JP2008128440A - デファレンシャルのピニオンシャフト固定構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】デフケース6の周壁部に設けられる貫通孔25にピニオンシャフト15を挿入し、デフケース6の周壁部に前記貫通孔25に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔30にピン20を挿入することによって、ピン20をピニオンシャフト15に係止させることでピニオンシャフト15をデフケース6に抜け止め固定する構造において、デファレンシャル1の組立作業性に悪影響を及ぼすことなく、ピニオンシャフト15固定用のピン20を確実に抜け止めできるようにしたうえで、ピン20のフレッチング摩耗を抑制または防止可能とする。
【解決手段】ピン挿入孔30の奥側に、ピン挿入孔30に挿入されるピン20の挿入方向前端側を受け止める受け面33が設けられており、ピン20をその挿入方向後端側から押圧部材40でもって押圧させている。
【選択図】図3
【解決手段】ピン挿入孔30の奥側に、ピン挿入孔30に挿入されるピン20の挿入方向前端側を受け止める受け面33が設けられており、ピン20をその挿入方向後端側から押圧部材40でもって押圧させている。
【選択図】図3
Description
本発明は、例えば自動車等の車両に搭載されるデファレンシャルに係り、詳しくはデファレンシャルにおいてデフケースにピニオンシャフトを固定するための構造の改良に関する。
一般的に、デファレンシャルのデフケースに、ピニオンギアを回転自在に支持するためのピニオンシャフトを固定する必要がある。従来では、デフケースの周壁部に設けられる貫通孔にピニオンシャフトを挿入させておいて、前記周壁部において前記貫通孔に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔にピンを挿入することにより、当該ピンをピニオンシャフトに係止させて、ピニオンシャフトをデフケースに固定するようにしている(例えば特許文献1,2参照。)。
このピニオンシャフトの固定状態を維持するために、ピンについても脱落しないように抜け止めする必要がある。以下で、前記ピンの抜け止め構造の従来例を説明する。
まず、特許文献1では、デフケースにおいてピニオンシャフト挿入用の貫通孔に対して直交する方向に設けられる有底の穴に、その奥までピンを挿入させておいて、このピンの挿入方向後端を、デフケースに取り付けられるキャップのフランジで押さえるようにして、ピンを抜け止めするようになっている。
また、特許文献2では、デフケースにおいてピニオンシャフト挿入用の貫通孔に対して直交する方向に設けられる貫通孔に、ピンを挿入させておいて、このピン挿入用の貫通孔においてピン挿入口をデフケースに取り付けられるリングギアで塞ぐようにして、前記ピン挿入用の貫通孔においてピン挿入口と反対側の開口を加締めて潰すことにより、ピンを抜け止めするようになっている。
特開平9−26014号公報
特開平10−213209号公報
上記特許文献1の従来例では、ツーピース構造のデフケースにおけるキャップに、ピン押さえのためのフランジを設ける必要があって、構造が複雑である等、低コストを図る上で不利な構造であると言える。しかも、各部の寸法精度を高精度に管理しなければ、ピンががたついてフレッチング摩耗が発生しやすくなるおそれがある。この点も高コスト化につながることが懸念される。
また、上記特許文献2の従来例では、ピン挿入用の貫通孔の一方開口をリングギアで塞ぐようにリングギアの形状を特定する必要がある他、前記貫通孔の他方開口を加締めて潰す作業に手間がかかるうえ、加締めの具合をチューニングする必要があって、デファレンシャルを組み立てる際の作業効率が悪くなる等、低コストを図る上で不利な構造であると言える。しかも、この従来例の場合も、加締めの具合によって、ピンががたついてフレッチング摩耗が発生しやすくなることが懸念される。
本発明は、デファレンシャルのピニオンシャフト固定構造において、デファレンシャルの組立作業性に悪影響を及ぼすことなく、ピニオンシャフト固定用のピンを確実に抜け止めできるようにしたうえで、ピンのフレッチング摩耗を抑制または防止できるようにすることを目的としている。
本発明は、デフケースの周壁部に設けられる貫通孔にピニオンシャフトを挿入し、前記デフケースの周壁部に前記ピニオンシャフト挿入用の貫通孔に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔にピンを挿入することによって、当該ピンを前記ピニオンシャフトに係止させることで当該ピニオンシャフトをデフケースに抜け止め固定する構造であって、前記ピン挿入孔の奥側に、前記ピン挿入孔に挿入されるピンの挿入方向前端側を受け止める受け面が設けられており、前記ピンをその挿入方向後端側から押圧部材でもって押圧させている、ことを特徴としている。
なお、ピニオンシャフトとは、当業者間において公知のように、ピニオンギアをデフケースに回転自在に支持するもののことである。
この構成では、ピン挿入孔に挿入されたピンを、ピン挿入孔の奥側の受け面で位置決めさせておいて、このピンをその後側から押圧部材で押圧させることで、挟むような定圧予圧形態にしている。
これにより、ピンのがたを無くすことが可能になるから、ピンのフレッチング摩耗の発生が抑制または防止されることになる。
しかも、ピンをピン挿入孔に挿入した後で、押圧部材を組み付けるだけであるから、作業が従来例のような加締め作業に比べてはるかに簡単になり、また、従来例のようにツーピース構造のデフケースのキャップにわざわざフランジを設けるといった無駄がなくなる。
好ましくは、前記ピン挿入孔は、前記デフケースにボルト留めされるリングギアの配置側からピンが挿入されるように設けられる。このピン挿入孔における反リングギア側には、ピン挿入領域よりも小径の領域が設けられていて、これら両領域の境に存在する段壁面が、前記受け面とされる。さらに、前記押圧部材は、前記リングギアを前記デフケースに固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通部を有するボディに、前記ピンの挿入方向後端面に当接されるアームを設けた形状の板ばねとされる。
このように、ピン挿入孔に対するピンの挿入方向を特定するとともに、押圧部材の設置形態を特定すれば、ピニオンシャフトの抜け止めするための作業を簡単かつ素早く行えるようになることが明確になる。
また、本発明は、デフケースの周壁部の180度対向位置に、前記デフケースの内部空間にピニオンシャフトを貫通するように前記ピニオンシャフトの一端および他端を挿入するための貫通孔が設けられ、また、前記デフケースの周壁部に、前記一方の貫通孔に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔が設けられ、このピン挿入孔にピンを挿入することによって当該ピンを前記ピニオンシャフトに係止させることで当該ピニオンシャフトをデフケースに抜け止め固定する構造であって、前記ピン挿入孔は、前記デフケースにボルト留めされるリングギアの配置側からピンが挿入されるように設けられていて、このピン挿入孔の反リングギア側に前記ピンの挿入方向前端を受け止める受け面が設けられており、前記リングギアを前記デフケースに固定するためのボルトに、前記ピン挿入孔に挿入されるピンを前記受け面へ押し付ける押圧部材が取り付けられている、ことを特徴としている。
このように、本発明の適用対象となるデファレンシャルの前提構成の一例を明確にしたうえで、ピニオンシャフトを抜け止め固定する形態と、ピンを抜け止めする形態とを特定することができる。
本発明によれば、デファレンシャルの組立作業性に悪影響を及ぼすことなく、ピニオンシャフト固定用のピンを確実に抜け止めできるようにしたうえで、ピンのフレッチング摩耗を抑制または防止することが可能となる。したがって、比較的低コストで長期にわたって信頼性の高いデファレンシャルを提供するうえで有利となる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図1から図12に示して詳細に説明する。
まず、図1から図7に本発明の一実施形態を示している。ここで、本発明の特徴を適用した部分の説明に先立ち、本発明の適用対象となるデファレンシャルの概略構成について、図1および図2を参照して説明する。
図1は、本発明に係るデファレンシャルのピニオンシャフト固定構造の一実施形態を示す横断面図、図2は、図1の(2)−(2)線断面の矢視図である。図中、1はデファレンシャル、2,3はドライブシャフトである。
この実施形態でのデファレンシャル1は、例えばフロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式の自動車等に用いられるタイプであり、図示していない変速機構から出力される回転動力を、左右一対のドライブシャフト2,3を介して左右の駆動輪に伝達するものである。
そして、デファレンシャル1は、一般的に公知のツーピニオンタイプとされており、主として、デフケース6、リングギア7、二つ一対のピニオンギア8,9、二つ一対のサイドギア10,11等を含む構成である。
デフケース6は、変速機ハウジング12の左右二つの貫通孔12a,12bにそれぞれ転がり軸受14・・・を介して相対回転可能に支持されている。
このデフケース6は、中空の箱形状であり、その周壁部分において対向する2箇所にボス部6a,6bが突設されており、これら各ボス部6a,6bの外周面と、変速機ハウジング12の貫通孔12a,12bの内周面との間に転がり軸受14・・・が介装されている。
なお、デフケース6の周壁部において180度対向する二ヶ所には、図2に示すように、内部空間にピニオンギア8,9やサイドギア10,11等を収納するために比較的大きな開口窓6c,6cが設けられている。
リングギア7は、デフケース6の径方向外向きフランジ6dにボルト16により一体に取り付けられており、変速機構の出力ギア5に噛合されている。
一対のピニオンギア8,9は、デフケース6の内部空間に配置され、デフケース6に取り付けられるピニオンシャフト15に回転自在に支持されている。
このピニオンシャフト15のデフケース6に対する取り付け構造については、後で詳細に説明する。
一対のサイドギア10,11は、中空軸部10a,11aの軸方向一端にかさ歯車を設けた構成である。この一対のサイドギア10,11は、そのかさ歯車が一対のピニオンギア8,9に噛合されている。この中空軸部10a,11aの軸方向外端側は、デフケース6のボス部6a,6bの内径側に微小隙間を介して回転可能に挿入されている。
一対のサイドギア10,11の中空軸部10a,11a内に、一対のドライブシャフト2,3の内端部分がスプライン嵌合されるようになっている。
なお、変速機ハウジング12の貫通孔12a,12bの内周面には、アウターシール18,18が装着されることによって、貫通孔12a,12bとドライブシャフト2,3との環状対向空間が軸方向内外で仕切られている。このアウターシール18,18は、例えばスリンガーとリップ付シールリングとを組み合わせたようなもの等、なんでもよく、変速機ハウジング12内に貯留される潤滑油が外部へ漏洩することを防止するものである。
このような構成のデファレンシャル1の動作については基本的に公知のとおりであるので、ここでは簡単に説明する。
まず、車両が直進している場合には、リングギア7に回転動力が入力されると、リングギア7と一体に固定されるデフケース6が回転し、このデフケース6と一体的に一対のピニオンギア8,9が公転することにより、一対のサイドギア10,11および一対のドライブシャフト2,3が回転駆動されるので、左右の駆動輪が同一回転数で駆動される。
一方、車両のカーブ走行等によって、左右の後輪間に回転抵抗差が生じたときに、一対のピニオンギア8,9が自転することになって、両サイドギア10,11が差動回転することになるので、リングギア7に入力される回転動力が左右のドライブシャフト2,3を介して左右の駆動輪に差動分配されるようになる。
ここで、本発明の特徴を適用している部分について、図1から図7を参照して詳細に説明する。
本発明では、要するに、ピニオンシャフト15をデフケース6に固定するためのピン20を抜け止めする構造について、従来例に比べて簡単かつ迅速な作業で組み付けられるようにしたうえで、ピン20のフレッチング摩耗を抑制または防止できるように工夫している。
図3は、図1の一部を拡大して示す図、図4は、図3の(4)−(4)線断面の矢視図、図5は、図1のピニオンシャフトとピンと弾性部材とを分離して示す斜視図、図6および図7は、ピニオンシャフトを固定する際の手順を説明する説明図である。
具体的に、例えば図1から図5に示すように、デフケース6の周壁部の180度対向位置には、デフケース6の内部空間にピニオンシャフト15を貫通配置させるようにピニオンシャフト15の一端および他端を挿入するための貫通孔25が設けられている。
ピニオンシャフト15の軸方向一端側には、径方向に貫通する孔15aが設けられている。この径方向貫通孔15aは、ピニオンシャフト15を軸方向に位置決めするためのピン20の係止部分とされるものである。
また、デフケース6の周壁部において一方の貫通孔25が配置される側には、ピン20が挿入されるピン挿入孔30が前記貫通孔25に対して直交する方向に沿って貫通形成される貫通孔とされている。このピン挿入孔30は、貫通孔25の径方向から中心を通るように形成されている。
ところで、ピン挿入孔30は、ピニオンシャフト15をデフケース6の一方の貫通孔25に挿入した状態で、ピニオンシャフト15の径方向貫通孔15aと合致するような位置関係に配置されており、このピン挿入孔30にピン20を挿入すると、このピン20の胴部が前記貫通孔25内の中心を横切るようになる。
この貫通孔からなるピン挿入孔30は、ピン20が挿入される大径領域31と、この大径領域31よりも小径の小径領域32とを含む大小二段の異径孔形状になっている。このピン挿入孔30における大径領域31は、デフケース6のリングギア7側に位置しており、この大径領域31の開口が、ピン20の挿入口とされている。
このピン挿入孔30において大径領域31と小径領域32との境には、段壁面33が存在しており、この段壁面33が、ピン挿入孔30にピン20を挿入したときにピン20の挿入方向前端面を受け止める受け面となっている。
ピン20は、軸方向全長にわたって均一な太さの中実軸とされている。このピン20の直径寸法は、ピン挿入孔30の大径領域31の内径寸法に対して同一か、あるいは若干小さい程度に設定されることによって、ジャストフィットまたはルーズフィットとされるようになっている。さらに、ピン20の直径寸法は、ピニオンシャフト15の径方向貫通孔15aの内径寸法に対して同一か、あるいは若干小さい程度に設定されることによって、ジャストフィットまたはルーズフィットとされるようになっている。
そして、ピン20の挿入方向後端には、ピン20をピン挿入孔30の奥へ向けて押圧する弾性力を付与するための押圧部材40が設けられている。
この押圧部材40は、例えば図5に示すように、適宜のばね鋼等の帯状板を略L字形に丸めたような板ばねとされており、リングギア7をデフケース6に固定するためのボルト16が挿通されるボルト挿通部41aを有するボディ41に、ピン20の挿入方向後端面に当接されるアーム42を設けた形状とされている。
ボディ41のボルト挿通部41aは、この実施形態ではU字形の切り欠きとされており、ボルト16を仮留めした状態でもボルト16のねじ軸部に係止できるようになっている。なお、このボルト挿通部41aは、貫通孔であってもよい。
アーム42は、先細り形状になっていて、その先端には、ピン20の端面に対して面で当接するように90度屈曲された当接片43が設けられている。
このような板ばねからなる押圧部材40は、自然状態から、アーム42をボディ41に対して遠ざけるように撓ませることにより、その弾性復元力によって弾性力を発生する。なお、押圧部材40としての板ばねが発揮する弾性力は、ボディ41とアーム42との連接部分における湾曲形状を変更することによって任意に調整することが可能である。
なお、この実施形態では、図3および図4に示すように、ピン20を、ピン挿入孔30におけるリングギア側開口よりも内に入り込む状態でピン挿入孔30に挿入するようになっている。このことを考慮し、押圧部材40の当接片43は、図5に示すように、ピン挿入孔30内に挿入しやすくするとともに、ピン挿入孔30におけるリングギア側開口よりも内に入り込ませているピン20の挿入方向後退面に面で当接させることが可能な形状とされている。このように、ピン挿入孔30の中に押圧部材40の当接片43を入れるようにしていれば、当接片43がピン20から離れにくくなり、好ましい。
次に、上述したデファレンシャル1のデフケース6にピニオンシャフト15を組み付ける手順や、様子について、図6および図7を参照して説明する。
まず、デフケース6に、リングギア7、ピニオンギア8,9、サイドギア10,11を組み込むとともに、デフケース6の一方の貫通孔25側からピニオンシャフト15を挿入しつつ、このピニオンシャフト15をピニオンギア8,9の中心孔に通し、ピニオンシャフト15の他端をデフケース6の他方の貫通孔25に挿入する。
このとき、図4および図6に示すように、ピニオンシャフト15の径方向貫通孔15aをピン挿入孔30に対し、一直線に連なるように配置する。
なお、ピニオンシャフト15は、デフケース6の貫通孔25に対し、ルーズフィットまたはジャストフィット状態で挿入されるので、その挿入作業が圧入とする場合に比べて簡単に行えるとともに、ピン挿入孔30に対する径方向貫通孔15aの位置合わせを比較的簡単に行える。
この後、ピン挿入孔30に、デフケース6にボルト16留めされるリングギア7の配置側からピン20を挿入することによって、ピン20をピニオンシャフト15の径方向貫通孔15aに挿通させる。
なお、ピン20は、デフケース6のピン挿入孔30に対し、ルーズフィットまたはジャストフィット状態で挿入されるので、その挿入作業が圧入とする場合に比べて簡単に行える。これにより、ピニオンシャフト15がデフケース6の一方の貫通孔25に回転不可能な状態で軸方向に抜け止め固定されることになる。
ところで、ピン挿入孔30にピン20を挿入するとき、ピン挿入孔30の段壁面33にピン20の挿入方向前端面を当接させるまで押し込んでおく。
その状態で、図7に示すように、リングギア7をデフケース6に固定するためのボルト16に、押圧部材40を取り付け、この押圧部材40のアーム42における当接片43をピン20の挿入方向後退面に当接させる。
ここで、押圧部材40の取り付け状態としては、ボルト16を完全に締め込んだときに、アーム42が突っ張った状態になって、このアーム42とボディ41との連接部分である湾曲形状部が弾性変形されるようにセッティングされている。
このようなセッティングであれば、前記弾性変形部分の弾性復元力でもって、ピン20をピン挿入孔30における奥に押圧することになって、ピン20の挿入方向前端を段壁面33に押し付けるようになる。
ところで、上記組立作業について、デフケース6にリングギア7を仮固定、つまりボルト16を半締めした状態にしておいてから、ピン20を挿入し、ボルト16とリングギア7とのすきまに押圧部材40のボディ41を差し込むようにして、ボルト16を本締めするようにしてもよい。
以上説明したように、本発明を適用した実施形態では、デフケース6の貫通孔25にピニオンシャフト15をルーズフィットまたはジャストフィット状態で嵌入しておいて、ピン20をピン挿入孔30とピニオンシャフト15の径方向貫通孔15aとに跨ってルーズフィットまたはジャストフィット状態で挿入したうえで、押圧部材40による弾性押圧力をピン20に付与することにより、ピン20を段壁面33と押圧部材40とで挟むような定圧予圧形態として、ピニオンシャフト15をデフケース6に対して軸方向不動に位置決め固定するとともに、ピン20を抜け止めするようにしている。
このように、ピン20に定圧予圧を付与している形態にしているので、各部品の寸法精度を高精度に管理しなくとも、ピン20が振動等によってがたつくことを抑制または防止できるようになって、ピン20のフレッチング摩耗を抑制または防止することが可能になる。
また、この実施形態では、貫通孔25に対するピニオンシャフト15の嵌め合い状態と、ピン挿入孔30に対するピン20の嵌め合い状態とを、ルーズフィットまたはジャストフィット状態に設定しているので、ピニオンシャフト15やピン20の挿入作業が例えば手作業等で簡単かつ迅速に行えるようになる。
これらのことから、デファレンシャル1のピニオンシャフト15とデフケース6との固定構造ならびにピン20の抜け止め構造を、確実かつ安価に提供することが可能になる。
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。以下、本発明の他の実施形態を例に挙げる。
(1)上記実施形態では、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)方式の車両に搭載されるフロント側のデファレンシャルを例に挙げているが、フロントエンジン・リアドライブ(FR)方式の車両に搭載されるリア側のデファレンシャルや、四輪駆動方式の車両におけるフロント側のデファレンシャルおよびリア側のデファレンシャルにも、本発明を適用することが可能である。
(2)上記実施形態では、デファレンシャル1をツーピニオンタイプとした例を挙げているが、フォーピニオンタイプのデファレンシャルや、その他の形式のデファレンシャルであっても、本発明を適用することが可能である。
図示していないが、例えばフォーピニオンタイプのデファレンシャルの場合、一般的に、二つのピニオンギアを上記実施形態と同様に1本の長尺のピニオンシャフトで支持させているが、残り二つのピニオンギアをそれぞれ短尺のピニオンシャフトで支持させるようにしている。その関係より、各ピニオンシャフトの抜け止めに、それぞれピニオンシャフトと同数のピン20を用いるので、それらの各ピン20の抜け止め構造について、上述した実施形態と同様とすることができる。
(3)上記実施形態では、ワンピース構造のデフケース6を例に挙げているが、ツーピース構造であってもよい。
このツーピース構造のデフケースは、図示していないが、例えば有底円筒形のボディと、このボディの開口に取り付けられるキャップとを組み合わせて構成されるものであり、前記キャップに、リングギア7がボルト16で固定されるようになる。この場合も、ピニオンシャフト15のデフケース6に対する固定構造やピン20の抜け止め構造も上記実施形態と同様にすることができる。
(4)上記実施形態で説明したピン20の数や配置については、特に限定されるものではなく、図示していないが、例えばピニオンシャフト15の両端にそれぞれ設けるようにすることも可能である。また、ピン挿入孔30についても、有底の穴であってもよい。その場合、底部分が受け面となるので、この底部分を反リングギア7側に配置すればよい。さらに、上記実施形態で説明した押圧部材40についても、特に限定されるものではなく、簡易に設置できて、所定の押圧力を確保できるものであれば何でもよい。
(5)図8から図12に本発明の他実施形態を示している。この実施形態では、ピニオンシャフト15に対するピン20の係止形態が上記実施形態と異なる。ここでは、上記実施形態との相違点のみを説明し、上記実施形態と同一の部分についての説明は割愛する。
具体的に、ピニオンシャフト15の軸方向一端側には、径方向貫通孔15aの代わりに、円周方向に連続する周溝15bが設けられている。
この周溝15aは、ピニオンシャフト15を軸方向に位置決めするためのピン20の係止部分とされるものである。
そして、ピニオンシャフト15の周溝15bは、ピニオンシャフト15をデフケース6の一方の貫通孔25に挿入した状態で、ピン挿入孔30と合致するような位置に設けられている。しかも、このピン挿入孔30は、デフケース15における一方の貫通孔25の外径側の略接線に沿う方向に延びるように設けられている。
これにより、図9に示すように、ピン挿入孔30にピン20を挿入すると、このピン20の軸方向中間領域がピニオンシャフト15の周溝15bに係入するようになって、このピン20がピニオンシャフト15を軸方向に位置決めするようになる。但し、この例では、ピニオンシャフト15の回転が許容されるようになっている。
この場合、デフケース6の貫通孔25にピニオンシャフト15をどの角度で挿入しても、その周溝15bにピン20を係止させることが可能になるから、デフケース6の貫通孔25にピニオンシャフト15を挿入する作業が簡単になる。
1 デファレンシャル
2,3 ドライブシャフト
6 デフケース
7 リングギア
8,9 ピニオンギア
10,11 サイドギア
20 ピン
25 デフケースのピニオンシャフト挿入用の貫通孔
30 デフケースのピン挿入孔
31 ピン挿入孔の大径領域
32 ピン挿入孔の小径領域
33 ピン挿入孔の段壁面(受け面)
40 押圧部材
2,3 ドライブシャフト
6 デフケース
7 リングギア
8,9 ピニオンギア
10,11 サイドギア
20 ピン
25 デフケースのピニオンシャフト挿入用の貫通孔
30 デフケースのピン挿入孔
31 ピン挿入孔の大径領域
32 ピン挿入孔の小径領域
33 ピン挿入孔の段壁面(受け面)
40 押圧部材
Claims (3)
- デフケースの周壁部に設けられる貫通孔にピニオンシャフトを挿入し、前記デフケースの周壁部に前記ピニオンシャフト挿入用の貫通孔に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔にピンを挿入することによって、当該ピンを前記ピニオンシャフトに係止させることで当該ピニオンシャフトをデフケースに抜け止め固定する構造であって、
前記ピン挿入孔の奥側に、前記ピン挿入孔に挿入されるピンの挿入方向前端側を受け止める受け面が設けられており、前記ピンをその挿入方向後端側から押圧部材でもって押圧させている、ことを特徴とするデファレンシャルのピニオンシャフト固定構造。 - 請求項1に記載のデファレンシャルのピニオンシャフト固定構造において、
前記ピン挿入孔は、前記デフケースにボルト留めされるリングギアの配置側からピンが挿入されるように設けられており、
このピン挿入孔における反リングギア側には、ピン挿入領域よりも小径の領域が設けられていて、これら両領域の境に存在する段壁面が、前記受け面とされており、
さらに、前記押圧部材は、前記リングギアを前記デフケースに固定するためのボルトが挿通されるボルト挿通部を有するボディに、前記ピンの挿入方向後端面に当接されるアームを設けた形状の板ばねとされる、ことを特徴とするデファレンシャルのピニオンシャフト固定構造。 - デフケースの周壁部の180度対向位置に、前記デフケースの内部空間にピニオンシャフトを貫通するように前記ピニオンシャフトの一端および他端を挿入するための貫通孔が設けられ、また、前記デフケースの周壁部に、前記一方の貫通孔に対して直交する方向に穿設されるピン挿入孔が設けられ、このピン挿入孔にピンを挿入することによって当該ピンを前記ピニオンシャフトに係止させることで当該ピニオンシャフトをデフケースに抜け止め固定する構造であって、
前記ピン挿入孔は、前記デフケースにボルト留めされるリングギアの配置側からピンが挿入されるように設けられていて、このピン挿入孔の反リングギア側に前記ピンの挿入方向前端を受け止める受け面が設けられており、
前記リングギアを前記デフケースに固定するためのボルトに、前記ピン挿入孔に挿入されるピンを前記受け面へ押し付ける押圧部材が取り付けられている、ことを特徴とするデファレンシャルのピニオンシャフト固定構造。
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JP2006317011A Pending JP2008128440A (ja) | 2006-11-24 | 2006-11-24 | デファレンシャルのピニオンシャフト固定構造 |
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JP (1) | JP2008128440A (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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- 2006-11-24 JP JP2006317011A patent/JP2008128440A/ja active Pending
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