JP2008096618A - 顕微鏡標本容器用ラック - Google Patents

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卓也 村角
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Abstract

【課題】多数の容器を効率的且つ安定的に収納でき、360°いずれの方向にも収納できるとともに、一旦収納された容器の向きを必要に応じ自在に変えることができる顕微鏡標本容器用ラックを提供する。
【解決手段】顕微鏡標本容器7を収納するためのラックであって、底板2と、該底板2の対向する2辺から立設された側板4と、該側板4に架設された支持板5とからなり、前記支持板5には顕微鏡標本容器7を挿通支持し得る円形の透孔5aが複数個穿設されており、底板2に顕微鏡標本容器7の底部を定置し得る凹窩部2aが設けられていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は病理組織や生物学的液体(血液や尿など)等の検体がスライドガラス上に固定されてなる顕微鏡標本を収容する顕微鏡標本容器を多数収納するためのラックに関し、あらゆる形状の顕微鏡標本容器を安定的に収納することができ、さらに、360°いずれの方向にも収納できるとともに、一旦収納された顕微鏡標本容器の向きを必要に応じて自在に変えることができる顕微鏡標本容器用ラックに関するものである。
従来から、病理組織の切片が固定され、又は生物学的液体が塗布されたスライドガラスからなる標本は、アルコールやホルマリンの中に浸して保存されていた。そのための容器としては例えば特許文献1に記載されたような水密性容器がある。これは標本を充分に保護でき、さらに蓋を容器に螺合させるようになっているため容易に密封できる点で好ましい容器である。しかし、多数の標本をこの容器に収容するとお互いに衝突して破損するおそれがあるという欠点がある。
特開2001−2109号公報
この点を改良するために、対向する2面の内側に支持凸部を列設し、該支持凸部間に形成される凹部に標本を挿入するタイプの、多数の標本を収容できる顕微鏡標本容器が、近年、種々開発されている。例えば、図25に示すような、外形が円筒状で断面略正方形の穴が穿設された容器の内側にいくつかの支持凸部7cを設けた容器が用いられている。これは支持凸部7cの間に標本Sを挿入することにより、標本同士が衝突することもなく、保管したり、容易に持ち運ぶことができる容器である。このような容器は少数の標本(図25の従来例では4枚)を収納して携帯する目的で好適に使用されている。さらに、大量の標本を収納するために、図26に示したような容器が好適に使用されている。これはガラス製で、断面が矩形になっており一列に標本を並べるようになっている。
一方、大量の検体を検査する大病院などでは、いかに多数の標本を収容できるといえども、一つの顕微鏡標本容器で全ての標本を収容するのは到底不可能であり、複数の顕微鏡標本容器を使用する必要が生じる。しかし、これらの容器は束ねたり積み重ねるのが難しく、多数の容器を保管したり一度に運ぶのが難しいという問題点がある。また、ラックを使用するとしても、ラック内で顕微鏡標本容器が転倒したりすると貴重な検体が破損する危険性が高いため安定性が強く求められる一方、単に容器をラック内で固定するようなものであると、容器を収納する際、固定に適する特定の向きに容器を載置する必要があるため作業が煩雑となり、また、容器がラックに収納された状態で標本を容器内から出し入れする場合にも容器の方向が規制されるので、作業の自由度が制限されることになる。
本発明は、かかる実情に鑑み、上記従来の問題を解消し、多数の容器を同時に扱うことができ、さらにラック内で容器を安定的に収納できるばかりでなく、360°いずれの向きにも自在に収納でき、且つ収納後も容器の向きを必要に応じて自在に変えることができる顕微鏡標本容器用ラックを提供することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1に係る本発明は、顕微鏡標本を収容した容器(以下、顕微鏡標本容器と記す)を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板に顕微鏡標本容器の底部を定置し得る凹窩部が設けられていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項2に係る発明は、顕微鏡標本容器を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板の3〜20mm上方に、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔を穿設した下部支持板が架設されていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項3に係る発明は、支持板が顕微鏡標本容器の高さの少なくとも1/2の高さに架設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項4に係る発明は、底板が、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る透孔が穿設された上部板と、該透孔が穿設されていない下部板とを重ね合わせてなり、前記上部板の透孔と下部板の表面とにより顕微鏡標本容器を定置し得る凹窩部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項5に係る発明は、凹窩部がすり鉢状であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項6に係る発明は、底板に液溜溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項7に係る発明は、底板に堰止壁が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項8に係る発明は、側板の上端部内側及び底板の裏側に段積用係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項9に係る発明は、側板の上部付近に把持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
請求項10に係る発明は、透明性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラックを内容とする。
本発明の顕微鏡標本容器用ラックは、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る透孔が複数個支持板に穿設されているため、顕微鏡標本容器はこの透孔に挿通支持され、複数の容器を同時に保存、運搬することができ、さらに、複数の顕微鏡標本容器を整然と収納できるため、取り違え等のトラブルが防止され、作業性、信頼性が高められる。
また、本発明の顕微鏡標本容器用ラックによれば、底板に顕微鏡標本容器の底部を定置し得る凹窩部が設けられているため、容器は透孔と凹窩部の2箇所で保持されて安定的に該容器を収納できる。さらに、透孔は円形であるので顕微鏡標本容器を360°いずれの方向に向けても透孔内に該容器を挿通することができ、かつ、例えば、挿通された容器の向きを標本を出し入れしやすい方向に容易かつ自由自在に変更することができるため、作業性が大幅に向上する。
請求項2に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、底板の3〜20mm上方に、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔を穿設した下部支持板が架設されているため、例えば運搬時に容器が揺動により跳ね上がったとしても、容器は下部支持板の透孔から脱落しにくくなり、一層安定的に運搬することが可能となる。さらに、透孔は円形であるので顕微鏡標本容器を360°いずれの方向に向けても透孔内に該容器を挿通することができ、かつ挿通された容器の向きをを標本を出し入れしやすい方向に容易かつ自在に変更することができるため、作業性が大幅に向上する。
請求項3に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、支持板が顕微鏡標本容器の高さの少なくとも1/2の高さに架設されているため、ラックが相当傾いた場合でも顕微鏡標本容器はラックから脱落せず、安全に保存、運搬ができる。
請求項4に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、底板が、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る透孔が穿設された上部板と、該透孔が穿設されていない下部板とを貼り合わせてなり、前記上部板の透孔と下部板の表面とにより凹窩部を容易に成形することができ、上方の支持板の透孔と下方の凹窩部の2箇所で支持されるので容器を安定的に保存、運搬することができる。
請求項5に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、凹窩部がすり鉢状であるため、ここに載置された顕微鏡標本容器は中央部に向かって滑り落ちる。従って顕微鏡標本容器が少々ずれていたとしても自動的に制御され、適当な位置に定置されることになるので作業性が高められるとともに、収容されている容器のがたつきが抑えられ、検体が破損する危険性が減少する。
請求項6に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、底板に液溜溝が設けられているため、例えば、ラック上に顕微鏡標本容器内の薬液を少々こぼしたとしても、この薬液は液溜溝内に流れ込み他の場所に流れないため、隣接する顕微鏡標本容器を汚したりラック外に薬液が流出して机や床面を汚すことがない。
請求項7に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、底板に堰止壁が設けられているため、例えば、ラック上に顕微鏡標本容器内の薬液をこぼしたとしても、この薬液は堰止壁で堰き止められ、ラック外に薬液が流出することがない。
請求項8に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、側板の上端部内側及び底板の裏側に段積用係合突起が設けられているため、これらの係合突起を係合させることにより段積みをしても上段のラックが下段のラックから滑り落ちるようなことがなく、安定的に段積みできるので、保管や運搬が容易である。
また段積用係合突起を側板の内側に設けることにより、側板表面に余計な突出物がなくなり、外観が良好であるとともに、物を引っ掛けて段積みしたラックを倒したりする危険性が減少する。
請求項9に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、側板の上部付近に把持部が設けられているため、ラックを持ち上げ易く、運搬や保管が容易になる。
また、ラックの重心よりも上に把持部があるため、運搬中にバランスを崩してラックをひっくり返す危険性が減少する。
請求項10に係る発明の顕微鏡標本容器用ラックは、透明性樹脂からなるため、顕微鏡標本容器内の状態がラックの外から視認でき、例えば標本を取り出すことなく容器内の標本の状態を確認できるので、より作業性が高くなる。
本発明の第1は、顕微鏡標本容器を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板に顕微鏡標本容器の底部を定置し得る凹窩部が設けられていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラックである。
本発明の第2は、顕微鏡標本容器を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板の3〜20mm上方に、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔を穿設した下部支持板が架設されていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラックである。
まず、本発明の第1の顕微鏡標本容器用ラックについて詳細に説明する。
この顕微鏡標本容器は、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなる。
本発明の顕微鏡標本容器用ラックで使用する底板は、顕微鏡標本容器を載置するためのものであって、該容器の底部を定置し得る凹窩部が設けられる。この場合、容器は後述する支持板の透孔と凹窩部の2箇所で支持されることになり、安定的に収納できるという利点がある。
このような凹窩部はプレス加工や掘穿加工などによっても形成できるが、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る透孔が穿設された上部板と、該透孔が穿設されていない下部板とを重ね合わせることによって凹窩部を形成すれば、容易且つ安価であるためより好ましい。
凹窩部の断面形状は顕微鏡標本容器を定置できる形状である限り特に限定されないが、すり鉢状、即ち凹窩部の周辺部から中央部に向かって下り斜面となっている形状が好ましい。このような形状とすることにより、該容器は少々ずれていたとしても容器の自重によりこの斜面を滑り落ちて凹窩部の中央部に落ち着くため、容器のがたつきが抑えられる。また凹窩部の傾斜は中央部付近でゆるく、周辺部付近できつくなっていれば、容器はより凹窩部の中心付近に落ち着きやすくなる。このように自動的に容器の位置が制御されるため、ずれを気にすることなく容器を置けるので、作業性が良くなる。
底板には液溜溝を設けることもできる。この場合顕微鏡標本容器内の薬液をラック上にこぼしたとしてもこの薬液は液溜溝内に流れ込み、他の場所に流出して汚染することがないため好ましい。
この液溜溝は底板のいずれの個所に設けてもよいが、例えば底板の周縁部、特に側板が立設されていない2辺に沿って設ければ底板上にこぼれた薬液がラックの外に流れ出し、作業机などを汚染することが防止されるので好ましい。
さらに上記した凹窩部の廻りを囲むように設ければ、隣接する顕微鏡標本容器から薬液がこぼれたとしても凹窩部内にはこの薬液が流れ込まず、容器の底面が薬液により汚染されることがなく、清潔に保たれる。
このような液溜溝はプレス加工や掘穿加工などによっても形成できるが、スリットが開設された上部板と、該スリットが穿設されていない下部板とを重ね合わせることによって液溜溝を形成すれば、容易且つ安価であるためより好ましい。
上部板と下部板とは、必要に応じ、接着、溶着、融着等により一体化してもよい。
液溜溝に代えて、あるいは液溜溝と共に、堰止壁を設けてもよい。堰止壁によっても液溜溝と同様薬液の流出を防ぐことができる。
顕微鏡標本容器を更に安定に収納するためには、支持板と同様、円形の透孔を穿設した下部支持板を底板の上方に架設した構造を採用することもできる。
この構造によると、顕微鏡容器は支持板と下部支持板の2箇所に設けられた透孔と凹窩部の計3箇所で支持されることになる。従って、顕微鏡標本容器が底板から浮いた状態で収納された場合や、例えば、運搬中ラックに衝撃が加えられて収納された容器が底板から少々跳び上がった場合でも該容器を2箇所で安定的に支持することができる。
この下部支持板の高さは顕微鏡標本容器の収容部を支持板と下部支持板の透孔で支持できる限り特に限定されないが、底板から3〜20mm程度上方に設けられるのが好ましい。3mm未満であると底板に凹窩部を設ける場合と効果上の大差はなく、20mmを超えると支持板と下部支持板の距離が近くなりすぎ、安定性がやや減少するからである。
本発明の顕微鏡標本容器用ラックで使用する側板は、支持板と底板とを両側板間に架設するとともに支持板と底板との間隔を保持する役割を果たし、またラックの側方の保護壁の役割を果たすものである。また、この側板は底板の対向する2辺から立設されており、この底板により側板間の間隔が決定されている。
この側板の高さは最低限底板と支持板の間隔を保持できる程度、即ち支持板の高さ以上であればよい。しかし、このラックを段積み可能にする場合、即ち側壁の上端に別のラックを載せる場合は、顕微鏡標本容器の蓋と上側のラックの底板との衝突を防ぐため、顕微鏡標本容器の支持板より上方に突出した高さを超える程度の高さが必要となる。
なお、側板の高さが顕微鏡標本容器の高さの2倍以上であるとラックが大きくなり過ぎ、取り扱いが困難になる。
顕微鏡標本容器用ラックを段積み可能とする場合、上段のラックが滑り落ちないようにするため、側板の上端付近と下端付近に段積用係合突起を設けるのが好ましい。この段積用係合突起の形状は係合後に上段のラックが移動しない形状であれば特に限定されないが、好ましい段積用係合突起としては、例えば図24のように側板の頂辺の内側両端部及び底辺の内側中央部に棒状突起を横設し、段積みしたときに底辺側の棒状突起が頂辺側の棒状突起の間に嵌合するような形状が挙げられる。
さらに、段積用係合突起は側板の上端部内側に設け、これと係合し得る突起を底面の裏面、より詳しくは側板との接合部付近に設けるとより好ましい。このようにすれば、段積みした状態で側板外側に突出部がなくなり、外観が良好であるとともに、物を引っ掛けてラックを倒してしまう危険性等が減少するからである。
側板には、ラックの運搬を容易にするための把持部が設けられているのが好ましい。その形状は特に限定されず、例えば側板の外側に突起状の把持部を設けてもよいが、側板に穿設された横長の孔を把持部とすれば、構造が簡単で安価に製造でき、さらに余計な突出部がなく、外観が良好であるとともに、安全性が増すため好ましい。
把持部の位置も側板の平面視中央付近に設けられていればその高さは特に限定されないが、上端付近に設けた場合はラックの重心が把持部よりも下にあるため運搬中、特に段積み中にバランスを崩してラックをひっくり返す危険性がなくなるので好ましい。
なお、把持部を支持板と底板の間に設けた場合、側板を支持板の上にまで延設する必要がなくなり、ラック自体をコンパクトにできる。
支持板は2枚の側板間に架設される。その高さ(底板と支持板の間の距離)は特に限定されないが、顕微鏡標本容器の収容部の高さの1/2以上であると、ラックが相当傾いた場合でも顕微鏡標本容器はラックから脱落せず、安全に保存、運搬ができるため好ましい。
顕微鏡標本容器の重心よりも高い位置に支持板を設けると安定性が増すためさらに好ましい。この場合、ラックが横転したとしても容器はラックから脱落しない。
顕微鏡標本容器を安定的にラックに収納するには、該容器をラックの透孔に挿通支持した状態で該容器の収容部の底面がラックの底板に接していることが望ましい。従って、支持板の高さは収容部の上端付近とするのが好ましい。なお、開口部の断面形状が収容部のそれよりも大きい顕微鏡標本容器を収容する場合には、支持板を顕微鏡標本容器の収容部の高さを超える位置に設けることもできる。この場合には、容器の開口部が透孔に引っ掛かり、この容器の収容部が支持板から垂下される形で収容され、このため顕微鏡標本容器の底面が底板と接触せず、底板に薬液がこぼれた場合でも容器の底面は薬液で汚れる事がない。但しこの場合、支持板の透孔と凹窩部の2点で該容器を支持することができなくなるため、該容器を安定的に収容するために下部支持板を設ける必要がある。
なお、支持板の高さを顕微鏡標本容器の2倍以上とすると、顕微鏡標本容器用ラックは必要以上に大きくなってしまい、使用しにくくなる。
支持板に設けられる透孔の形状は円形とされる。このため、顕微鏡標本容器を透孔に挿通支持させるにあたり、該容器の向きについて考慮する必要がなく、また標本を観察する技師らは、必要に応じ使い易いように容易かつ自在に顕微鏡標本容器の向きを変えることができる。
透孔の数は特に限定されず、顕微鏡標本容器のサイズ、ラックのサイズ、持ち運びや取り扱い性等を勘案して適宜決定すればよいが、通常6〜20個程度が好適である。
本発明における顕微鏡標本容器用ラックの材質は特に限定されないが、造形性や軽量化を考慮して樹脂製が好ましい。使用できる樹脂としては特に限定されないが、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
また、透明性樹脂を使用するとより好ましい。ラックに収納された顕微鏡標本容器の状態を把握しやすく、さらに容器も透明性樹脂からなる場合には、標本の有無や検体の種類をラックの外側から判断することができ、作業性が向上するからである。透明性樹脂としては、特に限定されないがポリプロピレン、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂等が例示できる。
本発明の第2は、上記本発明の第1において、底板の凹窩部に代えて、円形の透孔を穿設した下部支持板を用い2箇所で顕微鏡標本容器を挿通支持し得るようにしたものである。
この場合は、下部支持板は上部に架設される支持板と概ね同じものを準備すればよく、第1の発明のように、底板に凹窩部を形成する必要がないので製造が容易である。
下部支持板の効果は、第1の発明において下部支持板を設ける場合と同様であり、顕微鏡標本容器が底板から浮いた状態で収納された場合や、運搬中に該容器が底板から跳び上がったような場合でも安定的に挿通支持される。
本発明の顕微鏡標本容器用ラックに収納される顕微鏡標本容器は特に制限されず、蓋体容器本体がともに矩形状、又は円形状のもの、蓋体が円形状で容器本体が矩形状のもの等いずれのタイプのものでもよい。
具体的には、図26に示した従来の顕微鏡標本容器(図12参照)、図16,図17に示したように、該容器の底面隅部付近の清掃性を高めるために、支持凸部7cを設けない清掃用間隙7fを設けた顕微鏡標本容器(図12参照)、図18,図19に示すように、液密性を容易とするために、蓋体8及びこれを被着させる開口部7aは円形状とし、顕微鏡標本Sの収容部7bを有する容器本体9は矩形状とし、該容器本体9の安定性のために転倒防止材7dを突設した顕微鏡標本容器(尚、鍔部7gは蓋体8の開閉時に手で押さえたり、持ち運び時に指を掛けるためのもので、省略しても差し支えない。)(図13参照)、図20,図21に示すように、蓋体8及び開口部7aは円形状とし、収容部7bを2列として容器本体9を略正方形状として安定性を高めた顕微鏡標本容器(図14参照)、図22,図23に示すように、円形状の蓋体8及び開口部7aと収容部7bを2列設けた円形状の容器本体9とからなる顕微鏡標本容器(図15参照)等が挙げられる。
これらの顕微鏡標本容器は、収容部を有する容器本体の部分を顕微鏡標本容器用ラックの円形の透孔に挿通支持させて収納するのがよい。本発明の顕微鏡標本容器用ラックに収納された顕微鏡標本容器は、顕微鏡標本容器が円形状のものは勿論のこと、矩形状(正方形、長方形)のものであっても円形の透孔内で360°のいずれの方向にも自在に変えることができるので、該容器をラックに挿通支持させる際には方向を選ばず、また一度挿通支持させた後においても使い勝手の良い方向に自在に変えることができるので作業性が飛躍的に高められる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されないことは云うまでもない。尚, 図1乃至図23において、透明材料からなる顕微鏡標本容器用ラック又は顕微鏡標本容器も含まれているが、図面が煩雑となるのを避けるため、透けて見える線を省略している。
実施例1
図1乃至図5に本発明の顕微鏡標本容器用ラックの実施例1を示す。実施例1の顕微鏡標本容器用ラック1は、図1に示す通り、底板2と、側板4と、支持板5と、中間板6からなる。
底板2は短辺側130mm、長辺側250mmの長方形の板状部材であり、両方の短辺側から側板4が立設され、中央部から中間板6が立設されている。
側板4は底辺130mm、高さ116mmの板状部材である。上部付近、詳しくは頂辺から20mmのところに幅70mm、高さ20mmの長方形で角がアール処理された形状の孔が穿設され、この孔が把持部4cとされている。
支持板5は側板4と略同サイズの板状部材であり、短辺側を側板4で、中央付近を中間板6で、高さ50mmの位置に支えられている。なお、実施例1で収容予定の顕微鏡標本容器7の収容部7bの高さが80mmであるから、支持板5は収容部7bの高さの1/2以上の高さに架設されており、顕微鏡標本容器7を安定に収納することができる。
図2に示すように支持板5には透孔5aが2列に4個づつ、計8個穿設されており、8個の顕微鏡標本容器7を収納できるようになっている。透孔5aの形状は直径50mmの円形となっている。顕微鏡標本容器7はこの透孔5aのなかに挿通支持されるため、顕微鏡標本容器7は透孔5a内に360°いずれの向きにも収納することができ、また収納された状態でこの顕微鏡標本容器を適当な方向に容易かつ自由自在に向きを変えることができる。
図1, 図3に示すとおり、底板2は上部板2bと下部板2cを接着剤で貼り合わせて形成したものである。一方、図1,図5に示すように、上部板2bには支持板5と同様の透孔が穿設されている。従って、貼り合わせ後の底板2には上部板2bの透孔と下部板2cの表面とで形成された凹窩部2aが形成されている。このため、顕微鏡標本容器7は透孔5aに挿通支持されるとともに、容器7の底面は凹窩部2aに定置されることになり、これにより顕微鏡標本容器7は2箇所で支持されることになるため、より安定的に収納されることになる。
また、底板2の長辺側端部の全長に渡って高さ12mmの堰止壁2eが立設されている。このため、ラック上に薬液をこぼしたとしても、堰止壁2eにより堰止められるので、ラック外に流出することがない。
図3及び図4に示す通り、段積用係合突起4aが側板4の上端部内側に1個、及び段積用係合突起4bが底板2の裏側で側壁との接合部付近外側に2個、横設されている。
段積用係合突起4a、4bは4mm角の角柱状であり、その長さは突起4aが90mm、突起4bが20mmとなっている。この実施例1の顕微鏡標本容器用ラック1を段積みすると、図24に示すように、上側の段積用係合突起4aは下側の2個の段積用係合突起4bの間に入り込み係合するので、上側の顕微鏡標本容器用ラック1は下側のラック1の上からずり落ちることがなくなる。
また、上記段積用係合突起4a、4bは段積みした時に側板4の内側に入り込むため、外側に出っ張ることがなく、従って、外観も良好であり、また物を引っ掛けることもないので安全である。
なお、材質は不透明な材質、透明な材質のいずれでもよいが、透明性樹脂を用いると収納されている顕微鏡標本容器7の状態が確認しやすくなり、特に顕微鏡標本容器7も透明性樹脂で形成されている場合には顕微鏡標本容器用ラック1の外側から顕微鏡標本容器7内の標本の有無や検体の種類を視認でき、作業性が向上する。
実施例2
図6乃至図10に本発明の顕微鏡標本容器用ラック1の実施例2を示す。実施例2の顕微鏡標本容器用ラック1は、図6に示す通り、底板2と、側板4と、支持板5と、下部支持板3と、中間板6からなる。なお、基本的な構成及びサイズは特に言及がない限り実施例1のものと同様である。
また、図8,図9に示す通り、側板4の上端部内側及び底板2の裏側で側壁との接合部付近に段積用係合突起4a、4bが設けられている。この点も段積用係合突起4aが側板4の上端部外側に2個、及び段積用係合突起4bが底板2の裏側で側壁との接合部付近内側に1個、横設されている他は、実施例1と同様である。
図6,図10に示すとおり、底板2は一枚の板状部材であり、底板2の長辺に沿った幅5mmの液溜溝2dが形成されている。このため、ラック上に薬液をこぼしたとしても、薬液は液溜溝2dに溜るので、ラック外に流出して作業机等を汚染することがない。
また、底板2の15mm上方に下部支持板3が架設されている。下部支持板3は底板4の約半分の大きさ、詳しくは幅130mm、長さ124mmの2枚の板状部材であり、支持板5の透孔5aと同様に円形の透孔3aがそれぞれ4個づつ穿設されている。これにより顕微鏡標本容器7の箱型収納部7bは透孔5aと透孔3aの2個所で挿通支持され、特に顕微鏡標本容器用ラック1に衝撃が加えられて顕微鏡標本容器7が跳ね上がった場合でも下部支持板3から外れないため、より安定的に収納できる。
実施例3
図11に本発明の顕微鏡標本容器用ラック1の実施例3で使用する凹窩部2aの断面図を示す。実施例3は凹窩部2aの形状をすり鉢状、詳しくは凹窩部2aの周辺部から中央部に向かって下り斜面となっており、その傾斜は中央部付近でゆるく、周辺部付近できつくなっている形状に変更した他は実施例1と同様の例である。
このため、支持板5の円形の透孔5aに挿通支持された顕微鏡標本容器7はこの凹窩部2aに載置されるが、顕微鏡標本容器7が若干傾いた状態で透孔5aに挿通されたとしても凹窩部2aの斜面を滑り落ち、その中央部に自動的に定置される。従って、該容器を挿通支持させる際に気を使う必要がなく、また定置された後はがたつきが抑えられる。
叙上のとおり、本発明の顕微鏡標本容器用ラックは、顕微鏡標本容器を支持板の透孔及び底板の凹窩部、又は支持板(上部)の透孔と下部支持板の透孔により2点以上で支持するので極めて安定的に収納され、運搬や保管の際に収納した容器が転倒しにくい。また、複数の容器を整然と収納できるので、取り違え等のトラブルが防止され、作業性や信頼性が高められる。更に、透孔が円形であるので、該容器を360°いずれの方向にも収納でき、さらに一旦収納された容器の向きを必要に応じて自在に変えることができるので、使い勝手が良く、特に、病院など、大量の検体を検査する場合に、頗る有用性が高いものである。
実施例1の斜視図である。 実施例1の平面図である。 実施例1の正面図である。 実施例1の側面図である。 実施例1のA−A線断面図である。 実施例2の斜視図である。 実施例2の平面図である。 実施例2の正面図である。 実施例2の側面図である。 実施例2のB−B線断面図である。 凹窩部の別の形状を示す断面図である。 本発明のラックの使用方法を示す説明図である。 本発明のラックの使用方法を示す説明図である。 本発明のラックの使用方法を示す説明図である。 本発明のラックの使用方法を示す説明図である。 本発明のラックに収納される顕微鏡標本容器の一例を示す一部切除平面図である。 同正面図である。 同顕微鏡標本容器の他の例を示す一部切除平面図である。 同正面図である。 同顕微鏡標本容器の他の例を示す一部切除平面図である。 同正面図である。 同顕微鏡標本容器の更に他の例を示す一部切除平面図である。 同正面図である。 本発明のラックの段積み方法を示す側面図である。 従来の顕微鏡標本容器の一例を示す一部切除平面図である。 従来の顕微鏡標本容器の他の例を示す一部切除平面図である。
符号の説明
1 顕微鏡標本容器用ラック 2 底板
2a 凹窩部
2b 上部板
2c 下部板
2d 液溜溝
2e 堰止壁
3 下部支持板
3a 透孔
4 側板
4a 上側の段積用係合突起
4b 下側の段積用係合突起
4c 把持部
5 支持板
5a 透孔
6 中間板
7 顕微鏡標本容器
7a 開口部
7b 収容部
7c 支持凸部
7d 転倒防止部材
7e 凹部
7f 清掃用間隙
7g 鍔部
8 蓋体
9 容器本体
S 標本

Claims (10)

  1. 顕微鏡標本を収容した容器(以下、顕微鏡標本容器と記す)を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板に顕微鏡標本容器の底部を定置し得る凹窩部が設けられていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラック。
  2. 顕微鏡標本容器を収納するためのラックであって、底板と、該底板の対向する2辺から立設された側板と、該側板に架設された支持板とからなり、前記支持板には顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔が複数個穿設されており、底板の3〜20mm上方に、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る円形の透孔を穿設した下部支持板が架設されていることを特徴とする顕微鏡標本容器用ラック。
  3. 支持板が顕微鏡標本容器の高さの少なくとも1/2の高さに架設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  4. 底板が、顕微鏡標本容器を挿通支持し得る透孔が穿設された上部板と、該透孔が穿設されていない下部板とを重ね合わせてなり、前記上部板の透孔と下部板の表面とにより顕微鏡標本容器を定置し得る凹窩部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  5. 凹窩部がすり鉢状であることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  6. 底板に液溜溝が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  7. 底板に堰止壁が設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  8. 側板の上端部内側及び底板の裏側に段積用係合突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  9. のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラック。
  10. 透明性樹脂からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の顕微鏡標本容器用ラック。
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