JPH07101052A - インクジェットプリント装置およびインクジェットプリント物の製造方法 - Google Patents

インクジェットプリント装置およびインクジェットプリント物の製造方法

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JPH07101052A
JPH07101052A JP5245722A JP24572293A JPH07101052A JP H07101052 A JPH07101052 A JP H07101052A JP 5245722 A JP5245722 A JP 5245722A JP 24572293 A JP24572293 A JP 24572293A JP H07101052 A JPH07101052 A JP H07101052A
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美由紀 松原
Hiromitsu Hirabayashi
弘光 平林
Nobuyuki Kuwabara
伸行 桑原
Yuji Akiyama
勇治 秋山
Masahiro Haruta
昌宏 春田
Shoji Koike
祥司 小池
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    • B41PRINTING; LINING MACHINES; TYPEWRITERS; STAMPS
    • B41JTYPEWRITERS; SELECTIVE PRINTING MECHANISMS, i.e. MECHANISMS PRINTING OTHERWISE THAN FROM A FORME; CORRECTION OF TYPOGRAPHICAL ERRORS
    • B41J3/00Typewriters or selective printing or marking mechanisms characterised by the purpose for which they are constructed
    • B41J3/407Typewriters or selective printing or marking mechanisms characterised by the purpose for which they are constructed for marking on special material
    • B41J3/4078Printing on textile

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Abstract

(57)【要約】 【目的】 パーソナルユースのインクジェットプリンタ
において、布帛へのプリント(捺染)を可能とする。 【構成】 布帛用プリントモードを他のプリント媒体用
のプリントモードとは独立に有し、前記布帛用のプリン
トモードでのインク打ち込み量を、紙用プリントモード
よりも多くすることにより、通常の、すなわち工業要の
捺染装置ではない例えばパーソナルユースのカラープリ
ンタでも表面濃度が高く、高精彩なプリント生地を得ら
れるようになる。さらには、所定範囲内の界面活性剤を
含有するカラーインクを用いることにより、定着性にも
優れ、より優れた画像を短時間で得られるようにもな
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インクジェットプリン
ト装置および該装置を用いるプリント方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】複写装置や、ワードプロセッサ、コンピ
ュータ等の情報処理機器、さらには通信機器の普及に伴
い、それらの機器の画像形成(プリント)装置の一つと
して、インクジェット方式によるプリントヘッドを用い
てデジタル画像プリントを行うものが急速に普及してい
る。このようなプリント装置においては、プリント速度
の向上のため、複数のプリント素子を集積配列してなる
プリントヘッド(以下この項においてマルチヘッドとい
う)として、インク吐出口および液路を複数集積したも
のを用い、さらに近年ではカラー対応化が進むにつれ、
複数個の上記マルチヘッドを同時に備えたものも多く見
られる。
【0003】さらに、インクジェット方式は短時間で高
精彩なプリントが大量に生産できることから、近年イン
クジェット技術を用いた捺染装置が実用化され、高精彩
なプリント生地が簡略な工程で生産されるようになって
きている。
【0004】そうしたインクジェット捺染方法に関する
発明として、吉田等は特開昭61−55277号におい
て、布帛素材に染着させる染料に対して実質的に非染着
性である化合物を、該布帛素材に対して0.1〜50重
量%含有させたインクジェット染色用布帛およびそれを
用いたインクジェット染色法を開示し、インクジェット
捺染におけるにじみ防止を可能としている。しかしその
いずれの実施例においても汎用のインクジェットプリン
タでの搬送性に対する考慮がなされておらず、その応用
はほぼ工業的な捺染分野に限定されている。
【0005】また、本発明と同一出願人による発明とし
て、小池等は特開昭62−53492号にて、インクジ
ェット方式によって水溶性染料を含むプリント液を布帛
類に付与し、次いで必要に応じ染着処理する捺染方法に
おいて、上記布帛類に、25℃における粘度が1000
cp以上のプリント液受容層を形成した捺染方法を開示
することで流動性を有するプリント液受容層にインクを
受容させることでにじみを防止して高品位なインクジェ
ット捺染布を得ることを可能とした発明を開示してい
る。そして、その実施例中では綿100%のブロード生
地を2200cpのプリント液受容層液に浸積した後、
軽く絞って過剰の受容層液を除き、これを市販のレポー
ト用紙と重ね合わせてプリンタに装着しやすい状態とし
た後、直ちにインクジェットプリンタに取り付け、布帛
綿上にプリントし、次に、プリンタから取りはずしてア
イロンをかけて定着を行い、その後中性洗剤にて受容層
液を除去してインクジェットプリンタによる布帛のプリ
ント物を得ている。また、別の実施例では15000c
pのプリント液受容層剤を50%水溶液にして綿65%
麻35%のワイシャツ生地にバーコーターにて塗布し、
80℃1時間の熱風乾燥をしてプリント用生地を得、こ
れをインクジェットプリンタを用いてプリントを行い、
アイロンによる染着処理と中性洗剤による洗浄を行いイ
ンクジェット捺染布を得ている。上記実施例により作成
したインクジェット捺染布は1.5mm間隔の直線の解
像度を十分に満たした上、ボヤケやにじみもなくさらに
十分な濃度が得られ、また、上記発明のひとつの利点と
して、工業的な捺染方法のみならず、一般家庭での趣味
的なプリント捺染にも応用可能としている。すなわち、
プリント液受容層液と布帛とインクジェットプリンタと
ドライヤーないしは市販の普通紙とアイロンと市販の洗
剤さえあれば、非工業的なインクジェット捺染が可能と
なる。そのうち、プリント液および布帛に適したプリン
ト液受容液については広く市販されているものではない
ので、インクジェットプリンタメーカーなどで適宜販売
されるものを購入すれば良い。
【0006】さらに特開平2−61183号において、
金谷らはインクジェット印刷では紙プリントと布プリン
トの相違点を詳細に述べ、布帛では紙のような表面濃度
が出難いこと、布へのプリントでは色素の残留率をいか
に高めるかが重要なことを述べ、インクの残留率を最高
にする方法として、以下の布帛染色方法を提示してい
る。
【0007】これによれば、布帛の全体もしくは印刷し
ようとする面に非染着性高分子化合物被覆して皮膜を形
成し、さらに該布帛印刷しようとする面と反対側の非印
刷面に改めて高分子化合物を被覆して皮膜を形成して、
非印刷面側へのインク流出防止する処理をして、布帛上
でのインクの残留率を高めることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】近年では、上記に説明
した布というプリント媒体に対するインクジェット技術
の開発と共に、インクジェット技術を用いて紙などのカ
ットシート状のプリント媒体にホスト装置などから転送
されたカラー画像データを高精彩にプリントできる、い
わゆる、インクジェットプリント装置の分野で、小型化
・低価格のカラーインクジェットプリント装置が普及し
てきている。これに伴い、カットシート状の普通紙やO
HP用紙をプリントするのと同様に、同じプリント装置
を用いてカットシート状の布へのプリントも可能にな
り、このような分野での布プリントの簡易的なプリント
に対する需要も増えてきている。
【0009】しかし、紙へのプリントと布へのプリント
では両者の繊維組織、表面形状に伴うインク吸収状態、
および着色の目的ともに通常の紙とは異なる要因が多
い。
【0010】先に揚げた特開平02−61183では紙
と布帛の違いについて詳しく述べており、その部分を抜
粋する。
【0011】「(着色法)紙は文字、図柄を印刷する目
的で各種の色素が用いられるが、これらの色素は紙の表
面に付着させビヒクルで留める手法を取る。布帛は色、
図柄をつけるために、やはり各種の色素を用いるが、こ
れらの色素は布帛の科学的構造によって使い分けられ布
帛を構成する繊維内部まで浸透させ、固着せしめる方法
を取る。この両者の違いは紙は濡らすことはないことを
前提とし、布帛は濡らすことを前提としているためであ
る。
【0012】(中略)着色法を更に深く見きわめると、
紙の場合は紙の表面に付着させたものが百パーセント効
果に働くが、布帛の場合は布帛表面に付着させた後、染
着される手段としての乾燥〜湿熱処理及び洗浄があるた
め実質繊維の表面〜内部に強固に染着した色素のみが残
留し、他は繊維上から脱落することになる。この様に布
帛に於いては色素が繊維の内部に移動する、集束する糸
全体に分配される。残留率等の理由で紙と対比しがたい
低い濃度となるわけである。
【0013】(中略)布帛インクジェット印刷に於ける
最大のポイントは、インク中に於ける色素濃度をいかに
高めることが出来るかにあることに帰する。」上記列挙
した各号公報では以上のような布の独特な特性に対処す
るための染色方法を提案し、選りすぐれた染色方法を実
現させていっている。しかし、これらは全て染色のみに
着目したものであり、染色に必要な材料の開示にとどま
っている。従って、捺染の手段であるプリント装置とし
ては、インクの打ち込み量、布への吐出タイミング及び
布の搬送状態等に於いて、捺染専用に適正化されたもの
を前提としているので、上記で求められてきているよう
な、他のプリント媒体との併用ができる布プリントの需
要には対処されていなかった。
【0014】一方、これまでの標準的なプリント方法し
か持たないプリンタでは、表面濃度が低く、鮮明さに欠
けたプリント生地しか得られず、布プリントに最適なプ
リント対応は紙片へのプリントを主としたカラープリン
タにおいて未開発なままであった。
【0015】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明は、
インクジェットヘッドを用い、該インクジェットヘッド
とプリント媒体とを相対移動させることによりプリント
を行うインクジェットプリント装置において、布帛に対
してプリントを行う布帛プリントモードを他のプリント
媒体に対してプリントを行うモードとは独立に具えたこ
とを特徴とする。
【0016】ここで、前記布帛用プリントモードでのイ
ンク打ち込み量を、前記他のプリント媒体として紙を用
いるプリントモードよりも多くしたものとすることがで
きる。
【0017】また、前記インクジェットヘッドは、前記
インクを吐出するためのエネルギとして熱エネルギを発
生する素子を有するものとすることができる。
【0018】さらに、本発明は、以上の装置を用いてプ
リント媒体にプリントを行うことによってインクジェッ
トプリント物を製造する。
【0019】ここで、前記プリント媒体は布帛である。
【0020】また、10以上400以下のクラーク剛度
を有するようにするための剛直化処理をさらに施すこと
ができる。
【0021】ここで、前記剛直化処理は、染色液吸収性
粘着層を介して搬送基材の片側前面に前記プリント媒体
を一体化する処理、または前記プリント媒体に剛直化剤
を付与する処理とすることができる。
【0022】また、前記プリント媒体に前処理剤を含有
させる前処理をさらに施すことができる。
【0023】さらに、前記プリント媒体へインクを付与
してプリントを行った後に、インクを前記プリント媒体
に定着させる工程をさらに具え、また、前記インクを定
着させる工程の後に、プリントが行われたプリント媒体
を洗浄処理する工程をさらに具えることができる。
【0024】また、本発明は、上述のインクジェットプ
リント物の製造方法によりプリントされたプリント物で
ある。そして、そのプリント物をさらに加工して得られ
た加工品である。その加工品は、前記プリント物を所望
の大きさに切り離し、切り離された片に対して最終的な
加工品を得るための工程を施して得られたものとするこ
と、前記最終的な加工品を得るための工程を縫製とする
ことができる。
【0025】
【作用】本発明によれば、布帛用プリントモードを他の
プリント媒体用のプリントモードとは独立に有し、前記
布帛用のプリントモードでのインク打ち込み量を、紙用
プリントモードよりも多くすることにより、通常の、す
なわち工業要の捺染装置ではない例えばパーソナルユー
スのカラープリンタでも表面濃度が高く、高精彩なプリ
ント生地を得られるようになる。
【0026】さらには、所定範囲内の界面活性剤を含有
するカラーインクを用いることにより、定着性にも優
れ、より優れた画像を短時間で得られるようにもなる。
【0027】
【実施例】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明す
る。
【0028】(第1実施例)図7は本発明に用いるカラ
ープリンタ部の概略構成を示したものである。この図に
おいて、701はヘッドカートリッジである。これら
は、4色のカラーインク、ブラック、シアン、マゼン
タ、イエローがそれぞれ詰め込まれたインクタンクと、
702のマルチノズルヘッドより構成されている。
【0029】このマルチヘッド上に配列するマルチノズ
ルの様子をz方向から示したものが図8であり、81は
マルチヘッド702上に配列するマルチノズルである。
本図ではマルチノズル801がY軸に沿って平行に配列
されているが、例えば図のXY平面上多少の傾きを持っ
ていても良い。この場合には、ヘッドが進行方向Xに進
んで行くのに対し、各ノズルはそれぞれタイミングをず
らしながらプリントを行っていくことになる。
【0030】再び図7を参照するに、703は搬送ロー
ラであり、704の補助ローラとともにプリント紙70
7を抑えながら図の矢印の方向に回転し、プリント紙7
07をy方向に随時送っていく。また705は給送ロー
ラーであり、プリント紙の給紙を行うとともに、70
3、704と同様、プリント紙707を抑える役割も果
たす。706は4つのインクカートリッジを支持し、プ
リントとともにこれらを移動させるキャリッジである。
これはプリントしていないとき、あるいはマルチヘッド
の回復作業などを行うときには図の点線で示した位置の
ホームポジション(h)に待機するようになっている。
【0031】プリント開始前、図の位置(ホームポジシ
ョン)にあるキャリッジ(706)は、プリント開始命
令がくると、x方向に移動しながら、マルチヘッド(7
02)上のn個のマルチノズル(81)により、紙面上
に幅Dだけプリントする。紙面端部までデータのプリン
トが終了するとキャリッジは元のホームポジションに戻
り、再びx方向へのプリントを行う。あるいは、往復プ
リントであれば、−x方向に移動する段階で次のプリン
トも行ってしまう。この最初のプリントが終了してから
2回目のプリントが始まる前までに、搬送ローラ703
が矢印方向への回転することにより所定幅だけのy方向
への紙送りをする。この様にしてキャリッジスキャンと
紙送りとの繰り返しにより、一紙面上のデータプリント
が完成する。
【0032】既に述べたように、布のインク受容量は紙
よりも大きく、特にプリント表面から深度方向にも吸収
され易いので、プリント表面にはインクが残りにくい。
従って、実際の所望する濃度を実現するためには、紙上
にプリントする場合よりも多くのインクを打ち込まなけ
ればならない。
【0033】従って、本実施例においては普通紙プリン
トモードで機能する場合のインク打ち込み量100%に
対し、布プリントモードで選択された場合は、カラーで
200%、ブラックで400%だけインクを打ち込んで
いく。
【0034】本実施例の布プリントを行う際の動作(図
1)を一般的な普通紙あるいはコート紙に対応するプリ
ント動作(図2)と比較しつつ説明する。本例では、4
回のマルチパスプリントによって画像を完成させてい
る。ここで、マルチパスプリントについて説明するに、
モノクロプリンタとして、キャラクタのみプリントする
ものと異なり、カラーイメージ画像をプリントするに当
たっては、発色性、階調性、一様性など様々な要素が必
要となる。特に一様性に関しては、マルチヘッド製作工
程差に生じるわずかなノズル単位のばらつきが、プリン
トしたときに、各ノズルのインクの吐出量や吐出方向の
向きに影響を及ぼし、最終的にはプリント画像の濃度ム
ラとして画像品位を劣化させる原因となる。
【0035】その具体例を図9および図10を用いて説
明する。図9(A)において、91はマルチヘッドであ
り、これは図8のものと同様であるが、今は簡単のため
8個のマルチノズル92によって構成されているものと
する。93はマルチノズル92よって吐出されたインク
ドロップレットであり、通常はこの図のように揃った吐
出量で、揃った方向にインクが吐出されるのが理想であ
る。もし、この様な吐出が行われれば、図9(B)に示
したように紙面上に揃った大きさのドットが着弾され、
全体的にも濃度ムラの無い一様な画像が得られるのであ
る(図9(C))。しかし、実際には先にも述べたよう
にノズル1つ1つにはそれぞれバラツキがあり、そのま
ま上記と同じようにプリントをしてしまうと、図10
(A)に示したようにそれぞれのノズルより吐出される
インクドロップの大きさおよび向きにバラツキが生じ、
紙面上においては図10(B)に示すように着弾され
る。この図によれば、ヘッド主走査方向に対し、周期的
にエリアファクター100%を満たせない白紙の部分が
存在したり、また逆に必要以上にドットが重なり合った
り、あるいはこの図中央に見られる様な白筋が発生した
りしている。このような状態で着弾されたドットの集ま
りはノズル並び方向に対し、図10(C)に示した濃度
分布となり、結果的には、通常人間の目でみた限りで、
これらの現象が濃度ムラとして感知される。
【0036】そこでこの濃度ムラ対策として次のような
方法が考案されている。図11および図12によりその
方法を説明する。この方法によると図9および図10で
示したプリント領域を完成させるのにマルチヘッド91
を3回スキャンしているが、その半分の4画素単位の領
域は2パスで完成している。この場合マルチヘッドの8
ノズルは、上4ノズルと、下4ノズルのグループに分け
られる。1ノズルが1回のスキャンでプリントするドッ
トは、規定の画像データを、ある所定の画像データ配列
に従い、約半分に間引いたものである。そして2回目の
スキャン時に残りの半分の画像データへドットを埋め込
み、4画素単位領域のプリントを完成させる。以上のよ
うなプリント法を以下分割プリント法と称す。このよう
な分割プリント法を行えば、図10で用いたプリントヘ
ッドと等しいものを使用しても、各ノズル固有のプリン
ト画像への影響が半減されるので、プリントされた画像
は図11(B)に示すようになり、図10(B)に見る
ような黒筋や白筋が余り目立たなくなる。従って濃度ム
ラも図11(C)に示すように図10の場合と比べ、か
なり緩和される。
【0037】このようなプリントを行う際、1スキャン
目と2スキャン目では、画像データをある決まった配列
に従い互いに埋め合わせる形で分割するが、以前はこの
画像データ配列(間引きパターン))とは図12に示す
ように、縦横1画素毎に、丁度千鳥格子になるようなも
のを用いるのが最も一般的であった。従って単位プリン
ト領域(ここでは4画素単位)においては千鳥格子をプ
リントする1スキャン目と、逆千鳥格子をプリントする
2スキャン目によってプリントが完成されるものであ
る。図12の(A),(B)および(C)はそれぞれこ
の千鳥、逆千鳥パターンを用いたときに一定領域のプリ
ントがどのように完成されて行くかを図9〜11と同
様、8ノズルを持ったマルチヘッドを用いて説明したも
のである。まず1スキャン目では、下4ノズルを用いて
千鳥パターン(ハッチングを施したドット)のプリント
を行う(図12(A))。次に2スキャン目には紙送り
を4画素(ヘッド長の1/2)だけ行い、逆千鳥パター
ン(ハッチングなしのドット)のプリントを行う(図1
2(B))。さらに3スキャン目には再び4画素(ヘッ
ド長の1/2)だけの紙送りを行い、再び千鳥パターン
のプリントを行う(図12(C))。このようにして順
次4画素単位の紙送りと、千鳥、逆千鳥パターンのプリ
ントを交互に行うことにより、4画素単位のプリント領
域を1スキャン毎に完成させていく。以上説明したよう
に、同じ領域内に異なる2種類のノズルによりプリント
が完成されていくことにより、濃度ムラの無い高画質な
画像を得ることが可能である。
【0038】また、同時に布帛上にプリントされるイン
クの密度が低くなるので、その分深さ方向へのインク浸
透が少なくなり、表面濃度がアップする効果も期待でき
る。このことからも本実施例のプリント方法は、布プリ
ントに大きな効果が期待できる。
【0039】以上、この図では同一領域内を2回の走査
でプリント完成させる構成で説明してきたが、分割プリ
ント法の効果は分割数を多くすればするほど現れるもの
である。上記で説明したプリント装置においても、1回
の走査でプリントする画素をさらに半分にし、紙送り走
査の幅を2画素(ヘッド長の1/4)にすれば、同じ走
査方向には4種類のノズルによって画像が完成されるの
で、さらに滑らかで良好な画像をさらに濃度の高い状態
で得ることが可能となる。
【0040】さらに本実施例ではカラーインクジェット
プリント装置に装備させた一般的なインク(Aインクと
仮称する)を用いているが、以下にその成分を示してお
く。
【0041】 Aインク 成分 単位(重量%) 溶剤 トリエチレングリコール 7.0 ヘキサントリオール 7.0 イソプロピルアルコール 1.5 界面活性剤 アセチレングリコール 0.01 エチレンオキサイド付加物 (商品名:アセチレノール) 染料 ブラック フードブラック2 3.0 シアン ダイレクトブルー199 2.5 マゼンタ ダイレクトレッド227 2.5 イエロー ダイレクトイエロー86 1.5 残量 水 以上示したインクジェットプリント装置を用いて本実施
例を説明する。
【0042】図2は本実施例でコート紙或いは普通紙を
プリントする場合の状態を示したものである。本実施例
に用いるプリント装置のノズル数は32で、通常4パス
片方向プリント、紙送り量は32/4=8ノズル分とす
る。各プリント走査では図で示した間引きマスクに従っ
てプリントされ、各プリント走査毎に8ノズル分の紙送
り走査が成される。これら第1プリント走査から第4プ
リント走査までの各間引きマスクは互いに補完の関係に
あり、4回のプリント走査、紙送り走査が行われた後、
初めて単位画像領域のプリントが完成されることにな
る。
【0043】これに対し、図1は本発明のインクジェッ
トプリント装置を用いて、布片にプリントする場合の状
態を示したものである。このモードでは、全部で8回の
プリント走査と4回の紙送り走査によって画像を完成さ
せている。第1プリント走査と第2プリント走査、第3
プリント走査と第4プリント走査、のように往復記録走
査を対としてプリントを行ってゆく。これらは同一の間
引きマスクを用いており、両プリント走査の間に紙送り
走査は入らない。従ってこれら連続する2走査では、往
路と復路の逆方向走査によって同一画素にインクを打ち
込んでいることになる。この連続する往復2プリント走
査の後、8ノズル幅の紙送り走査が入り、全8回のプリ
ント走査で初めて単位画像領域のプリントが完成されて
いる。
【0044】図1では、200%のインクを打ち込む
分、図2の通常のプリントモードに比べて2倍のプリン
ト走査を必要とする。しかし、ここでは往復走査でプリ
ントしているので、キャリッジの走査回数およびプリン
ト時間は図2と同等である。
【0045】図2において、第2、第4プリント走査を
復路方向で行えば、さらにプリント時間が短縮されるこ
とは可能であるが、通常のコート紙や普通紙では往復プ
リントは画像劣化の原因となり易い。図7で示した本実
施例に用いるインクジェットプリント装置では、4色の
ヘッドがキャリッジ主走査方向に並列しているので、往
路プリントと復路プリントではインク打ち込み順が逆転
してしまう。このような場合、インク色の紙面への打ち
込み順によって混色部の色味が異なってしまうことが確
認されている。また、現状のプリント装置では、往路プ
リント時の着弾位置と復路プリント時の着弾位置を正確
に制御することは未だ難かしく、このような着弾位置ず
れが罫線や文字品位の劣化を招くことも知られている。
以上のような弊害を起こさないためにも、通常のプリン
トモードでは図2のような片方向プリントが一般的であ
る。
【0046】これに対し、布片へのプリントでは上記の
ような往復プリントに伴う弊害はあまり起こるものでは
ない。インク打ち込み順に関わらず、布に着弾されたイ
ンクは常に着弾位置から一様に布内に広がって吸収され
る。また、もともとドット径が大きいことや、布プリン
トの風合い上それほど厳しい着弾精度が要求されないこ
とからも、布への往復プリントは時間短縮のためにも有
効である。従って、カラー往復プリントは紙片などの適
用に比べて、布プリントに置いて格段に効果を発揮する
ものである。
【0047】図1では、本実施例の布プリントモードに
おける200%デューティーのプリントマスクについて
説明してきたが、布によってはさらに高いデューティー
のインク量を打ち込まなければ、所望の濃度が得られな
い場合などもある。また、シアン、マゼンタ、イエロー
については図1の200%デューティーで十分な場合で
あっても、特にブラックだけは画像の深度を深めたりコ
ントラストを高めるためにも、濃度が高い方が好まれ易
い。
【0048】図3は図1と同様のプリント走査でありな
がら、ブラックのみ他よりもさらに多く、400%デュ
ーティーのインク打ち込み量としたときのプリント状態
である。この図においても往復8回のプリント走査で画
像を完成させてはいるが、各プリント走査で用いられる
間引きマスクは、50%に間引かれているものである。
第1、第2、第3、第4の計4回のプリント走査は同一
のマスクを用い、等しい画素にインクを4回着弾させて
400%デューティーのインクを打ち込んでいる。
【0049】以上説明したような布へのプリント方法を
適用することにより、通常の普通紙やコート紙と同様に
布片にも良好な画像をプリントすることが可能となる。
【0050】図4は本実施例で用いたインクジェットプ
リント装置における数々のプリントモードを示したもの
である。基本的にはプリントするプリント媒体の種類お
よびユーザー所望の画像品位やスループットから、ユー
ザーがパネルスイッチなどを用いて各モードを選択する
ようになっている。ここでは普通紙のプリントモードと
コート紙のプリントモードを独立させ、普通紙のプリン
トモードでは2パス或いは4パスのマルチパスプリント
としている。図2のようなプリント方法では普通紙及び
コート紙では往復プリントは対応しきれないと先に述べ
たが、普通での往復プリント時の弊害はコート紙のそれ
ほど大きくなく、間引きマスクの設定次第ではそれらの
画像弊害を目立たなくすることが可能である(特願22
87091)。
【0051】OHP用紙およびコート紙では基本的に4
回のマルチパスプリントで高画質を得られるようにして
あるが、OHP用紙ではブラック強調の必要性が高いこ
とから、復路走査時にブラックのみの強調プリントを行
っている(特願2223019)。布プリントでは既に
図1および図3を用いて説明したように、標準モードの
際には全色図1のプリント方法、ブラック強調時にはブ
ラックのみが図3のプリント方法で他の3色は図1のプ
リント方法としている。
【0052】通常のインクジェットプリント装置におい
ては、図4に示したような布以外のプリント媒体に対応
した、プリントモードを数パターン持つのが一般的であ
り、特にカラーインクでは100%デューティー以上の
インク打ち込み量のモードは備えていない。これら布以
外のプリント媒体であれば、最適な画像品位は得られな
いものの、どのプリント媒体をどのモードでプリントし
ても、適切な濃度とある程度の画像品位は実現できる。
しかし、布のようにインク吸収容量が他のプリント媒体
より著しく多く、適切なインク打ち込み量自体が異なる
場合では、他のどのプリントモードでも対応しきれるも
のではない。
【0053】本実施例を含む本発明は、特に近年の布プ
リントへの需要に対応し、パーソナルプリンタでも他の
プリント媒体と同様な取扱いで布プリントが簡単に実現
できる様、予めインク打ち込み量を多くしたプリントモ
ードを具備したプリント装置を提供するものである。
【0054】繊維上での画像表現は上記のように直接布
へインクを打ち込む場合もあるが、所望の画像の鏡像を
一度中間転写媒体に印字した後、この印字面と布とを接
触させ、その鏡像画像を物理的或いは化学的な圧着処理
によって画像を布へ転写、浸透させる方法もある。この
様な場合には布用の特別な印字方法として、インク打ち
込み量の調整のみ成らず、特別に鏡像画像を形成する構
成も必要となるのである。
【0055】ここで利用させる中間転写媒体としては、
打ち込まれたインクが適度に保持され、さらに布への転
写時に移行が速やかに行われればよいのであって、例え
ばポリエチレンテレフタートや紙などのシート状の支持
体に、ワックスやポリビニルアルコール等からなるイン
ク保持層を設けて構成することが出来る。また、中間転
写媒体から布への画像の転写手段に関しては、両者を重
畳させた後に、加圧、加熱、レーザー照射、溶剤による
インク保持層の溶解除去等、およびこれらの方法の組み
合わせなど、公知の手段を利用することによって、圧転
写、あるいは溶融転写を施することが可能となる。
【0056】本発明の実施例においては、主にインク打
ち込み量を適切にするために布用の特別なモードを設け
ることで説明している。しかし、この布用の独立したモ
ードが、上記のような転写方式のためのものであっても
良いし、またこれら2つのモードがそれぞれ独立に存在
していても良いのである。特に転写方式は、中間転写媒
体から実際に転写させる媒体が布に制限されなくともよ
いので、画像表現媒体の範囲を広げるためにも独立なモ
ードを持つことは有効である。
【0057】以上説明したように、本実施例によれば、
図1あるいは図3に示した通常よりインク打ち込み量の
多いプリント方法を、予めインクジェットプリント装置
のプリントモードの1つとして与えておくことにより、
布プリントにおいてもプリントモードを選択するだけ
で、通常の普通紙やコート紙あるいはOHP用紙のよう
なプリント媒体と同様に適切な濃度と画像品位を得るこ
とができるようになった。
【0058】さらに、本発明をさらに効果的にした簡易
捺染方法および装置を提供し、より詳しくは搬送手段へ
の自動装着が可能なインクジェットプリンタを用いるこ
とを可能としたインクジェット簡易捺染方法、およびプ
リント液受容のための前処理済の基布を搬送手段に自動
装着してプリント可能なインクジェットプリント(捺
染)装置、およびそれに用いるカットシート状布プリン
ト媒体を提供するものとして本発明と同一出願人による
特願平5−108226号が既に提案されている。
【0059】インクジェットプリント装置の分野で、小
型化・低価格のカラーインクジェットプリント装置が普
及してきている一方、従来例で示した特開昭61−55
277号に開示された構成では近年の進化したインクジ
ェットプリンタにそのまま応用することは難しくなって
来ている。すなわち、前記発明における第1の実施例で
は高粘度ではあるが、流動性のプリント液受容層液によ
るインクジェットプリンタの搬送手段への汚染やプリン
ト生地の装着性および搬送性の改善を市販のレポート用
紙を重ねて装着することで改善しているが、また、第2
の実施例ではさらに高粘度のプリント液受容層液をプリ
ント面側から塗布・乾燥して下紙なしでインクジェット
プリンタに装着するようにしているが、近年のより高解
像度化・高精彩化したインクジェットプリンタを生かし
て高精細なプリントを自動搬送で行うには十分な搬送性
を得ることは難しい。また、上記実施例中で用いたイン
クジェットプリンタは、主搬送手段である円筒状のプラ
テンに手動でプリント媒体を装着するものであり前述の
ように下紙を重ねただけの生地や、生地そのものであっ
ても装着できたが、近年のインクジェットプリンタでは
搬送手段への装着は自動的に行える様に構成されている
ものが主流であり、そうしたインクジェットプリンタの
搬送手段への装着はそのままでは難しい。
【0060】このような問題に対して、特願平5−10
8226号では、主に搬送性を向上させる手段として、
個々の実施例を用いて以下のように述べている。
【0061】まず、第1実施例においては、ポリビニル
アルコールのような染色液吸収性の粘着層を表層に有す
る搬送基材に、基布を貼付することによってクラーク剛
度10以上400以下のカットシート状プリント媒体を
得ている。そして、これに対しインクジェット捺染した
後、基布を搬送基材から剥離して捺染布を得ている。
【0062】また、第2実施例ではアルギン酸ナトリウ
ムのような剛直化剤を用いて基布を処理し、これによっ
て得たクラーク剛度10以上400以下のカットシート
状プリント媒体に、インクジェット捺染して捺染布を得
ている。
【0063】これら両実施例に対し、より好ましくはプ
リント装置の搬送手段はプリント媒体の非プリント面側
に接する搬送部材を主駆動手段に接続した搬送手段であ
って、プリント媒体を搬送手段に自動装着可能な搬送手
段と、さらに好ましくは、上記搬送手段にカットシート
状プリント媒体を給送するための給送手段はカットシー
ト状プリント媒体の非プリント面側に接触して駆動され
る給送手段とし、さらに、より好ましくは、上記インク
ジェットプリント装置におけるプリント媒体の搬送路上
にあってインクジェットプリント部の下流側に設けた加
熱手段を用いて、カットシート状プリント媒体を加熱処
理するのが良いとしている。
【0064】また、上記基布については、予め染着制御
剤を用いて染着制御処理を施して、インクジェットプリ
ント後に捺染布を染着率向上剤を溶解した水溶液で水洗
するのが良いともしている。ここで言う染着制御剤とし
ては、尿素100重量部、炭酸水素ナトリウム30重量
部、メタニトロベンゼンスルフォン酸ナトリウム10重
量部、水860重量部から成る処理液を明記し、また上
記染着率向上剤としては湿潤堅牢度の向上を主目的とし
たファックス剤等を用いている。
【0065】さらに、ここでは上記搬送手段による搬送
方向と、基布の布目の横地ないしは縦地方向とを同一方
向に揃えて搬送することをも奨励している。
【0066】そして、これらによりインクジェット技術
を応用した簡易捺染方法および装置およびそれに用いる
カットシート状布プリント媒体を提供でき、インクジェ
ット技術を応用したインクジェット簡易捺染方法による
高精彩な色表現を工業用のみならず広く一般家庭の趣味
的な分野への応用を可能となったと述べている。
【0067】なお、これらについては本発明を適用可能
な装置の構成例(図14)とともに後述する。
【0068】ところで捺染技術とは別に、インクジェッ
トプリンタにおいては、市販に出回っている普通紙にも
良好な画像を得られることを目的として、浸透速度の速
く境界にじみの少ないインクが近年開発されてきてい
る。
【0069】一般のインクを用いてプリントすると、市
場に出回っている多くの普通紙では、インクの浸透速度
が遅く、隣接して同時にプリントされるドット間で混色
が発生してしまう。このため、異色境界ではにじみが発
生し、プリント品位の低下をまねく事が知られている。
特にグラフィック画像のようなグラフ、表の一部分、描
画された絵などでは、プリント面の一部分を塗りつぶす
場合が多く見られる。
【0070】さらに、普通紙によっては紙面上の浸透状
態のムラが、塗りつぶし部分(以下ベタ)の一様性を損
なわせたり、部分的な白浮きを発生させたりすることが
ある。この原因は表面の不均一に起因するものであると
されている。またこれにより、吐出したインク滴が紙面
に浸透する際に、繊維の隙間、サイズ剤等、溌水の処理
の薄い部分を選択的に浸透するため、ドットの形状が真
円ではなく星型の不均一な形状になるという問題もみら
れる。
【0071】このような問題は、従来のインクを用いた
場合では、特殊なコーティングを施した紙でなければ対
応しきれなかったが、このようなコート紙は高価なもの
がほとんどであり、また流通経路も限られている事から
余り一般的とはいえないのが実状であった。
【0072】しかし、界面活性剤をインクへ添加するこ
とにより、普通紙への浸透力、浸透速度を向上させるこ
とが有力な解決策となっている。
【0073】特開昭56−5871号公報では、界面活
性剤を含有するインクを界面活性剤を含まないインクと
比較して、相対的に優れた定着性、耐水性を評価し、イ
ンク吐出を連続駆動と間欠駆動でも安定した吐出が行わ
れること評価している。さらにこの公報では、3カ月放
置後の最初の駆動信号で吐出で着るか否かを判断し、界
面活性剤を含有するインクが良好なインク吐出を行える
ことを開示している。
【0074】1981年(10月1日)発行の「全訂版
新界面活性剤入門」(三洋化成工業株式会社)には、
界面活性剤を液体に含有させる場合において、界面活性
剤の効果を充分得るためには、その液体における界面活
性剤のミセル濃度(m.c.)以上の含有量をその液体
に入れることがきわめて当然知識として開示されてい
る。この界面活性剤のインクに対する臨界ミセル濃度
(c.m.c.)以上の含有量をインクに含ませること
を1つの特徴とした、米国特許第5,106,416号
明細書および米国特許第5,116,409号明細書が
存在する。これらの公報は、インクのブリーディングを
防止する効果があるものとしてそれらの発明を開示し、
水に対する界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.
c.)は意味の無いことを明記している。逆にこの水に
対する界面活性剤の臨界ミセル濃度(c.m.c.)以
下の含有量を含むインクを開示するものとして、特開昭
56−49771号公報があり、ノズル内の目づまり防
止効果があるとしている。また、先に上げた特公昭58
−6752号公報と同様に1〜10%の界面活性剤を含
有させたインクを低蒸気低粘性溶剤付加することによっ
て使用可能にするというインク特許を開示する特開平1
−182384号公報があるが、単にインクの紙に対す
るにじみを考慮するのみである。
【0075】界面活性剤の添加は、その量が多すぎる
と、低湿環境下での蒸発等に起因するノズル部付近での
粘度上昇が顕著になり、吐出回復性の悪化が著しい。ま
た表面張力の極限までの低下、粘度の上昇とにともない
インクドロップレットの集束性が悪化し、吐出後に液滴
が1つに集束せず主滴とそれに続く微小液滴(サテライ
ト)が生じる。このサテライトの発生によって文字品位
の低下、罫線の直線性損なう、等多くの弊害が発生す
る。さらに、インクそのもの粘度も上昇するため、吐出
後のインク再充填(以下リフィル)までの時間も増大す
る。
【0076】以上のようなすべてを満足するためには、
やはり対インクおよび対純水での界面活性剤の臨界ミセ
ル濃度(c.m.c.)に着目し、適切な領域に調整す
る必要がある。本発明と同出願人による特願平5−16
4845号によれば、界面活性剤の濃度については浸透
促進という観点からはできる限り高濃度であることが望
まれるが、にじみ防止、ベタ均一性の保持等の観点から
は実用上は純水中での臨界ミセル濃度より大であること
が重要で、吐出特性の向上、単ドットの品位の向上、回
復動作の負荷軽減をめざす上ではインクに対しての界面
活性剤の含有率が臨界ミセル濃度(c.m.c.対イン
ク)より小であることが重要であると開示し、これら濃
度に制限をつけたものとしている。
【0077】ここで、本実施例の変形例として上記制限
内のインク(Bインクと仮称する)を用いた場合をも述
べておく。以下にそのインク成分を示す。
【0078】 Bインク 成分 単位(重量%) 溶剤 グリセリン 7.5 チオジグリコール 7.5 界面活性剤 アセチレングリコール 1.0 エチレンオキサイド付加物 (商品名:アセチレノール) 安定化剤 尿素 7.5 染料 ブラック フードブラック2 4.0 シアン ダイレクトブルー199 3.5 マゼンタ ダイレクトレッド227 3.5 イエロー ダイレクトイエロー86 2.5 残量 水 このような界面活性剤を添加した超浸透性インクとし
て、上記特願平5−164845号を本実施例ないし本
発明に適用することでは、本発明の目的をさらに効果的
に実現させることができる。
【0079】通常のインクでは、布片に200%以上イ
ンクを打ち込むと媒体へのインク吸収速度が衰えるの
で、あまりりはやい速度でインクを打ち込むと、完全に
吸収される以前に隣接インク滴との混色が起こり、出力
画像では境界にじみとして認識されてしまう。これを防
ぐためには、マルチスキャン回数を多くして、少しづつ
乾燥させながらプリントさせていく方法や、1スキャン
毎にキャリッジの待機時間を設け、インクの吸収を待っ
てから重ねプリントしていく方法が考えられる。しか
し、どちらにしても時間をかけることで乾燥を促そうと
するものなので、タイムコストは他のプリント媒体への
プリントに比べ大幅に劣ってしまう。
【0080】従って、上記特願平5−164845号を
適用すれば、瞬時に吸収・乾燥させることが出来るの
で、上記のような方法をインク乾燥のために行う必要も
なく、良好な濃度を得ることができる。
【0081】さらに、界面活性剤による浸透性の付与に
より、布帛を構成する糸へのインク吸収性が上がり、布
帛表面付近の繊維を均一に染色することができるという
新たな利点もある。また、布帛の深さ方向にインクが過
度に通過することも防止でき、上記インクは布プリント
に適しているといえるであろう。
【0082】以下に、さらなるインクのバリエーション
として2種類以上のインクを色毎に混在させる場合も述
べておく。本例では上記界面活性剤を多く含んだBイン
クは、シアン、マゼンタ、イエローの3色カラーインク
のみに用い、ブラックのみは次に示すインク(Cインク
と仮称する)を用いていることとする。
【0083】 Cインク 成分 単位(重量%) 溶剤 グリセリン 5.0 チオジグリコール 5.0 イソプロピルアルコール 4.0 安定化剤 尿素 5.0 染料 ブラック フードブラック2 3.0 残量 水 このCインクはブラックのみに用い、さらに吐出量を他
色に比べて大きくする。ここでは、3色カラーインクを
1ドットあたり40ngにするのに対し、ブラックイン
クは80ngとし、予めある程度のブラック強調を考慮
しておく。このようにブラックのみ、界面活性剤を用い
ないインクを適用することはブラックの文字品位および
濃度を他色より重視したためである。
【0084】既に述べたようにBインクのような界面活
性剤を含んだインクはインク吸収性に大変優れている。
このことはカラー画像の異色同士の境界にじみを防ぎ、
スープットアップにつながるので、打ち込み量の多い布
プリントには適したインクといえる。しかし、Cインク
の様に界面活性剤を含まないものに比べると、布のプリ
ント面上でBインクはCインクより大きな円となって広
がるので、罫線や文字品位の解像度においてはあまり良
好とは言えなくなってしまう。
【0085】このような場合、本例の様にブラックのみ
濃度と解像度に重点を置いたインクと吐出量を適用させ
ることによって、さらに良好な画像を布上に描くことが
できるようになる。勿論、プリントの目的によってはこ
のような強い黒を必要とせず、布の風合いを生かしたカ
ラー画像を得たい場合もあり、この場合には本例のよう
な構成は必要とされないので先に説明したBインクの構
成で充分である。
【0086】しかし、通常布以外のプリント媒体におい
ても、カラーは境界にじみ、ブラックは濃度と解像度を
追求していく方向が今日では一般的になってきている以
上、布プリントでも高濃度、高解像度が近い将来要求さ
れてくることは簡単に予想される。また、特に布プリン
トにおいては、ブラックに深み(濃度)を求められるこ
とも多く、この場合には、浸透速度を抑えたインクを適
用することで、繊維に沿って浸透してしまうインクの濃
度分を償うこととができる。
【0087】そのような場合、本例のように、ブラック
のみCインク、80ng/dot、シアン、」マゼン
タ、イエローはBインク、40ng/dotとした構成
を取ることによって布プリントに置いても所望の高濃
度、高解像度な画像が得られるのである。
【0088】さらに本例のように2種以上のインクを用
いた場合に、インク同士の性質の違いから互いに隣接し
て混在し難くいことがある。このようなとき、紙面上の
プリントでは特別なプリント方法を適用させない限り、
境界部でインクが反発しあい、白モヤが生じてしまうこ
とがある。しかし、布プリントであれば布の規則的な繊
維への吸収が優先されるので、特別な対処無しでもこの
ような弊害は現れにくい。
【0089】また、布印字効果を上げるためのインク組
成分の着色染料として、反応性染料を使用する例を上げ
ておく。ここに使用する反応性染料とは、それ自体公知
の材料であり、繊維の染色或いは従来の捺染方法におい
て広く使用されている水溶性のアゾ系、アントラキノン
系、フタロシアニン系その他の染料である。これらの反
応性染料はその構造中にスルホン酸基やカルボキシル基
の如き水溶性の基を有し、且つ繊維の水酸基またはアミ
ノ基と反応して繊維と共有結合を生じ得る基、例えばジ
クロルトリアジン基、モノクロルトリアジン基、トリク
ロルビリミジン基、モノクロルジフルオロビリミジン
基、クロルベンゾチアゾール基、ジクロルピリダゾン
基、ジクロルキノキサリン基、エポキシ基、3−カルボ
キシピリジニオトリアジン基、−SO2 CH2 CH2
SO3 H,−SO2 NHCH2 CH2OSO3 H、−N
HCOCH2 CH2 OSO3 H,−NHCOCH2 CH
2 Cl、NHCOCH=CH2 、−SO2 CH=CH
2 、−CH2 NHCOCl=CH2 、NHCOCBr=
CH2 、−NHCOCH2 Cl、−NHCH2 OH、−
PO3 H等を有するものである。
【0090】ここで具体例としてDインク(仮称)を以
下に示す。
【0091】 Dインク 成分 単位(重量%) 溶剤 チオジグリコール 24.0 ジエチレングリコール 11.0 反応染料 各色 10.0 ブラック C.I.Reactive Black 39(モノクロロトリアシ゛ン型) シアン C.I.Reactive Blue 72(モノクロロトリアシ゛ン型) マゼンタ C.I.Reactive Red 24(モノクロロトリアシ゛ン型) イエロー C.I.Reactive Yellow 85(モノクロロトリアシ゛ン型) 残量 水 上記で用いた染料の反応速度の順序は、マゼンタ>ブラ
ック>イエロー>シアン である。
【0092】上記のような反応性インクは、直接的な定
着性は低いがアルカリ処理することにより、セルロース
繊維内の−OH基と反応し、布はく上に鮮明で湿潤堅ろ
う度の高い色相を得ることが出来る。
【0093】上に列挙した様々なインクは、布印字に適
しているばかりでなく、他の記録媒体にも通常は有効で
ある。しかし、以下の構成の記録装置であれば、記録媒
体に応じて、印字モードと同時にインク自体も適切に選
択できることになる。
【0094】図20は、4ヘッド一体カートリッジ18
01と、各色の交換インクタンク1802それぞれが、
キャリッジ(点線部)1803に搭載して結合される様
子を示した分離型タンクの図である。インクタンク18
02はキャリッジ上でインクジェットカートリッジ18
01と圧接結合されてインクタンクより記録ヘッドに各
インク色の供給が行われる。
【0095】交換用インクタンクは係合ガイドおよびキ
ャリッジ上の加圧手段により記録ヘッド1801と結合
され、インクタンク内のインク吸収体不図示が流路先端
に設けたフィルタ1804と接することにより機械的に
結合が成される。結合後、記録装置本体の記録ヘッド吸
引回復ポンプ(不図示)等を用いて、記録ヘッド180
1に交換インクタンク1802から強制的にインクを供
給充填することでインク結合させる。
【0096】このような交換用インクタンクを記録装置
に適用させることは、消耗されていくインクを、簡単
に、また低価格で供給できるだけでなく、その時々に応
じた最適なインクでの記録が簡単にできるようになる。
本発明では、特別な印字モードを設けることによって布
印字の高画質化を図ることが主な目的ではあるが、上記
の様にインクタンクを交換させて最適なインクで印字さ
せるようにすれば、更に良好な捺染画像が得られるよう
になる。
【0097】さらにここで、基布自体の処理についても
簡単に述べておく。布に記録する場合、先着および染料
の固着性を向上させるために布に極性を持つ材料を添加
させることが好ましい。この布に対する処理は、インク
中の染料がイオン性を持っているため記録中、または記
録後にこの染料をイオン結合によって凝集させ、布繊維
に対する染料の固着性を上げる作用がある。従って、上
記布への処理は、記録前でも記録後でも構わない。この
処理に対する極性材料としては例えばポリアミルアミン
塩酸塩、ポリアミルスルホン、ジチルジアリルアンモニ
ウムクロライド等の水溶性カチオン性高分子、酢酸ビニ
ル重合体、変性合体ゴム等のアニオン性高分子等を用い
ることができる。これらを水或いはアルコール等の溶剤
に溶解或いは分散するかまたはエマルジョンの状態で布
はくに塗布や噴霧によって積層または浸透させれば良
い。
【0098】特に、インクジェット記録後に後処理する
場合においては凝集前の染料のにじみや流れだしを避け
るため、処理液の粘土を高めたり非水系によって行うこ
とはより効果的である。
【0099】これらの処理液は、洗濯することによって
除去可能であるので、捺染記録物に対し、布の持つ質感
を損なうことはない。
【0100】さらに処理後の画像の洗濯堅牢度を高める
ために、記録後の印字物に対し化学的な色止め処理やア
イロンなどの熱処理あるいはスチ−マ−の様な蒸気処理
を行うことも有効となる。
【0101】以上説明したように、既に実用化されてい
る工業的捺染技術行程の簡略化、および超浸透性インク
の開発等、各方面の技術が進むにつれ、決められたコー
ト紙、OHP用紙、或いは普通紙へのプリントが専用で
あったプリンタにおいても、今日ではこれら媒体と同様
に布へのプリントが実現可能となった。
【0102】そして、以上の構成は、具体的に図14以
降を用いて述べる装置に適用することができる。これ
は、次に述べる各実施例においても同様である。
【0103】(他の実施例)次に、本発明の第2実施例
を説明する。図5は本実施例に用いるプリント装置用の
マルチヘッドである。本実施例では、ブラック16ノズ
ルとシアン、マゼンタ、イエローの各8ノズルを1つの
マルチヘッド上に縦方向に並列させている。また、図6
にはこのマルチヘッドを用いたときの布プリントモード
のプリント状態を示しているが、ここでは50%の間引
きマスクを用い、2ノズル幅の紙送りを繰り返すことに
より、ブラックは8パス400%、カラーは4パス20
0%の画像を色毎に順次完成させていっている。この図
において、1画素に対し1ドットインクを打ち込んだ状
態を白丸(100%)、2ドット打ち込んだ状態を黒丸
(200%)、3ドットを斜線(300%)、4ドット
を×印(400%)でそれぞれ表現している。
【0104】本実施例のような縦方向(紙送り方向)に
カラーノズルが並列されている場合、布プリント以外の
100%のプリントモードでは、間引きマスクをそのま
まにして紙送り量を倍にする方法、あるいは紙送り幅を
固定のまま間引きマスクを25%にする方法がある。ま
た、ブラック強調を行わない場合には、紙送り量による
調整はできないので、ブラックノズル部のみ間引きマス
クの間引き率を半減させたり、実際にプリントノズル自
体を半減させる方法もある。
【0105】本実施例では、各色のインクを順次重ねて
行く構成となるので、異色間のにじみの発生を抑え易く
なる。また、混色部では同時にプリントするインク量を
少なくすることができるので、インクの過度な浸透を抑
制することもでき、本実施例の構成は、布帛のプリント
に好適であると言える。
【0106】以上説明したように、本実施例によれば図
5に示した構成のマルチヘッドを用い、図6に示した通
常よりインク打ち込み量の多いプリント方法を、予めイ
ンクジェットプリント装置のプリントモードの1つとし
て与えておくことにより、布プリントにおいてもプリン
トモードを選択するだけで、通常の普通紙やコート紙或
いはOHP用紙のようなプリント媒体と同様に適切な濃
度と画像品位を得ることができるようになった。
【0107】なお、第1実施例と同様に本実施例におい
ても、上記特願平5−164845号、および特願平5
−108226号を適用する事は勿論、本発明の目的を
達成するために効果的である。
【0108】以下に第3実施例として最適なインク打ち
込み量が通常の100%〜200%の場合について説明
する。
【0109】これまでの実施例では、100%と200
%のように適切なインク打ち込み量が大きく異なる場合
において、1画素に打ち込むインクドロップレットの数
をモード毎にマルチパスプリントで制御していく方法で
説明してきた。しかし、1画素へ打ち込むインク量を調
整する方法はこれに限ったものではない。打ち込むドロ
ップレットは1つだとしても、ドロップレット自体の量
を制御すれば、本発明の目的を達成させることは可能で
ある。
【0110】通常インクジェット方式では、マルチヘッ
ド自体の温度が上がると吐出量(ドロップレットの量)
が大きくなることが知られている。従って本発明におい
ても、布プリントモードに設定された場合には、通常よ
りヘッド温度を上げた状態でプリントするようにモード
を設定すれば、他のプリントモードと全く変わらないプ
リントシーケンスおよびスループットである程度高い濃
度のプリント生地が得られるようになる。
【0111】ただしマルチヘッドの吐出能力にも限界が
あり、このような温度制御手段によっても、実際には2
つ分のドロップレットと同等の量のインクを1度に吐出
することは難しい。従って、このような方法はインク打
ち込み量が2倍に満たない、すなわち100〜200%
の間に適正値が存在する布の場合に有効な方法であると
いえる。
【0112】第1および第2実施例では1ドロップ単位
でしかインク打ち込み量の調整は不可能であったが、本
実施例によれば1ドロップレット以下の微妙な調整も可
能となる。従って、上記実施例のプリント方法と本実施
例を組み合わせれば、200%以上のインク打ち込み量
を必要とするプリント媒体に対しても、より最適なイン
ク打ち込み量でプリントすることも可能となる。
【0113】また、本実施例の方法は、各色の吐出量を
上げるのみでなく、ブラック強調のように特別に1色の
みを強調したい場合にも有効である。この場合にもブラ
ックヘッドのみ他のヘッドより高温に調整することによ
り、適正な量の補正が可能となる。
【0114】さらに、第1、第2実施例と同様に本実施
例においても、上記特願平5−164845号、および
特願平5−108226号を適用することは勿論、本発
明の目的を達成するために効果的である。
【0115】通常では本実施例のように1度に大きなド
ロップレットを打ち込む方法は、布へのインク定着性不
良を招き、異色境界にじみ等の画像弊害が起こり易い状
態となるが、上記インクによってプリントすれば、上記
画像弊害を免れることができるのである。
【0116】以下に第4実施例として、図13に示す構
成のインクジェットプリント装置について説明する。本
実施例の構成は図7の第1実施例で用いたプリント装置
のヘッド構成を2段構えにしたものである。
【0117】本実施例によれば、第1実施例で画像を完
成させた一連のプリント走査を第1段階とし、この第1
段階終了後、数回の紙送り走査の後に、さらに完成され
るべきプリント領域はヘッド1301により第2段階の
プリント走査が成されるものとする。この時、第1段
階、第2段階ともに先に説明したマルチパスプリントを
行っていても良いし、また行っていなくとも良い。イン
ク打ち込み量を200%とするならば、第1段階では1
00%プリントに止め、再び第2段階で新たに100%
プリントする等、2回のプリント段階で効率良くプリン
ト走査を分配させれば良い。
【0118】このような場合、第1段階のプリントヘッ
ドが、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4色で
あったのに対し、第2段階のヘッドでは、ブラック、レ
ッド、グリーン、ブルーの4色でも良い。例えばこのよ
うな構成にすれば、常に2倍のインク打ち込み量を必要
として来た、レッド、グリーン、ブルーに対し、他の4
色と同等な量で扱えるので、画像全体のインク打ち込み
量を平均化することが可能となる。
【0119】本実施例によれば、数回のプリント走査お
よび紙送り走査の時間で乾燥を促進させ た後に第2段
階のプリントが成されるので、濃度の向上を促し、異色
間のにじみの発生をさらに抑え易くなる。また、混色部
では同時にプリントするインク量を少なくすることがで
きるので、インクの過度な浸透を抑制することもでき、
本実施例の構成は、布帛のプリントに好適であると言え
る。
【0120】さらに、第1実施例では第1段階のプリン
トで16ノズルおきに各画像領域のつなぎ位置が現れた
が、本実施例の第2段階のプリントでは、第1段階での
つなぎ部とは異なる位置につなぎ部が現れるように、予
めヘッドのY方向の位置が、セットされておくこともで
きる。このようにすることは、先に説明したマルチパス
プリントのつなぎスジに対する効果をさらに向上するも
のである。
【0121】以上説明したように、本実施例によれば、
図13に示した構成のインクジェットプリント装置を用
い、予めインクジェットプリント装置のプリントモード
の1つとして与えておくことにより、布プリントにおい
てもプリントモードを選択するだけで、通常の普通紙や
コート紙或いはOHP用紙のようなプリント媒体と同様
に適切な濃度と画像品位を得ることができるようになっ
た。
【0122】なお、これまでの実施例と同様に本実施例
においても、上記特願平5−164845号、および特
願平5−108226号を適用することは勿論、本発明
の目的を達成するために効果的である。
【0123】(装置、プリント媒体等の具体的構成例)
図14は本発明のインクジェット捺染(プリント)装置
の具体的構成例における、カットシート状プリント媒体
の搬送手段、インクジェットプリント手段およびカット
シート状布プリント媒体の主要構成を示す。また、図1
5に本発明の第1実施例におけるインクジェット捺染方
法のブロック図を示す。本実施例のインクジェット捺染
方法を図14および図15を用いて簡略に説明すると、
予めインクジェット用インクおよび基布に適した前処理
(インク染着制御処理)を施した基布を、表層にインク
(染色液)吸収性であって剥離容易な粘着層を設けた普
通紙(下紙)に貼り付けてなるカットシート状布プリン
ト媒体1707を、インクジェット捺染装置におけるプ
リント媒体の搬送手段である搬送ローラ対(搬送駆動ロ
ーラ1703および搬送従動ローラ1704)の搬送方
向上流側にセットする。インクジェット捺染(プリン
ト)の準備(インクジェットヘッドの回復処理および画
像データの設定など)が行われて、捺染工程を開始する
と、まず、搬送駆動ローラ1703およびそれに従動す
る搬送従動ローラ1704が回転を始め、搬送駆動ロー
ラ1703に先端部がつき当たっているカットシート状
布プリント媒体1707が回転している搬送ローラ対の
圧接部に引き込まれることによって、カットシート状布
プリント媒体1707が搬送手段に自動的に装着され
る。このとき、搬送駆動ローラ1703に接するカット
シート状布プリント媒体1707の面は、インクジェッ
トプリント(捺染)装置に通常頻繁に用いられる普通紙
と同様な下紙側1601の面になるように構成している
ので、安定した搬送を行うことができる。
【0124】また、搬送駆動されるカットシート状プリ
ント媒体の普通紙1601と、プリント(捺染)面であ
って搬送従動ローラと圧接搬送される基布1602とが
インク吸収性の粘着層1603によって貼り合わせてあ
るので、搬送駆動ローラによって下紙を安定して搬送す
ることによってインクジェットプリントの高精彩なプリ
ントを可能とする搬送性を得ることができる。また、図
1について説明したように、カットシート状布プリント
媒体の搬送に同期をとって、搬送路上に設けられたイン
クジェットプリント部が動作して、カットシート状布プ
リント媒体の基布上に画像データに応じたプリント(捺
染)が行われる。プリントが終了して搬送手段によって
インクジェットプリント(捺染)装置から排出された捺
染済のカットシート状布プリント媒体を自然乾燥した
後、必要に応じて加熱等による固着処理を施した上で下
紙をはがしてインクジェット捺染された基布を洗浄処理
を行い、再び自然乾燥して、カットシート状の捺染布を
得る。
【0125】本実施例における基布1602は綿100
%の生地である。本実施例では綿100%の生地をカッ
トシート状に裁断・加工する際に搬送従動ローラと接す
る際の搬送性のより安定化、および、捺染後の布目管理
(横地・縦地の判別)の容易化、さらには、原反からの
取り枚数の経済性の向上などを目的として、布目とカッ
トシートの4辺とをほぼ合致させた長方形にしている。
【0126】まず基布の染着制御処理は、基布1602
およびインクジェットインク(インク処方B)に合わせ
て調整した処理液A(尿素100重量部、炭酸水素ナト
リウム30重量部、メタニトロベンゼンスルフォン酸ナ
トリウム10重量部、水860重量部)を用いて、チン
マータイプの捺染機にて100メッシュ、ベタ柄のスク
リーンを使用して、基布を処理し、100℃で2分間乾
燥させた。インク処方Bとしては、(C.I.リアクテ
ィブ ブルー49 10重量部、ジエチレングリコール
25重量部、水65重量部)の混合液を2時間撹拌後、
濾過したものを使用した。次に、粘着層は処理液Cを用
いて普通紙1601に設ける。基布の厚み(インク受容
容量)やインクジェット捺染(プリント)のインク付与
量にもよるが、基布で吸収仕切れずに滲み出してきたイ
ンクを吸収して基布内での不如意なインクを広がりを防
止できるように、粘着層1603はインク吸収性に優れ
たものであることが好ましい。処理液Cとしては、ポリ
ビニルアルコール20%水溶液を用い、ドクターナイフ
コーターにより、普通紙上に均一に塗布した。染着制御
処理を終えた基布と、粘着層を設けた普通紙との貼り合
せは、2本のゴムローラを80℃に加熱して圧着により
行なった。
【0127】ついで、スリットカッターを用いて、布目
の方向に合わせて裁断する。ただし、布目の方向とカッ
トシート状に裁断する際の角度が一定で判別できるよう
にすれば、基布の材質・用途に依っては布目に対して所
定の角度、たとえば45度傾けても良い。本実施例で
は、裁断と同時ないしは裁断に前後して、下紙となる普
通紙に切れめ1604を入れて捺染後の剥離を容易にし
ている。同様の効果をもたらすために、搬送性を損なわ
ないように留意して粘着層1603を全面に設けず、後
端部に非貼り合わせ部を設けたり、搬送方向に沿って非
貼り合わせ部を設ける等しても良い。
【0128】本実施例では面100%の基布に対して下
紙の坪量・抄紙方向を変えてクラーク剛度を調整して搬
送性のテストを行った。坪量20gr/m2 以下の軽量
紙を下紙として剛度の小さい横目方向で貼り合わせて得
たクラーク剛度8のカットシート状布プリント媒体を用
いて搬送テストを行ったところ斜行や搬送シワが発生す
る頻度が高く搬送性にかかわる不良の発生頻度は総合的
には48/50と高く実用不可能と判定した。それに対
して上記の軽量紙を剛度の高い縦目方向で貼り合わせて
得たクラーク剛度12のカットシート状布プリント媒体
では搬送不良が10/50に激減するとともに不良自体
の程度も若干の斜行であって搬送シワのような致命的な
不良はなかった。また、坪量38gr/m2 の軽量紙を
用いて作成した横目・縦目方向のカットシート状布プリ
ント媒体のクラーク剛度はそれぞれ20、39であり搬
送テストではどちらも不良の発生はなく良好な搬送性が
得られた。よって、インクジェットプリント(捺染)装
置での搬送性の安定化および自動装着を可能とするため
に、剛直度の小さい基布を下紙との貼り合わせによって
クラーク剛度10以上に向上させれば良いことが判明し
た。クラーク剛度の上限・下限はインクジェットプリン
ト装置の構成にも依るが、好ましくは400以下であ
り、より好ましくは20以上300以下の範囲に調整す
るように、基布に応じて粘着層・下紙を選定している。
【0129】クラーク剛度の限界は、落とし込むための
給紙トレイの角度とプリント方向との角度とに関係し、
あまりに小さいとカットシート状布プリント媒体の自重
と先端部で受ける搬送駆動ローラの駆動力に依って圧接
部へ送ることが難しくなった。逆に、余りに大きいと、
カットシート状プリント媒体の若干のカールなどの非直
線性の補正をその先端部を搬送駆動ローラの周面を利用
して直線状にならわせることが難しくなった。また、給
紙トレイに依らずに圧接部へ手動でつき当てておく場合
でも、搬送ローラの周面に沿って保持することが必要で
あり、そのためにも上記の剛直度の範囲が好ましいこと
が判明した。
【0130】本実施例では、プリント媒体をカットシー
ト状のものとしているが、ロール紙状,ロールフォール
ド紙状等所謂連続紙形態のものでもよい。いずれにして
も、運搬ないし流通、保管等に際しては適宜の工夫を行
うことができる。例えば、カットシート状のものでは、
流通、保管時のプリント特性(染着特性)の変化を抑制
するために、チャック付きアルミ蒸着袋に入れた上で紙
製の箱に詰めて提供することもできるし、目的・用途に
よっては防湿紙などによる簡易包装を施しても良い。
【0131】インクジェットプリント後の洗浄は市販の
中性洗剤を用いた水洗いでも良いが、より染着性を向上
させるために処理剤Dを用いても良く、錠剤・シート状
等の形態で、カットシート状布プリント媒体に同梱する
などして提供しても良い。また、さらに染着性を向上さ
せるために、洗浄に先立ってアイロンなどによる加熱処
理を加えることが好ましい。処理剤Dとしては、フィッ
クス剤等であり、湿潤堅牢度の向上が主目的である。
【0132】再び図14を参照するに、キャリッジ17
06には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの4
色の濃淡インクがそれぞれ詰め込まれた4個のインクタ
ンク1701と、4色のインクを吐出するための4個の
プリントヘッド1174を一体化した一体プリントヘッ
ドカートリッジ1702が搭載されている。
【0133】図1に本実施例における、カットシート状
布プリント媒体の搬送ローラ対への自動装着の様子を示
すものである。従来のインクジェットプリント装置では
円筒状のプラテンローラにプリント媒体を押しつける部
材をいったん解除してプリント媒体を手動で装着した後
押しつけ部材を再び押しつけることでプラテンローラと
プリント媒体とを密着させてことで装着する方式のもの
が多く、そうしたプリント装置ではプリント媒体の剛直
度などの制約は少なく、剛直度の低い布でも搬送・プリ
ントすることができたが、手動で布をセットするので斜
行などにより布目と搬送方向を合わせたり、また、しわ
なく巻きつけ・搬送することが難しく、高精細なインク
ジェット捺染を行うのが難しかった。さらに解除機構の
繰り返し使用による押しつけ力の劣化などで搬送性を安
定させるのが難しく、また、装着動作そのものが操作性
に劣ることなどから、本実施例の様に自動装着できるも
のが好ましい。
【0134】図14で、本実施例では自動装着を安定し
て行うために傾斜した給送トレイ1705を設け、給送
トレイに沿ってカットシート状布プリント媒体1707
を挿入しておくだけで、その先端部が搬送駆動ローラ1
703に正しくつき当たる構成としている。この状態で
搬送駆動ローラ1703を回転駆動することによりカッ
トシート状布プリント媒体1707の先端部は正しく搬
送ローラ対の圧接部に導かれて斜行やしわを生じないで
搬送手段である搬送ローラ対に自動装着される。本実施
例では、前述のごとくカットシート状布プリント媒体の
布目に合わせて裁断してあるので所定の布目の方向に対
して安定した画像を捺染(プリント)でき、捺染布を切
り出してパッチワークなどに用いる場合に捺染の柄と布
目が揃えることが可能となるので歪みのない高品位な創
作が行える。給送トレイがない場合には搬送駆動ローラ
と搬送従動ローラの圧接部にカットシート状布プリント
媒体の先端部を合わせておいて搬送駆動ローラを回転駆
動させる様にすればよい。本発明におけるカットシート
状布プリント媒体は前述のごとく普通紙と同等の搬送特
性を有するものであり、その他公知の紙送りレジスト調
整機構などの適用も可能である。
【0135】1703は搬送駆動ローラで1704の搬
送従動ローラとともに自動装着されたカットシート状プ
リント媒体707を抑えながら図の矢印の方向に回転
し、プリント媒体1707を随時送っていく。キャリッ
ジ1706はプリントを行っていないとき、あるいはマ
ルチヘッドの回復作業などを行うときにはホームポジシ
ョン(不図示)に待機するようになっている。
【0136】プリント開始前、図の位置(ホームポジシ
ョン)にあるキャリッジ1706は、プリント開始命令
がくると、キャリッジガイド軸1708に沿って移動し
ながら、リニアエンコーダの読み取り信号に基づいてタ
イミングを取ってプリントヘッド1174上のマルチノ
ズルよりプリント信号に応じて4色のインクを吐出する
ことにより、紙面上に幅Dだけのプリントを行う。この
プリント走査により紙面上には、ブラックインク、シア
ンインク、マゼンタインク、イエローインクの順でイン
クが着弾してドットが形成される。紙面端部までデータ
のプリントが終了するとキャリッジは元のホームポジシ
ョンに戻り、再び次の行のプリントを行う。この最初の
プリントが終了してから2回目のプリントが始まる前ま
でに、搬送駆動ローラ1703が回転することにより幅
Dだけの紙送りを行う。このようにしてキャリッジ1ス
キャンごとにプリントヘッドのプリント幅Dだけのプリ
ントと紙送りを行う繰り返しにより、一紙面上のデータ
プリントが完成する。プリントが終了した時点で搬送手
段による排出を行うと同時に、プリント時に平坦なプリ
ント面を形成していたプラテン1709が排出方向に傾
斜して、後端部の排出を補助する構成としている。排出
の補助、およびカットシートプリント媒体のプリント部
での安定した押さえを行うために、プリント部の下流側
に拍車ローラなどの手段を設けても良い。
【0137】図17はインクを吐出するプリントヘッド
1174の構成についての説明図である。配線基板10
80の一端は、ヒーターボード1081の配線部分と相
互に接続され、さらに配線基板1080の他端部には、
本体装置からの電気信号を受け入れるための各電気・熱
エネルギー変換体に対応した複数個のパッドが設けられ
ている。このことにより本体装置からの電気信号は、そ
れぞれの電気・熱エネルギー変換体に供給されるように
なる。配線基板1080の裏面を平面で支持する金属製
の支持体1082は、インクジェットユニットの底板と
なる。押さえバネ1083は溝付天板1084のインク
吐出口近傍の領域を線上に弾性的に押し圧を作用するた
めに断面略U字形状に折り曲げ形成した部分とベースプ
レートに設けた逃げ穴を利用して引っかける爪と、バネ
に作用する力をベースプレートで受ける一対の後脚を有
している。このバネ力により配線基板1080の取り付
けは、溝付天板1084とを圧接している。支持体に対
する配線基板1080の取り付けは、接着剤などによる
貼り付けで行われる。
【0138】インク供給管1085の端部にはフィルタ
ー1086が設けられている。インク供給部材1087
は、モールド成型で作られ、溝付天板1084もオリフ
ィスプレート部1880と各インク供給口へと導く流路
が一体的に形成されている。インク供給部材1087の
支持体1082に対する固定は、インク供給部材108
7の裏面側の2本のピン(不図示)を支持体1082の
2つの穴88にそれぞれ貫通突出させ、これを熱融着す
ることにより簡単に行われる。この際、オリフィスプレ
ート部1880とインク供給部材1087との隙間を封
止し、さらに支持基板1082に設けられた溝1089
を通り、オリフィスプレート部と支持基板1082前端
部との隙間を完全に封止する。
【0139】図18はK,C,M,Yの4色のインクを
それぞれ吐出可能な上記4つのヘッド1174をフレー
ム枠1170で一体的に組み立てた4ヘッド一体インク
ジェットカートリッジ1702の構造を示している。4
つのプリントヘッドはフレーム1170内に所定の間隔
で取りつけられ、しかもノズル列方向のレジストも調整
された状態で固定される。本実施例ではヘッドの機械的
な基準面を用いて調整して色間の相互着弾位置精度を向
上させているが、フレーム枠にプリントヘッドを仮止め
した上で実際に吐出させて着弾位置を測定したデータを
基にして直接的に色間の相互着弾位置を調整してさらに
精度を高めても良い。1171はフレームのカバーであ
り、1173は4つのプリントヘッドの配線基板108
0に設けられたパッドとプリント装置本体からの電気信
号をつなぐためのコネクタである。4ヘッドを一体的に
組み立てることは取り扱い上の優位性に加えて、前述の
ごとくヘッド間の相互着弾位置精度を向上させる点で有
効であるが、プリント装置本体との信号線接続数を少な
くできる点でも大きな効果がある。たとえば、GNDラ
インなど4ヘッド共通の信号線はコネクタ基板1172
上で共通化して線数をそのまま減らすことができ、ま
た、一体化回路基板を設けてヘッドごとに時分割駆動を
行うようにすればプリント信号線の共通化も可能とな
る。こうした電気的接続数の減少はカラー機や多ノズル
高速機のように信号線数の多い装置で有効である。
【0140】(プリント媒体の他の実施例)本実施例で
は基布の搬送性向上のための剛度調整を下紙の貼り合わ
せではなく、基布自体を剛直化剤を用いて処理すること
で行ってカットシート状布プリント媒体を得た例を示
す。目標としたクラーク剛度は前記実施例と同様に、自
動装着可能なインクジェットプリント装置に適応可能な
値であるクラーク剛度10以上400以下、好ましくは
20以上300以下とした。
【0141】布自体の剛直度を向上させるため剛直化剤
を含有させた処理液E(尿素100重量部、炭酸水素ナ
トリウム30重量部、アルギン酸ナトリウム5重量部、
メタニトロベンゼンスルフォン酸ナトリウム10重量
部、水855重量部)を用いて、チンマータイプの捺染
機にて100メッシュ、ベタ柄のスクリーンを使用し
て、基布を処理し、100℃で2分間乾燥させた。イン
ク処方Fとして、(C.I.リアクティブ ブルー15
10重量部、ジエチレングリコール25重量部、水6
5重量部)の混合液を2時間撹拌後、濾過したものを使
用した。
【0142】前記実施例で示したインクジェットプリン
ト装置で搬送テストを実施したところ良好な搬送性が得
られ、高精彩な捺染布が得られた。
【0143】インクジェットプリント後の洗浄は市販の
中性洗剤を用いた水洗いでも良いが、より染着性を向上
させるために処理剤Dを用いても良く、錠剤・シート状
等の形態で、カットシート状布プリント媒体に同梱する
などして提供しても良い。また、さらに染着性を向上さ
せるために、洗浄に先立ってアイロンなどによる加熱処
理を加えることが好ましい。処理剤Dとしては、フィッ
クス剤等であり、湿潤堅牢度の向上が主目的である。本
実施例では、後処理剤を袋詰めなどの形態で提供する様
にしたが、基布の非プリント領域(先端部・後端部等)
に吸収させておいて、水洗い時に溶け出すようにしても
良い。
【0144】(装置の他の実施例)本実施例では図19
に示すように、カットシート状プリント媒体の自動装着
に加え、自動給送機構を搭載したインクジェットプリン
ト装置の例を示す。また、本実施例ではインクジェット
プリント後にプリント媒体を加熱処理して染着率の向上
を図る機構をも合わせて持たせた。さらに、インクジェ
ットプリント部のプリント方式を改良して厚手のカット
シート布プリント媒体に対しても適応可能なようにプリ
ントモードの選択機構等を有した操作パネル1910を
設けた。
【0145】本実施例における給送機構は、前記2つの
実施例で示したカットシート状布プリント媒体でも給送
可能である。前述のごとくカットシート状布プリント媒
体はインクの染着制御を行うための前処理がなされてお
り、搬送機構と同様に、プリント面側に接する給送部材
を駆動することは搬送性およびプリント特性の点から好
ましくない。即ち、インクジェットプリント装置で一般
的に用いられる給送部材の駆動側である給送駆動部材は
ゴム材などの弾性部材であるが、ゴム材と前処理済のカ
ットシート状布プリント媒体のプリント面とが摩擦褶動
されると、褶動部のインク受容特性が変化して給送跡を
発生させたり、また、逆にゴム材へ前処理剤が若干ずつ
転移した場合には摩擦係数の低下による給送不良が生じ
たりする場合がある。そこで本実施例では、給送駆動部
材をカットシート状プリント媒体の裏面(非プリント
面)側に限定した構成としている。本発明の第2実施例
で示したカットシート状布プリント媒体は下紙を用いず
に搬送性の改善を行っているので裏面側にも前処理剤が
あるが、給送駆動部材の保護の点から裏面に対して転移
防止処理をさらに施す様にしても良い。あるいは特別な
処理剤を用いずに、裁断前のロール状の状態などでで裏
面に対して予め褶動摩擦処理を行うことによって、転移
する可能性のある前処理剤を除去するようにしても良
い。
【0146】本実施例における給送機構は必要に応じて
回転駆動される給送駆動ゴムローラ1902と、カット
シート状布プリント媒体を積層保持し必要に応じて上下
する給送保持板1901と、カットシート状布プリント
媒体の先端部に当接して積層されたカットシート状布プ
リント媒体を分離する分離パッド1903および分離給
送されたカットシート状布プリント媒体を搬送ローラ対
まで送出するための給送ガイド1904とで構成され
る。
【0147】給送信号に応じてまず給送保持板1901
が上昇して給送保持板に設けられたバネ部材の加圧力に
よって給送保持板上に裏面を上にして積層保持されたカ
ットシート状布プリント媒体1707と給送駆動ゴムロ
ーラ1902とが圧接される。その状態で給送駆動ゴム
ローラが給送方向に回転駆動されると、カットシート状
布プリント媒体が裏面で摩擦褶動力を受けて給送され
る。このとき、積層されているカットシート状布プリン
ト媒体間においても摩擦褶動力が発生するので、給送駆
動ゴムローラに接する最上部のカットシート状布プリン
ト媒体に引きずられてその下側のものも同時に給送され
始める。同時に、重ねて給送され始めた複数枚のカット
シート状布プリント媒体の先端部が摩擦力の高い分離パ
ッド1903にさしかかると下側から順次引き止められ
るので、分離パッド上を通過する内に一枚のみが給送さ
れることになる。分離給送されたカットシート状布プリ
ント媒体は依然回転を継続する給送駆動ローラ1902
によって給送ガイドを介して回転駆動されている搬送ロ
ーラ対の圧接部に到達して搬送ローラに自動装着され
る。自動装着された時点でタイミングをとって給送保持
板1901が下降して、給送駆動ローラ1902の給送
力がカットシート状布プリント媒体に伝達されなくなっ
た時点で給送駆動ローラの回転を停止して給送動作を終
了する。本実施例では、給送ガイドの部分でカットシー
ト状布プリント媒体をUターンさせて上下反転させてい
るので、給送部で裏面が上側であったものが、搬送ロー
ラ対を通過する時点ではプリント面が上側になってい
る。したがって、インクジェットプリント部でのインク
の吐出方向は下向きである。インクの吐出方向はインク
ジェットプリント方式によって多少は異なるが好ましく
は下向きから横向きの範囲であれば良く、給送ガイドで
その方向に送り出すようにすれば良い。また、近年の複
写機などで用いられる両面プリントユニットと同様の機
構を用いて、いったん裏面給送されたカットシート状布
プリント媒体を上下反転させるなどの構成を取っても良
い。
【0148】いずれにしても、本実施例の給送機構でカ
ットシート状布プリント媒体を分離給送する際に重要な
構成は、カットシート状布プリント媒体の裏面側から給
送駆動する構成に限定することである。従って、本実施
例の分離パッド方式以外の公知の方式、たとえば、爪分
離方式であっても適用可能でありプリント面の裏面側に
給送駆動部材を圧接させるように構成すれば良い。自動
給送機構では上記のようにカットシート状布プリント媒
体に対して何らかの摩擦褶動力が加わるので、カットシ
ート状布プリント媒体のクラーク剛度はを多少高く設定
する必要があり、好ましくは25以上300以下の範囲
に調整することで給送特性が安定することが見いだされ
た。
【0149】インクジェットプリント動作自体は図14
に示した実施例とほぼ同様の構成・動作であるので説明
を省くが、本実施例では、インクジェットプリント部の
下流側に加熱手段を設けており、必要に応じてカットシ
ート状布プリント媒体を加熱処理を行える構成としてい
る。加熱手段は基本的にはプリンタ・複写機などの分野
で従来公知の加熱機構のいずれもが適用可能であるが、
本実施例の目的とする染着率の向上に十分な効果が得ら
れる様に構成されていれば良い。また、カットシート状
布プリント媒体の構成・基布の材質および厚み等に応じ
て加熱条件を適宜調整・選択できるような構成をするこ
とがより好ましい。本実施例では主加熱手段として反射
笠付きの赤外線ヒータ1905を用いて、インクジェッ
トプリントに伴うカットシート状布プリント媒体の前記
搬送動作に同期して所定の加熱条件で通電制御する。プ
リント面側から直接加熱した場合には、プリントパター
ンの色分布などに応じて加熱ムラ・インク蒸発ムラが生
ずる場合があるので、本実施例では裏面側からの加熱を
行うように構成しているが、加熱手段の構成・加熱条件
によってはプリント面側からの直接加熱や、両面からの
加熱を行うようにしても良く、また、加熱板などを用い
た接触加熱方式でも良い。本実施例では赤外線加熱方式
の補助構成として、加熱部近傍の熱や蒸気の滞留を防止
して安定した加熱制御を行えるように送風手段(不図
示)を設け必要に応じて、加熱部に風の流れを生じさせ
ている。本実施例では裏面からの赤外線加熱を行ってい
るので、図14の実施例で示した下紙付きのカットシー
ト状布プリント媒体では熱受容面となる下紙の赤外線吸
収効率を高めるために、下紙に黒色の紙を用いるなどし
て赤外線吸収特性の向上を計っても良く、また下紙およ
び粘着層に添加剤を用いる等して熱伝導性を高めたもの
や、搬送性・給送性に考慮してなるべく薄いものを用い
るようにしても良い。
【0150】本実施例で示したカットシート状布プリン
ト媒体が搬送可能なインクジェットプリント装置では、
布厚さ・材質に応じてインク打ち込み量を調節・選択で
きるようにしている。普通紙を用いてプリントを行う場
合には、解像性の低下、色間の滲み出し、裏抜けおよび
定着時間増大などの点でインクの最大打込量は制限され
るので、通常はインクの最大打ち込み量は水系インクの
場合には16〜28nl/mm2 程度に収めるように設
計するのが一般的である。しかしながら、本発明のよう
にカットシート状布プリント媒体にプリント(捺染)す
る場合には、基布の材質・厚み、さらには前処理条件に
もよるが、さらに多くのインクを受容できる場合があ
る。そこで本実施例では、プリント周波数に対応するプ
リント速度よりも小さいプリント速度で高密度プリン
ト、たとえば1/2のプリント速度で倍密度プリントし
たり、同一のプリント領域を複数回のプリント走査で重
ねプリントしたり、インクの吐出量を増加させるための
インクジェットヘッド駆動制御、たとえば、熱インクジ
ェットヘッドでは保温温度を高めたり、マルチパルス駆
動を行うことによって、必要に応じてインクの打込量を
増加させることを可能としている。本実施例では操作パ
ネル906上でプリントモードを厚手布に指定すると、
同一のプリント領域を3回の重ねプリントで行う全色3
00%プリントを行い、薄手布を指定すると全色200
%、また普通紙では全色100%プリントを行うように
している。そのため布に応じて最適なプリント条件を選
択でき、糸の内部まで十分に染色することが可能とな
り、深みのある捺染布を得ることができた。
【0151】本実施例では、給送機構・加熱機構・打込
量増加機構を備えたインクジェットプリント装置を用い
てカットシート状布プリント媒体に捺染するようにした
ので、操作性・染着性・色の深味が一段と優れた簡易イ
ンクジェット捺染が行えるようになった。
【0152】(その他)なお、本発明は、インクジェッ
トプリント方式を採用する場合には、その中でも、イン
ク吐出を行わせるために利用されるエネルギとして熱エ
ネルギを発生する手段を備え、前記熱エネルギによりイ
ンクの状態変化を生起させる方式、すなわちキヤノン株
式会社が提唱するバブルジェット方式のプリントヘッ
ド、プリント装置を用いることで優れた効果をもたらす
ものである。かかる方式によればプリントの高密度化,
高精細化が達成できるからである。
【0153】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4723129号明細書,同第4740
796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて
行うものが好ましい。この方式は所謂オンデマンド型,
コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特
に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持
されているシートや液路に対応して配置されている電気
熱変換体に、プリント情報に対応していて核沸騰を越え
る急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を
印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギを発
生せしめ、プリントヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさ
せて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体
(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この
気泡の成長,収縮により吐出用開口を介して液体(イン
ク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。こ
の駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成
長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(イン
ク)の吐出が達成でき、より好ましい。このパルス形状
の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細
書,同第4345262号明細書に記載されているよう
なものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率
に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記
載されている条件を採用すると、さらに優れたプリント
を行うことができる。
【0154】プリントヘッドの構成としては、上述の各
明細書に開示されているような吐出口,液路,電気熱変
換体の組合せ構成(直線状液流路または直角液流路)の
他に熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を開
示する米国特許第4558333号明細書,米国特許第
4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれ
るものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、
共通するスリットを電気熱変換体の吐出部とする構成を
開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギ
の圧力波を吸収する開孔を吐出部に対応させる構成を開
示する特開昭59−138461号公報に基いた構成と
しても本発明の効果は有効である。すなわち、プリント
ヘッドの形態がどのようなものであっても、本発明によ
ればプリントを確実に効率よく行うことができるように
なるからである。
【0155】加えて、プリントヘッドは、プリント装置
の形態に対応して構成できるのは勿論であり、所謂ライ
ンプリンタ形態のものに対してはプリント媒体の幅に対
応した範囲にわたって吐出口を配列したものとすればよ
い。また、上例のようなシリアルタイプのプリントヘッ
ドとしては、装置本体に固定されたプリントヘッド、あ
るいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的
な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換
自在のチップタイプのプリントヘッド、あるいはプリン
トヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカー
トリッジタイプのプリントヘッドを用いた場合にも本発
明は有効である。
【0156】また、本発明のプリント装置の構成とし
て、プリントヘッドの吐出回復手段、予備的な補助手段
等を付加することは本発明の効果を一層安定できるの
で、好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、
プリントヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニ
ング手段、加圧或は吸引手段、電気熱変換体或はこれと
は別の加熱素子或はこれらの組み合わせを用いて加熱を
行う予備加熱手段、プリントとは別の吐出を行なう予備
吐出手段を挙げることができる。
【0157】さらに加えて、以上説明した本発明実施例
においては、インクを液体として説明しているが、室温
やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化もし
くは液化するものを用いてもよく、あるいはインクジェ
ット方式ではインク自体を30℃以上70℃以下の範囲
内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあ
るように温度制御するものが一般的であるから、使用プ
リント信号付与時にインクが液状をなすものを用いても
よい。加えて、熱エネルギによる昇温を、インクの固形
状態から液体状態への状態変化のエネルギとして使用せ
しめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸
発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化
するインクを用いてもよい。いずれにしても熱エネルギ
のプリント信号に応じた付与によってインクが液化し、
液状インクが吐出されるものや、プリント用媒体に到達
する時点ではすでに固化し始めるもの等のような、熱エ
ネルギの付与によって初めて液化する性質のインクを使
用する場合も本発明は適用可能である。このような場合
のインクは、特開昭54−56847号公報あるいは特
開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔
質シート凹部または貫通孔に液状又は固形物として保持
された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形
態としてもよい。本発明においては、上述した各インク
に対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行
するものである。
【0158】さらに加えて、本発明の形態としては、コ
ンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として用い
られるものの他、リーダ等と組合せた複写装置の形態を
採るもの等であってもよい。
【0159】次に、インクジェット捺染用布帛として
は、(1)インクを十分な濃度に発色させ得ること、
(2)インクの染着率が高いこと、(3)インクが布帛
上で速やかに乾燥すること、(4)布帛上での不規則な
インクの滲みの発生が少ないこと、(5)装置内での搬
送性に優れていること、等の性能が要求される。これら
の要求性能を満足させるために、本発明において、必要
に応じて布帛に対し、あらかじめ前処理を施しておくこ
とができる。例えば、特開昭62−53492号公報に
おいてはインク受容層を有する布帛類が開示され、ま
た、特公平3−46589号公報においては還元防止剤
やアルカリ性物質を含有させた布帛の提案がなされてい
る。このような前処理の例としては、布帛に、アルカリ
性物質、水溶性高分子、合成高分子、水溶性金属塩、尿
素およびチオ尿素から選ばれる物質を含有させる処理を
挙げることができる。
【0160】アルカリ性物質としては、例えば、水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属、
モノ,ジ,トリエタノールアミン等のアミン類、炭酸ナ
トリウム,炭酸カリウム,重炭酸ナトリウム等の炭酸も
しくは重炭酸アルカリ金属塩等が挙げられる。さらに酢
酸カルシウム、酢酸バリウム等の有機酸金属塩やアンモ
ニアおよびアンモニア化合物等がある。また、スチーミ
ングおよび乾熱下でアルカリ物質となるトリクロロ酢酸
ナトリウム等も用い得る。特に好ましいアルカリ性物質
としては、反応性染料の染色に用いられる炭酸ナトリウ
ムおよび重炭酸ナトリウムがある。
【0161】水溶性高分子としては、トウモロコシ,小
麦等のデンプン物質、カルボキシメチルセルロース,メ
チルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース等のセル
ロース系物質、アルギン酸ナトリウム,アラビアゴム,
ローカスイトビーンガム,トラガントガム,グアガム,
タマリンド種子等の多糖類、ゼラチン,カゼイン等の蛋
白質物質、タンニン系物質,リグニン系物質等の天然水
溶性高分子が挙げられる。
【0162】また、合成高分子としては、例えば、ポリ
ビニルアルコール系化合物,ポリエチレンオキサイド系
化合物,アクリル酸系水溶性高分子,無水マレイン酸系
水溶性高分子等が挙げられる。これらの中でも多糖類系
高分子やセルロース系高分子が好ましい。
【0163】水溶性金属塩としては、例えば、アルカリ
金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物のように、典型
的なイオン結晶を作るものであって、pH4〜10であ
る化合物が挙げられる。かかる化合物の代表的な例とし
ては、例えば、アルカリ金属では、NaCl,Na2
4 ,KClおよびCH3 COONa等が挙げられ、ま
た、アルカリ土類金属としては、CaCl2 およびMg
Cl2 等が挙げられる。中でもNa,KおよびCaの塩
類が好ましい。
【0164】前処理において上記物質等を布帛に含有さ
せる方法は、特に制限されないが、通常行われる浸漬
法、パッド法、コーティング法、スプレー法などを挙げ
ることができる。
【0165】さらに、インクジェット捺染用布帛に付与
される捺染インクは、布帛上に付与した状態では単に付
着しているに過ぎないので、引き続き繊維への染料等イ
ンク中の色素の定着工程を施すのが好ましい。このよう
な定着工程は、従来公知の方法でよく、例えば、スチー
ミング法、HTスチーミング法、サーモフィックス法、
あらかじめアルカリ処理した布帛を用いない場合は、ア
ルカリパッドスチーム法、アルカリブロッチスチーム
法、アルカリショック法、アルカリコールドフィックス
法等が挙げられる。また、定着工程は、染料によって反
応過程を含むものと含まないものとがあり、後者の例と
しては繊維に含浸させて物理的に離脱しないようなもの
がある。また、インクとしては所要の色素を有するもの
であれば適宜のものを用いることができ、染料に限られ
ず顔料を含むものでもよい。
【0166】さらに未反応の染料の除去および前処理に
用いた物質の除去は、上記反応定着工程の後に従来公知
の方法に準じ、洗浄により行うことができる。なお、こ
の洗浄の際に従来のフィックス処理を併用することが好
ましい。
【0167】以上述べた後処理工程が施されたプリント
物は、その後所望の大きさに切り離され、切り離された
片は、縫着,接着,溶着等、最終的な加工品を得るため
の工程が施され、ワンピース,ドレス,ネクタイ,水着
等の衣類や布団カバー,ソファカバー,ハンカチ,カー
テン等が得られる。布帛を縫製等により加工して衣類や
その他の日用品とする方法は、例えば「最新ニット縫製
マニュアル」(センイジャーナル社発行)や月刊誌「装
苑」(文化出版局発行)等、公知の書籍に多数記載され
ている。
【0168】なお、プリント用媒体としては、布帛,壁
布,刺しゅうに用いられる糸、壁紙、紙、OHP用フィ
ルム等が挙げられ、布帛とは、素材,織り方,編み方を
問わず、あらゆる織物,不織布およびその他の布地を含
む。
【0169】
【発明の効果】以上述べてように、本発明によれば、布
帛用プリントモードを他のプリント媒体用のプリントモ
ードとは独立に有し、前記布帛用のプリントモードでの
インク打ち込み量を、紙用プリントモードよりも多くす
ることにより、通常の、すなわち工業要の捺染装置では
ない例えばパーソナルユースのカラープリンタでも表面
濃度が高く、高精彩なプリント生地を得られるようにな
る。
【0170】さらには、所定範囲内の界面活性剤を含有
するカラーインクを用いることにより、定着性にも優
れ、より優れた画像を短時間で得られるようにもなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の布プリントモードの説明
図である。
【図2】本発明の第1実施例の普通紙,コート紙に対す
るプリントモードの説明図である。
【図3】本発明の第1実施例の布プリント時のブラック
強調モードを説明するための説明図である。
【図4】本発明の第1実施例において用いたプリント装
置のプリントモードの一覧を説明するための説明図であ
る。
【図5】本発明の第2実施例において用いたプリントヘ
ッドの説明図である。
【図6】本発明の第2実施例の布プリントモードの説明
図である。
【図7】本発明に適用可能なインクジェットプリンタの
プリント部の概略を示す模式的斜視図である。
【図8】本発明の実施例において用いたプリントヘッド
の吐出口配列を説明するための説明図である。
【図9】インクジェットプリンタによる両方向プリント
時のドットずれを説明するための説明図である。
【図10】従来例の色別ドット補正パターンを説明する
ための説明図である。
【図11】本発明の第2実施例によるパターンプリント
のバリエーションを説明するための説明図である。
【図12】本発明の第3実施例による補正行程を説明す
るための説明図である。
【図13】本発明に適用可能なインクジェットプリンタ
のプリント部構成の他の例を示す模式的斜視図である。
【図14】本発明インクジェットプリント装置の具体的
構成の一例を示す模式的側断面図である。
【図15】本発明に適用可能なカットシート状布プリン
ト媒体の構成例を示す斜視図である。
【図16】本発明装置を用いるインク簡易捺染方法等を
説明するためのブロック図である。
【図17】図14の装置に適用できるインクジェットプ
リントヘッドの構成例を示す分解斜視図である。
【図18】図14の装置に適用できるカラーインクジェ
ットプリントヘッドの構成例を示す分解斜視図である。
【図19】本発明インクジェットプリント装置の具体的
構成の他の例を示す側断面図である。
【図20】本発明の一実施例にかかる分離型タンクの斜
視図である。
【符号の説明】
701,1301 ヘッドカートリッジ 702 マルチノズルヘッド 703 搬送ローラ 704 補助ローラ 705 給送ローラ 1601 搬送基材としての普通紙 1602 基布 1603 接着層 1703 搬送駆動ローラ 1704 搬送従動ローラ 1707 カットシート状布プリント媒体 1910 操作パネル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06P 5/00 111 A (72)発明者 秋山 勇治 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 春田 昌宏 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 (72)発明者 小池 祥司 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インクジェットヘッドを用い、該インク
    ジェットヘッドとプリント媒体とを相対移動させながら
    前記インクジェットヘッドから前記プリント媒体に対し
    てインクを吐出してプリントを行うインクジェットプリ
    ント装置において、布帛に対してプリントを行う布帛プ
    リントモードを他のプリント媒体に対してプリントを行
    うモードとは独立に具えたことを特徴とするインクジェ
    ットプリント装置。
  2. 【請求項2】 前記布帛用プリントモードでのインク打
    ち込み量を、前記他のプリント媒体として紙を用いるプ
    リントモードよりも多くしたことを特徴とする請求項1
    に記載のインクジェットプリント装置。
  3. 【請求項3】 前記インクジェットヘッドは、前記イン
    クを吐出するためのエネルギとして熱エネルギを発生す
    る素子を有することを特徴とする請求項1または2に記
    載のインクジェットプリント装置。
  4. 【請求項4】 界面活性剤を含有する水性インクであっ
    て、その含有率が、当該水性インクに対する臨界ミセル
    濃度未満であり、かつ前記界面活性剤を純水に対して与
    えたときの該純水に対する臨界ミセル濃度より大である
    ように前記界面活性剤を含む水性インクを、前記インク
    ジェットに与えてプリントを行うようにしたことを特徴
    とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェ
    ットプリント装置。
  5. 【請求項5】 個人的使用に供されることを特徴とする
    請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェットプ
    リント装置。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれかに記載のイ
    ンクジェットプリント装置を用いてプリント媒体にプリ
    ントを行うことによりインクジェットプリント物を製造
    することを特徴とするインクジェットプリント物の製造
    方法。
  7. 【請求項7】 前記プリント媒体が布帛であることを特
    徴とする請求項6に記載のインクジェットプリント物の
    製造方法。
  8. 【請求項8】 プリントに先立って前記布帛が10以上
    400以下のクラーク剛度を有するようにするための剛
    直化処理工程を具えたことを特徴とする請求項7に記載
    のインクジェットプリント物の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記剛直化処理は、染色液吸収性粘着層
    を介して搬送基材の片側全面に前記布帛を一体化する処
    理、または前記布帛に剛直化剤を付与する処理であるこ
    とを特徴とする請求項8に記載のインクジェットプリン
    ト物の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記プリント媒体に前処理剤を含有さ
    せる前処理工程をさらに具えたことを特徴とする請求項
    7ないし9のいずれかに記載のインクジェットプリント
    物の製造方法。
  11. 【請求項11】 前記プリント媒体へインクを付与して
    プリントを行った後に、インクを前記プリント媒体に定
    着させる工程を具えたことを特徴とする請求項7ないし
    10のいずれかに記載のインクジェットプリント物の製
    造方法。
  12. 【請求項12】 前記インクを定着させる工程の後に、
    プリントが行われたプリント媒体を洗浄処理する工程を
    さらに具えたことを特徴とする請求項11に記載のイン
    クジェットプリント物の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項7ないし12のいずれかに記載
    のインクジェットプリント物の製造方法によりプリント
    されたプリント物。
  14. 【請求項14】 請求項13に記載のプリント物をさら
    に加工して得られたことを特徴とする加工品。
  15. 【請求項15】 前記加工品は、前記プリント物を所望
    の大きさに切り離し、切り離された片に対して最終的な
    加工品を得るための工程を施して得られたものであるこ
    とを特徴とする請求項14に記載の加工品。
  16. 【請求項16】 前記最終的な加工品を得るための工程
    は縫製であることを特徴とする請求項15に記載の加工
    品。
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