WO2021106086A1 - 鋼及び軸受 - Google Patents

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Abstract

本発明は、耐摩耗性及び耐表面起点剥離性に関して優れた軸受を得るのに適する鋼、及び当該鋼を用いた軸受を提供する。本発明に係る鋼は、質量%で、C:0.15~0.45%、Si:0~3.00%、Mn:0.20~1.50%、Mo:0.70~3.00%、V:0.40~1.00%、Al:0.005~0.100%、残部がFe及び不純物であり、上記不純物中、P:0.015%以下、S:0.005%以下、N:0.0300%以下、及びO:0.0015%以下にそれぞれ制限され、式(1)及び式(2)満たす化学組成を有することを特徴とする。 1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)、Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2) ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。

Description

鋼及び軸受
 本発明は、事後的に浸炭焼入れ及び焼戻しが施される鋼と、その鋼を用いて浸炭焼入れおよび焼戻しを経て製造された軸受に関する。
 軸受に代表される各種機械部品を製造するための鋼材としては、JIS G 4805:2008に規定され、SUJ3及びSUJ5に代表される軸受鋼や、JIS G 4053:2016に規定されているSNCM815に代表されるSNCM系の肌焼き鋼、が挙げられる。これらの鋼材を用いることで、機械部品は以下のように製造される。
 即ち、上記所定の鋼材に対して熱間加工(例えば、熱間鍛造)を施し、次いで切削加工を施すことにより、所定形状の中間品とする。次に、中間品に熱処理を施し、当該中間品の硬さ及びミクロ組織を、所定の状態に調整し、所望の機械部品を得る。なお、鋼材として軸受鋼を使用する場合は、上記の熱処理は焼入れ焼戻しであるのに対し、鋼材として肌焼き鋼を使用する場合は、上記の熱処理は浸炭処理(浸炭焼入れ及び焼戻し)である。
 機械部品の中でも、特に軸受に関する技術については、例えば、特開平8-49057号公報(特許文献1)、特開2008-280583号公報(特許文献2)、及び特開2008-25793号公報(特許文献3)に開示されている。
 特許文献1には、多量のVを含有する鋼材に対して浸炭処理又は浸炭窒化処理を施し、表層にV炭化物を析出させることで、優れた耐摩耗特性を有する転がり軸受が得られることが開示されている。
 しかしながら、特許文献1の鋼材には、Crが0.50%以上含有されているため、VやMoの添加量によっては、浸炭時にCrを主成分とする粗大なM等の炭化物が生成し、軸受部材の耐摩耗性が十分に得られないおそれがある。
 特許文献2には、軸受における水素脆化による剥離寿命の低下に着眼し、V系炭化物を微細分散させ、水素トラップサイトの効果を高めることにより、面疲労強度の高い軸受を得ることのできる、肌焼き鋼が開示されている。
 しかしながら、特許文献2の肌焼き鋼では、浸炭により炭化物が生成されるが、この炭化物は微細であって、かつ少量である。このため、耐摩耗性を向上させるために十分な炭化物の面積率を確保できていないことから、軸受の耐摩耗性や転動疲労特性については改良の余地がある。
 特許文献3には、粒径が10μm以下の微細な炭化物を7%以上15%以下の面積率で分散させることで、耐摩耗性や耐剥離性を向上させた転がり軸受を得ることのできる、軸受用鋼が開示されている。
 しかしながら、特許文献3の軸受用鋼は、高価なNiを0.5%以上含有するだけでなく、浸炭後に再加熱焼入れ焼戻しが必要であり、製造コストが嵩むおそれがある。
 特許文献4には、疲労強度、特に転動疲労寿命を改善することを課題として、表面部のC、N量を重量比で0.05≦C≦1.0%、かつ、0.8%<N≦-1.325C(%)+2.5%を満足するように含有される、マルテンサイトとオーステナイトを主体とする組織から構成される鋼部品が開示されている。
 特許文献5には、表面硬化処理後に行われる焼入れ開始温度Tを以下のように制限することによって、寸法精度の高い肌焼き機械部品を得ることを開示する。
 T≦T≦T
 T=788-117×[C]+29×[Si]-14×[Mn]
 T=900-387×[C]+63×[Si]-18×[Mn]
 しかし、特許文献4、5のいずれも、炭化物の面積率を確保する必要性を示唆していない。特許文献4に開示された鋼部品及び特許文献5に開示された肌焼用鋼は、耐摩耗性について改良の余地がある。
特開平8-49057号公報 特開2008-280583号公報 特開2008-25793号公報 特開平7-138696号公報 特開平9-137266号公報
 近年、衝撃が加わり、潤滑性に乏しく、かつ、面圧の高い、過酷な環境下で使用される軸受の長寿命化が望まれている。このため、上記の環境下で好適に使用すべく、耐摩耗性、及び耐表面起点剥離性に優れた軸受の開発が望まれている。従来、耐表面起点剥離性を高めるために、JIS G 4053:2016のSCM及びSNCMに代表される肌焼鋼や、Si、Mn、Mo、Vなどの合金元素を適正化した肌焼鋼に、浸炭処理、浸炭窒化処理を施し、残留オーステナイトを増加させる方法が採用されてきた。しかしながら、残留オーステナイトは軟質な組織であるため、残留オーステナイト量が増加すれば、耐摩耗性が低下する。このため、耐表面起点剥離性のみならず、耐摩耗性にも優れた軸受の開発が要請されるに至っている。
 本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであって、耐摩耗性、及び耐表面起点剥離性のいずれについても優れた軸受を得るのに適する鋼、及び当該鋼を用いた軸受を提供することを目的としている。
 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、本発明者らは、所定の化学組成を採用することに加えて、特にMo含有量とV含有量との関係に着目すれば、浸炭焼き入れのみで、所定サイズのアスペクト比が2.0以下の炭化物を分散させ、ひいては耐摩耗性、及び耐表面起点剥離性、のいずれについても優れた軸受を提供することができる、との知見を得た。
 本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記に示すとおりである。
 [1]質量%で、
 C:0.15~0.45%、
 Si:0~3.00%、
 Mn:0.20~1.50%、
 Mo:0.70~3.00%、
 V:0.40~1.00%、及び
 Al:0.005~0.100%、
を含有し、残部がFe及び不純物であり、
 前記不純物中、P:0.015%以下、S:0.005%以下、N:0.0300%以下、及びO:0.0015%以下にそれぞれ制限され、
 式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有することを特徴とする、鋼。
  1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
  Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
 ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。
 [2]質量%で、Si:0.50%以下であることを特徴とする、上記[1]に記載の鋼。
 [3]質量%で、Si:0.50%~3.00%であることを特徴とする、上記[1]に記載の鋼。
 [4] 質量%で、
 Cr:0~0.50%未満、
 Ni:0~0.50%、
 B:0~0.0050%、
 Nb:0~0.100%、
 Ti:0~0.100%、
 Cu:0~0.30%、
 W:0~0.50%、及び
 REM:0~0.020%からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[1]~[3]のうちいずれかに記載の鋼。
 [5]表面から1.50mm以上の深さ領域の化学組成が、質量%で、
 C:0.15~0.45%、
 Si:0~3.00%、
 Mn:0.20~1.50%、
 Mo:0.70~3.00%、
 V:0.40~1.00%、及び
 Al:0.005~0.100%、
を含有し、残部がFe及び不純物であり、
 前記不純物中、P:0.015%以下、S:0.005%以下、N:0.0300%以下、及びO:0.0015%以下にそれぞれ制限され、
 前記化学組成は、式(1)及び式(2)満たし、
  1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
  Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
 表面から深さ方向に0.20mmの位置で、C含有量が質量%で0.70%~1.50%であり、且つC以外の成分の含有量は表面から1.5mm以上の深さ領域における当該成分の含有量の範囲内であり、
 表面から深さ方向に0.20mmの位置の金属組織において、
 残留オーステナイトの面積率が15%以下であり、
 アスペクト比が2.0以下であって且つ円相当径が20~200nmである析出物の面積率が3.0%以上であり、
 残部が焼戻しマルテンサイト組織であり、
 前記析出物の面積率が3.0%~10.0%であり、
 表面から0~0.20mm深さ領域である表層において、旧オーステナイト粒界の結晶粒度がJIS粒度番号で10番以上であり、ビッカース硬さが700HV以上である、ことを特徴とする軸受。
 [6]質量%で、Si:0.50%以下であることを特徴とする、上記 [5]に記載の軸受。
 [7]質量%で、Si:0.50%~3.00%であることを特徴とする、上記[5]に記載の軸受。
 [8]表面から1.50mm以上の深さ領域について、質量%で、
 Cr:0~0.50%未満、
 Ni:0~0.50%、
 B:0~0.0050%、
 Nb:0~0.100%、
 Ti:0~0.100%、
 Cu:0~0.30%、
 W:0~0.50%、及び
 REM:0~0.020%からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[5]~[7]に記載の軸受。
 本発明に係る鋼では、各種元素の成分組成、及び特にMo含有量とV含有量との関係について好適化を図っている。その結果、本発明に係る鋼を用いて得られた軸受によれば、耐摩耗性、及び耐表面起点剥離性、のいずれについても優れた性能を実現することができる。
図1は、中間品(円筒型試験片)についての、一部断面を示す側面図及び横断面図である。 図2は、本発明例についての、浸炭焼入れ及び焼戻しのヒートパターンを示す図である。 図3は、浸炭焼入れ、焼戻しを施した機械部品(円筒型試験片)についての、一部断面を示す側面図及び横断面図である。 表3の発明例の表層硬さ(HV)及び耐表面起点剥離性との関係を示すグラフである。 表6の発明例の表層硬さ(HV)及び耐表面起点剥離性との関係を示すグラフである。
 以下、本発明に至る本発明者らの知見、並びに本実施形態の鋼、軸受、及び軸受の製造方法について詳細に説明する。なお、以下では、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
 <本発明者らの知見>
 本発明者らは、耐表面起点剥離性のみならず、耐摩耗性にも優れた軸受について、鋭意検討した。即ち、本発明者らは、耐表面起点剥離性を十分に担保することを前提に、鋼の成分、特に、C、Mo、Vが鋼の耐摩耗性に及ぼす影響について調査した。ここで、耐摩耗性は主に鋼材の表層硬さと析出物の分散状況に基づく性能であり、また耐摩耗性が良好であれば軸受の転動疲労特性を高めることができるため、本発明者らは、上述した鋼の成分が、硬さ、析出物の分散状況、耐摩耗性、及び転動疲労特性に及ぼす影響について調査、検討した。その結果、本発明者らは以下の知見を得た。
 前記析出物を分析した結果、前記析出物のうち、耐摩耗性及び転動疲労特性の向上に寄与する析出物は、セメンタイトよりも硬質であって、アスペクト比が2.0以下のFCC構造を有する炭化物であった。更に、鋼の抽出残差を利用して前記硬質な炭化物の成分を分析したところ、金属元素を含有する炭化物(以下、「MC炭化物」という。)であった。
 即ち、鋼材の耐摩耗性を高めるためには、鋼材に対して浸炭焼入れ、焼戻し等の表面硬化処理を施し、鋼材の表層に、硬質で微細なFCC構造の前記MC炭化物を分散させることが有利である。ここで、記号Mは金属元素を意味する(以下同様)。
 炭化物及び炭窒化物といった析出物を微細分散させるためには、析出物の核(析出核)の生成サイトを増加させることが有効である。V及びMoを複合して含有すれば、浸炭加熱時にオーステナイト粒内に多数のMC炭化物が析出し、これらが浸炭中に成長することで、必要なサイズ及び面積率の炭化物を得ることができる。
 浸炭処理によってMC炭化物を析出させる場合、鋼材の化学組成によっては、MC炭化物だけでなくMC炭化物も析出する場合がある。MC炭化物はMC炭化物よりも軟質であるため、鋼の耐摩耗性を向上させる効果が少ない。そのため、MC炭化物の析出を抑制する必要がある。
 MC炭化物中のMは、主としてMo及びVである。また、MoおよびVの一方が、他方により置換され、MC炭化物にはMoとVの両者が複合的に含まれる。本発明者らは、固溶限という観点では、Moの方がVよりも溶けやすいが、Mo添加量を過剰にするとMC炭化物が析出することを見出した。このような知見から、本発明者らは、MC炭化物を析出させずにMC炭化物を析出させるようにVと複合析出可能にするMoの上限が存在すると考えた。
 本発明者らは、鋼の化学組成が1.2≦Mo/V≦3.0を満たせば、耐摩耗性を劣化させるMC炭化物を浸炭時に生成させることなく、軸受中にMC炭化物を面積分率で3.0%以上微細に分散させ、転動疲労特性及び耐摩耗性を高めることができることを見出した。また、浸炭時に十分な量のMC炭化物を確保するためには、Mo/1.4+V≧1.0を満たすことが必要であることを見出した。
 より具体的には、軸受の表層にMC炭化物を十分に分散させるためには、1.2≦Mo/V≦3.0の比率で、MoとVを鋼材成分として含有させ、かつMo/1.4+V≧1.0、好ましくはMo/1.4+V≧1.5、さらに好ましくはMo/1.4+V≧2.0を満足させるように、MoとVの含有量を調整することが肝要である。
 <鋼>
 まず、本実施形態の鋼について詳述する。
 [化学組成]
 (必須元素)
 C:0.15~0.45%
 炭素(C)は、鋼の強度を高める効果、および鋼の組織を制御する効果を有し、鉄鋼分野において重要な元素である。C含有量が低い場合(すなわち、C含有量が0.15%未満の場合)、軸受となった場合の内部硬さが不十分となり、軸受として十分な強度が得られない。C含有量が過度に高い場合(すなわち、C含有量が0.45%を超える場合)、熱間加工後(浸炭処理前)においても粗大な炭化物及び炭窒化物(以下、「炭窒化物等」と称する場合がある)が残存することにより、浸炭処理時の微細なMC炭化物形成が阻害され、浸炭部品の耐表面起点剥離性が低下する。従って、C含有量は0.15~0.45%である。C含有量の好ましい下限は0.20%である。C含有量の好ましい上限は0.40%である。
 Si:0~3.00%
 Siは鋼の強度を高める。Siはさらに、浸炭部品の耐表面起点剥離性を高める。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、母材の硬さが高くなりすぎ、切削時の工具寿命が低下する。本発明においてSiは必ずしも含有しなくてもよいが、脱酸元素として製造工程において添加されるため、Siを除去するための経済的負担を考慮すると、Si含有量の下限は0.01%に、さらには0.05%としてもよい。
 浸炭方法としてガス浸炭を採用する場合、Siの含有量が0.50%を超える水準であると、Siがガス中の酸素と反応して表層における粒界酸化が進行し、粒界剥離しやすくなり、耐摩耗性が不十分となる。そのため、浸炭方法としてガス浸炭を行う場合には、Siの含有量を0.50%以下に制限する。
 浸炭方法として真空浸炭を適用する場合には、表層における粒界酸化が起こらないため、Siの含有量が0.50%以上の鋼を採用することができる。特に、Siを添加することにより、鋼の強度を高めて耐表面起点剥離性(疲労強度)を高めることができる。一方、真空浸炭を適用する場合であっても、Si含有量が高すぎれば、表層に微細な粒界酸化が発生し、剥離寿命が低下する。そのため、Si含有量は3.00%以下とする。すなわち、真空浸炭を適用する場合には、Siの範囲は0.50~3.00%であることが好ましい。Si含有量の上限は、好ましくは2.50%、より好ましくは2.00%、さらに好ましくは1.50%にするとよい。また、良好な冷間加工性を考慮するのであれば、Si含有量の上限は1.00%にするとよい。
 Mn:0.20~1.50%
 マンガン(Mn)は、鋼の焼入れ性を高め、さらに、浸炭部品の転動疲労特性を高める。Mn含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、母材の硬さが高くなりすぎ、切削時の工具寿命が低下する。また、Mn含有量が高すぎれば、焼入れ時の焼割れの要因となりうる。従って、Mn含有量は0.20~1.50%とした。なお、Mnの好ましい下限は、0.30%であり、さらに好ましい下限は0.40%である。Mnの好ましい上限は1.20%であり、さらに好ましくは1.00%である。
 Mo:0.70~3.00%
 モリブデン(Mo)は、Crと同様に、鋼の焼入性を高める。Moはさらに、V及びCrと複合して含有されることにより、浸炭処理時に微細なMC炭化物の生成を促進し、浸炭部品の耐摩耗性を高める。Mo含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、MC炭化物より耐摩耗特性の劣るMC炭化物の析出が促進されるだけでなく、鋼の熱間加工性及び切削性が低下し、しかも製造コストも嵩む。従って、Mo含有量は0.70~3.00%とした。Mo含有量の好ましい下限は1.50%である。Mo含有量の好ましい上限は2.40%であり、より好ましい上限は2.00%である。
 V:0.40~1.00%
 バナジウム(V)は、Cr及びMoと同様に、鋼の焼入性を高める。Vはさらに、Cと結合して微細なMC炭化物を生成する。本実施形態では、VとMoが複合して含有されることにより、浸炭処理時に、微細な析出物が多数生成し、浸炭部品の耐摩耗性が高まる。V含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、V含有量が高すぎれば、熱間加工後においても未固溶の粗大な炭化物等が残存し、浸炭部品の転動疲労特性が低下する。さらに、鋼の熱間加工性及び切削性も低下する。従って、V含有量は0.40~1.00%とした。V含有量の好ましい下限は0.60%である。V含有量の好ましい上限は0.90%である。
 Al:0.005~0.100%
 アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する効果を有する元素であり、脱酸工程にて用いられる。脱酸工程でAlが用いられた鋼は、通常、Alを0.005%以上含有する。Al含有量が高すぎれば、粗大な酸化物系介在物が鋼中に残存して、浸炭部品の転動疲労特性が低下する。従って、Al含有量は0.005~0.100%とした。Al含有量の好ましい下限は0.008%であり、さらに好ましくは0.010%である。Al含有量の好ましい上限は0.050%であり、さらに好ましくは0.048%である。ここでいうAl含有量は、鋼において固溶の形態で含まれるAl、および非固溶の形態で含まれるAlの両方を含む全Al(Total Al)の含有量を意味する。
 (残部)
 本実施形態の鋼の化学組成において、残部は、Fe及び不純物である。ここで、不純物とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、又は製造環境などから混入されるものであって、当該鋼に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。主な不純物としては、P、S、N、Oが挙げられるが、これに限定されず、他の元素も不純物として含有されうる。
 P:0.015%以下
 リン(P)は、結晶粒界に偏析して浸炭部品の靭性を低下する。従って、P含有量は0.015%以下である。好ましいP含有量の上限は0.013%であり、さらに好ましくは0.010%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
 S:0.005%以下
 硫黄(S)は、鋼中で硫化物を生成して浸炭部品の転動疲労特性を低下させる。従って、S含有量は0.005%以下である。耐表面起点剥離性を高めるためのS含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましい上限は0.003%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
 N:0.0300%以下
 窒素(N)は、鋼中に固溶して鋼の熱間加工性を低下する。従って、N含有量は0.0300%以下である。N含有量の好ましい上限は0.0250%であり、さらに好ましくは0.0200%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
 O(酸素):0.0015%以下
 酸素(O)は、鋼中の他の元素と結合して酸化物を生成し、鋼材の強度を低下する。Oはさらに、酸化物を生成するとともに、MnSの粗大化を促進して、軸受の転動疲労特性を低下させる。従って、O含有量は0.0015%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0013%であり、さらに好ましくは0.0012%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。
 (任意選択元素)
 本実施形態の鋼においては、以下の任意選択元素(Cr、Ni、B、Nb、Ti、Cu、W、REM)を含ませることができる。これらの元素は、単独で採用することは勿論、その組み合わせを採用することもできる。もっとも、これらの元素をいずれも含有しなくとも本発明の目的は達成できる。
 Cr:0~0.50%未満
 クロム(Cr)は、鋼の焼入性を高める元素であり、必要に応じて0%以上含有しても良いが、過大に含有した場合には、浸炭時にオーステナイト粒界に粗大なM(記号Mは金属元素を示す)炭化物を形成してMC炭化物の生成を阻害する。また、CrはSiと同様に、浸炭時に、鋼材の表層に酸化層を形成する元素である。従って、Cr量の上限を0.50%未満とした。Crは0.05%を下限として含有しても良い。Crによる効果を得るためのより好ましい下限は0.07%、更に好ましい下限は0.10%である。Cr量のより好ましい上限は0.40%、Cr量の更に好ましい上限は0.30%である。
 Ni:0~0.50%
 ニッケル(Ni)は、焼入れ性を向上させる元素である。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、残留オーステナイト量が増加し、焼入れ硬さが低下する。従って、Ni含有量は0.50%以下である。Ni含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.05%である。Ni含有量の好ましい上限は0.35%であり、焼入れ性への寄与と添加量のバランスを考慮すれば、さらに好ましい上限は0.10%である。
 B:0~0.0050%
 ボロン(B)は、鋼の焼入れ性を高め、軸受の強度を高める。Bはさらに、焼入れ時にオーステナイト粒界にP及びSが偏析するのを抑制する。しかしながら、B含有量が高すぎれば、B窒化物(BN)が生成して鋼の靭性が低下する。従って、B含有量は0.0003%以上0.0050%以下の範囲で含有しても良い。Bによる効果を得るためのB含有量の好ましい下限は0.0005%である。B含有量の好ましい上限は0.0030%である。
 Nb:0~0.100%
 ニオブ(Nb)は、鋼中のC及びNと結合して炭化物、窒化物、及び炭窒化物を生成する。これらの析出物は結晶粒を微細化し、析出強化によって軸受の強度を高める。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、鋼の靭性が低下する。従って、Nb含有量は0%以上0.100%以下の範囲で含有しても良い。Nbによる効果を得るためのNb含有量の好ましい下限は0.005%である。Nb含有量の好ましい上限は0.070%である。
 Ti:0~0.100%
 チタン(Ti)は、Nbと同様、炭化物、窒化物、及び炭窒化物を生成して結晶粒を微細化し、軸受の強度を高める。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、鋼の靭性が低下する。従って、Tiによる効果を得るためのTi含有量は0.005%以上0.100%である。Tiによる効果を得るためのTi含有量の好ましい下限は0.030%である。Ti含有量の好ましい上限は0.080%である。
 Cu:0~0.30%
 銅(Cu)は、耐食性を高める。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、圧延時の熱間延性が低下する。従って、Cu含有量は0.05%以上0.30%以下の範囲で含有しても良い。Cuによる効果を得るためのCu含有量の好ましい下限は0.01%である。Cu含有量の好ましい上限は0.20%である。
 W:0~0.50%
 Wは、鋼の耐食性を向上させる元素であり、含有してもよい。しかし、MC形成元素であり、高価な元素でもあるので、0.50%以下にするとよい。好ましくは0.30%以下にするとよい。Wを添加する場合、その効果を得るため0.01%以上添加するとよく、更に好ましくは0.05%以上にするとよい。
 REM:0~0.020%
 希土類元素(REM)は、MnSなどの硫化物の微細分散を促進する。しかしながら、REM含有量が高すぎれば、酸化物が増加し疲労特性が低下する。従って、REM含有量は0%以上0.020%以下の範囲で含有しても良い。REMによる効果を得るためのREM含有量の好ましい下限は0.005%である。REM含有量の好ましい上限は0.010%である。
 (Mo含有量とV含有量との関係)
 次に、本実施形態の鋼における、Mo含有量とV含有量との関係について詳述する。
 本実施形態の鋼の化学組成は、式(1)を満たす。
  1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
 ここで、式(1)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
 本発明では、鋼がMoとVとの両方を包含することにより、浸炭処理の際に表層に微細なMC炭化物を生成している。Mo/Vが1.2未満では、MoとVとの複合効果が不十分となるため、浸炭処理時に微細なMC炭化物の生成が促進されず、浸炭部品の耐摩耗性を高めることができない。これに対し、Mo/Vが3.0を超えると、MC炭化物ではなく、Moを主体とするMC炭化物の生成が促進されることにより、鋼材の表層に、硬質で微細なFCC構造のMC炭化物を分散させることができない。従って、Mo/V比は、式(1)の範囲に規定した。好ましくは、1.5≦Mo/Vの範囲である。また、好ましくは、Mo/V≦2.5の範囲である。
 次に、本実施形態の鋼の化学組成は、さらに、式(2)を満たす。
  Mo/1.4+V≧1.0   ・・・(2)
 ここで、式(2)中の元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
 浸炭によって鋼材表面から導入されたCが、浸炭加熱時に析出したMC炭化物を成長させることにより、必要な面積率のMC炭化物が得られる。原子量を考慮すると、MC炭化物の形成において、VとMo/1.4との使用量は等価である。これらの和である式(2)が1.0未満であると、MC炭化物の生成が十分ではなく、浸炭で導入されたCが、M炭化物やセメンタイトなど、転動疲労特性や摩耗特性に劣る炭化物の形成に消費される。従って、式(2)の範囲に規定した。好ましくは、Mo/1.4+V≧2.0の範囲である。
 以上に示すとおり、本実施形態の鋼は、Cr含有量を下げてM化合物の析出を抑制し、またV及びMo含有量を所定の配分に制御することでMC炭化物を旧オーステナイト結晶粒内に均一に分散させるように成分調整がされている。従って、本実施形態の鋼は、軸受に好適に用いることができ、本実施形態の鋼を用いることにより、優れた耐表面起点剥離性を有する軸受を製造することができるのみならず、特にMo含有量とV含有量との関係について好適化を図ることにより、耐摩耗性にも優れた軸受を得ることができる。
 <軸受の製造方法>
 次に、以上に示した鋼を用いて製造した軸受の製造方法を詳述する。
 (鋼材を製造する工程)
 上述の化学組成を有し、かつ、式(1)及び式(2)を満たす溶鋼を連続鋳造法により鋳片にする。或いは、上記溶鋼を造塊法によりインゴット(鋼塊)にしてもよい。次に、鋳片又はインゴットを熱間加工して、鋼片(ビレット)を製造する。例えば、分塊圧延により鋳片又はインゴットを鋼片にすることができる。鋼片又は鋳片を熱間加工して、棒鋼又は線材等の鋼材を製造する。熱間加工は、熱間圧延でもよいし、熱間鍛造(熱間鍛伸等)でもよい。必要に応じて、熱間圧延前の鋼片又は鋳片に対して均熱拡散処理を施してもよい。また、必要に応じて、製造された鋼材に対して、焼準処理や球状化焼鈍処理を施してもよい。以上の工程により、鋼材を得ることができる。
 (軸受形状にする工程)
 上述した鋼材を、所定の形状に加工して中間品を製造する。加工方法としては、例えば、熱間鍛造や機械加工(切削加工等)が挙げられる。しかしながら、これらの加工方法に限られず、所定形状の中間品が得られる方法であれば、いかなる加工方法を採用することもできる。
 (浸炭焼入れ・焼戻しを行う工程)
 次に中間品に対して浸炭焼入れ及び焼戻しを施す。
 浸炭条件は特に限定しない。特に、Si含有量が少ない場合(Si含有量が0.50%以下の場合)、ガス浸炭でも真空浸炭でも適用することができる。Siを多く含有している場合(Si含有量が0.50%以上の場合)、表面酸化膜形成による耐表面起点剥離性の劣化が懸念されるので、真空浸炭を適用することが必要となる。
 真空浸炭処理は拡散現象を利用する処理であり、アセチレン、プロパン及びエチレン等の炭化水素ガスを用いる。浸炭温度が850℃未満では、機械部品中に十分な炭素を拡散させるために長時間の加熱処理を要し、コストが嵩む。一方、浸炭温度が1100℃を超えると、著しい粗粒化や混粒化を招来する。そのため、浸炭は850~1100℃の温度域で行う。コストの低廉化や、粗粒化の抑制及び混流化の抑制をさらに高いレベルで実現させるためには、浸炭温度を900~1050℃の温度域で行うことが好ましい。
 ガス浸炭であれば、浸炭性ガス雰囲気中に中間品を配置し、浸炭処理温度850~1100℃で浸炭処理を施す。浸炭処理温度が低すぎれば、Cの拡散速度が遅くなる。この場合、所定の熱処理性状を得るために必要な浸炭処理時間が長くなり、生産コストが嵩む。一方、浸炭処理温度が高すぎれば、オーステナイト粒が粗大化し、焼入れひずみが生ずる。従って、浸炭処理温度は850~1100℃である。より好ましい浸炭処理温度は900~970℃である。
 中間品を加熱保持して浸炭処理を施した後、急冷して、焼入れを行う。その後、浸炭焼入れされた中間品を130~200℃の温度範囲内で所定時間保持して、焼戻しを行う。
 焼入れ温度が低すぎれば、鋼中に十分なCを固溶させることができず、またフェライト相など、軟質層が生成する可能性があり、マルテンサイトを十分に確保できないため、軸受の内部硬さが低下する。このため、焼入れ温度は850℃以上である。より好ましい焼入れ温度は870℃以上である。
 また、焼戻し温度が低すぎれば、十分な靭性が得られない。一方、焼戻し温度が高すぎれば、表面硬さが低下し、中間品の耐摩耗性が低下する。従って、焼戻し温度は130~200℃である。より好ましい焼戻し温度は150~180℃である。
 ここで、浸炭された軸受(浸炭軸受)の表層(表面から0.20mmまでの深さ領域)におけるC濃度(表層C濃度)、及び表面硬さの調整方法について詳述する。
 表層C濃度は、ガス浸炭においては、浸炭焼入れ時の雰囲気中のカーボンポテンシャルを制御することにより調整することができる。一例として、浸炭焼入れのカーボンポテンシャル、加熱温度、及び浸炭処理時間によって調整することができる。カーボンポテンシャルが高く、加熱温度が高く、浸炭処理時間が長いほど、表層C濃度が高くなる。
 真空浸炭においては、アセチレンの濃度や温度を制御することにより表層C濃度を調整することができる。
 表面硬さは、主に表層C濃度に依存する。具体的には、表層C濃度が高くなれば、表面硬さも高くなる。しかしながら、表層C濃度が高すぎれば、残留オーステナイトの発生に伴う表面硬さの低下や、粗大な炭化物の発生に伴う耐表面剥離性の悪化などにつながる。
 <軸受>
 このようにして製造された軸受の物性について、以下に詳述する。
 (表面から1.50mm以上の深さ領域における化学組成)
 本実施形態にかかる軸受は、前述した本実施形態にかかる鋼を浸炭焼入れおよび焼戻し処理を経て製造される。表面付近の化学組成は浸炭処理の影響によって変化するが、浸炭処理による影響のない領域、具体的には表面から1.50mm以上の深さ領域においては化学組成に変化はない。すなわち、表面から1.50mm以上の深さ領域における化学組成は、前述した本実施形態にかかる鋼と実質的に同一である。
 (表層C濃度:0.70%~1.50%)
 本実施形態の軸受における表層C濃度(即ち、軸受の表面から深さ方向に0.20mmの位置におけるC含有量の平均値)は、0.70~1.50%である。表層C濃度が低すぎれば、表面硬さが低くなりすぎ、耐摩耗性が低下する。一方、表層C濃度が高すぎれば、残留オーステナイト量が多くなって表面硬さが低下して耐摩耗性を損ない、または粗大な炭化物等が発生するため、耐表面起点剥離性が低下する。
 表層濃度の好ましい下限は0.75%であり、さらに好ましくは0.80%である。表層C濃度の好ましい上限は1.20%である。
 表層C濃度は、例えば、日本電子製のJXA-8230等の電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用い、浸炭軸受の任意の表面位置から0.20mm深さ位置において測定されたC濃度の値(質量%)と定義する。
 なお、表層の化学組成において、C以外の成分の含有量は、表面から1.5mm以上の深さ領域における当該成分の含有量の範囲内である。これは、浸炭処理によって表層にCが侵入した場合であっても、浸炭前から表層に存在する各元素も依然として浸炭前の含有量とほぼ等量で含有されるからである。
 (表層のビッカース硬さ:700HV以上)
 本実施形態の軸受における表層のビッカース硬さは700HV以上である。表層のビッカース硬さが700HV未満であれば、優れた耐摩耗性が得られず、さらに、転動疲労寿命も低下するおそれがある。これに対し、表層のビッカース硬さが1000HVを超えれば、微小な亀裂が発生した場合に亀裂の進展感受性が高まり、耐表面起点剥離性がかえって低下することが懸念されるため、1000HV以下が望ましい。表層のビッカース硬さの好ましい下限値は、750HVである。
 ビッカース硬さは、JIS Z 2244:2009に準じた方法で、浸炭された鋼部品の表面に対して垂直な断面を観察面とする試料を用い、前記鋼部品の表面から0.05mm、0.10mm、0.15mm、0.20mm深さの硬さを、荷重2.94Nにてそれぞれ測定する。そしてこれらの4点の平均値を表層の硬さとする。
 (内部のビッカース硬さ:200HV以上)
 本実施形態の軸受における内部(即ち、表面から1.50mmの深さ)のビッカース硬さは200HV以上であると良い。内部のビッカース硬さが200HV未満であれば、部品としての強度が得られず、さらに、疲労特性も低下するおそれがある。これに対し、内部のビッカース硬さが400HVを超えれば、部品成型時の加工性が低下することが懸念されるため、400HV以下が望ましい。内部のビッカース硬さの好ましい下限値は、250HVである。
 浸炭された軸受における内部のビッカース硬さを、当該部品の任意の表面位置から深さ1.50mmの位置において、前記JISに準拠して、荷重1kgにて4点を測定する。内部硬さは、その平均値と定義する。
 (表層の金属組織)
 本実施形態の軸受における表層の金属組織(即ち、軸受の表面から0.20mmの深さ位置における組織)は、残留オーステナイトと、アスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmの析出物とを含有し、残部の金属組織が焼戻しマルテンサイトである。なお、前記アスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmの析出物は、実質的にはMC炭化物である。
 本実施形態にかかる軸受は、上述したように、浸炭焼き入れを経て製造されるため、表層の金属組織は、残留オーステナイトおよび析出物を除いた領域において焼戻しマルテンサイト組織となる。
 焼入れ焼戻しによって形成される金属組織においては、微量ながら、非・焼戻しマルテンサイトが含有されることがある。たとえば、焼入れ焼戻し処理によって形成される金属組織には、焼入れによって発生した残留オーステナイトのほかに、残留オーステナイトが焼戻しで分解されて形成されるフェライトまたはセメンタイト組織も微量に含まれることがある。これらは、焼戻しマルテンサイトから分離して判別することが難しい。仮に判別できた場合、パーライト、フェライト、セメンタイトが少量(具体的には、面積率で10%以下)含まれるとしても本発明の目的は達成できる。すなわち、本発明においては、「焼戻しマルテンサイト組織」とは、主体が焼戻しマルテンサイトであり、パーライト、フェライト、セメンタイトの面積率の総和が10%以下である金属組織を指す。
 表層の組織観察は、浸炭された軸受から、その表面に垂直な断面を観察できるように観察面を切り出し、以下のように観察する。即ち、浸炭された軸受から、前記軸受の表面に垂直な断面を切り出し、前記断面を鏡面研磨後、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、5~30秒腐食し、次いで水洗する。その後、1視野として70μm×50μmである画像を、前記表面から0.20mm深さの位置において、前記表面に対して平行に0.05mm間隔で10視野を観察する。観察には、倍率を10000倍に設定した走査型電子顕微鏡(SEM)を用いる。測定に用いるSEMとしては、例えば、日本電子製のJSM-7100Fを用いることができる。
 各視野において電子線後方散乱回折(EBSD)を用いて解析を行い、観測したEBSDパターンに基づいて、結晶構造がFCCである領域(すなわち、残留オーステナイト又はMC炭化物のうち少なくともいずれかの領域)を特定することができる。後述する実施例において、このようなFCC構造の領域のうち、後述する円相当径が20~200nmかつアスペクト比が2.0以下の析出物以外の領域を残留オーステナイトとみなして、その面積率を測定したところ、いずれも15%以下であった。また、発明例においては、いずれも残留オーステナイトの面積率は10%以上であった。
(表層における、円相当径が20~200nmで、アスペクト比が2.0以下の析出物)
 前述した化学組成を有する鋼を浸炭処理した場合に析出する析出物としては、MC炭化物のほかに、セメンタイトおよびMが考えられる。MC炭化物は、浸炭処理の際に球状に成長し、円相当径が20~200nm、かつアスペクト比が2.0以下の析出物となる。セメンタイトは析出する際に旧オーステナイト粒界に沿って細長い形状で析出するためにアスペクト比が高く、具体的にはアスペクト比が2.0を超える粒として析出する。Mは析出する際に板状の形状で析出するため、同様にアスペクト比が2.0を超える形状で析出する。したがって、本実施形態においては、粒径が20~200nmで、アスペクト比が2.0以下の析出物をMC炭化物とみなして計測する。
 実際に、本実施形態にかかる軸受における、円相当径が20~200nmで、アスペクト比が2.0以下の析出物を同定した。上記所定の試料において、上記表面に対して垂直な断面を切り出した後、鏡面研磨を施し、硝酸とアルコールの混合溶液(アルコール100mlに対し硝酸1.5ml)に5秒浸漬させた後、水洗し、当該軸受の表面から0.20mm深さの位置の断面を観察した。観察には、倍率30000倍に設定したSEMを用い、電子線後方散乱回折(EBSD)を採用する。そして、EBSDによって、SEM倍率を30000倍に設定して、当該軸受の表面から0.20mm深さにおいて、前記表面に対して平行に0.05mm間隔で、1視野として25μm×20μm、計10視野を測定した。各視野において、FCC構造であり、且つV、Moを含有する析出物をMC炭化物と同定した。EBSDとしては、TSL製カメラ(DigiviewIV)や、OIM-Datacollection(OIM-Analysis ver7.1)を用いた。その結果、本実施形態の軸受においては、円相当径が20~200nmかつアスペクト比が2.0以下の析出物は、その95%以上がMC炭化物であった。
(表層におけるMC炭化物の面積率及び円相当径)
 MC炭化物の面積率は、観察視野の総面積に対する、MC炭化物の総面積を百分率で表示した数値である。ここで、MC炭化物の面積率を求める際に含める析出物は、長径/短径で定義されるアスペクト比が2.0以下の析出物であって、円相当径が20~200nmの析出物とする。尚、実際のMC炭化物のアスペクト比は、ほとんどが1.5以下であった。なお、ここでいう円相当径とは、測定された粒子の面積換算の円相当径である。すなわち、本発明における円相当径とは、測定された粒子の投影面積と等しい面積をもつ円の直径であり、具体的には以下の式によって導出する。
 円相当径=2×√{(当該粒子の面積)÷π}
 MC炭化物として同定された炭化物の面積率は、複数個所(少なくとも10箇所)を測定した平均値である。MC炭化物であると同定された析出物の面積率及び円相当径は、画像解析ソフト、例えばImageJ(National Institutes of Health製)を用いて測定することができる。
 本実施形態に係る成分範囲において、MC炭化物の面積率が、3.0%以上であるときに、表層において微細なMC炭化物を十分確保でき、その結果として軸受の耐摩耗性及び耐表面起点剥離性を両立することができた。MC炭化物の面積率が3.0%未満となった場合には、軸受の耐摩耗性が不十分となった。これは、他組織に比べて硬質であるMC炭化物の量が不十分であったためであると考えられる。MC炭化物の面積率には特段上限は設定しないが、非金属析出物の割合が過多となった場合には、軸受の靱性が低下する可能性はある。本発明者の知見では、本開示の製法によってMC炭化物の面積率を10%程度まで高めることができ、また、10.0%以下の範囲内では、軸受として問題なく使用することができた。
 (表層における旧オーステナイト結晶粒度)
 本実施形態の軸受の表層における旧オーステナイトの結晶粒度は、JIS粒度番号で10番以上である。旧オーステナイトの結晶粒度がJIS粒度番号で10番未満であると、疲労特性は低下する。旧オーステナイトの結晶粒度の好ましい範囲は、JIS粒度番号で11番以上である。
 前記旧オーステナイトの結晶粒度は、以下のように測定される。まず、軸受表面と垂直な断面であって、表面から0.20mm深さまで表面研磨し、硝酸とアルコールの混合溶液(アルコール100mlに対し硝酸1.5ml)に5分間浸漬させた後、水洗し、旧オーステナイト粒界を現出させ、当該断面の表面から0.20mm深さまでの範囲を連続して1000倍の光学顕微鏡で撮影する。そして、JIS G 0551:2013に記載の切断法で粒度番号を求める。
 以上に示した本実施形態の軸受は、その製造段階で、所定の化学組成及び所定の浸炭焼入れ・焼戻し条件を採用することで、表層C濃度、表層のビッカース硬さ、内部のビッカース硬さ、表層の組織、表層におけるMC炭化物の面積率、及び旧オーステナイトの結晶粒度を、いずれも、所望の範囲とすることができる。これにより、本実施形態の軸受によれば、耐摩耗性、及び耐表面起点剥離性、のいずれについても優れた性能を実現することができる。
 次に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。
〔実施例1〕
<軸受の製造>
[中間品の作製]
 表1-1、表1-2に示す種々の化学組成(残部はFe及び不純物)を有する溶鋼(鋼No.A1~AT1)を、2t真空溶解炉を用いて製造した。なお、表1-1、表1-2中、「-」印は元素が意図的に含有されなかった(つまり、含有量は不純物レベルであって、実質0%である)ことを示す。また、表1-1、表1-2中、式(1)、式(2)とは、下記の不等式をいい、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。
  1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
  Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000001
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000002
 次に、各溶鋼を鋳造、鍛造して160mm×160mmの矩形断面を有する鋼片を製造した。さらに、鋼片を熱間圧延して、直径60mmの棒鋼を製造した。
 次いで、各棒鋼(直径60mm)の一部を切断し、切断部分に対して熱間鍛伸を施して、直径30mmの棒鋼を製造した。製造された棒鋼(直径30mm)に対して焼準処理を実施した。具体的には、棒鋼(直径30mm)を、920℃で1時間保持した後、空冷した。
 最後に、各棒鋼(直径30mm)から、図1に示す円筒型試験片の中間品を切削加工により作製した。図1中の数値は、中間品の各部位の寸法(mm)及び角度を示す。
 [軸受1の作製]
 次に、円筒型試験片の各中間品(表2の製造No.101~141)に対して、浸炭焼入れ、焼き戻しを順次施し、円筒型試験片を得た。浸炭焼入れ、焼戻しの各条件(浸炭方法、浸炭処理温度、浸炭処理時間、使用ガス、ガス流量、焼入れ温度、及び焼き戻し温度)については、表2に示すとおりとした。図2に、各発明例についての、浸炭焼入れ及び焼戻しのヒートパターンを示す。なお、図2及び表2中、S1、S2は、それぞれ、浸炭期、拡散期を示すものである。
 その後、浸炭軸受に対して、仕上げ加工(切削加工)を施して、図3に示す形状の軸受1(円筒型試験片)とした。図3中の数値は、軸受の各部位の寸法(mm)及び角度を示す。この軸受1(円筒型試験片)は、円筒型の転動体を想定したものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000003
 <軸受1(円筒型試験片)の性能評価>
 このようにして得られた表2の製造No.101~141の軸受1(円筒型試験片)の各々について、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、耐摩耗性、表層硬さ、内部硬さ、及び表層C濃度についての評価を行った。
 [表層(表面から0.20mmまでの深さ領域)におけるMC炭化物の面積率]
 円筒型試験片を軸方向に垂直に切断し、埋め込み研磨を行い、SEM-EBSDにて、表面から0.20mmの深さの位置において倍率30000倍で前記研磨された切断面の10視野を測定し、アスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmである析出物を測定した。このように測定された析出物をMC炭化物とみなし、前記析出物の面積率(%)を、画像解析ソフトによって測定した。その結果を表3の「MC炭化物面積率 (%)」に示す。
 [表層における金属組織]
 円筒型試験片を、軸方向と垂直な断面を観察できるように切り出し、前記断面を鏡面研磨後、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、5~30秒腐食し、次いで水洗し、光学顕微鏡によって観察した。その結果、表面から0.20mm深さの位置における金属組織は、いずれも焼入れ焼戻し組織(MC炭化物以外の領域は、残留オーステナイト、および焼戻しマルテンサイト組織からなる組織)であることを確認した。
 さらに、各視野においてEBSD解析を行い、残留オーステナイトである領域を特定し、その面積率を測定した。前記領域の観察は、倍率10000倍に設定したSEMを用い、電子線後方散乱回折(EBSD)により行った。EBSDによって、SEM倍率を10000倍に設定して、表面から0.20mm深さの組織を、0.05mm間隔で10視野を測定し、残留オーステナイトを含むFCC構造を同定し、そこからアスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmである領域を除外して、残留オーステナイトの面積率を求めた。残留オーステナイトの面積率は、10視野の平均値とした。残留オーステナイトの面積率を表3の「旧オーステナイト結晶粒度」に示す。
 [旧オーステナイトの結晶粒度]
 円筒型試験片を、その長尺方向と垂直な断面を観察するように切り出し、前記断面を鏡面研磨後、ピクリン酸とエタノールの混合溶液(アルコール100mlに対しピクリン酸4g)に5分浸漬させ、旧オーステナイト粒界を現出させた後、最表面を含むよう、光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影し、JIS G 0551:2013に規定されている切断法により旧オーステナイト結晶粒度を算出した。その結果を表3に併記する。
 [耐摩耗性]
 円筒型試験片を用いて2円筒転がり摩耗試験を行った。試験において、円筒型試験片(図3に示す軸受1)とともに、直径150mm、厚み18.0mmの円板状の大型円筒試験片を準備した。なお、大型円筒試験片の素材は、JIS G4805:2008に規定された高炭素クロム軸受鋼材SUJ2に相当するものであった。そして、大型円筒試験片の円周面を前記円筒型試験片の試験部(図3に示されるφ26.0mmの円筒部分)の円周面に接触させ、摩耗試験を行った。
 摩耗試験の条件は次のとおりとした。即ち、潤滑環境下での円筒型試験片と大型円筒試験片との面圧を2.5GPaとし、円筒型試験片の回転数を1500rpmとし、滑り率を40%とし、繰り返し数を2.0×10回とした。
 摩耗試験後、円筒型試験片の試験部の摺動部分の平均摩耗深さを測定した。具体的には、円筒型試験片の円周方向に対して90°ピッチとなるよう、円筒型試験片の軸方向に平行なラインを4本、φ26部分の一方の端部から、他方の端部まで設定した。この各ラインは、摺動部分以外の領域(以下、未摺動部分という)のうち一方から始まり、摺動部分を通過し、他方の未摺動部分まで到達する。この各ラインにおける粗さプロファイルを測定した。この4箇所での粗さプロファイルの最大深さ(すなわち、未摺動部分を基点とした場合の、摺動部分で最も深い地点の深さ)を摩耗深さと定義し、これら4箇所の摩耗深さの平均を、平均摩耗深さ(μm)と定義した。そして、平均摩耗深さが10μm以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断した。一方、平均摩耗深さが10μm超であれば、耐摩耗性が不良と判断した。その結果を表3に併記する。
 [表層硬さ]
 摩耗試験後の円筒型試験片の試験部の表面のうち、摺動部分以外の領域(以下、未摺動部分という)において、表層硬さを測定した。具体的には、未摺動部分を、軸方向に対して垂直に切断して観察面を形成し、JIS Z 2244:2009に準じた方法で、表面から0.05mm、0.10mm、0.15mm、0.20mm深さの硬さを、試験力2.94Nにてそれぞれ測定した。得られた4点のビッカース硬度の値の平均を、表層硬さと定義した。その結果を表3に併記する。
 [内部硬さ]
 摩耗試験後の円筒型試験片の未摺動部分において、円周方向に対して90°ピッチで4箇所の測定位置を特定した。特定された4箇所の測定位置において、表面から1.50mm深さの位置において、荷重1kgでビッカース硬さ試験を実施した。各測定箇所のビッカース硬さの平均を、内部硬さと定義した。その結果を表3に併記する。
 [表層C濃度]
 円筒型試験片の試験部の未摺動部分を軸方向に対して垂直に切断し、未摺動部を含む切断面を含む試験片を採取し、切断面に対して埋め込み研磨仕上げを行った。その後、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、未摺動部分の表面から0.20mm深さまで、5μmピッチでC濃度を測定した。測定された値の平均値を、表層C濃度(質量%)と定義した。その結果を表3に併記する。
 <軸受2(転動疲労試験片)の性能評価>
 [耐表面起点剥離性]
 上述した各棒鋼(直径60mm)のうち、円筒型試験片の中間品の作製に使用しなかった部分を用いて、直径60mm、厚さ5.5mmの円板状の粗試験片をスライスして採取した。粗試験片の厚さ(5.5mm)は、棒鋼の長手方向に相当した。
 粗試験片に対して、円筒型試験片を製造した場合と同じ条件(表2による)で、浸炭焼入れ及び焼戻しを実施して、浸炭軸受を模擬した試験片を製造した。得られた試験片の表面をラッピング加工して、転動疲労試験片とした。この軸受2(転動疲労試験片)は、挟持体を想定したものである。
 次いで、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、転動疲労試験を実施した。試験時における最大接触面圧を5.2GPaとし、繰り返し速度を1800cpm(cycle per minute)とした。試験時に使用する鋼球として、JIS G 4805:2008に規定されたSUJ2の調質材を用いた。
 転動疲労試験結果をワイブル確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「耐表面起点剥離性」と定義した。L10寿命が45.0×10以上であれば、表面起点剥離寿命に優れると判断した。一方、L10寿命が45.0×10未満であれば、表面起点剥離寿命が短いと判断した。その結果を表3に併記する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000004
 表1~3から明らかなように、その製造段階で、所定の化学組成及び所定の浸炭焼入れ・焼戻し条件を採用した各発明例については、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、表層硬さ、及び表層C濃度のいずれについても本発明に規定される範囲内となった。また、各発明例においては、耐摩耗性および耐表面起点剥離性の両面において優れた性能を実現されていることが判る。また、図4に示すように、発明例は、表層硬さ(HV)の増加とともに耐表面起点剥離性も向上する傾向がある。
 これに対し、その製造段階で、所定の化学組成及び所定の浸炭焼入れ・焼戻し条件の少なくともいずれかを採用しなかった各比較例については、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、表層硬さ、及び表層C濃度の少なくともいずれかについて、本発明の要件を充足しない。その結果、耐摩耗性または耐表面起点剥離性のいずれかの点において、優れた性能を実現することができていないことが判る。
 製造No.122においては、母材のC含有量が低く、かつ表層C濃度が不十分となったため、内部硬さが不十分となり、耐表面起点剥離性において本発明にくらべて劣位となった。製造No.123においては、母材のC含有量が過剰であったため、表層においてMC炭化物以外に粗大な炭化物が生成し、耐表面起点剥離性が低下している。製造No.124は、Mn含有量が低すぎたため、表層硬さが不十分であり、浸炭部品の転動疲労特性の向上効果が得られず、耐表面起点剥離性が不十分である。
 製造No.125、127~129は、Mo/Vの値、および他の化学元素の含有量が本発明の要件を満たさない例である。いずれも耐表面起点剥離性が不十分であり、製造No.127、129は、耐摩耗性も不十分である。
 製造No.135は、MoおよびVは個別には本発明の要件を充足するが、Mo/Vの値が本発明の規定よりも小さかった例である。Moに比してVの割合が多かったため、MC炭化物の析出が本発明ほど促進されず、MC炭化物の面積率が不十分となり、耐表面起点剥離性が不十分となったと考えられる。
 製造No.136は、MoおよびVは個別には本発明の要件を充足するが、Mo/Vの値が本発明の規定よりも大きかった例である。Vに比してMoの割合が多かったため、MC炭化物だけではなくMC炭化物が析出し、その結果として耐表面起点剥離性が不十分となったと考えられる。すなわち、表3の上では「MC炭化物の面積率」とされている値は、実際にはMC炭化物の面積率も包含するものであり、真のMC炭化物の面積率は不十分となっていると考えられる。
 製造No.126は、S含有量が過剰であったために、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.130は、Al含有量が過剰であったために、浸炭部品の転動疲労特性が低下した。これは、粗大な酸化物系介在物が鋼中に残存したことに起因する。製造No.131は真空浸炭処理が行われているが、Cr及びVの含有量が過剰であるため、浸炭部品の転動疲労特性が低下している。これは、未固溶の粗大な炭化物等が鋼中に残存していることに起因する。製造No.132はNを過剰に含有するため、熱間加工性が低下した例である。
 製造No.133及び141は、Cr含有量が過剰であったために、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.134及び137は、(V+Mo/1.4)の値が1.0未満の例であり、これらの製造例は、MC炭化物の生成が不十分であった。そのため、耐表面起点剥離性が劣位である。
 製造No.138は、Mo含有量が不十分であったために、MC炭化物を十分に得ることができず、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.139はV含有量が不十分である例であり、その結果、MC炭化物を十分に得られなかった例である。製造No.140はV含有量が過剰である例である。これらの製造例のV含有量は適切な範囲内にないため、耐表面起点剥離性が劣位になった。
〔実施例2〕
<軸受の製造>
[中間品の作製]
 表4-1及び表4-2に示す種々の化学組成を有する溶鋼(鋼No.A2~AS2)を、2t真空溶解炉を用いて製造した。なお、表4-2中、「-」印は元素が意図的に含有されなかった(つまり、含有量は不純物レベルであって、実質0%である)ことを示す。また、表4-2中、式(1)、式(2)とは、下記の不等式をいい、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。
  1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
  Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000005
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000006
 次に、各溶鋼を鋳造、鍛造して160mm×160mmの矩形断面を有する鋼片を製造した。さらに、鋼片を熱間圧延して、直径60mmの棒鋼を製造した。
 次いで、各棒鋼(直径60mm)の一部を切断し、切断部分に対して熱間鍛伸を施して、直径30mmの棒鋼を製造した。製造された棒鋼(直径30mm)に対して焼準処理を実施した。具体的には、棒鋼(直径30mm)を、920℃で1時間保持した後、空冷した。
 最後に、各棒鋼(直径30mm)から、図1に示す円筒型試験片の中間品を切削加工により作製した。図1中の数値は、中間品の各部位の寸法(mm)及び角度を示す。
 [軸受1の作製]
 次に、円筒型試験片の各中間品(表5の製造No.201~239)に対して、浸炭焼入れ、焼き戻しを順次施し、円筒型試験片を得た。浸炭焼入れ、焼戻しの各条件(浸炭方法、浸炭処理温度、浸炭処理時間、使用ガス、ガス流量、焼入れ温度、及び焼き戻し温度)については、表5に示すとおりとした。図2に、各発明例についての、浸炭焼入れ及び焼戻しのヒートパターンを示す。なお、図2及び表5中、S1、S2は、それぞれ、浸炭期、拡散期を示すものである。
 その後、浸炭軸受に対して、仕上げ加工(切削加工)を施して、図3に示す形状の軸受1(円筒型試験片)とした。図3中の数値は、軸受の各部位の寸法(mm)及び角度を示す。この軸受1(円筒型試験片)は、円筒型の転動体を想定したものである。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000007
 <軸受1(円筒型試験片)の性能評価>
 このようにして得られた表5の製造No.201~239の軸受1(円筒型試験片)のそれぞれについて、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、耐摩耗性、表層硬さ、内部硬さ、及び表層C濃度についての評価を行った。
 [表層(表面から0.20mmまでの深さ領域)におけるMC炭化物の面積率]
 円筒型試験片を軸方向に垂直に切断し、埋め込み研磨を行い、SEM-EBSDにて、表面から0.20mmの深さの位置において倍率30000倍で前記研磨された切断面の10視野を測定し、アスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmである析出物を測定した。このように測定された析出物をMC炭化物とみなし、前記析出物の面積率(%)を画像解析ソフトによって測定した。その結果を表6の「MC炭化物面積率 (%)」に示す。
 [表層における金属組織]
 円筒型試験片を、軸方向と垂直な断面を観察できるように切り出し、前記断面を鏡面研磨後、ナイタール溶液(硝酸3gをエタノール100mlで溶解し、必要に応じて界面活性剤を加えた溶液)を用いて、5~30秒腐食し、次いで水洗し、光学顕微鏡によって観察した。その結果、表面から0.20mm深さの位置における金属組織は、いずれも焼入れ焼戻し組織(MC炭化物以外の領域は、残留オーステナイト、および焼戻しマルテンサイトからなる組織)であることを確認した。
 さらに、各視野においてEBSD解析を行い、残留オーステナイトである領域を特定し、その面積率を測定した。前記領域の観察は、倍率10000倍に設定したSEMを用い、EBSDにより行った。EBSDによって、SEM倍率を10000倍に設定して、表面から0.20mm深さの組織を、0.05mm間隔で10視野を測定し、残留オーステナイトを含むFCC構造を同定し、そこからアスペクト比が2.0以下かつ円相当径が20~200nmである領域を除外して、残留オーステナイトの面積率を求めた。残留オーステナイトの面積率は、10視野の平均値とした。残留オーステナイトの面積率を表6の「旧オーステナイト結晶粒度」に示す。
 [旧オーステナイトの結晶粒度]
 円筒型試験片を、その長尺方向と垂直な断面を観察するように切り出し、前記断面を鏡面研磨後、ピクリン酸とエタノールの混合溶液(アルコール100mlに対しピクリン酸4g)に5分浸漬させ、旧オーステナイト粒界を現出させた後、最表面を含むよう、光学顕微鏡で1000倍の写真を撮影し、JIS G 0551:2013に規定されている切断法により旧オーステナイト結晶粒度を算出した。その結果を表6に併記する。
 [耐摩耗性]
 円筒型試験片を用いて2円筒転がり摩耗試験を行った。試験において、円筒型試験片(図3に示す軸受1)とともに、直径150mm、厚み18.0mmの円板状の大型円筒試験片を準備した。なお、大型円筒試験片の素材は、JIS G4805:2008に規定された高炭素クロム軸受鋼材SUJ2に相当するものであった。そして、大型円筒試験片の円周面を前記円筒型試験片の試験部(図3に示されるφ26.0mmの円筒部分)の円周面に接触させ、摩耗試験を行った。
 摩耗試験の条件は次のとおりとした。即ち、潤滑環境下での円筒型試験片と大型円筒試験片との面圧を2.5GPaとし、円筒型試験片の回転数を1500rpmとし、滑り率を40%とし、繰り返し数を2.0×10回とした。
 摩耗試験後、円筒型試験片の試験部の摺動部分の平均摩耗深さを測定した。具体的には、円筒型試験片の円周方向に対して90°ピッチとなるよう、円筒型試験片の軸方向に平行なラインを4本、φ26部分の一方の端部から、他方の端部まで設定した。この各ラインは、一方の未摺動部分から始まり、摺動部分を通過し、他方の未摺動部分まで到達する。この各ラインにおける粗さプロファイルを測定した。この4箇所での粗さプロファイルの最大深さ(すなわち、未摺動部分を基点とした場合の、摺動部分で最も深い地点の深さ)を摩耗深さと定義し、これら4箇所の摩耗深さの平均を、平均摩耗深さ(μm)と定義した。そして、平均摩耗深さが10μm以下であれば、耐摩耗性が良好であると判断した。一方、平均摩耗深さが10μm超であれば、耐摩耗性が不良と判断した。その結果を表6に併記する。
 [表層硬さ]
 摩耗試験後の円筒型試験片の試験部の表面のうち、摺動部分以外の領域(以下、未摺動部分という)において、表層硬さを測定した。具体的には、未摺動部分を用い、軸方向に垂直な面で切断することによって観察面を形成し、JIS Z 2244:2009に準じた方法で、表面から0.05mm、0.10mm、0.15mm、0.20mm深さの硬さを、試験力2.94Nにてそれぞれ測定した。得られた4点のビッカース硬度の値の平均を、表層硬さと定義した。
 [内部硬さ]
 摩耗試験後の円筒型試験片の未摺動部分において、円周方向に対して90°ピッチで4箇所の測定位置を特定した。特定された4箇所の測定位置において、表面から深さ1.50mmの位置において、荷重1kgでビッカース硬さ試験を実施した。各測定箇所のビッカース硬さの平均を、内部硬さと定義した。その結果を表6に併記する。
 [表層C濃度]
 円筒型試験片の試験部の未摺動部分を軸方向に対して垂直に切断し、未摺動部を含む切断面を含む試験片を採取し、切断面に対して埋め込み研磨仕上げを行った。その後、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて、未摺動部分の表面から0.20mmの深さまで、5μmピッチでC濃度を測定した。測定された値の平均値を、表層C濃度(質量%)と定義した。その結果を表6に併記する。
 <軸受2(転動疲労試験片)の性能評価>
 [耐表面起点剥離性]
 上述した各棒鋼(直径60mm)のうち、円筒型試験片の中間品の作製に使用しなかった部分を用いて、直径60mm、厚さ5.5mmの円板状の粗試験片をスライスして採取した。粗試験片の厚さ(5.5mm)は、棒鋼の長手方向に相当した。
 粗試験片に対して、円筒型試験片を製造した場合と同じ条件(表5による)で、浸炭焼入れ及び焼戻しを実施して、浸炭軸受を模擬した試験片を製造した。得られた試験片の表面をラッピング加工して、転動疲労試験片とした。この軸受2(転動疲労試験片)は、挟持体を想定したものである。
 次いで、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、転動疲労試験を実施した。試験時における最大接触面圧を5.2GPaとし、繰り返し速度を1800cpm(cycle per minute)とした。試験時に使用する鋼球として、JIS G 4805:2008に規定されたSUJ2の調質材を用いた。
 転動疲労試験結果をワイブル確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「耐表面起点剥離性」と定義した。L10寿命が60.0×10以上であれば、耐表面起点剥離性に優れると判断した。一方、L10寿命が60.0×10未満であれば、耐表面起点剥離性が短いと判断した。その結果を表6に併記する。
Figure JPOXMLDOC01-appb-T000008
 表4~6から明らかなように、その製造段階で、所定の化学組成及び所定の真空浸炭焼入れ・焼戻し条件を採用した各発明例については、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、表層硬さ、及び表層C濃度のいずれについても本発明に規定される範囲内となった。また、各発明例においては、耐摩耗性および耐表面起点剥離性の両面において、優れた性能を実現されていることが判る。また、図5に示すように、発明例は、表層硬さ(HV)の増加とともに耐表面起点剥離性も向上する傾向がある。
 これに対し、その製造段階で、所定の化学組成及び所定の真空浸炭焼入れ・焼戻し条件の少なくともいずれかを採用しなかった各比較例については、表層におけるMC炭化物の面積率、表層における組織、旧オーステナイトの結晶粒度、表層硬さ、及び表層C濃度の少なくともいずれかについて、本発明の要件を充足しない。その結果、耐摩耗性または耐表面起点剥離性のいずれかの点において、優れた性能を実現することができていないことが判る。
 製造No.221においては、母材のC含有量が低く、かつ表層C濃度が不十分となったため、内部硬さが不十分となり、耐表面基点剥離性において本発明にくらべて劣位となった。製造No.222においては、母材のC含有量が過剰であったため、表層においてMC炭化物以外に粗大な炭化物が生成し、耐表面起点剥離性が低下している。製造No.223は、(V+Mo/1.4)の値が1.0未満の例であり、MC炭化物の生成が不十分であった。そのため、耐表面起点剥離性が劣位である。製造No.224は、Mn含有量が低すぎたため、表層硬さが不十分であり、浸炭部品の転動疲労特性の向上効果が得られず、耐表面起点剥離性が不十分である。製造No.225は、Mn含有量が過多であり、耐表面起点剥離性が不十分になった。製造No.226は、S含有量が過剰であったために、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.236は、V含有量が少なかったため、十分なMC炭化物を得ることができず、耐表面起点剥離性、耐摩耗性とも劣位となった。
 製造No.227~229は、Mo/Vの値、および他の化学元素の含有量が本発明の要件を満たさない例である。いずれも耐表面起点剥離性が不十分であり、製造No.227、229、236は、耐摩耗性も不十分である。
 製造No.230は、MoおよびVは個別には本発明の要件を充足するが、Mo/Vの値が本発明の規定よりも大きかった例である。Vに比してMoの割合が多かったため、MC炭化物だけではなくMC炭化物が析出し、その結果として耐表面起点剥離性が不十分となったと考えられる。すなわち、表6の上では「MC炭化物の面積率」とされている値は、実際にはMC炭化物の面積率も包含すると考えられる。
 製造No.234は、MoおよびVは個別には本発明の要件を充足するが、Mo/Vの値が本発明の規定よりも小さかった例である。Moに比してVの割合が多かったため、MC炭化物の析出が本発明ほど促進されず、MC炭化物の面積率が不十分となり、耐表面起点剥離性が不十分となったと考えられる。
 製造No.231及び233は、Cr含有量が過剰であったために、表層においてM炭化物が生成し、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.232はNを過剰に含有するため、熱間加工性が低下した例である。
 製造No.235は、Mo含有量が不十分であったために、十分なMC炭化物を得ることができず、耐表面起点剥離性が低下した。製造No.237はV含有量が過剰であるため、耐表面起点剥離性が劣位になった。
 製造No.238は、Cr含有量が過剰であるため、浸炭部品の転動疲労特性が低下している。これは、未固溶の粗大な炭化物等(M炭化物等)が鋼中に残存し、MC炭化物の生成が阻害されたことに起因する。製造No.239は、Si含有量が過剰であるため、表層に微細な粒界酸化が発生して、浸炭部品の転動疲労特性が発明例に比べて劣位になった。
 なお、ここまで開示した実施例1および実施例2においては、円筒型の転動体および挟持体を念頭に試験片を作成して評価した。しかしながら、本発明にかかる軸受は、転動体の形状を円筒形に限定しない。たとえば、転動体の形状が球形であっても、本発明にかかる鋼を素材とし、本開示の熱処理によって制作された軸受は、本発明による効果を享受することができる。
 本発明は、耐摩耗性及び耐表面起点剥離性に関して優れた軸受を得るのに適する鋼、及び当該鋼を用いた軸受を提供することができる。このため、本発明は、広範な機械部品に適用することができるため、有望である。

Claims (8)

  1.  質量%で、
     C:0.15~0.45%、
     Si:0~3.00%、
     Mn:0.20~1.50%、
     Mo:0.70~3.00%、
     V:0.40~1.00%、及び
     Al:0.005~0.100%、
    を含有し、残部がFe及び不純物であり、
     前記不純物中、P:0.015%以下、S:0.005%以下、N:0.0300%以下、及びO:0.0015%以下にそれぞれ制限され、
     式(1)及び式(2)満たす化学組成を有することを特徴とする、鋼。
      1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
      Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
     ここで、式(1)及び式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量が代入される。
  2.  質量%で、Si:0.50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼。
  3.  質量%で、Si:0.50%~3.00%であることを特徴とする、請求項1に記載の鋼。
  4.  質量%で、
     Cr:0~0.50%未満、
     Ni:0~0.50%、
     B:0~0.0050%、
     Nb:0~0.100%、
     Ti:0~0.100%、
     Cu:0~0.30%、
     W:0~0.50%、及び
     REM:0~0.020%からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の鋼。
  5.  表面から1.50mm以上の深さ領域の化学組成が、質量%で、
     C:0.15~0.45%、
     Si:0~3.00%、
     Mn:0.20~1.50%、
     Mo:0.70~3.00%、
     V:0.40~1.00%、及び
     Al:0.005~0.100%、
    を含有し、残部がFe及び不純物であり、
     前記不純物中、P:0.015%以下、S:0.005%以下、N:0.0300%以下、及びO:0.0015%以下にそれぞれ制限され、
     前記化学組成は、式(1)及び式(2)満たし、
      1.2≦Mo/V≦3.0 ・・・(1)
      Mo/1.4+V≧1.0 ・・・(2)
     表面から深さ方向に0.20mmの位置で、C含有量が質量%で0.70%~1.50%であり、且つC以外の成分の含有量は表面から1.5mm以上の深さ領域における当該成分の含有量の範囲内であり、
     表面から深さ方向に0.20mmの位置の金属組織において、
     残留オーステナイトの面積率が15%以下であり、
     アスペクト比が2.0以下であって且つ円相当径が20~200nmである析出物の面積率が3.0%以上であり、
     残部が焼戻しマルテンサイト組織であり、
     表面から0~0.20mm深さ領域である表層において、旧オーステナイト粒界の結晶粒度がJIS粒度番号で10番以上であり、ビッカース硬さが700HV以上である、ことを特徴とする軸受。
  6.  質量%で、Si:0.50%以下であることを特徴とする、請求項5に記載の軸受。
  7.  質量%で、Si:0.50%~3.00%であることを特徴とする、請求項5に記載の軸受。
  8.  表面から1.50mm以上の深さ領域について、質量%で、
     Cr:0~0.50%未満、
     Ni:0~0.50%、
     B:0~0.0050%、
     Nb:0~0.100%、
     Ti:0~0.100%、
     Cu:0~0.30%、
     W:0~0.50%、及び
     REM:0~0.020%からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項5~7のうちいずれか1項に記載の軸受。
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JP2015105419A (ja) * 2013-11-29 2015-06-08 株式会社神戸製鋼所 耐摩耗性に優れた軸受部品、およびその製造方法

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