JP6364693B2 - 防食塗料組成物 - Google Patents
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Description
亜鉛含有塗料は、用いられるバインダー樹脂の種類により、無機系亜鉛含有塗料と有機系亜鉛含有塗料とに大別される。
(A)JIS K 2256に従って測定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤、
(B)前記溶剤(A)に可溶であるエポキシ樹脂、
(C)亜鉛粉、
(D)アマイドアミン塩、及び
(E)珪酸塩、
を含み、前記硬化剤が、
(F)アミン系化合物
を含むことを特徴とする、2液混合形防食塗料組成物。
(A)JIS K 2256に従って測定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤、
(B)前記溶剤(A)に可溶であるエポキシ樹脂
(C)亜鉛粉、
(D)アマイドアミン塩、及び
(E)珪酸塩、
を含み、前記硬化剤が、
(F)アミン系化合物
を含むことを特徴とする、2液混合形防食塗料組成物である。
本発明の溶剤(A)は、一般には、弱溶剤に分類される溶剤である。アニリン点及び混合アニリン点は、溶剤の溶解力を表す指標の一種であり、アニリン点又は混合アニリン点が高いほど溶解力が弱くなる。アニリン点は、等容積の溶剤とアニリンとが均一な溶液として存在する最低温度であり、混合アニリン点は、溶剤1容積、ヘプタン1容積及びアニリン2容積が均一な溶液として存在する最低温度である。混合アニリン点又はアニリン点が12℃未満であれば、溶剤の溶解力が強すぎるため、既設鋼構造物の塗り替えの際、旧塗膜を除去して露出させた鋼材部分とその周辺に存在する旧塗膜部分との境界部分に塗装した場合、旧塗膜が縮む問題が生じる。混合アニリン点又はアニリン点が70℃を超えると、溶剤の溶解力が弱すぎるため、実用的な性能を有するエポキシ樹脂を溶解することが困難である。一方、強溶剤として用いられているトルエンの混合アニリン点は8〜9℃であり、キシレンの混合アニリン点は9〜11℃である。
本発明の防食塗料組成物は、溶剤(A)を、防食塗料組成物の総質量に対し、5〜30質量%含むことが好ましく、7〜25質量%含むことがより好ましく、10〜20質量%含むことが更により好ましい。
本発明のエポキシ樹脂(B)は、本発明の溶剤(A)に可溶なエポキシ樹脂である。「可溶」とはエポキシ樹脂を溶剤(A)と混合させた場合に、均一な相の混合物、すなわち溶体を生ずることをいう。
本発明のエポキシ樹脂(B)は、防食性の高い塗膜を形成する点から、エポキシ基を分子内に2個以上有するエポキシ樹脂を少なくとも含むことが好ましい。尚、本発明のエポキシ樹脂(B)は、エポキシ基を分子内に1個有するエポキシ樹脂を含んでいてもよいが、エポキシ樹脂成分(B)中における2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の含有量が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
なお、エポキシ樹脂成分(B)に変性エポキシ樹脂が含まれる場合、変性前のエポキシ当量は250以下であることが好ましい。変性前のエポキシ当量が250以下であれば、変性後のエポキシ樹脂の溶剤(A)に対する溶解性も十分に確保することができる。ここで、エポキシ当量とは、JIS K 7236に規定されるものである。
本発明の防食塗料組成物は、防食塗料組成物の総質量に対し、エポキシ樹脂(B)を1〜20質量%、好ましくは3〜18質量%、より好ましくは5〜15質量%含む。エポキシ樹脂(B)の含有量が1質量%未満であると、樹脂が少ないために、塗膜を形成することが困難であり、20質量%を越えると、塗膜の防錆性が十分に得られにくい。
本発明の亜鉛粉(C)は、亜鉛単体でもよく、亜鉛合金でもよい。亜鉛合金としては、例えば、亜鉛/アルミニウム合金や亜鉛/マグネシウム合金等が挙げられる。
亜鉛粉(C)の平均粒子径は、1〜30μmであり、好ましくは3〜10μmである。亜鉛粉(C)の平均粒子径がこの範囲内であれば、亜鉛粉が塗膜中に均一に分散すること、亜鉛粉が十分な表面積を有すること、亜鉛粉同士の接触面積が十分であること等により、より効率的に犠牲防食作用が働くと考えられる。尚、亜鉛粉の平均粒子径が1μm未満であると、亜鉛粉の表面積が大きくなりすぎるため、防食塗料組成物の保存安定性が低下する傾向があり、30μmを超えると、亜鉛粒子の表面積が小さくなるため、亜鉛粒子同士の接触面積が少なくなり、防錆性が十分に得られない傾向がある。平均粒子径は、レーザー回折法などにより求めることができる。
本発明の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂100質量部に対して、亜鉛粉(C)を500〜2500質量部、好ましくは1000〜2000質量部含む。エポキシ樹脂(B)100質量部に対して亜鉛粉が500質量部未満であると、十分な防錆性が得られにくく、2500質量部を超えると、塗膜が脆くなり易く、クラックが発生したり、基材への付着性が低下したりするおそれがある。
アマイドアミン塩(D)は、本発明の防食塗料組成物のレベリング性に寄与する。また、アマイドアミン塩(D)は、防食塗料組成物に顔料が含まれる場合、顔料の分散性にも寄与し得る。
本発明のアマイドアミン塩(D)のアミン価は5〜100mgKOH/gが好ましく、10〜50mgKOH/gであることがより好ましい。アミン価が5mgKOH/g未満であると、レベリング性が得られにくく、アミン価が100mgKOH/gより大きいと、顔料の分散安定性が低下し、塗料の保存安定性が低下する場合がある。
本発明のアマイドアミン塩(D)は、ポリエステル酸のアマイドアミン塩であることが好ましい。ポリエステル酸のアマイドアミン塩としては、例えば、楠本化成製のディスパロンDA−703−50、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンDA−7301などが挙げられる。本発明に使用するアマイドアミン塩は、一種単独で用いてもよく、複数を混合して用いてもよい。
本発明の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、アマイドアミン塩(D)を0.025〜100質量部、好ましくは0.25〜50質量部含む。エポキシ樹脂(B)100質量部に対してアマイドアミン塩(D)が0.025質量部未満であると、防食塗料組成物のレベリング性が不十分であり、100質量部を超えると、塗料組成物の保存安定性が低下する傾向がある。
本発明の珪酸塩(E)は、二酸化珪素と金属酸化物とからなる塩であり、オルト珪酸塩、ポリ珪酸塩などのいずれであってもよい。本発明の防食塗料組成物は、粘性調節剤として珪酸塩(E)を用いることにより、塗装した後に塗膜のたるみが生じにくくなる。
本発明の珪酸塩(E)としては、例えば、珪酸亜鉛、珪酸アルミニウム、水化珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸アルミニウムベリリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸ジルコニウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカルシウム、珪酸マンガン、珪酸バリウム、アルミノ珪酸塩、ホウ珪酸塩、ベリロ珪酸塩などを挙げることができる。これらの珪酸塩は、単独で用いてもよく、複数を混合してもよい。好ましい珪酸塩は、珪酸アルミニウム、水化珪酸アルミニウム、珪酸アルミニウムカルシウム、珪酸アルミニウムナトリウム、珪酸ナトリウム、珪酸カルシウム、珪酸カルシウムナトリウム、珪酸マグネシウム、珪酸マグネシウムカルシウムである。
本発明の防食塗料組成物は、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、珪酸塩(E)を0.01〜50質量部、好ましくは0.05〜30質量部含む。エポキシ樹脂(B)100質量部に対して珪酸塩が0.01質量部未満であると、塗膜のたるみが生じやすく、50質量部を超えると、塗装時のレベリング性が低下する。
本発明のアミン系化合物(F)は、硬化剤に配合されるものであり、主剤と混合することにより、エポキシ樹脂(B)と反応する。また、上記アミン系化合物(F)は、上記溶剤(A)に可溶であることを要する。アミン系化合物(F)としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等の脂肪族ポリアミン類、メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン類、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環族ポリアミン類や、これらポリアミン類に対して公知の方法によりポリアミド化、エポキシアダクト化、マンニッヒ化、ケチミン化等の変性反応を行って得られる変性ポリアミン等が挙げられる。これらアミン系化合物(F)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明のアミン系化合物(F)のアミン価は、10〜500mgKOH/gであり、好ましくは100〜300mgKOH/gである。アミン価が10mgKOH/g未満であると、エポキシ樹脂とアミンの硬化反応が不十分となりやすく、500mgKOH/gより大きいと塗膜中に大気中の水分が取り込まれやすくなり、防食性が低下する傾向がある。
顔料は公知のものを使用でき、例えば、市販品を用いても良い。
また、本発明の防食塗料組成物は、JIS K 2256に従って測定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤を主溶剤として含むが、防食塗料組成物の5質量%未満であれば、混合アニリン点又はアニリン点が12℃未満の強溶剤を含んでいても構わない。
尚、エポキシ樹脂(B)は、他の原料(亜鉛粉、アマイドアミン塩やケイ酸塩など)と混合する前に予め溶剤に溶解させた状態(エポキシ樹脂溶液)で用いることもできる。エポキシ樹脂溶液を用いる場合には、エポキシ樹脂質量は、前記溶液中のエポキシ樹脂成分の質量をいう。
また、アマイドアミン塩(D)は、他の原料と混合する前に予め溶剤に溶解させた状態(アマイドアミン塩溶液)で用いることもできる。アマイドアミン塩溶液を用いる場合には、アマイドアミン塩質量は、前記溶液中のアマイドアミン塩成分の質量をいう。
本発明の防食塗料組成物の塗装には、はけを用いてもよく、スプレーやローラーを用いてもよい。
<エポキシ樹脂>
「エピクロン5900−60」:DIC社製、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂のミネラルスピリット溶液、樹脂成分60質量%、溶剤40質量%。
<亜鉛粉>
「亜鉛末 F1000」:堺化学社製、平均粒子径:5μm。
<顔料>
「バリウムサルフェート PREC」:富平化工社製、体質顔料、硫酸バリウム。
<溶剤>
「ミネラルスピリットA」:新日本石油社製、アニリン点:43℃。
<アマイドアミン塩>
「ディスパロンDA−703−50」:楠本化成社製。ポリエステル酸アマイドアミン塩のキシレン溶液。アミン価40mgKOH/g。有効成分50質量%、溶剤50質量%。
<珪酸塩>
「エードプラスFJ」:水澤化学社製、珪酸マグネシウム。
<硬化剤(アミン樹脂)>
「フジキュアーFXP−8086」:T&K TOKA社製、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンのエポキシアダクト変性物、アミン価210mgKOH/g。
容器に、「ミネラルスピリット」6質量部、「エピクロン5900−60」9.5質量部、「亜鉛末 F1000」72質量部、「ディスパロンDA−703−50」0.05質量部、「エードプラスFJ」0.01質量部、「バリウムサルフェート PREC」5質量部を順次仕込み、均一になるまで混合撹拌して、これを主剤とした。この主剤に、硬化剤として「フジキュアーFXP−8086」2.5質量部と「ミネラルスピリット」5質量部を加え、混合撹拌して、塗料組成物を得た。
尚、硬化剤に含まれるアミン化合物の配合量については、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基1当量に対して0.9当量の活性水素を有するように設定した。
表1に従う配合で各原料を混合した以外は、実施例1と同様にして、塗料組成物を得た。尚、硬化剤に含まれるアミン化合物の配合量については、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基1当量に対して0.9当量の活性水素を有するように設定した。
(1)塗装作業性(タレ性評価)
実施例1〜5及び比較例1〜3で得られた各塗料組成物を加熱残分(NV)75〜77%になるようミネラルスピリットで希釈した後、塗面を垂直に設置した状態の70×150×1.6mmのサンドブラスト鋼板にウエット膜厚が75μmとなるように、はけで塗装した。この場合の塗装作業性を評価した。結果を表1に示す。
尚、加熱残分は、次のようにして求めた。
約3グラムの塗料組成物をアルミカップに精秤し、これを105℃オーブンで60分間乾燥させ、次いで、残留物の質量を精秤し、元の質量に対する残留物の質量の割合を加熱残分(質量%)とした。
(判定基準)
○:塗料がたれることがなく、設定膜厚の塗膜を容易に形成することが出来た。
×:塗料がたれてしまい、塗装作業性が悪かった。
<測定方法>
実施例1〜5、比較例1〜3の塗料組成物の粘度回復挙動をAnton Paar社製レオメーターPhysica MCR 301を用いて測定した。具体的には、ずり速度を100s-1に設定した状態で10秒間保持した後、ずり速度を0.1s-1に変化させ、粘度の変化を測定した(測定温度:23℃ 、コーンプレート:CP50−1(直径50mm、角度1°))。
そして、粘度回復を評価するため、ずり速度を0.1s-1に変化させた直後の粘度の上昇度を式(1)により求めた。
(粘度の上昇度)=DEΔη(mPa・s)/Δt(s)=(η1−η0)/2 ・・・式(1)
ただし、ずり速度を100s-1に設定した状態で10秒間保持した際の粘度をη0(mPa・s)、ずり速度を0.1s-1に変化させて2秒後の粘度をη1(mPa・s)とした。
結果を表1に示す。
(判定基準)
○:(粘度の上昇度)が0.2〜20。塗装時のレベリング性が良好で平滑な塗膜が得られる。
×1:(粘度の上昇度)が20を超える。塗装時のレベリング性が十分でなく、平滑な塗膜が得られない。
×2:(粘度の上昇度)が0〜0.2未満:塗料の粘弾性が得られず、塗料の保存安定性が得られない。
実施例1〜5、比較例1〜3で得られた塗料組成物を加熱残分(NV)75〜77%になるようミネラルスピリットで希釈した後、塗面を垂直に設置した状態のサンドブラスト鋼板(70mm×150mm×1.6mm)にウエット膜厚が75μmとなるように、はけで塗装した後、1日以上室温で乾燥させて、塗膜を形成させた。塗膜外観の判定結果を表1に示す。
尚、加熱残分は、(1)塗装作業性の評価試験の際と同様にして求めた。
(判定基準)
○:はけ筋がなく、良好な塗膜表面である。
×:はけ筋が認められる。
上記塗膜外観試験で形成された塗膜に対して、塩水噴霧試験を行った。
<塩水噴霧試験>
上記得られた塗膜について、試験片下部に素地に到達するように、幅1mmのカットを、試験片端部から約10mm内側に対角上に交差するように施し、JIS K 5600 7−1(1999)に準拠して、1000時間塩水噴霧した。塩水噴霧試験後の塗膜外観を、以下の基準で目視判定した。結果を表1に示す。
(判定基準)
○:クロスカット部周辺に異常なし、または直径1mm未満の赤さびが発生
△:クロスカット部周辺に、直径1mm以上2mm未満の赤さびやふくれが発生
×:クロスカット部周辺に、直径2mm以上の赤さびやふくれが発生
Claims (6)
- 主剤と硬化剤とを含有する2液混合形防錆塗料組成物であって、前記主剤が、
(A)JIS K 2256に従って測定される混合アニリン点又はアニリン点が12〜70℃の範囲内にある溶剤、
(B)前記溶剤(A)に可溶であるエポキシ樹脂、
(C)亜鉛粉、
(D)ポリエステル酸のアマイドアミン塩、及び
(E)珪酸塩、
を含み、前記硬化剤が、
(F)アミン系化合物
を含むことを特徴とする、2液混合形防錆塗料組成物。 - 前記珪酸塩(E)が、珪酸マグネシウムである、請求項1に記載の2液混合形防錆塗料組成物。
- 前記エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、亜鉛粉(C)を500〜2500質量部含む、請求項1又は2に記載の2液混合形防錆塗料組成物。
- 前記エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、ポリエステル酸のアマイドアミン塩(D)を0.025〜100質量部含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の2液混合形防錆塗料組成物。
- 前記エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、珪酸塩(E)を0.01〜50質量部含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の2液混合形防錆塗料組成物。
- 前記ポリエステル酸のアマイドアミン塩(D)と珪酸塩(E)との質量比が、1:0.002〜1:100である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の2液混合形防錆塗料組成物。
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