JP2008091139A - 蛍光ランプおよび照明器具 - Google Patents
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Abstract
【課題】保護層材料の管理、調整が容易であって保護層や蛍光体層の亀裂や膜剥がれの発生を抑制することができる蛍光ランプおよびこのランプを装着した照明器具を提供することを目的とする。
【解決手段】湾曲部を有するガラスバルブ1と;前記ガラスバルブ1内に放電を生起させる電極生起手段2と;前記ガラスバルブ1内に封入された放電媒体と;前記ガラスバルブ1の内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層3aおよび前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層3aに一部が埋没し残部が微粒子層3aから突出するように形成された球状粒子3bを有する保護層3と;前記保護層3の上に形成された蛍光体層4と;を具備している。この構成により保護膜3および蛍光体層4の亀裂や剥がれを抑制した蛍光ランプを提供することができる。
【選択図】 図2
【解決手段】湾曲部を有するガラスバルブ1と;前記ガラスバルブ1内に放電を生起させる電極生起手段2と;前記ガラスバルブ1内に封入された放電媒体と;前記ガラスバルブ1の内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層3aおよび前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層3aに一部が埋没し残部が微粒子層3aから突出するように形成された球状粒子3bを有する保護層3と;前記保護層3の上に形成された蛍光体層4と;を具備している。この構成により保護膜3および蛍光体層4の亀裂や剥がれを抑制した蛍光ランプを提供することができる。
【選択図】 図2
Description
この発明は湾曲部を有するガラスバルブの内面に保護層が設けられた蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを用いた照明器具に関する。
一般照明用の蛍光ランプにおいて、水銀のガラスバルブへの打ち込みやガラスバルブからのアルカリ金属の拡散を防止する目的でバルブの内面にシリカまたはアルミナなどの白色微粉末を塗布して形成した保護層を設けることが知られている。しかし、環形や角形など湾曲部を有する蛍光ランプの場合には曲成加工時に保護層や蛍光体層に亀裂が発生しやすく、保護層の機能低下や外観が悪化するという問題があった。
そこで、例えば微粒子に径大粒子を混合させて保護層を形成し、曲成加工時の蛍光体層の亀裂や膜剥がれを抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005―294242号公報
しかし、この従来の方法では粒径が異なる粒子を分散液に分散させて塗布する必要があり、特に径大粒子の粒径が大きくなると分散性が悪くなる傾向があるため分散液の調整、管理が煩雑であった。
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、保護層材料の分散液の管理、調整が容易であって保護層や蛍光体層の亀裂や膜剥がれの発生を抑制することができる蛍光ランプおよびこのランプを装着した照明器具を提供することを目的とする。
本発明の請求項1記載の蛍光ランプは、湾曲部を有するガラスバルブと;前記ガラスバルブ内に放電を生起させる電極生起手段と;前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;前記ガラスバルブの内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層および前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層に一部が埋没し残部が微粒子層から突出するように形成された球状粒子を有する保護層と;前記保護層の上に形成された蛍光体層と;を具備していることを特徴とする。
微粒子は、従来から一般的な保護膜構成材料として用いられている1次粒径の中心粒径が100nm以下、好適には平均粒径が約25〜50nm程度が望ましい。
本発明の球状粒子は微粒子層に一部埋没しているので、ガラスバルブの曲成加工の際に、保護層中の球状粒子が微粒子の介在のもとで適度にずれて、ガラスバルブの伸張に保護層が追従しやすくなり、保護層および保護層上に形成された蛍光体層の亀裂や膜剥がれを抑制することができると考えられる。このような保護膜の作用が現実に行われているか否かにかかわらず、結果としてガラスバルブの湾曲部における蛍光体層およびこれに加えて保護層の亀裂や膜剥がれが生じにくくなる。
また、このような保護層の構成によって蛍光体との密着性が高くなり蛍光体層の膜厚を厚くしても亀裂や膜剥れが発生し難くなる。
さらに、蛍光体層の膜強度を高めるために蛍光体中に結着材を添加することが一般に行われているが、本発明の構成の保護層は蛍光体との密着性が高いため結着材の使用量を減らしても蛍光体層の膜強度を維持することができる。このため、光を吸収するなどの理由のため蛍光ランプの光束低下の原因の一つとされてきたホウ酸系結着材(ボレート材)を蛍光体中に添加する場合には、このホウ酸系結着材の使用量を減らすことによって膜強度を維持しながら光束を高くすることができる。
このように、本発明の保護層の構成によれば蛍光体層の膜厚を厚く形成し、結着材の使用量を減らすことによって初期光束を高くするとともに、亀裂や膜剥れを抑制することができる。
また、球状粒子を凝集体によって形成したことにより、保護層材料の分散液の管理、調整が容易である。また、異なる粒径の材料を用意する必要がなくなるため保護層材料の管理が容易である。
ガラスバルブは、ソーダライムガラス、バリウムシリケートガラスおよび鉛ガラスなどの軟質ガラスで形成されるが、要すればホウケイ酸ガラスや石英ガラスなどの硬質ガラス製であってもよい。ガラスバルブの直管部の肉厚は0.8〜1.2mm程度が望ましいがこれに限
定されない。なお、ガラスバルブの内部を排気し、放電媒体を封入するために、一つまたは一対の細管を付設することができる。
また、従来用いられている管径28〜38mmのものや、従来よりも細径化した管径約25.5mmのもの、さらに細径化した管径約16mmのものを用いてもよい。
また、ガラスバルブは、環状、角状および屈曲状など湾曲部を有する形状であればどのような形状であってもよい。
本発明の請求項2記載の蛍光ランプは、湾曲部を有するガラスバルブと;前記ガラスバルブ内に放電を生起させる電極生起手段と;前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;前記ガラスバルブの内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層および前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層に一部が埋没し残部が微粒子層から突出するように形成された球状粒子を有する保護層と;前記保護層上の所定位置に形成された反射層と;前記反射層の内側に形成された蛍光体層と;を具備していることを特徴とする。
本発明でいう反射層とは、可視光の波長範囲(約380〜約780nm)を対象としてこの可視光の殆どを反射し、一部を透過する作用を有するものである。
ガラスバルブの周方向の所定範囲には光反射率が高く光透過率が低い反射層が形成され、この反射層が形成されていない残部が光透過率の高い開口部(反射層非形成部)となっている。したがって、本発明の蛍光ランプが点灯してもバルブ外周面からの光放射は均等ではなく、バルブ軸方向に沿う開口部(反射層非形成部)から放射される光強度(光量)が、バルブ内の反射層で反射された反射光も加わって高く(大きく)なり、開口部の照射方向の被照射面がより明るくなる。
本構成の保護層を形成することによって、曲成加工時にガラスバルブが伸張しても保護層が追従しやすくなり、保護層上に形成された反射層の亀裂や膜剥がれを抑制することができる。
また、反射層の膜厚は反射率や剥離などを考慮すると10〜40μm程度が好ましい。
また、反射層は、ラピッドスタート形蛍光ランプなどの場合には透明導電膜上に形成された保護層上に形成されていても同様な作用を奏する。
本発明の請求項3記載の蛍光ランプは、反射層が平均粒径が2.0〜7.0μmであり、結晶形状が板状のピロリン酸ストロンチウムの微粒子を25質量%以上含有することを特徴とする。
反射層にピロリン酸ストロンチウムが25質量%以上含有していれば保護層上に形成したときに膜剥がれの抑制効果が高い反射層を得ることができる。なお、反射層はピロリン酸ストロンチウム以外に、ホウ酸バリウム・カルシウム(バリウムカルシウムボレート)、ピロリン酸カルシウム、酸化ランタンなどの材料が75質量%未満含有されていてもよい。
平均粒径が2.0μm未満であると所望の反射率を得るために塗布質量を多くする必要がありコストが増加する。また、7.0μmを超えた場合は粒子間の結着力が低下し反射層が剥離し易いなどの不具合がある。このため、平均粒径が2.0〜7.0μm、好ましくは3.0〜6.0μm程度のものがよい。
また、板状結晶の微粒子の寸法を粒径としているが、本発明でいう粒径は球体の直径を単に意味するものではなく、微粒子の形状が不定形であるので粒径は縦横や厚さ(高さ)などのうち最大の差し渡し大きさで定義される。
また、本請求項に係る反射層は、結晶構造が板形状のピロリン酸ストロンチウム微粒子からなる材料を堆積して形成したもので、膜構造が粒子同士が球状結晶の微粒子に比べて不規則に入り組んだ構造となるため膜剥がれや亀裂に強い被膜になると考えられる。
なお、この板形状の微粒子の結晶構造とは平行な一対の表裏平面を有し、この平面間の厚さ寸法が平面の最小差渡し寸法よりも小さな状態をなすものをいう。ただし、本発明と同等の作用効果を奏するものであれば柱状などの結晶構造を有するものであってもよい。
また、反射層を形成する板形状の微粒子材料の占有率が高いほど光反射率はよく、反射層形成材料の全質量に対して90質量%以上あるのが好ましい。
本発明の請求項4記載の蛍光ランプは、保護層の微粒子が金属酸化物からなり球状粒子の平均粒径は1μm以上であることを特徴とする。
本発明の球状粒子は、一部粒径が1μm未満のものが含有していてもよく好適には平均粒径が約1〜5μm、最適範囲は平均粒径が約2〜5μmである。この範囲内であれば保護層が曲成加工時のガラスバルブの伸張に柔軟に追従できるので蛍光体層および反射層の亀裂や膜剥がれを抑制することができる。また、球状粒子と蛍光体層および反射層との結着力を高め蛍光体層および反射層の剥がれをさらに抑制することができる。
球状粒子の粒径が1μm以下になると曲成加工時のガラスバルブの伸張に追従しにくくなり、効果的に亀裂や膜剥がれを抑制することができなくなる。また、10μm以上になると球状粒子が微粒子層から脱離しやすくなる。
本発明の請求項5記載の蛍光ランプは、前記保護層の微粒子は球状SiO2微粒子を50質量%以上含有することを特徴とする。
保護層に球状シリカ微粒子を50質量%以上含有すると、ガラス表面からのアルカリ金属の拡散を抑制する効果が高くなり、水銀とアルカリ金属との反応によって形成される水銀合金による黒化を防止し光束維持率の低下を効果的に抑制し水銀の消耗も抑えることができる。
本発明の請求項6記載の照明器具は、器具本体と;この器具本体に設けられた支持部材と;この支持部材に支持された上記請求項1ないし5のいずれか一に記載の蛍光ランプと;この蛍光ランプに接続した点灯回路装置と;を具備していることを特徴とする。
上記請求項1ないし5のいずれか一に記載の蛍光ランプを装着した照明器具であって、例えば天井面などに配設された場合に蛍光ランプは開口部が下方に向け装着される。
請求項1の発明によれば、保護膜および蛍光体層の亀裂や剥がれを抑制した蛍光ランプを提供することができる。
請求項2の発明によれば、所望の反射率を得るとともに被膜強度を確保することができる。
請求項3の発明によれば、明るさを必要とする特定方向への放射光量を多く放射して照明を行うことができる。
請求項4の発明によれば、湾曲部において保護層および蛍光体層の亀裂や膜剥がれを抑制することができる。
請求項5の発明によれば、ガラスバルブからのアルカリ金属の析出を抑制することによって光束維持率が向上する。
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5に記載の効果を有する蛍光ランプが装着されているので、保護膜および蛍光体層の亀裂および膜剥がれを抑制した蛍光ランプを備えた照明器具を提供することができる。
以下、本発明の第1の実施形態を図1ないし図4を参照して説明する。図1は環形蛍光ランプL1の正面図、図2は図1中の矢視A−A線に沿って切断した端面を拡大して示す横断面図、図3は図2の切断端面要部、図4は図3を放電空間側から見たときの電子顕微鏡写真の図である。なお、図中、各被膜などの膜厚や被着形態などは説明上のもので一部誇張して示してあり、他構成部材との寸法比率などは現実のものとは相違している。また、図3、4は説明の便宜上ガラスバルブに保護層のみを形成したものである。
図示の環形蛍光ランプL1において、1はソーダライムガラスや鉛ガラスなどの円筒形ガラス管を曲成した環形のガラスバルブ、2,2はマウント、11,11は上記バルブ1の端部に形成したマウント2との封止部で、上記バルブ1とマウント2、2とで気密容器を構成している。
上記マウント2は、フレヤ状をなすステムガラス管21に一対のリード線22と排気管(図示しない)とを圧潰封着しているとともにこのリード線22間にタングステン素線を巻回したコイル状のフィラメントからなる電極23が継線してある。なお、上記マウント2は、フレヤステムに限らずフレヤ無しステム、ボタンステムやビードステムなどを用いたものであってもよい。
また、3は保護層で、ナトリウムの析出抑制、水銀の打ち込み、および紫外線の照射による黒化防止や蛍光体のガラス中へのめり込み防止のため、バルブ1内表面のほぼ全面に塗布形成してある。保護層3は、平均粒径が0.01〜0.1μm程度、好ましくは0.02〜0.08μm程度の酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウムまたは酸化イットリウムのうちから選ばれた少なくとも一種の微粒子材料を主体として形成されている。
4は蛍光体層で保護層3上に形成されている。この蛍光体層4は例えばユーロピウム付活ハロリン酸バリウム・カルシウム・ストロンチウム(青色蛍光体)、セリウム・テルビウム付活リン酸ランタン(緑色蛍光体)、ユーロピウム付活酸化イットリウム(赤色蛍光体)の三種の蛍光体の混合微粉末の懸濁液を上記反射層5上および開口部(反射層非形成部)5に塗布(バルブ1本当り1.8g)して形成されたものからなり、その膜厚さは約18〜30μmである。
なお、上記蛍光体層4は、各材料と、アルミニウムやケイ素などの金属酸化物の微粒子系結着剤またはホウ酸やリン酸などの低融点化合物系結着剤と、ニトロセルロースなどの有機系溶剤あるいはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリエチレンオキサイドなどの水溶性溶剤とを混合した懸濁液を塗布することにより形成できる。
また、このバルブ1内には液状や合金化した水銀およびアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)やネオン(Ne)などの希ガスが単独または混合して230〜430Pa(パスカル)封入されている。また、図中7Aはピン端子75,…を備えたG10q形の口金で、曲成したバルブ1の両端封止部11,11を橋絡して固定されている。
ガラスバルブ1上の保護層3は図3に示すように微粒子層3aおよびこの微粒子層3aに一部が埋没し、残部が露出するように形成された球状粒子3bによって構成されている。微粒子層3aは0.2〜2.0μm程度、好ましくは0.5〜1.0μm程度の膜厚で形成され、球状粒子3bは一部粒径が1μm以下のものも含まれるが平均粒径が1μm以上に形成されている。また、図4に示すように凝集体からなる球状粒子3bは保護層3の表面に適当な間隔で点在している。
このように形成された保護層3は、ガラスバルブ1の曲成加工の際に保護層3中の凝集体からなる球状粒子3bが微粒子の介在のもとで適度にずれて、ガラスバルブ1の伸張に保護層3が追従しやすくなり、保護層3および保護層3上に形成された蛍光体層4の亀裂や膜剥がれを抑制することができる。また、この構成により保護層3の表面は球状粒子3bにより適度の凹凸が形成されるため、蛍光体層4の保護層3への被着が強固になるという効果も期待できる。
本構成の保護層3は次のように形成することができる。
まず、保護層材料として使用する粒径が約30nmの球状SiO2微粒子を分散させた10%水溶液を用意する。次に、この水溶液を超音波振動によって直径が約数μmになるように霧化し、この霧化した水溶液をガラスバルブの内面に被着させた後乾燥させる。さらに、霧化した水溶液の被着と乾燥作業を4〜5回繰り返すことによって、ガラスバルブの内面には球状SiO2微粒子の微粒子層3aとともに、この微粒子層3aに一部が埋没するように平均粒径が1μm以上の球状粒子3bが形成される。このような球状粒子3bは、霧化した水溶液の被着と乾燥とを繰り返す工程の中で、霧化した水溶液が乾燥するときに周囲の球状SiO2微粒子を取り込むことによって凝集体として粒径が成長しながら形成されたものと考えられる。
なお、水溶液中に界面活性剤を添加することによって良好に球状粒子3bを形成することができる。霧化した水溶液から凝集体が形成される現象の詳しいメカニズムについては解明されていないが界面活性剤が水溶液の表面張力に影響を及ぼすことが原因であると推定される。また、この方法により球状SiO2微粒子以外にもAl2O3微粒子についても微粒子層3aおよびこの微粒子層3aに一部埋没する球状粒子3bからなる保護層3を形成することができる。さらに微粒子の粒径、分散させる水溶液の濃度、界面活性剤の量、霧化したときの粒径、被着と乾燥の回数などを変化させることによって所望の微粒子層3aの膜厚、球状粒子3bの粒径を得ることができる。
以上説明したようにガラスバルブ内面に保護層材料の懸濁液を超音波振動によって霧化したものを塗布し、乾燥させることによって本発明の保護層3の態様を得ることができるが、この方法に限定されることはない。
次に本発明の蛍光ランプの第2の実施の形態について図5ないし図6を用いて説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態において保護層3上の所定範囲に反射層が形成された環形蛍光ランプL2であり、その他の構成については第1の実施の形態と同一であるので同一部分については同一の符号を付してその説明は省略する。図5は、本発明の第2の実施の形態の環形蛍光ランプL2のガラス管バルブ1を横断した端面図である。図6は、図5の環形蛍光ランプL2を点灯したときの等照度曲線図である。
環形蛍光ランプL2において、4は保護層3上に形成された可視光を反射する反射層で、環形バルブ1の管軸に沿う上方側であってバルブ1の周方向の所定角度範囲に塗布形成されている。この反射層5は、平均粒径が2〜7μm程度の板状結晶の微粒子からなるピロリン酸ストロンチウムを主体とする材料が用いられ、粒径によっても変わるが10〜65μm、好ましくは35〜50μm程度の膜厚で形成されている。
なお、この反射層5を形成するピロリン酸ストロンチウムを主体とする微粒子材料に添加する結着剤としての例えばバリウム・カルシウムボレートは、平均粒径が2.0〜7.0μmのピロリン酸ストロンチウム(100質量%)に対し、3.0〜6.0質量%(好ましくは3.5〜5.5質量%)添加することにより所望の被着強度が得られ、この上下限値を外れると剥離や発光特性の低下などを招くことが確かめられている。
5は上記反射層5と略正対した反射層が形成されていない下方側の開口部(反射層非形成部)である。
なお、保護層3、蛍光体層4および反射層5は、各材料と、アルミニウムやケイ素などの金属酸化物の微粒子系結着剤またはホウ酸やリン酸などの低融点化合物系結着剤と、ニトロセルロースなどの有機系溶剤あるいはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリエチレンオキサイドなどの水溶性溶剤とを混合した懸濁液を塗布することによりそれぞれ形成することができる。
反射層5は、平均粒径が約4.7μmの板状結晶をしたピロリン酸ストロンチウムを主体とする微粒子材料が用いられ、このピロリン酸ストロンチウムに対し平均粒径が0.2μmのバリウム・カルシウムボレートを結着剤として4.5質量%と、1.5質量%のニトロセルロースの酢酸ブチル溶液とを混合した懸濁液を上記保護層3上の下記所定角度範囲ここでは反射層5として作用する約180゜(垂直中心線から各約90゜)の部分に塗布(バルブ1本当り1.2g)して形成されている。このとき、反射層5と放電空間を挟んで対向するバルブ側には反射層5が形成されていない開口部6が形成されている。
また、図5に示すように環形蛍光ランプL2のバルブ1内表面に保護層3、蛍光体層4、反射層5、が順次積層して形成され、上記反射層5の膜厚が一様でなく中央部から端縁部に向かうにしたがい連続的あるいは段階的に薄膜に変化する膜厚勾配で形成してある。
この環形蛍光ランプL2のように反射層5の膜厚を変化させ端縁部側を薄膜化することによって、点灯時に、開口部6からは高出力の光放射が行えるとともに反射層5形成によるバルブ1面に発生する光量や輝度などの明暗差を解消できる。また、ガラスバルブ1や上面に形成した蛍光体層4との馴染もよく強固に被着でき、ランプ点滅による熱衝撃や材料の熱膨脹率差などに起因する応力で反射層5が剥離することを防止できるなど外観品質の向上がはかれるとともに製造も容易となる。
このような構成の環形蛍光ランプL2は、反射層5形成側を上方にした水平状態で支持して、口金7Aを点灯回路装置に接続して口金7A、リード線22、22を介し電極23、23に通電して点灯すると、バルブ1軸と直交方向の横断面における配光は図6に示すような略鶏卵形の等照度分布Bを呈する。
すなわち、環形蛍光ランプL2は、バルブ1を横断した外周面からの光放射は均等ではなく、環形バルブ1の周方向180°以上の範囲に光反射率の高い反射層5が、残部に反射層5を形成していない光反射率が低く光透過率が高い開口部(反射層非形成部)6を略正対させているので、バルブ軸方向に沿う下方側の開口部(反射層非形成部)6から放射される光強度(光量)は、バルブ1内の反射層5で反射され開口部(反射層非形成部)6に向かった分も加わって高く(大きく)なり、開口部の照射方向の被照射面はより明るくなる。なお、環形蛍光ランプL2全体としてもこれらが連続した集合体としてランプL2の軸と直交方向に略鶏卵形の等照度分布Bを呈する。
そして、本実施形態の蛍光ランプL2は上記反射層5を、結晶構造が板形状の微粒子からなるピロリン酸ストロンチウム材料を主体とした微粒子を堆積して形成したもので、球状結晶の微粒子より表面積が大きいため微粒子間の結合力が高められ被膜の強度が高くなっている。その結果、亀裂や剥離の発生を抑制できる高い被着強度を有する被膜が得られる。特に、環形蛍光ランプL2などガラスバルブを加熱曲成するものにおいて大きい効果が得られる。
さらに、第1の実施形態と同様の構成の保護層3を有しているため、ガラスバルブ1の曲成加工の際に保護層3中の球状粒子3bが微粒子の介在のもとで適度にずれて、ガラスバルブ1の伸張に保護層3が追従しやすくなり、保護層3上に形成された蛍光体層4や反射層5の亀裂や膜剥がれを抑制することができる。また、この構成により保護層3の表面は球状粒子3bにより適度の凹凸が形成されるため、蛍光体層4および反射層5の保護層3への被着が強固になるという効果も期待できる。
また、反射層5の主体材料であるピロリン酸ストロンチウムの微粒子の表面にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛の酸化物のうちから選ばれた少なくとも一種の微粒子を付着しておくことにより、帯電傾向等を制御し主体材料の水銀やその化合物に起因する変色および主体材料と水銀との反応による水銀の消耗を抑制できる。なお、その付着量はピロリン酸ストロンチウムに対して0.01〜5.0質量%、好ましくは0.02〜3.0質量%程度である。
また、この反射層5の形成材料に限らず、蛍光体層4を構成する蛍光体に上記マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムや酸化亜鉛の酸化物微粒子を付着させてもよい。この付着によっても、蛍光体層4が水銀やその化合物により生じる変色および水銀の消耗を抑制することができる。
図7は本発明に係る照明器具9の実施の形態を示す縦断面図である。この器具9は、上部に天井面などへの取付具(図示しない。)を備え、電源接続機構や安定器などのランプ点灯回路装置92を収容した器具本体91と、この本体91下方に設けた透光性合成樹脂やガラスで形成したカバー体93と、本体91内に配設されたランプ支持部材94およびソケット95と、支持部材94に支持されるとともに口金7Aにソケット95が装着された上記図1に示された構成の環形蛍光ランプL1とからなる。
この環形蛍光ランプL1は反射層5形成側を上方にし、開口部6側を下方にしてソケット95に装着されている。そして、この照明器具9は、電源接続機構および点灯回路装置92を介して蛍光ランプL1に給電されるとランプL1が点灯する。この点灯したランプL1からは開口部6が指向している下方側に多量の光放射が行われ、すなわち光量が多く明るい。また、上方側には反射層5を透過して弱い例えば下方側に対して5%程度の光量や輝度の光放射が行われる。すなわち、ランプL1はバルブ1の下方の明るさを必要とする方向へは光量の多い照明を行うことができる。
なお、この種の反射形のランプは指向性があり、ソケットあるいはホルダへの取り付け方向を誤ると所定の直下照度が得られないので、この取扱い(注意)表示を行う必要があり、この表示を印として利用することも可能である。
本発明は上述した実施の形態に限るものではない。例えば、ガラスバルブ1の内表面に酸化スズや酸化インジウムなどのEC膜と呼ばれている透明導電性膜を形成したラピッドスタート形の蛍光ランプにも適用することができる。
また、ガラスバルブ1は、横断面が真円形に限らず長円形や角形などの管(筒)形をしたものあるいは平板形や偏平形などをしたものを用いた場合でも本発明の反射層を形成することができる。
また、本発明は汎用の環形、U字形の蛍光ランプに限らず、1本のガラスバルブをU字状に2回曲成して鞍形状に屈曲したり、U字形状に曲成した複数本のバルブを連結して形成した発光管を用いる電球形蛍光ランプやコンパクト形蛍光ランプなどにおいても適用できる。
また、蛍光ランプの用途は、家庭、事務所、商店、工場などの一般照明用、OA機器用あるいは街路灯やトンネルなどの道路照明用など各種照明用として広く使用できる。
電極は、バルブ内に封装される熱陰極電極や冷陰極電極であっても、また、バルブ外面に設けられる外部電極であってもよい。
また、照明器具も図7に示すものに限らず、蛍光ランプや器具の種類、大きさや用途などに対応した種々構造や形態のものに適用できる。また、照明器具はランプ保護や配光制御のためのカバー体や反射体などは必須のものではない。
L1〜L8:蛍光ランプ(発光管)
1:ガラスバルブ
23:電極(フィラメント)
3:保護層
4:蛍光体層
5:反射層
6: 開口部
7A,7B,7C:口金
9:照明器具
1:ガラスバルブ
23:電極(フィラメント)
3:保護層
4:蛍光体層
5:反射層
6: 開口部
7A,7B,7C:口金
9:照明器具
Claims (6)
- 湾曲部を有するガラスバルブと;
前記ガラスバルブ内に放電を生起させる電極生起手段と;
前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;
前記ガラスバルブの内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層および前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層に一部が埋没し残部が微粒子層から突出するように形成された球状粒子を有する保護層と;
前記保護層の上に形成された蛍光体層と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。 - 湾曲部を有するガラスバルブと;
前記ガラスバルブ内に放電を生起させる電極生起手段と;
前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;
前記ガラスバルブの内面に形成され、平均粒径100nm以下の微粒子からなる微粒子層および前記微粒子の凝集体からなり微粒子よりも径大であって微粒子層に一部が埋没し残部が微粒子層から突出するように形成された球状粒子を有する保護層と;
前記保護層上の所定位置に形成された反射層と;
前記反射層の内側に形成された蛍光体層と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。 - 前記反射層は、平均粒径が2.0〜7.0μmであり、結晶形状が板状のピロリン酸ストロンチウムの微粒子を含有することを特徴とする請求項2に記載の蛍光ランプ。
- 前記保護層の微粒子は金属酸化物からなり球状粒子の平均粒径は1μm以上であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の蛍光ランプ。
- 前記保護層の微粒子は球状SiO2微粒子を少なくとも50質量%以上含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一に記載の蛍光ランプ。
- 器具本体と;
この器具本体に設けられた支持部材と;
この支持部材に支持された上記請求項1ないし5のいずれか一に記載の蛍光ランプと;
この蛍光ランプに接続した点灯回路装置と;
を具備していることを特徴とする照明器具。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006269160A JP2008091139A (ja) | 2006-09-29 | 2006-09-29 | 蛍光ランプおよび照明器具 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006269160A JP2008091139A (ja) | 2006-09-29 | 2006-09-29 | 蛍光ランプおよび照明器具 |
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Publication Number | Publication Date |
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JP2008091139A true JP2008091139A (ja) | 2008-04-17 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010153054A (ja) * | 2008-12-24 | 2010-07-08 | Ushio Inc | 蛍光ランプ |
JP2011070780A (ja) * | 2009-09-24 | 2011-04-07 | Ushio Inc | 蛍光ランプ |
-
2006
- 2006-09-29 JP JP2006269160A patent/JP2008091139A/ja active Pending
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