JP2008094302A - 車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】車両の制動制御装置のECUは、ステアリングホイールの操舵角の絶対値が操舵角閾値以上である場合に、車両の旋回方向内側の各車輪(例えば右前輪及び右後輪)のうち予め設定された制御用車輪(例えば右後輪)に対して制動力を付与する旋回時制動制御を実行する。この状態で、ECUは、各車輪のうち最も車輪速度の遅い車輪(制御用車輪)のスリップ率SLPを検出し、該スリップ率SLPが予め設定されたスリップ率閾値KSLP以上である場合、制御用車輪に対する制動力BPを、スリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP未満である場合よりも低下させる。
【選択図】図4
Description
以下、本発明の車両の制動制御装置、及び車両の制動制御方法を具体化した第1の実施形態を図1〜図5に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。また、特に説明がない限り、以下の記載における左右方向は、車両進行方向における左右方向と一致するものとする。
図2に示すように、本実施形態の制動力付与機構15は、マスタシリンダ30及びブースタ31を有する液圧発生装置32と、2つの液圧回路33,34を有する液圧制御装置(図2では二点鎖線で示す。)35とを備えている。各液圧回路33,34は、液圧発生装置32に接続されると共に、各車輪FR,FL,RR,RLに対応して設けられた制動手段としてのホイールシリンダ36a,36b,36c,36dに接続されている。すなわち、右前輪FRにはホイールシリンダ36aが対応すると共に、左前輪FLにはホイールシリンダ36bが対応している。また、右後輪RRにはホイールシリンダ36cが対応すると共に、左後輪RLにはホイールシリンダ36dが対応している。
さて、ECU16は、所定周期毎(例えば、「0.01」秒毎)に旋回時制動制御実行判定処理ルーチンを実行する。そして、この旋回時制動制御実行判定処理ルーチンにおいて、ECU16は、ブレーキスイッチSW1からの入力信号が「OFF」であるか否かを判定する(ステップS10)。すなわち、ECU16は、ブレーキペダル37が踏込み操作されていないか否かを判定する。ステップS10の判定結果が否定判定(SW1=「ON」)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS18に移行する。
さて、旋回時制動制御処理ルーチンにおいて、ECU16は、左右方向のうち何れの方向に車両が旋回しているかを特定する(ステップS30)。具体的には、ECU16は、上記ステップS14にて検出した操舵角Aが正の値である場合には車両の旋回方向が右方向であると特定する一方、検出した操舵角Aが負の値である場合には車両の旋回方向が左方向であると特定する。続いて、ECU16は、上記ステップS11にて検出した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度VWに基づき、各車輪FR,FL,RR,RLのうち二番目に遅い車輪速度VWの車輪を特定する(ステップS31)。例えば、車両が右方向に旋回している場合、各車輪FR,FL,RR,RLのうち、右後輪RRの旋回半径が最も短く、右前輪FRの旋回半径が二番目に短いため、右前輪FRが二番目に遅い車輪速度VWの車輪となる。一方、車両が左方向に旋回している場合には、左前輪FLが二番目に遅い車輪速度VWの車輪となる。
(車両の旋回方向内側の後輪のスリップ率SLR)=((二番目に遅い車輪の車輪速度VW)−(車両の旋回方向内側の後輪の車輪速度VW))/(二番目に遅い車輪の車輪速度VW)…(イ)
続いて、ECU16は、ステップS32にて検出した車両の旋回方向内側の後輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPが予め設定されたスリップ率閾値KSLP(例えば「0.5」)以上であるか否かを判定する(ステップS33)。このスリップ率閾値KSLPは、車両が低μ路(雪道など)を走行している際に車両の旋回方向内側の後輪の横坑力(図5参照)が低下しているか否かを判断するための値であって、実験やシミュレーションなどによって予め設定される。ステップS33の判定結果が否定判定(SLP<KSLP)である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS39に移行する。
ただし、YRT…目標ヨーレート、VS…車体速度、A…操舵角、B…スタビリティファクタ(定数)、L…ホイールベース長(前輪と後輪との間の距離)
そして、ECU16は、ステップS35にて検出した目標ヨーレートYRTに基づいて、目標ヨーレートYRTよりも大きな値となるようにヨーレート閾値KYRを設定する(ステップS36)。具体的には、ECU16は、目標ヨーレートYRTと予め設定された定数(定数は「1」以上の数であって、例えば「1.3」)とを積算し、その積算値をヨーレート閾値KYRと設定する。したがって、この点で、本実施形態では、ECU16が、ヨーレート閾値設定手段としても機能する。
(1)ステアリングホイール24の操舵角Aの絶対値が操舵角閾値KA以上になった場合に、予め設定された制御用車輪として車両Cの旋回方向内側の後輪(例えば右後輪RR)に制動力BPを付与する旋回時制動制御が実行される。そして、この旋回時制動制御が実行されている場合において、制御用車輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP以上であるときには、該制御用車輪の横坑力の低下に起因して、旋回時における車両Cの安定性が低下していると判断する。そして、制御用車輪(例えば右後輪RR)に対する制動力BPを、制御用車輪のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP未満である場合の制御用車輪に対する制動力BPよりも低下させる。そのため、制御用車輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPが低下すると共に、制御用車輪の横坑力の低下が制御用車輪に対する制動力BPを低下させない場合に比して抑制されるため、旋回時における車両Cの安定性が確保される。したがって、低速度(制御開始用車体速度閾値KVS1未満の車体速度VS)にて低μ路上を旋回する車両Cに旋回時制動制御が実行された場合であっても、車両Cの安定性を確保した状態で車両Cの旋回半径を短くすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6に従って説明する。なお、第2の実施形態は、旋回時制動制御処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
さて、旋回時制動制御処理ルーチンにおいて、ECU16は、上記ステップS30〜S33に相当するステップS50,S51,S52,S53の処理を順次実行する。そして、ステップS53の判定結果が否定判定である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS56に移行する。
ステップS57において、ECU16は、上記ステップS40と同等の処理を実行し、その後、旋回時制動制御処理を終了する。その結果、車両Cの旋回方向内側の後輪に対する制動力BPは、ステップS56が実行された場合の車両Cの旋回方向内側の後輪に対する制動力BPよりも低下することになる。
(8)一般に、旋回時制動制御が実行されている場合において、制御用車輪である車両Cの旋回方向内側の後輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP以上であると共に、車両Cの車体速度VSが低下用車体速度閾値KVS2以上であるときには、車両Cに加わる遠心力が大きくなる。その結果、低μ路を旋回中の車両Cの安定性が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、旋回時制動制御の実行に基づいて、制御用車輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP以上となると共に、車両Cの車体速度VSが低下用車体速度閾値KVS2以上になった場合には、制御用車輪に対する制動力BPを、制御用車輪のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP未満である場合の制御用車輪に対する制動力BPよりも低下させる。そのため、制御用車輪(例えば右後輪RR)の横坑力の低下を、制御用車輪に対する制動力BPを低下させない場合に比して抑制できる結果、制御開始用車体速度閾値KVS以下の車体速度VSで低μ路上を旋回する車両Cの安定性を維持することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図7及び図8に従って説明する。なお、第3の実施形態は、旋回時制動制御処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
さて、旋回時制動制御処理ルーチンにおいて、ECU16は、上記ステップS30〜S33に相当するステップS70,S71,S72,S73の処理を順次実行する。そして、ステップS73の判定結果が否定判定である場合、ECU16は、その処理を後述するステップS77に移行する。
ステップS78において、ECU16は、上記ステップS40と同等の処理を実行し、その後、旋回時制動制御処理を終了する。その結果、車両Cの旋回方向内側の後輪に対する制動力BPは、ステップS77が実行された場合の車両Cの旋回方向内側の後輪に対する制動力BPよりも低下することになる。
(9)一般に、旋回時制動制御が実行されている場合において、制御用車輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP以上であると共に、車両Cの横方向加速度GYの絶対値が横方向加速度閾値KGY以上であるときには、旋回時における車両Cの安定性が低下してしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、旋回時制動制御の実行に基づいて、制御用車輪(例えば右後輪RR)のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP以上になると共に、車両Cの横方向加速度GYの絶対値が横方向加速度閾値KGY以上になった場合には、制御用車輪に対する制動力BPを、制御用車輪のスリップ率SLPがスリップ率閾値KSLP未満である場合の制御用車輪に対する制動力よりも低下させる。そのため、制御用車輪(例えば右後輪RR)の横坑力の低下を、制御用車輪に対する制動力BPを低下させない場合に比して抑制できる結果、制御開始用車体速度閾値KVS以下の車体速度VSで低μ路の斜面を旋回する車両の安定性を良好に確保できる。
・第1の実施形態において、上記ステップS38の判定処理を実行しなくてもよい。同様に、第2の実施形態において、上記ステップS55の判定処理を実行しなくてもよい。また、第3の実施形態において、上記ステップS76の判定処理を実行しなくてもよい。
・第2の実施形態において、ヨーレート閾値KYRは、上記ステップS35にて検出された目標ヨーレートYRTよりも大きな値に設定されるのであれば、例えば目標ヨーレートYRTに予め設定された所定値(所定値は正の値)を加算することにより設定される値であってもよい。
・各実施形態において、車両の車体速度VSは、各車輪FR,FL,RR,RLの各車輪速度のうち最も値の大きな車輪速度、2番目に大きな値の車輪速度、3番目に大きな値の車輪速度、及び各車輪速度の平均値のうち何れか一つを基準にして検出するようにしてもよい。
(イ)車両(C)の進行方向に対する左右両側に配置される車輪(FR,FL,RR,RL)と、該各車輪(FR,FL,RR,RL)に制動力を個別に付与する制動手段(36a,36b,36c,36d)とを備える車両(C)に搭載される車両の車輪スリップ率演算装置(16)であって、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を個別に演算する車輪速度演算手段(S11)と、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち少なくとも一つの車輪(RR)に制動力(BP)が付与されるように、前記制動手段(36a,36b,36c,36d)を制御する制御手段(16)とを備え、該制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記車輪速度演算手段(S11)により演算された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)に基づき、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち最も遅い車輪(RR)を特定し、該最も遅い車輪(RR)のスリップ率(SLP)を、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち二番目に遅い車輪(RL)の車輪速度(VW)を基準に演算する車両の車輪スリップ率演算装置。
Claims (7)
- 車両(C)の進行方向に対する左右両側に車輪(FR,FL,RR,RL)が配置される車両(C)に搭載され、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を制御する車両の制動制御装置(11)であって、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を個別に演算する車輪速度演算手段(S11)と、
車両のステアリング(24)の操舵角(A)を演算する操舵角演算手段(S14)と、
該操舵角演算手段(S14)により演算された前記操舵角(A)の絶対値が予め設定された操舵角閾値(KA)以上である場合に、車両(C)の旋回方向内側の前輪(FR)及び後輪(RR)のうち予め設定された制御用車輪(RR)に制動力(BP)が付与される旋回時制動制御を実行する制御手段(16)とを備え、
該制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時に前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)を演算し、該スリップ率(SLP)が予め設定されたスリップ率閾値(KSLP)以上である場合に、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)を、前記旋回時制動制御の実行時における前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)が前記スリップ率閾値(KSLP)未満である場合の前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)よりも低下させる車両の制動制御装置。 - 車両(C)のヨーレート(YR)を演算するヨーレート演算手段(S34)と、
車両(C)の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(S12)と、
前記操舵角演算手段(S14)により演算された操舵角(A)及び前記車体速度演算手段(S12)により演算された車体速度(VS)に基づいて目標ヨーレート(YR)を演算する目標ヨーレート演算手段(S34)と、
該目標ヨーレート演算手段(S34)により演算された前記目標ヨーレート(YR)に基づきヨーレート閾値(KYR)を設定するヨーレート閾値設定手段(S36)とをさらに備え、
前記制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記ヨーレート演算手段(S34)により演算された前記ヨーレート(YR)が前記ヨーレート閾値設定手段(S36)により設定された前記ヨーレート閾値(KYR)以上である場合に、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)を、前記旋回時制動制御の実行時における前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)が前記スリップ率閾値(KSLP)未満である場合の前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)よりも低下させる請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 車両(C)の車体速度(VS)を演算する車体速度演算手段(S12)をさらに備え、
前記制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記車体速度演算手段(S12)により演算された前記車体速度(VS)が予め設定された車体速度閾値(KVS2)以上である場合に、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)を、前記旋回時制動制御の実行時における前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)が前記スリップ率閾値(KSLP)未満である場合の前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)よりも低下させる請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 車両(C)の横方向加速度(GY)を演算する横方向加速度演算手段(S74)をさらに備え、
前記制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記横方向加速度演算手段(S74)により演算された前記横方向加速度(GY)の絶対値が予め設定された横方向加速度閾値(KGY)以上である場合に、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)を、前記旋回時制動制御の実行時における前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)が前記スリップ率閾値(KSLP)未満である場合の前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)よりも低下させる請求項1に記載の車両の制動制御装置。 - 前記制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記車輪速度演算手段(S11)により演算された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)に基づき、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち二番目に遅い車輪(RR)を特定し、該二番目に遅い車輪(FR)の車輪速度(VW)が予め設定された車輪速度閾値(KVW)未満である場合、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)の低下を禁止する請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
- 前記制御手段(16)は、前記旋回時制動制御の実行時において、前記車輪速度演算手段(S11)により演算された前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)に基づき、前記各車輪(FR,FL,RR,RL)のうち二番目に遅い車輪(RR)を特定し、前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)を、前記二番目に遅い車輪(RR)の車輪速度(VW)を基準に演算する請求項1〜請求項5のうち何れか一項に記載の車両の制動制御装置。
- 車両の進行方向に対する左右両側に配置された車輪(FR,FL,RR,RL)に付与される制動力を制御する車両の制動制御方法であって、
前記各車輪(FR,FL,RR,RL)の車輪速度(VW)を個別に演算すると共に、車両のステアリング(24)の操舵角(A)を演算し、該演算された前記操舵角(A)の絶対値が予め設定された操舵角閾値(KA)以上である場合に、車両の旋回方向内側の前輪(FR)及び後輪(RR)のうち予め設定された制御用車輪(RR)に制動力(BP)が付与される旋回時制動制御を実行し、
該旋回時制動制御の実行時に前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)を演算し、該スリップ率(SLP)が予め設定されたスリップ率閾値(KSLP)以上である場合に、前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)を、前記旋回時制動制御の実行時における前記制御用車輪(RR)のスリップ率(SLP)が前記スリップ率閾値(KSLP)未満である場合の前記制御用車輪(RR)に対する制動力(BP)よりも低下させるようにした車両の制動制御方法。
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