本発明は、デジタル複写機、レーザプリンタ、レーザファクシミリ等の画像形成装置に用いることができる光走査装置およびこれを用いた上記のような画像形成装置に関するものである。
まず、従来の光走査装置および画像形成装置について説明する。複写機、レーザプリンタ等の画像形成装置において広く用いられている光走査装置は、一般に、光源側からの光ビームを光偏向器により偏向させ、fθレンズ等の走査結像光学系により被走査面に向けて集光して被走査面上に光スポットを形成し、この光スポットで被走査面を光走査(主走査)するように構成されている。被走査面の実体をなすものは光導電性の感光体等からなる像担持体表面の感光面である。
また、フルカラー画像形成装置の一例として、4つの感光体を記録紙の搬送方向に配列し、これらの各感光体に対応した複数の光走査装置で各感光体を光走査して各色の画像情報に対応した画像を形成し、各色の画像を同一の転写紙に重ねて転写するように構成されている。より具体的に説明すると、各光走査装置の光源装置から放射された光ビームの光束を1つの偏向手段により偏向走査し、各感光体に対応する複数の走査結像光学系により各感光体に同時に露光してそれぞれの色の画像情報に対応した潜像をつくり、これらの潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化したのち、これらの可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写し定着することで、カラー画像を得られるように構成されている。
このように、光走査装置と感光体の組み合わせを2組以上用いて、2色画像や多色画像、カラー画像等を得るようにした画像形成装置は「タンデム式画像形成装置」として知られている。このようなタンデム式画像形成装置として、複数の感光媒体(像担持体)が単一の光偏向器を共用する方式が知られている。この方式をさらに分類すると以下のようになる。
(1)光偏向器の径方向両側より光束を入射し、光束を光偏向器の径方向両側に振り分けて走査する対向走査方式(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
(2)略平行でかつ副走査方向に離れた複数の光束を偏向器に入射し、複数の光束に対応する複数の走査光学素子を副走査方向に並べて走査する方式(例えば、特許文献3参照)。
(3)偏向器の片側より光束を入射し、走査光学系を3枚のレンズで構成し、第1、第2のレンズL1、L2は互いに異なる被走査面に向かう複数の光束が通過するレンズであり、第3のレンズL3は各被走査面毎に設けられているもの(例えば、特許文献4、特許文献5、特許文献6参照)。
このように、複数の被走査面で光偏向器を共用すると、光偏向器の数を減らすことにより、画像形成装置をコンパクト化し、低コスト化することが可能になる。
次に、最近のカラー画像形成装置の光走査装置において採用されている斜入射光学系について説明する。単一の光偏向器を用いたカラー画像形成装置の光走査装置において、低コスト化を図る手段として、光偏向器の偏向反射面に、副走査方向に角度を持って光ビームを入射させる斜入射光学系が知られている(例えば、特許文献7参照)。この斜入射光学系は、複数の光ビームがそれぞれ偏向反射面で偏向反射された後に、折返しミラーなどで分離されて各光ビームに対応する被走査面(感光体表面)に導かれる。この時、それぞれの光ビームの副走査方向の角度(光偏向器の変更反射面に斜入射する角度)は、上記ミラーで各光束が分離可能な角度に設定されている。このように構成された斜入射光学系を用いることで、前記ミラーで各光束が分離可能な副走査方向の隣接する光ビーム間隔を、ポリゴンミラーなどの光偏光器が大型化することなく(副走査方向への光偏向器の多段化あるいは厚肉化すること無く)確保することが可能となる。
光偏向器として、ポリゴンミラーを用いる場合を考えてみると、通常の入射方式では、光源側からの光束をポリゴンミラーの回転軸に向けて入射させることが難しく、ポリゴンミラーを小型化することができない。光束をポリゴンミラーの回転軸に向けて入射させることは不可能ではないが、回転軸に向けて入射させた場合、必要な偏向角を確保しようとすると、個々の偏向反射面が副走査方向に極端に大きくなる。また、所謂「サグ」の発生も大きく、発生するサグは像高:0に対して非対称である。ポリゴンミラーが大きいと、その高速回転に大きなエネルギーを必要とし、高速回転させたときの「風切り音」も大きく、防音手段も大型化せざるを得ない。
これに対し、前述の斜め入射方式によれば、光源側からの光束をポリゴンミラーの回転軸に向けて入射させることが可能で、ポリゴンミラーを小径化することができ、ポリゴンミラーを高速回転させたときの「風切り音」も小さく、従って高速化に適している。ポリゴンミラーを小径化できるのでサグの発生も小さく、発生するサグを像高:0に対して対称化できるので、補正も容易である。
しかし反面、斜め入射方式は「走査線曲がり」が大きいという問題がある。この走査線曲がり発生量は、前記各光ビームの副走査方向の斜入射角により異なり、各々の光ビームで描かれた潜像を各色のトナーにより重ね合わせ可視化した際に、色ずれとなって現れてしまう。また、斜入射することにより、光束が走査レンズにねじれて入射することで、波面収差も増大し、特に周辺の像高で光学性能が著しく劣化し、ビームスポット径が太ってしまい、高画質化を妨げる要因となる。また、斜め入射方式では、光源側からの光束をポリゴンミラーの回転軸に向けて入射させるために、主走査方向で走査レンズの光軸と重なる位置に光源を配置した場合、走査レンズとの干渉を避けるために斜入射角が増大し、上記のような問題点が大きくなる要因となる。
斜め入射方式に固有の「大きな走査線曲がり」を補正する方法として、走査結像光学系に「副走査断面内におけるレンズ面の固有傾きを、走査線曲がりを補正するように主走査方向へ変化させたレンズ面を有するレンズ」を含める方法(例えば、特許文献8参照)や、走査結像光学系に「副走査断面内における反射面の固有傾きを、走査線曲がりを補正するように主走査方向へ変化させた反射面を有する補正反射面」を含める方法(例えば、特許文献9参照)等が提案されている。
また、斜入射される光束を走査レンズの軸外を通し、走査レンズの子線の非球面量を主走査方向に沿って変化させる面を用いて走査線の位置を揃える方法が提案されている(例えば、特許文献10参照)。特許文献10記載の発明においては、1枚の走査レンズにて補正を行う例を挙げており、前記走査線曲がりの補正は可能であるが、以下に説明する波面収差増大によるビームスポット径の劣化については記述されていない。
斜め入射方式における今1つの問題は、光線スキューにより周辺像高(走査線の両端部近傍)で波面収差の大きな劣化が発生し易いことである。このような波面収差が生じると、周辺像高で光スポット径が大径化してしまう。この問題を解決できないと、近年強く要請されている「高密度の光走査」を実現できない。上記特許文献10記載の光走査装置では、斜め入射方式に特有の大きな走査線曲がりが極めて良好に補正されているが、上記波面収差の補正は十分といえない。
斜め入射方式の問題点といえる上記「走査線曲がりと波面収差の劣化」を良好に補正できる光走査装置として、走査結像光学系に複数の回転非対称レンズを含め、これら回転非対称レンズのレンズ面の子線頂点を結ぶ母線形状を副走査方向に湾曲させたものが提案されている(例えば、特許文献11参照)。しかし、上記「子線頂点を結ぶ母線形状を副走査方向に湾曲させたレンズ面」を有するレンズは、母線を湾曲させることで諸問題を解決しており、入射光束に対応した個別の走査レンズが必要となるため、タンデム型の走査光学系に適用する場合、走査レンズの枚数が増大してしまう。同一のレンズに異なる被走査面に向かう複数の光束を入射させた場合、母線形状を湾曲させることにより一方の光束に対しては諸問題の解決がなされるが、他方の光束については走査線曲がりや波面収差を低減させることは難しい。
次に、高画質、色ずれ低減について説明する。走査特性の向上を目指して光走査装置の光学素子に、非球面に代表される特殊な面の採用が一般化している。このような特殊な面を容易に形成することができ、なおかつコストも安価な「樹脂製の光学素子」が多用されている。特に、前述のタンデム式画像形成装置では、使用する光学素子の数が多いことから、樹脂製の光学素子を使用することによるコストダウン効果は非常に大きい。
しかし、光走査装置に樹脂製の光学素子が用いられていると、樹脂はガラスに比べ熱膨張係数が大きいため温度変化による形状変化が大きく発生し、樹脂製光学素子の光学特性が変化する。発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段により、光学箱内の温度が上昇するとき、ポリゴンミラーの回転によって発生する気流、あるいは光学箱内の形状の違いなどにより、熱は一律に伝達していくことはなく、光学箱内の温度は温度分布すなわち場所によって温度差を持つ。また、走査レンズにおいても、熱の伝わり方の違い、レンズ形状の違い(光学箱への設置面積の違い)等によって温度が異なり、走査レンズごとにその場所によって温度差が発生する。
前記タンデム方式画像形成装置では、各感光体に向かう光束は異なる走査レンズを通過し、走査レンズを保持する光学箱内の温度分布により、各走査レンズ間で異なる温度分布が生じることより、走査レンズの形状変化、屈折率の変化などは一律ではなく、各感光体での走査長さの変化量や等速性の変化は異なる。したがって、各感光体に形成された潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなどの各々異なる色の現像剤を使用する現像器で可視像化したのち、これらの可視像を同一の記録紙に順次重ね合わせて転写し定着してカラー画像を得ると、所謂「色ずれ」が生じてしまう。特に光学箱内で発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段に最も近い走査レンズが樹脂製の場合には、光学特性の変化は大きくなる。
さらに、連続して画像を出力する場合、特に連続出力枚数が多い場合には、偏向手段の発熱により、機内温度(光学箱内温度)は上昇していく。このため、各走査レンズの温度差が拡大していき、先に説明したように色ずれが発生し、色ずれ量も変化していく。この結果、最初に出力された画像と、最後に出力された画像で、色ずれにより色味が変化してしまうという課題がある。
前記「走査長さの変化」の問題に対処する方法として、書込開始側と書込終了側とに各々受光手段を配し、各受光手段の受光時間差に基づき、各光ビームの画周波数を調整する方法がある(例えば、特許文献12参照)。この方式を上記「複数の被走査面で光偏向器を共用」するタンデム式画像形成装置に採用しようとすると、書込終了側に受光手段配置用のスペースを必要とするため、有効書込幅の確保がより困難になる。また、特許文献12記載の発明のように、書込開始側と書込終了側とに各々受光手段を配し、各受光手段の受光時間差に基づき、各光ビームの画周波数を調整する方法では、各感光体での走査線の長さは補正可能であるが、各走査レンズの持つ温度分布による等速性の変化は補正することができない。このため、例えば書込開始と書込終了での主走査方向のドット位置を各感光体で補正しても、中間での主走査方向のドット位置は一致せず、色ずれが発生してしまう。
前記タンデム方式の光走査装置においては、上記の問題を解決するために、発熱が大きいポリゴンミラー等の偏向手段に最も近い走査レンズの材料をガラスとした例も多くあるが、樹脂製の走査レンズに比べ、大幅なコストアップとなってしまう。
特開平11−157128号公報
特開平9−127443号公報
特開平9−54263号公報
特開2001−4948号公報
特開2001−10107号公報
特開2001−33720号公報
特開2003−5114号公報
特開平11−14932号公報
特開平11−38348号公報
特開2004−70109号公報
特開平10−73778号公報
特開平9−58053号公報
本発明は、以上述べた従来技術の問題点を解消するためになされたもので、その目的は以下のとおりである。
(1)低コスト、低消費電力、小型化に適した、斜め入射方式の光走査装置において、走査線曲がりと波面収差の劣化を有効に補正することができる光走査装置を提供することを目的とする。
(2)温度変動時においても色ずれの発生が小さい光走査装置を提供することを目的とする。
(3)斜め入射方式の光走査装置において、走査線曲がりと波面収差の劣化を有効に補正し、温度変動時においても色ずれの発生が小さい画像形成装置を提供することを目的とする。
(4)小型化を図り、マルチビームによる光偏向器の回転数低下による消費電力の低下を図るなど、環境を考慮した光走査装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
本発明は、光源装置を複数持ち、各光源装置からの光ビームは共通の光偏向器により偏向された後、走査光学系により各々対応する被走査面に集光され被走査面を走査する光走査装置において、
複数の光源装置からの少なくとも一つの光ビームは、光偏向器の反射面の法線に対し副走査方向に角度を持ち、
走査光学系は少なくとも2枚の走査レンズを持ち、
走査光学系の少なくとも1枚の走査レンズは、異なる被走査面へ向かう複数の光ビームで共用され、
光ビームの通過位置における、副走査方向の屈折力が最も大きい走査レンズより光偏向器側の走査レンズの少なくとも1面は、副走査方向の形状が非円弧形状でありかつ主走査方向に対応する上記非円弧量が変化する特殊面であることを最も主要な特徴とする。
光源装置からの光ビームが、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持ち、走査光学系の少なくとも一面に、副走査方向に曲率を持たず、かつ、像高に応じて偏芯角度が異なる面形状とすることで、斜め入射方式の光走査装置における走査線曲がりと波面収差の劣化を有効に補正することができる光走査装置を実現することができる。
光源装置を複数持ち、走査光学系の少なくとも最も回転多面鏡に近い走査レンズを複数の光源装置からの光ビームで共有することで、カラー画像の高画質化に向け、色ずれの小さい光走査装置を実現することができる。また、複数の光源装置より射出された光ビームは、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持つ光ビームを用いることで、光走査装置の小型化を達成することができる。
マルチビームによる光偏向器の回転数低下による消費電力の低下など、環境を考慮した光走査装置および画像形成装置を実現することができる。
以下、本発明にかかる光走査装置および画像形成装置の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、光走査装置の実施例1を説明するための図である。図1(a)において、光源としての半導体レーザ20から放射された発散性の光束は第1光学系を構成するカップリングレンズ21により以後の光学系に適した光束形態に変換される。カップリングレンズ21により変換された光束形態は、平行光束であってもよいし、弱い発散性あるいは弱い集束性の光束であってもよい。ほぼ平行光束であるカップリングレンズ21を透過した光束は、第2光学系を構成するシリンドリカルレンズ22により副走査方向にのみ集光され、ポリゴンミラー(回転多面鏡)23からなる光偏向器の偏向反射面に入射して、偏向反射面近傍に主走査方向に長い線像が結ばれるように構成されている。光源側からの光束は、ポリゴンミラー23の偏向反射面の回転軸に直交する平面Aに対して傾いて入射する。従って、図1(b)からわかるように、偏向反射面により反射された光束も、上記平面Aに対して傾いている。ポリゴンミラー23の回転軸に直交する平面に対し光ビームに角度をつけるには、光源装置、カップリング光学系(第1光学系)を所望の角度に傾けて配置しても良いし、図1(a)に示すように、第2光学系とポリゴンミラー23との間に配置したミラー26を用いて角度をつけても良い。また、第1光学系を構成するカップリングレンズ21の光軸を副走査方向にシフトすることで、ポリゴンミラー23の偏向反射面に向かう光ビームに角度をつけるようにしてもよい。
ポリゴンミラー23の偏向反射面により反射された光束は、ポリゴンミラー23の等速回転に伴い等角速度的に偏向される。偏向された光束は、走査光学系を構成する第1走査レンズL1、第2走査レンズL2を透過して被走査面25上に到達する。走査レンズL1、L2からなる走査結像光学系は、上記偏向光束を被走査25面に向けて集光する。これにより、偏向光束は被走査面25上に光スポットを形成し、被走査面を走査する。また、上記走査結像光学系は、等角速度的な偏向光束を、被走査面上において等速度的に走査させるfθ機能を持っている。
例えば、偏向手段に最も近い第1走査レンズL1の主走査方向の面形状を非円弧形状とし、あるいは、その他の走査レンズの面形状を主走査方向に非円弧形状とし、かつ、副走査断面内の曲率中心を主走査方向に連ねた曲率中心線が、主走査断面内で上記主走査方向の非円弧形状とは異なる曲線となるように、副走査断面内の曲率半径を主走査方向に変化させた面を用いることで、主走査方向、副走査方向共に像面湾曲を良好に補正することが可能である。図1(b)は、ポリゴンミラー23の偏向反射面から走査レンズL1、L2を経て被走査面25に至る相互の位置関係を示している。
図1に示す例において、走査光学系を構成するレンズL1,L2の中で、偏向手段としてのポリゴンミラー23に最も近い走査レンズL1は、異なる被走査面に向かう複数の光ビームに共通のレンズとなっていて、複数のビームが通過する構成となっている。この結果、走査結像光学系を構成するレンズ枚数を低減することができ、低コストの光走査装置を提供可能となる。また、偏向手段としてのポリゴンミラー23を高速で回転駆動することにより、ポリゴンモータが発熱し、走査レンズの主走査方向の温度に差が生じる。すなわち温度分布が生じて、光走査によって形成される画像の品質に影響を受ける。しかし、上記のように、一つの走査レンズL1を複数の光ビームで共通に使用する構成によれば、被走査面25に向かう光ビームが一律に上記温度分布による影響を受けるため、色ずれや色味による画像劣化を抑制することができる。
偏向手段としてのポリゴンミラーは、これを高速回転駆動するモータ部、およびその回路基板による発熱が大きい。回路基板に関しては、これを光学箱の外に出すなどして、光学箱内の温度変動を低減することができるが、ポリゴンモータ部の発熱を外部に放出することは難しく、モータ部の発熱による光学箱内の温度上昇を避けることはできない。このモータ部などで発生した熱が光学箱内を伝搬することによって、走査光学系を構成するレンズ、特に、ポリゴンミラー25に最も近い走査レンズL1に温度分布を生じさせる。この温度分布は、特にポリゴンミラー25の高速回転によって発生する光学箱内の気流の経路、走査レンズの形状等により、走査レンズ内で一様な温度変化とならないために発生する。この結果、各被走査面25に向かうビームがそれぞれ異なる走査光学素子を通過する対向走査方式のタンデム方式カラー画像形成装置などにおいては、連続プリント時に各被走査面25での相対的な主走査方向のビームスポット位置が変動し、色味が変化してしまう。
そこで、走査結像光学系を構成する走査レンズのうち、異なる被走査面に向かう全ての光束が偏向手段に最も近い走査レンズを通過するように構成することが望ましい。このように構成することにより、走査レンズが主走査方向に温度分布をもった場合においても、異なる被走査面に向かう光ビームが透過する走査レンズの温度分布はほぼ同一となり、温度分布により発生する主走査方向の屈折力変化(面形状変化)をほぼ揃えることができる。その結果、異なる被走査面での主走査方向のビームスポット位置ずれはほぼ同一となり、連続プリント時の色味の変化、色ずれの発生を抑制することができる。
この温度分布の発生は、ポリゴンミラー23を密閉し、ポリゴンミラー23への光束の入出射は平行平板ガラスを通して行うようにすることで改善される。しかしながら、温度及び前記温度分布を完全に一致させることは難しい。ポリゴンミラー23の片側においてのみ走査し、全ての光ビームが第1走査レンズL1を共用するする片側走査方式によれば、色ずれ、色味の変化を比較的良好に低減することができる。
また、図2(a)に示すように、偏向手段としてのポリゴンミラー23の偏向反射面で反射される複数の光源装置からの光ビームの少なくとも一つを、ポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対して角度を持つ光ビームすなわち副走査方向に角度を持つ光ビームとすることで、光走査装置を構成する部品でコスト比率の高い光偏向器のコストを下げ、消費電力を低減でかつ騒音を低減することが可能な、環境を考慮した光走査装置を提供することが可能となる。
全ての光ビームを第1走査レンズL1で共用する片側走査方式の場合、図2(b)に示すような、全ての光ビームがポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対し水平であった従来の光走査装置においては、良好な光学性能が得られる反面、各光源装置からの光ビーム、つまり互いに異なる被走査面に導かれる光ビーム相互の間隔は、光ビームごとに分離するのに必要な間隔、通常3mmから5mmの間隔を持つことが必要である。そのため、偏向手段としてのポリゴンミラー23の高さ(副走査方向の高さ)hが高くなり、ポリゴンミラー23の空気との接触面積が増大して、風損の影響による消費電力アップ、騒音の増大、コストアップなどの諸問題が生じていた。特に、光走査装置の構成部品の中で偏向手段の占めるコスト比率が高いため、コスト面での課題が大きかった。
その点、前述の本発明にかかる光走査装置の実施例によれば、偏向手段としてのポリゴンミラー23の偏向反射面で反射される複数の光源装置からの光ビームは、ポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対し、角度を持つ(副走査方向に角度を持つ)光ビームを含む構成とし、全ての光ビームを、これらの光ビームが共有する第1走査レンズL1に入射させるように構成することで、図2(a)(c)に示すように、ポリゴンミラーの高さhを大幅に低減することが可能となり、前述の課題を解決することができる。
図2(a)に示す例では、ポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対し水平な光ビームと、法線に対し角度を持つ(斜め入射する)光ビームを有するものにおいて、全ての光ビームで共用する走査レンズの入射面で、副走査方向周辺側(外側)の二つの光ビームは互いに広がり、副走査方向中間部の二つの光ビームは互いに平行かつポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対し水平な光ビームとしている。この例によれば、図2(c)に示す例のような全ての光ビームを斜入射させる方式に比べて、斜め入射する光ビームの副走査方向の角度βS1,βS2を小さく設定することが可能となる。
従来の、変更反射面の法線に対して水平に入射させる方式に対し、副走査方向に斜めに入射させる方式では、全ての光ビームで共用するレンズに角度を持って入射することにより、諸収差量が増大し光学性能が劣化することは公知である。本発明では、走査光学系の少なくとも1面を、後述する特殊面とし、上記光学性能の劣化を補正している。しかし、ポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対する角度(副走査方向に斜入射する角度)を小さくすることで、光学性能の劣化を小さく抑えることが可能となり、良好な光学性能を実現することができる。この結果、安定したビームスポット径を得ることが可能となり、ビームスポット径の小径化による画質向上にも有利となる。
また、図2(a)に示す構成の片側走査方式の光走査装置においては、ポリゴンミラー23の偏向反射面を形成する多面体は、所定のレーザビームを偏向するのに十分な軸方向長さ(副走査方向の厚み)を有しておればよく、副走査方向に所定の間隔を持つ光ビームは、互いに異なる偏向反射面で反射される構成が望ましい。図4(a)に示す例がそれで、この例のように、偏向反射面を形成する多面体を副走査方向に分割して2段化し、各段の偏向反射面で異なる光ビームを偏向反射するように構成されている。かかる構成とすることで、偏向反射面の軸方向の長さ(副走査方向の厚み)を小さくすることができ、回転体としてのポリゴンミラー23の慣性力を小さくすることができ、起動時間を短くすることができる。
図3は、光偏向手段としてのポリゴンミラー23の回転中心軸を挟んで両側から光ビームが入射され、光ビームが両側に偏向反射されるように構成された対向走査方式の光走査装置の例を示す。図3において、ポリゴンミラー23は偏向反射面が2段に形成されていて、回転中心軸を挟んで片側からは、二つの光源部201,202からの光ビームが、2段構成の各偏向反射面に入射され、上記回転中心軸を挟んで他方の片側からは、他の二つの光源部203,204からの光ビームが、2段構成の各偏向反射面に入射されるように構成されている。ポリゴンミラー23の片側で偏向反射された光束は第1走査レンズL11を透過し、さらに図示されない第2走査レンズを透過してそれぞれ異なる被走査面に光スポットとして結ばれるように構成されている。同様に、ポリゴンミラー23の他方側で偏向反射された光束は第1走査レンズL12を透過し、さらに図示されない第2走査レンズを透過してそれぞれ異なる被走査面に光スポットとして結ばれるように構成されている。
このような対向走査方式の光走査装置においては、ポリゴンミラー23の各段の偏向反射面に、複数の光ビームを副走査方向に所定の間隔を持たせて入射させる必要がない。つまり、左右共に2つずつの被走査面(感光体)に向かう光ビームをそれぞれポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持たせ斜入射させるように構成すれば、ポリゴンミラー23の偏向反射面を形成する多面体を一段で、かつ、副走査方向の厚みを薄くすることができる。その結果として、回転体としてのポリゴンミラー23の慣性力を小さくすることができ、起動時間を短くすることができる。また、従来の対向走査方式において2段化されたポリゴンミラーに対し、形状の単純化あるいは小型化が可能であることから、コストダウンを図ることができる。
上記のように、ポリゴンミラー23の偏向反射面を1段構成とし、斜め入射させるものにおいて、ポリゴンミラー23の偏向反射面の法線に対する光ビームの副走査方向の角度は、斜入射を用いる光学系としては図4(b)に示すように、最も小さく設定することが可能である。図4(a)は、斜入射させない従来方式の水平入射方式のレイアウトであり、複数の光ビームを分離させるのに必要な間隔Zを得るために、2段化されたポリゴンミラーを使用している。これに対して図4(b)は、斜入射を用いた例で、前述した片側走査方式での光線レイアウトを破線で示し、斜入射角をβS2で表している。図4(b)から明らかなように、対向走査方式では、実線で示すように、斜入射角βS1を上記βS2よりも小さく設定することが可能となる。
図3に示すような対向走査方式等の、片側で2つの異なる被走査面に対応する光学系においては、2つの互いに異なる被走査面に向かう全ての光ビームを、図2(c)に示すように光偏向器の反射面の法線に対し角度を持つようにすることで、光偏向器の小型化、単純化を図ることができ、コストを大幅に低減することが可能となる。
従来の水平入射に対し、副走査方向に斜入射させる本方式では、光束が走査レンズにねじれて入射することで、波面収差が増大する。特に周辺の像高で光学性能が著しく劣化し、ビームスポット径が太ってしまい、高画質化を妨げる要因となる。そこで本発明においては、光ビームの通過位置において、副走査方向の屈折力が最も大きい走査レンズより光偏向器側の走査レンズの少なくとも1面を特殊な面としている。すなわち、上記1面は、副走査方向の形状を非円弧形状とし、かつ、主走査方向に応じて非円弧量が変化する特殊面としている。かかる構成にすることで、波面収差の劣化を低減している。
次に、上記特殊面について説明する。ここで言う特殊面とは、レンズ短手方向(副走査方向)の形状が非円弧形状であり、さらに、レンズ長手方向(主走査方向)のレンズ高さに対応するレンズ短手方向非円弧量が異なる面である。
レンズ面の上記特殊面形状は、以下の形状式による。ただし、本発明におけるレンズ面の面形状は以下の形状式に限定されるものではなく、同一の面形状を別の形状式を用いて特定することも可能である。光軸を含み、主走査方向に平行な平断面である「主走査断面」内の近軸曲率半径をRY、光軸から主走査方向の距離をY、高次係数をA、B、C、D・・・とし、主走査断面に直交する「副走査断面」内の近軸曲率半径をRZとすると、
となる。(F0+F1・Y+F2・Y^2+F3・Y^3+F4・Y^4+・・)Zは、チルト量を表す部分であり、チルト量を持たないとき、F0,F1,F2,・・・は全て0である。
また非円弧量とは、これを例えば上の式で表現される面を、副走査断面の有効範囲内において、最小二乗近似によりフィッティングした円弧形状からのずれ量のPV値と定義する。つまり、上記特殊面とは、走査レンズ主走査方向(長手方向)で上記PV値が異なる面であると言うことができる。
次に、偏向反射面に対し副走査方向において斜めに入射することによる波面収差劣化について説明する。走査レンズ入射面の主走査方向の形状が、偏向反射面の光ビームの反射点を中心とする円弧形状でない限り、像高により光偏向器の偏向反射面から走査レンズ入射面までの距離が異なることになる。通常、走査レンズを上記のように偏向反射面の光ビームの反射点を中心とする円弧形状にすることは、光学性能を維持する上で困難である。つまり、通常の光ビームは、光偏向器により偏向走査され、各像高にて主走査断面において、レンズ面に対し垂直入射することはなく、主走査方向にある入射角を持って入射する。
光偏向器により偏向反射された光ビームは、主走査方向にある幅を持っており、光偏向器の偏向反射面から走査レンズ入射面までの距離が異なる。したがって、偏向反射面に斜め入射する方式においては、光ビームが偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持っていることにより、主走査方向両端の光ビームは、走査レンズにねじれた状態で入射することになる。この結果、波面収差が著しく劣化し、ビームスポット径が太るという問題がある。かかる問題は、図1、図7から理解することができる。図1に示すように、第1走査レンズL1への主走査方向の入射角は、周辺像高に行くほどきつくなり、これに伴って光束のねじれが大きくなり、周辺に行くほど波面収差の劣化が大きくなる。その結果、図7の上段に示すように、主走査方向のビームスポット径も、副走査方向のビームスポット径も、周辺像高に行くほどきビームスポット径の太りが大きくなる。
そこで、本発明では少なくとも一つの走査レンズの1面が特殊面となっているので、この特殊面形状を、基準軸から主走査方向に離れるに従い、非円弧量が増加する面形状にするとよい。基準軸から主走査方向に離れるに従い非円弧量を増加させると、光束のねじれによる波面収差劣化を補正することができるので、後述するように良好な光学性能を得ることができ、太りのない良好なビームスポット径を得ることができる。
また、二つの走査レンズのうち光偏向手段に近い第1走査レンズL1は、副走査方向の屈折力をゼロもしくはほぼゼロにすることが望ましい。本実施例においては、走査レンズL1は、光偏向手段側の第1面を副走査方向に曲率を持たない面で構成し、光偏向手段とは反対側の第2面を前記特殊面とし、この特殊面も前記特殊面を表す形状式のRZは∞で曲率を持たない面で構成している。前に説明したように、走査レンズL1は光偏向器に最も近く、光偏向器を回転駆動するモータの発熱により温度分布が発生する。そこで、走査レンズL1の副走査方向の形状を、屈折力を持たない面、つまり副走査方向に曲率を持たない面とすることで、異なる被走査面に向かう光ビーム相互間での主走査方向の形状をほぼ一致させることができる。実際には、走査レンズL1の第2面を特殊面とすることで、主走査方向の形状は副走査方向の高さにより変化するが、その量は僅かであり、副走査方向に曲率を付けた場合に比べ主走査方向の形状変化を小さくすることができる。この結果、走査レンズL1に温度分布が発生することによる光ビーム間での倍率変動の差を小さくすることができ、書き出し側と書き終わり側で同期を取り、書き出し位置と書き終わり位置で各光ビームを一致させたときの中間像高での色ずれを低減することができる。
また、偏向手段に最も近い走査レンズL1の副走査方向の屈折力がほぼゼロであるため、被走査面25側に最も近い走査レンズL2は、正の強い屈折率を持つ。この結果、走査結像光学系の副走査倍率は縮小系となり、部品の組み付け誤差、部品の形状誤差などによる性能劣化を抑制することができる。また、副走査方向は、偏向手段の基点と被走査面25とが共役関係にあり、偏向手段の面倒れ補正機能を有していることは言うまでもない。
走査レンズの基準軸近傍、つまり中央像高付近における光ビームは、走査レンズ面にほぼ垂直に入射するため、光ビームが副走査方向に角度を持つことによる波面収差の劣化は小さい。図7の上段に示す波面収差補正前のビームスポット径のグラフからも明らかである。このため、走査レンズL1の第2面は、主走査方向(レンズ長手方向)に前記非円弧量のみを変化させ、走査レンズL1を透過する光ビームを副走査方向に偏向させている。このとき、走査レンズL1の基準軸近傍においては、光ビームは副走査方向に偏向させていない。
ただし、走査レンズL1に副走査方向の曲率を付け屈折力を持たせても、前述のような特殊面を採用することにより同様の効果は得られる。また、前記曲率は主走査方向に変化しても良いが、曲率変化のみでは以下に説明するようにレンズを透過する光ビームを精度良く偏向させることは難しい。したがて、本発明が目的としている所望の効果を得るためには、非円弧量を主走査方向に対応して変化させる必要がある。
波面収差の劣化は、特に副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズへの入射時に、光束がねじれることにより大きくなる。図5は、特殊面を用いることなく、従来の走査光学系において光ビームを偏向反射面に斜入射させたときの副走査断面での光線を示す。図5に示す光線は、カップリングレンズ通過後に配置されているアパーチャの副走査方向中心を通る光線と、主走査方向両端の2本の光線を示す。また、副走査方向に強い屈折力を持つレンズは、図1において第2走査レンズL2であり、第1走査レンズL1は、副走査方向にほとんど屈折力を持たない。さらに、図5中「仮想面」とは、実際には存在しない面であり、図1中において第2走査レンズL2を第1走査レンズL1と水平に配置させるための仮想ミラー面である。
図5から明らかなように、光偏向器としてのポリゴンミラー23で反射された各光ビームは、走査レンズに副走査方向に高さを異ならせて入射する。中心像高においては、走査レンズにほぼ垂直に入射するため、各光ビームは副走査方向に高さを異ならせることなく走査レンズに入射している。このため、波面は劣化せず良好なビームスポット径を保つことができる。一方、周辺像高(ここでは、被走査面上の+150mmの位置)に到達する光束では、ポリゴンミラー32から走査レンズまでの光路長の違いにより、副走査方向に入射高さが異なっている。このため、被走査面25上では各光ビームは一点に集まらず、つまり波面収差が劣化している状態になり、ビームスポット径が劣化している。
また、被走査面25上で像高0に向かう光束と、像高+150mmに向かう光束が副走査方向で一致していない。これは、走査線曲がりを意味し、副走査方向に強い屈折力を持つ第2走査レンズL2までの光路長の差により、周辺像高に向かう光束が、中心像高に向かう光束に対し、副走査方向に強い屈折力を持つ第2走査レンズL2の光軸上より副走査方向に高さを持って入射していることにより発生している。また、ポリゴンミラー23のサグにより、反射点が副走査方向にずれていることも影響している。
波面収差の補正のためには、前記副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズへの入射高さを補正し、被走査面25上で一点に集光するようにする必要がある。このため、波面収差補正のための特殊面は、副走査方向に最も強い屈折力を持つ走査レンズより、光偏向器側のレンズに設けることが望ましい。図6は、特殊面を設けることによって波面収差および走査線曲がりを補正した後の光路図を示す。走査線曲がり補正については、後述する。図6に示す光路図を得るために、第1走査レンズL1の第2面に特殊面を採用し波面収差の補正を行っている。図6を参照すると明らかなように、第2走査レンズL2への入射高さを高くし、主走査方向両端の光ビームについても、周辺に行くほど副走査方向に強い屈折力を持つ第2走査レンズL2への副走査方向の入射高さを高くしている。
通常、走査レンズのレンズ面を、ポリゴンミラー23の偏向反射点を中心として主走査方向で同心円に沿うように形成することは、所望の光学性能を確保するためには難しい。このため、光偏向器としてのポリゴンミラー23にて偏向反射された光ビームは、主走査方向の周辺に行くほど、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持つ方向に高く、走査レンズに入射する。つまり、図5の光路図で示すように、偏向反射面にて光ビームが跳ね上げられた場合、走査レンズの入射面では、周辺像高に行くほど走査レンズの上部を通過する。すなわち、第2走査レンズL2において像高0の光ビーム通過位置を光軸としたとき、+150(mm)像高では副走査方向の高さでプラス側を光ビームが通過する。
前述の特殊面で波面収差を補正する場合、第2走査レンズL2への入射高さを高くし、光束内の主走査方向両端の光ビームについても、周辺に行くほど副走査方向に強い屈折力を持つ第2走査レンズL2への副走査方向の入射高さを高くすることで補正可能となる。つまり、副走査方向に最も強い屈折力を持つ走査レンズよりも、光偏向器側の走査レンズに前記特殊面を形成するとよい。この特殊面は、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持つ光ビームに対し、周辺に向かうにしたがい前記法線に対する角度をより大きくするように形成し、副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズへの副走査方向の入射位置を調整するようにする。こうすることで、波面収差の劣化を補正することが可能となる。
次に、実際に即した光走査装置の実施例について説明する。図1に示す走査光学系において、ポリゴンミラー23によって変更された光ビームを被走査面25上に光スポットとして収束させる走査結像光学系は、複数の走査レンズ、すなわち、ポリゴンミラー23側の第1走査レンズL1と、その後ろ側に配置された第2層さレンズL2とからなる。副走査方向に最も強い屈折力を持つ走査レンズは第2走査レンズL2である。第1走査レンズL1は、異なる被走査面25に向かう複数の光ビームで共用されている。第1走査レンズL1の射出面の形状は、前術の特殊面で形成されている。各々の光ビームは、第1走査レンズL1の基準軸に対し副走査方向の上下、本実施例においては、基準軸に対し対称な副走査方向の角度を持って走査レンズL1に入射されるようになっている。第2走査レンズL2は、異なる被走査面25に向かう各々の光ビーム毎に設けられており、前述の通り副走査方向に強い屈折力を持っている。
走査レンズL1の基準軸とは、走査レンズL1の光軸であり、もしくはシリンダーレンズの如く光軸を持たない走査レンズの場合、入射面もしくは射出面のいずれかの面形状を式で表す際の原点と光偏向器の偏向反射面の法線を含む線である。
複数の光ビームを走査レンズL1の基準軸に対し副走査方向の上下に通すことで、複数の光ビームで共有する走査レンズを小型化できる。さらに、偏向反射面に対し光ビームを斜めに入射させることによる波面収差の劣化、および、後に説明する走査線曲がりの増大は、斜入射角が増大するほど大きくなるが、上記のような構成にすることで斜入射角を小さく設定することが可能である。さらに、基準軸に対し対称な副走査方向の角度を持って走査レンズL1に入射させることで、前記特殊面の形状を、基準軸を含む走査断面に対し鏡面対称とすることができる。
この結果、設計においては、走査レンズに形成する上記特殊面は、これを走査レンズの基準軸に対し副走査方向の片側のみ設計すれば良く開発効率が向上する。このような面形状は、前記特殊面を表す式においてZの奇数次項を含まないように設計することで容易に達成可能である。さらに、基準軸に対し対称な光ビームの通過位置の主走査方向の形状は完全に一致させることが可能となり、基準軸に対し対称な光ビーム間では、先に説明した温度分布による主走査方向の色ずれの発生を良好に低減可能となる。
また、前記説明では特殊面の形状を連続する1つの式で表現したが、例えば特殊面の形状を連続する1つの式ではなく2つの式で表現しても良い。この場合、それぞれの特殊面形状の副走査方向のつなぎ目、もしくはそれぞれの式の原点間の副走査方向の中点と光偏向器の反射面の法線を含む線を基準軸と定義することとする。
従来の偏向反射面への水平入射方式の光走査装置に対し、副走査方向に斜入射させる本発明にかかる方式では、走査線曲がりが発生する。また、斜入射角によりその発生量は異なり、斜入射角が大きくなれば、走査線曲がり量も増大する。その結果、各々の光ビームで描かれた潜像を各色トナーにより可視化した場合、色ずれとなり、画像品質を著しく低下させる。実施例1で説明した特殊面による補正前の光路図(図5参照)においても、周辺像高と中心像高で被走査面上の副走査の位置が異なっていることがわかる。
光偏向器としてポリゴンスミラーを用い、光ビームを偏向反射面に対し副走査方向に角度を持って入射させた場合、各像高に向かう光ビームの光偏向器の偏向反射面上の反射位置は、「サグ」の影響により副走査方向に変化する。また、主走査方向および光ビームの進行方向にもずれる。この結果、走査レンズ、特に副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズへの副走査方向の入射高さが変化し、被走査面上の結像位置も像高により副走査方向に変化することとなり、走査線曲がりが発生する。サグにより発生する走査レンズ、特に副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズへの入射高さの変化は、光偏向器から走査レンズ入射面までの光路長が長くなる周辺像高に行くほど大きくなり、被走査面上での副走査方向のずれ量も中心像高から周辺像高に向かうほど大きくなる。
本実施例によれば、異なる被走査面に向かう光ビーム毎に設けられた走査レンズの1面に、特殊チルト偏芯面を使用することにより、主走査方向、つまり各像高における像点位置を副走査方向に補正し、上記走査線曲がりを補正することを可能としている。
特殊チルト偏芯面とは、レンズ長手方向(主走査方向)のレンズ高さに応じてレンズ短手方向(副走査方向)の偏芯角度(チルト量)が異なる特殊面である。特殊チルト偏芯面のチルト量(偏芯角度)とは、レンズの光軸(中心軸)に直交する面に対する短手方向の傾き角をいう。チルト量が0であるときには光軸に対し直交する面となる。特殊チルト偏芯面は、被走査面上における「走査線曲がりと波面収差」を補正するように形成される。レンズ面の面形状は、以下の形状式による。ただし、本発明にかかる特殊チルト偏芯面の形状は以下の形状式に限定されるものではなく、同一の面形状を、別の形状式を用いて特定することも可能である。
後に説明する数値実施例で使用している「特殊トロイダル面」の形状式を以下に示す。光軸を含み、主走査方向に平行な平断面である「主走査断面」内の近軸曲率半径をRY、光軸から主走査方向の距離をY、高次係数をA、B、C、D…とし、主走査断面に直交する「副走査断面」内の近軸曲率半径をRZとすると、
と表すことができる。(F0+F1・Y+F2・Y^2+F3・Y^3+F4・Y^4+・・)Zは、チルト量を表す部分であり、チルト量を持たないとき、F0,F1,F2,・・・は全て0である。F1,F2,・・・が0で無いとき、チルト量は、主走査方向に変化することになる。
図8は、上記式で表される特殊チルト面において「副走査断面形状のチルト量が主走査方向に変化する状態」の1例を示している。図8において、Y方向は主走査方向、Z方向は副走査方向を示している。また、特殊チルト面の形状をわかりやすくするため、主走査方向の形状は平面とし、チルト量は実際より大きくしている。主走査方向の位置により、副走査方向の面の傾きが変化している。また、特殊チルト偏芯面の副走査方向の面形状は、曲率を持たない平面形状とすることで、色ずれを低減することができる。
主走査方向に異なる副走査方向の曲率を持つトーリック面の場合に前記母線を湾曲させると、副走査方向の高さ毎に主走査方向の形状が大きく変化し、温度変動、光学素子の組み付け誤差により副走査方向に光ビームの入射位置がずれる。これにより倍率誤差変動が大きく発生し、この光走査装置をカラー画像形成装置に用いると、各色間でのビームスポット位置がずれ、色ずれが発生する。しかし、本発明に係る本実施例のように、特殊チルト偏芯面の副走査方向の面形状を、曲率を持たない平面形状とすることで、副走査方向の高さ毎に主走査方向の形状誤差を小さくすることができる。これにより、副走査方向に光ビームの入射位置がずれた場合の倍率誤差変動を小さくすることができ、カラー画像形成装置に適用した場合は色ずれの発生を抑えることができる。
また、特殊チルト偏芯面に入射する光ビームが副走査方向にシフトした場合、曲率を持つ面では光ビームの進む方向が偏向されるが、曲率を持たない場合には光ビームの進行方向は偏向されず、副走査方向に平行シフトするのみとなる。この場合、被走査面上での走査線も副走査方向に平行シフトするのみとなり、書き込みタイミングを調整することで、色を重ね合わせる際の副走査方向のずれは小さく抑えられ、色ずれを抑制することができる。一方、特殊チルト偏芯面に入射する光ビームが副走査方向にシフトした場合、曲率を持つ面では、先の説明の如く透過光が偏向されるため、被走査面上で走査線が湾曲し、色を重ね合わせる際に書き込みタイミングを調整しても、副走査方向に色ずれが発生しやすくなる。主走査方向に曲率が変化する面を持つ走査レンズでは、透過光が偏向される量が主走査方向に沿って異なり、上記走査線の湾曲は大きく発生して色ずれが発生する。
また、走査線曲がり、及び、波面収差の発生を小さくするために、前記斜入射角を小さくする場合、光偏向器としてのポリゴンミラーの偏向反射面に入射する光ビームは、走査レンズに干渉させないように主走査方向に角度を持って入射させる。この結果、前記回転多面鏡による「光学的サグ」の発生は、走査レンズの中心(光軸)に対して左右非対称に発生する。したがって、走査線曲がりの発生も左右非対称に発生することになる。
そこで、光軸を中心として主走査方向に非対称に偏心量が変化する特殊チルト偏芯面を用いることで、前記走査線曲がりを良好に補正することが可能となる。特に、走査線曲がりを主に補正する前記特殊チルト偏芯面は、被走査面に最も近い走査レンズに用いることが望ましい。被走査面に近い走査レンズでは、各像高に向かう光ビームがより明確に分離されており、隣り合う光ビームの重なりが小さい。このため、前記特殊チルト偏芯面の偏心量を細かく設定することが可能であり、走査線曲がりの補正を良好に補正することが可能となる。
本特殊チルト偏芯面は、最も被走査面側の走査レンズに使用することが望ましい。これによって波面収差補正される光ビームの走査位置を最終レンズで補正することができる。このときの特殊チルト偏芯面の像高方向のチルト量の変化は比較的なだらかであり、波面収差への影響は小さい。具体的には、補正後の光束を大きくスキューさせて波面を乱すことはない。また、主走査方向に強い屈折力を持つ第1走査レンズL1以降に配置されるため、主走査方向の光束幅は小さくなっており、実施例1について説明したように、アパーチャの主走査方向の両端の光線を大きくねじる作用はなく、特殊チルト偏芯面による波面収差の劣化を小さく抑えることができる。
以上、説明してきたように、光偏向器に近い走査レンズ、あるいは、少なくとも副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズより光偏向器側の走査レンズの面を特殊面とし、この特殊面で波面収差補正を行い、また、被走査面に近い走査レンズであって副走査方向に強い屈折力を持つ走査レンズの面を特殊チルト偏芯面とし、この特殊チルト偏芯面で走査線曲がり補正を行うようにし、それぞれの補正機能を分離するように構成した。かかる構成にすることで、被走査面でのビームスポット径のさらなる小径化と走査線曲がりの低減を図ることができる。もちろん、上記二つの補正機能を完全に分離させなければならないわけではなく、特殊面と特殊チルト偏芯面で、波面収差補正の一部、走査線曲がり補正の一部を受け持っても良いことは言うまでもない。
このように、本実施例によれば、偏向反射面への斜入射による波面収差、走査線曲がりを、少なくとも2枚の走査レンズで補正することが可能となる。
これまでは、第1走査レンズL1が、異なる被走査面に向かう複数の光ビームで共用され、異なる被走査面に向かう光ビーム毎に設けられた第2走査レンズL2を具備する光走査装置の実施例について説明してきた。しかし、より低コストの光走査装置を提供するためには、全ての走査レンズ、すなわち第1走査レンズL1、第2走査レンズL2を共に複数の光ビームで共用するように構成することが望ましい。
その実施例について説明する。図9に示すように、全ての走査レンズL1,L2は、異なる被走査面に向かう複数の光ビームで共用されるように配置されている。第1走査レンズL1については、実施例1で説明したように、波面収差補正のために特殊面を用いており、副走査方向の屈折力は、ゼロもしくはゼロに近い。その効果については前述の通りであるので説明は省略する。第2走査レンズL2は、第1走査レンズL1と同様に、異なる被走査面に向かう複数の光ビームで共用されており、副走査方向に最も大きな屈折力を有している。さらに、第2走査レンズL2の一面は第1走査レンズL1と同様の式にて表される特殊面を用いており、走査線曲がりを補正している。走査線曲がりの発生理由については、実施例3で説明した通りである。実施例3においては、走査線曲がりの補正を特殊チルト偏芯面で行ったが、本実施例の如く複数の光ビームで共用する場合、基準軸に対し上下で鏡面対称、もしくはそれに近い形状を有する必要があり、特殊チルト面の採用は困難である。特殊チルト面を用いたレンズを副走査方向に重ねても良いが、レンズの一体化は加工上困難であり、個別のレンズを重ねる場合にはレンズ枚数を低減することができないためコストの低減効果を得ることができない。
また、第2走査レンズL2を複数の光ビームで共用する場合、異なる被走査面に向かう光ビームを分離する前に第2走査レンズL2を配置する必要があり、各光ビームの副走査方向の間隔は狭く、一体加工はより難しくなる。一方で、走査レンズL2が光偏向器に大幅に近づくことにより、主走査方向の長さが短くなり、走査レンズの数が減る以外でのコスト低減効果も見込まれる。
第2走査レンズL2の特殊面は、実施例3の説明の特殊チルト偏芯面の如く、光ビームを副走査方向に偏向して走査線の位置を一致させる効果を持つ。このため、前記説明と同様に非円弧量は主走査方向に基準軸から非対称に変化していることが望ましい。このようにすることにより、走査線曲がりを良好に補正することが可能となる。その補正メカニズムは前述の特殊チルト偏芯面と同様である。また、本特殊面においても基準軸近傍での副走査方向の形状は曲率を持たないことが望ましい。非球面量のみに変化を与え走査線曲がりを補正する。その理由については、前述したとおりである。
さらに、光偏向器の偏向反射面から被走査面までの距離をL、光偏向器の反射面の法線に対する光ビームの副走査方向の角度をβ、走査レンズの最も被走査面側のレンズ面で走査レンズ基準軸を含み走査方向に直行する断面内での走査レンズ基準軸から光ビームまでの距離をMとしたとき、
0.2<M/(tan|β|・L)<0.5
を満足することが望ましい。
前記条件式の上限を越えると、異なる被走査面に向かう複数の光ビームの分離が難しくなり、下限を越えると、走査レンズを通過する光ビーム相互間の副走査方向の間隔が狭くなり、後述する副走査方向に曲率を持つ面の加工が困難となる。また、走査レンズが光偏向手段に近づきすぎるため、副走査方向の倍率が大きくなり過ぎ、部品公差変動、組み付け精度に対する光学性能の劣化が大きくなり、ビームスポット径の小径化など光学性能の向上に関して不利になる。上記の条件式を満足することで、低コストで良好な光学性能を有する光走査装置を実現することができる。
第2走査レンズL2の副走査方向に強い屈折力を有する面、つまり前記特殊面と異なる他方側の面について説明しながら、実施例5について説明する。副走査方向に屈折力を持つ面は、異なる被走査面に向かう光ビーム毎に、個別に設けられることが望ましい。図10に示すように、複数の光ビームが透過する第1走査レンズL1、第2走査レンズL2の面が、複数の光ビームにつき単一の面で構成される場合、各光ビームを収束させることは可能であるが、それぞれの光ビームの主光線も収束されるため、各被走査面への光ビームの分離が難しくなる。各光ビームを各被走査面へ向けて分離するために、光偏向器の偏向反射面の法線に対し副走査方向に角度を持つ光ビームを用いているが、各光ビームをより明確に分離するためには、上記法線に対する副走査方向の角度を大きくする必要が生じ、波面収差劣化や走査線曲がりの補正に関して不利になる。また、副走査方向に屈折力を持つ面の屈折力も強くする必要が生じるため、収差補正、組み付け、加工誤差に対する光学性能の劣化感度が上がり(光学性能の劣化の程度が大きくなる)、不利となる。
また、複数の光ビームを偏向反射面の法線に対し斜めに入射させるとともに、光偏向器の反射面の法線に水平の光ビームを2本副走査方向に内側の光ビームとして入射させるように構成した場合においても、上記法線に水平の光ビーム相互の副走査方向の間隔を大きく設定する必要が生じる。そのため、光偏向器としてのポリゴンミラーの大型化、それに伴う消費電力の増大、騒音の増大など、コストアップや環境面での解決すべき課題が発生する。
そこで、図3に示す例のように、副走査方向に屈折力を持つ面は、異なる被走査面に向かう光ビーム毎に個別に配置した第2走査レンズL2の少なくとも1面に設けることが望ましい。図3では異なる被走査面に向かう2本の光ビームで第1走査レンズL1走査レンズを共有する例をあげている。
走査結像光学系を構成する走査レンズの、副走査方向の屈折力を持つ面は、被走査面側に凸面を向け、それぞれ透過する光ビームに対応して配置されている。つまり本実施例においては、副走査方向に凸の面が第1、第2走査レンズの被走査面側に、合計2面存在する。これら副走査方向の屈折力を持つレンズ面の形状は、異なる式で表される面を副走査方向に並べても良いし、一つの式で表される形状であっても良いが、共用レンズを通過する、異なる被走査面に向かう光ビームの数をnとしたとき、n+(n-1)の極値を持つこととなる。ただし、異なる式で表される面を副走査方向に並べた場合、各面のつなぎ合わせの部分を極値として考えることとする。
また、副走査方向に屈折力を持つ面は、副走査方向の像面湾曲を良好に補正するために、像高に応じて副走査方向の曲率が変化する面を用いることが望ましい。前記特殊面は曲率を持たない面であり、副走査方向に集光する作用を持たない。そこで、像高に応じて副走査方向の曲率が変化する面(以下「特殊トロイダル面」という)を用いる。こうすることで、特殊面や特殊チルト偏芯面を、波面収差補正、走査線曲がり補正のために複数面用いた場合においても、レンズ枚数を増加させることなく、効率的に各像高における像面湾曲を補正することが可能となる。
特殊トロイダル面からなるレンズ面の面形状は、以下の形状式による。ただし、本発明で用いられる特殊トロイダル面の形状は以下の形状式に限定されるものではなく、同一の面形状を別の形状式を用いて特定することも可能である。光軸を含み、主走査方向に平行な平断面である「主走査断面」内の近軸曲率半径をRY、光軸から主走査方向の距離をY、高次係数をA、B、C、D…とし、主走査断面に直交する「副走査断面」内の近軸曲率半径をRZとすると、
で表される。先に述べたように、このような式で表される面を、異なる被走査面に対応するように副走査方向に並べて配置しても良いし、一つの形状式で表しても良い。さらには、複数の光ビームに対応する形状を一つの式で表し、その面を副走査方向に重ねても良い。
また、前記説明の如く各光ビームは、前記説明の面により被走査面に集光されるが、異なる被走査面に向かう光ビームの主光線を考えたとき、これらの光ビームが収束され光ビーム相互間の副走査方向の間隔が狭くなることは、それぞれの光ビームの対応する被走査面へ分離させるのに不利になる。そこで、異なる被走査面に向かう光ビームに対応する、前記副走査方向に屈折力を持つレンズ面は、そのレンズ面に入射される光ビームがレンズ面に垂直に入射されるように、副走査方向にチルト偏芯していることが望ましい。この結果、各々の光束は被走査面に向かい収束されるが、異なる被走査面に向かう光ビームの主光線の副走査方向の間隔が狭くなることは無く、対応する被走査面への光束の分離が容易となる。
次に、本発明に係る光走査装置を用いた画像形成装置の実施例を、図11を参照しながら説明する。本実施例は、本発明に係る光走査装置をタンデム型フルカラーレーザプリンタに適用した例である。図11において、画像形成装置内の下部側には水平方向に配設された給紙カセット1から引き出された転写紙(図示せず)を搬送する搬送ベルト2が設けられている。この搬送ベルト2の上側にはイエローY用の感光体3Y,マゼンタM用の感光体3M,シアンC用の感光体3C及びブラックK用の感光体3Kが、転写紙の搬送方向上流側から順に等間隔で配設されている。なお、以下、符号に対する添字Y,M,C,Kを適宜付けて区別するものとする。これらの感光体3Y,3M,3C,3Kは全て同一径に形成されたもので、その周囲には、電子写真プロセスにしたがって各プロセスを実行するプロセス部材が順に配設されている。感光体3Yを例に採れば、帯電チャージャ4Y、光走査光学系5Y、現像装置6Y、転写チャージャ7Y、クリーニング装置8Y等が順に配設されている。他の感光体3M,3C,3Kに対しても同様である。すなわち、本実施例では、感光体3Y,3M,3C,3Kの表面を色毎に設定された被走査面ないしは被照射面とするものであり、各々の感光体に対して光走査光学系5Y,5M,5C,5Kが1対1の対応関係で設けられている。ただし、走査レンズL1は、M,Yで共通使用し、また、K,Cで共通使用している。また、搬送ベルト2の周囲には、感光体5Yよりも搬送方向上流側に位置させてレジストローラ9と、ベルト帯電チャージャ10が設けられ、感光体5Kよりもベルト2の回転方向下流側に位置させてベルト分離チャージャ11、除電チャージャ12、クリーニング装置13等が順に設けられている。また、ベルト分離チャージャ11よりも転写紙搬送方向下流側には定着装置14が設けられ、排紙トレイ15に向けて排紙ローラ16で結ばれている。
このような概略構成において、例えば、フルカラーモードあるいは複数色モード時であれば、各感光体3Y,3M,3C,3Kに対してY,M,C,K用の各色の画像信号に基づき各々の光走査装置5Y,5M,5C,5Kによる光ビームの光走査で、各感光体表面に、各色信号に対応した静電潜像が形成される。これらの静電潜像は各々の対応する現像装置で色トナーにより現像されてトナー像となり、搬送ベルト2上に静電的に吸着されて搬送される転写紙上に順次転写されることにより重ね合わせられ、転写紙上にフルカラー画像または多色画像が形成される。この転写紙上の画像は定着装置14で転写紙に定着され、画像が定着された転写紙が排紙ローラ16により排紙トレイ15に排紙される。
上記画像形成装置の光走査光学系5Y,5M,5C,5Kを、前述の実施形態に係る光走査装置とすることで、走査線曲がりと波面収差の劣化を有効に補正し、色ずれが無く、高品位な画像再現性が確保できる画像形成装置を実現することができる。
本発明に係る光走査装置において、光源を、例えば、複数の発光点を有する半導体レーザアレイや、単数の発光点もしくは複数の発光点を有する光源を複数用いたマルチビーム光源装置とし、複数の光ビームを感光体表面に同時に走査するように構成するとよい。こうすることにより、高速化、高密度化を図った光走査装置および画像形成装置を構成することができる。かかる光走査装置および画像形成装置を構成した場合も、これまで説明してきた効果と同様の効果を得ることができる。
図12はマルチビーム光源装置を構成する光源ユニットの例を示す。図12(a)において、半導体レーザ403、404は各々ベース部材405の裏側に形成した嵌合孔に個別に嵌合されている。上記嵌合孔は主走査方向に所定角度、例えば約1.5°程度微小に傾斜していて、この嵌合孔に嵌合された半導体レーザ403、404も主走査方向に約1.5°傾斜している。半導体レーザ403、404は、その円筒状ヒートシンク部403−1、404−1に切り欠きが形成されていて、押え部材406、407の中心丸孔に形成された突起406−1、407−1を上記ヒートシンク部の切り欠き部に合わせることによって発光源の配列方向が合わせられている。押え部材406、407はベース部材405にその背面側からネジ412で固定されることにより、半導体レーザ403、404がベース部材405に固定されている。また、コリメートレンズ408、409は各々その外周をベース部材405の半円状の取り付けガイド面405−4,405−5に沿わせることによって光軸方向の位置調整を行い、発光点から射出した発散ビームが平行光束となるよう位置決めされ接着されている。
なお、上記実施例では、各々の半導体レーザからの光線が主走査面内で交差するように設定するため、光線方向に沿って上記嵌合孔および半円状の取り付けガイド面405−4,405−5を傾けて形成している。ベース部材405の円筒状係合部405−3をホルダ部材410に係合し、ネジ413を貫通孔410−2に通してネジ孔405−6、405−7に螺合することによって、ベース部材405がホルダ部材410に固定され、光源ユニットを構成している。
上記光源ユニットのホルダ部材410は、その円筒部410−1が光学ハウジングの取り付け壁411に設けられた基準孔411−1に嵌合され、取り付け壁411の表側よりスプリング611を挿入してストッパ部材612を円筒部突起410−3に係合することで、取り付け壁411の裏側に密着して保持され、これによって上記光源ユニットが保持されている。スプリング611の一端を取り付け壁411の突起411−2に引っ掛け、スプリング611の他端を光源ユニットに引っ掛けることで、光源ユニットに円筒部中心を回転軸とした回転力を発生している。この光源ユニットの回転力を係止するように設けた調節ネジ613を具備していて、この調節ネジ613により、光軸の周りであるθ方向にユニット全体を回転しピッチを調節することができるように構成されている。光源ユニットの前方にはアパーチャ415が配置され、アパーチャ415には半導体レーザ毎に対応したスリットが設けられ、光学ハウジングに取り付けられて光ビームの射出径を規定するように構成されている。
図12(b)は、光源ユニットの第2の実施例を示す。図12(b)において、4個の発光源を持つ半導体レーザ703からの各光ビームは、ビーム合成手段を用いて合成するように構成されている。符号706は押え部材、705はベース部材、708はコリメートレンズ、710はホルダ部材をそれぞれ示している。この実施の形態では光源としての半導体レーザ703は1個であり、これに応じて押え部材706が1個である点が図12(a)に示す実施の形態と異なっており、他の構成は基本的に同じである。図12(c)は、4個の発光源が縦方向に配列され、縦方向に一定の間隔dsで光ビームが平行に出射される光源801の例を示している。各発光源から出射された光ビームは、レンズを通ることによって一定の点で交差せられた後、光偏向器の偏向反射面に副走査方向の傾きを持って入射されるようになっている。
さらに、図13(b)に示すように、半導体レーザから射出される全ての光ビームを光偏向器であるポリゴンミラー23の偏向反射面近傍で主走査方向において交差させるのが望ましい。符号D1は、半導体レーザ101から射出した光ビームが被走査面407においてある像高に到達する際のポリゴンミラー23の反射面を表しており、D2は半導体レーザ102から射出した光ビームが被走査面407において同像高に到達する際のポリゴンミラー403の反射面を表している。各々の光ビームはポリゴンミラー23に入射するときに、相対的なある角度差Δα分だけ分離されている。従って、同じ像高に到達するための反射面に上記角度差分だけ時間的な遅れ、すなわち、D1とD2の角度差に見合った時間的な遅れが生じる。
図13(a)に示す例では、2つの光ビームはかなり異なった光路を通って偏向反射面の互いに異なる位置で偏向反射される。図13(b)に示す例では、偏向反射面の同一位置で交叉し、偏向反射された後は全く同じ光路を通っている。光ビームが各光学素子の異なる位置を通過してくると、当然異なる光学作用を受けるから、被走査面上で主走査方向の同じ像高に達する2つの光ビームの収差等の光学特性は違ったものとなり、特に走査線ピッチの像高間変動に対する影響は非常に大きい。
したがって、図13(b)の例ように、ポリゴンミラー23の反射面近傍で2つの光ビームを交差させるように構成することにより、被走査面407上の主走査方向の同一像高に達するときに、光学素子の主走査方向のほぼ同じ光路を通るようになり、走査線曲がりを効果的に低減することができる。また、ポリゴンミラー23より像面側の各部品ばらつきによる各光ビーム間の主走査方向書込位置変動は、全ての光ビームでほぼ同量となり、各ビーム間での主走査方向書込位置ずれが抑えられる。さらに、同じ像高へ結像する全ての光ビームを、走査光学系の主走査方向のほぼ同じ位置を通過させることにより、走査光学系を構成するレンズの収差の影響を小さく抑えることができ、かつ、主走査方向の結像位置は各ビームとも精度良く合致させることができ、同期検知後全ての光ビームに共通に遅延時間を設定しても、書き込み始めの像高での主走査方向の位置ずれを抑えることが可能となる。また、図13(b)の例のように構成することにより、ポリゴンミラー23の内接円半径を最小にすることができる。半導体レーザアレイを一つ使うマルチビーム光源装置自体は、本説明の範疇ではない。ただし、半導体レーザアレイを一つ使うマルチビーム光源装置を用いても、本発明の効果は得られる。
以上、マルチビーム光源装置について例を挙げ説明した。異なる被走査面に向かう光ビームをポリゴンミラーの同一位相の反射面で偏向する場合、各光ビームをポリゴンミラーの偏向反射面近傍で主走査方向において交差させるように、すなわち、主走査方向に略同一の反射点が存在するように構成してもよい。副走査方向には同一の反射点であってもよいし、離隔されていてもよい。こうすることで、前述の効果と同様の効果が得られる。
本発明にかかる光走査装置の一実施例を簡略化して示す(a)は平面図、(b)は側面図である。
偏向手段の偏向反射面への複数の光ビームの各種入射態様とこれに対する偏向反射面の厚さの関係を示す側面図である。
本発明にかかる光走査装置の実施例であって対向走査方式の例を示す(a)は光源から光偏向手段までの構成を示す斜視図、(b)は光走査装置全体を示す斜視図である。
光走査装置を構成する光偏向手段とこれに入射する光ビームの例を示すもので、(a)は複数の光ビームが偏向反射面に平行に入射する例、(b)は複数の光ビームが偏向反射面に副走査方向に角度を持って入射する例を示す側面図である。
走査レンズ面に特殊面を用いない従来の走査光学系において光ビームを偏向反射面に斜入射させたときの副走査断面での光線を示す光路図である。
走査レンズ面に特殊面を設けることによって波面収差および走査線曲がりを補正した後の光線を示す光路図である。
偏向手段の偏向反射面に光ビームを斜めに入射した場合に、特殊面による波面収差補正前のビームスポット径と特殊面による波面収差補正後のビームスポット径とを比較して示すグラフである。
走査光学系に特殊チルト面を形成することによって副走査断面形状のチルト量が主走査方向に変化する状態の1例を示すグラフである。
本発明にかかる光走査装置の別の実施例を概略的に示す側面図である。
複数の光ビームが透過する第1、第2走査レンズ面が複数の光ビームにつき単一の面で構成される場合の各光ビームの経路を副走査断面方向から示す側面図である。
本発明にかかる画像形成装置の実施例を示す側面図である。
本発明に適用可能な光源部の各種具体例を示す斜視図である。
本発明にかかる光走査装置の実施例を主走査面対応方向から見た図で、(a)は複数の光ビームが交差することなく被走査面に至る例、(b)は偏向反射面において複数の光ビームが交差する例を示す平面図である。
符号の説明
20 光源
21 第1光学系
22 第2光学系
23 ポリゴンミラー
25 被走査面
L1 第1走査レンズ
L2 第2走査レンズ
3K,3C,3M,3Y 感光体