以下、本発明の第1の実施形態を、図1ないし図14に基づいて説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。図2は、図1に示された画像形成装置のレーザ書き込みユニットと感光体ドラムなどの要部を示す斜視図である。
画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像則ちカラー画像を、一枚の転写材としての記録紙7(図1に示す)に形成する。画像形成装置1は、所謂、タンデム型フルカラーレーザプリンタである。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の各色に対応するユニットなどを、以下、符号の末尾に各々Y,M,C,Kを付けて示す。画像形成装置1は、図1に示すように、装置本体2と、給紙ユニット3と、レジストローラ対10と、転写ユニット4と、定着ユニット5と、光走査装置としてのレーザ書き込みユニット22と、複数のプロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kと、排紙部16と、を少なくとも備えている。
装置本体2は、例えば、箱状に形成され、フロア上などに設置される。装置本体2は、給紙ユニット3と、レジストローラ対10と、転写ユニット4と、定着ユニット5と、レーザ書き込みユニット22と、複数のプロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kを収容している。
給紙ユニット3は、装置本体2の下部に複数設けられている。給紙ユニット3は、前述した記録紙7を重ねて収容するとともに装置本体2に出し入れ自在な給紙カセット23と、給紙コロ24とを備えている。給紙コロ24は、給紙カセット23内の一番上の記録紙7に押し当てられている。給紙コロ24は、前述した一番上の記録紙7を、レジストローラ対10の一対のローラ10a,10b間に送り出す。
レジストローラ対10は、給紙ユニット3から転写ユニット4に搬送される記録紙7の搬送経路に設けられており、一対のローラ10a,10bを備えている。レジストローラ対10は、一対のローラ10a,10b間に記録紙7を挟み込み、該挟み込んだ記録紙7を、トナー像を重ね合わせ得るタイミング(副走査方向(図1中の左右方向)の記録開始のタイミング)に合わせて、転写ユニット4とプロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kとの間に送り出す。
転写ユニット4は、給紙ユニット3の上方に設けられている。転写ユニット4は、複数のローラ27と、転写ベルト29を備えている。ローラ27は、それぞれ、装置本体2に回転自在に設けられており、少なくとも一つが駆動源としてのモータなどによって回転駆動される。転写ベルト29は、無端環状に形成されており、前述した複数のローラ27に掛け渡されている。転写ベルト29は、前述した複数のローラ27に掛け渡されることで、プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kの下方でかつ近傍に位置付けられている。転写ベルト29は、モータなどによって少なくとも一つのローラ27が回転駆動されることで、前述した複数のローラ27の回りを循環(無端走行)する。
転写ユニット4は、転写ベルト29が給紙ユニット3から送り出された記録紙7を各プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kの感光体ドラム8の外表面に押し付けて、感光体ドラム8上のトナー像を記録紙7に転写する。転写ユニット4は、トナー像を転写した記録紙7を定着ユニット5に向けて送り出す。
定着ユニット5は、互いの間に記録紙7を挟む一対のローラ5a,5bを備えている。定着ユニット5は、一対のローラ5a,5b間に転写ユニット4から送り出されてきた記録紙7を押圧加熱することで、感光体ドラム8から記録紙7上に転写されたトナー像を、該記録紙7に定着させる。
レーザ書き込みユニット22は、装置本体2の上部即ち給紙ユニット3と転写ユニット4の上方に配置されている。レーザ書き込みユニット22は、プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kの後述の帯電チャージャ9により一様に帯電された感光体ドラム8の外表面にレーザ光を照射して、静電潜像を形成する。レーザ書き込みユニット22は、後述する振動ミラー85の1周期の往復走査により、感光体ドラム8の外表面に2ライン毎の画像記録を行う(静電潜像を形成する)。なお、このレーザ書き込みユニット22の詳細な構成は、後ほど説明する。
プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kは、それぞれ、転写ユニット4と、レーザ書き込みユニット22との間に設けられている。プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kは、装置本体2に着脱自在である。プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kは、記録紙7の搬送方向(図1中の左右方向)に沿って、互いに並設されている。
プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kは、図1に示すように、カートリッジケース11と、帯電装置としての帯電チャージャ9と、感光体(像担持体ともいう)としての感光体ドラム8と、クリーニング装置としてのクリーニングケース12と、現像装置13などを備えている。このため、画像形成装置1は、帯電チャージャ9と、感光体ドラム8と、クリーニングケース12と、現像装置13と、を少なくとも備えている。
カートリッジケース11は、装置本体2に着脱自在で、かつ帯電チャージャ9と、感光体ドラム8と、クリーニングケース12と、現像装置13と、を収容している。帯電チャージャ9は、感光体ドラム8の外表面を一様に帯電する。感光体ドラム8は、現像装置13の後述する現像ローラ15と間隔をあけて配されている。感光体ドラム8は、軸芯を中心として回転自在な円柱状又は円筒状に形成されている。
感光体ドラム8は、それぞれ、対応するレーザ書き込みユニット22Y,22M,22C,22Kにより、外表面上に静電潜像が形成される。感光体ドラム8は、外表面上に形成されかつ担持する静電潜像にトナーが吸着して現像し、こうして得られたトナー像を転写ベルト29との間に位置付けられた記録紙7に転写する。なお、感光体ドラム8の外表面は、特許請求の範囲に記載された被走査面をなしている。クリーニングケース12は、記録紙7にトナー像を転写した後に、感光体ドラム8の外表面に残留した転写残トナーを除去する。
現像装置13は、トナーカートリッジ17と、現像剤担持体としての現像ローラ15とを少なくとも備えている。
トナーカートリッジ17は、所望の色のトナーを収容して、当該トナーを現像ローラ15の外表面に供給する。
現像ローラ15は、感光体ドラム8と平行でかつ近接して配置されている。現像ローラ15と感光体ドラム8との間の空間は、トナーを感光体ドラム8に吸着させて、静電潜像を現像してトナー像を得る現像領域をなしている。
現像装置13は、トナーカートリッジ17内のトナーなどを十分に攪拌し、この攪拌したトナーを現像ローラの外表面に吸着する。そして、現像装置13は、現像ローラ15が回転して、トナーを感光体ドラム8に吸着させる。こうして、現像装置13は、トナーを現像ローラ15に担持し、現像領域に搬送して、感光体ドラム8上の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。
排紙部16は、装置本体2の上面に設けられた排紙トレー18と、一対の排紙ローラ19とを備えている。排紙ローラ19は、互いの間に、定着ユニット5の一対のローラ5a,5b間に挟まれてトナー像が定着された記録紙7が供給される。排紙ローラ19は、トナー像が定着された記録紙7を排紙トレー18上に排出する。
前述した構成の画像形成装置1は、以下に示すように、フルカラーモード時に記録紙7にカラー画像を形成する。まず、画像形成装置1は、感光体ドラム8を回転して、この感光体ドラム8の外表面を一様に帯電チャージャ9により帯電する。感光体ドラム8の外表面にレーザ書き込みユニット22が各色の画像信号に基づき対応する光ビーム59,60,61,62の光走査で、各感光体ドラム8の外表面に各色信号に対応した静電潜像を形成する。そして、これらの静電潜像が現像領域に位置付けられて、各々の対応する現像装置13の現像ローラ15の外表面に吸着したトナーが吸着して、現像されて感光体ドラム8の外表面上でトナー像となる。
そして、画像形成装置1は、給紙ユニット3の給紙コロ24などにより搬送されてきた記録紙7が、プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kの感光体ドラム8と転写ユニット4の転写ベルト29との間に順に位置して、各プロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6Kの感光体ドラム8の外表面上に形成されたトナー像を順次記録紙7に転写して、これらのトナー像を記録紙7上に重ね合わせて、記録紙7上にフルカラー画像を形成する。画像形成装置1は、定着ユニット5で、記録紙7にフルカラー像を定着して、この記録紙7を排紙部16の排紙トレー18上に排出する。こうして、画像形成装置1は、記録紙7にカラー画像を形成する。
以下、レーザ書き込みユニット22(以下、単にユニットと記す)を詳細に説明する。各感光体ドラム8を走査するユニット22は、図2及び図3に示すように、一体的に構成され、記録紙7の移動方向(図3中の矢印で示す)Kに沿って、等間隔で配列された4つの感光体ドラム8(以下、符号8Y,8M,8C,8Kで示す)に対し、各々に対応した後述する半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62を、振動ミラー85での偏向後に再度分離して、導くことで同時に静電潜像を形成する。なお、以下、図面において、感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの軸芯と平行な方向を矢印Yで示し、主走査方向とよび、後述する振動ミラー85で変更される光ビーム59,60,61,62の光軸と平行な方向を矢印Xで示し、光軸方向とよび、主走査方向Yと光軸方向Xとの双方に対し直交する方向を矢印Zで示し、副走査方向とよぶ。
ユニット22は、図2及び図3に示すように、図示しないユニット本体と、光源装置31と、結像光学系32と、を備えている。ユニット本体は、枠状に形成されて、装置本体2に取り付けられる。
光源装置31は、図2に示すように、図示しないハウジングと、光源部36と、入射ミラー37と、線像形成レンズとしてのシリンドリカルレンズ38と、偏向器39と、を備えている。ハウジングは、各々合成樹脂で形成されて、扁平な箱状に形成されている。
光源部36は、図2に示すように、光源ユニット48,49を一対備えている。光源ユニット48,49は、図4(a)及び図4(b)に示すように、それぞれ、プリント基板50と、一対の半導体レーザ51,52と、ホルダ部材53と、一対のカップリングレンズ54,55と、調節ネジ56と、プリント基板50に実装された駆動回路と、を備えている。プリント基板50は、絶縁性の基板と、該基板の外表面に形成された配線パターンなどを備えている。
半導体レーザ51,52は、それぞれが特許請求の範囲に記載された発光源をなしており、副走査方向Zに沿って、互いに間隔をあけて配置されているとともに、それぞれがプリント基板50に実装されている。半導体レーザ51,52は、それぞれ、前述した感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kと1対1で対応している。即ち、各光源ユニット48,49は、2つのプロセスカートリッジ6Y,6M,6C,6K分の発光源としての半導体レーザ51,52を備えている。半導体レーザ51,52は、対応した感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kに向かって光ビーム59,60,61,62を発する。
各光源ユニット48,49は、二つの半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62同士のなす角度が、2.5度となり、かつ後述する振動ミラー85の偏向面95の近傍又は該偏向面95上で交差するように、これら二つの半導体レーザ51,52を配置している。
図示例では、一方の光源ユニット48は、該光源ユニット48の図示しない射出軸に対して、下方の半導体レーザ52からの光ビーム60が平行となり、上方の半導体レーザ51からの光ビーム59が2.5度傾くように、射出軸が主走査方向Yに対して下向きに1.25度傾くように配置されている。他方の光源ユニット49は、該光源ユニット49の図示しない射出軸に対して、上方の半導体レーザ51からの光ビーム61が平行となり、下方の半導体レーザ52からの光ビーム62が2.5度傾くように、射出軸が主走査方向に対して上向きに1.25度傾くように配置されている。こうして、各光源ユニット48,49の射出軸即ち各半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62が、振動ミラー85の偏向面95の近傍で交差するように、光源ユニット48,49が副走査方向Zに互いに高さを異ならせて配置されている。
また、各光源ユニット48,49の射出軸即ち各半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62が、振動ミラー85の偏向面95上で交差するように、光源ユニット48,49が副走査方向Zに互いに高さを異ならせて配置されるのが望ましい。
ホルダ部材53は、厚手の平板状のホルダ本体63と、一対の支柱64と、二つのレーザ用位置決め孔65と、二つの突起部66と、一つの突起部67と、二つの取付座面68と、調節用ねじ孔69と、を備えている。ホルダ本体63には、副走査方向Zの両端から該副走査方向Zに向かって突出した支軸70が設けられている。
支柱64は、ホルダ本体63の外縁部に設けられており、該ホルダ本体63からプリント基板50に向かって立設している。支柱64は、プリント基板50上に重ねられて、該プリント基板50を貫通したねじがねじ込まれることで、ホルダ部材53をプリント基板50に固定する。
二つのレーザ用位置決め孔65は、ホルダ本体63を貫通しており、副走査方向Zに沿って互いに間隔をあけて配置されている。レーザ用位置決め孔65は、内側に半導体レーザ51,52が侵入することで、当該半導体レーザ51,52を位置決めする。
突起部66は、ホルダ本体63からプリント基板50から離れる方向即ち偏向器39に向かって凸に形成されている。二つの突起部66は、互いの間に二つのレーザ用位置決め孔65を位置付けている。突起部66の外縁は、前述した嵌合孔45の内縁に沿って形成されている。突起部66は、嵌合孔45内に嵌合して、光源ユニット48,49をハウジングに対して位置決めする。
一つの突起部67は、ホルダ本体63からプリント基板50から離れる方向即ち偏向器39に向かって凸に形成されている。突起部67は、二つのレーザ用位置決め孔65間でかつ二つの突起部66間に配置されている。突起部67には、レーザ用位置決め孔65の内面と面一に形成された断面U字状の溝71が形成されている。
二つの取付座面68は、平板状に形成されかつ支軸70に連なっている。取付座面68は、その表面が、ホルダ本体63の外表面と略面一となっている。調節用ねじ孔69は、ホルダ本体63の主走査方向Yの一端部に設けられ、かつホルダ本体63を貫通している。
一対のカップリングレンズ54,55は、その光軸が半導体レーザ51,52の光軸と一致しかつ、射出する光ビーム59,60,61,62が平行光となるように半導体レーザ51,52との光軸方向Xの位置が調整されて、突起部67の溝71の内面との間にUV接着剤が充填されて、突起部67即ちホルダ本体63に固定される。このため、勿論、半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62の光軸同士が、2.5度傾くように、カップリングレンズ54,55は、互いに光軸を傾かせて、配置されている。
調節ネジ56は、調節用ねじ孔69内にねじ込まれる。調節ネジ56は、調節用ねじ孔69内へのねじ込み量を適宜調整されることで、ホルダ本体63からハウジングへの突出量が適宜変更される。駆動回路は、半導体レーザ51,52を駆動する。
尚、半導体レーザ51,52の出力は、一般に、背面光を同一パッケージ内に装着される光量モニタ用のセンサによって一走査毎に画像領域にかかる前に検出され、1ライン記録中は一定値を保持するように発光源に印加する電流量を制御する。
前述した構成の光源ユニット48,49は、ハウジングに設けられた嵌合孔内に突起部66が挿入されて、回転方向を位置決めして、圧入固定される。そして、光源ユニット48,49は、ハウジングを貫通したねじが取付座面68にねじ込まれて、ハウジングにネジ固定される。このとき、他方の光源ユニット49は、一方の光源ユニット48よりも副走査方向Zに低い位置に配置される。
このとき、調節ネジ56のホルダ本体63からの突出量を適宜変更しておく。すると、調節ネジ56がハウジングの側板に当接して、その突出量に応じて、ホルダ部材53は、支軸70を回転軸として弾性変形させて矢印方向(α方向)の傾きが調節される。こうして、振動ミラー85の偏向面95に入射する光ビーム59,60,61,62の主走査位置を変更可能としている。
前述した構成の光源装置31は、光源ユニット48,49の合計四つの半導体レーザ51,52からの各光ビーム59,60,61,62を、同一の後述する偏向器39の同一の偏向面95に副走査方向Xに射入射させる。このように、光源部36は、光ビーム59,60,61,62を発する半導体レーザ51,52を複数有したマルチビーム光源となっている。即ち、偏向器39に入射する光ビーム59,60,61,62が、偏向器39の法線に対して、副走査方向Xに角度を有して入射するように、光源装置31の光源部36の各光源ユニット48,49が設けられている。光ビーム59,60,61,62のうち二つが後述する基準面Dに対して、副走査方向Xの一方側(図中上側であり、以下領域Aと呼ぶ)より入射している。残りの二つが後述する基準面Dに対して、副走査方向Xの他方側(図中下側であり、以下領域Bと呼ぶ)より入射している。
こうして、各光ビーム59,60,61,62は、基準面Dの副走査方向Xの両側から偏向器39の偏向面95に入射する。全ての光ビーム59,60,61,62は、偏向器39の偏向面95で偏向された後、共通の後述する第2走査レンズ116を透過した後、後述の折返しミラー118によって副走査方向Xに分離されて、対応する被走査面としての感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面に導かれる。なお、本実施形態では、第2走査レンズ116と第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kとを備えて、所謂走査レンズを二枚構成としている。さらに、本実施形態では、対応する被走査面に導かれる光ビーム59,60,61,62毎に、それぞれ、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kが設けられている。
入射ミラー37は、ハウジング内に収容されている。入射ミラー37には、光源ユニット48,49の各半導体レーザ51,52からの四つの光ビーム59,60,61,62が入射して、当該四つの光ビーム59,60,61,62を出射する。入射ミラー37は、各半導体レーザ51,52からの四つの光ビーム59,60,61,62が上下一列に並び(副走査方向Zに沿って並び)かつ副走査方向Zに間隔をあける状態で、当該四つの光ビーム59,60,61,62を出射する。
シリンドリカルレンズ38は、ハウジング内に収容されている。シリンドリカルレンズ38は、副走査方向に向きを偏向自在に設けられている。シリンドリカルレンズ38は、入射ミラー37から出射された四つの光ビーム59,60,61,62が入射して、当該四つの光ビーム59,60,61,62を偏向器39の振動ミラー85の偏向面95に向かって出射する。シリンドリカルレンズ38は、振動ミラー85の偏向面95上で副走査方向Zに複数の光ビーム59,60,61,62を収束する。
偏向器39は、図6に示すように、図示しない回路基板と、支持部材と、振動ミラー85と、回路基板に実装された駆動回路と、を備えている。本実施形態では、振動ミラー85の回転トルクの発生方法として電磁駆動方式の例を説明する。
回路基板は、絶縁性の基板と、該基板の表面に形成された配線パターンとを備えている。尚、回路基板には、振動ミラー85の駆動回路を構成する制御ICや水晶発振子と、コネクタなどが実装され、当該コネクタを介して電源からの電力および制御信号が入出力される。
支持部材は、合成樹脂で成形されており。回路基板から立設している。支持部材は、振動ミラー85を位置決めして保持する。
振動ミラー85は、図5(a)に示すように、偏向面95がねじり梁97で軸支されており、後述するように、Si基板からエッチングにより外形を貫通して作製し、実装基板90に装着されて得られる。本実施形態では、一対のSi基板を背合わせで、貼り合わせられて一体となったモジュールを示している。
こうして得られた振動ミラー85は、実装基板90の一辺を上記したエッジコネクタ部89に挿入し、かつ押え爪88によって外縁が係止されて、実装基板90の両側面を位置決め部87に沿わせて、支持部材84に支えられる。こうすることで、電気的な配線が同時になされ、各々の振動ミラー85が個別に交換できるようにしている。
振動ミラー85は、図5及び図6に示すように、実装基板90と、ミラー部91とを備えている。実装基板90上には、ミラー部91を装着する枠状の台座92と、ミラー部91を囲うように形成されたヨーク93が設けられている。上記ヨーク93には、一対の永久磁石94が取り付けられている。これら一対の永久磁石94は、S極とN極とが、ねじり梁97の長手方向に対して直交する方向に沿って、互いに相対している。一対の永久磁石94は、ねじり梁97の長手方向に対して直交する方向に磁界を発生する。
ミラー部91は、表面に偏向面95を形成して振動子をなす可動部96と、一端が可動部96の副走査方向Zの両端に連なりかつ該副走査方向Zの両端から該副走査方向Zに沿って立設した回転軸をなすねじり梁97と、内縁がねじり梁97の他端に連なった支持部をなす枠状のフレーム98(枠体に相当)とを備え、少なくとも一枚のSi基板をエッチングにより切り抜いて形成される。本実施形態では、ミラー部91は、SOI基板と呼ばれる厚みが60μmと140μmの2枚の基板105,106が酸化膜を挟んであらかじめ接合されたウエハを用いて得られる。
可動部96は、平面コイル99(図5(b)に示す)が形成される振動板100と、振動板100の主走査方向Yの両端から立設した補強梁101と、振動板100に積層されて前述した偏向面95が形成される可動ミラー102とを備えている。ねじり梁97は、ねじられるようになっており、ねじられることで、可動部96即ち偏向面95を回動自在とする。フレーム98は、一対のフレーム103,104が積層されて構成されている。こうして、振動ミラー85は、枠体としてのフレーム98と、該フレーム98の内縁に一端が連なったねじり梁97と、ねじり梁97の他端に連なりかつ光源部36からの光ビーム59,60,61,62を偏向可能であるとともにねじり梁97がねじられることで当該ねじり梁97を中心として回動自在な偏向面95と、を有している。そして、振動ミラー85は、ねじり梁97がねじられて当該ねじり梁97を中心として偏向面95が回動することで光源部36からの光ビーム59,60,61,62を偏向面95で偏向して被走査面上に主走査方向Yに往復走査させる。
前述したミラー部91は、まず、厚みが140μmの基板(第2の基板)105の表面側からプラズマエッチングによるドライプロセスによって、ねじり梁97、平面コイル99が形成される振動板100、可動部96の骨格をなす補強梁101と、フレーム103とを残したそれ以外の部分を酸化膜まで貫通させる。次に、厚みが60μm基板(第1の基板)106の表面側からKOHなどの異方性エッチングによって、可動ミラー102と、フレーム104とを残したそれ以外の部分を酸化膜まで貫通し、最後に、可動部96の周囲の酸化膜を除去して分離しミラー部91を形成する。
ここで、ねじり梁97、補強梁101の幅は40〜60μmとした。上記したように可動部96の慣性モーメントIは、当該可動部96即ち偏向面95の振れ角を大きくとるには小さい方が望ましく、反面、慣性力によって偏向面95が変形してしまうため、本実施形態では、可動部96を肉抜きした構造としている。
さらに、可動ミラー102の表面を含んだ厚みが60μmの基板106の表面にアルミニウム薄膜を蒸着して偏向面95を形成し、厚みが140μmの基板105の表面には銅薄膜で平面パターン99と、ねじり梁97を介して配線された端子107、および、トリミング用のパッチ108を形成する。当然、振動板100側に薄膜状の永久磁石を設け、フレーム104側に平面コイル99を形成する構成とすることもできる。
ミラー部91は、偏向面95を表に向けた状態で、台座92に装着される。ミラー部91は、各端子107間に電流を流すことにより平面コイル99のねじり梁97に平行な各辺にローレンツ力が生じ、ねじり梁97をねじって、可動部96即ち偏向面95を回転する回転トルクを発生し、電流を切るとねじり梁97の弾性復元力により、可動部96がフレーム98と面一となる位置に復帰する。
従って、平面コイル99に流れる電流の方向を交互に切り換えることによって、可動ミラー102を往復振動させることができる。また、ミラー部91の偏向面95の法線は、光ビーム59,60,61,62の光軸と同一平面上に位置するように、偏向器39即ち振動ミラー85と光源部36の各光源ユニット48,49の半導体レーザ51,52とが配置されている。
駆動回路は、ミラー部91の裏側に形成した平面コイル99に交互に電流の流れる方向が切り換わるように、交流電圧、またはパルス波状電圧を印加して、可動部96の振れ角θが一定となるように平面コイル99に流す電流のゲインを調節する。
前述した偏向器39は、ハウジング内に収容されて、シリンドリカルレンズ38から複数の光ビーム59,60,61,62が偏向面95に導かれる。そして、偏向器39は、偏向面95上に収束された光ビーム59,60,61,62を偏向して、結像光学系32の後述する第2走査レンズ116に向かって出射する。このとき、偏向面95によって、偏向された後の光ビーム59,60,61,62は、互いに分離するように間隔を拡げつつ第2走査レンズ116に入射する。偏向器39は、ハウジング内に収容されて、外気から遮断されることで、外気の対流による振幅の変化が防止される。
前述した光源装置31は、各光源ユニット48,49の半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62を第2走査レンズ116に向かって出射する。光源装置31は、ユニット本体に取り付けられて、装置本体に取り付けられる。
結像光学系32は、図2及び図3に示すように、一つの第2走査レンズ116と、四つの第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kと、複数の折返しミラー118と、を備えている。第2走査レンズ116は、所謂f・arcsinレンズであり、長手方向が感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの長手方向と平行な棒状に形成され、前述したハウジング接着剤などによって固定される。
第2走査レンズ116は、主走査方向Yの中央部が光源装置31から離れる方向に凸に形成されている。第2走査レンズ116は、全ての光ビーム59,60,61,62が通過するとともに、副走査方向Zには収束力を有していない。第2走査レンズ116は、その基準軸(光軸)が偏向器39の偏向面95の法線を含む平面D内に位置して(平行で)、かつ、偏向面95の法線を含む平面Dの両側から入射してくる光ビーム59,60,61,62が、当該平面Dに対して互いに対称に入射するように配置されている。以下、偏向面95の法線を含みかつ第2走査レンズ116の基準軸を含む平面を基準面Dと呼ぶ。
第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kと1対1で対応して設けられている。第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、長手方向が、感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの長手方向と平行な棒状に形成されている。第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、対応する感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面上を走査する一つの光ビーム59,60,61,62のみが通過する。
第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、その基準軸が被走査面の像高0で到達する光ビーム59,60,61,62の主ビームと一致するように、即ち、入射する光ビーム59,60,61,62の基準面Dに対する角度と、その基準軸の基準面Dに対する角度とが等しくなるように、入射面側が出射面よりも基準面Dに近づくようにチルトした(傾いた)状態に配置されている。前述した第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、互いに形状が等しく形成されている。互いに基準面Dの反対側を通過する光ビーム59,60,61,62に対応した第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kは、基準面Dに関して対称に配置する。
前述した第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面は、その基準軸に対して直交する方向に沿って略平坦な後述する特殊トロイダル面に形成されている。第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面は、後述する特殊チルト偏芯面となっている。
複数の折返しミラー118は、長手方向が、感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの長手方向と平行な帯板状に形成されている。折返しミラー118は、第2走査レンズ116を通過した光ビーム59,60,61,62を、各第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを介して感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面に導くように、適宜箇所に配置されている。
折返しミラー118は、基準面Dの一方側即ち領域Aより入射される光ビーム59,60のうち外側(基準面Dから離れた側)の光ビーム59に対して2つ設けられ、内側(基準面D寄り)の光ビーム60に対して3つ設けられている。基準面Dの他方側即ち領域Bより入射される光ビーム61,62のうち外側(基準面Dから離れた側)の光ビーム62に対して1つ設けられ、内側(基準面D寄り)の光ビーム61に対して2つ設けられている。このように、領域A,Bの各々において、光ビーム59,60,61,62毎に対応して設けられる数の差が奇数個(本実施形態では1つ)となっている。こうして、基準面Dの副走査方向Xの一方側(領域A又は領域B)の複数の光ビーム59,60,61,62を感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面に導く折返しミラー118が、前記光ビーム59,60,61,62同士で奇数個異なるように配置されている。なお、図3中の光ビーム59,60,61,62は、偏向後の光ビーム59,60,61,62である。このため、入射する光ビーム59,60,61,62は、偏向前の領域A,Bとは反対側から各折返しミラー118に入射する。
前述した第1走査レンズ117Y,117M,117C,117K及び折返しミラー118は、ユニット本体に取り付けられている。
前述した第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kのような、例えば、走査光学系を構成する走査レンズ、特に副走査方向Xに強い屈折力を持つ走査レンズE(図13に示す入射面の主走査方向Yの形状が、偏向面95の光ビームFの反射点を中心とする円弧形状でない限り、主走査方向Yの位置が異なると、偏向器39の偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離は異なる。通常、走査レンズEを前記形状にすることは、光学性能を維持する上で困難である。
つまり、図13に示すように、通常の光ビームFは、偏向器39により偏向走査され、各像高にて主走査断面において、走査レンズEの入射面に対し垂直入射することはなく、主走査方向Yにある入射角を持って入射する。
副走査方向Xに角度を持って、光源からの光ビームFが偏向面95に入射している(斜入射されているため)ことにより、偏向器39により偏向された光ビームFは、像高により偏向器39の偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離は異なり、図13に示すように、走査レンズEの入射面の副走査方向Xの高さが周辺に行くほど中心より高い位置、もしくは低い位置(光ビームFの副走査方向Xにもつ角度の方向により異なる)に入射される。この結果、副走査方向Xに屈折力を持つ出射面を通過する際に、副走査方向Xに受ける屈折力が異なり走査線曲がりが発生してしまう。通常の水平入射であれば、偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離が異なっても、光ビームFは、走査レンズEに対し水平に進行するため、走査レンズE上での副走査方向Xの入射位置が異なることはなく、走査線曲がりの発生が生じない。
さらに、温度変化時の走査線曲がり変動について説明を加える。近年は、コスト面、高画質化のための設計時のレンズ形状の自由度(非球面形状など)から、走査レンズEの材料としてはプラスチックを用いることが一般的となっているため、温度変化によるレンズ形状変化は、ガラスレンズに比べ大きい。
前記説明のように、斜入射式の光学系においては、副走査方向Xに湾曲した状態で走査レンズEに光ビームFが入射する。このため、温度変化により走査レンズEの曲率半径や肉厚、走査レンズEに入射する光ビームFの入射角度、副走査方向Xの位置が変化すると、主走査方向Yで異なる屈折変化を起こし走査線曲がりが発生する。前記説明同様に、通常の水平入射であれば、偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離が異なっても、光ビームFは走査レンズEに対し水平に進行するため、走査レンズE上での副走査方向Xの入射位置が光軸とほぼ同じ高さで異なることはなく、走査線曲がりの発生は極めて小さい。つまり、水平入射方式では母線上を光ビームFが通過するため、温度変化により曲率半径が変化しても、結像位置(デフォーカス方向)は変化するものの、光ビームFの副走査方向Xへの屈折は生じない(もしくは僅かである)ため、走査線曲がり(被走査面上の走査線の副走査方向の位置のずれ)の変化は極めて小さくなる。
以上の説明のように、大きな走査線曲がりの発生は、斜入射式の光学系特有の課題であり、その発生方向は、偏向面の法線を挟んだ副走査方向Xの両側で異なる。つまり、図3中の領域Aから入射する光ビーム59,60と、図2中の領域Bから入射する光ビーム61,62で発生方向は逆転する。これは、走査レンズEに入射する走査線の湾曲が、走査レンズEに入射する光ビームFの副走査方向Xの入射角の方向、つまり斜入射の方向(図中の領域Aからの入射か領域Bからの入射か)によりその方向が逆転するためである。特に副走査方向Xに強い屈折力を持つ走査レンズEへの入射する走査線の湾曲が走査線曲がりを発生させるが、その理由は前述した通りである。
同様に、温度変化が生じたときにおいても、走査線曲がりの変化は、偏向面95の法線を挟んだ副走査方向Xの両側で互いに逆となる。このように、異なる被走査面で走査線曲がりの方向が逆転した場合、各色を重ね合わせた場合には色ずれとなってしまい、カラー画像の品質が著しく低下してしまう。
このような色ずれを低減させるために、本実施形態では、入射面を略平坦とし、出射面を特殊チルト偏芯面とすることで、領域Aの光ビーム59,60間の中心を通る仮想的な光ビームG1(図3中に一点鎖線で示す)と、領域Bの光ビーム61,62間の中心を通る仮想的な光ビームG2(図3中に一点鎖線で示す)とが入射した際に、感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面上に直線上に結像する(副走査方向Xに位置ずれしない)ように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを形成している。即ち、基準面Dの副走査方向Xの同じ側から入射する2つの光ビーム59,60,61,62間の中心を通る仮想的な光ビームG1,G2を直線上に結像されるように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kが形成されている。こうして、本実施形態では、偏向面95の法線を含む平面である基準面Dの同じ側から入射する2つの光ビーム59,60,61,62の走査線曲がりの方向を互いに異なる方向(逆向き)とし、かつ走査線曲がり量をほぼ等しくなるように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを形成している。
また、色ずれの低減のために、偏向面95の法線を含む平面である基準面Dの同じ側から入射する2つの光ビーム59,60,61,62間の折返しミラー118の枚数の差を奇数としている。副走査方向Xの折返しミラー118により折り返された走査線は副走査方向Xに反転するため、前記説明のように適切な枚数の折返しミラー118を用いることで、副走査方向Xの両側で走査線曲がりの発生方向が異なった場合においても、図8(a)乃至図8(c)に示すように、その方向を同一方向に合わせることができる。その結果、カラー機における色重ねにおいて、色ずれの発生を低減する事ができ、良好なカラー画像を達成可能となる。
走査線曲がりは、斜入射角(偏向面95に対する光ビームFの副走査方向Xの入射角度)が大きいほど走査レンズEへ入射する走査線の湾曲が大きくなり、発生量が大きくなる。つまり、本実施形態においては、基準面D寄りの内側2つの光ビーム60,61に対し、基準面Dから離れた側の外側2つの光ビーム59,62の走査線曲がりの発生量は大きい。また、温度変動時の走査線曲がり発生量も外側の光ビーム59,62が内側の光ビーム60,61よりも大きい。
そこで、本実施形態によれば、基準面Dの副走査方向Xの同じ方向から入射される光ビーム59,60,61,62の走査線曲がりを互いに異なる方向としている。このため、基準面Dに対して副走査方向Xの同じ方向から入射される光ビーム59,60,61,62に対応した折返しミラー118の枚数差を奇数とすることで、基準面Dに対して副走査方向Xの同じ方向から入射される光ビーム59,60,61,62の被走査面としての感光体ドラム8Y,8M,8C,8Kの外表面における走査線曲がりの発生方向を一致させることができるため、色ずれの発生を小さく抑えることが可能となる。
特に、本実施形態のように、タンデムカラー式の画像形成装置1に適応させた場合には、前述の通り、基準面Dの反対側から入射した光ビーム59,60,61,62同士ではそれぞれ逆の走査線曲がりが発生するので、外側の光ビーム59,62同士、内側の光ビーム60,61同士でそれぞれ折返しミラー118の枚数差を奇数となるように設定すればよい。
ここで、基準面Dに対して副走査方向Xの同じ方向から入射される光ビーム59,60,61,62の走査線曲がりを互いに異なる方向とする特殊チルト偏芯面について説明する。
特殊チルト偏芯面は、副走査方向Xに曲率を持たずかつ主走査方向Yの位置に応じて副走査方向Xのチルト角が変化するように形成され、当該第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの基準軸上の偏芯量が零に形成されている。特殊チルト偏芯面は、レンズ高さごとにその傾き量が決定されている。第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面における曲がり量が斜入射する角度の大きさに比例するため、異なる角度で斜入射する光ビーム59,60,61,62に対して、同一のレンズ面を用いて走査線曲がりを完全に補正することは不可能である。
よって、実施形態では、例えば、ユニット本体に取り付ける際に、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを副走査方向に撓ませるなどの調整を前提として、図9(c)及び図9(d)に示すように、二種類の斜入射角のほぼ中間の角度で斜入射した仮想的な光ビームG1,G2に対して最適に走査線曲がりを補正するように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを形成することで、図9(a)、図9(b)及び図9(d)に示すように、外側の光ビーム59,62及び内側の光ビーム60,61の双方に同程度かつ互いに逆方向の走査線曲がりを発生させている(実施例では約15um)。
この補正は、後ほど具体的に説明する特殊チルト偏芯面を用いることもできるし、副走査方向Xの断面形状が円弧でありかつ円弧の頂点を結んだ母線が副走査方向Xに湾曲した母線湾曲面を用いることもできる。
なお、前述した特殊チルト偏芯面を用いても残存する走査線曲がりは十分小さいため、前記調整や折返しミラーの枚数を適切に設定することで色ずれが目立ちにくいレベルに抑えることができる。また、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの基準軸上では光ビーム59,60,61,62が略一致して通過するために、当該光ビームの主ビームに第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kによる屈折は生じない。よって、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの基準軸上におけるチルト量は零又は略零となっている。
次に、斜入射による波面収差劣化について、以下説明する。先の説明のように、斜入射の光学系を構成する走査レンズEの入射面の主走査方向Yの形状が、偏向面95の光ビームFの反射点を中心とする円弧形状でない限り、主走査方向Yの位置が異なると、偏向器39の偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離は異なる。通常、走査レンズEを前記形状にすることは、光学性能を維持する上で困難である。つまり、通常の光ビームFは、偏向器39により偏向走査され、各像高にて主走査方向Yの断面において、走査レンズEの入射面に対し垂直入射することはなく、主走査方向Yにある入射角を持って入射する。
偏向器39により偏向された光ビームFは、主走査方向Yにある幅を持っており、光ビームF内で主走査方向Yの両端は、偏向器39の偏向面95から走査レンズEの入射面までの距離が互いに異なり、副走査方向Xに角度を持っている(斜入射されているため)ことにより、走査レンズEにねじれた状態で入射することになる。この結果、波面収差が著しく劣化し、ビームスポット径が太る。主走査方向Yの入射角は、周辺像高に行くほどきつくなり、光ビームFのねじれは大きくなり、周辺に行くほど波面収差の劣化によるビームスポット径の太りは大きくなる。
本実施形態においては、第2走査レンズ116の入出射面及び第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を特殊トロイダル面として、波面収差及び走査線曲がりを補正している。また、走査線曲がりの補正は、出射面を副走査方向Xにチルト偏芯させることでも補正可能である。像高間での副走査方向Xの走査位置、及び、劣化した波面収差量のバランスを取ることにより、各像高での走査位置や波面収差を補正し、被走査面上での走査線曲がりや波面収差の劣化によるビームスポット径の太りを補正している。
しかし、出射面に入射する光束のねじれ(スキュー)による波面収差の劣化量や、回転多面鏡に斜入射する事による像高間での物点の副走査方向Xの変化量、偏向面95から出射面までの距離は、像高間で異なるため、波面収差の補正や走査線曲がりの補正を完全に行うことはできない。
そこで本実施形態においては、第2走査レンズ116の入出射面および第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を、像高に応じて副走査方向Xの曲率が変化する特殊トロイダル面とし、さらに副走査方向Xの近軸曲率をゼロかゼロに近い面とすることで、波面収差の補正を実施している。特殊トロイダル面は、後述する式1で定義される(ただし、F=0)。
副走査方向Xの近軸曲率をゼロとしているのは、各走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの基準軸近傍では入射する光ビーム59,60,61,62のねじれ(スキュー)による波面収差の劣化が少ないためである。ここで、各走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの基準軸とは、形状を表現する式の原点を結んだ線のことを指す。また、このような平面的な構成とすることで、結像光学系32は、組み付け時等で偏心しても性能の変動が少ない光学系となっている。さらに好ましくは、前記特殊トロイダル面を副走査方向Xに最も屈折力の大きな第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより偏向器39側に配設するのがよい。
波面収差の劣化は、特に副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射時に、光束がねじれることにより大きく発生するため、波面収差の補正のためには、前記副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射高さを補正し、被走査面上で一点に集光するようにする必要がある。特殊トロイダル面で波面収差を補正する場合、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射高さを高くし、光ビーム59,60,61,62内の主走査方向の両端についても、周辺に行くほど副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの副走査方向Xの入射高さを高くすることで補正可能となる。
つまり、最も副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより偏向器39側の第2走査レンズ116に、偏向器39の偏向面95の法線に対し副走査方向Xに角度を持つ光ビーム59,60,61,62に対し周辺に向かいより負のパワーが大きくなるように特殊トロイダル面を形成し、副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの副走査方向Xの入射位置を調整することで、波面収差の劣化を補正可能となる。このため、波面収差の補正を行うために用いる特殊トロイダル面は、副走査方向Xに最も強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより、偏向器39側の第2走査レンズ116などのレンズに設けることが望ましい。
こうして、偏向器39に近い第2走査レンズ116(少なくとも副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより偏向器39側の走査レンズ)などの特殊トロイダル面で波面収差補正を行い、被走査面に近い第1走査レンズ117Y,117M,117C,117K(副走査方向Xに強い屈折力を持つ走査レンズ)の特殊チルト偏芯面で走査線曲がり補正を行うように、それぞれの補正機能を分離することで、光ビーム59,60,61,62のスポット径の更なる小径化と走査線曲がりの低減を達成可能となる。もちろん、完全に機能分離させなければならないわけではなく、それぞれの特殊面で、波面収差補正の一部、走査線曲がり補正の一部を受け持っても良いことは言うまでもない。
前記第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を、副走査方向Xの断面形状を曲率を持たない形状とし、かつ、長手方向(主走査方向Y)の位置に応じて短手方向(副走査方向X)の偏芯角度(チルト量)が異なる特殊チルト偏芯面としている。こうすることで、波面収差や走査線曲がりの補正を実施する。前記特殊チルト偏芯面のチルト量(偏芯角度)とは、光学素子の光学面における短手方向の傾き角を言う。チルト量が0であるときには傾きがない状態、つまり通常のレンズと同じ状態となる。
前述した特殊チルト偏芯面の形状は、以下の式1によって定められる。ただし、本発明では、以下の式1に限定されるものではなく、同一の面形状を別の式を用いて特定することも可能である。
光軸を含み、主走査方向Yに平行な平断面である「主走査断面」内の近軸曲率半径(主走査方向の曲率)をRYとし、光軸から主走査方向Yの距離をYとし、高次係数をA、B、C、D…とし、主走査断面に直交する「副走査断面」内の近軸曲率半径(副走査方向の曲率)をRZとする。
なお、(F0+F1・Y+F2・Y2+F3・Y3+F4・Y4+・・)Zは、チルト量を表す部分であり、チルト量を持たないとき、F0,F1,F2,..は全て0である。F1,F2,..が0で無いとき、チルト量は、主走査方向Yに変化することになる(ただし、B=0)。
更に、以下、特殊チルト偏芯面の副走査方向Xの形状を曲率を持たない平面形状としている理由について説明する。
副走査方向Xに曲率を付けた場合、副走査方向Xの高さ毎に主走査方向Yの形状が大きく変化し、温度変動、半導体レーザ51,52などの光学素子の組み付け誤差により副走査方向Xに光ビーム59,60,61,62の入射位置がずれた場合に倍率誤差変動が大きく発生し、フルカラーレーザプリンタにおいては、各色間での光ビーム59,60,61,62のスポット位置がずれて、色ずれが発生してしまう。そこで、本実施形態のように、特殊チルト偏芯面の副走査方向Xの面形状は、曲率を持たない平面形状とすることで、副走査方向Xの高さ毎に主走査方向Yの形状誤差は小さくでき、副走査方向Xに光ビーム59,60,61,62の入射位置がずれた場合の倍率誤差変動を小さくすることができ、色ずれの発生を抑えることができる。
実際には、特殊チルト偏芯面を用いることで主走査形状は副走査方向Xの高さにより変化するが、その量は僅かであり、副走査方向Xに曲率を付けた場合に比べ主走査形状の変化を小さくできる。この結果、温度分布発生による光ビーム59,60,61,62間での倍率変動の差は小さくでき、同期を取ることで書き出し位置と書き終わり位置を各光ビーム59,60,61,62で一致させたときの中間像高での色ずれを低減できる。
また、図7(b)に示すように入射する光ビームFが副走査方向Xに位置ずれした場合、特殊チルト偏芯面は屈折力を持たないため光ビームFの進行方向も位置ずれするのみで、その方向の変化は小さい。副走査方向Xに曲率を持つ、つまり屈折力を持つ面では、図7(a)のように入射する光ビームFが副走査方向Xにシフトした場合、屈折力が変わることにより光ビームFの進行方向が変わる。このため、副走査方向Xに曲率を持つ、つまり屈折力を持つ面では、各像高でこの進行方向の変化量が異なると、走査線曲がりが大きく発生してしまう。また、光ビームFのスキューが発生して、波面収差の劣化、ビームスポット径の劣化が生じる。以上の理由から、特殊チルト偏芯面における副走査方向Xの形状は、曲率を持たない平面形状としている。
前述した構成の結像光学系32は、光源装置31の振動ミラー85の偏向面95から第2走査レンズ116に全ての光ビーム59,60,61,62が入射する。第2走査レンズ116を通った各光源ユニット48,49からの光ビーム59,60,61,62のうち、光源ユニット48の上方の半導体レーザ51からの光ビーム59は、折返しミラー118で反射され、第1走査レンズ117Yを介して感光体ドラム8Y上にスポット状に結像し、イエロー色の画像情報に基いた静電潜像を形成する。
光源ユニット48の下方の半導体レーザ52からの光ビーム60は、折返しミラー118で反射され、第1走査レンズ117M、折返しミラー118を介して感光体ドラム8M上にスポット状に結像し、マゼンタ色の画像情報に基いた静電潜像を形成する。
光源ユニット49の上方の半導体レーザ51からの光ビーム61は、折返しミラー118で反射され、第1走査レンズ117C、折返しミラー118を介して感光体ドラム8C上にスポット状に結像し、シアン色の画像情報に基いた静電潜像を形成する。
光源ユニット49の下方の半導体レーザ52からの光ビーム62は、折返しミラー118で反射され、第1走査レンズ117K、折返しミラー118を介して感光体ドラム8K上にスポット状に結像し、ブラック色の画像情報に基いた静電潜像を形成する。
前述した構成のユニット22は、光源装置31の各光源ユニット48,49の半導体レーザ51,52から放射された発散性の四つの光ビーム59,60,61,62をカップリングレンズ54,55によって、以後の光学系に適した光束形態に変換する。カップリングレンズ54,55は、平行光と弱い発散性と弱い収束性とのいずれかの光束形態に変換しても良い。カップリングレンズ54,55から出射された光ビーム59,60,61,62は、シリンドリカルレンズ38により副走査方向Xに収束されて、振動ミラー85の偏向面95に入射される。
これらの光ビーム59,60,61,62は、振動ミラー85の偏向面95に副走査方向Xに角度を有して入射する即ち前述した基準面Dに対して傾いている。そして、これらの光ビーム59,60,61,62は、振動ミラー85の偏向面95で第2走査レンズ116に向かって偏向される。このとき、偏向面95により偏向された光ビーム59,60,61,62も、前述した基準面Dに対して傾いている。なお、本発明では、偏向器39の偏向面95に基準面Dに対して傾いて入射する光ビーム59,60,61,62は、光源ユニット48,49、入射ミラー37などを傾けて配置することで、偏向器39の偏向面95に入射させてもよく、入射ミラー37などの光軸を副走査方向Xに位置をずらして、偏向器39の偏向面95に入射させても良い。
偏向面95により偏向された光ビーム59,60,61,62は、可動部96の振動により等角速度で偏向されて、第2走査レンズ116および第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを透過するなどして、感動体ドラム8Y,8M,8C,8Kの被走査面としての外表面上にスポット状に結像されて、走査させる。
本実施形態によれば、特殊トロイダル面の採用により光ビーム59,60,61,62のねじれを、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの主走査方向Yの位置毎にチルト量を最適に与えることで補正可能となる。走査線曲がりについても同様に、特殊トロイダル面により各像高に向かう光ビーム59,60,61,62の副走査方向Xの方向を、第2走査レンズ116の主走査方向Yの位置毎にチルト量を最適に与えることで補正可能となる。
またこの時、副走査方向Xに角度を持ち入射させる事による波面収差の劣化は、基準軸近傍では第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kに対し光ビーム59,60,61,62のスキューがほとんど発生しないため非常に小さい。このため、本発明における特殊トロイダル面において、基準軸上における偏心量はゼロとすることができる。従来、レンズもしくはレンズ面をチルト偏芯、もしくはシフト偏芯させ、波面収差の補正や走査線曲がりを補正する場合、中央像高近傍においては、その性能を劣化させ、周辺像高とのバランスを取っていたが、レンズもしくはレンズ面を偏芯させる必要が無く、良好な光学性能の補正が可能となる。
前記説明の特殊トロイダル面を、異なる被走査面に向かう光ビーム59,60,61,62ごと、つまり偏向器39の偏向面95の法線に対する副走査方向Xの角度(斜入射角度)毎に最適に設定することで、全ての光ビーム59,60,61,62において良好な波面収差補正、及び、走査線曲がり補正が可能となる。この場合、斜入射角度が異なっても、本特殊トロイダル面を用い形状式の係数を変え最適に設計することで対応可能となる。
更に、偏向器39の偏向面95に入射する光ビーム59,60,61,62を第2走査レンズ116に干渉させないように当該第2走査レンズ116の基準軸に対して主走査方向Yに角度を持って入射させることで、副走査方向Xの偏向面95への入射角度を小さく設定できる。副走査方向Xの斜入射させる角度が大きいと、前記光学性能の劣化が大きくなるため、良好な補正は困難になってしまう。このため、偏向器39の偏向面95に入射する光ビーム59,60,61,62を主走査方向Yに角度を持って入射させることが望ましい。
本実施形態によれば、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kが基準面Dの一方側(領域A又は領域B)の複数の光ビーム59,60,61,62間を通る仮想的な光ビームG1,G2を直線上に結像するように形成されているので、これら複数の光ビーム59,60,61,62を結像させる時の走査線曲がりを最少にすることができる。そのために、色ずれを最少のものとすることができ、一方、前述した複数の光ビーム59,60,61,62を結像する第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの共通化を図ることができるので、部品の品番(種類)を抑制でき、ユニット22の低コスト化を図ることができる。よって、低コストでありながら、従来例と同等以上に高画質のユニット22を提供することができ,従来以上に高画質なデジタル複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置1を実現することができる。
基準面Dの副走査方向Xの一方側(領域A又は領域B)の複数の光ビーム59,60,61,62を前記被走査面に導く折返しミラー118が、光ビーム59,60,61,62同士で互いに奇数個異なるので、これら複数の光ビーム59,60,61,62の被走査面上での走査方向が同一方向に曲がることとなり、色ずれをより確実に抑制できる。さらに、折返しミラー118を適宜配置できるので、折返しミラー118や第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの配置の自由度を高めることができる。よって、従来例と同等以上に高画質でかつレイアウトの自由度の高いユニット22を提供することができる。
第2走査レンズ116を全ての光ビーム59,60,61,62で共通に用いるので、部品点数を削減でき、低コストなユニット22を提供することができるため,従来以上に低コストなデジタル複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置1を実現することができる。
第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kが基準面Dの一方側(領域A又は領域B)の複数の光ビーム59,60,61,62間の中心を通る仮想的な光ビームG1,G2を直線上に結像するように形成されているので、これら複数の光ビーム59,60,61,62を結像させる時の走査線曲がりを確実に最少にすることができる。よって、より色ずれの小さいユニット22を提供することができるため,従来以上に高画質なデジタル複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置1を実現することができる。
第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面と出射面とのうちの出射面が特殊チルト偏芯面であるので、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kがより良好な走査線曲がり補正を行うことができ、走査線曲がりをより確実に最少にすることができる。特殊チルト偏芯面の基準軸における偏芯量が略零であるので、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの形状の簡素化を図りながらも、より良好な走査線曲がり補正を行うことができ、走査線曲がりをより確実に最少にすることができる。
偏向器39に入射する光ビーム59,60,61,62が偏向器39の法線に対して副走査方向Xに角度を有して入射するように光源部36が設けられているので、光源部36から複数の光ビーム59,60,61,62を一つの偏向器39に確実に入射することができ、ユニット22を備えた画像形成装置1のカラー化を容易に図ることができる。
偏向器39が振動ミラー85を備えているので、ポリゴンミラーを用いる場合よりも当該偏向器39の小型化を図ることができ、偏向器39が光ビーム59,60,61,62を偏向する際に生じる騒音を抑制できるとともに、省電力化を図ることができる。
光源部36が複数の光ビーム59,60,61,62を出射するので、カラー化を容易としながらも、一つの光源部36が複数の光ビーム59,60,61,62を出射することで小型化を図ることができる。
また、画像形成装置1は、前述したユニット22を備えているので、走査線曲がりを最少にでき、従来例と同等以上に高性能でありながら,より高画質化を図ることができる。
一方、斜入射を用いない片側走査方式として、図14(a)に示す全ての光ビーム59,60,61,62が偏向器39の偏向面95の法線に対し水平であった従来の光源装置Hは、良好な光学性能が得やすい反面、互いに異なる被走査面に導かれる光ビーム59,60,61,62間隔を、光ビーム59,60,61,62ごとに分離するのに必要な間隔(図中△d)とするために、通常3mmから5mmの間隔を持つことが必要である。そのため、偏向器39(ポリゴンミラー)の高さ(副走査方向Xの高さ)が高くなり、当該偏向器39の空気との接触面積が増大して、風損の影響による消費電力アップ、騒音の増大、コストアップなどの問題が生じていた。特に、光走査装置の構成部品で偏向手段の占めるコスト比率は高く、コスト面での課題が大きかった。
その点、前述した本実施形態にかかる光走査装置としてのユニット22の光源装置31(図14(b)に示す)によれば、偏向器39の偏向面95で反射される、複数の半導体レーザ51,52からの光ビーム59,60,61,62は、偏向器39の偏向面95の法線に対し角度を持つ(副走査方向Xに角度を持つ)ように入射されることで、偏向器39の高さを大幅に低減することが可能となり、偏向器39の偏向面95の副走査方向Xの厚みを低減でき、当該偏向面95の慣性を小さくでき、起動時間を短くできる(画像の高速形成が可能となる)。
次に、本発明の第2の実施形態にかかる光走査装置としてのユニット22を、図11を参照して説明する。なお、本実施形態では、第2走査レンズ116の入射面と出射面との双方が前述した特殊トロイダル面に形成され、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面が当該第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの基準軸に対して直交する方向に沿って平坦に形成されている。第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面が母線湾曲面に形成されている。
母線湾曲面とは、副走査方向Yの断面形状が円弧であり、かつ円弧の頂点を結んだ母線が副走査方向Xに湾曲している。また、本実施形態においても、前述した仮想的な光ビームG1,G2を直線上に結像するように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kが形成されている。
図11は、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの母線湾曲量と、入射面における走査線曲がりの関係を示す。中心では湾曲量を0とし、前記第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面の母線を、基準面Dに対して同じ側から入射する二つの光ビーム59,60,61,62の被走査面上における走査線曲がりの向きが互いに逆でかつ大きさが略等しくなるように、レンズ高さが高くなるに従い基準面D側に湾曲している。
前述した母線湾曲面は、以下の式2で示すことができる。
第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を前述のような母線湾曲面とすることで、基準面Dに対して同じ側から入射する二つの光ビーム59,60,61,62の被走査面上における走査線の湾曲は互いに異なる向きとすることができる。このため、基準面Dに対して同じ側から入射する二つの光ビーム59,60,61,62に対応する折返しミラー118の枚数の差を奇数とすることで、被走査面上における走査線曲がりの方向を一致させることが可能になり、色ずれの少なく、かつレイアウトの自由度の高い走査光学系とすることが可能となる。
本実施形態によれば、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面と出射面とのうち入射面が副走査方向Xの断面形状が主走査方向Yの位置に応じて曲率の変化する円弧でかつ該円弧の頂点を含んで形成される母線が副走査方向Xに湾曲した母線湾曲面であるので、第1走査レンズがより良好な走査線曲がり補正を行うことができ、走査線曲がりをより確実に最少にすることができる。よって、より走査線曲がりの小さい即ちより色ずれの小さいユニット22とすることができるため,従来以上に高画質なデジタル複写機やレーザプリンタなどの画像形成装置1を実現することができる。
前述した実施形態では、偏向器39が振動ミラー85を備えている。しかしながら、本発明では、偏向器39が、回転自在なポリゴンミラーであっても良い。この場合、ポリゴンミラーは、偏向面が多数設けられた多面体に形成されるのが望ましい。この場合も、前述した実施形態と同様に、光ビーム59,60,61,62同士を傾かせることで、ポリゴンミラーの小型化を図ることができる。
また、本発明では、図11(a)に示す光源ユニット48各々に半導体レーザ51を一つのみ取り付けて、この光学ユニット48を及び図11(b)に示すように副走査方向Xに四つ並べて前述した光源部36を構成しても良い。なお、前述した実施形態と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。この場合には、4個の光源ユニット48の発光源としての半導体レーザ51からの光ビームを、ビーム合成手段40を用いて合成して、偏向面95などに向けて出射する。
また、前述した光ビーム59,60間の中心を通る仮想的な光ビームG1,G2と、前述した光ビーム61,62間の中心を通る仮想的な光ビームFとを直線上に結像できるように、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを形成している。しかしながら、本発明では、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kを、前述した光ビーム59,60間であれば中心を通らない仮想的な光ビームと、前述した光ビーム61,62間であれば中心を通らない仮想的な光ビームを直線上に結像できるように形成しても良い。
また、前述した実施形態では、光ビーム59,60,61,62を四つ設けているが、本発明では、光ビーム59,60,61,62をいくつ設けても良い。
また、本発明の光走査装置としてのユニット22をさらに高速なものとするためには、最も被走査面に近い第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kに像高に応じて副走査方向Xの曲率が異なる面を少なくとも一面用いると良い。このような構成にすることで、前述した実施形態のような副走査倍率が-0.5程度の走査光学系において、像高間の倍率偏差を低減することができる。また、副走査方向Xの像面湾曲をより良好に補正する効果も期待できる。
さらに好ましくは、副走査方向Xの曲率が、基準軸を中心として主走査方向Yに非対称に変化させると良い。前述した実施形態の光走査装置としてのユニット22において、光ビーム59,60,61,62を主走査方向Yに角度を持って偏向器39に入射させている。この結果、偏向器39としてポリゴンミラーを用いた場合に回転多面鏡による「光学的サグ」の発生は、第2走査レンズ116の基準軸に対して主走査方向Yに対称に発生しない。つまり、諸収差が発生する原因となる光路長差が中心に対し左右対称とならないため諸収差の発生も左右非対称に発生するため、このような構成とすることで効果的な収差補正が可能となる。
本発明の光走査装置としてのユニット22をさらに小型で低コストなものとするためには、偏向器39の偏向面95の反射点と、最も偏向器39に近い第2走査レンズ116への入射点とが、前記偏向器39の回転軸と直交し第2走査レンズ116の基準面Dを含む平面に対して互いに反対側に配置させるとよい。
本発明の光走査装置において、より良好な波面収差補正を行うためには、第1走査レンズEにおいて、副走査方向Xの負のパワーが、像高が高くなるに従い大きくなるよう像高に応じて副走査方向Xの曲率を変化させるとよい。
先の説明の通り、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの主走査方向Yの入射角は、周辺像高に行くほどきつくなり、光束のねじれは大きくなり、周辺像高に行くほど波面収差の劣化によるビームスポット径の太りは大きくなる。
波面収差の劣化は、特に副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射時に、光ビーム59,60,61,62がねじれることにより大きく発生するため、波面収差の補正のためには、前記副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射高さを補正し、被走査面上で一点に集光するようにする必要がある。特殊トロイダル面で波面収差を補正する場合、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの入射高さを高くし、光ビーム59,60,61,62内の主走査方向Y両端の光ビームについても、周辺に行くほど副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの副走査方向Xの入射高さを高くすることで補正可能となる。つまり、最も副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより偏向器39側の第2走査レンズ116に、偏向器39の偏向面95の法線に対し副走査方向Xに角度を持つ光ビーム59,60,61,62に対し、周辺に向かいより負のパワーが大きくなるように特殊トロイダル面を形成し、副走査方向Xに強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kへの副走査方向Xの入射位置を調整することで、波面収差の劣化を補正可能となる。このため、波面収差の補正を行うために用いる特殊トロイダル面は、副走査方向Xに最も強い屈折力を持つ第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kより、偏向器39側の第2走査レンズ116に設けることが望ましい。
また、本発明では、本発明の主旨に反しない限り、折返しミラー118を如何ように配置しても良い。さらに、前述した第1の実施形態では、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を特殊チルト偏芯面としたが、本発明では、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を特殊チルト偏芯面としても良い。前述した第2の実施形態では、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を母線湾曲面としたが、本発明では、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を母線湾曲面としても良い。
また、本発明の発明者は、前述した実施形態に記載された走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kを製造して、本発明の効果を確認した。
(実施例1)
波長が780nmの光ビーム59,60,61,62を出射する半導体レーザ51,52を用い、主走査方向の走査幅を220mmとし、偏向面が6面で内接円の半径が13mmのポリゴンミラーを偏向器として用い、ポリゴンミラーへの入射角を主走査断面で60度とし、副走査断面で1.46度及び3.30度とし、走査光学系の副走査横倍率を−0.49とし、ポリゴンミラーの偏向範囲を±23.4度とした。
第2走査レンズ116の入射面と出射面と第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を、前述した特殊トロイダル面とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を、前述した特殊チルト偏芯面とした。
また、内側の光ビーム60,61に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表1に示す関係とし、外側の光ビーム59,62に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表2に示す関係とした。
なお、表1及び表2において、RYは、主走査方向Yの曲率を示し、RZは、主走査方向Yの曲率を示し、Xは、主走査方向Yの次の面までの距離を示し、Zは、副走査方向Xの次の面までの距離を示し、Nは、設計波長の光ビーム59,60,61,62に対する屈折率を示している。
さらに、第2走査レンズ116の入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表3とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表4とした。
(実施例2)
波長が780nmの光ビーム59,60,61,62を出射する半導体レーザ51,52を用い、主走査方向の走査幅を220mmとし、偏向面が6面で内接円の半径が13mmのポリゴンミラーを偏向器として用い、ポリゴンミラーへの入射角を主走査断面で60度とし、副走査断面で1.46度及び3.30度とし、走査光学系の副走査横倍率を−0.49とし、ポリゴンミラーの偏向範囲を±24.0度とした。
第2走査レンズ116の入射面と出射面と第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を、前述した特殊トロイダル面とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を、前述した特殊チルト偏芯面とした。
また、内側の光ビーム60,61に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表5に示す関係とし、外側の光ビーム59,62に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表6に示す関係とした。
なお、表5及び表6において、RYは、主走査方向Yの曲率を示し、RZは、主走査方向Yの曲率を示し、Xは、主走査方向Yの次の面までの距離を示し、Zは、副走査方向Xの次の面までの距離を示し、Nは、設計波長の光ビーム59,60,61,62に対する屈折率を示している。
さらに、第2走査レンズ116の入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表7とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表8とした。
(実施例3)
波長が780nmの光ビーム59,60,61,62を出射する半導体レーザ51,52を用い、主走査方向の走査幅を220mmとし、偏向面が6面で内接円の半径が13mmのポリゴンミラーを偏向器として用い、ポリゴンミラーへの入射角を主走査断面で60度とし、副走査断面で1.46度及び3.30度とし、走査光学系の副走査横倍率を−0.49とし、ポリゴンミラーの偏向範囲を±23.4度とした。
第2走査レンズ116の入射面と出射面を、前述した特殊トロイダル面とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面を前述した母線湾曲面とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの出射面を平坦な面とした。
また、内側の光ビーム60,61に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表9に示す関係とし、外側の光ビーム59,62に対する走査レンズ116,117Y,117M,117C,117Kの相対的な位置関係などを以下の表10に示す関係とした。
なお、表9及び表10において、RYは、主走査方向Yの曲率を示し、RZは、主走査方向Yの曲率を示し、Xは、主走査方向Yの次の面までの距離を示し、Zは、副走査方向Xの次の面までの距離を示し、Nは、設計波長の光ビーム59,60,61,62に対する屈折率を示している。
さらに、第2走査レンズ116の入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表11とし、第1走査レンズ117Y,117M,117C,117Kの入射面及び出射面各々の各種の式1中のパラメータを以下の表12とした。
前述した第1乃至第3実施例のいずれにおいても、色ぶれのない良好なカラー画像を得ることができた。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。