JP2008087381A - 高画質ハーフトーン処理 - Google Patents

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Abstract

【課題】ディザ法と誤差拡散法の望ましい組合せによるハーフトーン処理によって画質を向上させる技術を提供する。
【解決手段】本発明は、ハーフトーン処理を行うことによってドットデータを生成するドットデータ生成部と、サイズが異なるN種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する印刷部とを備える。ドットデータ生成部は、N種類のドットのうち比較的に小さなサイズのドットについては誤差拡散法によってハーフトーン処理を実行し、N種類のドットのうち比較的に大きなサイズのドットについてはドット群の各々が所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によってハーフトーン処理を実行する。
【選択図】図9

Description

この発明は、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する技術に関する。
コンピュータで作成した画像や、デジタルカメラで撮影した画像などの出力装置として、印刷媒体上にドットを形成して画像を印刷する印刷装置が広く使用されている。かかる印刷装置は、入力階調値に対して形成可能なドットの階調数が少ないためハーフトーン処理によって階調表現が行われる。ハーフトーン処理の手法として、ディザマトリックスを用いた組織的ディザ法(本明細書では、単にディザ法とも呼ぶ。)や誤差拡散法が広く用いられている。従来は、ディザ法と誤差拡散法は、処理負担が小さいが画質に劣るディザ法と、処理負担が大きいが画質に勝る誤差拡散法という技術的な位置づけを有していた。
一方、コンピュータの処理能力の向上によって、処理負担が大きいが高画質を得られる誤差拡散の適用範囲が拡大しているが、たとえば複数の閾値を用いて多値化を実行する誤差拡散において問題となる一部階調における画質劣化を抑制するためにディザ法を組み合わせる手法も提案されている(特許文献1)。
特開2000−125121号公報 特許第3001002号公報
しかし、本願発明者の発明によってディザ法が独自の進化を遂げて顕著に画質が向上したため、ディザ法と誤差拡散法は、従来とは相違する位置づけを有するようになってきた。ところが、このように技術的な位置づけが変化したディザ法と誤差拡散法とを、どのように組み合わせてハーフトーン処理を構成することが望ましいか、あるいは何れか一方を単独で使用すべきかといった問題は未解決であった。
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、ディザ法と誤差拡散法の望ましい組合せによるハーフトーン処理によって画質を向上させる技術を提供することを目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明は、印刷媒体上に印刷を行う印刷装置を提供する。この装置は、
元画像を構成する各画素の入力階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成部と、
前記印刷媒体上にインク量の異なるN種類(Nは2以上の整数)のインク滴を選択的に吐出することにより1画素の領域にサイズが異なる前記N種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、前記ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって、前記ドットデータに応じて前記印刷画像を生成する印刷部と、
を備え、
前記ドットデータ生成部は、前記N種類のドットのうち小さなサイズ側のドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記N種類のドットのうち大きなサイズ側のドットについては前記ドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する。
本発明の印刷装置では、ドットサイズに応じて、特定のディザ法(ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法)と、誤差拡散法とにハーフトーン手法が切り替えられる。このような切替は、両手法の特徴を活かすために行われる。特定のディザ法の特徴は、ドットの形成における物理的な相違(たとえばドットが形成される主走査の方向の相違)を有するドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する場合に、このような組合せに起因する画質の劣化を抑制できるという点にある。ただし、特定のディザ法は、ドット群間の相互作用が画質に影響を与えるほどのドット密度を有している場合に顕著な効果を奏する一方、ドット群の各々のドット密度が小さい場合には顕著な効果が得られないという特徴をも有している。一方、誤差拡散法の特徴は、ドット群間の相互作用の問題を考慮しなければ、特定のディザ法よりも印刷画像を構成するドットの分散性が良いという点にある。
このような両者の特徴の分析は、ドットの形成における物理的な相違(たとえばドットが形成される主走査の方向の相違)に着目しつつ、誤差拡散法と、本願発明者によって創作された特定のディザ法とを用いた実験と解析とによって本願発明者によって初めてなされたものである。本願発明は、このような新規な着眼点に基づいて創作されたものである。
なお、「物理的な相違」は、たとえば印刷ヘッドの位置の計測誤差や副走査送り量の計測誤差といった印刷装置の機構の誤差によるドットのズレだけでなく、たとえば印刷用紙の浮き上がりに起因する主走査方向のドットのズレやインクの吐出タイミング(時間的誤差)のズレ(時間差)や順序といった要因を含む広い意味を有する。ドットの位置ズレは、たとえば印刷ヘッドの往方向の主走査で形成されるドットと復方向の主走査で形成されるドットの主走査方向の位置ズレとして顕在化する。また、「ドット密度」とは、ドット記録率とドット面積の積を意味するので、小ドットで表現される領域は、小ドットのドット記録率の上限(バンディング抑制)と相俟って、常にドット密度が低い領域を表現することになる。
上記印刷装置において、
前記誤差拡散法は、前記大きなサイズ側のドットの形成状態と前記小さなサイズ側のドットの形成状態とに応じて誤差を拡散するようにしても良い。こうすれば、大きなサイズ側のドットと小さなサイズ側のドットとの相互間の分散性を考慮したハーフトーン処理を実現することができる。このような誤差拡散処理は、小さなサイズ側のドット記録率ではなくて、入力階調値を用いて処理を行うとともに、大中小ドットのドット評価値を入力階調値で表現するように構成しても良いし、あるいは、以下のような簡易な構成でも良い。
上記印刷装置において、
前記誤差拡散法は、前記大きなサイズ側のドットの形成状態に応じて、前記大きなサイズ側のドットが形成された場合には、前記小さなサイズ側のドットが形成されたとみなして誤差を拡散しても良い。こうすれば、大きなサイズ側のドットと小さなサイズ側のドットとの相互間の分散性を考慮したハーフトーン処理を簡易に実現することができる。
上記印刷装置において、
前記誤差拡散法は、前記ドット群の各々のいずれもが第2の所定の特性を有するように設定されていても良い。こうすれば、誤差拡散法によってハーフトーン処理が実行される領域においても、ドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることに起因する画質の劣化を抑制することができる。なお、第2の所定の特性は、第1の所定の特性と同一であっても良い。
上記印刷装置において、
前記第1の所定の特性は、ブルーノイズ特性とグリーンノイズ特性のいずれか一方であるようにしても良い。なお、「ブルーノイズ特性」と「グリーンノイズ特性」は、本明細書では、文献「Digital halftoning」(Robert Ulichney著)によって定義されるものとする。
上記印刷装置において、
前記ドット群の各々は、前記N種類のドットのうち比較的に大きなサイズのドットについては、いずれも印刷媒体上において1サイクル毎ミリメートルを中心周波数とした0.5サイクル毎ミリメートルから2サイクル毎ミリメートルまでの所定の低周波の範囲内の成分の平均値が、10サイクル毎ミリメートルの周波数を中心周波数とした5サイクル毎ミリメートルから20サイクル毎ミリメートルまでの範囲の成分の平均値よりも小さくなるような周波数特性を有するようにしても良い。
こうすれば、人間の視覚感度の高い領域において粒状性を抑制することができるので、人間の視覚感度に着目した効果的な画質の改善を行うことができる。
上記印刷装置において、
前記印刷部は、1画素の領域に最もサイズが大きな大ドット、最もサイズが小さな小ドット、および前記大ドットよりもサイズが小さく前記小ドットよりもサイズが大きな中ドットの3種類のドットを形成可能であり、
前記ドットデータ生成部は、前記小ドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記3種類のドットのドットのうち前記大ドットと前記中ドットについては前記ディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行するようにしても良いし、
あるいは、
前記印刷部は、1画素の領域に最もサイズが大きな大ドット、最もサイズが小さな小ドット、および前記大ドットよりもサイズが小さく前記小ドットよりもサイズが大きな中ドットの3種類のドットを形成可能であり、
前記ドットデータ生成部は、前記小ドットと前記中ドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記大ドットについては前記ディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行するようにしても良い。
なお、本発明のディザ法は、たとえば特開2005−236768号公報や特開2005−269527号公報に開示されているようなドットの形成状態を特定するための中間データ(個数データ)を使用するような技術においては、ディザマトリックスを用いて生成された変換テーブル(あるいは対応関係テーブル)を用いたハーフトーン処理も含む広い概念を有する。
また、本発明は、ディザマトリックス、ディザマトリックス生成装置、ディザマトリックスを用いた印刷装置や印刷方法、印刷物の生成方法といった種々の形態、あるいは、これらの方法または装置の機能をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の種々の形態で実現することができる。
さらに、印刷装置や印刷方法、印刷物の生成方法におけるディザマトリックスの使用は、ディザマトリックスに設定されている閾値と画像データの階調値とを画素毎に比較することによって、画素毎にドット形成の有無を判断しているが、たとえば閾値と階調値の和を固定値と比較してドット形成の有無を判断するようにしても良い。さらに、閾値を直接使用することなく閾値に基づいて予め生成されたデータと、階調値とに応じてドット形成の有無を判断するようにしても良い。本発明のディザ法は、一般に、各画素の階調値と、ディザマトリックスの対応する画素位置に設定された閾値とに応じてドットの形成の有無を判断するものであれば良い。
以下では、本発明の作用・効果をより明確に説明するために、本発明の実施の形態を、次のような順序に従って説明する。
A.本発明の実施例における印刷システムの構成:
B.本発明の実施例における印刷データ生成処理:
C.本発明の実施例における最適化ディザマトリックスの生成方法:
D.変形例:
A.本発明の実施例における印刷システムの構成:
図1は、本発明の実施例における印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、印刷制御装置としてのコンピュータ90と、印刷部としてのカラープリンタ20と、を備えている。なお、カラープリンタ20とコンピュータ90の組み合わせを、広義の「印刷装置」と呼ぶことができる。
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラープリンタ20に転送するための印刷データPDが出力されることになる。アプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示する。
プリンタドライバ96の内部には、入力画像の解像度を印刷解像度に変換する解像度変換モジュール97と、RGBをCMYKに色変換する色変換モジュール98と、後述の実施例で生成されるディザマトリックスMや誤差拡散法を使用して入力階調値をドットの形成で表現可能な出力階調数へ減色するハーフトーンモジュール99と、ハーフトーンデータを用いてカラープリンタ20に送信するための印刷データを生成する印刷データ生成モジュール100と、色変換モジュール98が色変換の基準とする色変換テーブルLUTと、ハーフトーン処理のために各サイズのドットの記録率を決定するための記録率テーブルDTと、が備えられている。プリンタドライバ96は、印刷データPDを生成する機能を実現するためのプログラムに相当する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、たとえばCD−ROM126やフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。
図2は、カラープリンタ20の概略構成図である。カラープリンタ20は、紙送りモータ22によって印刷用紙Pを副走査方向に搬送する副走査駆動部と、キャリッジモータ24によってキャリッジ30を紙送りローラ26の軸方向(主走査方向)に往復動させる主走査駆動部と、キャリッジ30に搭載された印刷ヘッドユニット60(「印刷ヘッド集合体」とも呼ぶ)を駆動してインクの吐出およびドット形成を制御するヘッド駆動機構と、これらの紙送りモータ22,キャリッジモータ24,印刷ヘッド10、20を備える印刷ヘッドユニット60および操作パネル32との信号のやり取りを司る制御回路40とを備えている。制御回路40は、コネクタ56を介してコンピュータ90に接続されている。
図3は、印刷ヘッド10、20の下面におけるノズル配列を示す説明図である。印刷ヘッド10の下面には、ブラックインクを吐出するためのブラックインクノズル列Kと、シアンインクを吐出するためのシアンインクノズル列Cと、マゼンタインクを吐出するためのマゼンタインクノズル列Mzと、イエローインクを吐出するためのイエローインクノズルYとが形成されている。
各ノズル列の複数のノズルNzは、副走査方向に沿って一定のノズルピッチk・Dでそれぞれ整列している。ここで、kは整数であり、Dは副走査方向における印刷解像度に相当するピッチ(「ドットピッチ」と呼ぶ)である。本明細書では、「ノズルピッチはkドットである」とも言う。このときの単位[ドット]は、印刷解像度のドットピッチを意味している。副走査送り量に関しても同様に、[ドット]の単位を用いる。
各ノズルNzには、各ノズルNzを駆動してインク滴を吐出させるための駆動素子としてのピエゾ素子(後述)が設けられている。印刷時には、印刷ヘッド10、20が主走査方向MSに移動しつつ、各ノズルからインク滴が吐出される。
図4は、ノズルNzとピエゾ素子PEの構造を示す説明図である。ピエゾ素子PEは、ノズルNzまでインクを導くインク通路68に接する位置に設置されている。本実施例では、ピエゾ素子PEの両端に設けられた電極間に電圧を印加することにより、インク通路68の側壁のひとつを変形させてインク滴IpをノズルNzの先端から高速に吐出させている。
図5および図6は、インクが吐出される際のノズルNzの2種類の駆動波形と吐出される2つのサイズのインク滴IPs、IPmとの関係を示した説明図である。図5は、単体で小ドットを形成可能な小インク滴IPsを吐出するための駆動波形を示しており、図6は、単体で中ドットを形成可能な中インク滴IPmを吐出するための駆動波形を示している。
小インク滴IPsは、以下のようにインク吸収過程とインク吐出過程の2つの過程を経てノズルNzから吐出させることができる。
(1)インク供給過程(d1s):この過程では、インク通路68(図4)が拡張されて図示しないインクタンクからインク通路68にインクが供給される。インク通路68の拡張は、ピエゾ素子PEに印加する電位を低くして、これを収縮させることによって行われる。
(2)インク吐出過程(d2):この過程では、インク通路68が圧縮されてノズルNzからにインクが吐出される。インク通路68の圧縮は、ピエゾ素子PEに印加する電位を高くして、これを膨張させることによって行われる。
中インク滴IPmは、インク吸収過程において、図6に示されるように電位を比較的ゆっくりと低下させることによって、小インク滴IPsと同様に吐出させることができる。電位をゆっくりと低下させることによりインク通路68をゆっくりと拡張させると、図示しないインクタンクからより多くのインクを供給させることができるからである。
このように、電位の低下速度を速くすると、図5に示されるようにインク界面MeがノズルNzの内側に大きくへこんだ状態でインク吐出過程に移行することになるため、吐出されるインク滴が小さくなる。一方、電位の低下速度を遅くすると、図6に示されるようにインク界面MeがノズルNzの内側に小さくへこんだ状態でインク吐出過程に移行することになるため、吐出されるインク滴が大きくなる。本実施例では、このようにインク供給過程における電位の変化速度を変動させることによってインク滴の大きさを変化させている。
図7は、小インク滴IPsと中インク滴IPmとを用いて大中小の3つのサイズのドットを同一位置に形成する様子を示す説明図である。駆動波形W1は、小インク滴IPsを吐出するための波形であり、駆動波形W2は、中インク滴IPmを吐出するための波形である。図6から分かるように、本実施例では、小インク滴IPsを吐出するための駆動波形W1が出力された後、一定時間経過後に中インク滴IPmを吐出するための駆動波形W2が出力されている。
このようなタイミングで2つの駆動波形W1、W2をピエゾ素子PEに出力しているのは、小インク滴IPsと中インク滴IPmの着弾位置を一致させるためである。すなわち、図7から分かるように、平均飛翔速度が比較的に遅い小インク滴IPsを先に吐出させて、一定時間経過後に平均飛翔速度が比較的に速い中インク滴IPmを吐出させると着弾位置を一致させることができる。なお、平均飛翔速度とは、吐出から着弾までの飛翔速度の平均値を意味し、減速率が大きい場合には低下する。
以上説明したハードウェア構成を有するカラープリンタ20は、紙送りモータ22により印刷用紙Pを搬送しつつ、キャリッジ30をキャリッジモータ24により往復動させ、同時に印刷ヘッド10のピエゾ素子を駆動して、各色インク滴の吐出を行い、大中小のインクドットを形成して印刷用紙P上に視覚系やカラープリンタ20に最適化された画像を形成することができる。
B.本発明の実施例における印刷データ生成処理:
図8は、本発明の実施例における印刷データ生成処理のルーチンを示すフローチャートである。印刷データ生成処理とは、カラープリンタ20に供給するための印刷データPDを生成するためにコンピュータ90で行われる処理である。
ステップS100では、プリンタドライバ96(図1)は、アプリケーションプログラム95から画像データを入力する。この入力処理は、アプリケーションプログラム95による印刷命令に応じて行われる。ここで、画像データは、RGBデータであるものとしている。
ステップS200では、解像度変換モジュール97は、入力されたRGB画像データの解像度(すなわち、単位長さ当りの画素数)を所定の解像度に変換する。
ステップS300では、色変換モジュール98は、色変換テーブルLUT(図1)を参照しつつ、各画素ごとに、RGB画像データを、カラープリンタ20が利用可能なインク色の多階調データに変換する。
ステップS400では、ハーフトーンモジュール99は、ハーフトーン処理を行う。ハーフトーン処理とは、多階調データの階調数である256階調を、カラープリンタ20が各画素で表現可能な階調数である4階調に減少させる処理(減色処理)である。この4階調は、本実施例では、「ドットの形成なし」「小ドットの形成」「中ドットの形成」「大ドットの形成」で表現される。
図9は、本発明の実施例におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャートである。このハーフトーン処理では、大ドットや中ドットは後述する特定のディザ法でドットの形成の有無が決定される。一方、小ドットは、大ドットや中ドットの形成状態が決定された後に、これらの形成状態と小ドットのドット記録率とに基づいて誤差拡散法でドットの形成の有無が決定される。このような処理の分担と順序となっているのは、以下の理由によるものである。
このような処理の分担(大中ドットはディザ法で、小ドットは誤差拡散法で処理)となっている理由は、ドット密度が中程度から高密度のシャドー領域においては、発明者が新たに創作した特定のディザ法(後述する)が顕著に効果を奏して高画質を実現することができる一方、小ドットで表現されるドット密度の低いハイライト領域においては、特定のディザ法の効果が比較的に小さいからである。ここで、「ドット密度」とは、ドット記録率とドット面積の積を意味する。
すなわち、特定のディザ法の特徴は、ドットの形成における物理的な相違(たとえばドットが形成される主走査の方向の相違)を有するドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する場合に、このような組合せに起因する画質の劣化を抑制できるという点にある。このような特徴は、ドット群間の相互作用が画質に影響を与えるほどのドット密度を有している場合にのみ顕著な効果を奏する一方、前述のようにドット群の各々のドット密度が小さい場合には、ドット群間の相互作用が画質に影響を与えないため顕著な効果が得られない。このため、小ドットの形成の有無は印刷画像を構成するドットの分散性の良好性を重視して誤差拡散法を利用して決定しているのである。
このような処理の順序(ディザ法の後に誤差拡散法)となっている理由は、本発明の実施例における誤差拡散法では、後述するように、大ドットや中ドットの形成状態を考慮して、小ドットの形成状態を決定して、大中小ドットの相互間の分散性を向上させることができるからである。具体的な処理の内容は、以下のとおりである。
ステップS410では、ハーフトーンモジュール99(図1)は、記録率テーブルDTから大中小ドット用のレベルデータLD、LDm、LDsをそれぞれ読み取る。レベルデータとは、大中小ドットの各々の記録率を値0〜255の256段階に変換したデータをいう。
図10は、大中小の3つのサイズのドットのレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDTを示す説明図である。記録率テーブルDTの横軸には、階調値(0〜255)、左側の縦軸には、ドット記録率(%)、右側の縦軸には、レベルデータ(0〜255)が示されている。ここで、「ドット記録率」とは、一定の階調値に応じて一様な領域が再現されるときに、その領域内の画素のうちでドットが形成される画素の割合を意味する。図10中の曲線CSDが小ドットの記録率を、曲線CMDが中ドットの記録率を、曲線CLDが大ドットの記録率をそれぞれ示している。
小ドットや中ドットのドット記録率が100%にまで達していないのは、バンディングを抑制するためである。一方、「ドット密度」は、ドット記録率とドット面積の積を意味するので、小ドットのドット記録率の上限と相俟って、小ドットは、常にドット密度が低い領域(ハイライト領域)を表現することになる。
レベルデータLDは、大ドットのドット記録率を変換したデータであり、また、レベルデータLdmは、中ドットのドット記録率を、レベルデータLdsは、小ドットのドット記録率を、それぞれ変換したデータである。たとえば、図10に示される例では、多階調データの階調値がgr1であれば、大ドットのレベルデータLDは、曲線CLDを用いてゼロと求められ、中ドットのレベルデータLdmは、曲線CMDを用いてLm1と求められ、小ドットのレベルデータLdsは、曲線CSDを用いてLs1と求められる。
図11は、本発明の実施例におけるディザ法によるドットのオン・オフ判定の考え方を示す説明図である。本実施例では、レベルデータLDやレベルデータLdmに基づいて、先ず、大ドット、中ドットの順にディザ法でドットの形成の有無を決定する。このようにして、ステップS410の処理が完了すると、処理がステップS425に進められる。
ステップS425では、ステップS410で読み出されたレベルデータLDと閾値thとの大小が比較される。閾値thは、後述する方法で最適化されたディザマトリックスMから読み出された値である。この比較の結果、レベルデータLDが閾値thよりも大きいときには、ドットの形成を示す結果値Rdに2進数で「11」のデータが代入される(ステップS426)。結果値Rdの各ビットはそれぞれ、図7に示した駆動波形W1,W2のオン・オフに対応している。一方、レベルデータLDが閾値thよりも小さいときには、大ドットは形成されないと決定されるとともに、中ドットや小ドットの形成の有無を決定するために、処理がステップS432に進められる。
ステップS432では、ハーフトーンモジュール99は、大ドット用のレベルデータLDに対して、ステップS410で読み出された中ドット用のレベルデータLdmを加算して、中ドット用の修正レベルデータLDmaを算出する(図11)。
ステップS435では、中ドット用の修正レベルデータLDmaと閾値thとの大小が比較される。閾値thは、大ドットのドットの形成の有無の決定に使用した閾値と同一の値である(図11)。この比較の結果、中ドット用の修正レベルデータLDmaが閾値thよりも大きいときには、ドットの形成を示す結果値Rdに2進数で「01」のデータが代入される(ステップS436)。一方、中ドット用の修正レベルデータLDmaが閾値thよりも小さいときには、中ドットは形成されないと決定されるとともに、小ドットの形成の有無を決定するために、処理がステップS452に進められる。
ステップS452では、ハーフトーンモジュール99は、中ドット用の修正レベルデータLDma(=大ドット用のレベルデータLD+中ドット用のレベルデータLdm)に対して、ステップS410で読み出された小ドット用のレベルデータLdsを加算して、小ドット用の修正レベルデータLDsaを算出する。
ステップS453では、着目画素に対して処理済みの他の複数の画素から拡散されている拡散誤差EDerrが読み込まれるとともに、小ドット用の修正レベルデータLDsaに加算される。これにより、誤差拡散法において、ドット形成の判断(ステップS455)に使用される補正データLDxが生成される。
ステップS455では、ハーフトーンモジュール99は、大中ドットの形成状態および補正データLDxと誤差拡散用閾値THedの大小関係に基づいて、小ドットの形成判断の対象となっている着目画素における小ドットの形成と非形成を決定する。具体的には、大中ドットのいずれについても非形成と判定され、かつ、補正データLDxが誤差拡散用閾値THedよりも大きいと判定された場合には、小ドットの形成が判定されて、処理がステップS456に進められる。一方、大中ドットの少なくとも一方が形成と判定されるか、あるいは補正データLDxが誤差拡散用閾値THed以下と判定された場合には、小ドットの非形成が決定されて、処理がステップS457に進められる。
ステップS456では、ドットの形成を示す結果値Rdに2進数で「10」(小ドットの形成)のデータが代入される。一方、ステップS457では、ドットの形成を示す結果値Rdに2進数で「00」(大中小ドットのいずれも非形成)のデータが代入される。このようにして、大中小ドットのすべての形成状態が決定されると、処理が誤差拡散処理(ステップS460)に進められる。
図12は、本発明の実施例における誤差拡散法のフローチャートを示す説明図である。この誤差拡散法は、大ドットや中ドットの形成状態を考慮して、小ドットの形成状態を決定し、これにより大中小ドットの相互間の分散性を向上させることができるという特徴を有している。具体的には、以下のような処理によって、このような特徴を実現している。
ステップS461では、ハーフトーンモジュール99は、大中小ドットのいずれかが形成されたか否かに応じて処理を分岐する。大中小ドットのいずれもが形成されていない場合には、処理がステップS462に進められる。一方、大中小ドットのいずれかが形成された場合には、処理がステップS463に進められる。
ステップS462では、ハーフトーンモジュール99は、補正データLDxから量子化誤差Errを算出する。量子化誤差Errは、補正データLDxに応じて表現されるべきレベルデータ(0〜255)と、ドットの形成によって現実に表現されるレベル(0あるいは255)の差として発生する量子化誤差である。ステップS462(大中小ドット非形成)において、量子化誤差Errが補正データLDxに等しくなっているのは、ドットの形成によって現実に表現されるレベルであるドット評価値Evsが「0」だからである。
ステップS463では、ハーフトーンモジュール99は、補正データLDxからドット評価値Evsを減ずることによって、量子化誤差Errを算出する。ドット評価値Evsは、本実施例では、大中小ドットのいずれが形成されても最大レベルの「255」とされている。このように、本実施例では、小ドットの形成状態だけでなく、大ドットや中ドットの形成状態を考慮して量子化誤差を算出するので、小ドットのみの相互間だけでなく、大中小ドットの相互間の分散性を向上させることができる。たとえば、補正データLDxのレベルが「223」で、大中小ドットのいずれかの形成によって現実に生じたとみなされるレベルが255であるとすると、量子化誤差Errは、「−32」(=223−255)となる。
ステップS468では、ハーフトーンモジュール99は、このようにして算出された量子化誤差Errを周囲の未処理の画素に拡散する。誤差の拡散は、本実施例では、周知のJarvis、Judice & Ninke型の誤差拡散マトリックスを使用して行われる。具体的には、着目画素の右隣の画素については、着目画素で生じた量子化誤差Err「−32」に対して誤差拡散全体マトリックスMaのうち右隣の画素に対応する係数「7/48」を乗じた値「−224/48」(=−32×7/48)が拡散される。さらに、着目画素の2つの右隣の画素については、着目画素で生じた量子化誤差Err「−32」に対して誤差拡散全体マトリックスMaのうち2つの右隣の画素に対応する係数「5/48」を乗じた値「−160/48」(=−32×5/48)が拡散される。
このようにして拡散された量子化誤差は、各未処理画素で蓄積されて拡散誤差EDerrとなって、各未処理画素が着目画素となったときに補正データLDxの生成に使用される(図9のステップS453)。
このようにして、全画素についてハーフトーン処理(図9)が完了すると、処理がステップS500(図8)に進められる。ステップS500では、各画素について決定された大中小のドットの形成状態に基づいて印刷データPDが生成される。
このように、本実施例は、比較的にドット密度が高い階調領域を表現する大中ドットについては、ドットの形成における物理的な相違を有するドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって印刷画像を生成する場合に、このような組合せに起因する画質の劣化を抑制できる特定のディザ法でドットの形成状態が決定され、引き続き、比較的にドット密度の低いハイライト領域を表現する小ドットについては、大中小ドットの相互間の分散性を向上させることができる誤差拡散法でドットの形成状態が決定されるので、上述の画質劣化を抑制しつつ大中小ドットの相互間の分散性の良いハーフトーン処理を実現している。
なお、本実施例では、大中小の3種類のドットが形成可能であることが想定されているが、たとえば2種類のドットあるいは4種類以上のドットが形成可能な場合にも適用可能である。さらに、本実施例では、大中小の3種類のドットのうち大中ドットについては、ディザ法で、小ドットについては誤差拡散法でハーフトーン処理が行われているが、たとえば大ドットについては、ディザ法で、中小ドットについては誤差拡散法でハーフトーン処理を行うように構成しても良い。また、上述の誤差拡散法は、特定のディザ法に限らず、広く一般的なディザ法と組み合わせても実現可能である。
また、本実施例では、ディザ法で大または中のドットの形成が決定された場合には、小ドットが形成されたとみなして誤差を拡散している。この結果、大きなサイズ側のドットと小さなサイズ側のドットとの相互間の分散性を考慮したハーフトーン処理を簡易に実現することができる。ただし、この分散性は、ドットサイズを考慮しないものである。一方、誤差拡散処理において、小ドットのドット記録率ではなくて、入力階調値を用いて処理を行うとともに、大中小ドットのドット評価値を入力階調値で表現するように構成しても良い。こうすれば、ドットサイズをも考慮してドットの分散性を向上させることができる。
C.本発明の実施例における最適化ディザマトリックスの生成方法:
図13は、ディザマトリックスの一部を概念的に例示した説明図である。図示したマトリックスには、横方向(主走査方向)に128要素、縦方向(副走査方向)に64要素、合計8192個の要素に、階調値1〜255の範囲から万遍なく選択された閾値が格納されている。なお、ディザマトリックスの大きさは、図13に例示したような大きさに限られるものではなく、縦と横の要素数が同じマトリックスも含めて種々の大きさとすることができる。
図14は、ディザマトリックスを使用したドット形成の有無の考え方を示す説明図である。図示の都合上、一部の要素についてのみ示されている。ドット形成の有無の決定では、図14に示す通り、画像データの階調値と、ディザマトリックス中で対応する位置に記憶されている閾値とが比較される。画像データの階調値の方がディザテーブルに格納された閾値よりも大きい場合にはドットが形成され、画像データの階調値の方が小さい場合にはドットが形成されない。図14中でハッチングを付した画素がドットの形成対象となる画素を意味している。このように、ディザマトリックスを用いれば、画像データの階調値とディザマトリックスに設定されている閾値とを比較するという単純な処理で、画素毎のドットの形成有無を判断することができるので、階調数変換処理を迅速に実施することが可能となる。さらに、画像データの階調値が決まると、各画素にドットが形成されるか否かは、もっぱらディザマトリックスに設定される閾値によって決まることからも明らかなように、組織的ディザ法では、ディザマトリックスに設定する閾値の格納位置によって、ドットの発生状況を積極的に制御することが可能である。
このように、組織的ディザ法は、ディザマトリックスに設定する閾値の格納位置によって、ドットの発生状況を積極的に制御することが可能なので、閾値の格納位置の設定を調整することによってドットの分散性その他の画質を制御することができるという特徴を有している。このことは、ディザマトリクスの最適化処理によってハーフトーン処理を多様な目標状態に対して最適化することが可能であることを意味している。
図15は、ディザマトリクスの調整の簡単な例として、ブルーノイズ特性を有するブルーノイズディザマトリクスの各画素に設定されている閾値の空間周波数特性を概念的に例示した説明図である。ブルーノイズマトリックスの空間周波数特性は、1周期の長さが1周期の長さが2画素付近の高い周波数領域に最も大きな周波数成分を有する特性となっている。このような空間周波数特性は、人間の視覚特性を考慮して設定されたものである。すなわち、ブルーノイズディザマトリクス、高周波領域において感度が低いという人間の視覚特性を考慮して、高周波領域に最も大きな周波数成分が発生するように閾値の格納位置が調整されたディザマトリックスである。
図15には、さらに、グリーンノイズマトリックスの空間周波数特性を破線の曲線として例示している。図示されているように、グリーンノイズマトリックスの空間周波数特性は、1周期の長さが2画素から十数画素の中間周波数領域に最も大きな周波数成分を有する特性となっている。グリーンノイズマトリックスの閾値は、このような空間周波数特性を有するように設定されていることから、グリーンノイズ特性を有するディザマトリックスを参照しながら各画素のドット形成の有無を判断すると、数ドット単位で隣接してドットが形成されながら、全体としてはドットの固まりが分散した状態で形成されることになる。いわゆるレーザープリンタなどのように、1画素程度の微細なドットを安定して形成することが困難なプリンタでは、こうしたグリーンノイズマトリックスを参照してドット形成の有無を判断することで、孤立したドットの発生を抑制することができる。その結果、安定した画質の画像を迅速に出力することが可能となる。逆に言えば、レーザープリンタなどでドットの形成有無を判断する際に参照されるディザマトリックスには、グリーンノイズ特性を有するように調整された閾値が設定されている。本実施例では、このような特性は、特許請求の範囲における「第1の所定の特性」に相当する。
図16は、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性である視覚の空間周波数特性VTF(Visual Transfer Function)を概念的に示した説明図である。視覚の空間周波数特性VTFを利用すれば、人間の視覚感度を視覚の空間周波数特性VTFという伝達関数としてモデル化することによって、ハーフトーン処理後のドットの人間の視覚に訴える粒状感を定量化することが可能となる。このようにして定量化された値は、粒状性指数と呼ばれる。式F1は、視覚の空間周波数特性VTFを表す代表的な実験式を示している。式F1中の変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。式F2は、粒状性指数を定義する式である。式F2中の係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。
このような人間の視覚に訴える粒状感の定量化は、人間の視覚系に対するディザマトリクスのきめ細かな最適化を可能とするものである。具体的には、ディザマトリックスに各入力階調値を入力した際に想定されるドットパターンに対してフーリエ変換を行ってパワースペクトルFSを求めるとともに、視覚の空間周波数特性VTFと乗算した後に全入力階調値で積分(式F2)することによって得ることができる粒状性指数をディザマトリクスの評価関数として利用することができる。この例では、ディザマトリクスの評価関数が小さくなるように閾値の格納位置を調整すれば最適化が図れることになる。
このような人間の視覚特性を考慮して設定されたブルーノイズディザマトリクスやグリーンノイズマトリックスといったディザマトリックスに共通するのは、いずれも印刷媒体上において人間の視覚感度が最も高い空間周波数の領域である1サイクル毎ミリメートルを中心周波数とした0.5サイクル毎ミリメートルから2サイクル毎ミリメートルまでの所定の低周波の範囲内の成分の平均値が小さくなるように設定されている点である。たとえば所定の低周波の範囲内の成分の平均値が少なくとも人間の視覚感度がほぼゼロとなる10サイクル毎ミリメートルの周波数を中心周波数とした5サイクル毎ミリメートルから20サイクル毎ミリメートルまでの範囲の成分の平均値よりも小さくなるような周波数特性を有するようにすれば、人間の視覚感度の高い領域において粒状性を抑制することができるので、人間の視覚感度に着目した効果的な画質の改善を行うことができることが発明者によって確認されている。
ただし、従来のディザマトリックスでは、印刷媒体上の共通の領域を複数回走査することによってインクドットを形成し、これにより画像を印刷することに起因する画質の劣化は考慮されていなかった。
図17は、本発明の実施例における印刷画像の生成方法の一例を示す説明図である。この画像形成方法の例では、説明を分かりやすくするために主走査と副走査を行いつつブラックインクのドットを印刷媒体上に形成することによって印刷画像が生成されるものとしている。主走査とは、印刷媒体に対して印刷ヘッド10(図3)を主走査方向に相対的に移動させる動作を意味する。副走査とは、印刷媒体に対して印刷ヘッド10を副走査方向に相対的に移動させる動作を意味する。印刷ヘッド10は、印刷媒体上にインク滴を吐出してインクドットを形成するように構成されている。印刷ヘッド10は、画素ピッチkの2倍の間隔で図示しない10個のノズルを装備している。
印刷画像の生成は、主走査と副走査を行いつつ以下のように行われる。パス1の主走査では、ラスタ番号が1、3、5、7、9、11、13、15、17、19の10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が1、3、5、7の画素にインクドットが形成される。主走査ラインとは、主走査方向に連続する画素によって形成される線を意味する。各丸は、ドットの形成位置を示している。各丸の中の数字は、同時にインクドットが形成される複数の画素から構成される画素グループを示している。パス1では、第1の画素グループに属する印刷画素にドットが形成される。
パス1の主走査が完了すると、副走査方向に画素ピッチの3倍の移動量Lsで副走査送りが行われる。一般には、印刷媒体を移動させることによって副走査送りは行われるが、本実施例では、説明を分かりやすくするために印刷ヘッド10が副走査方向に移動するものとしている。副走査送りが完了すると、パス2の主走査が行われる。
パス2の主走査では、ラスタ番号が6、8、10、12、14、16、18、20、22、24の10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が1、3、5、7の画素にインクドットが形成される。このようにして、パス2では、第2の画素グループに属する印刷画素にドットが形成される。なお、ラスタ番号が22、24の2本の主走査ラインは、図示が省略されている。パス2の主走査が完了すると、前述と同様の副走査送りが行われた後に、パス3の主走査が行われる。
パス3の主走査では、ラスタ番号が11、13、15、17、19の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6、8の画素にインクドットが形成される。パス4の主走査では、ラスタ番号が16、18、20の3本の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6、8の画素にインクドットが形成される。このようにして、ラスタ番号が15以降の副走査位置に隙間なくインクドットが形成可能であることが分かる。パス3とパス4では、それぞれ第3と第4の画素グループに属する印刷画素にドットが形成される。
このような印刷画像の生成を一定の領域に着目して観察すると、以下のように行われていることが分かる。たとえばラスタ番号が15〜19で画素位置番号が1〜8の領域を着目領域とすると、着目領域では以下のように印刷画像が形成されていることが分かる。
パス1では、着目領域において、ラスタ番号が1〜5で画素位置番号が1〜8の画素位置に形成されたインクドットと同一のドットパターンが形成されていることが分かる。このドットパターンは、第1の画素グループに属する画素に形成されるドットで形成されている。すなわち、パス1では、着目領域において、第1の画素グループに属する画素にドットが形成される。
パス2では、着目領域において、第2の画素グループに属する画素にドットが形成される。パス3では、着目領域において、第3の画素グループに属する画素にドットが形成される。パス4では、着目領域において、第4の画素グループに属する画素にドットが形成される。
このように、本実施例のモノクロ印刷では、第1〜第4の複数の画素グループの各々に属する印刷画素が、共通の印刷領域で相互に組み合わせられることによって印刷画像が形成されることが分かる。一方、カラー印刷では、第1〜第4の複数の画素グループの各々に、印刷ヘッド(図3)からC、Mz、Y、Kの各色のインクが吐出されることによって、同様のメカニズムでカラーの印刷画像が形成される。
図18は、本発明の実施例において複数の画素グループの各々に属する印刷画素が、共通の印刷領域で相互に組み合わせられることによって印刷媒体上に印刷画像が生成される様子を示す説明図である。図18の例では、印刷画像は、所定の中間階調(単色)の印刷画像である。ドットパターンDP1、DP1aは、第1の画素グループに属する複数の画素に形成されたドットパターンを示している。ドットパターンDP2、DP2aは、第1と第2の画素グループとに属する複数の画素に形成されたドットパターンを示している。ドットパターンDP3、DP3aは、第1〜第3の画素グループに属する複数の画素に形成されたドットパターンを示している。ドットパターンDP4、DP4aは、全画素グループに属する複数の画素に形成されたドットパターンを示している。
ドットパターンDP1、DP2、DP3、DP4は、従来技術のディザマトリックスを使用した場合におけるドットパターンである。ドットパターンDP1a、DP2a、DP3a、DP4aは、本願発明のディザマトリックスを使用した場合におけるドットパターンである。図18から分かるように、本願発明のディザマトリックスを使用した場合には、特にドットパターンの重畳が少ないドットパターンDP1a、DP2aにおいて、従来技術のディザマトリックスを使用した場合よりもドットの分散性が均一である。
従来技術のディザマトリックスには、画素グループという概念が無いため最終的に形成される印刷画像(図18の例ではドットパターンDP4)におけるドットの分散性にのみ着目して最適化が行われている。
しかし、本願発明者は、敢えてドットの形成過程におけるドットパターンに着目して印刷画像の画質の解析を行った。この解析の結果、ドットの形成過程におけるドットパターンの疎密に起因して、画像のむらが発生することが分かったのである。この画像のむらは、同一の主走査で形成される複数色のドットの重なり方が不均一であるため、複数色のドットが接触して滲む部分と、複数色のドットが離れていて滲まない部分とが、まだら状に発生することに起因して色むらが生じていることが発明者によって見いだされた。
このような色むらは、1回のパスで印刷画像を形成する場合においても発生し得る。しかし、色むらが印刷画像の全面で均一に発生しても人間の目には近くされにくい。均一に発生している故に、低周波成分を含む不均一な「むら」としてはインクの滲みが発生しないからである。
ところが、同一の主走査でほぼ同時にインクドットが形成される画素グループに形成されるドットパターンにおいて、インクの滲みで人間の目に認識されやすい低周波領域でむらが発生すると、顕著な画質劣化として顕在化することになる。このように、インクドットの形成によって印刷画像を形成する場合には、ほぼ同時にインクドットが形成される画素グループに形成されるドットパターンにも着目してディザマトリックスを最適化することが高画質化につながることを発明者によって初めて見いだされたのである。
さらに、インクの滲みだけでなく、インク凝集むらや光沢むら、ブロンズ現象といったインクの物理現象も画質の劣化として人間の目に顕著に知覚されることも本願発明者によって突き止められた。ブロンズ現象とは、インク滴の染料の凝集等によって、見る角度によって印刷表面がブロンズ色に呈色するなど、印刷用紙表面で反射される光の状態が変化する現象である。
さらに、従来技術のディザマトリックスでは、各画素グループの相互の位置関係が予め想定されたとおりになっていることを前提として最適化が図られているので、相互の位置関係がズレた場合には最適性が保証されず、顕著に画質が劣化する原因となっていた。しかし、本願発明のディザマトリックスによれば、各画素グループのドットパターンにおいてもドットの分散性が確保されているので、相互の位置関係のズレに対する高いロバスト性も確保できることが本願発明の発明者の実験によって初めて確認された。
さらに、この技術的思想は、印刷速度の高速化に伴って重要性が増していることも発明者によって突き止められた。印刷速度の高速化は、インクの吸収のための時間が十分に取られないうちに、次の画素グループのドットが形成されることにつながるからである。
このような観点から、本願発明者は、印刷媒体上の共通の領域を複数回走査することによってインクドットを形成し、これにより画像を印刷することに起因する画質の劣化を抑制することができるディザマトリックスの生成方法を創作した。
図19は、本発明の実施例におけるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャートである。実施例の生成方法では、印刷画像の形成過程において各主走査(パス)で形成されるドットの分散性を考慮して最適化を図ることができるように構成されている。この例では、説明を分かりやすくするために8行8列の小さなディザマトリックスを生成するものとしている。ディザマトリックスの最適性をあらわす評価としては、粒状性指数(式F2)が使用されるものとしている。
ステップS1100では、グループ化処理が行われる。グループ化処理とは、本実施例では、印刷画像の形成過程(図17)において、各主走査でドットが形成される複数の画素グループに対応する要素毎にディザマトリックスを分割する処理である。
図20は、本発明の実施例におけるグループ化処理が行われたディザマトリックスMを示す説明図である。このグループ化処理では、図17における4つの画素グループに分割されるものとしている。ディザマトリックスMの各要素に記載された数字は、各要素が属する画素グループを示している。たとえば1行1列の要素は、第1の画素グループ(図17)に属し、2行1列の要素は、第2の画素グループに属する。
図21は、本発明の実施例における4個の分割マトリックスM1〜M4を示す説明図である。分割マトリックスM1は、ディザマトリックスMの要素のうち第1の画素グループに属する画素に対応する複数の要素と、空欄となっている複数の要素である空欄要素とから構成されている。空欄要素は、入力階調値に拘わらず常にドットが形成されない要素である。分割マトリックスM2〜M4は、それぞれディザマトリックスMの要素のうち第2〜第4の画素グループに属する画素に対応する複数の要素と、空欄要素とから構成されている。
このようにして、ステップS1100のグループ化処理(図19)が完了すると、処理がステップS1200に進められる。
ステップS1200では、着目閾値決定処理が行われる。着目閾値決定処理とは、格納要素の決定対象となる閾値を決定する処理である。本実施例では、比較的に小さな値の閾値、すなわちドットの形成されやすい値の閾値から順に選択することによって閾値が決定される。このように、ドットが形成されやすい閾値から順に選択すれば、ドットの粒状性が目立つハイライト領域におけるドット配置をコントロールする閾値から順に格納される要素を固定していくことになるので、ドットの粒状性が目立つ比較的にドット密度が低い領域に対して大きな設計自由度を与えることができるからである。この例では、後述するように8個の閾値が既に決定済みで、9番目の閾値が決定されるものとする。
図22は、本発明の実施例におけるディザマトリックス評価処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS1310では、決定済み閾値の対応ドットがオンとされる。決定済み閾値とは、格納要素が決定された閾値を意味する。本実施例では、前述のようにドットの形成されやすい値の閾値から順に選択されるので、着目閾値にドットが形成される際には、決定済み閾値が格納された要素に対応する画素には必ずドットが形成されることになる。逆に、着目閾値にドットが形成される最も小さな入力階調値においては、決定済み閾値が格納された要素以外の要素に対応する画素にはドットは形成されないことになる。
図23は、ディザマトリックスMの1〜8番目にドットが形成されやすい閾値が格納された要素に対応する8個の画素の各々にドットが形成された様子を示す説明図である。このようにして構成されるドットパターンDpaは、9番目のドットをどの画素に形成すべきかを決定するために使用される。*印は、格納候補要素を示している。
ステップS1320(図22)では、格納候補要素選択処理が行われる。格納候補要素選択処理とは、評定マトリックスとして選択された分割マトリックスM1の要素の中から閾値の格納要素の候補となる格納候補要素を選択する処理である。この例では、*印が付された1行1列の格納要素が格納候補要素として選択されている。
格納候補要素の選択は、たとえばディザマトリックスMの閾値の格納要素として決定済みの8個の格納要素である決定済み要素を除く他の格納要素の全てを順に選択するようにしても良いし、あるいは決定済み要素に隣接しない要素が存在する限り、これを優先的に選択するようにしても良い。
ステップS1330(図22)では、選択された格納候補要素にドットがオンされたとの仮定がなされる。これにより、格納候補要素に9番目にドットが形成されやすい閾値が格納されたときのディザマトリックスMの評価を行うことが可能となる。
図24は、ドットパターンDpaが形成された状態を数値化したマトリックス、すなわちドット密度を定量的に表したドット密度マトリックスDdaを示す説明図である。数字0は、ドットが形成されていないことを意味し、数字1は、ドットが形成されていること(ドットが形成されていると仮定されている場合を含む)を意味する。
図25は、ディザマトリックスMの1〜8番目にドットが形成されやすい閾値が格納された要素のうち第1〜第4の画素グループの各々に属する印刷画素に形成される4つのドットパターンDp1、Dp2、Dp3、Dp4を示す説明図である。換言すれば、ドットパターンDpa(図23)から第1〜第4の画素グループの各々に属する印刷画素に形成されるドットパターンを抜き出したものである。図25には、ドットパターンDpa(図23)と同様に*印で格納候補要素に対応する印刷画素も示されている。図26は、4つのドットパターンDp1、Dp2、Dp3、Dp4のそれぞれに対応するドット密度マトリックスDd1、Dd2、Dd3、Dd4を示す説明図である。
このようにして5つのドット密度マトリックスDda、Dd1、Dd2、Dd3、Dd4が決定されると、処理が評価値決定処理(ステップS1340)に進められる。
図27は、本発明の実施例における評価値決定処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。ステップS1342では、全画素を評定として粒状性指数が算出される。具体的には、ドット密度マトリックスDda(図24)に基づいて、式F2(図16)によって算出される。ステップS1344では、第1〜第4の画素グループを評定として粒状性指数が算出される。具体的には、ドット密度マトリックスDda、Dd1、Dd2、Dd3、Dd4の各々に基づいて、式F2(図16)によって同様に算出される。
ステップS1348では、重み付け加算処理が行われる。重み付け加算処理とは、算出された各粒状性指数の各々に重み付けを行うとともに加算する処理である。
図28は、重み付け加算処理に使用する計算式を示す説明図である。この計算式から分かるように、評価値Eは、全画素についての粒状性指数Ga(ステップS1342で算出)に重み付け係数Wa(たとえば4)を乗じた値と、第1〜第4の画素グループの各々についての4つの粒状性指数G1、G2、G3、G4(ステップS1344で算出)の和に重み付け係数Wg(たとえば1)を乗じた値と、の和として決定される。
このような格納候補要素選択処理(ステップS1320)から評価値決定処理(ステップS1340)への一連の処理(図22)は、全ての格納候補要素について行われる(ステップS1350)。このようにして、全ての格納候補要素について、それぞれの評価値が決定されると、処理がステップS1400(図19)に進められる。
ステップS1400では、格納要素決定処理が行われる。格納要素決定処理では、最も評価値が小さな格納候補要素が着目閾値の格納要素として決定される。
このような処理(ステップS1200〜ステップS1400)は、最終閾値まで、閾値を変更しつつ繰り返される(ステップS1500)。最終閾値は、最もドットが形成されにくい最大閾値としても良いし、あるいは予め定められた所定の閾値範囲の中の最大閾値としても良い。この点は、最初に評価対象となる閾値についても同様である。すなわち、このような最適化は、一部の閾値に限定して適用することもできる。
このように、本実施例では、各主走査でそれぞれ形成される複数のドットパターンの粒状性指数が小さくなるようにディザマトリックスMが最適化されるので、各主走査でそれぞれ形成される複数のドットパターンの相互間で発生するインクの物理現象に起因する画質の劣化を抑制することができる。この実施例における粒状性指数が低いという特性は、特許請求の範囲における「第1の所定の特性」に相当する。
D.変形例:
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、本発明は、以下のような変形例が適用可能である。
D−1.上述の実施例では、ディザマトリックスの評価尺度として粒状性指数が使用されているが、たとえば本願発明者によって創作されたRMS粒状度を使用するようにしても良い。RMS粒状度とは、ドット密度値に対して、所定のローパスフィルタを用いてローパスフィルタ処理を行うとともに、ローパスフィルタ処理がなされた密度値の標準偏差を算出することによって決定することができる。さらに、ローパスフィルタ処理後のドット密度が低い画素に対応する要素に閾値を順に格納するポテンシャル法を利用するようにしても良い。この変形例における粒状性指数が低いという特性は、特許請求の範囲における「第1の所定の特性」に相当する。
D−2.上述の実施例では、1個の閾値の格納要素毎に評価処理が行われているが、たとえば複数個の閾値の格納要素を同時に決定するような場合にも本発明は、適用することができる。具体的には、たとえば上述の実施例において6番目までの閾値の格納要素が決定されていて、7番目と8番目の閾値の格納要素を決定するような場合にも7番目の閾値の格納要素にドットが追加された場合の評価値と、7番目と8番目の閾値の格納要素にそれぞれドットが追加された場合の評価値とに基づいて格納要素を決定するようにしても良いし、あるいは7番目の閾値の格納要素のみを決定するようにしても良い。
D−3.上述の実施例では、粒状性指数やRMS粒状度に基づいてディザマトリックスの最適性を評価しているが、たとえばドットパターンに対してフーリエ変換を行うとともにVTF関数を用いてディザマトリックスの最適性を評価するように構成しても良い。具体的には、ゼロックスのDooleyらが用いた評価尺度(Grainess scale:GS値)をドットパターンに適用して、GS値によってディザマトリックスの最適性を評価するように構成しても良い。ここで、GS値とは、ドットパターンに対して2次元フーリエ変換を含む所定の処理を行って数値化するとともに、視覚の空間周波数特性VTFを乗じるフィルタ処理を行った後に積分することによって得ることができる粒状性評価値である。この変形例におけるGS値が小さいという特性は、特許請求の範囲における「第1の所定の特性」に相当する。
D−4.上述の実施例では、閾値の格納要素を順に決定するように構成されているが、たとえば予め準備された初期状態としてのディザマトリックスを調整することによってディザマトリックスを生成するように構成しても良い。たとえば、入力諧調値に応じて画素毎のドットの形成の有無を決定するための複数の閾値を各要素に格納する初期状態としてのディザマトリックスを準備するとともに、各要素に格納された複数の閾値の一部を、ランダムにあるいは組織的に決定された方法で他の要素に格納された閾値と入れ替え、その入替の前後の評価値に基づいて入れ替えるか否かを決定してディザマトリックスを調整して生成するようにしても良い。
D−5.上述の実施例では、ディザマトリックスに設定されている閾値と画像データの階調値とを画素毎に比較することによって、画素毎にドット形成の有無を判断しているが、たとえば閾値と階調値の和を固定値と比較してドット形成の有無を判断するようにしても良い。さらに、閾値を直接使用することなく閾値に基づいて予め生成されたデータと、階調値とに応じてドット形成の有無を判断するようにしても良い。本発明のハーフトーン処理は、一般に、各画素の階調値と、ディザマトリックスの対応する画素位置に設定された閾値とに応じてドットの形成の有無を判断するものであれば良い。
D−6.上述の実施例では、ディザマトリックスから閾値を読み出してドットの形成有無を決定しているが、本発明は、たとえば特開2005−236768号公報や特開2005−269527号公報に開示されているようなドットの形成状態を特定するための中間データ(個数データ)を使用するような技術にも適用可能である。
D−7.上述の実施例では、大中小の3種類のドットが形成可能であることが想定されているが、たとえば2種類のドットあるいは4種類以上のドットが形成可能な場合にも適用可能である。さらに、本実施例では、大中小の3種類のドットのうち大中ドットについては、ディザ法で、小ドットについては誤差拡散法でハーフトーン処理が行われているが、たとえば大ドットについては、ディザ法で、中小ドットについては誤差拡散法でハーフトーン処理を行うように構成しても良い。なお、中小ドットについては誤差拡散法でハーフトーン処理を行う場合には、2つの閾値を用いて3値化する誤差拡散法を利用しても良い。
D−8.上述の実施例の誤差拡散法では、印刷媒体上の共通の領域を複数回走査することによってインクドットを形成し、これにより画像を印刷することに起因する画質の劣化は考慮されていない。しかし、誤差拡散法についても、このような画質の劣化を抑制するために複数のドット群のいずれもが所定の特性(良好なドット分散性)を有するように構成しても良い。このような誤差拡散法(図29)は、本願発明者によって初めて創作されたものであり、図9の誤差拡散法のステップS453(補正データ生成処理)とS455(ドット形成判断処理)とステップS460(誤差拡散処理)とを、それぞれステップS453aとステップS455aとステップS460aに入れ替えることによって実現可能である。
図30は、本発明の変形例における誤差拡散処理(ステップS460a)のフローチャートを示す説明図である。この誤差拡散処理は、複数のドット群のいずれにも所定の特性を持たせるためのグループ誤差拡散(枠線内の処理)の処理が追加されている点で実施例の誤差拡散処理(図12)と相違する。グループ誤差拡散処理は、3つの工程(ステップS464〜S466)を備えている。
ステップS464では、ハーフトーンモジュール99は、小ドット用の修正レベルデータLDsaとグループ拡散誤差EDergとを加算することによって、ステップS462(図12)と同様にグループ誤差Ergを生成する。グループ拡散誤差EDergの生成方法については後述する。
ステップS465では、ハーフトーンモジュール99は、小ドット用の修正レベルデータLDsaとグループ拡散誤差EDergとを加算した値からドット評価値Evsを減ずることによって、ステップS463(図12)と同様にグループ誤差Ergを算出する。
ステップS466では、ハーフトーンモジュール99は、グループ誤差Ergを周囲の同一画素グループに属する未処理画素に拡散して、グループ拡散誤差EDergを生成する。このような誤差の拡散は、誤差拡散全体マトリックスMaの代わりに誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1を使用して拡散誤差EDerrと同様の処理を行うことによって実現することができる。
図31は、着目画素と同一の画素グループへの追加的な誤差拡散を行うための誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1を示す説明図である。誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1は、各主走査でドットが形成される第1〜第4の複数の画素グループのうち着目画素と同一の画素グループに誤差を追加的に拡散するための誤差拡散マトリックスである。4個の分割マトリックスM1〜M4は、第1〜第4の複数の画素グループの位置関係を表すために示されたものであり、ディザの最適化処理において使用されたマトリックスと同一である(図21)。
たとえば着目画素が第1の画素グループに属する場合には、分割マトリックスM1で「1」の値が格納された要素に対応する画素に誤差が拡散されることになる。誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1は、このような画素に誤差を拡散するように誤差拡散のための係数が格納された誤差拡散マトリックスとして構成されている。一方、着目画素が同一の主走査(パス)で形成される第2〜第4の画素グループに属する場合においても、着目画素と他の画素の相対的な位置関係が同じであるため、同一の誤差拡散マトリックスが利用可能であることが分かる。
このように、本実施例では、誤差拡散全体マトリックスMaによる誤差拡散によって最終的なドットパターンに所定の特性を持たせるとともに、誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1による誤差拡散によって複数の画素グループの各々のドットパターンに所定の特性を持たせるように誤差が拡散されている。
このようにして生成されたグループ拡散誤差EDergおよび拡散誤差EDerrは、ステップS453a(図29)で、変形例におけるドット形成の判断処理(図29のステップS455a)に使用される補正データLDxgaの生成に利用される。
ステップS453a(図29)では、ハーフトーンモジュール99は、補正データLDxgaを生成する。補正データLDxgaは、小ドット用の修正レベルデータLDsaと加重平均誤差EDergaとの和として算出される。加重平均誤差EDergaは、グループ拡散誤差EDergと拡散誤差EDerrの重み付き平均値として算出される。本変形例では、一例として拡散誤差EDerrとグループ拡散誤差EDergの重み付けをそれぞれ「4」と「1」としている。加重平均誤差EDergaは、拡散誤差EDerrに重み付け「4」を乗じた値と、グループ拡散誤差EDergに重み付け「1」を乗じた値の和を、重み付けの総和「5」で除した値として算出される。
このように、本変形例では、全画素における誤差拡散処理と、同一画素グループに属する画素のみにおける誤差拡散処理とを独立して行うことによって、全画素に形成されるドットの分散性と、同一画素グループに属する画素のみに形成されるドットの分散性とを向上させることができる。これにより、印刷媒体上の共通の領域を複数回走査することによってインクドットを形成し、これにより画像を印刷することに起因する画質の劣化を抑制することができる。
ただし、全画素を対象とする誤差拡散と各画素グループを対象とする誤差拡散のいずれもが大域的に誤差がゼロとなることを考慮して、両者の誤差拡散を同一の誤差拡散バッファ(図示せず)で処理するようにしても良い。具体的には、実施例の処理(図9)において、誤差拡散マトリックスMa(図12)の代わりに、図32に示されるような誤差拡散合成マトリックスMg3を使用して、誤差拡散処理を行うことによって簡易に実現可能である。
誤差拡散合成マトリックスMg3は、全ドットの分散性の向上のための誤差拡散マトリックスMa(図12)と、各画素グループに形成されるドットの分散性向上のためのグループマトリックスMg1aとを合成することによって生成される。グループマトリックスMg1aは、誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1(図31)に対して、上述の重み付け処理がなされたマトリックスである。
本発明の実施例における印刷システムの構成を示すブロック図。 カラープリンタ20の概略構成図。 印刷ヘッド10、20の下面におけるノズル配列を示す説明図。 ノズルNzとピエゾ素子PEの構造を示す説明図。 インクが吐出される際のノズルNzの2種類の駆動波形と吐出される2つのサイズのインク滴IPs、IPmとの関係を示した説明図。 インクが吐出される際のノズルNzの2種類の駆動波形と吐出される2つのサイズのインク滴IPs、IPmとの関係を示した説明図。 小インク滴IPsと中インク滴IPmとを用いて大中小の3つのサイズのドットを同一位置に形成する様子を示す説明図。 本発明の実施例における印刷データ生成処理のルーチンを示すフローチャート。 本発明の実施例におけるハーフトーン処理の流れを示すフローチャート。 大中小の3つのサイズのドットのレベルデータの決定に利用される記録率テーブルDTを示す説明図。 ディザ法によるドットのオン・オフ判定の考え方の一例を示す説明図。 本発明の実施例における誤差拡散法のフローチャートを示す説明図。 ディザマトリックスの一部を概念的に例示した説明図。 ディザマトリックスを使用したドット形成の有無の考え方を示す説明図。 ブルーノイズ特性を有するブルーノイズディザマトリクスの各画素に設定されている閾値の空間周波数特性を概念的に例示した説明図。 人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性である視覚の空間周波数特性VTF(Visual Transfer Function)を概念的に示した説明図。 本発明の実施例における印刷画像の生成方法の一例を示す説明図。 本発明の実施例において複数の画素グループの各々に属する印刷画素が、共通の印刷領域で相互に組み合わせられることによって印刷媒体上に印刷画像が生成される様子を示す説明図。 本発明の実施例におけるディザマトリックスの生成方法の処理ルーチンを示すフローチャート。 本発明の実施例におけるグループ化処理が行われたディザマトリックスMを示す説明図。 本発明の実施例における4個の分割マトリックスM1〜M4を示す説明図。 本発明の実施例におけるディザマトリックス評価処理の処理ルーチンを示すフローチャート ディザマトリックスMの1〜8番目にドットが形成されやすい閾値が格納された要素に対応する8個の画素の各々にドットが形成された様子を示す説明図。 ドットパターンDpaが形成された状態を数値化したマトリックス、すなわちドット密度を定量的に表したドット密度マトリックスDdaを示す説明図。 ディザマトリックスMの1〜8番目にドットが形成されやすい閾値が格納された要素のうち第1〜第4の画素グループの各々に属する印刷画素に形成される4つのドットパターンを示す説明図。 4つのドットパターンのそれぞれに対応するドット密度マトリックスを示す説明図。 本発明の実施例における評価値決定処理の処理ルーチンを示すフローチャート。 本発明の実施例の重み付け加算処理に使用する計算式を示す説明図。 本発明の変形例における誤差拡散法のフローチャートを示す説明図。 本発明の変形例における誤差拡散処理のフローチャートを示す説明図。 着目画素と同一の画素グループへの追加的な誤差拡散を行うための誤差拡散同一主走査グループマトリックスMg1を示す説明図。 本発明の他の変形例における誤差拡散マトリックスを示す説明図。
符号の説明
10、12、251、252…印刷ヘッド
20、200L…カラープリンタ
22…モータ
24…キャリッジモータ
25…ローラ
30…キャリッジ
32…操作パネル
40…制御回路
56…コネクタ
60…印刷ヘッドユニット
90…コンピュータ
91…ビデオドライバ
95…アプリケーションプログラム
96…プリンタドライバ
97…解像度変換モジュール
98…色変換モジュール
99…減色モジュール
100…印刷データ生成モジュール
M…ディザマトリックス
M1…分割マトリックス
M2…分割マトリックス
M3…分割マトリックス
M4…分割マトリックス
EB1〜EB4…要素ブロック
DP1、DP1a…ドットパターン
DP2、DP2a…ドットパターン
DP3、DP3a…ドットパターン
DP4、DP4a…ドットパターン

Claims (11)

  1. 印刷媒体上に印刷を行う印刷装置であって、
    元画像を構成する各画素の入力階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成部と、
    前記印刷媒体上にインク量の異なるN種類(Nは2以上の整数)のインク滴を選択的に吐出することにより1画素の領域にサイズが異なる前記N種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、前記ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって、前記ドットデータに応じて前記印刷画像を生成する印刷部と、
    を備え、
    前記ドットデータ生成部は、前記N種類のドットのうち小さなサイズ側のドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記N種類のドットのうち大きなサイズ側のドットについては前記ドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する印刷装置。
  2. 請求項1記載の印刷装置であって、
    前記誤差拡散法は、前記大きなサイズ側のドットの形成状態と前記小さなサイズ側のドットの形成状態とに応じて誤差を拡散する印刷装置。
  3. 請求項2記載の印刷装置であって、
    前記誤差拡散法は、前記大きなサイズ側のドットの形成状態に応じて、前記大きなサイズ側のドットが形成された場合には、前記小さなサイズ側のドットが形成されたとみなして誤差を拡散する印刷装置。
  4. 請求項1または3に記載の印刷装置であって、
    前記第1の所定の特性は、ブルーノイズ特性とグリーンノイズ特性のいずれか一方である、印刷装置。
  5. 請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷装置であって、
    前記誤差拡散法は、前記ドット群の各々のいずれもが第2の所定の特性を有するように設定されている、印刷装置。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷装置であって、
    前記ドット群の各々は、前記大きなサイズ側のドットについては、いずれも印刷媒体上において1サイクル毎ミリメートルを中心周波数とした0.5サイクル毎ミリメートルから2サイクル毎ミリメートルまでの所定の低周波の範囲内の成分の平均値が、10サイクル毎ミリメートルの周波数を中心周波数とした5サイクル毎ミリメートルから20サイクル毎ミリメートルまでの範囲の成分の平均値よりも小さくなるような周波数特性を有している、印刷装置。
  7. 請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置であって、
    前記印刷部は、1画素の領域に最もサイズが大きな大ドット、最もサイズが小さな小ドット、および前記大ドットよりもサイズが小さく前記小ドットよりもサイズが大きな中ドットの3種類のドットを形成可能であり、
    前記ドットデータ生成部は、前記小ドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記大ドットと前記中ドットについては前記ディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する印刷装置。
  8. 請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷装置であって、
    前記印刷部は、1画素の領域に最もサイズが大きな大ドット、最もサイズが小さな小ドット、および前記大ドットよりもサイズが小さく前記小ドットよりもサイズが大きな中ドットの3種類のドットを形成可能であり、
    前記ドットデータ生成部は、前記小ドットと前記中ドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行し、前記大ドットについては前記ディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する印刷装置。
  9. 印刷媒体上に印刷を行う印刷方法であって、
    元画像を構成する各画素の入力階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成工程と、
    前記印刷媒体上にインク量の異なるN種類(Nは2以上の整数)のインク滴を選択的に吐出することにより1画素の領域にサイズが異なる前記N種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、前記ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって、前記ドットデータに応じて前記印刷画像を生成する印刷工程と、
    を備え、
    前記ドットデータ生成工程は、
    前記小さなサイズ側のドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行する工程と、
    前記大きなサイズ側のドットについては前記ドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する工程と、
    を含む印刷方法。
  10. 印刷媒体上に印刷画像を形成して印刷物を生成する方法であって、
    元画像を構成する各画素の入力階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成工程と、
    前記印刷媒体上にインク量の異なるN種類(Nは2以上の整数)のインク滴を選択的に吐出することにより1画素の領域にサイズが異なる前記N種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、前記ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって、前記ドットデータに応じて前記印刷画像を生成する工程と、
    を備え、
    前記ドットデータ生成工程は、
    前記小さなサイズ側のドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行する工程と、
    前記大きなサイズ側のドットについては前記ドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する工程と、
    を含む印刷物生成方法。
  11. 印刷媒体上に印刷を行う印刷部に供給すべき印刷データをコンピュータに生成させるためのコンピュータプログラムであって、
    元画像を構成する各画素の入力階調値を表す画像データに対してハーフトーン処理を行うことによって、前記印刷媒体上に形成されるべき印刷画像の各印刷画素へのドットの形成状態を表すドットデータを生成するドットデータ生成機能を前記コンピュータに実現させるプログラムを備え、
    前記印刷部は、前記印刷媒体上にインク量の異なるN種類(Nは2以上の整数)のインク滴を選択的に吐出することにより1画素の領域にサイズが異なる前記N種類のドットを形成可能な印刷ヘッドを有し、前記ドットの形成において物理的な相違が想定された複数の画素グループ毎に形成されるドット群の各々を共通の印刷領域で相互に組み合わせることによって、前記ドットデータに応じて前記印刷画像を生成し、
    を備え、
    前記ドットデータ生成機能は、
    前記小さなサイズ側のドットについては誤差拡散法によって前記ハーフトーン処理を実行する機能と、
    前記大きなサイズ側のドットについては前記ドット群の各々のいずれもが第1の所定の特性を有するようにハーフトーン処理の条件が設定されたディザ法によって前記ハーフトーン処理を実行する機能と、
    を含む、コンピュータプログラム。
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