JP2008114447A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】記録後にインクが十分に定着する前に、他のものが記録面と接触して記録画像が乱れるのを防止し、不必要な定着時間を設けることなく各記録媒体や記録品位に適した定着時間を設定できるインクジェット記録装置を提供すること。
【解決手段】試験することによって定めた最適な定着時間をもとに、各記録品位および各記録媒体の種類に応じてエリア判定閾値k、判定閾値αおよび定着時間Sを設定した。そして、記録後に記録後定着時間Sが経過した後に後処理を行う。
【選択図】図7

Description

本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関するものであり、さらに詳しくは、記録媒体の種類および記録画像に応じて、記録終了時に設定されるインクを定着させるための定着時間を切り替える手段を有した記録装置に関する。
近年、インターネットの普及に伴いプリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置がオフィスや一般家庭で、コンピュータ等の電子機器やワークステーション等と接続されて広く用いられている。この様な記録装置の記録方法としては、電子写真方式、インクジェット方式、サーマル方式等が一般的に普及している。中でもインクジェット記録方式は、紙やOHPシートだけでなく、布やダンボール、陶器、金属等さまざまな記録媒体への記録が可能であり、更には、記録面が平坦な記録媒体だけでなく凹凸のあるものや、曲面部、エッジ部にも記録が可能である。このように多くの記録媒体に記録が可能であることから、インクジェット方式の記録装置は、一般家庭だけでなく業務用として広く活用されている。さらにインクジェット記録装置は、デジタル信号を受け取ることで安価に高画質のカラー画像記録ができることも、広く用いられている原因の1つに挙げられる。
しかし、インクジェット記録装置で記録した記録結果と、従来の銀塩写真とを比較した場合、課題として残っているのは、インクジェット方式による記録は大半が水溶性の液体のインクを用いて記録を行うためインクを定着させる定着時間が必要なことである。この定着時間が不十分である場合、記録媒体上の定着していないインクが他の物と触れると、触れた部分の記録画像は乱れてしまい、その結果、記録物は市場の要求を満たさない品質になることが考えられる。
そこで、記録が終了した後にインク定着のための定着時間を設けて、インクを定着させてから記録媒体を記録装置から排出する方法が提案されている。その1つが、特許文献1に記載されている、記録開始前、記録中、排紙動作前にインク定着のための時間を設ける記録方法である。この方法では、記録が終了した先の記録媒体が排紙トレイに載せられてから、次の記録媒体への記録が終了して、その記録媒体が先の記録媒体の記録画面上に載せられるまでの時間を設定して、先の記録媒体上の記録画像の乱れを防止する方法が記載されている。また、特許文献2には、吐出されたインクによる記録媒体の変形を防止するために、記録中にインクの定着時間を設ける方法が記載されている。
また非特許文献1には、画像が記録されてからカットされるロール状の記録媒体上のインクとバスケットとの接触による記録画像の乱れを防止するために、カットされた記録媒体がバスケット内に落下するまでの時間を設定する方法が記載されている。つまり、画像が記録された直後の記録媒体とバスケットとの接触による記録直後の乱れを防止するために、その記録直後の記録媒体がバスケット内に落下するまでの時間が設定される。その時間は、インク定着時間または、定着時間としてユーザによって選択的に設定される。
一般的に記録媒体としてロール紙を使用可能な記録装置は、切断機構を備えており、さらに、切断後の記録物を回収するバスケットを備えている。
特開平7−205416号公報 特開2004−237506号公報 「Canon image PROGRAF W6400 User Manuals Ver1.00」キャノン株式会社、2005年、P.7−4
しかし、特許文献1の方法では、先に記録された記録媒体と、その次に記録された記録媒体とが重なり合うことで発生する、いわゆる排紙スミアーを防止するものである。つまり、記録画像の乱れを防止すべき対象の記録媒体は、先に記録された記録媒体であり、記録直後の記録媒体ではない。そのため、画像の記録直後の記録媒体がバスケット内に落下する時に生じるおそれのある記録画像の乱れは防止できない。
また、特許文献2の方法は、記録動作中の記録媒体を変形するものであり、特許文献1の方法と同様に、画像の記録直後における記録媒体の記録画像の乱れは防止できない。
また、非特許文献1の方法では、記録直後の記録媒体における記録画像の乱れは防止できるものの、設定された定着時間は記録媒体毎に固定であり、不必要な定着時間を伴った記録になってしまうおそれがある。また定着時間をユーザが選択しても、個々の記録画像データには対応できない。そのため、記録媒体毎に固定されたもの程ではないが、やはり不必要な定着時間を伴った記録になってしまいスループットを低下させる原因となるおそれがある。
以下においては、記録直後のロール状の記録媒体をカットしてバスケット内に落下させるような記録媒体の処理、つまり、記録直後の記録媒体の記録画像に乱れを生じさせるおそれのある記録媒体の処理を「記録後の記録媒体の後処理」ともいう。
よって本発明は、不必要な定着時間を設けることなく、記録直後の記録媒体の後処理中に生じるおそれのある記録画像の乱れを防止することができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
そのため本発明のインクジェット記録装置は、記録データに基づいてインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行い、後処理部によって記録直後の前記記録媒体に対して、その記録面に擦過が生じる可能性のある後処理を行うインクジェット記録装置において、前記記録媒体の種類と記録データに対応する記録後定着時間に基づいて、当該記録後定着時間が長くなるほど、前記後処理部による前記後処理の開始時期を遅延させる制御手段を備えることを特徴とする。
また、本発明のインクジェット記録方法は、記録データに基づいてインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行い、後処理部によって記録直後の前記記録媒体に対して、その記録面に擦過が生じる可能性のある後処理を行うインクジェット記録方法において、前記記録媒体の種類と記録データに対応する記録後定着時間に基づいて、当該記録後定着時間が長くなるほど、前記後処理部による前記後処理の開始時期を遅延させることを特徴とする。
本発明によれば、記録媒体の種類と記録データに対応する記録後定着時間に基づいて、記録後定着時間が長くなるほど、後処理部による後処理の開始時期を遅延させることで、記録後の後処理によって記録面に乱れが生じない記録装置を実現することができる。
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を詳細に説明する。
本実施形態では、記録直後の記録媒体の記録画像に乱れを生じる可能性のある後処理(記録直後の記録媒体の後処理)は、ロール状の記録媒体を記録直後に切断して、その記録直後の記録媒体をバスケット内に落下させる処理を後処理として説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかるインクジェット記録装置(以下、単に記録装置とも言う)を示す側面図である。本実施形態の記録装置は、比較的大判の記録媒体に記録を行うものであり、不図示の紙搬送系ユニットを含む記録装置の本体2と、ガイド軸33に沿って主走査方向(矢印X方向)に摺動可能に取り付けられたキャリッジ1と、を備えている。そのキャリッジ1には記録媒体の幅寸法を検知する光学式センサ32が備えられており、さらにキャリッジ1には記録ヘッド5が搭載可能である。そして、記録ヘッド5が備えている吐出口の吐出状態を最適の状態に維持するため、装置本体2には、不図示のポンプが吸引動作を行い負圧が生じることで吐出口内の増粘インク等を除去する回復機構30がキャリッジのホームポジション位置に備えられている。記録ヘッド5は、キャリッジ1上に備えられており、キャリッジ1は、ベルト34を介して不図示のキャリッジモータから伝達される駆動力によってホームポジションとバックポジションの間で往復移動ができるように構成されている。また、装置本体2には、縁無し記録を行う際に記録媒体Pの外にはみ出して吐出されたインクを受容するインク受容箱31A、31Bが備えられている。
このように構成されたインクジェット記録装置において、記録媒体Pは不図示の紙搬送ユニットから副走査方向(図1中紙面の表裏方向)に搬送される。記録ヘッド5は、不図示の記録制御部から記録信号を受け取り、キャリッジ1と共に主走査方向(矢印X方向)に移動しつつ、記録媒体Pの記録領域に向かってインクを吐出する。このような記録動作と、所定量だけ記録媒体Pを副走査方向に搬送する搬送動作と、を交互に繰り返すことで記録を行う。
なお使用するインクは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の他に、さらに記録画像の粒状感の低減を目的として、淡シアン(lc)、淡マゼンタ(lm)の計6色のインクを採用した。
記録ヘッド5には、各インク色に対応するノズル列が形成されている。本実施形態の場合、各インク色に対応するノズル列には、副走査方向に1200dpiの密度で1280個の吐出口が配列されている。各吐出口はインク液路に連通しており、そのインク液路内には、インクを局所的に加熱して膜沸騰を起こさせ、その発泡エネルギでインクを吐出させる電気熱変換体が設けられている。
また、本実施形態の記録装置は、記録媒体Pの左右側縁部では、記録媒体Pの外の部分にまでインクを吐出することで縁無し記録を実現する。そのため、記録媒体Pから外れたプラテン4上にもインクを吐出することになる。プラテン4上に吐出したインクによってプラテン4が汚れることを防ぐため、プラテン4上において、各幅寸法の記録媒体Pの外側に位置する部分に切り欠き部を形成し、それらの切り欠き部の下方にインク受容層31A、31Bを設けている。こうすることで各幅寸法の記録媒体Pに記録する際に記録媒体Pからはみ出してインクを吐出してもプラテンを汚すことがなく、記録媒体Pからはみ出した部分に吐出されたインクは、インク受容層に受容されることになる。また、プラテン4は、カールやコックリングによる記録媒体Pの浮きを防止するため吸引圧をかけられる構成になっている。
また、本実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体Pにロール紙を用いることが可能であり、記録終了時に記録媒体Pをカットするための切断機構(不図示)を備え、さらに、カット後の記録媒体Pを受けるバスケット(不図示)を備えている。
図2は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御回路の概略ブロック構成図である。主制御部300は、演算、制御、などの処理動作を実行するCPU301と、CPU301によって実行すべき制御プログラム等を格納するROM302と、記録データのバッファ等として用いられるRAM303、および入出力ポート304等を備えている。そして、入出力ポート304には、搬送モータ(LFモータ)312、キャリッジモータ(CRモータ)313、記録ヘッド5などの各駆動回路305,306,307が接続されている。さらに入出力ポート304には、記録ヘッドの温度を検出するヘッド温度センサ314、およびキャリッジ1が、その回復動作を行うホームポジションの位置に有ることを検出するホームポジションセンサ310などのセンサ類が接続されている。さらに、主制御部300はインターフェース回路311を介してホストコンピュータ315に接続されている。
本実施形態のインクジェット記録装置は、記録媒体の種類および記録方法に応じた閾値kを設定し、この閾値kによって各記録媒体および記録方法に応じた最適の定着時間を求める。そして、その定着時間経過後に後処理をすることで、スループットの低下を防止し、排紙におけるバスケットへの記録媒体の落下時に画像が劣化するのを防止するものである。
ここで、閾値kを決定した経緯について説明する。
先ず、記録媒体の記録が終了した部分をカットしたときに、その記録直後の記録媒体はバスケットへ落下する。記録媒体がバスケット内に落下するまでに、その記録媒体上のインクを定着させる必要があることから、インクの定着性の観点から記録後のインク定着時間を算定するための閾値kを求めるべく試験を行った。試験はインクが定着しづらい高温多湿の環境である、気温30℃、湿度80%の環境で行った。また、記録媒体は、排出後に迅速に試験を行うことができるようにカット紙もしくは部分的にカット処理を施した記録媒体を用いて試験を行った。
図3は、試験に用いたパッチを表わした図である。記録するパッチの色は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、淡シアン(lc)、淡マゼンタ(lm)の各単色および、その他の記録頻度の高い色である。図3のようなパッチは、記録パス数などが異なる記録方式によって、異なる種類の記録媒体のそれぞれに記録される。またそれらのパッチはそれぞれの記録方式において総インク使用量の100%のインクの打ち込みによって記録、いわゆるベタ画像として記録される。
試験は、記録後に0、5、10、15、20、30、60の各秒数が経過した後に、シルボン紙5枚を重ねた上に重さ200gの錘を乗せたもので、記録部をホームポジション側からバックポジション側(図中の矢印Z方向)に向けて1度擦ることで行う。そして、試験終了後のもののパッチ部を観察して画像が擦れて延びた、いわゆる尾引きの状態を評価する。例えば、図3のパッチ全てを1つの記録方式によって1つの記録媒体に記録し、上記各秒数後に、対応する秒数部分のパッチ(図3中の0sec,5sec・・・に対応する部分のパッチ)を上記の方法で部分的に擦って観察することができる。
試験における評価基準として、以下のような基準で評価を行った。なお、ここでは尾引きのような、画像に乱れが見られるものを画像欠陥と称する。
○:画像欠陥の目立たない良好な画質(市場要求を満たす)
○から△:極わずかに画像欠陥が確認される(市場要求を満たす)
△:画像欠陥が確認される(市場要求を満たさない)
×:画像全体に画像欠陥が確認される(市場要求を満たさない)
図4は、評価結果をまとめたものであり、記録メディア(記録媒体)の種類、記録品位毎に上記の(0から60秒までの時間ごとに)評価を行った結果を表わした図である。コート紙で記録品位が後述するように低い場合、前記経過時間が15秒以上の時に市場要求を満たす品位の記録画像を得ることができた。コート紙で記録品位が後述するように中の場合、経過時間10秒以上で市場要求を満たす品位の記録画像を得ることができた。コート紙で記録品位が後述するように高い場合、経過時間が0秒以上で市場要求を満たす記録画像を得ることができた。また同様に光沢紙では、記録品位が後述するように低い場合20秒以上で、記録品位が後述するように中の場合15秒以上で、記録品位が後述するように高い場合10秒以上でそれぞれ市場要求を満たす記録画像を得ることができた。記録後に必要以上の時間を設けることは記録装置のスループットの低下に繋がることから、必要最低限の時間を用いることが好ましい。
本例においては、記録方式として記録パス数が異なる複数の方式を採用し、それらの記録パス数が多くなるほど記録品位が高まるものとする。
このような試験によって得られた結果を基に記録後の定着時間を設定する。その方法は、まず、後述するように、インク最大使用量に対応するドット数の特定の割合のドット数を、記録品位に対応する記録方式の記録パス数で割った値をエリア判定閾値kとする。本実施形態では実用的に考えて、上記特定の割合を90%とした。なお、インク最大使用量は前述した総インク使用量に相当し、1200dpiの解像度でベタ画像を記録するときが100%となる。
そして実際に記録を行って、1スキャン中の128ドット×128ドット(1200dpi)の判定領域毎での各インク使用量に対応するドット数の合計を求める。その求めたドット数の合計を予め定められた記録品位に対応するパス数で割った値を値qとして、この値qとエリア判定閾値kとを比較する。そして、後述するようにカットされる記録媒体の1枚分の記録の全てが終了した時点で、値qとエリア判定閾値kとの関係がq>kとなったスキャンの回数を確認して、その合計回数を算出する。
算出した合計を、予め定められた判定閾値αと比較して、判定閾値αを選択して、予め定められたテーブルから選択した判定閾値αと対応する記録後定着時間Sを選択する。
図5は、記録媒体の種類別に、記録方式(記録品位および、パス数に対応)、インク最大使用量、エリア判定閾値の関係を表わした図である。また、図6は、記録媒体毎の判定閾値αと記録後定着時間Sとの関係を表わすテーブルの図である。
なお、本実施形態では24インチ幅のロール紙記録が可能な記録装置を想定して、判定閾値αの値に対応した記録後定着時間Sを決定した。図6からもわかるように、エリア判定閾値kを超える回数の合計が多いほど、つまり、記録における1スキャンのインク使用量が多いほど記録後定着時間Sが長くなるように記録後定着時間Sを設定している。
ここで、本実施形態のインクジェット記録装置の記録制御について説明する。
図7は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録動作制御を示したフローチャートである。記録装置の使用が開始されると、まずステップS401でユーザが選択した記録媒体の種類を判別する。次にステップS402でステップS401にて選択された給紙方法がロール紙であるかを判別する。給紙方法がロール紙でない場合、通常の記録を開始する。次に、ステップS403で、ステップS401にて選択された記録用紙種類および記録方法に応じた閾値kを設定し記録を開始する。ステップS404で1スキャン毎の画像データのドットをカウントして、エリア判定閾値kを越える回数をカウントしてその超えた回数の合計と判定閾値αとを比較して判定閾値αを選択する。ステップS404で選択した判定閾値αに対応した記録後定着時間SがステップS405で選択され、定着時間判定を開始した1スキャン目からnスキャンまでの経過時間ΣTnと、選択された記録後定着時間Sの合計時間ΣSnを求める。その後、ステップS406へ移行して定着時間Sの合計時間ΣSnから1スキャン目からの経過時間ΣTnを引いて実質定着時間tnを求めて、実質定着時間tnが0以上であるかを確認する。
ΣSn−ΣTn=tn≧0
実質定着時間tnは常に正である必要があるので、実質定着時間tnが負であった場合には、ステップS407へ分岐してスキャン数nを0に戻して、ステップS404から判定をし直す。ステップS406で実質定着時間tnが正または0である場合には、ステップS408に移行して実質定着時間tnのカウントダウンを開始する。ステップS409で記録が終了したかどうか判定する。ステップS410でステップS406に置けるtnが0である場合、ステップS414に移行してカット動作を開始する。ステップS406のtnが正の場合、ステップS411に移行して最終的に残された実質定着時間tnをカット動作開始までの実際のインク定着時間として設定し、その値を本体パネル上に表示する。そしてステップS412で実質定着時間tnのカウントダウンを開始する。ステップS413でtn=0であるかを判定し、0であった場合、ステップS414でカット動作を行い終了後に動作を終了する。
このように、試験することによって定めた最適な定着時間をもとに、図5および図6の表を用いて各記録品位および各記録媒体の種類に応じてエリア判定閾値k、判定閾値αおよび定着時間Sを設定した。そして、記録後に定着時間Sが経過した後に記録媒体の切断処理を行うことで、記録媒体がバスケットへ落下する時に発生する尾引き等の記録面への損傷が無い記録が可能なインクジェット記録装置を実現することができた。
(他の実施形態)
前述の実施形態では、1記録媒体への記録で行われる全てのスキャンについて値qをエリア判定閾値kと比較して、記録後定着時間Sを求めた。しかし、極端にパス数が多いような高精細な画像を記録する場合、記録に比較的長い時間を要することから、1記録媒体における前半に記録が実施される部分は、記録終了時にはすでに記録媒体上のインクが十分に定着していることがある。そこで、本実施形態では、前述の実施形態のように1記録媒体への記録で行われる全てのスキャンについて、値qをエリア判定閾値kと比較するのではなく、1記録媒体における前半の記録部と後半の記録部とを任意の位置で分けて、後半の記録部でのみ判定を行う。これ以外は、前記実施形態と同様である。
つまり、本実施形態は、記録が終了した時点で、直近まで記録が行われていた部分についてのみ、上記実施形態と同様に値qを求めて、エリア判定閾値kとを比較する。そして、カットされる記録媒体の1枚分の記録の全てが終了した時点で、値qとエリア判定閾値kとの関係がq>kとなったスキャンの回数を確認して、その合計回数を算出する。その算出した合計を予め定められた判定閾値αと比較して、判定閾値αを選択して、予め定められたテーブルから選択した判定閾値αと対応する記録後定着時間Sを選択する。そして、記録後に選択した記録後定着時間Sが経過した後に後処理である切断処理を行う。
このようにすることで、さらに記録時間を短縮することができ、無駄な時間を要することなく、記録面に乱れのない記録を実現することができる。
なお、本実施形態で使用するエリア判定閾値kおよび判定閾値αは、適宜最適な記録状態および記録時間を考慮して変更することが望ましい。
また、上記各実施形態では、記録時に実際に吐出した液滴のドットカウントを行って、エリア判定閾値kを越える回数をカウントしたが、これに限定するものではない。つまり、実際に吐出したドットカウントではなく記録データから吐出するドット数を読み取って、エリア判定閾値kを越える回数を算出してもよい。
また、上記各実施形態では記録後の切断による記録媒体の落下によって記録媒体の記録面が損傷を受けるのを防ぐことを例に挙げたが、これに限定するものではない。つまり、記録後の処理で記録面を乱す可能性のある他の処理(例えば、記録媒体の折り曲処理等)の場合に有効な効果が得られる。
また、上記各実施形態ではコート紙、光沢紙を用いて説明したが、これに限定するものではなく、記録が可能である記録媒体であればよい。
また、上記各実施形態においては24インチのロール紙を基準にエリア判定閾値kおよび判定閾値αの値に対応した記録後定着時間Sを設定したが、本案件で例にあげた記録媒体の横幅に限定するものではなく、搬送が可能であればいかなる幅の記録媒体でもよい。
また、上記各実施形態では、各記録品位および記録媒体の種類に応じてエリア判定閾値kおよび判定閾値αの値に対応した記録後定着時間Sを設定した。しかし制御に必要なパラメータ選定は各記録品位および記録媒体の種類に限られるものではない。上記各実施形態には記載していないが、例えば、環境条件にも対応した値をもつことは、本案件が解決しようとしている、切断後の落下によって記録媒体の記録面が乱れること、および必要以上の記録後定着時間によるスループットの低下の防止に有効である。
また、上記各実施形態において1スキャン毎に128ドット×128ドット(1200dpi)の範囲でドットカウント判定し記録後定着時間を選定したが、この範囲に限定するものではなく、他の範囲でもよい。
また、上記各実施形態において「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみではない。それは、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含むものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものであり、以下のようなものが含まれる。記録媒体上に付与されることで、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体等を含むものとする。
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口、ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギを発生する素子を総括して言うものとする。
なお上記各実施形態では、記録方式にインクジェット記録方式を用いたが、この記録方式に限定するものではなく、他の記録方式(例えば、ピエゾ方式等)に適用しても同様の効果を得ることができる。
また本発明は、記録ヘッドとインクタンクとを一体化した、交換可能なインクジェットカートリッジを用いる構成にも適用することができる。また、記録ヘッドとインクタンクを別体にし、その間をインク供給用のチューブ等で接続する構成など、記録ヘッドとインクタンクの配置構成がどのような場合にも同様に適用することができ、同様の効果が得られるものである。
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
また、本発明は、特にインクジェット記録方式の中でも、特に、熱エネルギを利用してインクを吐出する方式のインクジェット記録装置に採用したときに優れた効果をもたらすものである。
なお本発明は、前述した各実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラム(図7のブロック図)をシステム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータが、供給されたプログラムコードを読み出して実行する場合を含む。その場合、プログラムの機能を有していれば、形態はプログラムである必要はない。
従って、上記各実施形態の機能処理をコンピュータで実現するために、そのコンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明のクレームでは、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。
その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
プログラムを供給するための記録媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープなどがある。その他にもプログラムを供給するための記録媒体は、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などがある。
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットに接続しホームページから本発明のプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルをダウンロードすることでも供給できる。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明の範囲に含まれるものである。
また、本発明のプログラムを暗号化して記憶媒体に格納してユーザに配布し、所定の条件をクリアしたユーザに、ホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報で暗号化されたプログラムを実行してインストールさせることも可能である。
またコンピュータが読み出したプログラムを実行して、前述した実施形態の機能が実現される他、そのプログラムによってコンピュータ上で稼動しているOS等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
さらに記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードや接続された機能拡張ユニットのメモリに書き込まれた後、そのプログラムによって、CPU等が処理の一部または全部を行うことでも、実施形態の機能が実現され得る。
本発明の実施形態にかかるインクジェット記録装置を示す平面図である。 本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御回路のブロック構成図である。 試験に用いるパッチを表わした図である。 記録媒体の種類、記録品位毎に定着時間を上記の0から60秒までの時間ごとに評価を行った結果を表で表わした図である。 記録媒体の種類別に記録品位毎に、パス数、インク最大使用量、エリア判定閾値の関係を表に表わした図である。 記録媒体毎の判定閾値αと対応する定着時間を記録品位毎に表に表わした図である。 本実施形態におけるインクジェット記録装置の記録動作制御を示したフローチャートである。
符号の説明
1 キャリッジ
2 装置本体
4 プラテン
5 記録ヘッド
30 回復機構
31A インク受領箱
31B インク受領箱
32 光学式センサ
33 ガイド軸
34 ベルト
300 主制御部
314 ヘッド温度センサ

Claims (6)

  1. 記録データに基づいてインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行い、後処理部によって記録直後の前記記録媒体に対して、その記録面に擦過が生じる可能性のある後処理を行うインクジェット記録装置において、
    前記記録媒体の種類と記録データに対応する記録後定着時間に基づいて、当該記録後定着時間が長くなるほど、前記後処理部による前記後処理の開始時期を遅延させる制御手段を備えることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記記録ヘッドから吐出されるインク量に対応するインクの吐出発数をカウントするカウント手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記記録後定着時間は、前記記録媒体の単位記録領域当たりに吐出されるインク量が規定量以上となる、当該単位記録領域の数に応じて設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記記録媒体は長尺の記録媒体であり、前記後処理部による後処理は、前記記録媒体の切断と、切断後の前記記録媒体をバスケットに受ける処理であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
  5. 前記記録後定着時間を表示可能な手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  6. 記録データに基づいてインクを吐出可能な記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行い、後処理部によって記録直後の前記記録媒体に対して、その記録面に擦過が生じる可能性のある後処理を行うインクジェット記録方法において、
    前記記録媒体の種類と記録データに対応する記録後定着時間に基づいて、当該記録後定着時間が長くなるほど、前記後処理部による前記後処理の開始時期を遅延させることを特徴とするインクジェット記録方法。
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