JP2008088612A - 家庭用薄葉紙及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 構成パルプが針葉樹パルプ30〜70質量%と広葉樹パルプ材70〜30質量%とよりなり、該針葉樹パルプが、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹パルプを15質量%〜100質量%、好ましくは30質量%〜100質量%含有する針葉樹化学パルプであることを特徴とする家庭用薄葉紙。該針葉樹パルプはスギ材から製造されているパルプである。スギ材としては、樹齢40年以下のスギ間伐材等が好ましく使用できる。
【選択図】 なし
Description
従来から、家庭用薄葉紙用パルプとしては、広葉樹材、針葉樹材から得られる化学パルプ、新聞古紙、上質古紙、OA古紙等を脱墨処理して得られる脱墨古紙パルプ(DIP)が使用されており、化学パルプはスラリー状態のままで用いられる場合(スラッシュパルプ)とスラッシュパルプを一度脱水、乾燥させてドライパルプとし、このパルプを再度離解して使用する場合とがあり、これらのパルプはそれぞれ未漂白あるいは漂白パルプの状態で、また、未叩解あるいは叩解の状態で品質設計に応じて単独で、或いは混合されて使用されてきた。
従来、スギは、心材部に着色成分が多く、蒸解性、漂白性が他の針葉樹に比べて劣るため、パルプ原料として用いられることが少なかった。しかし、若年齢のスギ材の心材部は着色成分が少なく、蒸解性や漂白性も他の材に比べて劣ることがないことに加えて、繊維壁も薄いことも判明した。
上記の繊維特性を有する針葉樹パルプを得る方法としては、一般的な針葉樹パルプから該当する繊維形態のものを分画する方法もあるが、スギ材のように元々繊維形態が上記条件に合致している針葉樹材を原料として使用する方法が簡便であり、特に低樹齢の間伐スギ材を使用すれば、間伐材の有効利用という点からも好ましく、ひいては、間伐促進による森林環境の保全にも同時に寄与することとなるものである。
本発明の家庭用薄葉紙の場合は、強度、特に引張り強度と柔軟性を付与するために、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの針葉樹パルプを、全針葉樹パルプ中15〜100質量%、好ましくは30〜100質量%含有する針葉樹パルプを広葉樹パルプと組み合わせて使用する。
また、繊維幅が25μm未満の針葉樹パルプでは強度が低くなるし、35μmを超えると柔らかさが損なわれ、手触り感も悪くなる。
また、針葉樹パルプの繊維壁厚が5.5μm未満では強度が低くなるし、7.5μmを超えると柔らかさが損なわれ、手触り感も悪くなる。
中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。上記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔に送られ、脱リグニンされる。
漂白パルプの叩解は、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、ビーター等で行われる。叩解の度合いは、カナダ標準ロ水度(C.S.F.)で示される値で450ml〜600mlの範囲が好ましい。
針葉樹パルプの配合割合が30質量%未満であると引っ張り強度が低くなるし、70質量%を超えて多くなると柔軟さ、手触り感のいずれも劣るものとなるので、いずれの場合も好ましくない。
また、2層抄き合わせ薄葉紙の針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層の質量比は、特に限定されるものではなく、一般的には、針葉樹パルプ層/広葉樹パルプ層=40/60〜60/40の範囲である。
針葉樹パルプの使用割合が上記範囲を逸脱して多くなると、柔軟さが劣ることとなり好ましくないし、上記範囲より少なくなると引っ張り強度が不足して好ましくない。
また、該ティシュペーパー2枚をその針葉樹パルプ層面同士が対面し、両表面側が広葉樹パルプ層となるように重ね合わせて一組のティシュペーパーとすることもでき、このような重ね合わせティシュペーパーが一般的となってきている。
積層ティシュペーパーは、J.TAPPI紙パルプ試験法No.34−80で測定したソフトネスが35mN/10cm以下、好ましくは26mN/10cm以下の数値範囲に調節される。
カヤニーファイバーラボ(MestoAutomation社製)を用いて、パルプの繊椎形態(長さ加重平均繊維長、繊維幅、繊維壁厚)を測定した。
JIS P 8113に従い、引張強度を測定した。
J.TAPPI 紙パルプ試験法 No.34−2000「紙−柔らかさ試験方法」に従い、測定した。すなわち、ティシュペーパーのシート(200×200mm)を一定の隙間(6.35mm)に押し入れるのに必要な仕事量をHandle−0−Meter(熊谷理機工業社製)により測定し、測定値に0.5を乗じて、g/10cmで表示した。なお、試料片の押し入れは、試料の流れに対し直角(縦方向)に折り曲げて行った。
男性10人、女性10人で官能評価し、次の区分で表示した。
○○○:非常に良い
○○:とても良い
○:良い
△:普通
×:悪い
原料パルプとしては、市販の未叩解広葉樹晒クラフトパルプ〔セニブラ社製、フリーネス600ml(CSF)〕60部とフリーネス600m1(CSF)まで叩解した自製針葉樹晒クラフトパルプ40部の割合で使用した。自製針葉樹晒クラフトパルプとしては、樹齢40年のスギ間伐材をクラフト蒸解後、アルカリ酸素晒に続き、D−E/0−P−Dの漂白シーケンスで漂白した白色度84.5%のスギパルプを使用した。なお、スギパルプの長さ加重平均繊維長、繊維幅、繊維壁厚は、それぞれ1.49mm、29.6μm、6.2μmであった。各々の原料パルプのスラリーに湿潤紙力増強剤(商品名:アラフィックス255、荒川化学工業製)を絶乾パルプ質量当たり0.1質量%添加し、次いで、得られる製品ティシュペーパーの抽出pHが6.6〜7.4の範囲になるように抄紙系のpHを水酸化ナトリウム溶液で調整した紙料を調製し、ツインワイヤータイプの2層抄き合せ式のヤンキー抄紙機により1700m/分の速度で抄紙して広葉樹晒クラフトパルプの層と針葉樹晒クラフトパルプの層を積層し、広葉樹晒クラフトパルプの層がヤンキードライヤーの鏡面に接するようにして乾燥して、坪量が11.3g/m2、広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの使用比率が絶乾質量で60:40の2層抄き合わせティシュペーパーを抄造した。得られた2層抄き合わせティシュペーパーをクレーピングドクターによりドライヤー面から剥がし、巻き取りリールとに速度差を設けることにより、30%のドライクレープを付与し、次いで、2層抄き合わせティシュペーパーのヤンキードライヤーの鏡面に接した広葉樹晒クラフトパルプ層が外側になるようにして2枚重ね合わせて坪量22.6g/m2の化粧用ティシュペーパーを製造した。
使用した針葉樹晒クラフトパルプのうちの、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹晒クラフトパルプの割合、及び製造したティシュペーパーの引っ張り強度、ソフトネスの測定結果及びティシュペーパーの手触り感の官能評価結果を表1に示した。
実施例1の自製針葉樹晒クラフトパルプの原料をスギ材100%から実施例1のスギ材50%、カラマツ材50%に変更した以外は、実施例1と同様にして坪量22.6g/m2のティシュペーパーを製造した。なお、カラマツパルプの長さ加重平均繊維長、繊維幅、繊維壁厚は、それぞれ2.60mm、36.1μm、9.4μmであった。
使用した針葉樹晒クラフトパルプのうちの、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹晒クラフトパルプの割合、及び製造したティシュペーパーの引っ張り強度、ソフトネスの測定結果及びティシュペーパーの手触り感の官能評価結果を表1に示した。
実施例1の自社製針葉樹晒クラフトパルプの原料をスギ材100%からカラマツ100%に変更した以外は実施例1と同様にして坪量22.6g/m2のティシュペーパーを製造した。
使用した針葉樹晒クラフトパルプの長さ加重平均繊維長、繊維幅、繊維壁厚及び製造したティシュペーパーの引っ張り強度、ソフトネスの測定結果、手触り感の官能評価結果を表1に示した。
原料パルプとしては、市販の未叩解広葉樹晒クラフトパルプ〔セニブラ社製、フリーネス600ml(CSF)〕60部とフリーネス600m1(CSF)まで叩解した自製針葉樹晒クラフトパルプ40部の割合で使用した。自製針葉樹晒クラフトパルプとしては、樹齢35年のスギ間伐材をクラフト蒸解後、アルカリ酸素晒に続き、D−E/0−P−Dの漂白シーケンスで漂白した白色度84.5%のスギパルプを使用した。各々の原料パルプのスラリーに湿潤紙力増強剤(商品名:アラフィックス255、荒川化学工業製)を絶乾パルプ質量当たり0.1質量%添加し、次いで、得られる製品ティシュペーパーの抽出pHが6.6〜7.4の範囲になるように抄紙系のpHを水酸化ナトリウム溶液で調整したパルプスラリーを調製し、ツインワイヤータイプの2層抄き合せ式のヤンキー抄紙機により1700m/分の速度で抄紙して広葉樹晒クラフトパルプの層と針葉樹晒クラフトパルプの層を積層し、広葉樹晒クラフトパルプの層がヤンキードライヤーの鏡面に接するようにして乾燥して、坪量が22.6g/m2、広葉樹晒クラフトパルプと針葉樹晒クラフトパルプの使用比率が絶乾質量で60:40の2層抄き合わせティシュペーパーを抄造した。得られた2層抄き合わせティシュペーパーをクレーピングドクターによりドライヤー面から剥がし、巻き取りリールとに速度差を設けることにより、30%のドライクレープを付与して化粧用ティシュペーパーを製造した。
使用した針葉樹晒クラフトパルプのうちの、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹晒クラフトパルプの割合、及び製造したティシュペーパーの引っ張り強度、ソフトネスの測定結果及びティシュペーパーの手触り感の官能評価結果を表1に示した。
実施例3の自社製針葉樹晒クラフトパルプの原料をスギ材100%からカラマツ100%に変更した以外は実施例3と同様にして坪量22.6g/m2のティシュペーパーを製造した。
使用した針葉樹晒クラフトパルプのうちの、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹晒クラフトパルプの割合、及び製造したティシュペーパーの引っ張り強度、ソフトネスの測定結果、手触り感の官能評価結果を表1に示した。
また、上記特性を備えた針葉樹パルプ原料としてスギ材、特に若樹齢のスギ材が好適であることから、建材等に直接利用することが困難なスギ間伐材の有効利用を図ることができると共に、昨今、スギ花粉症の問題から、花粉の少ない品種への植え替えや、他の樹種への植え替えのために樹齢に拘わらず伐採されている、スギ材をリサイクル可能な紙の原料として利用することで森林環境の保全をも同時に達成することができる。
Claims (11)
- 構成パルプ材が針葉樹パルプ材30〜70質量%と広葉樹パルプ材70〜30質量%とよりなり、該針葉樹パルプ材が、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹パルプを15質量%〜100質量%含有する針葉樹化学パルプであることを特徴とする家庭用薄葉紙。
- 前記長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹パルプがスギ材から製造されている針葉樹漂白化学パルプであることを特徴とする請求項1記載の家庭用薄葉紙。
- 前記スギ材から製造されている針葉樹漂白化学パルプは、50質量%以上が樹齢40年以下のスギ材から製造されているパルプであることを特徴とする請求項2に記載の家庭用薄葉紙。
- 前記樹齢40年以下のスギ材が、スギ間伐材であることを特徴とする請求項2又は3記載の家庭用薄葉紙。
- 前記薄葉紙は、長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmの条件を満たす針葉樹パルプをパルプ材として含有する紙料から抄紙される紙層と、前記広葉樹パルプをパルプ材として含有する紙料から調製される紙層との抄き合わせ薄葉紙であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の家庭用薄葉紙。
- 前記抄き合わせ薄葉紙は、前記広葉樹パルプ層側をドライヤー面に接して乾燥されている抄き合わせ薄葉紙にドライクレープ加工が施されている薄葉紙であることを特徴とする請求項5に記載の家庭用薄葉紙。
- J.TAPPI紙パルプ試験法No.34−80で測定した薄葉紙の引っ張り強度が横条件で0.5N〜3.0Nで、ソフトネスが15mN/10cm〜35mN/10cmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の家庭用薄葉紙。
- 長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmであり、フリーネスが500mlC.S.F.〜700mlC.S.F.である針葉樹化学パルプをパルプ材として含有する針葉樹パルプスラリーと、広葉樹化学パルプをパルプ材として含有するパルプスラリーとを調製し、ツインワイヤータイプの2層抄き合わせ式ヤンキー抄紙機により抄き合わせして針葉樹パルプ層と広葉樹パルプ層とを積層一体化し、広葉樹パルプ層をヤンキードライヤーの鏡面に接して乾燥して坪量10.0g/m2〜20.0g/m2の抄き合わせ薄葉紙を抄造することからなる家庭用薄葉紙の製造方法。
- 前記針葉樹パルプスラリーは、全針葉樹パルプ中、前記の長さ加重平均繊維長が1.3〜2.1mm、繊維幅が25〜35μm、繊維壁厚が5.5〜7.5μmである針葉樹化学パルプを15〜100質量%含有することを特徴とする請求項8に記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
- 前記針葉樹化学パルプは、その50質量%以上が樹齢40年以下のスギ材から製造されているパルプであることを特徴とする請求項8又は9に記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
- 製造される家庭用薄葉紙のJ.TAPPI紙パルプ試験法No.34−80で測定したソフトネスが15mN/10cm〜35mN/10cm以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の家庭用薄葉紙の製造方法。
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