも焼割れが生じた。また、比較例5、6は、Si量が少なく、かつ、Al、Ti及びO量が多いために、いずれも焼割れが生じた。
これに対し、実施例1〜14は、いずれも焼割れは生じなかった。また、残留オーステナイト量は、18.1〜29.7%であり、硬さは、59.3〜60.8HRCであった。
Figure 2008133499
表3に、焼入れ温度を950℃、1000℃、1050℃、1150℃、又は、1200℃とした試料(実施例3、10)の焼割れの有無を示す。表3より、焼入れ温度が低くなるほど、焼割れが生じやすくなることがわかる。これは、焼入れ温度が低くなるほど、マトリックスに固溶する元素量が少なくなり、Ms点が上昇するためである。
Figure 2008133499
表4に、焼入れ温度を950℃、1000℃、1050℃、1150℃、又は、1200℃とした試料(実施例3、10)の450℃で1時間の焼戻し後の硬さ及び残留オーステナイト量を示す。表4より、焼入れ温度が高くなるほど残留オーステナイト量が多くなることが分かる。これは、焼入れ温度が高くなるほど、マトリックスに固溶する元素量が多くなり、Ms点が下がるためである。
また、表4より、焼入れ温度1000〜1150℃の間に硬さのピークがあることが分かる。これは、未固溶窒化物、マルテンサイト中の炭素・窒素量、残留オーステナイト量のバランスがとれているためである。
Figure 2008133499
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼は、シリンダーライナー、シャフト、軸受、歯車、ピン、ボルト、ねじ、ばね、ロール、タービンブレード、金型、ダイス、バルブ、弁座、刃物、ノズルなどに用いることができる。

Claims (4)

  1. 0.15≦C≦0.50mass%、
    0.20<Si≦1.0mass%、
    0.05≦Mn≦2.0mass%、
    P≦0.03mass%、
    S≦0.01mass%、
    0.05≦Cu≦3.0mass%、
    0.05≦Ni≦3.0mass%、
    13.0≦Cr≦20.0mass%、
    0.10≦Mo≦5.0mass%、
    Al≦0.02mass%、
    Ti≦0.02mass%、
    0.20≦N≦0.80mass%、
    0.001≦B≦0.01mass%、
    O≦0.01mass%、
    を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    残留オーステナイト量が3%以上30%以下である
    高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼。
  2. 0.01≦V≦1.0mass%、及び/又は、
    0.01≦Nb≦1.0mass%、
    をさらに含む請求項1に記載の高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼。
  3. 0.10≦Co≦5.0mass%、及び/又は、
    0.10≦W≦5.0mass%
    をさらに含む請求項1又は2に記載の高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼。
  4. 焼入れ温度1000〜1150℃からの焼入れ、及び、サブゼロ処理をすることにより得られる請求項1から3までのいずれかに記載の高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼。
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