JP2008084821A - 蛍光ランプおよび照明器具 - Google Patents

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庄司 直木
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Abstract

【課題】保護膜を厚膜化するとともに光反射膜の膜剥がれを抑制することによって、光束維持率および外観などの品質向上をはかった蛍光ランプおよびこのランプを装着した照明器具を実現することを目的とする。
【解決手段】気密封止されて一端に比べて他端側の肉厚が薄くなるように曲成加工されて環形に形成された管状のガラスバルブ1と;このガラスバルブ1内に放電を生起させる電極生起手段23と;前記ガラスバルブ1内に封入された放電媒体と;前記ガラスバルブ1内面に形成され、ガラスバルブ1の一端側が他端側に比べて相対的に厚い保護膜3と;この保護膜3上の所定位置に形成され、ガラスバルブ1の一端側が他端側に比べて相対的に厚い光反射膜4と;この光反射膜4より内方部分に形成され、ガラスバルブ1の他端側が一端側に比べて相対的に厚い蛍光体膜6と;を具備している。光反射膜4の膜剥がれによる外観の悪化を抑制することができる。
【選択図】 図2

Description

この発明はガラスバルブに光反射膜が設けられた蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを用いた照明器具に関する。
一般照明用の蛍光ランプにおいて、バルブと蛍光体膜との間にピロリン酸カルシウム、酸化チタンまたは酸化アルミニウム(アルミナ)などの白色微粉末を塗布した光反射膜を設けることにより開口部(光反射膜の非形成部)からの光放射を高め例えば直下照度を向上させることが知られている(特許文献1参照)。例えば直管形の反射形蛍光ランプを光反射膜形成側を上にして天井取付器具に装着し点灯したとき、光反射膜を形成していない下方の開口部側からの光は集中して器具下方に放射されるので下面側の照度を高くして被照射面を明るくすることができる。
特開2006―196347号公報
この従来の光反射膜を形成する白色微粉末の形態は、例えばピロリン酸カルシウムなどの粒塊状の微粒子を用いるのが一般的であった。因みに、光反射膜を形成する白色微粉末の略球状をなす微粒子の平均粒径は0.5〜2.0μm程度のものを用い10〜30μm程度の膜厚(成膜後)としていた。また、反射膜上に蛍光体膜を形成すると全体の膜厚が極めて厚くなりガラスバルブを曲成加工し環形に形成したときに特に反射膜の膜剥がれや亀裂が発生しやすくなる。
本発明は上記課題に鑑みなされたもので、光束維持率を向上させるとともに光反射膜の亀裂や膜剥がれを抑制し外観などの品質向上をはかった蛍光ランプおよびこのランプを装着した照明器具を実現することを目的とする。
本発明の請求項1記載の蛍光ランプは、気密封止されて一端側に比べて他端側の肉厚が薄くなるように曲成加工された環状のガラスバルブと;このガラスバルブ内に放電を生起させる放電生起手段と;前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;一端側が他端側に比べて厚くなるように前記ガラスバルブ内面側に形成された保護膜と;一端側が他端側に比べて厚くなるように前記ガラスバルブ内面側の所定位置に形成された光反射膜と;他端側が一端側に比べて厚くなるように前記光反射膜上に形成された蛍光体膜と;を具備していることを特徴とする。
本発明のガラスバルブは、肉厚が一端側に比べて他端側が薄くなるものであるが、これは他端側の端部から中央部までの間に管周方向の肉厚の平均値が最も薄くなる部位があることを意味する。さらに、この管周方向の肉厚の平均値の最薄部の位置はガラスバルブの巻き上げ方向を示すものであり、加熱によって軟化したガラスバルブの他端側を固定して一端側をドラムチャックで保持し、一端側から他端側に向かってドラム上に巻き付けながら環形に形成したときにこのようなガラスバルブの構成になる。
本発明でいう光反射膜とは、可視光の波長範囲(約380〜約780nm)を対象としてこの可視光の殆どを反射し、一部を透過する作用を有するものである。
光反射膜は、ピロリン酸ストロンチウム、ピロリン酸カルシウム、酸化チタンまたは酸化アルミニウム(アルミナ)などの微粒子を用いることができ、これらを一種または適宜混合させたものを主成分としてもよい。なお、光反射膜はこれら微粒子以外に、ホウ酸バリウム・カルシウム(バリウムカルシウムボレート)、酸化ランタンなどの材料が含有されていてもよい。
環状のガラスバルブの周方向の所定範囲には光反射率が高く光透過率が低い光反射膜が形成され、この光反射膜が形成されていない残部が光透過率の高い開口部(光反射膜非形成部)となっている。したがって、本発明の蛍光ランプが点灯してもバルブ外周面からの光放射は均等ではなく、バルブ軸方向に沿う開口部(光反射膜非形成部)から放射される光強度(光量)が、バルブ内の光反射膜で反射された反射光も加わって高く(大きく)なり、開口部の照射方向の被照射面がより明るくなる。
また、光反射膜はラピッドスタート形蛍光ランプなどの場合にはガラスバルブ上に透明導電膜が形成されていても上記請求項1に記載と同様な作用を奏する。
ガラスバルブは、従来用いられている管径28〜38mmのものや、従来よりも細径化した管径約25.5mmのもの、さらに細径化した管径約16mmのものを用いてもよい。
また、本発明の保護膜は酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウムまたは酸化イットリウムのうちから選ばれた少なくとも一種の微粒子材料を主体として形成される。
本発明の蛍光ランプは、一端側では保護膜および光反射膜を厚く、蛍光体膜を薄く形成し、他端側は保護膜および光反射膜を薄く、蛍光体膜を厚く形成することによって、両端部間での紫外線の利用効率を近づけることができるためランプを点灯させたときに両端部から放射される光の強度をほぼ同程度にすることができる。つまり、一端側では蛍光体膜は薄いが光反射膜が厚く反射率が大きいために、より多くの紫外線を反射し蛍光体膜を通過する紫外線の量が増える。一方、他端側では光反射膜の反射率は低いが蛍光体膜が厚く形成されているため通過する紫外線の量は一端側とそれほど変わらない。
さらに、曲成加工時に比較的引っ張り応力が小さい一端側に厚い保護膜および厚い光反射膜を形成し、応力が大きい他端側に薄い保護膜および薄い光反射膜を形成することによって他端側の膜剥がれおよび亀裂を抑制したものである。また、膜厚が薄いため例え膜剥がれや亀裂が発生してもあまり目立つことがないという効果もある。また、蛍光体膜は粒子間の結合力が弱くガラスバルブの伸びに追従するように微小な亀裂が入り、膜厚が厚く形成された他端側であっても曲成加工後に目立った亀裂が形成されにくい。
保護膜および光反射膜はガラスバルブの内面側であって、一端側が厚く他端側が薄く形成されていれば、保護膜上に光反射膜を形成してもよいし、光反射膜上に保護膜を形成してもよい。
本発明の請求項2記載の蛍光ランプは、ガラスバルブの内面に近い側から順に光反射膜、保護膜、蛍光体膜が塗布形成されていることを特徴とする。
ガラスバルブ上に光反射膜を形成した後に、保護膜、蛍光体膜を形成する。このため、光反射膜の非形成部ではガラスバルブに直接保護膜が形成されることになる。
本発明の請求項3記載の蛍光ランプは、光反射膜は平均粒径が2.0〜7.0μmで形状が板状のピロリン酸ストロンチウムの微粒子を25質量%以上含有することを特徴とする。
平均粒径が2.0μm未満であると所望の反射率を得るために塗布質量を多くする必要がありコストが増加する。また、7.0μmを超えた場合は粒子間の結着力が低下し光反射膜が剥離し易いなどの不具合がある。このため、平均粒径が2.0〜7.0μm好ましくは3.0〜6.0μm程度のものがよい。
また、板状結晶の微粒子の寸法を粒径としているが、本発明でいう粒径は球体の直径を単に意味するものではなく、微粒子の形状が不定形であるので粒径は縦横や厚さ(高さ)などのうち最大の差し渡し大きさで定義される。
また、本請求項に係る光反射膜は、結晶構造が板形状のピロリン酸ストロンチウム微粒子からなる材料を堆積して形成したもので、膜構造が粒子同士が球状結晶の微粒子に比べて不規則に入り組んだ構造となるため膜剥がれや亀裂に強い被膜になると考えられる。
ピロリン酸ストロンチウムの微粒子が25質量%含有していれば本発明の作用効果を有するが好ましくは残部がピロリン酸カルシウムであることが望ましい。
なお、この板形状の微粒子の結晶構造とは平行な一対の表裏平面を有し、この平面間の厚さ寸法が平面の最小差渡し寸法よりも小さな状態をなすものをいう。ただし、作用効果があれば柱状などの形状であってもよい。
また、光反射膜を形成する板形状の微粒子材料の占有率が高いほど光反射膜の膜強度が高く、光反射膜形成材料の全質量に対して90質量%以上あるのが好ましい。
本発明の請求項4記載の蛍光ランプは、保護膜は球状シリカ微粒子を50重量%以上含有し、平均膜厚が0.2〜0.9μmであることを特徴とする。
保護膜に球状シリカ微粒子を50質量%以上含有すると、ガラス表面からのアルカリ金属の拡散を抑制する効果が高くなるとともに、緻密な膜を厚膜化して形成することができるので水銀のガラスバルブへの打ち込みを効果的に抑制することができる。
本発明の請求項5記載の照明器具は、器具本体と、この器具本体に設けられた支持部材と、この支持部材に支持された上記請求項1ないし4のいずれか一に記載の蛍光ランプと、この蛍光ランプに接続した点灯回路装置とを具備していることを特徴とする。
上記請求項1ないし3のいずれか一に記載の蛍光ランプを装着した照明器具であって、例えば天井面などに配設された場合に蛍光ランプは開口部が下方に向け装着される。そして、ランプを点灯したとき天井面側は光反射膜が設けられているので遮光されるか弱い光放射がなされ、また、ランプの下方側は開口部から強い光すなわち光量が多い明るい光放射が行われる。
請求項1の発明によれば、一端側では保護膜および光反射膜を厚く、蛍光体膜を薄く形成し、他端側は保護膜および光反射膜を薄く、蛍光体膜を厚く形成することによって、ランプを点灯させたときに両端部から放射される光の強度をほぼ同程度にすることができる。さらに、ガラスバルブを環状に曲成加工したときに発生する反射膜の膜剥がれによる外観の悪化を抑制することができる。
請求項2の発明によれば、光反射膜の上に保護膜が形成されるため、光反射膜のバルブ周方向の端縁部が緻密な保護膜によって覆われ、光反射膜の端縁部の剥がれが抑制され、光反射膜の非形成部と光反射膜との境界が目立ち難くなる。
請求項3の発明によれば、光反射膜の材料に板状のピロリン酸ストロンチウム微粒子結晶を用いたので、微粒子相互の結合が強く従来の被膜に比べ発生する亀裂や剥離を抑制することができる。
請求項4の発明によれば、平均粒径が2.0〜7.0μmの微粒子を用いたので、所望の反射率を得るとともに被膜強度を確保することができる。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし3に記載の効果を有する反射形の蛍光ランプが装着されているので、明るさを必要とする特定方向への放射光量を多く放射して照明を行うことができる照射効率の向上がはかれた照明器具を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を図1ないし図5を参照して説明する。図1は環形蛍光ランプL1の正面図(開口部側)、図2は図1中の矢視A−A線に沿って切断した端面を拡大して示す横断面図、図3は図1の蛍光ランプを管軸に沿ってバルブを含む平面に直交するように切断した拡大断面図、図4は図2の切断端面要部を示す電子顕微鏡写真の図、図5は図1の環形蛍光ランプL1を点灯したときの等照度曲線図である。
なお、図中、各被膜などの膜厚や被着形態などは説明上のもので一部誇張して示してあり、他構成部材との寸法比率などは現実のものとは相違している。
図示の環形蛍光ランプL1において、1はソーダライムガラスや鉛ガラスなどの円筒形ガラス管を曲成した環形のガラスバルブ、2,2はマウント、11,11は上記バルブ1の端部に形成したマウント2との封止部で、上記バルブ1とマウント2、2とで気密容器を構成している。
上記マウント2は、フレヤ状をなすステムガラス管21に一対のリード線22と排気管(図示しない)とを圧潰封着しているとともにこのリード線22間にタングステン素線を巻回したコイル状のフィラメントからなる放電生起手段としての電極23が継線してある。なお、上記マウント2は、フレヤステムに限らずフレヤ無しステム、ボタンステムやビードステムなどを用いたものであってもよい。
また、3は保護膜で、ナトリウムの析出抑制、水銀の打ち込み、および紫外線の照射による黒化防止や蛍光体のガラス中へのめり込み防止のため、バルブ1内表面のほぼ全面に塗布形成してある。保護膜3は、平均粒径が0.01〜0.1μm程度、好ましくは0.02〜0.08μm程度の酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウムまたは酸化イットリウムのうちから選ばれた少なくとも一種の微粒子材料を主体として平均膜厚が0.2〜0.9μm程度、好ましくは0.3〜0.8μm程度の膜厚で形成されている。
4はこの保護膜3上に形成された可視光を反射する光反射膜で、環形バルブ1の管軸に沿う上方側であってバルブ1周方向の所定角度範囲に塗布形成されている。この光反射膜4は、平均粒径が2〜7μm程度の板状結晶の微粒子からなるピロリン酸ストロンチウムを主体とする材料が用いられ、粒径によっても変わるが10〜65μm、好ましくは35〜50μm程度の膜厚で形成されている。
なお、この光反射膜4を形成するピロリン酸ストロンチウムを主体とする微粒子材料に添加する結着剤としての例えばバリウム・カルシウムボレートは、平均粒径が2.0〜7.0μmのピロリン酸ストロンチウム(100質量%)に対し、3.0〜6.0質量%(好ましくは3.5〜5.5質量%)添加することにより所望の被着強度が得られ、この上下限値を外れると剥離や発光特性の低下などを招くことが確かめられている。
5は上記光反射膜4と略正対した光反射膜が形成されていない下方側(図2)の開口部(光反射膜非形成部)、6は蛍光体膜で上記光反射膜4上およびこの光反射膜4が形成されていない保護膜3上(開口部5)に形成した3波長発光形蛍光体やハロリン酸カルシウム(白色蛍光体)などの蛍光体微粉末を塗布したものからなる。
なお、上記保護膜3、光反射膜4および蛍光体膜6は、各材料と、アルミニウムやケイ素などの金属酸化物の微粒子系結着剤またはホウ酸やリン酸などの低融点化合物系結着剤と、ニトロセルロースなどの有機系溶剤あるいはメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリエチレンオキサイドなどの水溶性溶剤とを混合した懸濁液を塗布することにより形成できる。
そして、例えばFCL30EX−D/28の環形蛍光ランプL1において、上記保護膜3は、1次粒子の平均粒径が約0.03μmの球状シリカ微粒子を主体とする微粉末材料の懸濁液をバルブ1内表面のほぼ全面に塗布したものからなり、他端側から一端側にかけて次第に膜厚が大きくなるような膜厚分布をもって形成されており、ガラス管の重量に対して0.015〜0.023%の範囲で塗布されており、膜厚範囲は0.5〜0.8μmである。
また、光反射膜4は、平均粒径が約5μmの板状結晶をしたピロリン酸ストロンチウムを主体とする微粒子材料が用いられ、このピロリン酸ストロンチウムに対し平均粒径が0.2μmのバリウム・カルシウムボレートを結着剤として4.5質量%と、1.5質量%のニトロセルロースの酢酸ブチル溶液とを混合した懸濁液を上記保護膜3上の下記所定角度範囲ここでは光反射膜4として作用する約180゜(垂直中心線から各約90゜)の部分に塗布(バルブ1本当り1.2g)して他端側から一端側にかけて次第に膜厚が大きくなるような膜厚分布をもって形成されており、その膜厚範囲は約35〜50μmの膜厚で形成されている。
また、蛍光体膜6は例えばユーロピウム付活ハロリン酸バリウム・カルシウム・ストロンチウム(青色蛍光体)、セリウム・テルビウム付活リン酸ランタン(緑色蛍光体)、ユーロピウム付活酸化イットリウム(赤色蛍光体)の三種の蛍光体の混合微粉末の懸濁液を上記光反射膜4上および開口部(光反射膜非形成部)5に塗布(バルブ1本当り1.8g)して形成されたものからなり、その膜厚は一端側から他端側にかけて次第に膜厚が大きくなるような膜厚分布をもって形成されており、その膜厚範囲は約18〜30μmである。
図3は、図1の蛍光ランプL1を管軸に沿ってバルブを含む平面に直交するように切断した拡大断面図である。図中向かって左側を一端、右側を他端とする。
このように一端側では保護膜3および光反射膜4を厚く、蛍光体膜6を薄く形成し、他端側は保護膜3および光反射膜4を薄く、蛍光体膜6を厚く形成することによって、両端部間での紫外線の利用効率を近づけることができるためランプを点灯させたときに両端部から放射される光の強度をほぼ同程度にすることができる。つまり、一端側では蛍光体膜6は薄いが光反射膜4が厚く反射率が大きいために、より多くの紫外線を反射し蛍光体膜6を通過する紫外線の量が増える。一方、他端側では光反射膜4の反射率は低いが蛍光体膜6が厚く形成されているため通過する紫外線の量は一端側とそれほど変わらない。
さらに、このような構成にすることによって光反射膜6の膜剥がれによる外観の悪化を軽減させることができる。これは次のように説明することができる。
一般に被膜の上層にさらに被膜を設ける場合、下層の被膜が厚くなるにつれて上層の被膜が剥がれやすくなり、下層の被膜が薄くなるにつれて上層の被膜の剥がれが発生し難くなる傾向がある。さらに、膜厚が厚くなると被膜の強度が高くなり大きな亀裂が発生しやすくなる。これに対し本願は、曲成加工時に比較的引っ張り応力が小さい一端側に厚い保護膜3および厚い光反射膜4を形成し、応力が大きい他端側に薄い保護膜3および薄い光反射膜4を形成することによって他端側の膜剥がれおよび亀裂を抑制したものである。また、膜厚が薄い場合には例え膜剥がれや亀裂が発生してもあまり目立つことがないという効果もある。また、蛍光体膜6は膜厚が厚く形成された他端側であっても曲成加工後に目立った亀裂が確認されなかった。これは、蛍光体膜6の被膜の粒子間の結合力が弱くガラスバルブ1の伸びに追従するように微小な亀裂が入り、大きな亀裂が発生しないためであると考えられる。
被膜材料にボレートを添加する場合にはボレートの含有量に応じて大きな亀裂が発生しやすい傾向がある。例えば、光反射膜4に板状で平均粒径が約5μmのピロリン酸ストロンチウム等の粒子を使用する場合には、ボレートを約4質量%添加する。これに対し、蛍光体粒子は一般にこれよりも粒径が小さいものが用いられ、例えば約3.5μm程度の蛍光体を用いる場合にはボレートを約2質量%添加する。このように、蛍光体膜6のボレート含有量が約2質量%以下の場合には曲成加工時に引っ張り応力がかかってもそれほど大きな亀裂は発生せず、ボレートを約4質量%以上含有する光反射膜4のみに大きな亀裂が発生することが確認された。このボレート含有量は多くなる程被膜の強度は高まるが曲成加工時により大きな亀裂が発生しやすい。このため本願のように他端側に蛍光体膜6を厚く形成しても亀裂の発生による外観の悪化にはそれほど影響しないと考えられる。なお、蛍光体膜6に含有するボレートは0.5好ましくは1質量%以上であることが望ましい。0.5質量%以下になると蛍光体膜6に膜剥がれが発生しやすくなり、2質量%以上になると曲成加工したときに大きな亀裂が発生しやすくなる。
以下に本発明の蛍光ランプL1の製造方法について説明する。
まず、管状のガラスバルブ1の一端側に向かって保護膜材料の懸濁液を他端側から流し塗りし、他端側が上方になるように垂直に保持した状態で乾燥させる。このときガラスバルブ1内表面に塗布された保護膜3の懸濁液は下方に向かって流れ落ちるため保護膜3の膜厚は一端側が他端側に対して厚くなる。次に保護膜3上の所定位置に他端側から一端側に向かって反射膜材料の懸濁液を流し塗りし他端側が上方になるように垂直に保持した状態で乾燥させる。このときも同様に光反射膜4の膜厚は一端側が他端側に対して厚くなる。そして、ガラスバルブ1の上下方向を反転させて保護膜3および光反射膜4上に蛍光体材料の懸濁液を一端側から他端側に向かって流し塗りし、乾燥させて蛍光体膜6を形成する。このとき蛍光体膜6の膜厚は一端側に比べて他端側が厚くなる。このようにして内面に保護膜3、光反射膜4、蛍光体膜6が形成された管状のガラスバルブ1の他端側を固定し、ガラスバルブ1を軟化温度まで加熱する。さらに、一端側をドラムチャックによって保持しドラム上にガラスバルブ1が巻き付くように他端側に向かって曲成加工して環形に形成する。このとき、主に他端側に曲げ応力が加わるため、ガラスバルブは一端側に比べて他端側の肉厚が薄くなる。そして、ガラスバルブ1内の排気、放電媒体の封入、および両端の封止工程を経て蛍光ランプL1が形成される。
図4は、本実施形態の蛍光ランプのバルブ1の断面状態を示す電子顕微鏡写真である。
そして、図4の電子顕微鏡写真で示すようにバルブ1の内面上には保護膜3、光反射膜4、蛍光体膜6の順で各被膜が積層形成されている。なお、図4では倍率の関係で保護膜3の部分が少々不鮮明であるが、バルブ1の内面に緻密な被膜として形成されていることが確認された。
また、バルブ1面上に保護膜3、光反射膜4、蛍光体膜6の順で積層形成された被膜は、保護膜3の部分が少々不鮮明であるが図3の電子顕微鏡写真で示すような状態となっている。
また、このバルブ1内には液状や合金化した水銀およびアルゴンAr、クリプトンKrやネオンNeなどの希ガスが単独または混合して230〜430Pa(パスカル)好ましくは320〜400Pa(パスカル)で封入されている。
なお、バルブ内のガス圧が高くなると水銀が封入ガスと衝突しやすくなるため、水銀と蛍光体との衝突が軽減されて蛍光体の劣化を抑制することができる。このため、ガス圧を上げる事によって光束維持率を向上させることができる。さらに、ガス圧を上げる事によって電極に塗布したエミッタの蒸発を抑制し、電極の寿命を延ばす効果も期待できる。一方、ガス圧を上昇させるとバルブ内の電子温度が低下し全光束が低下するとともに始動電圧も上昇する。
本願発明の各被膜の構成においては、従来の蛍光ランプのガス圧よりも約1.2%高い320〜400Paとすることによって、最適な光束維持率と全光束を得ることが可能となる事が確認された。
また、図中7Aはピン端子75,…を備えたG10q形の口金で、曲成したバルブ1の両端封止部11,11を橋絡して固定されている。
このような構成の環形蛍光ランプL1は、光反射膜4形成側を上方にした水平状態で支持して、口金7Aを点灯回路装置に接続して口金7A、リード線22、22を介し電極23、23に通電して点灯すると、バルブ1軸と直交方向の横断面における配光は図5に示すような略鶏卵形の等照度分布Bを呈する。
すなわち、蛍光ランプL1は、バルブを横断した外周面からの光放射は均等ではなく、環形バルブ1の周方向180°以上の範囲に光反射率の高い光反射膜4が、残部に光反射膜4を形成していない光反射率が低く光透過率が高い開口部(光反射膜非形成部)5を略正対させているので、バルブ軸方向に沿う下方側の開口部(光反射膜非形成部)5から放射される光強度(光量)は、バルブ1内の光反射膜4で反射され開口部(光反射膜非形成部)5に向かった分も加わって高く(大きく)なり、開口部の照射方向の被照射面はより明るくなる。なお、環形蛍光ランプL1全体としてもこれらが連続した集合体としてランプL1軸と直交方向に略鶏卵形の等照度分布Bを呈する。
そして、本発明は上記光反射膜4を、結晶構造が板形状の微粒子からなるピロリン酸ストロンチウム材料を主体とした微粒子を堆積して形成したもので、球状結晶の微粒子より入り組んだ状態となり、粒子間同士の結着力が高い被膜が形成される。
本発明の光反射膜4は、反射率が従来の粒塊状の微粒子に比べて約10%高められるとともに、被膜4の表面積を増大させることによって微粒子間の結合力が高められる。その結果、亀裂や剥離の発生を抑制できる高い被着強度を有する被膜4が得られる。特に、環形蛍光ランプL1などガラスバルブを加熱曲成するものにおいて大きい効果が得られる。
また、光反射膜4の主体材料であるピロリン酸ストロンチウムの微粒子の表面にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよび亜鉛の酸化物のうちから選ばれた少なくとも一種の微粒子を付着しておくことにより、帯電傾向等を制御し主体材料の水銀やその化合物に起因する変色および主体材料と水銀との反応による水銀の消耗を抑制できる。なお、その付着量はピロリン酸ストロンチウムに対して0.01〜5.0質量%、好ましくは0.02〜3.0質量%程度である。
また、この光反射膜4の形成材料に限らず、蛍光体膜6を構成する蛍光体に上記マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムや酸化亜鉛の酸化物微粒子を付着させてもよい。この付着によっても、蛍光体膜6が水銀やその化合物により生じる変色および水銀の消耗を抑制することができる。
次に、保護膜の膜厚および光反射膜の構成が異なる複数の環形蛍光ランプ(FCL30EDC)を、膜剥がれ、亀裂の発生、および光束維持率について比較を行ったものを以下の表1に示す。なお、この比較において保護膜、光反射膜、蛍光体膜の形成方法、ガラスバルブの曲成加工の方向については全て同様の条件で実験を行った。
実施例1ないし4は光反射膜を形成する材料をピロリン酸ストロンチウムとし、比較例1ないし4は同材料をピロリン酸カルシウムとした。なお、保護膜はいずれも1次粒子の平均粒径が0.03μmの球状SiO2として比較を行った。比較例1の保護膜の膜厚は従来と同程度の0.1μmであり、これを光束維持率の基準とした。光束維持率は、ランプを約12000時間点灯させた後の全光束で判断した。比較例1は、12000時間点灯後の光束維持率が約70%であった。そして、12000時間点灯後の光束維持率70〜80%のものを○、12000時間点灯後の光束維持率80%以上のものを◎とした。保護膜の膜厚が0.2μm以上になると光束維持率が改善されることがわかる。光反射膜の膜剥がれの発生率については、それぞれ20本ずつ試作したものを視認によって確認した。△が20%以下、○が5%以下、◎は試作した20本中では膜剥がれの発生が確認されなかったことを示している。膜剥がれとは光反射膜の上部の層が剥離し一部は保護膜上に残留する場合や剥離によって保護膜が露出する場合など剥離部分の光反射膜としての機能が低下したものや著しく外観が悪化したものをいう。光反射膜の膜剥がれは、主にガラスバルブを曲成加工する前に蛍光体を光反射膜上に塗布したときおよび曲成加工したときに発生しやすい。実施例と比較例で比較すると光反射膜の材料をピロリン酸ストロンチウムとすることによって蛍光体を光反射膜上に塗布したときの膜剥がれの発生において特に抑制効果が高いことがわかった。このため、ピロリン酸ストロンチウムは曲成加工しない直管状のランプにおいても高い膜剥がれ抑制効果がある。また、ピロリン酸ストロンチウムは曲成加工したときにも膜剥がれの発生が抑制されることがわかった。光反射膜がピロリン酸カルシウムの場合、膜厚が0.1〜0.3μmで剥がれの発生率は5%以下であり、膜厚が0.5μm以上になると膜剥がれの発生率が20%以下であった。これに対し、光反射膜をピロリン酸ストロンチウムにすると少なくとも膜厚0.2〜0.9μmの範囲において剥がれの発生は確認することができなかった。膜厚が0.9μm以上になると光反射膜に亀裂が発生する傾向があった。亀裂とは、被膜に発生した線状の裂け目の部分をいい、この部分は光反射機能が低下する。これは、膜厚が厚くなることによって被膜がガラスバルブの曲成加工に耐えることができなくなるためと考えられる。このように、光反射膜をピロリン酸ストロンチウムにすることによって光反射膜の剥がれを劇的に抑制することができた。この効果は、保護膜をアルミナで形成した蛍光ランプについても同様であった。また、本実験において光反射膜の構成はピロリン酸ストロンチウムを主成分として行ったが、光反射膜の材料にピロリン酸ストロンチウムが25質量%以上含有されていれば同様に膜剥がれを抑制することができた。ピロリン酸ストロンチウムの含有量は多い方がより強固な被膜を形成することができるが、残部がピロリン酸カルシウムで構成されている場合であっても膜剥がれ発生率をほぼ同程度に維持することができた。以上の結果から保護膜の膜厚は0.2〜0.9μm、好ましくは0.3〜0.8μmの範囲とするのが良く、さらに0.5〜0.8μmが最適範囲である。
次に本発明の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、第1の実施形態において保護膜3、光反射膜4、蛍光体膜6の各被膜を形成する順番が異なったものであり、使用される材料や膜厚などの条件については同様である。なお、第1の実施形態と重複する構成要件についての説明は省略する。
図6に示すように、光反射膜4はバルブ1の周方向の所定角度範囲に塗布形成されている。この光反射膜4上および光反射膜4が形成されていない下方側の開口部(光反射膜非形成部)に保護膜3が形成されている。さらに、この保護膜3上に蛍光体膜6が形成されている。
このように、光反射膜4の上に保護膜3が形成されていると、光反射膜4のバルブの周方向の両端(開口部5との境界)に位置する端縁部が緻密な保護膜3によって覆われ、バルブ1を曲成加工したときに光反射膜4の開口部5側の端部の剥がれが抑制される。これは、光反射膜4に使用される材料の粒径に比べて、保護膜材料の粒径が十分に小さいため、光反射膜4の粒子間に保護膜3の粒子が入りこみ光反射膜4の膜強度を向上させたためと考えられる。また、光反射膜4は特に開口部5に隣接する側の端縁部で剥がれが発生しやすく、その部分の明暗差が大きいので目立ち易くなる。しかし、光反射膜4の強度を向上させて剥がれを抑制することによって、光反射膜非形成部5と光反射膜4との境界が目立ち難くなる。
図7は本発明に係る照明器具9の実施の形態を示す縦断面図である。この器具9は、上部に天井面などへの取付具(図示しない。)を備え、電源接続機構や安定器などのランプ点灯回路装置92を収容した器具本体91と、この本体91下方に設けた透光性合成樹脂やガラスで形成したカバー体93と、本体91内に配設されたランプ支持部材94およびソケット95と、支持部材94に支持されるとともに口金7Aにソケット95が装着された上記図1に示された構成の環形蛍光ランプL1とからなる。
この蛍光ランプL1は光反射膜4形成側を上方にし、開口部5側を下方にしてソケット94に装着されている。
そして、この照明器具9は、電源接続機構および点灯回路装置92を介して蛍光ランプL1に給電されるとランプL1が点灯する。この点灯したランプL1からは開口部5が指向している下方側に多量の光放射が行われ、すなわち光量が多く明るい。また、上方側には光反射膜4を透過して弱い例えば下方側に対して5%程度の光量や輝度の光放射が行われる。すなわち、ランプL1はバルブ1の下方の明るさを必要とする方向へは光量の多い照明を行うことができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限るものではない。例えば、ガラスバルブは、横断面が真円形に限らず長円形や角形などの管(筒)形をしたものあるいは平板形や偏平形などをしたものを用いた場合でも本発明の光反射膜を形成することができる。
また、本発明は汎用の環形、U字形や直管形の蛍光ランプに限らず、1本のガラスバルブをU字状に2回曲成して鞍形状に屈曲したり、U字形状に曲成した複数本のバルブを連結して形成した発光管を用いる電球形蛍光ランプやコンパクト形蛍光ランプなどにおいても、光反射膜を形成する場合には適用できる。
また、蛍光ランプの用途は、家庭、事務所、商店、工場などの一般照明用、OA機器用あるいは街路灯やトンネルなどの道路照明用など各種照明用として広く使用できる。
電極は、バルブ内に封装される熱陰極電極や冷陰極電極であっても、また、バルブ外面に設けられる外部電極であってもよい。
また、照明器具も図7に示すものに限らず、蛍光ランプや器具の種類、大きさや用途などに対応した種々構造や形態のものに適用できる。また、照明器具はランプ保護や配光制御のためのカバー体や反射体などは必須のものではない。
なお、この種の反射形のランプは指向性があり、ソケットあるいはホルダへの取り付け方向を誤ると所定の直下照度が得られないので、この取扱い(注意)表示を行う必要があり、この表示を印として利用することも可能である。
本発明の環形蛍光ランプの実施の形態を示す正面図である。 図1中の矢視A−A線に沿ってバルブを切断した端面を拡大して示す横断面図である。 図1の蛍光ランプを管軸に沿ってバルブを含む平面に直交するように切断した拡大断面図である。 図2の切断端面の要部を示す電子顕微鏡写真である。 図1の蛍光ランプをバルブ軸と直交方向に切断した端面における等照度分布を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態の環形蛍光ランプを管軸に直交する平面で切断した拡大断面図である。 本発明の照明器具の実施の形態を示す縦断面図である。
符号の説明
L1〜L8:蛍光ランプ(発光管)
1:ガラスバルブ
23:電極(フィラメント)
3:保護膜
4:光反射膜
6:蛍光体膜
9:照明器具

Claims (5)

  1. 気密封止されて一端側に比べて他端側の肉厚が薄くなるように曲成加工された環状のガラスバルブと;
    このガラスバルブ内に放電を生起させる放電生起手段と;
    前記ガラスバルブ内に封入された放電媒体と;
    一端側が他端側に比べて厚くなるように前記ガラスバルブ内面側に形成された保護膜と;
    一端側が他端側に比べて厚くなるように前記ガラスバルブ内面側の所定位置に形成された光反射膜と;
    他端側が一端側に比べて厚くなるように前記光反射膜上に形成された蛍光体膜と;
    を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
  2. ガラスバルブの内面に近い側から順に光反射膜、保護膜、蛍光体膜が塗布形成されていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ。
  3. 光反射膜は平均粒径が2.0〜7.0μmで形状が板状のピロリン酸ストロンチウムの微粒子を25質量%以上含有することを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ。
  4. 保護膜は球状シリカ微粒子を50重量%以上含有し、平均膜厚が0.2〜0.9μmであることを特徴とする請求項1または3のいずれか一に記載の蛍光ランプ。
  5. 器具本体と;
    この器具本体に設けられた支持部材と;
    この支持部材に支持された上記請求項1ないし4のいずれか一に記載の蛍光ランプと;
    この蛍光ランプに接続した点灯回路装置と;
    を具備していることを特徴とする照明器具。
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