JP2008081528A - エポキシ樹脂粉体塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 本来の要求特性を維持しつつ、水酸化カリウムなどの電解液による劣化が起き難く、高い絶縁性を有する絶縁皮膜を形成するエポキシ樹脂粉体塗料を提供する。
【解決手段】 エポキシ樹脂(A)、硬化剤としてジシアンジアミドないしはその誘導体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子(D)およびシリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(E)を含有し、好ましくはエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が600〜2200であり、更に前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、前記ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)の硬化剤当量の比率は、0.2〜1.0であり、前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、前記ヒドラジド化合物(C)の硬化剤当量の比率は、0.6〜1.6であることが好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】 エポキシ樹脂(A)、硬化剤としてジシアンジアミドないしはその誘導体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子(D)およびシリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(E)を含有し、好ましくはエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が600〜2200であり、更に前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、前記ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)の硬化剤当量の比率は、0.2〜1.0であり、前記エポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基に対する、前記ヒドラジド化合物(C)の硬化剤当量の比率は、0.6〜1.6であることが好ましい。
【選択図】 なし
Description
本発明は、エポキシ樹脂粉体塗料に関するものである。
エポキシ樹脂粉体塗料は、主にエポキシ樹脂、硬化剤、顔料および無機充填剤等で構成されており、電気的特性、機械的特性、熱時特性に優れ、従来の溶剤型塗料と比較して、塗料中に溶剤を含有しないため、低公害で作業環境性にも優れたものであること、塗装直後でも使用できること、多層の重ね塗りが可能で塗膜厚みを厚くできること、比較的安価であること、塗装後に余剰分の塗料を回収し再利用できることなどの利点から、電子部品、OA機器、家電製品、建材、自動車部品等の絶縁保護装飾用塗料や防錆用塗料として需要が大きい(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。
近年になり自動車部品業界では、環境対応のためハイブリッド自動車などの開発が盛んに行われている。このことから従来にない用途での部品が必要となっており、ハイブリッド自動車などのバッテリー構成部品への絶縁粉体塗料の開発が要求されている。バッテリー構成部品は金属性であるため電気的絶縁を行う必要があり、また、バッテリーには水酸化カリウムなどの電解液が使用されることから電解液による塗膜の劣化を抑制する絶縁材料が必要とされている。絶縁しようとする金属の形状が角棒のようなエッジが尖ったものになると、平坦部に比べエッジ部の膜厚は薄くなり、水酸化カリウムなどの電解液に対して塗膜の劣化を抑制しきれず絶縁不良を起こす可能性がある。このためエッジ部では必要な膜厚が得られる粉体塗料の開発が望まれている。平坦部での膜厚に対するエッジ部での膜厚の比率をエッジカバー率と呼び、このエッジカバー率の高い粉体塗料が市場ニーズとなっている。
新保正樹著,「エポキシ樹脂ハンドブック」,日刊工業新聞社
室井宗一、石村秀一共著,「入門エポキシ樹脂」,新高分子文庫
本発明は、本来の要求特性を維持しつつ、これまでより高いエッジカバー率を有し、水酸化カリウムなどの電解液による劣化を抑制する絶縁被膜を形成させることができるエポキシ樹脂粉体塗料を得ることを目的とするものである。
このような目的は、下記の本発明(1)〜(6)により達成される。
(1) 下記成分を必須成分として含有するエポキシ粉体塗料。
(A)エポキシ樹脂、
(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体、
(C)ヒドラジド化合物
(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子
(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(E)
(2) 前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が600〜2200である(1)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(3)(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)の当量比は、0.2〜1.0である(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(4)(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(C)ヒドラジド化合物の当量比は、0.6〜1.6である(1)ないし(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(5) エポキシ粉体塗料総重量に対する(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.1〜1.0重量%、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.05〜0.5重量%である(1)ないし(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(6) (D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子及び(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径がともに1〜100nmである(1)ないし(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(1) 下記成分を必須成分として含有するエポキシ粉体塗料。
(A)エポキシ樹脂、
(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体、
(C)ヒドラジド化合物
(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子
(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(E)
(2) 前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が600〜2200である(1)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(3)(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)の当量比は、0.2〜1.0である(1)または(2)に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(4)(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(C)ヒドラジド化合物の当量比は、0.6〜1.6である(1)ないし(3)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(5) エポキシ粉体塗料総重量に対する(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.1〜1.0重量%、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.05〜0.5重量%である(1)ないし(4)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
(6) (D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子及び(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径がともに1〜100nmである(1)ないし(5)のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
本発明によれば、水酸化カリウムなどの電解液による劣化を抑制する絶縁皮膜を形成することができるエポキシ樹脂粉体塗料を提供することができる。
また、本発明によれば、バッテリーボックスを固定する際に用いられる電解液による劣化を抑制できるバッテリー固定バンドの被覆に好適なエポキシ樹脂粉体塗料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、自動車部品に絶縁皮膜を形成させる際の平坦部の被膜厚さに比較してエッジ部の被膜厚さが薄くなるという潜在的な問題点を、ビニルシラン処理、シリコーンオイル処理された2種類の疎水性シリカ微粒子を配合することで解決したエポキシ樹脂粉体塗料を提供することができる。
また、本発明によれば、バッテリーボックスを固定する際に用いられる電解液による劣化を抑制できるバッテリー固定バンドの被覆に好適なエポキシ樹脂粉体塗料を提供することができる。
さらに、本発明によれば、自動車部品に絶縁皮膜を形成させる際の平坦部の被膜厚さに比較してエッジ部の被膜厚さが薄くなるという潜在的な問題点を、ビニルシラン処理、シリコーンオイル処理された2種類の疎水性シリカ微粒子を配合することで解決したエポキシ樹脂粉体塗料を提供することができる。
本発明のエポキシ樹脂粉体塗料(以下、単に「粉体塗料」ということがある)は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤としてジシアンジアミドないしはその誘導体(B)、ヒドラジド化合物(C)、ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子(D)およびシリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(E)を必須成分とすることを特徴とし、また本発明のバッテリー固定バンド被覆は本発明のエポキシ樹脂粉体塗料からなることを特徴とする。
本発明の粉体塗料に用いられる上記(A)エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独又は併用して使用することが出来る。これらの中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂(特にビスフェノールA型エポキシ樹脂)を用いた場合は、塗膜が機械的特性、電気的特性に優れたものになり好ましい。
上記(A)エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、数平均分子量で1200〜2900が好ましく、更に1300〜2000が好ましい。分子量が上記範囲内であると、特に塗装時の表面平滑性、強度、常温保管に優れる。
上記分子量は、例えばGPCなどで測定することができる。
上記分子量は、例えばGPCなどで測定することができる。
上記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、600〜2200が好ましく、更に800〜1500が好ましい。上記範囲内であると、十分な可とう性及び良好な塗装性を得ることができる。エポキシ当量が上記下限値より小さくなると塗装の際のエッジカバー性、可とう性が低下する場合がある。また上記上限値より大きくなると平滑性が低下することがある。
上記(A)エポキシ樹脂の配合量は、特に限定されないが、上記粉体塗料全体の40〜97重量%が好ましく、更に60〜95重量%が好ましい。配合量が上記範囲内であると、特に塗装外観や耐アルカリ性に優れる。
本発明の粉体塗料に用いられる(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体は、特に限定されないが、例えば、ジシアンジアミド、ジシアンジアミジン、グアニジン、ビグアニド、トリグアニド、テトラグアニド、ペンタグアニド、ビグアニジンなどが挙げられる。この中でも、ジシアンジアミドを用いると特に金属密着性および耐アルカリ性を向上させることができる。
上記(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体の配合量は特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体
の硬化剤当量の比率(B/A)として、0.2〜1.0が好ましい。更に好ましくは0.4〜0.8である。上記比率が上記下限値未満では十分な密着性が得られない場合がある。また上記上限値を越えると耐アルカリ性が低下する場合がある。
の硬化剤当量の比率(B/A)として、0.2〜1.0が好ましい。更に好ましくは0.4〜0.8である。上記比率が上記下限値未満では十分な密着性が得られない場合がある。また上記上限値を越えると耐アルカリ性が低下する場合がある。
本発明の粉体塗料に用いられる(C)ヒドラジド化合物は、特に限定されないが、例えば、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジドなどが挙げられる。この中でもアジピン酸ジヒドラジドを用いると、金属密着性および耐アルカリ性が向上するため好ましい。
上記(C)ヒドラジド化合物の配合量は特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(C)ヒドラジド化合物の硬化剤当量の比率(C/A)を0.6〜1.6とすることが好ましい。更に好ましくは0.8〜1.4である。上記比率が上記下限値未満では、十分な耐アルカリ性が得られない場合がある。また上記上限値を越えると、十分な金属密着性が得られない場合がある。
本発明の粉体塗料は、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体および(C)ヒドラジド化合物を併用することで、水酸化カリウムなどの電解液に劣化しない絶縁皮膜を形成することができる粉体塗料を提供することができる。
このメカニズムは明確ではないが、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体は良好な金属密着性を有しており、また(C)ヒドラジド化合物は優れた耐水性を有しているとされている。そのためこれらを共に使用することにより粉体塗料の水酸化カリウムなどの電解液に対する耐久性が向上するものと推測される。
このメカニズムは明確ではないが、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体は良好な金属密着性を有しており、また(C)ヒドラジド化合物は優れた耐水性を有しているとされている。そのためこれらを共に使用することにより粉体塗料の水酸化カリウムなどの電解液に対する耐久性が向上するものと推測される。
本発明の粉体塗料に用いる(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子および(E)シリコーンオイルで処理された疎水性シリカ微粒子の2種類の疎水性シリカ微粒子を含有することを特徴とする。
本発明の粉体塗料に用いる(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子を添加することにより、静電塗装時の帯電量が増大し、被塗装物エッジ部への付着性が大幅に向上する。また、本発明の粉体塗料に用いる(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子は、塗装粉体が熱溶融する際にチキソ剤として働くため、ゲル化状態において増粘性を高めることができる。このため溶融したエポキシ樹脂の平坦部への広がりを抑えることができエッジ部での絶縁被膜の厚さを高位で安定させることができる。また疎水性シリカ微粒子は無機粒子であるためエポキシ樹脂の硬化を阻害することや硬化後の特性に影響を与えることも無いと考えられるため樹脂組成の制限を受けない利点もある。
本発明の粉体塗料に用いる(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子の処理剤としてはトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン等があげられ、好ましくはトリエトキシビニルシラン処理シリカ微粒子である。
本発明の粉体塗料に用いる(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子の添加量は、特に限定されないが粉体塗料全体の0.1重量%〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.2重量%〜0.6重量%である。前記下限値未満ではエッジ部位への付着性が低く、前記上限値を超えるとシリカが多すぎるため塗装物への付着性能が低下する。
本発明の粉体塗料に用いる(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の処理剤としてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。好ましいくはジメチルシリコーンオイル処理シリカ微粒子である。
本発明の粉体塗料に用いる(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の添加量は、特に限定されないが粉体塗料全体の0.05重量%〜1.0重量%が好ましく、さらに好ましくは0.1重量%〜0.3重量%である。前記下限値未満では増粘剤としての効果が低く、前記上限値を超えると溶融時のレベリング性が低下し絶縁被膜を形成する際表面がきれいに仕上がらないこともあり好ましくない。
本発明の粉体塗料に用いる(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径は1〜100nmであることが好ましい。疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径が前記下限値未満では、粒子の凝集が起こり易くなり、粉体塗料に均一に分散させ難くなり、被塗装物エッジ部への付着性の効果が小さくなる。また、疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径が前記上限値を超えると、静電塗装時の帯電量低下によるエッジ部への付着性の効果が小さくなる。
なお、本発明の粉体塗料には上記配合物のほかにも、本発明の目的を損なわない範囲内で他の成分を配合することもできる。このような成分としては着色顔料、レベリング剤、硬化促進剤などが挙げられ、例えば着色顔料としては酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等を用いることができる。また、硬化促進剤としては例えば、イミダゾール化合物などを用いることができる。
また、本発明の粉体塗料には、必要に応じて充填材を配合することができる。この充填材としては特に限定されないが、一般に公知のものが使用できる。例えば、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、タルク等が挙げられ、これらを単独または混合して用いることができる。
本発明の粉体塗料を製造する方法としては特に限定されるものではなく、粉体塗料を製造する一般的な方法を用いることができる。一例としては、所定の組成比で配合した原料成分をヘンシェルミキサーによって十分に均一混合した後、エクストルーダーなどの混練装置で溶融混合し、次いで粉砕装置により適当な粒度に粉砕、分級して得られる。また、疎水性シリカ微粒子は粉砕混合やヘンシェルミキサーなどによる乾式混合することも可能である。
本発明の粉体塗料は種々の用途に適用できるが、特に、バッテリー構成部品の被覆、中でもバッテリー固定バンドの被覆に好適である。
バッテリー固定バンドは電池ユニットの構成要素である電池パックを絶縁プレートを介してエンドプレートではさみ、更にエンドプレートを固定するために使用されるものである。このバッテリー固定バンドは、バッテリーの充放電時に電池パックが膨らみ、ユニットの寸法が変化することを抑制するためのものである。またこのバッテリー固定バンドは、万一電池パックから電解液が漏れた場合にショートしないように、絶縁が行われるのが通常である。
このようなバッテリー固定バンドの被覆に本発明の粉体塗料を用いると、金属に対する密着性が良好であるため、高い絶縁特性、機械的強度を有するとともに、水酸化カリウムなどの電解液に対する耐久性を付与することができるものである。
バッテリー固定バンドは電池ユニットの構成要素である電池パックを絶縁プレートを介してエンドプレートではさみ、更にエンドプレートを固定するために使用されるものである。このバッテリー固定バンドは、バッテリーの充放電時に電池パックが膨らみ、ユニットの寸法が変化することを抑制するためのものである。またこのバッテリー固定バンドは、万一電池パックから電解液が漏れた場合にショートしないように、絶縁が行われるのが通常である。
このようなバッテリー固定バンドの被覆に本発明の粉体塗料を用いると、金属に対する密着性が良好であるため、高い絶縁特性、機械的強度を有するとともに、水酸化カリウムなどの電解液に対する耐久性を付与することができるものである。
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
1.粉体塗料の作製
(実施例1)
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(a)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1055」、エポキシ当量850、数平均分子量1600)100重量部、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体としてジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン社製)・「DICY7」)1.5重量部、(C)ヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジド(日本化成社製・「ADH」)5重量部、イミダゾール(2−フェニルイミダゾール(四国化成社製・「2PZ」)0.5重量部を配合し、ヘンシェルミキサーにより20分間混合し、エクストルーダーを用いて混練後、粉砕装置にて粉砕した後、(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子(東ソー・シリカ社製・「Nipsil S−515」)0.6重量部、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(東ソー・シリカ社製・「Nipsil SS−50」)0.3重量部をヘンシェルミキサーで乾式混合し、平均粒度55μmの粉体塗料を得た。
(実施例1)
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(a)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1055」、エポキシ当量850、数平均分子量1600)100重量部、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体としてジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン社製)・「DICY7」)1.5重量部、(C)ヒドラジド化合物としてアジピン酸ジヒドラジド(日本化成社製・「ADH」)5重量部、イミダゾール(2−フェニルイミダゾール(四国化成社製・「2PZ」)0.5重量部を配合し、ヘンシェルミキサーにより20分間混合し、エクストルーダーを用いて混練後、粉砕装置にて粉砕した後、(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子(東ソー・シリカ社製・「Nipsil S−515」)0.6重量部、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子(東ソー・シリカ社製・「Nipsil SS−50」)0.3重量部をヘンシェルミキサーで乾式混合し、平均粒度55μmの粉体塗料を得た。
(実施例2)
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1002」エポキシ当量600、数平均分子量1200)に変更し、ジシアンジアミドを2.1重量部、アジピン酸ジヒドラジドを7.3重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(b)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1002」エポキシ当量600、数平均分子量1200)に変更し、ジシアンジアミドを2.1重量部、アジピン酸ジヒドラジドを7.3重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例3)
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(c)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1007」エポキシ当量2000、数平均分子量2900)に変更し、ジシアンジアミドを0.6重量部、アジピン酸ジヒドラジドを2.2重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(A)エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(c)(ジャパンエポキシレジン社製・「エピコート1007」エポキシ当量2000、数平均分子量2900)に変更し、ジシアンジアミドを0.6重量部、アジピン酸ジヒドラジドを2.2重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例4)
ジシアンジアミドを1重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
ジシアンジアミドを1重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例5)
ジシアンジアミドを2重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
ジシアンジアミドを2重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例6)
アジピン酸ジヒドラジドを4重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料
を得た。
アジピン酸ジヒドラジドを4重量部に減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料
を得た。
(実施例7)
アジピン酸ジヒドラジドを7重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
アジピン酸ジヒドラジドを7重量部に増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例8)
疎水性シリカ微粒子(ビニルシラン処理0.1重量部、シリコーンオイル処理0.05重量部)を減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
疎水性シリカ微粒子(ビニルシラン処理0.1重量部、シリコーンオイル処理0.05重量部)を減量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(実施例9)
疎水性シリカ微粒子(ビニルシラン処理1.0重量部、シリコーンオイル処理0.5重量部)を増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
疎水性シリカ微粒子(ビニルシラン処理1.0重量部、シリコーンオイル処理0.5重量部)を増量した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(比較例1)
疎水性シリカ微粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
疎水性シリカ微粒子を添加しないこと以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(比較例2)
硬化剤としてジシアンジアミドを単独で2.5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
硬化剤としてジシアンジアミドを単独で2.5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(比較例3)
硬化剤として、アジピン酸ジヒドラジドを単独で5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
硬化剤として、アジピン酸ジヒドラジドを単独で5重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(比較例4)
硬化剤として、酸無水物(トリメリット酸無水物(芳香族化学品カンパニー社製)「TMA」)を単独で8重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
硬化剤として、酸無水物(トリメリット酸無水物(芳香族化学品カンパニー社製)「TMA」)を単独で8重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
(比較例5)
硬化剤として、イミダゾールを単独で2重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
硬化剤として、イミダゾールを単独で2重量部配合した以外は、実施例1と同様にして粉体塗料を得た。
原料成分を表1で示す。配合量の数字は全て重量部を示す。
3.塗装試料の作成方法
鋼棒(12.5×12.5×50mm)、に、塗膜の厚さが平坦部で約200μmとなるように静電流動浸漬塗装機により塗装した。硬化条件は、200℃/30分間で行った。
鋼棒(12.5×12.5×50mm)、に、塗膜の厚さが平坦部で約200μmとなるように静電流動浸漬塗装機により塗装した。硬化条件は、200℃/30分間で行った。
4.評価方法
(1)耐水酸化カリウム性
上記塗装試料に30%水酸化カリウム水溶液を数滴滴下し、80℃、48時間放置した。放置後の塗膜状態を観察した。
判定基準は、以下のとおりとした。
◎:膨れ、剥れ共に無く良好
○:剥れなく良好
×:剥れあり
(1)耐水酸化カリウム性
上記塗装試料に30%水酸化カリウム水溶液を数滴滴下し、80℃、48時間放置した。放置後の塗膜状態を観察した。
判定基準は、以下のとおりとした。
◎:膨れ、剥れ共に無く良好
○:剥れなく良好
×:剥れあり
(2)絶縁性
上記耐水酸化カリウム性試験を実施した後の試験片を用いて、水中における絶縁試験を実施した。印加電圧を0〜500Vまで徐々に上昇させ、1mA以上の電流が流れた時の電圧を読み取った。
上記耐水酸化カリウム性試験を実施した後の試験片を用いて、水中における絶縁試験を実施した。印加電圧を0〜500Vまで徐々に上昇させ、1mA以上の電流が流れた時の電圧を読み取った。
(3)機械的衝撃強度(密着性)
上記塗装試料を用い、以下のデュポン衝撃試験法に準拠して評価した。試料の塗膜上にポンチサイズ1/8インチφの球を置き、その上方から0.5kgの重りを球の上に落下させ、塗膜の割れ、アルミニウム鋼鈑及び銅鋼鈑からの塗膜の剥がれが起こらない最高落下高さをそれぞれ測定した。
上記塗装試料を用い、以下のデュポン衝撃試験法に準拠して評価した。試料の塗膜上にポンチサイズ1/8インチφの球を置き、その上方から0.5kgの重りを球の上に落下させ、塗膜の割れ、アルミニウム鋼鈑及び銅鋼鈑からの塗膜の剥がれが起こらない最高落下高さをそれぞれ測定した。
(3)ゲル化時間
実施例及び比較例で得られた粉体塗料0.1gを用い、200℃で針法に準拠して測定した。
実施例及び比較例で得られた粉体塗料0.1gを用い、200℃で針法に準拠して測定した。
(4)流れ性
実施例及び比較例で得られた粉体塗料0.5gを金型に入れ、室温で10mmφの錠剤型に成形し、これを150℃の乾燥機中で30分間加熱した。加熱後の錠剤径(mm)を測定し、加熱前後の錠剤径の変化から次式により算出した。
流れ率(%)=[(加熱後の錠剤径/10)−1]×100
数値が大きいほど溶融流れ性が良好である。
実施例及び比較例で得られた粉体塗料0.5gを金型に入れ、室温で10mmφの錠剤型に成形し、これを150℃の乾燥機中で30分間加熱した。加熱後の錠剤径(mm)を測定し、加熱前後の錠剤径の変化から次式により算出した。
流れ率(%)=[(加熱後の錠剤径/10)−1]×100
数値が大きいほど溶融流れ性が良好である。
(5)エッジカバー性
塗装物を切断して、平坦部、エッジ部の皮膜厚さを顕微鏡観察により測定し、次式によりエッジカバー率を算出
エッジカバー率(%)=エッジ部皮膜厚さ/平坦部皮膜厚さ×100
塗装物を切断して、平坦部、エッジ部の皮膜厚さを顕微鏡観察により測定し、次式によりエッジカバー率を算出
エッジカバー率(%)=エッジ部皮膜厚さ/平坦部皮膜厚さ×100
(6)塗膜外観
塗装後の試料の塗膜表面を観察し、塗膜の平滑性を観察した。
判定基準は、以下のとおりとした。
◎:塗膜表面の平滑性に優れている
○:平滑性はそれほど優れていないが問題ないレベル
×:細かな凹凸が見られる
塗装後の試料の塗膜表面を観察し、塗膜の平滑性を観察した。
判定基準は、以下のとおりとした。
◎:塗膜表面の平滑性に優れている
○:平滑性はそれほど優れていないが問題ないレベル
×:細かな凹凸が見られる
上記粉体塗料の評価結果を表2に示す。
表2の結果から明らかのように、実施例1〜9は硬化剤としてジシアンジアミドないしはその誘導体(B)と、ヒドラジド化合物(C)を併用配合し、さらに疎水性シリカ微粒子を配合した本発明の粉体塗料であり、本来の要求特性である機械的衝撃強度、ゲル化時間、流れ性を維持しつつ、優れた耐水酸化カリウム性および絶縁性を示す結果となった。また、疎水性シリカ微粒子の配合量が少ない実施例8では、他の実施例1〜7と比較して絶縁性が劣る結果であり、疎水性シリカ微粒子の配合量が多い実施例9では、塗装外観(平滑性)が劣る結果となった。一方、疎水性シリカ微粒子を配合しない比較例1は、絶縁性が悪い結果であり、また、ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)と、ヒドラジド化合物(C)をそれぞれ単独で配合した比較例2と3、他の硬化剤を配合した比較例4、5はいずれも、耐水酸化カリウム性が劣る結果となった。
本発明の粉体塗料は、本来の要求特性を維持しつつ、優れた耐水酸化カリウム性および絶縁性を有することから、この粉体塗料をバッテリー構成部品の被覆に用いると、電解液による劣化が起こり難いため、特にハイブリッド自動車に搭載されるバッテリー用に好適である。
Claims (6)
- 下記成分を必須成分として含有するエポキシ粉体塗料。
(A)エポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体
(C)ヒドラジド化合物
(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子
(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子 - 前記(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が600〜2200である請求項1に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
- (A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(B)ジシアンジアミドないしはその誘導体(B)の当量比は、0.2〜1.0である請求項1または2に記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
- (A)エポキシ樹脂が有するエポキシ基に対する、(C)ヒドラジド化合物の当量比は、0.6〜1.6である請求項1ないし3のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
- エポキシ粉体塗料総重量に対する(D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.1〜1.0重量%、(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の添加量が0.05〜0.5重量%である請求項1ないし4のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
- (D)ビニルシラン処理された疎水性シリカ微粒子及び(E)シリコーンオイル処理された疎水性シリカ微粒子の平均一次粒子径がともに1〜100nmである請求項1ないし5のいずれかに記載のエポキシ樹脂粉体塗料。
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JP2007291356A (ja) * | 2006-03-29 | 2007-11-08 | Sumitomo Bakelite Co Ltd | エポキシ樹脂粉体塗料 |
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AT512000A1 (de) * | 2011-09-15 | 2013-04-15 | Avl List Gmbh | Elektrischer energiespeicher |
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-
2006
- 2006-09-26 JP JP2006259965A patent/JP2008081528A/ja active Pending
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