JP2007063658A - マルテンサイト系ステンレス鋼 - Google Patents

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Abstract

【課題】 HRC55以上の焼戻し硬さを有しつつ、耐食性及び冷間加工性に優れ、且つ、焼入れ−サブゼロ処理時の割れが生じないマルテンサイト系ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】 本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.15%未満,Si:0.01%以上0.20%未満,Mn:0.01%以上2.0%以下,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cu:0.01%以上3.0%以下,Ni:0.01%以上3.0%以下,Cr:13.0%以上20.0以下,Mo:0.01%以上4.0%以下,V:0.01%以上1.0%以下,Al:0.030%以下,Ti:0.020%未満,O:0.020%以下,N:0.40%以上0.80%以下,B:0.0005%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、焼戻し硬さがHRC55以上であることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐食性に優れた高硬度マルテンサイト系ステンレス鋼に関する。
従来より、シリンダーライナー、シャフト、軸受、歯車、ピン、ボルト、ねじ、ロール、タービンブレード、金型、ダイス、バルブ、弁座、刃物、ノズルなど、ある程度の耐食性を有し、硬さ、耐磨耗性が要求される分野において、SUS420J2、SUS440C等のマルテンサイト系ステンレス鋼が一般的に用いられている。
特開2002−256397号公報
しかしながら、上記マルテンサイト系ステンレス鋼は、硬さを確保するためにCを多く含有させることから、SUS304やSUS316に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼と比較して、耐食性に劣り、屋外の水滴や水溶液などの付着するような環境下では使用できないという問題がある。そのため、めっきなどの表面処理を施すことによる対応がされているが、傷や剥離などにより腐食が進行する問題がある。
また、上記マルテンサイト系ステンレス鋼では、共晶炭化物が生成しているため、冷間加工性が著しく低いという問題もある。一方、SUS304やSUS316に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、耐食性に優れているものの、冷間加工により得られる硬さがHRC40程度であり、硬さの点でマルテンサイト系ステンレス鋼に遠く及ばない。
以前、本出願人は、上記特許文献1によって、SUS420J2以上の冷間加工性と焼戻し硬さ、SUS316以上の耐食性を有するマルテンサイト系ステンレス鋼の開示を行った。しかし、当該マルテンサイト系ステンレス鋼では、焼戻し硬さがHRC55以上となるような場合に生じ易い、焼入れ−サブゼロ処理時の割れに対する考慮がなされていなかった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、HRC55以上の焼戻し硬さを有しつつ、耐食性及び冷間加工性に優れ、且つ、焼入れ−サブゼロ処理時に割れが生じないマルテンサイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段・発明の効果
上記課題を解決するため、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、重量%で、C:0.15%未満,Si:0.01%以上0.20%未満,Mn:0.01%以上2.0%以下,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cu:0.01%以上3.0%以下,Ni:0.01%以上3.0%以下,Cr:13.0%以上20.0以下,Mo:0.01%以上4.0%以下,V:0.01%以上1.0%以下,Al:0.030%以下,Ti:0.020%未満,O:0.020%以下,N:0.40%以上0.80%以下,B:0.0005%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、焼戻し硬さがHRC55以上であることを特徴とする。
上記本発明では、マルテンサイト系ステンレス鋼において、C量を低減させる一方でN量を増加させ、それとともに、Si,Al,Ti量をより低減させ、またVを添加することによって、HRC55以上の焼戻し硬さの確保、耐食性及び冷間加工性の向上、靭性の確保を可能としている。また、Bの添加により、焼入れ−サブゼロ処理時の割れを防止している。以下、本発明における組成限定理由について説明する。
(1)C:0.15%未満
Cは、侵入型元素であって強度の向上に寄与するとともに、後述のCr,Mo,W,V,Nb,Taと結合して焼戻し硬さを向上させる。このような効果を得ようとする場合、0.01%以上の添加が好ましい。他方、過度の添加は、Nの固溶量を低下させるとともに、粗大な一次炭化物の生成によって、焼鈍処理後の冷間加工性、及び焼入れ‐焼戻し後の耐食性、靭性が劣化するばかりでなく、残留オーステナイト量が増大して、焼戻し硬さの低下を招いてしまう。したがって、0.15%未満の添加とする。好ましくは0.14%以下とする。
(2)Si:0.01%以上0.20%未満
Siは、脱酸元素であり、靭延性の著しい低下を招くAlNを生成するAlを抑制するために有効である。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.05%以上とする。他方、過度の添加は、靭延性を著しく低下させてしまうばかりか、熱間加工性に有害となるので、0.20%未満の添加とする。好ましくは0.18%以下とする。
(3)Mn:0.01%以上2.0%以下
Mnは、N固溶量を増加させるのに有効な元素である。また、脱酸、脱硫元素としても有効である。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.10%以上とする。他方、過度の添加は、残留オーステナイト量を増大させ、焼戻し硬さの低下を招くばかりでなく、耐食性の劣化を招いてしまうので、2.0%以下の添加とする。好ましくは1.0%以下とする。
(4)P:0.03%以下
Pは、熱間加工性、粒界強度、靭延性を低下させる元素であり、低減させることが好ましいので、0.03%以下の添加とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(5)S:0.03%以下
Sは、耐食性や、冷間加工時の靭延性を劣化させるとともに、熱間加工性も低下させる元素であり、低減させることが好ましいので、0.03%以下の添加とする。好ましくは0.02%以下とする。なお、必要以上の低減はコストの上昇を招く。
(6)Cu:0.01%以上3.0%以下
Cuは、冷間加工時の靭性を向上させるとともに、耐食性も向上させる元素である。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.08%以上とする。他方、過度の添加は、残留オーステナイト量を増大させ、焼戻し硬さの低下を招くばかりでなく、熱間加工性を低下させてしまうので、3.0%以下の添加とする。好ましくは1.0%以下とする。
(7)Ni:0.01%以上3.0%以下
Niは、強力なオーステナイト生成元素であるため、窒素ブローの抑制に有効である。また、耐食性、靭性の向上にも寄与する。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.08%以上とする。他方、過度の添加は、焼鈍時の硬さが上昇するため、冷間加工性の劣化を招いてしまう。また、焼入れ処理時の未固溶Cr炭窒化物が増大して、耐食性、靭延性を著しく低下させるばかりでなく、残留オーステナイト量が増大して、焼戻し硬さの低下を招いてしまう。したがって、3.0%以下の添加とする。好ましくは1.0%以下とする。
(8)Cr:13.0%以上20.0以下
Crは、N固溶量を増加させるため、強度向上に寄与するとともに、耐酸化性や耐食性を向上させるのに有効な元素である。また、焼戻し時にC,Nと結合して微細な炭窒化物を生成し、硬さの向上に寄与する。このような効果を得るには、13.0%以上の添加が必要である。好ましくは14.0%以上とする。他方、過度の添加は、残留オーステナイト量を増大させ、焼戻し硬さの低下を招いてしまうので、20.0%以下の添加とする。好ましくは19.0%以下とする。
(9)Mo:0.01%以上4.0%以下
Moは、N固溶量を増加させて、耐食性を向上させるとともに、固溶強化元素として強度を向上させる。また、焼戻し時にC,Nと結合して硬さの向上にも寄与する。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.2%以上、更に好ましくは0.4%以上とする。他方、過度の添加は、窒素ブローの抑制に有効なオーステナイト相の確保が困難になり、また、焼入れ処理時の未固溶Cr炭窒化物を増大させて靭延性の低下を招いてしまうので、4.0%以下の添加とする。好ましくは3.5%以下とする。
(10)V:0.01%以上1.0%以下
Vは、C,Nと結合して結晶粒の微細化に寄与するとともに、固溶元素として靭性の向上に寄与する。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が必要である。好ましくは0.02%以上とする。他方、過度の添加は、鋼中へ多量の炭化物、酸化物、窒化物を残存させ、靭性を劣化させてしまうため、1.0%以下の添加とする。好ましくは0.8%以下とする。
(11)Al:0.030%以下
Alは、Si,Mnと同様に脱酸元素として有効な元素である。このような効果を得ようとする場合、0.001%以上の添加が好ましい。しかしながら、本発明では、N固溶量の増大を目的としており、過度の添加は、AlNの生成によって靭延性の著しい低下を招いてしまうので望ましくない。したがって、良好な靭性を確保するため、0.030%以下の添加とする必要がある。好ましくは0.025%以下とする。
(12)Ti:0.020%未満
Tiは、鋼中へ多量の酸化物、窒化物を残存させ、耐食性、靭性を著しく劣化させてしまう。したがって、良好な靭性を確保するために、0.020%未満の添加とする必要がある。好ましくは0.018%以下とする。
(13)O:0.020%以下
Oは、鋼中へ多量の酸化物を残存させ、耐食性、靭性を著しく低下させるので、低減することが好ましい。したがって、0.020%以下の添加とする。好ましくは0.010%以下とする。
(14)N:0.40%以上0.80%以下
Nは、進入型元素であり、マルテンサイト系ステンレス鋼の硬さ、耐食性を著しく向上させるとともに、焼戻し時に微細なCr窒化物を形成してさらに硬さを向上させる効果を有するので、本発明において最も重要な元素の一つである。このような効果を得るには、0.40%以上の添加が必要である。好ましくは0.42%以上とする。他方、過度な添加は、窒素ブローの生成を誘発するともに、焼入れ処理時に未固溶Cr炭窒化物を残存させ、耐食性、靭延性の著しく低下を招くばかりでなく、残留オーステナイト量が増大して、焼入れ‐焼戻し後の硬さの低下を招いてしまうため、0.80%以下の添加とする。好ましくは0.70%以下とする。
(15)B:0.0005%以上0.0050%以下
Bは、粒界強化により、焼入れ−サブゼロ処理時に発生する粒界割れを抑制する効果を有する。靭性の向上にも寄与し、また熱間加工性を向上させるためにも有効である。これらの効果を得るには、0.0005%以上の添加が必要である。他方、過度の添加は、かえって熱間加工性を害するおそれがあるので、0.0050%以下の添加とする。
次に、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、鋼成分として更に、Co:0.01%以上4.0%以下,W:0.010%以上0.20%以下,Ta:0.010%以上0.20%以下,Nb:0.010%以上0.20%以下のいずれか1種または2種以上を含有させることができる。以下、組成限定理由について説明する。
(16)Co:0.01%以上4.0%以下
Coは、強力なオーステナイト生成元素であるため、窒素ブローの抑制に有効であり、耐食性を向上させる効果もある。また、Ms点を向上させ残留オーステナイト量を低減させるので、焼入れ時の硬さの確保に有効である。このような効果を得るには、0.01%以上の添加が好ましい。より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.07%以上とする。他方、過度の添加は、コストの上昇を招くとともに、焼入れ処理時の未固溶Cr窒化物を増大させ、耐食性、靭延性の低下を招くおそれがあるので、4.0%以下の添加が好ましい。更に好ましくは2.0%以下とする。
(17)W:0.010%以上0.20%以下
Wは、固溶強化元素として、或いは焼戻し時にC,Nと結合して、硬さの向上に寄与する。このような効果を得るには、0.010%以上の添加が好ましい。より好ましくは0.020%以上、更に好ましくは0.040%以上とする。他方、過度の添加は、靭延性を低下させるおそれがあるため、0.20%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.15%以下とする。
(18)Ta:0.010%以上0.20%以下
Taは、C,Nと結合して結晶粒の微細化に寄与する。このような効果を得るには、0.010%以上の添加が好ましい。より好ましくは0.020%以上、更に好ましくは0.040%以上とする。他方、過度の添加は、Tiと同様に、鋼中へ多量の炭化物、酸化物、窒化物を残存させ、靭性の劣化を招くおそれがあるため、0.20%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.15%以下とする。
(19)Nb:0.010%以上0.20%以下
Nbは、C,Nと結合して結晶粒の微細化に寄与する。このような効果を得るには、0.010%以上の添加が好ましい。更に好ましくは0.020%以上とする。他方、過度の添加は、Tiと同様に、鋼中へ多量の炭化物、酸化物、窒化物を残存させ、靭性の劣化を招くおそれがあるため、0.20%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.10%以下とする。
次に、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、鋼成分として更に、Mg:0.001%以上0.01%以下,Ca:0.001%以上0.01%以下,Zr:0.010%以上0.20%以下のいずれか1種または2種以上を含有させることができる。以下、組成限定理由について説明する。
(20)Mg:0.001%以上0.01%以下
Mgは、熱間加工性を向上させるために有効である。このような効果を得るには、0.001%以上の添加が好ましい。他方、過度の添加は、かえって熱間加工性を害するおそれがあるので、0.01%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.008%以下とする。
(21)Ca:0.001%以上0.01%以下
Caは、熱間加工性を向上させるために有効である。また、被削性を向上させる効果もある。このような効果を得るには、0.001%以上の添加が好ましい。他方、過度の添加は、かえって熱間加工性を害するおそれがあるので、0.01%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.008%以下とする。
(22)Zr:0.010%以上0.20%以下
Zrは、靭性の向上に寄与する。このような効果を得るには、0.010%以上の添加が好ましい。より好ましくは0.020%以上、更に好ましくは0.030%以上とする。他方、過度の添加は、かえって靭延性の劣化を招くおそれがあるので、0.20%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.15%以下とする。
次に、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、鋼成分として更に、Te:0.005%以上0.05%以下,Se:0.02%以上0.20%以下の1種または2種を含有させることができる。以下、組成限定理由について説明する。
(23)Te:0.005%以上0.05%以下
Teは、被削性の向上に寄与する。このような効果を得るには、0.005%以上の添加が好ましい。更に好ましくは0.01%以上とする。他方、過度の添加は、靭性、熱間加工性を劣化させるおそれがあるので、0.05%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.04%以下とする。
(24)Se:0.02%以上0.20%以下
Seは、被削性の向上に寄与する。このような効果を得るには、0.02%以上の添加が好ましい。更に好ましくは0.05%以上とする。他方、過度の添加は、靭性を劣化させるおそれがあるので、0.20%以下の添加が好ましい。更に好ましくは0.15%以下とする。
次に、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、C含有量をWC(重量%),N含有量をWN(重量%)として、WC/WNが0.30未満とすることが好ましい。更に好ましくは0.29以下である。侵入型元素であるCとNの含有量比(WC/WN)は、硬さ、耐食性に影響を与える。WC/WNが0.30以上であると、耐食性が劣化するとともに、必要な硬さが確保できなくなるおそれがある。
次に、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、C含有量をWC(重量%),N含有量をWN(重量%)として、WC+WNが0.45%以上0.80%以下とすることが好ましい。侵入型元素であるCとNは硬さに影響を与えることから、HRC55以上の焼戻し硬さを確保するためには、その合計含有量(WC+WN)が0.45%以上であることが好ましい。他方、過度の添加は、残留オーステナイト量が増大して、焼戻し硬さが低下してしまうため、合計含有量(WC+WN)が0.80%以下であることが好ましい。
本発明の効果を確認するため、以下の試験を行った。
表1の化学成分の合金を加圧可能な高周波誘導炉により溶解し、均質加熱後、熱間鍛造でφ24の丸棒とした。その後、Ac3点+50℃で4時間加熱後、15℃/hの冷却速度で650℃まで冷却後、空冷する焼鈍処理を行った。
この際、試験片を採取し、以下に記述する焼鈍し硬さと、圧縮試験による限界割れ圧縮率とを測定した。
(1)焼鈍し硬さの測定
焼鈍処理後の試料の硬さの測定は、JIS−Z2245に規定されているロックウェル硬さ試験によって、ロックウェルBスケール硬さを測定した。
(2)限界割れ圧縮率の測定
圧縮試験による限界割れ圧縮率を測定した。圧縮試験片は、直径15mm、高さ22.5mmの円柱状とし、600t油圧プレスにより圧縮加工した。評価方法は、各減面率で10個の圧縮試験を行い、割れが発生した個数が5個以下(50%以下)となる減面率を限界割れ圧縮率とした。
次に、1000〜1150℃で1時間保持後に油冷する焼入れ処理を行い、続いて液体窒素中でサブゼロ処理を行った後、400〜450℃で1時間保持後に空冷する焼戻し処理を行った。
この際、試験片を採取し、以下に記述する粒界割れの有無の確認,焼入れ焼戻し硬さの測定,塩水噴霧試験,孔食電位の測定を行った。
(3)粒界割れの有無の確認
粒界割れの有無の確認は、φ24の丸棒を10mmで切り出し、横断面を鏡面研磨した後、焼入れ−サブゼロ処理を行い、スケール除去を行った後、カラーチェックにて割れの有無を確認した。
(4)焼戻し硬さの測定
焼戻し処理後の試料の硬さの測定は、JIS−Z2245に規定されているロックウェル硬さ試験によって、ロックウェルCスケール硬さを測定した。
(5)塩水噴霧試験
JIS−Z2371に規定の方法により実施した。試験後、腐食面積率により以下の4段階にて評価した。A:腐食せず,B:腐食見られたが5%未満,C:5%以上20%以下,D:20%超とした。
(6)孔食電位の測定
JIS−G0577に規定の方法により、孔食電位V(mV)を測定した。
また、現用材の代表としてSUS440Cついても、比較例1として同様な試験を実施した。なお、SUS440C(比較例1)の製造工程については、高周波誘導炉により溶解し、均質加熱後、熱間鍛造でφ24の丸棒とした後、850℃で4時間加熱後、15℃/hの冷却速度で650℃まで冷却後、空冷する焼鈍処理を行った。次に、1050℃で1時間保持後に油冷する焼入れ処理を行い、続いて液体窒素中でサブゼロ処理を行った後、200℃で1時間保持後に空冷する焼戻し処理を行った。
また、SUS316についても、比較例16として同様な試験を実施した。なお、SUS316(比較例16)の製造工程については、高周波誘導炉により溶解し、均質加熱後、熱間鍛造でφ24の丸棒とした後、1050℃で1時間後水冷する溶体化処理を行った。この際、試験片を採取し、上述の塩水噴霧試験、孔食電位の測定を行った。
Figure 2007063658
以上の測定結果を表2に示す。
Figure 2007063658
表2によると、本発明に属する実施例の鋼はいずれも、HRC55以上の焼戻し硬さを有しつつ、耐食性及び冷間加工性に優れ、且つ、焼入れ−サブゼロ処理時の割れが生じていないことがわかる。すなわち、実施例の鋼は、HRC55以上の焼戻し硬さを確保しつつ、SUS440C(比較例1)よりも遥かに優れた冷間加工性を有し、オーステナイト系ステンレス鋼であるSUS316(比較例16)と同等以上の耐食性を確保している。また、実施例の鋼は、焼入れ−サブゼロ処理時に割れが生じていないのに対し、Bを含有していない比較例3,9,10,12,15の鋼は、焼入れ−サブゼロ処理時に割れが生じている。また、比較例14の鋼は、焼戻し硬さがHRC55未満であり、十分な硬さを有していない。
以上により、本発明のマルテンサイト系ステンレス鋼は、シリンダーライナー、シャフト、軸受、歯車、ピン、ボルト、ねじ、ロール、タービンブレード、金型、ダイス、バルブ、弁座、刃物、ノズルなど、硬さ、耐磨耗性、耐食性、冷間加工性、靭性が要求される部材に好適と言える。

Claims (6)

  1. 重量%で、C:0.15%未満,Si:0.01%以上0.20%未満,Mn:0.01%以上2.0%以下,P:0.03%以下,S:0.03%以下,Cu:0.01%以上3.0%以下,Ni:0.01%以上3.0%以下,Cr:13.0%以上20.0以下,Mo:0.01%以上4.0%以下,V:0.01%以上1.0%以下,Al:0.030%以下,Ti:0.020%未満,O:0.020%以下,N:0.40%以上0.80%以下,B:0.0005%以上0.0050%以下を含有し、残部がFe及び不可避不純物からなり、焼戻し硬さがHRC55以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼。
  2. 鋼成分として更に、Co:0.01%以上4.0%以下,W:0.010%以上0.20%以下,Ta:0.010%以上0.20%以下,Nb:0.010%以上0.20%以下のいずれか1種または2種以上を含有する請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼。
  3. 鋼成分として更に、Mg:0.001%以上0.01%以下,Ca:0.001%以上0.01%以下,Zr:0.010%以上0.20%以下のいずれか1種または2種以上を含有する請求項1または2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼。
  4. 鋼成分として更に、Te:0.005%以上0.05%以下,Se:0.02%以上0.20%以下の1種または2種を含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼。
  5. C含有量をWC(重量%),N含有量をWN(重量%)として、WC/WNが0.30未満である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼。
  6. C含有量をWC(重量%),N含有量をWN(重量%)として、WC+WNが0.45%以上0.80%以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼。
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