JP2008106082A - 球状樹脂微粒子およびその樹脂微粒子を用いたrpt成形法およびその成形品 - Google Patents

球状樹脂微粒子およびその樹脂微粒子を用いたrpt成形法およびその成形品 Download PDF

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Abstract

【目的】RPT成型法の用いるのに好適な透明な樹脂からなる微粒子を提供する。
【構成】熱可塑性樹脂(A)からなる略球状の微粒子であり、その数平均粒径が10μmから100μmであり、親水性基と疎水性基とを有する改質剤(B)を含むものであり、熱可塑性樹脂(A)の融点あるいはガラス転移温をX(℃)とし、改質剤(B)の融点をY(℃)とした場合に、XとYの差が30(℃)以下である熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とで構成された粒子状分散相をマトリックス成分(C)に分散し、略球状の分散相を得、溶媒で抽出することにより、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)で構成された球状粒子を得る。
【選択図】 なし

Description

本発明は、RPT成型法に好適な小粒径の微粒子及びその製造方法に関するものである。特に、透明な小粒径の微粒子に関するものである。そしてその微粒子を用いたRPT成形法に関するものである。
樹脂微粒子の用途として、RPT成型法という樹脂成形方法が実用化されている。RPT法とは光造形(Stereo Lithography:SL)法によるラピッドプロトタイプ装置で、1991年頃から実用化されている。従来のSL法では、紫外線硬化型樹脂を利用するため、樹脂が限定されるとともに、光硬化性樹脂の硬化物が硬くて脆いため、SL法で得られた成形品は、デザイン的な観点から外観を確認できるものの、機械的強度などの実用的な試験に供することができない。
これに対して、粉体材料を使用し、レーザービーム加熱により粉末粒子を相互に溶融させて結合し、積層しつつ造形を行うRPT法(レーザー焼結法)が提案されている(特許第3634969号公報,特許文献1)。
RPT法による成形体の製造は、レーザー焼結させるためのチャンバー内で上下動が可能な受け皿(部品ヘッド)上に樹脂微粒子を薄い層(スライス)として広げる工程と、この微粒子層をチャンバーごと、樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱する工程と、コンピュータ制御により成形体の断面形状に従ってレーザー光線の照射部分が移動可能な制御装置を用いて、レーザー光線を照射し粉末粒子を溶融させる工程と、前記スライスの厚みに相当する層厚の値だけ、部品ヘッドを下方に移動させる工程と、新たな樹脂微粒子の層(スライス)を部品ヘッドに広げる工程と、前記と同様に、成形品の断面形状に従ってレーザー光線を照射する工程とで構成されており、これらの工程を繰り返し、成形体の断面形状に対応させたレーザー光線によるスキャンが終了する。
照射が終了すると、部品ヘッドにはスライスの積層体に対応して溶融した樹脂微粒子で形成された固化成形体が形成される。RPT成形法で重要なスライス工程(樹脂微粒子の薄層を形成する工程)では、樹脂微粒子を薄くかつ均一な層(スライス)として形成するため、ローラー状の「供給ベッド」から部品ベッド上に樹脂微粒子を供給又は送出し、粉体を部品ベッド上に所定の厚み(数十μm〜百数十μm)の薄く均等な層を形成している。このような成形方法では、射出成形などと異なり、金型の抜き口を考慮することなく、自由な形状の成形体を形成できる。
そして、RPT法に用いられる熱可塑性樹脂微粒子としては、従来より樹脂ペレットを物理的な力で細かく砕いた所謂粉砕法で得られたナイロン12などの樹脂の微粒子が多く用いられている。しかしながら、ナイロン12のような結晶性の高分子の場合は、樹脂成形物内での結晶性領域と非晶性領域が存在するため、その部分で光が屈折するために、光学的に透明な成形物が得られなかった。
RPT法の適用が期待されている技術分野の一つとして、成形物の流体実証の実験に使用するものがある。これは、例えば自動車エンジンなどの内燃機関のインテークマニホールドなどの部品をRPT法で成形した上で、実際のエンジン部品に取り付け、内部の気体の流動状態を観察するものである。エンジン運転中のインテークマニホールドなどの部品内部における気体の流動状態が詳細に解析できることで、高性能かつ小燃費のエンジンを設計することが可能になり、この分野での技術進歩に大きく貢献できる。RPT法での設計の自由度、多数の試作品が安価に提供できることもあり、期待されている用途である。
この用途に用いるためには、RPT成形品の内部の観察が不可欠であり、透明であることが必要である。更には、RPT成形品の内側の表面が気体などの流体の流動を妨げない程度に平滑であることが必要である。
成形品の外部であれば従来の技術である様々な研磨法により磨くことにより平滑にすることができるが、複雑な形状の成形品の内面の研磨は困難である。このためRPT成形品それ自体の表面が平滑であることが必要である。
原理的に、RPT法で用いる樹脂微粒子の粒径を小さくすると、RPT成形品の表面の粗度が低下して平滑に近くなる。しかしながら、樹脂粒径を小さくした場合には樹脂のブロッキング現象が発生し、そのためローラー状の「供給ベッド」によりスライスを形成する過程で、既に成形された成形断面に樹脂粒子による応力が作用し、成形断面がずれたりする現象が発生するため実用化されていなかった。
樹脂微粒子を製造する方法としては、例えば特開2004−51942号公報(特許文献2)には、樹脂成分(A)及び水溶性助剤成分(B)で構成された分散体であって、助剤成分(B)が、少なくともオリゴ糖で構成されている分散体、およびこの分散体から、助剤成分(B)を溶出し、樹脂成分(A)で構成された成形体を製造する方法が開示されている。この文献には、(i)前記助剤成分(B)が、海島構造における連続相または共連続相を形成していてもよいこと、(ii)前記分散体は、樹脂成分(A)と助剤成分(B)とを混練することにより調製できることが記載されている。そして、この文献には、前記分散体に、フィラー、可塑剤又は軟化剤、滑剤、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤)、増粘剤、着色剤、分散剤、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を配合してもよいことが記載されている。しかしながら、樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱されるRPT法での滑り性の改良については示唆も開示もない。
上記の通り、RPT法では用いる粒子の粒子径が細かく真球状でかつ樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱された状態でも樹脂粒子がブロッキングしないと得られた成形物の表面が粗面状となったり、成形そのものが不可能になるという問題点がある。そして非晶性高分子であり透明性のある樹脂微粒子でこのような微粒子は実用化されていなかった。
特許公報 第3634969号 特開2004−51942号公報(請求項1、25、段落番号[0100][0103][0107])
従って、本発明の目的は、粒子が細かく、すなわち粒子径が小さくかつ樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱された状態でも樹脂粒子が持つ滑り性が安定して確保された球状粒子を提供することにある。
本発明の他の目的は、透明な樹脂微粒子であってもRPT成形法に用いた場合に好適な、粒子径が小さくかつ樹脂の可塑化温度より僅かに低い温度まで加熱された状態でも樹脂粒子が持つ滑り性が安定して確保された球状粒子を得ることであり、さらにはこのような微粒子を用いて得られたRPT成形品を提供することである。
本発明は熱可塑性樹脂(A)からなる略球状の微粒子であり、その数平均粒径が10μmから100μmであり、親水性基と疎水性基とを有する改質剤(B)を含むものであり、熱可塑性樹脂(A)の融点あるいはガラス転移温をX(℃)とし、改質剤(B)の融点をY(℃)とした場合に、
式 X-Y=h
で求められるhが30(℃)以下である樹脂粒子を用いた場合に樹脂粒子のすべり性が確保され、耐ブロッキング性が改良されることを見出した。
このような改質剤(B)を用いると熱可塑性樹脂の結晶化℃が5重量%以下である実質的に非晶性高分子からなる場合であっても耐ブロッキング性が確保されることを見出した。更に、屈折率が高くかつ透明であり、本発明の目的である透明なRPT成型法で透明な成型品を得るのに好都合な環状オレフィンモノマー重合体を熱可塑性(A)として用いた場合でも、hが30(℃)以下であると耐ブロッキング性が確保されることを見出した。改質剤(B)が脂肪酸アミド類であってもよい。
透明で屈折率が高い環状オレフィンモノマー重合体を用いた微粒子であっても耐ブロッキング性が良好である。本発明の樹脂粒子をRPT成型法に用いることにより、透明で表面が平滑なRPT成型品を得ることができる。
本発明の樹脂粒子は、熱可塑性樹脂(A)と、この熱可塑性樹脂(A)を改質するための特定の改質剤(B)とで構成されている。
(A)熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂(A)としては、高分子化合物を用いる場合が多い。前記熱可塑性樹脂としてはポリエステル(例えば、芳香族ポリエステルや脂肪族ポリエステルなど)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリ(チオ)エーテル(例えば、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリスルフィド、ポリエーテルケトンなど)、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリイミドなどの縮合高分子;ポリオレフィン、ポリ(メタ)アクリル、ポリスチレン、ポリビニル(例えば、ハロゲン含有ポリビニル、ポリビニルエステル又はその誘導体など)などのポリビニル重合系高分子、熱可塑性エラストマー、セルロース誘導体などの天然物由来樹脂、熱可塑性シリコーン樹脂などが含まれる。
熱可塑性樹脂の熱変形温度(例えば、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)は、60〜300℃の範囲から選択でき、例えば、80〜260℃、好ましくは100〜240℃(例えば110〜240℃)、さらに好ましくは120〜230℃(例えば130〜220℃)程度である。
熱可塑性樹脂の平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の重量平均分子量で、例えば、5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000、さらに好ましくは20,000〜150,000程度であってもよい。
これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。樹脂成分(A)としては、通常、熱可塑性樹脂、非水溶性樹脂(又は疎水性樹脂、非水溶性熱可塑性樹脂など)を好適に使用できる。以下、代表的な熱可塑性樹脂を例示するがこれらの例示にはそれらの共重合体あるいはグラフト変成物、ブロック共重合体なども含めるものである。
(1)ポリオレフィン
ポリオレフィンには、α−C2-6オレフィンの単独又は共重合体、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(メチルペンテン−1)などのオレフィンの単独又は共重合体、オレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体など)が挙げられる。これらのポリオレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(非晶性高分子)
上記の通り熱可塑性樹脂(A)として、結晶性高分子も用いることができるが特に好ましくは非晶性高分子を用いることができる。非晶性高分子とは無定形高分子ともいわれはっきりした結晶状態を示さない高分子であり、アタッチック(atactic)高分子、共重合高分子などに多く見られるものである。本発明でいう非晶性高分子とは明確な結晶性を示さない広義の意味での非晶性高分子であり、結晶構造を僅かに含むものも非晶性高分子の範疇に含める。
すなわち、共重合高分子などでは局所的あるいは微小部分的には結晶部分を含む場合もあるが、このようなものでも本発明においては非晶性高分子と見做す。また、結晶化度が5%程度のものも非晶性高分子に含める。
一般的に高分子物質では結晶部分と非晶部分とでは密度が異なる。そして、結晶化度はその高分子の熱履歴に依存する。多くの場合、熱可塑性樹脂微粒子の熱履歴とRPT成形法での熱履歴は異なる。そのため熱可塑性樹脂微粒子とRPT成形品での熱可塑性樹脂の結晶化度は異なる。このため結晶化度が高い樹脂をRPT成形法に用いた場合には、RPT成形品の予期せぬ収縮や望まない歪みが発生する。
一方、非晶性高分子はその内部に結晶構造をほとんど含まないため、上記の問題点を避けることができる。しかしながら、非晶性高分子は多くの場合熱可塑時の粘度が高いために、熱成形で真球状の微粒子を製造することが困難である。本発明の方法を用いれば、非晶性高分子であっても熱成形法で真球状の微粒子を得ることができる。更には微小な粒径の微粒子を得ることもできる。
非晶性高分子を本発明の熱可塑性樹脂(A)に用いる場合、更に有利な点がある。すなわち、結晶性高分子の場合はガラス転移温度の前後において物性が変化する。このため、応力や外力が加えられた状態で温度が上昇した場合には、ガラス転移温度を超えた段階で物性変化が生じ、RPT成形品を用いたもので試験した場合でも、これらの物性変化が試験結果に影響を及ぼすことがある。一方、非晶性高分子の場合はガラス転移温度は熱成形温度に近く、成形物が熱変形するまでの温度範囲で特に大きな物性変化がなく、RPT成形品の実装試験や実装を想定した試験で、幅広い温度範囲で正確な試験結果を得ることができる。
またRPT成形品が透明になると前述のような利点があるので好適である。このようなRPT成形品を得るためには、RPT成形法に用いる球状微粒子の主要成分である熱可塑性樹脂(A)の透明性が高いことが必要である。球状微粒子の主成分である熱可塑性樹脂(A)が透明性の高い高分子で構成されている場合は、RPT成形品を得た場合にも透明な成形品がえられる。このような成形品は、RPT成形品内部の液体や気体の流動状態を外部から簡単に解析することができ、更に好都合である。
熱可塑性樹脂(A)に用いられる透明性の高い高分子としては屈折率が1.4以上のものが好ましく、1.45以上、更に好ましくは1.49以上のものを用いることができる。また高分子の透明度としては、厚みが2mmの試験片をJIS K7105あるいはそれとほぼ同じ測定方法であるISO 13468−1に記載された方法で測定した場合に全光線透過率が80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上のものが用いることができる。特に好ましくは屈折率が1.4以上でありかつ透過率が80%以上の高分子である。屈折率はISO 489に記載されている方法で測定することができる。
以下、代表的な非晶性高分子を例示する。
(2)ポリスチレン及びその共重合体
ポリスチレン及びその共重合体としては、スチレン系単量体(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなど)の単独又は共重合体(ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−α−メチルスチレン共重合体など)、スチレン系単量体と共重合性単量体との共重合体(スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)、スチレン−無水マレイン酸共重合体など;スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのブロック共重合体など;ゴム成分の存在下、少なくともスチレン系単量体をグラフト重合したグラフト重合体、例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS、又はゴムグラフトポリスチレン)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、このABS樹脂のブタジエンゴムBに代えて、エチレンプロピレンゴムE、アクリルゴムA、塩素化ポリエチレンC、酢酸ビニル重合体などのゴム成分を用いたグラフト共重合体(AES樹脂,AAS樹脂,ACS樹脂などのAXS樹脂)、アクリロニトリルに代えて(メタ)アクリル系単量体(メタクリル酸メチルなど)を用いたグラフト共重合体(例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴム−スチレン共重合体(MBS樹脂)など)などが挙げられる。
(3)(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルとの共重合体
(メタ)アクリル酸およびそれらのエステルとの共重合体としては、(メタ)アクリル系単量体((メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリロニトリルなど)の単独又は共重合体、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチルなどのポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(MS樹脂など)などが挙げられる。
(4)環状オレフィンモノマー重合体
本発明においては環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を用いるのが最も好ましい。環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体は、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンをモノマー単位として構成されるポリマーの総称であり、環状オレフィンの単独又はその共重合体[環状オレフィン単独の開環重合体、2種以上の環状オレフィンの開環重合体(単環式オレフィンとノルボルネン類などの多環式オレフィンとの共重合体など)など]、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体の他環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を主体としたポリマーブレンド又はポリマーアロイ(上記重合体と、各種ポリマーとのブレンド物など)が例示される。このような重合体又は共重合体は、例えば、特開昭60−168708号公報、特開昭61−120816号公報、特開昭62−252406号号公報、特開平2−167318号号公報、特開平4−35653号公報などに開示されている。本発明においては環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体を含めて環状オレフィンモノマー重合体と称する。
代表的な環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類又はジシクロペンタジエン類、ノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン類、ヘキサシクロ[6.6.1.1.1.0.0]ヘプタデセン−4類、エチレンとシクロペンタジエンとから合成される6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンなどが例示できる。環状オレフィンは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。環状オレフィンはノルボルネン類であってもよい。
環状オレフィンモノマー共重合体において共重合される単量体としては、共重合可能な限り特に限定されないが、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2−20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5−20アルカジエン)など]などが例示できる。
これらの共重合性単量体は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。共重合性単量体は、α−オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンなどのC2−10α−オレフィン類、特にC2−6α−オレフィン類)であってもよい。
さらに、本発明の目的を損なわない範囲内で、共重合性単量体として、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などを用いてもよい。これらの共重合性単量体も単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
好ましい環状オレフィンモノマー重合体は、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体(例えば、エチレン−環状オレフィン系共重合体などのα−C2−4オレフィンと環状オレフィンとの共重合体)である。このような共重合体は、オレフィン系重合体(エチレン系重合体など)と環状オレフィンホモポリマーとの性質を兼ね備えており、α−オレフィンの共重合比率を調整することにより、所望のガラス転移温度を有し、かつ高分子量の重合体を得ることができる。耐熱性の点からは、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)とを縮合した環状ポリオレフィンモノマー重合体、ノルボルネン類とシクロペンタジエン(又はジシクロペンタジエン類)と、共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)とを重合した環状ポリオレフィン系共重合体が好ましい。なお、後者の環状ポリオレフィン系共重合体において共重合性単量体(例えば、α−オレフィン類)の使用量は特に制限されず少量(例えば、1〜25モル%、好ましくは2〜20モル%程度)であってもよい。
なお、環状オレフィンモノマー重合体(例えば、α−オレフィンと環状オレフィンとの共重合体)は、ガラス転移温度が高くなり、割れ易いと言う性質が顕著になる。そして、このような環状オレフィンモノマー重合体を従来の方法で粒子化するのは困難になる。
しかし、ガラス転移温度が高く、高分子量の環状オレフィンモノマー重合体であっても、本発明の方法を用い微粒子化することにより、高分子量の環状オレフィンモノマー重合体微粒子を得ることができる。そして、このような微粒子からは高強度のRPT成形品を得ることができる。また、高分子量のα−オレフィンと環状オレフィンの共重合体であれば、所望する耐熱性に応じてガラス転移温度を調整することもでき、かつガラス転移温度以上の可塑化温度での溶融粘度が高く、RPT成形法で成形しても、意図しない溶融樹脂のにじみ等の広がりを抑制できる。
環状オレフィンモノマー重合体の可塑化温度の指標としてはガラス転移温度を用いることができ、環状オレフィンモノマー重合体のガラス転移温度は、所望する特性、例えば耐熱性などに応じて選択でき、70〜200℃(例えば、75〜190℃)、好ましくは80〜175℃(例えば、85〜165℃)、さらに好ましくは90〜150℃(例えば、95〜140℃)程度である。ガラス転移温度が低いと、可塑化温度が低くなり、マトリックス成分(C)の選択の範囲が広がるが、樹脂粒子の耐熱性が低下する。なお、本発明では、マトリックス成分(C)として少なくとも1つの環状構造を有する水溶性多糖類(C2)などを用いることにより、ガラス転移温度の高い環状ポリオレフィンモノマー重合体であっても有効に球状微粒子(平均粒径の小さな樹脂粒子)を得ることができ、樹脂粒子の耐熱性を向上できる。そのため、環状オレフィンモノマー重合体のガラス転移温度は、100〜180℃(例えば、120〜150℃)、好ましくは130〜145℃程度であってもよい。
環状オレフィンモノマー重合体分子量は、重量平均分子量(Mw)2×10〜30×10(例えば、3×10〜25×10)、好ましくは4×10〜20×10(例えば、5×10〜18×10)、さらに好ましくは7×10〜15×10(8×10〜12×10)程度である。なお、重量平均分子量が2×10以下の環状オレフィンモノマー重合体を粉砕法で微粒子化すると、さらに分子量が低下してしまい好ましくなく、2×10を越える環状オレフィンモノマー重合体を物理的に粉砕することは困難である。これに対して、本発明では、このような分子量の環状オレフィンモノマー重合体であっても分子量の低下を防止しつつ微粒子化できる。
なお、重量平均分子量3×10以上の環状オレフィンモノマー重合体は成形品の強度を向上させるのに有用である。また、重量平均分子量3×10〜10×10(例えば、3×10〜8×10)の環状オレフィンモノマー重合体を用いると、RPT法での成形において充分な溶融粘度を保持しているとともに、粒子化工程でも溶融粘度が高くなりすぎることがなく、溶融粘度が粒子化工程とRPT法による成形工程との双方でのバランスが好適である。なお、過度に分子量が高すぎると、微粒子の粒子径が大きくなる場合もあり、また、粒度分布が大きくなりすぎる場合がある。
(B)改質剤
本発明では、熱可塑性樹脂(A)と、特定の改質剤(B)とを組み合わせることにより、樹脂粒子の滑り性を有効に改質し、チャンバー内でのブロッキング現象を抑制する。
本発明で用いる改質剤(B)としては(親水性基と疎水性基(又は親油性基)とを有する改質剤(化合物)が挙げられる。これらの改質剤については特開2004−51942号公報に両媒性改質剤として記載されているものを用いることもできる。
特に、結晶性を有する改質剤(B)を改質剤として用いると、改質剤(B)の機能をより一層有効に発現できる。この理由は定かではないが、結晶性でかつ両親媒性の改質剤(B)は、粒子表面で分子鎖の配列方向に親水性基および疎水性基に由来する板状の結晶構造を形成するとともに、さらに隣接する板状結晶が親水性基および疎水性基双方の親和性により分散相(樹脂粒子)表面に沿って(又は粒子の接線方向に沿って)平行又はほぼ平行に板状の層状結晶構造(又はラメラ結晶構造)を形成する。そして、この層状結晶が劈開することにより、効率よく改質剤の改質機能(例えば、滑り性など)を発現できるものと考えられる。
好ましい改質剤には、脂肪酸系ワックスが含まれる。脂肪酸系ワックスは、滑剤などとして用いられており、滑り性(又は潤滑性)を付与するのに有用な改質剤である。また、脂肪酸アミドなどの脂肪酸系ワックスは、両親媒性を有しているため、滑り性だけでなく、帯電防止性を有しており、滑り性および帯電防止性を付与できる場合が多い。
脂肪酸系ワックス(脂肪酸系滑剤)としては、脂肪酸、脂肪酸誘導体などが挙げられる。
脂肪酸の誘導体としては、脂肪酸の金属塩、エステル、アミドなどが挙げられる。
脂肪酸エステルは、脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)とアルコールとのエステルである。脂肪酸アミドは、アミン又はアンモニアの水素原子を脂肪酸(前記例示の脂肪酸など)に対応する酸基で置換した化合物である。アミンは、第1級アミン(又はN−モノ置換アミン)又は第2級アミン(又はN,N−二置換アミン)であってもよく、モノアミン又はポリアミンであってもよい。本発明において特に好ましいのは脂肪酸アミド類である。具体的な脂肪酸アミドには、脂肪酸モノアミド類、脂肪酸ポリアミド(ポリ脂肪酸アミド)類などが含まれる。
脂肪酸モノアミド類としては、飽和脂肪酸モノアミド類、不飽和脂肪酸モノアミド類などが挙げられる。飽和脂肪酸モノアミド類としては、例えば、アルカンカルボン酸モノアミド類などが挙げられる。不飽和脂肪酸モノアミド類としては、不飽和脂肪酸モノアミド[例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノレイン酸アミドなどのC8-40不飽和脂肪酸モノアミド、好ましくはC12-36不飽和脂肪酸モノアミド、さらに好ましくはC16-34不飽和脂肪酸モノアミド、特にC18-32不飽和脂肪酸モノアミド]、N−置換不飽和脂肪酸モノアミド(例えば、N−ステアリルエルカ酸アミドなどの置換基を有していてもよいN−置換C8-40不飽和脂肪酸モノアミドなど)などが挙げられる。
脂肪酸ポリアミド類としては、ビス脂肪酸アミド類、例えば、飽和脂肪酸ビスアミド類、不飽和脂肪酸ビスアミド類などが含まれる。飽和脂肪酸ビスアミド類としては、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(飽和脂肪酸アミド)などが挙げられる。アルキレン(又はアルキリデン)ビス(飽和脂肪酸アミド)としては、例えば、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(アルカンカルボン酸アミド)[例えば、N,N’−メチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(パルミチン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(ベヘン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(モンタン酸アミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(ステアリン酸アミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸アミド)などのN,N’−C1-12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8-40アルカンカルボン酸モノアミド)、好ましくはN,N’−C1-10アルキレンビス(C12-36アルカンカルボン酸モノアミド)、さらに好ましくはN,N’−C1-8アルキレンビス(C16-34アルカンカルボン酸モノアミド)、特にN,N’−C1-6アルキレンビス(C18-32アルカンカルボン酸モノアミド)など]などが挙げられる。
不飽和脂肪酸ビスアミド類としては、アルキレン(又はアルキリデン)ビス(不飽和脂肪酸アミド)[例えば、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)、N,N’−エチレンビス(エルカ酸アミド)、N,N’−エチレンビス(オクタデカジエニルアミド)、N,N’−エチレンビス(リシノレイルアミド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(リシノレイルアミド)などのN,N’−C1-12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C8-40不飽和脂肪酸モノアミド)、好ましくはN,N’−C1-10アルキレンビス(C12-36不飽和脂肪酸モノアミド)、さらに好ましくはN,N’−C1-8アルキレンビス(C16-34不飽和脂肪酸モノアミド)、特にN,N’−C1-6アルキレンビス(C18-32不飽和脂肪酸モノアミド)など]などの他、エチレンジアミン−(ステアリン酸アミド)オレイン酸アミドなどの混酸アミドなども含まれる。これらの中でも特にエチレンビスステアリン酸アマイドが好適に用いることができる。
これらの脂肪酸系ワックスのうち、脂肪酸アミド類は、結晶性(分子結晶性)を有する両親媒性の脂肪酸系ワックスであり、融点が熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度と比較した場合に近い温度を有しているためか、特に滑り性の改良効果が大きい。
特に、脂肪酸アミド類の中でも、長鎖(又は高級)脂肪酸アミド(例えば、アミド基(アミド基を構成する水素原子)が置換されていてもよいC12-36飽和又は不飽和脂肪酸アミド)、例えば、長鎖飽和脂肪酸モノアミド(例えば、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどのC12-36アルカンカルボン酸モノアミド)、長鎖不飽和脂肪酸モノアミド(例えば、エルカ酸アミドなどのC12-36不飽和脂肪酸モノアミドなど)、長鎖脂肪族基が置換した長鎖脂肪酸モノアミド{例えば、N−長鎖アルキル−長鎖脂肪酸モノアミド(例えば、N−ステアリルステアリン酸アミドなどのN−C12-36アルキル−C12-36アルカンカルボン酸モノアミドなどのN−長鎖アルキル−長鎖アルカンカルボン酸モノアミドなど);長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖脂肪酸モノアミド(エステルアミド化合物)[例えば、ステアロアミドエチルステアレートなどのN−(C8-40アシルオキシ−アルキル)C12-36アルカンカルボン酸モノアミド、好ましくはN−(C12-36アシルオキシ−アルキル)C14-34アルカンカルボン酸モノアミド、さらに好ましくはN−(C16-32アシルオキシ−C2-4アルキル)C16-32アルカンカルボン酸モノアミドなどの長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖アルカンカルボン酸モノアミド]などの長鎖脂肪族アシル基が置換した長鎖飽和脂肪酸モノアミド]などの長鎖脂肪族基が置換した長鎖脂肪酸モノアミドなど}、長鎖飽和脂肪酸ビスアミド[例えば、N,N’−エチレンビス(ステアリン酸アミド)などのN,N’−C1-12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C12-36アルカンカルボン酸モノアミド)など]、長鎖不飽和脂肪酸ビスアミド[例えば、N,N’−エチレンビス(オレイン酸アミド)などのN,N’−C1-12アルキレン(又はアルキリデン)ビス(C12-36不飽和脂肪酸モノアミド)など]などが好ましい。
脂肪酸系ワックス(例えば、脂肪酸アミド類)は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
本発明においてはこれらの改質剤(B)の中で熱可塑性樹脂(A)の融点あるいはガラス転移温度と改質剤(B)の融点との差が特定の範囲のものが用いることができる。
すなわち、熱可塑性樹脂(A)の融点(℃)あるいはガラス転移温度(℃)をXとし、改質剤(B)の融点(℃)をYとした場合に下記式
X−Y=h
のhが30(℃)以下、好ましくは20(℃)以下、更に好ましくは5(℃)以下、より好ましくは−20(℃)以下である融点Y(℃)をもつ改質剤(B)が用いることができる。またhが-50(℃)以上の融点Y(℃)をもつ改質剤(B)が用いることができる。
なお、改質剤(B)が、2種以上の混合物である場合、主たる改質剤(B)の融点が、上記のhの範囲であってもよい。熱可塑性樹脂(A)の融点あるいはガラス転移温度のどちらをXとするかは、熱可塑性樹脂(A)が結晶性高分子であるか、実質的に結晶性を示さない広義の意味での非晶性高分子かに依存し、結晶性高分子であれば融点を用い、非晶性高分子であればガラス転移温度を用いる。
hが30(℃)以上であると樹脂粒子の製造工程で熱可塑性樹脂(A)が十分可塑化される前に改質剤(B)が液化し、熱可塑性成分(A)の分散体に改質剤(B)が混入されないためかあるいは、樹脂粒子の製造工程中での熱可塑性樹脂(A)の分散体の内部での改質剤(B)の拡散が不足するためか、製造された樹脂粒子のブロッキング防止効果は不十分となる、同時にRPT成形法でのチャンバー内でのブロッキング防止の効果は失われる。特に熱可塑性樹脂(A)に環状ポリオレフィンモノマー重合体を用いた場合には、環状ポリオレフィンモノマー重合体の疎水性が高いためか、製造された樹脂粒子のブロッキング防止効果は不十分となる現象が顕著である。
hが−50(℃)よりも小さいと改質剤(B)を熱可塑性樹脂(A)からなる微粒子中に均一に分散するのが困難になる。
改質剤(B)の融点としては、Δhが上記の範囲内にあるものであれば良いが、好ましくは改質剤(B)の融点が90〜250℃、より好ましくは100〜200℃、特に好ましくは120〜190℃、より良く好ましくは130〜180℃のものである。
粒子(及び分散体)において、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)との割合は、前者/後者(重量比)=99.9/0.1〜50/50(例えば、99.8/0.2〜65/35)、好ましくは99.7/0.3〜80/20(例えば、99.5/0.5〜85/15)、さらに好ましくは99/1〜90/10(例えば、98.5/1.5〜95/5)程度であってもよい。
なお、本発明では、前記背景技術の項で記載した方法などを適用してもRPT成形法でのチャンバー内、滑り性(潤滑性、しっとり感など)を十分に付与することが困難な熱可塑性樹脂であっても、本発明のΔhが特定の範囲の改質剤(B)を用いることにより、RPT成形法でのチャンバー内のように樹脂の可塑化温度に極めて近い温度であっても有効に滑り性を付与できる。
なお、前記熱可塑性樹脂(A)は、他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、可塑剤(又は軟化剤)、充填剤(粉粒状フィラーなど)、光分解性付与剤(アナターゼ型酸化チタンなど)、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸
収剤、耐候(光)安定剤、加工安定剤など)、紫外線散乱剤(酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物の粉末など)、分散剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤[例えば、染料又は顔料[油溶性染料(ソルベント染料など)、分散染料、バット染料、硫化染料、アゾイック染料(ナフトール染料)、無機顔料、有機顔料、電荷制御剤、離型剤、光沢剤、濡れ性改良剤、流動化剤、架橋剤、抗菌剤、防腐剤などが例示できる。これらの成分は2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
(C)マトリックス成分
前記分散体において、マトリックスを構成するマトリックス成分は、熱可塑性樹脂(A)[および改質剤(B)]を分散可能な成分であればよい。すなわち、前記マトリックス成分(C)は、熱可塑性樹脂(A)および改質剤(B)に対して、通常、相溶性を有しない(又は非相溶性の)成分であればよい。なお、マトリックス(又はマトリックス成分)は、通常、固体(常温で固体)である。このような固体マトリックス成分は、固体であれば、液体のマトリックス成分を含んでいてもよい。なお、水溶性マトリックス成分と、熱可塑性樹脂(A)及び改質剤(B)とを組み合わせて分散体を形成した後、後述するように、適宜溶出又は洗浄するなどの方法により、改質剤により改質された樹脂粒子(樹脂微粒子など)を形成できる。これらのマトリックス成分については熱可塑性樹脂(A)と相溶性を有さない成分であって、熱可塑性樹脂(A)との溶融混練が可能であれば特に限定ないが、水溶性であることが好ましい。すなわち、マトリックス成分を水溶性のマトリックス成分とすることにより、分散体から、水によりマトリックスを除去できるため、経済的および環境的に有利である。これらのマトリックス成分としては特開2004−51942号公報に記載されているものを用いることもできる。
具体的な水溶性のマトリックス成分としては、特開2004−51942号公報に記載されている通り熱可塑性樹脂や改質剤の種類にもよるが、例えば、水溶性樹脂[例えば、ポリアルキレングリコール、ビニルアルコール系重合体などの水溶性合成樹脂;、糖類又はその誘導体[例えば、単糖類(例えば、グルコースなど)、オリゴ糖、多糖類(例えば、デンプンなど)、糖アルコールなど]などが挙げられる。これらのマトリックス成分は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
マトリックス成分は、少なくともオリゴ糖(C1)または環状構造を有する多糖類(C2)で構成していてもよい。オリゴ糖は、糖類であるので、前記水溶性樹脂などに比べて、分散体から溶出により除去しやすく、後述する樹脂粒子の生産性を高めることができる。オリゴ糖で構成されたマトリックス成分については、特開2004−51942号公報を参照することもできる。
(C1)オリゴ糖
オリゴ糖(C1)は、2〜10分子の単糖類が、グリコシド結合を介して脱水縮合したホモオリゴ糖と、少なくとも2種類以上の単糖類及び/又は糖アルコールが、2〜10分子グリコシド結合を介して脱水縮合したヘテロオリゴ糖とに大別される。オリゴ糖(C1)としては、例えば、二糖類乃至十糖類が挙げられ、通常、二糖類乃至六糖類のオリゴ糖が使用される。
混練により、効果的に熱可塑性樹脂と助剤成分とを分散させるためには、オリゴ糖の粘度は高いのが望ましい。具体的には、B型粘度計を用いて温度25℃で測定したとき、オリゴ糖の50重量%水溶液の粘度は、例えば、1〜500Pa・s、好ましくは2〜250Pa・s(例えば、3〜100Pa・s)、さらに好ましくは4〜50Pa・s(例えば、6〜50Pa・s)程度である。
また、オリゴ糖(C1)の融点又は軟化点は、熱可塑性樹脂(A)の熱変形温度(例えば、熱可塑性樹脂(A)の融点又は軟化点、JIS K 7206で規定されるビカット軟化点)より高いのが好ましい。なお、一般にオリゴ糖の無水物は、高い融点又は軟化点を示す。オリゴ糖の融点又は軟化点と、熱可塑性樹脂(A)の熱変形温度との温度差は、例えば、1〜80℃、好ましくは10〜70℃、さらに好ましくは15〜60℃程度である。
水溶性マトリックス成分(C)はオリゴ糖で構成してもよいが、溶融粘度を高めるには、環状構造を有する多糖類(水溶性多糖類)を単独で又はオリゴ糖と組み合わせて使用するのが有利である
(C2)環状多糖類
環状構造を有する水溶性多糖類(単に環状多糖類という場合がある)において、環状構造(環状骨格、環状ユニット、環状部位)は、多糖類を構成する複数のグリコース単位[通常、グルコース単位(特にD−グルコース)]がグルコシド結合(又はグルコシル化)して形成された環であればよい。すなわち、本明細書において、環状構造とは、複数のグリコース単位(およびグルコシド結合)で形成された環を意味し、グルコース環などの単糖類の環を意味するものではない。
このような環状多糖類は、オリゴ糖などに比べて比較的高分子量であり溶融粘度が高く、しかも、その環状構造によるためか、水溶性を示す。環状多糖類を使用すると、溶融混練において高い剪断粘度を保持できるため、溶融混練性を損なうことなく溶融混練でき、しかも水溶性であるため、水などにより容易に除去可能である。特に、熱可塑性樹脂(A)に環状オレフィンモノマー重合体を用いた場合には、樹脂粒子製造時の溶融混錬工程で、溶融した熱可塑性樹脂(A)の溶融粘度が高くなるため、得られた微粒子の粒径が大きくなることもあり、また粒径分布のバラツキが大きくなることがある。水溶性マトリックス成分(C)を環状多糖類(C2)で構成した場合には、水溶性マトリックス成分(C)の溶融粘度を大きくすることができ、粒子径が小さくかつ粒子径のバラツキが小さい微粒子を得ようとする場合には有利である。
前記多糖類において、環状構造は、複数のグルコシド結合で構成されていればよく、α−グルコシド結合又はβ−グルコシド結合で構成されていてもよく、通常、α−グルコシド結合で構成されていてもよい。
環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度、環状構造を形成する平均グルコシド結合数、環状構造を形成するグリコース単位の平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜500程度)、好ましくは12以上(例えば、12〜300程度)、さらに好ましくは14以上(例えば、14〜100程度)であってもよい。
また、環状構造を構成するグルコシド結合は、通常、少なくとも1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)で形成された環であればよく、1,4−グルコシド結合(特に、α−1,4−グルコシド結合)と1,6−グルコシド結合(特に、α−1,6−グルコシド結合)とで形成された環であってもよい。
このような1,6−グルコシド結合を含む環において、環状構造(1つの環状構造あたり)における1,6−グルコシド結合の平均数は、1以上(例えば、1〜700程度)であればよく、例えば、1〜300(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100(例えば、1〜50)、さらに好ましくは1〜20(例えば、1〜10)であってもよい。
また、環状多糖類は、少なくとも1つの環状構造(環状ユニット)を有していればよく、複数の環状構造を有していてもよい。
なお、環状多糖類の平均重合度(数平均重合度、総平均重合度、多糖類全体の平均重合度)は、例えば、14以上(例えば、14〜15000)、好ましくは17以上(例えば、17〜10000)、さらに好ましくは20以上(例えば、20〜8000)程度であってもよい。
なお、環状多糖類は、誘導体化(又は変性)されていてもよい。例えば、環状多糖類は、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)が誘導体化[例えば、エーテル化(例えば、メチルエーテル化などのアルキルエーテル化;ヒドロキシエチルエーテル化、ヒドロキシプロピルエーテル化などのヒドロキシアルキルエーテル化;グリセリル化など)、エステル化、グラフト化、架橋化など]された誘導体であってもよい。これらの環状多糖類は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
代表的な環状構造を有する水溶性多糖類には、(1)環状構造(又は環状ユニット)とこの環状構造に結合した非環状構造(非環状骨格、非環状ユニット非環状部位)とを有し、かつ平均重合度50以上である多糖類、(2)14以上のα−1,4−グルコシド結合で形成された環状構造を分子内に一つ有する多糖類などが挙げられる。
(環状多糖類(1))
環状多糖類(1)において、環状構造は、通常、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。また、環状構造(1つの環状構造あたり)の平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10〜500、好ましくは12〜300、さらに好ましくは14〜100程度であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造(1つの環状構造あたり)におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1以上(例えば、1〜200)、好ましくは1〜100、さらに好ましくは1〜50程度であってもよい。
なお、環状多糖類(1)の平均重合度(数平均重合度)は、50以上であればよく、例えば、50〜10000、好ましくは60〜7000、さらに好ましくは70〜5000程度であってもよい。
なお、環状多糖類(1)は、1又は複数の非環状構造を有していてもよく、通常、複数(例えば、2〜1000、好ましくは3〜500程度)の非環状構造を有していてもよい。このような非環状部位(又は環状多糖類(1)の環状構造以外の部位)1つあたりの平均重合度(数平均重合度)は、例えば、10以上(例えば、10〜30程度)、好ましくは10〜20程度であってもよい。また、非環状部位全体の平均重合度(数平均重合度)は、10以上であればよく、例えば、40以上(例えば、50〜5000程度)、好ましくは100〜3000程度であってもよい。なお、非環状部位は、特に、α−1,6−グルコシド結合のグリコース(特にグルコース)単位から分岐している場合が多い。
なお、環状多糖類(1)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化など)されていてもよい。
このような環状多糖類(1)には、いわゆる「クラスターデキストリン」と称される多糖類が含まれる。このような多糖類(1)は、例えば、糖類(例えば、澱粉、澱粉の部分分解物、アミロペクチン、グリコーゲン、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉加水分解物、およびホスホリラーゼによる酵素合成アミロペクチンから選択された少なくとも1種の基質など)に、糖類に作用して環状構造を形成可能な酵素(枝作り酵素、D酵素、サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼなど)を反応させることにより得てもよい。このようなクラスターデキストリンおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−134104号公報などを参照できる。
(環状多糖類(2))
環状多糖類(2)において、環状構造は、少なくともα−1,4−グルコシド結合で形成された環であればよく、α−1,4−グルコシド結合とα−1,6−グルコシド結合とで形成された環であってもよい。また、多糖類(2)において、環状構造の平均重合度(数平均重合度)は、14以上であればよく、例えば、14〜5000、好ましくは15以上(例えば、15〜3000程度)、さらに好ましくは17以上(例えば、17〜1000程度)であってもよい。環状構造がα−1,6−グルコシド結合を有する場合、環状構造におけるα−1,6−グルコシド結合の平均数は、例えば、1〜500、好ましくは1〜300、さらに好ましくは1〜100程度であってもよい。
環状多糖類(2)は、前記環状構造を有している限り、非環状構造(例えば、直鎖状構造)を有していてもよいが、通常、前記環状構造だけで構成(又は形成)された環状多糖類であってもよい。
なお、環状多糖類(2)において、ヒドロキシル基(アルコール性ヒドロキシル基)は、誘導体化(例えば、エーテル化、エステル化、グラフト化、架橋化など)されていてもよい。
このような環状多糖類(2)には、いわゆる「シクロアミロース(又はサイクロアミロース)」と称される多糖類が含まれる。このような環状多糖類(2)は、例えば、直鎖状のα−1,4−グルカン又はこのグルカンを含む糖類(例えば、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、澱粉、ワキシー澱粉、ハイアミロース澱粉、可溶性澱粉、デキストリン、澱粉枝切り物、澱粉部分加水分解物、ホルホリラーゼによる酵素合成アミロース、およびこれらの誘導体から選択された少なくとも1種など)と、環状多糖類(2)を形成可能な酵素(例えば、D酵素など)とを、必要に応じて、ホスホリラーゼおよびグルコース1−リン酸の存在下で反応させることにより得ることができる。
また、前記反応は、基質としてα−1,6−グルコシド結合を有する基質を用いる場合には、α−1,6−グルコシド結合を切断可能な酵素(例えば、イソアミラーゼ、プルラナーゼなど)の存在下で行ってもよい。このようなサイクロアミロースおよびその製造方法についての詳細は、特開平8−311103号公報などを参照できる。
これらの多糖類は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。例えば、前記環状多糖類(1)と環状多糖類(2)とを組み合わせて使用でき、特に、少なくとも前記環状多糖類(1)(又はクラスターデキストリン)を好適に用いることができる。
前記環状多糖類とオリゴ糖との割合は、例えば、前者/後者(重量比)=99/1〜5/95、好ましくは95/5〜10/90、さらに好ましくは90/10〜20/80(例えば、85/15〜25/75)、特に80/20〜30/70(例えば、70/30〜40/60)程度であってもよく、通常99/1〜50/50程度であってもよい。
水環状多糖類(C2)の50重量%水溶液の粘度は、温度25℃において、例えば、5Pa・sec以下(例えば、1〜5Pa・sec)、好ましくは(例えば、2〜4Pa・sec)程度である。このように水溶液粘度が低いため、環状多糖類(C2)を用いる
と、水に対する溶解性が高いことと相まって、水による溶出効率を高めることができる。
水溶性マトリックス成分(C)は、さらに前記オリゴ糖(C1)や環状多糖類(C2)を可塑化するための水溶性可塑化成分(C3)を含んでいてもよい。オリゴ糖(C1)や環状多糖類(C2)と水溶性可塑化成分(C3)とを組み合わせると、熱可塑性樹脂(A)との混練において、水溶性マトリックス成分(C)の粘度を調整できる。
(C3)水溶性可塑化成分
水溶性可塑化成分(C3)としては、オリゴ糖(C1)や環状多糖類(C2)が水和して水飴状態となる現象を発現できるものであればよく、例えば、糖類、糖アルコールなどが使用できる。これらの可塑化成分(C3)は、については特開2004−51942号公報に記載されているものを用いることもできる。
また、これらの可塑化成分(C3)は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(a)糖類
糖類としては、オリゴ糖(C1)を有効に可塑化するために、通常、単糖類及び/又は二糖類が使用される。これらの糖類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
(b)糖アルコール
糖アルコールとしては、アルジトール(グリシトール)などの鎖状糖アルコールであってもよく、イノシットなどの環式糖アルコールであってもよいが、通常は、鎖状糖アルコールが使用される。これらの糖アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
鎖状糖アルコールとしては、テトリトール、ペンチトール、キシリトール、ヘキシトールなどが挙げられる。
これらの糖アルコールのうち、エリスリトール、ペンタエリスリトール、アラビトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールなどが好ましい。糖アルコールは、エリスリトール、ペンタエリスリトール、キシリトール、およびソルビトールから選択された少なくとも1つの糖アルコールを含む場合が多い。
マトリックス成分(C)の融点又は軟化点は、熱可塑性樹脂(樹脂成分など)(A)の熱変形温度以上であってもよく、熱変形温度以下であってもよい。熱可塑性樹脂(A)及びマトリックス成分(C)は、少なくとも混練温度(又は成形加工温度)において溶融又は軟化すればよい。例えば、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、熱可塑性樹脂(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差は、0〜100℃の範囲で選択してもよく、例えば、3〜80℃(例えば3〜55℃)、好ましくは5〜60℃(例えば、5〜45℃)、さらに好ましくは5〜40℃(例えば、10〜35℃)程度であってもよい。なお、マトリックス成分(C)の融点又は軟化点と、熱可塑性樹脂(樹脂成分など)(A)の熱変形温度との温度差が小さい場合(例えば前記温度差が0〜20℃程度である場合)、固化速度の高いマトリックス成分(C)(例えば、糖成分)により短時間で分散形態を固定化できるという利点がある。
さらに、マトリックス成分(C)(例えば、オリゴ糖(C1)と可塑化成分(C3)とを含む成分)のメルトフローレートは、例えば、熱可塑性樹脂(樹脂成分など)(A)の熱変形温度(例えば、熱可塑性樹脂(A)の融点又は軟化点、前記ビカット軟化点)より30℃高い温度でJIS K 7210で規定されるメルトフローレートを測定したとき、1以上(例えば、1〜40程度)、好ましくは5以上(例えば、5〜30程度)、さらに好ましくは10以上(例えば、10〜20程度)であってもよい。
マトリックス成分(C)において、可塑化成分(C3)の割合(重量比)は、溶融混練に伴って、可塑化成分が凝集などにより局在化せず、オリゴ糖(C1)を効率的に可塑化できる量、例えば、オリゴ糖(C1)/可塑化成分(C3)=99/1〜50/50から選択でき、好ましくは95/5〜60/40、さらに好ましくは90/10〜70/30程度である。
分散相(熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)との総量)とマトリックス成分(C)との割合(重量比)は、熱可塑性樹脂及びマトリックス成分の種類や粘度などに応じて選択でき、特に制限されないが、通常、成形性を損なわない量、例えば、前者/後者=55/45〜1/99、好ましくは50/50〜5/95、さらに好ましくは45/55〜10/90程度である。
[樹脂粒子の製造方法]
本発明の樹脂粒子は、前記分散体から前記マトリックス成分を(C)を除去することにより得られる。
(分散体の製造方法)
前記分散体は、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とで構成された粒子状分散相をマトリックス成分(C)に分散できる限り、特に限定されないが、通常、熱可塑性樹脂(A)及び改質剤(B)と、マトリックス成分(C)とを混練することにより調製できる。
なお、熱可塑性樹脂(A)及び改質剤(B)とマトリックス成分(C)との混練方法としては、例えば、(i)熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とマトリックス成分(C)とを混練する方法、(ii)予め改質剤(B)を含む熱可塑性樹脂(A)を調製し、この熱可塑性樹脂(A)(A)と改質剤(B)とを含む組成物(例えば、樹脂組成物)と、マトリックス成分(C)とを混練する方法などが挙げられる。
本発明の分散体は、これらの方法のうち、いずれの方法でも調製できるが、特に、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とを含む組成物を用いる方法(ii)を好適に利用できる。上記方法(ii)により分散体を調製すると、改質剤(B)をより一層効率よく熱可塑性樹脂(A)で構成された分散相(特に分散相のみ)に分配できる。
混合方法としては、慣用の方法、例えば、両成分(成分(A)および成分(B))をドライブレンドする方法、両成分を溶融混合(溶融ブレンド)する方法、両成分を溶媒に溶解(又は分散)して溶媒を除去する方法などを利用できる。 (マトリックス成分(C)との溶融混合)
熱可塑性樹脂(A)及び改質剤(B)とマトリックス成分(C)との混練(溶融混合、溶融混練)は、改質剤の種類などに応じて、少なくともいずれか一つの成分を溶融させることにより行うことができ、特に熱可塑性樹脂と(改質剤と)マトリックス成分とを溶融させて行うことが多い。また、前記のように、改質剤(B)を含む熱可塑性樹脂(A)のマスターバッチと、残りの熱可塑性樹脂(A)と、マトリックス成分(C)とを溶融混合してもよい。溶融混合は、前記と同様に、慣用の混練機(例えば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機、ニーダー、カレンダーロールなど)を用いて行なうことができる。
溶融混練した組成物(分散体)はストランド状、棒状、シート状、フィルム状などに加工(成形)することが望ましい。
なお、混練温度や成形加工温度は、使用される原材料(例えば、熱可塑性樹脂、マトリックス成分)に応じて適宜設定することが可能であり、例えば、90〜300℃、好ましくは110〜260℃(例えば、130〜250℃)、さらに好ましくは140〜240℃(例えば、150〜240℃)、特に170〜230℃(例えば、180〜220℃)程度である。マトリックス成分(例えば、オリゴ糖および可塑化成分)の熱分解を避けるため、混練温度や成形加工温度を230℃以下(例えば、160〜220℃程度)にしてもよい。また、混練時間は、例えば、10秒〜1時間の範囲から選択してもよく、通常30秒〜45分、好ましくは1〜30分(例えば、3〜20分)程度である。
混練及び/又は成形加工により得られた溶融物(例えば、予備成形体)は、必要により適宜冷却してもよい。このようにして得られた分散体は、マトリックス成分(C)が、海島構造における連続相を形成すると共に、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とで構成された分散相が独立して分散相を形成した相分離構造を有している。
そして、このような分散体から、マトリックス成分を速やかに溶出又は抽出などにより除去でき、前記分散相(熱可塑性樹脂と改質剤とを含む分散相)を粒子(樹脂粒子)として得ることができる。マトリックス成分の除去方法は、マトリックス成分を除去できる限り限定されないが、通常、前記分散体から、マトリックス成分を溶出する場合が多い。溶出溶媒として水(特に水単独)を用いるのが好ましい。
マトリックス成分(C)の溶出は、慣用の方法、例えば、前記分散体(又は予備成形体)を、前記溶媒(特に、水性溶媒)中に浸漬、分散して、マトリックス成分を溶出または洗浄(溶媒に移行)することにより行うことができる。前記分散体(又は予備成形体)を溶媒中に浸漬すると、分散体のマトリックスを形成するマトリックス成分が徐々に溶出し、分散相(又は粒子又はケーク)が、溶出液中に分散される。マトリックス成分の分散及び溶出を促進するため、適宜、撹拌などを行ってもよい。
樹脂粒子は、慣用の分離(回収)方法、例えば、濾過、遠心分離などを用いて前記粒子が分散された分散液から回収できる。
また、分離した樹脂粒子(固液分離後のケーク)は、乾燥処理してもよい。 本発明の樹脂粒子(又は分散相)の平均粒子径(例えば、数平均粒子径)は、10μm〜50mm(例えば、5〜25μm)程度の範囲から選択でき、例えば、10〜40μm、好ましくは10〜30μmであってもよい。なお平均粒径は数平均粒子径を示す。
本発明では、樹脂粒子(又は分散相)の粒子サイズを均一にして粒度分布を小さくできる。尚、水溶性マトリックス成分(C)としてオリゴ糖(C1)と可塑成分(C3)とで構成した場合は、樹脂粒子(又は分散相)の平均粒子径の変動係数(%)([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100、例えば数平均粒子径の標準変背/数平均粒子径)は、例えば、90以下(例えば50〜90程度)、好ましくは90以下(例えば、55〜85程度)、さらに好ましくは80以下(例えば、60〜80程度)であってもよい。また水溶性マトリックス成分(C)として環状多糖類(C2)あるいはオリゴ糖(C1)と環状多糖類(C2)との組み合わせに可塑成分(C3)を加える様態で構成した場合は、樹脂粒子平均粒子径の変動係数(%)([粒子径の標準偏差/平均粒子径]×100、例えば数平均粒子径の標準偏差/数平均粒子径)は、例えば、60以下(例えば10〜60程度)、好ましくは55以下(例えば、5〜55程度)、さらに好ましくは50以下(例えば、10〜50程度)とすることもできる。
なお、粒子の形状やサイズは、前記溶出溶媒(特に、水性溶媒)に熱可塑性樹脂(A)が溶出しない限り、前記分散相の形状やサイズがそのまま維持される。そのため、前記分散相の形状、平均粒子径、平均粒子径の変動係数は、前記樹脂粒子と同様の範囲から選択できる。
本発明の樹脂微粒子は25℃および圧力60MPaで円柱状のタブレット(熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)からなる微粒子を固めたタブレット)を形成できないほど、耐ブロッキング性(耐ケーキング性)に優れる。このように極めて粒子同士の凝集が抑制されている。
[ガラス転移点温度]
本発明のおいて熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度と称されているものは熱示差走査熱量計(DSC)にてJIS K 7121で規定される測定方法を用いた場合に測定されるガラス転移点温度を示す。測定装置としては入力補償型装置であってもよく、また熱流束型であってもよい。
測定においては、予想される融点以上に昇温する操作を行い2回目の昇温時に観測された 結晶融解の吸熱ピークより低い温度領域に現れるベースラインの吸熱側への変曲点(オンセット温度)を以って樹脂成分のガラス転移点温度とした。昇温速度としては20℃/分で測定を行うのが望ましい。測定に際しては、窒素でパージし、窒素流量としては40ml/分程度で測定するのが望ましい。
上記の方法で測定されたガラス転移温度としては、特に制限されないが、例えば、例えば、30℃〜350℃、好ましくは40℃〜280℃(例えば45〜260℃)、さらに好ましくは50℃〜240℃(例えば60℃〜220℃)程度である。
[融点]
本発明のおいて熱可塑性樹脂(A)の融点と称されているものは熱示差走査熱量計(DSC)にてJIS K 7121で規定される測定方法を用いた場合に測定される融解温度を示す。測定装置としては入力補償型装置であってもよく、また熱流束型であってもよい。
測定においては、予想される融点以上に昇温する操作を行い2回目の昇温時に観測吸熱ピークのピークトップ温度を、樹脂成分の融点とした。樹脂の種類や状態によっては微結晶の存在に起因して主たる融解ピークより低い温度に吸熱量の小さいピークが現れる場合があるが、この場合は、主融解ピークのピークトップ温度を融点とした。
また、熱可塑性樹脂(A)の融点は、特に制限されないが、例えば、30℃〜350℃、好ましくは40℃〜280℃(例えば45〜260℃)、さらに好ましくは50℃〜240℃(例えば60℃〜220℃)程度である。
改質剤(B)に融点も上記の方法に準じて測定することができる。
本発明の樹脂粒子は、レーザー造型などの粉体を用いた成形加工用の原料として使用できる。そして透明な本発明の樹脂を使用した場合には透明なRPT成形品を得ることができ、これらの成形品の内部の状況を確認することができる。
実施例1及び比較例1〜4
ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、「FM型20L」)を用いて、表1に示す組成で、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とを予備混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、混練温度220℃および回転速度50rpmで5分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の樹脂組成物(溶融混合物(D))を得たのち、約5mm角に裁断した。
Figure 2008106082
続いて、表2に示す組成で、得られた溶融混合物(D)及びマトリックス成分(C)をブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、混練温度220℃および回転速度50rpmで10分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の分散体を得たのち、約5mm角に裁断した。
Figure 2008106082
得られた分散体(裁断物)を、25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を微粒子に対して重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理して懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し、樹脂粒子を回収した。
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。得られた樹脂粒子の各特性を表4に示す。なお、各特性は、以下のようにして評価又は測定した。
実施例2から4
以下の実施例2から4においては、熱可塑性樹脂(A)と改質剤(B)とを予備混合することなく、熱可塑性樹脂(A)、改質剤(B)及びマトリックス成分(C)を固体状態で表3の割合で混同し、この混合物を溶融して微粒子成分を得た実施例である。
すなわち実施例2および3は、ヘンシェルミキサー(三井鉱山(株)製、「FM型20L」)を用いて、熱可塑性樹脂(A)、改質剤(B)及びマトリックス成分(C)を表3に示す組成で、固体状態で混合した後、ブラベンダー(東洋精機(株)製、ラボプラストミル)を用いて、混練温度220℃および回転速度50rpmで5分間溶融混合(溶融混練)し、冷却して塊状の樹脂組成物を得たのち、約5mm角に裁断した。
Figure 2008106082
得られた分散体(裁断物)を、25℃の純水中に浸漬し、樹脂粒子の懸濁溶液を得た。メンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し樹脂の微粒子を回収した。回収した微粒子を微粒子に対して重量比で20倍の蒸留水中に分散し、超音波槽において5分間超音波処理して懸濁液を得た。その後、再びメンブレン膜(孔径0.45μm,ポリビニリデンフルオライド製)を用いて、前記懸濁液から不溶分を濾別し、樹脂粒子を回収した。
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。得られた樹脂粒子の各特性を表4に示す。なお、各特性は、以下のようにして評価又は測定した。
実施例4においては、実施例2および3で用いた溶融混合方法において用いたブラベンダーに替わり、二軸ニーダー((株)栗本鐵工所製、KRC S1ニーダー)を用い、混練温度220℃、回転速度180rpm、吐出量約20g/minで押出し、冷却して塊状の樹脂組成物(溶融混合物)を得た以外は実施例2と同様の操作を行った。
回収した樹脂粒子を、熱風乾燥機中に放置して、45℃で8時間乾燥し、その後、メノウ乳鉢とすり棒とを用いて、目視で凝集した部分がなくなるまで粉砕した。得られた樹脂粒子の各特性を表4に示す。
(粒子の外観および平均粒子径)
得られた粒子を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、FE−SEM、JSM−6700F)により観察し、表面形状及び全体形状の写真を得た。得られた走査型電子顕微鏡写真を用い、写真上に少なくとも200個の粒子が含まれるように任意のサイズの長方形を描き、その長方形内に存在する全粒子の真球換算時の粒子径を採寸した。得られた少なくとも200個の粒子径より、体積平均粒子径および数平均粒子径を得た。
(ガラス転移温度の測定)
環状オレフィン系樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ティコナ社製、環状ポリオレフィン系樹脂TOPAS 5013)についてDSC(熱走査熱量計;熱流束型)セイコー電子社製 1200R型測定装置を用いて昇温速度20℃/minで昇温させ、200℃で1分間ホールドさせた後、20℃/minで降温させ、−50℃で1分間ホールドした後、20℃/minで200℃まで測定し、セカンドランでガラス転移温度を測定した。
(融点の測定)
ステアロミドエチルステアレート及びエチレンビスステアリン酸アミドについてDSC(熱走査熱量計;熱流束型)セイコー電子社製 1200R型測定装置を用いて昇温速度20℃/minで昇温させ、200℃で1分間ホールドさせた後、20℃/minで降温させ、−50℃で1分間ホールドした後、20℃/minで200℃まで測定し、セカンドランで融点を測定した。
(粒子の凝集性の観察)
得られた樹脂粒子1gを、直径20mmの円状の型枠を用いて円柱状のタブレット(直径20mm、高さ3〜5mm)に成形した。成形は23℃で行い、油圧式の手動ポンプを用い、圧力60MPaまで加圧後2分間静置することによりタブレットが成形できるかを確認した。
なお、実施例及び比較例では、下記の成分を用いた。
(A)熱可塑性樹脂
環状オレフィン系樹脂:シクロオレフィンコポリマー(ティコナ社製、環状ポリオレフィン系樹脂TOPAS(登録商標) 5013)
ガラス転移温度 140℃
全光線透過度 91%
屈折率 1.53
(B)改質剤
B1:ステアロミドエチルステアレート
(富岡化学(株)製、SAS、白色粉末)
融点 80℃
B2:エチレンビスステアリン酸アミド
(花王(株)製、KAO−WAX EB−P)
融点 145℃
(C)マトリックス成分
オリゴ糖C1:デンプン糖(東和化成工業(株)製、還元デンプン糖化物PO−10)
糖アルコール(水溶性可塑化成分)C3: ソルビトール(東和化成工業(株)製、ソ
ルビット(登録商標))。
Figure 2008106082
表4から明らかな通り、改質剤(B)を含まない比較例1〜3及び、改質剤(B)は含むが、その融点(Y)と熱可塑性樹脂(A)のガラス転移点温度(X)の関係式X−Y=ΔhでΔhが60℃で本発明の要件を満たさない比較例4と比較して、本発明の要件を満たす実施例1〜4の組み合わせにおいて得られた樹脂粒子は、いずれもタブレット成形できない程の低い凝集力を示している。

Claims (7)

  1. 熱可塑性樹脂(A)からなる略球状の微粒子であり、その数平均粒径が10μmから100μmであり、親水性基と疎水性基とを有する改質剤(B)を含むものであり、熱可塑性樹脂(A)の融点あるいはガラス転移温をX(℃)とし、改質剤(B)の融点をY(℃)とした場合に、下記式で求められるhが30(℃)以下である樹脂粒子。
    X-Y=h
  2. 熱可塑性樹脂の結晶化℃が5重量%以下である実質的に非晶性高分子からなる請求項1に記載の樹脂粒子。
  3. 熱可塑性樹脂の屈折率が1.4以上である請求項1に記載の樹脂粒子。
  4. 非晶性高分子が環状オレフィンモノマー重合体およびその共重合体である請求項2に記載の樹脂粒子。
  5. 改質剤(B)が脂肪酸アミド類である請求項1乃至4に記載に樹脂粒子。
  6. 請求項1に記載された微粒子を用いるRPT成形法
  7. 請求項6に記載のRPT成形法で形成された成形品
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