JP2008105873A - 単結晶製造装置及び単結晶の製造方法 - Google Patents

単結晶製造装置及び単結晶の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】結晶品質を容易に安定させて単結晶を製造するための単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、複数に分割可能なチャンバ2、20、21、22、23を具備し、チョクラルスキー法により単結晶を製造するための単結晶製造装置1であって、複数に分割されたチャンバ2、20、21、22、23のうち少なくとも1つは、チャンバを冷却する循環冷却媒体が流通する循環冷却媒体用流路31と、循環冷却媒体の、循環冷却媒体用流路31における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量を測定するそれぞれの測定手段34、35、36とを有するものであり、入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量の測定値から、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段37と、算出した除去熱量及び/または除去熱量の割合に基づいて単結晶の引上げ速度を制御する引上げ速度制御手段38とを具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、チョクラルスキー法によるシリコン等の単結晶の製造装置、並びに単結晶の製造方法に関する。
従来、シリコン単結晶の育成方法として、黒鉛ルツボに支持された石英ルツボ内のシリコン融液から半導体用の高純度シリコン単結晶を成長させるチョクラルスキー法(Czochralski Method、CZ法)が知られている。この方法は、チャンバの上部に設けられた回転・引上げ機構からワイヤーを介してルツボ上方のチャンバ内部に吊り下げられた種結晶用ホルダに種結晶を取付け、ワイヤーを繰り出してその種結晶をシリコン融液に接触させ、ダッシュネッキング法や無転位種付け法等により種結晶を引上げてシリコン融液から種絞り部分を作製し、その後目的とする直径まで結晶を徐々に太らせて成長させることにより、所望の面方位を有する無転位の単結晶インゴットを得ることができるものである。
ワイヤーを用いた単結晶製造装置の一般的な構成例を図2に示す。
単結晶製造装置50は、原料融液4を収容するルツボ5、6、多結晶原料を加熱、溶融するための発熱体7などが、トップチャンバ21、ミドルチャンバ22、ボトムチャンバ23等から構成されたメインチャンバ20内に格納されている。ルツボ5、6は、図示しない回転駆動機構によって回転昇降自在なルツボ回転軸19に支持されている。また、ルツボ5、6を取り囲むように原料融液4を加熱するための発熱体7が配置されており、この発熱体7の外側には、発熱体7からの熱がメインチャンバ20に直接輻射されるのを防止するための断熱部材8が周囲を取り囲むように設けられている。
メインチャンバ20上に連設された引上げチャンバ2の上部には、育成された単結晶棒3を引上げる引上げ機構15が設けられている。引上げ機構15からは引上げワイヤー16が巻き出されており、その先端には、種結晶17を取り付けるための種ホルダ18が接続され、種ホルダ18の先に取り付けられた種結晶17を原料融液4に浸漬し、引上げワイヤー16を引上げ機構によって巻き取ることで種結晶17の下方に単結晶棒3を引き上げて育成する。
また、引上げチャンバ2及びメインチャンバ20内部には、炉内に発生した不純物ガスを炉外に排出する等を目的とし、引上げチャンバ2上部に設けられたガス導入口10からアルゴンガス等の不活性ガスが導入され、引上げ中の単結晶棒3、融液4上部を通過して引上げチャンバ2及びメインチャンバ20内部を流通し、ガス流出口9から排出される。
そして、各々のチャンバには、図示しない冷却媒体用流路が具備されており、冷却媒体用流路内部には、該チャンバを冷却する冷却媒体を流通させる構造となっており、各チャンバを保護するとともに、チャンバの内部の発熱体7の輻射熱が単結晶製造装置50の外部に伝わらないように遮断している。
単結晶棒3の引上げ速度、すなわち結晶成長速度は、成長中の単結晶の熱収支によって決定される。単結晶に取り込まれる熱量は、融液や発熱体から単結晶に入る流入熱量と、融液が結晶化する際に発生する固化潜熱とがあり、育成中の単結晶の熱収支を考えた場合、結晶表面や種結晶を通して単結晶の外へ放出される流出熱量は、流入熱量と固化潜熱との和に等しい。固化潜熱は、単位時間当たりに成長する単結晶の体積に依存しているため、結晶成長速度を高速化するには、高速化により増大する固化潜熱の増加分を、流出熱量を増加させることによって相殺する必要がある。
そこで、一般的には結晶表面から放出される熱を効果的に除去し、流出熱量を増加させる方法がとられている。
その一つにメインチャンバ20内部に引上げ中の単結晶棒3を取り囲むように冷却筒11及び冷却筒11より下方に延伸した冷却補助部材13等を設け、引き上げ中の単結晶棒3を効率良く冷却することにより、引上げ速度を速くする装置が提案されている。例えば、特許文献1に開示された装置がある。この装置は、引き上げ中の単結晶棒を同心円上に取り囲むように引上げチャンバ下部よりメインチャンバ内部に向かって、金属製の外側冷却筒と黒鉛等からなる内部冷却筒の二重構造を有する整流冷却筒を設け、外側冷却筒により内部冷却筒に生じた熱を外へ移送することで内部冷却筒の温度上昇を抑え、結晶の冷却効率を向上させたものである。
さらに、成長している単結晶をより効果的に冷却させるために、例えば、特許文献2のように冷却筒11に冷却媒体導入口12から冷却媒体を流通させ、強制冷却する装置も開示されている。
各チャンバ部材や冷却筒を冷却するために用いられる冷却媒体としては、通常冷却した水が使用されている。また、大量の水が用いられるため、冷却媒体用流路、冷却筒内部を通過して温められた水は、クーリングタワー等の冷却装置により冷却された後に、一時水槽に貯留して再度循環させている。
ところで、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶製造において、結晶成長界面より導入される点欠陥には、シリコン原子が欠乏した空孔(Vacancy)と、過剰に導入された格子間シリコン(Interstitial Silicon)の2種類があり、両者の存在比率は結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gによって決定される。これらの点欠陥は、結晶成長に伴う冷却過程において、融点近傍で優勢な点欠陥が凝集反応を生じる。このとき、空孔優勢ならばボイド欠陥、所謂COP(crystal originated particle)もしくはFPD(flow pattern defect)等として検出される(V領域)。そして、前記の空孔と格子間シリコンとの量が両者拮抗する場合には、互いに相互作用して対消滅する反応により、結晶品質検査において検出可能な欠陥が極めて少ないシリコン単結晶となる(N領域)。さらに融点近傍で格子間シリコンが優勢ならば、転位として顕在化するようになる(I領域)。
これらのシリコン単結晶は、各々に用途があり、いずれにおいても安定した結晶品質が要求されている。そして、これを実現させるためには、結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gを安定させる必要がある。そして、この結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gを安定させるには、引上げ速度等を適当に補正する必要があるが、適切な補正量を求めることは一般に容易ではなく、特に、同一ルツボで複数本の結晶を製造するマルチプーリング法において、同一品質を有する結晶を得るためには、結晶毎に、その引上速度を低下させる方向に適宜補正する必要があり、尚かつ、この補正は必ずしも操業時間のみに依存するものではなく、当該結晶製造開始時の累計操業時間のみによる補正では、結晶品質の制御は難しかった。
特開平6−211589号公報 国際公開第WO01/057293号パンフレット
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたもので、凝集欠陥等についての結晶品質を容易に安定させて単結晶を製造するための単結晶製造装置及び単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、少なくとも、複数に分割可能なチャンバと、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱する発熱体と、ワイヤーまたはシャフトにより前記原料融液から単結晶を回転させながら引上げるための引上げ手段とを具備する、チョクラルスキー法により単結晶を製造するための単結晶製造装置であって、前記複数に分割されたチャンバのうち少なくとも1つは、該チャンバを冷却する循環冷却媒体が流通する循環冷却媒体用流路と、前記循環冷却媒体の、前記循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量を測定するそれぞれの測定手段とを有するものであり、前記循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量の測定値から、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段と、該算出した除去熱量及び/または除去熱量の割合に基づいて単結晶の引上げ速度を制御する引上げ速度制御手段とを具備するものであることを特徴とする単結晶製造装置が提供される(請求項1)。
このように、複数に分割されたチャンバのうち少なくとも1つは、内部に該チャンバを冷却する循環冷却媒体が流通する循環冷却媒体用流路と、前記循環冷却媒体の、前記循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量を測定するそれぞれの測定手段とを有するものであり、循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量の測定値から、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段と、該算出した除去熱量及び/または除去熱量の割合に基づいて単結晶の引上げ速度を制御する引上げ速度制御手段とを具備する単結晶製造装置であれば、単結晶の引上げ速度をチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動に対して結晶品質を安定させるために適切な引上げ速度に容易に補正することができる。その結果、安定した結晶品質で単結晶を製造することができる。
この場合、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段は、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象にして除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出するものであることが好ましい(請求項2)。
このように、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段を、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象にして除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出するものとすれば、より正確に単結晶の引上げ速度を適切な引上げ速度に補正することができる。
さらに、本発明では、少なくとも、複数に分割可能なチャンバを具備する単結晶製造装置を用いて、チョクラルスキー法により単結晶を製造する方法であって、少なくとも1つの前記分割されたチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する第一の工程と、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質との関係を調査する第二の工程と、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象として、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と、所望の結晶品質が得られる単結晶引上げ速度との関係を求める第三の工程と、前記対象としたチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合から所望の結晶品質が得られる引上げ速度になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正する第四の工程と、前記補正した単結晶引上げ速度でルツボから単結晶を引上げる第五の工程とを含む単結晶の製造方法が提供される(請求項3)。
このような工程を含む単結晶の製造方法によれば、単結晶の引上げ速度をチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動に対して結晶品質を安定させるために適切な引上げ速度に容易かつ正確に補正することができる。その結果、結晶品質を安定させて単結晶を製造することができる。
この場合、前記単結晶を引上げた後、前記ルツボに多結晶原料を追加充填し、溶融して原料融液とし、再び単結晶の引き上げを繰り返すことによって、同一のルツボから2以上の単結晶を引上げることができる(請求項4)。
このように、一旦単結晶を引上げた後、同一のルツボに多結晶原料を追加充填し、溶融して原料融液とし、再び単結晶の引き上げを繰り返すことによって、同一のルツボから2以上の単結晶を引上げる、いわゆるマルチプーリング法の場合のように、1本目と2本目以降とで結晶品質を安定させて単結晶を製造することが難しい場合であっても、本発明に係る単結晶の製造方法によれば、結晶品質を安定させて単結晶を製造することができる。
また、前記第三の工程で求めた、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と前記単結晶引上げ速度との関係から、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階の開始前に行うことが好ましい(請求項5)。
このように、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階の開始前に行うこととすれば、所望の結晶品質を有する単結晶をより確実に再現性よく製造することができる。
また、前記第三の工程で求めた、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と前記単結晶引上げ速度との関係から、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階中に断続的または連続的に行うことが好ましい(請求項6)。
このように、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階中に断続的または連続的に行うこととすれば、所望の結晶品質を有する単結晶をより確実に製造することができる。
また、前記製造される単結晶を、直径200mm以上であり、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶とすることができる(請求項7)。
本発明の単結晶の製造方法によれば、製造することが難しい、直径200mm以上であり、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶を再現性よく結晶品質を安定させて製造することができる。その結果、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶の収率の向上と製造コストの低減が可能となる。
本発明に係る単結晶製造装置及び単結晶の製造方法によれば、凝集欠陥に関する結晶品質を安定させて単結晶を製造することができ、目的とする結晶品質を有する単結晶の収率を飛躍的に向上させることができる。すなわち、凝集欠陥を含む単結晶の個体差は極めて少なくなり、また半径方向全面がN領域である無欠陥単結晶の製造においては、その収率を飛躍的に向上させることができる。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
前述のように、凝集欠陥に関する結晶品質(以下、単に結晶品質とも言う場合がある)を安定させて単結晶を育成するためには、結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gを安定させる必要がある。そして、この結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gを安定させるには、引上げ速度等を適当に補正する必要があるが、適切な補正量を求めることは一般に容易ではないという問題があった。
このような問題を解決するため、本発明者らは、鋭意実験及び検討を行った。
固液界面近傍において優勢な点欠陥を決定する温度勾配Gは、主に、カーボン素材を主たる材料とするホットゾーン(HZ)部品の構造によって決定されるが、その本質は、単結晶表面から、循環冷却媒体によって冷却されているチャンバ内面への輻射伝熱量にある。したがって、チャンバ内面の表面状態、及びチャンバの冷却状態に変化が無ければ、単結晶中の温度勾配は、ルツボ移動等に伴う幾何学的な位置関係の変化による影響を除き、常に一定となるはずである。しかしながら現実には、前述のように、同一品質の単結晶を連続して安定して得るためには、引上げ速度を低下させる方向に適当に補正する必要がある。特に、同一ルツボで複数本の単結晶を製造するマルチプーリング法においては、単結晶毎に適宜補正する必要があり、尚かつ、この補正は必ずしも操業時間のみに依存するものではなく、それ以前に製造した結晶の長さ等によっても変化してしまうため、当該単結晶製造開始時の累計操業時間のみによる補正では、結晶品質の制御は難しい。特に凝集欠陥が極めて少ない、いわゆる、半径方向全面がN領域となる無欠陥結晶の製造において、この影響は無視できず、製品歩留まりを低下させる要因となっていた。
このように、操業時間に応じて引上げ速度を低下させなければならない主な理由は、結晶中固液界面近傍での温度勾配が変化しているためであることは、前述の結晶成長速度Vと固液界面近傍の温度勾配Gの比V/Gの関係から明らかである。そして、このことは、操業時間に応じて結晶からの放熱量が低下していることを物語っている。これは、操業時間の経過に伴い、チャンバや冷却筒の内面に原料融液から蒸発したシリコン酸化物等が付着し、それにより、チャンバや冷却筒からの除去熱量が低下しているものと考えられる。
そして、本発明者らは、この、除去熱量、単結晶引上げ速度、結晶品質の関係をさらに詳しく調査するため、以下のような実験及び検討を行った。すなわち、半径方向全面がN領域の無欠陥結晶が得られるように単結晶の引上げ速度の補正を行いながら、分割されたチャンバ個々を流れる循環冷却媒体の入口と出口温度ならびに、循環冷却媒体の流量を測定すると共に、配管長さから計算される循環冷却媒体用流路を通過する時間による遅れを考慮したうえで、各チャンバからの循環冷却媒体による除去熱量の割合を算出し、その結果と、結晶品質との関係を調査した。
その結果、特定のチャンバ、特に、結晶成長界面から見て斜め上方に位置するチャンバ(トップチャンバ)からの除去熱量の割合の測定結果と、引上げ速度の補正量との間には、極めて良い相関関係が見られることを見出した。
即ち、トップチャンバの除去熱量の割合が増加する場合には結晶の引上げ速度は増加させ、反対に除去熱量の割合が低下する場合には引上げ速度は低下させる必要があることを見出した。両者の関係は簡便な近似式で表され、その式をもって、特定のチャンバの除去熱量の実測値から半径方向全面がN領域の無欠陥結晶が得られる適正な引上げ速度を推定することが可能となることに想到し、本発明を完成させた。
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明に係る半導体製造装置及び半導体の製造方法について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る半導体製造装置の一例を示している。
図1に示した単結晶製造装置1は、原料融液4を収容するルツボ5、6、多結晶原料を加熱、溶融するための発熱体7などが、トップチャンバ21、ミドルチャンバ22、ボトムチャンバ23等の複数の部材から構成されたメインチャンバ20内に格納される。メインチャンバ20上に連設された引上げチャンバ2の上部には、育成された単結晶を引上げる引上げ機構15が設けられている。
引上げ機構15からは引上げワイヤー16が巻き出されており、その先端には、種結晶17を取り付けるための種ホルダ18が接続され、種ホルダ18の先に取り付けられた種結晶17を原料融液4に浸漬し、引上げワイヤー16を引上げ機構によって巻き取ることで種結晶17の下方に単結晶棒3を引き上げて育成する。
なお、シリコン単結晶を製造する際には、ルツボ5、6は、内側に原料融液4を直接収容する石英ルツボ5と、石英ルツボ5を支持するための黒鉛ルツボ6とから構成される。ルツボ5、6は、単結晶製造装置1の下部に取り付けられた回転駆動機構(図示せず)によって回転昇降自在なルツボ回転軸19に支持されている。ルツボ回転軸19は、単結晶製造装置1中の原料融液4の表面の位置変化によって結晶品質が変わることがないよう、融液面を一定位置に保つため、単結晶棒3と逆方向に回転させながら単結晶棒3の引き上げに応じて原料融液4が減少した分だけルツボ5、6を上昇させる。
ルツボ5、6を取り囲むように発熱体7が配置されており、この発熱体7の外側には、発熱体7からの熱がメインチャンバ20に直接輻射されるのを防止するための断熱部材8が周囲を取り囲むように設けられている。
また、引上げチャンバ2及びメインチャンバ20内部には、炉内に発生した不純物ガスを炉外に排出する等を目的とし、引上げチャンバ2上部に設けられたガス導入口10からアルゴンガス等の不活性ガスが導入され、引上げ中の単結晶棒3、融液4上部を通過して引上げチャンバ2及びメインチャンバ20内部を流通し、ガス流出口9から排出される。
さらに、成長している単結晶をより効果的に冷却させるため、引上げ中の単結晶を取り囲むようにメインチャンバの天井部から原料融液表面に向かって延伸し、冷却媒体導入口12から導入された冷却媒体で強制冷却される冷却筒11と該冷却筒11より下方に延伸した冷却補助部材13を設ける場合もある。
メインチャンバ20及び引上げチャンバ2、冷却筒11は、ステンレス等の耐熱性、熱伝導性に優れた金属から製作されている。
なお、以下、単に「チャンバ」という場合にはメインチャンバ20を構成する複数のチャンバ部材及び引上げチャンバ2の他、単結晶製造装置1が冷却筒11を具備する場合には、冷却筒11も含むこととする。
そして、各々のチャンバには、チャンバ部材内部または外側に循環冷却媒体用流路31が具備されており、循環冷却媒体用流路31内部には、該チャンバを冷却する冷却媒体を流通させる構造となっている。循環冷却媒体としては、通常、冷却された水が使用される。トップチャンバ21で言うと、循環冷却媒体は、循環冷却媒体用流路入口32から循環冷却媒体用流路31に導入されて内部を通過し、循環冷却媒体用流路出口33から導出される。循環冷却媒体用流路31を通過して温められた循環冷却媒体は、図示しないクーリングタワー等の冷却装置により冷却された後に、一時的に貯留槽に貯留され、その後再度循環させている。
このようにして、各チャンバが保護されると共に発熱体7の輻射熱が単結晶製造装置1の外部に伝わらないように遮断している。
このような従来の構成に加え、本発明の単結晶製造装置1では、循環冷却媒体用流路入口32、循環冷却媒体用流路出口33にそれぞれ入口温度測定手段34、出口温度測定手段35を具備し、循環冷却媒体流量を測定する循環冷却媒体流量測定手段36を具備する。さらに、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段37と、該算出した除去熱量及び/または除去熱量の割合に基づいて単結晶の引上げ速度を制御する引上げ速度制御手段38とを具備する。
このように構成された単結晶製造装置1を用いて、本発明の単結晶の製造方法により、単結晶の製造を行う。
本発明の単結晶の製造方法の工程の一例を図3に示した。
本発明に係る単結晶の製造方法では、まず、種結晶17を原料融液4に接触させてから、各チャンバの循環冷却媒体の入口温度T1(℃)と出口温度T2(℃)との差ΔT(℃)と循環冷却媒体流量L(l/min)を測定し、これらの測定結果から除去熱量W(kW)を算出する(工程(a))。
このとき、除去熱量Wは、循環冷却媒体が水の場合には、下記の式(1)によって求めることができる。
(数1)
W(kW)=ΔT(℃)×L(l/min)×4.1868(kJ/kg・K)/60(sec/min)…(1)
なお、係数4.1868(kJ/kg・K)は水の比熱である。循環冷却媒体として水以外を使用する場合には、その媒体の比熱で計算すればよい。
また、各分割されたチャンバの除去熱量の割合は、単結晶製造装置の循環冷却媒体用流路の入口温度、出口温度、循環冷却媒体流量から、上記の計算式より単結晶製造装置全体の除去熱量を求めて算出することができる。
この場合のΔTは循環冷却媒体の通水時間による遅れを考慮した上で求めることが好ましい。例えば、チャンバ内部を流通する時間が1分間であれば、ΔTは出口温度を測定した時間から1分前のチャンバ入口温度との差から求めることが好ましい。
各測定装置は、通常用いられるものを使用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、流量測定装置をカルマン式(測定精度がフルスケールの±2%)、温度測定装置は測定精度が表示値±0.3℃のものを使用することができる。また、例えば、流量測定装置をコリオリ式(測定精度が表示値±0.11%)、温度測定装置は測定精度が表示値±0.01℃のものを使用すれば、除去熱量の測定誤差を極めて小さくすることができる。
次に、各チャンバの除去熱量及び/または除去熱量の割合と、基準とする結晶の引上げ速度と実際の引上げ速度との差と、結晶品質との相関を調査する(工程(b))。そして、除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と結晶品質との間に相関関係があるチャンバを選び出す。この際、相関が最も大きいチャンバを選び出し、以下の工程で扱うことが望ましい。そのために、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段37を、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象にして除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出するものとして構成することが好ましい。
また、分割されたチャンバのうち1つについての除去熱量及び/または除去熱量の割合を求めてもよいが、相関関係がある複数のチャンバについて求めてもよく、あるいは、除去熱量及び/または除去熱量の割合を全体としてひとまとめにして求め、この結果に基づいて以下の工程を行ってもよい。
次に、選び出されたチャンバについて、除去熱量及び/または除去熱量の割合から所望の結晶品質(例えば、径方向全面がN領域)となる単結晶の引上げ速度の関係を求める(工程(c))。この時、この関係を近似式(以下、この近似式を補正式と言う場合がある)の形で求めておけば、以下の工程で扱いやすいので望ましい。
次に、上記の選び出したチャンバの除去熱量及び/または除去熱量の割合から所望の結晶品質が得られる引上げ速度になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正する(工程(d))。具体的には、上記補正式に基づいて単結晶引上げ速度を補正することが望ましい。
次に、このように補正した引上げ速度で単結晶を引き上げる(工程(e))。具体的には、単結晶の直胴部分を引き上げる段階の開始前にチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出し、上記予め用意してある引上げ速度の補正式から、引上げ速度を補正する。
さらに、直胴工程中もチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出し、単結晶の直胴部分を引き上げる段階中の引き上げ速度を断続的または連続的に微調整する補正を行えば、引上げられる単結晶の品質はより一層安定したものとなる。
また、一旦単結晶を引上げた後、同一のルツボに多結晶原料を追加充填し、溶融して原料融液とし、再び単結晶の引き上げを繰り返すことによって、同一のルツボから2以上の単結晶を引上げてもよい。このような、いわゆるマルチプーリング法では、2本目以降の引上げにおいても上記工程(d)〜(e)を繰り返して引上げ速度を補正して単結晶の製造を行えばよい。
以上のような、単結晶の製造方法によれば、直径200mm以上であり、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶のような製造することが難しい結晶品質の単結晶であっても、再現性よく結晶品質を安定させて製造することができる。その結果、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶の収率の向上と製造コストの低減が可能となる。もちろん、目的に応じて、製造する単結晶の欠陥分布は、N領域に限定されず、V領域、I領域その他の単結晶を精度よく引上げることができる。
なお、本発明は、磁場を印加しながら単結晶引上げを行う、いわゆるMCZ法等、種々の公知のCZ法に適用することができる。
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。
(実施例)
図1に示したような単結晶製造装置1を用いて、図3に示したような工程に基づいて、以下のように径方向全面がN領域とすることを狙ってシリコン単結晶を製造した。
予め絞り開始から48分後のトップチャンバの除去熱量の割合と径方向全面がN領域となる引上げ速度の関係を調査した(工程(a)、(b))。この結果を図4に示す。なお、径方向全面がN領域となった割合を良品率とした。図4から明らかなように、本実施例で用いた単結晶製造装置では、トップチャンバについて、除去熱量及び/または除去熱量の割合と結晶品質の間に強い相関関係があった。このとき、補正式を図4中の実線に示すように求めておいた(工程(c))。
口径32インチ(800mm)の石英ルツボ5に320kgのシリコン多結晶をチャージして、コイル中心が3500〜4000Gの水平磁場を印加しながら、直径300mm、直胴長さ1200mmのシリコン単結晶を径方向全面がN領域になるように直胴部の引上げ速度を0.30〜0.60mm/minに設定して、マルチプーリング法により、3本のシリコン単結晶を引上げた(工程(d)、(e))。なお、上記の図4中の実線で表した補正式に従って、単結晶の直胴部分を引き上げる段階中の引上げ速度を補正した。
これを10バッチ行った結果を図6に示した。図6は、横軸に同一ルツボにおいて何回目の引上げかを示すマルチ次数を、縦軸に良品率を取ったグラフである。図6に示すように、良品率は1本目が93%、2本目が89%、3本目が86%となり、極めて安定した製造を行うことができた。
(比較例1)
トップチャンバからの除去熱量の割合により、直胴中の引上げ速度を補正しなかった以外は、実施例と同様の方法で10バッチ径方向全面がN領域となるようにシリコン単結晶の製造を行った。
その結果、図6に示すように、良品率は1本目が92%、2本目が83%、3本目が68%となり、マルチ次数の経過するほど良品率は低下した。
これは、1本目から3本目まで全く同じ操業条件でありながら、操業時間の経過に伴いチャンバ表面に酸化物等が付着し、これによりチャンバからの除去熱量が変化したため、固液界面近傍の温度勾配Gが変化し、径方向全面がN領域となる引上げ速度が変化したが、これに伴って引上げ速度を補正しなかったことによるものと考えられる。
(比較例2)
絞り開始から48分後のボトムチャンバからの除去熱量の割合と径方向全面がN領域となる引上げ速度との関係を調査した。その結果、図5に示すように相関がみられず、ボトムチャンバからの除去熱量により径方向全面がN領域となる引上げ速度に補正することは困難であった。
これは、本実施例及び比較例で使用した単結晶製造装置では、ボトムチャンバがメインチャンバの底部に位置するため、ボトムチャンバからの除去熱量の割合が3%程度で極めて小さいためと考えられる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は単なる例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
例えば、本実施形態では主にシリコン単結晶を製造する場合について記述したが、CZ法であれば、シリコン以外の単結晶についても本発明を適用することができる。
また、上記実施例及び比較例ではボトムチャンバについて除去熱量及び/または除去熱量の割合と結晶品質との間に相関関係はあまりなかったが、単結晶製造装置の構成等によってはトップチャンバに限らずボトムチャンバ等での除去熱量及び/または除去熱量の割合の測定結果に基づいて単結晶引上げ速度を制御することが適切である場合もあり得る。
本発明に係る単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。 一般的な単結晶製造装置の一例を示す概略断面図である。 本発明に係る単結晶の製造方法の工程の例を示すフロー図である。 トップチャンバからの除去熱量の割合と、径方向全面がN領域となる基準引上げ速度に対する補正量との関係を示すグラフである。 ボトムチャンバからの除去熱量の割合と、径方向全面がN領域となる基準引上げ速度に対する補正量との関係を示すグラフである。 実施例と比較例1の径方向全面がN領域となった割合を良品率として比較したグラフである。
符号の説明
1…単結晶製造装置、 2…引上げチャンバ、 3…単結晶棒、 4…原料融液、
5…石英ルツボ、 6…黒鉛ルツボ、
7…発熱体、 8…断熱部材、 9…ガス流出口、 10…ガス導入口、
11…冷却筒、 12…冷却媒体導入口、 13…冷却補助部材、
15…引上げ機構、 16…ワイヤー、
17…種結晶、 18…種ホルダ、 19…ルツボ回転軸、
20…メインチャンバ、 21…トップチャンバ、 22…ミドルチャンバ、
23…ボトムチャンバ、
31…循環冷却媒体用流路、
32…循環冷却媒体用流路入口、 33…循環冷却媒体用流路出口、
34…入口温度測定手段、 35…出口温度測定手段、
36…循環冷却媒体流量測定手段、
37…演算手段、 38…速度制御手段。

Claims (7)

  1. 少なくとも、複数に分割可能なチャンバと、原料融液を収容するルツボと、前記原料融液を加熱する発熱体と、ワイヤーまたはシャフトにより前記原料融液から単結晶を回転させながら引上げるための引上げ手段とを具備する、チョクラルスキー法により単結晶を製造するための単結晶製造装置であって、
    前記複数に分割されたチャンバのうち少なくとも1つは、該チャンバを冷却する循環冷却媒体が流通する循環冷却媒体用流路と、前記循環冷却媒体の、前記循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量を測定するそれぞれの測定手段とを有するものであり、前記循環冷却媒体用流路における入口温度及び出口温度並びに循環冷却媒体流量の測定値から、前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段と、該算出した除去熱量及び/または除去熱量の割合に基づいて単結晶の引上げ速度を制御する引上げ速度制御手段とを具備するものであることを特徴とする単結晶製造装置。
  2. 前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する演算手段は、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象にして除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出するものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
  3. 少なくとも、複数に分割可能なチャンバを具備する単結晶製造装置を用いて、チョクラルスキー法により単結晶を製造する方法であって、
    少なくとも1つの前記分割されたチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合を算出する第一の工程と、
    前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質との関係を調査する第二の工程と、
    前記チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合の変動と前記製造される単結晶の結晶品質の変化とに相関関係があるチャンバを対象として、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と、所望の結晶品質が得られる単結晶引上げ速度との関係を求める第三の工程と、
    前記対象としたチャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合から所望の結晶品質が得られる引上げ速度になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正する第四の工程と、
    前記補正した単結晶引上げ速度でルツボから単結晶を引上げる第五の工程と
    を含む単結晶の製造方法。
  4. 前記単結晶を引上げた後、前記ルツボに多結晶原料を追加充填し、溶融して原料融液とし、再び単結晶の引き上げを繰り返すことによって、同一のルツボから2以上の単結晶を引上げることを特徴とする請求項3に記載の単結晶の製造方法。
  5. 前記第三の工程で求めた、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と前記単結晶引上げ速度との関係から、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階の開始前に行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の単結晶の製造方法。
  6. 前記第三の工程で求めた、チャンバからの除去熱量及び/または除去熱量の割合と前記単結晶引上げ速度との関係から、所望の結晶品質になるように単結晶引上げ速度の設定値を補正することを、少なくとも、単結晶の直胴部分を引き上げる段階中に断続的または連続的に行うことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
  7. 前記製造される単結晶を、直径200mm以上であり、半径方向全面がN領域を有する無欠陥のシリコン単結晶とすることを特徴とする請求項3ないし請求項6のいずれか一項に記載の単結晶の製造方法。
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