JP2008074990A - 研磨スラリー及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を、過度に腐食させず、高い研磨レートで高精度に平坦化できる研磨スラリー及び方法を提供することである。
【解決手段】垂直磁気記録ハードディスク用の基板15の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための方法は、基板の軟磁性層の表面と研磨パッド10、10´との間に研磨スラリーを介在させ、及びこの基板の軟磁性層の両面と研磨パッドとを相対的に移動させる。研磨スラリーは、研磨粒子としてシリカ粒子、研磨促進剤として、カルボン酸を含んだ化合物、アミノポリカルボン酸を含んだ化合物、及び酸化剤を含み、防腐食剤として、有機リン酸化合物、無機リン酸化合物、窒化化合物、亜硝酸化合物から選択される一種又は二種以上の化合物を含み、pH調整剤により研磨スラリーがpH4以上、11以下の範囲に調整される。
【選択図】図1

Description

本発明は、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための研磨スラリー及び方法に関する。
文字、画像、音声などの情報を記録し再生する情報処理装置が、コンピュータだけでなく、テレビジョン、カメラ、電話機などにも搭載されるようになり、情報処理装置には、より高い処理能力(すなわち記録容量の増大)と、再生の正確さが要求され、さらに情報処理装置の小型化が要求されている。
情報は、情報処理装置の磁気ヘッドによって、磁気記録媒体に磁気的に記録され、また磁気記録媒体から再生される。
磁気記録媒体として、垂直磁気記録ディスクが検討されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
垂直磁気記録ディスクは、ディスク状の非磁性基板(ガラス基板や、表面にNi−P膜をメッキしたアルミニウム基板)の表面に、情報信号の記録再生効率を高める軟磁性層と、情報信号を記録する垂直磁化膜からなる垂直磁気記録層とをスパッタリングなどの既知の成膜技術を利用して積層したものであり、これら層の他、垂直磁気記録層の結晶性改善や結晶粒径の制御などの機能を有する非磁性層を積層している。また、漏洩磁界による磁壁の移動に起因したノイズ(特に、スパイクノイズ)の発生を防止するため、軟磁性層を上下の二つの層に分け、これら層の間に硬磁性層を介在させ、磁壁をピンニングして、磁壁の移動を抑止したものもある(特許文献2を参照)。さらに、垂直磁気記録ディスクの面内での再生出力波形を均一にするため(すなわち、モジュレーション特性(再生時の記録媒体1周分の再生出力波形の均一性)を向上させるため)、非磁性基板の表面にテクスチャ加工を施して円周方向にほぼ同心円状のテクスチャ条痕を形成した後に、この非磁性基板の表面に、硬磁性層(バイアス層とも呼称されている)を介して軟磁性層を形成し、この上に垂直磁気記録層を積層しているものもある(特許文献3を参照)。
上記のように、磁気ヘッドからの磁束を通過させ易い軟磁性層(軟磁性裏打ち層とも呼称されている)の上側に、情報を記録するための垂直磁気記録層が形成されている。このような二層構造によると、磁気ヘッドの発生磁界強度と磁界勾配が増加されて記録分解能が向上し、また媒体からの漏洩磁束も増加して高密度記録が可能となる。
軟磁性層の材料とした、一般に、NiFe合金やCoを主体とするアモルファス合金等が使用されているが、このような材料では、十分な記録再生特性を得るためには0.1μm〜数μmの膜厚が必要であり、大量生産をする上で、スパッタリングではこのような膜厚の軟磁性層を成膜するためにコストがかかりすぎるという問題がある。このため、Ni−Fe−P層、Ni−Co−P層などのようにNiPにFe、Co、B等を添加した軟磁性層、P濃度を6%以下とした軟磁性NiPからなる軟磁性層などを無電解メッキ法により成膜し、大量生産を低コスト化している(例えば、特許文献4〜7を参照)。
このような軟磁性層は、P濃度12%以上の軟磁性NiP層と同様に、層の表面を研磨して平坦化する必要がある。P濃度12%以上の軟磁性NiP層は高い耐酸性を有しているため、エッチング力の高い強酸性の研磨液が使用されているが、上記のような軟磁性層は、耐酸性が低く、この軟磁性層の表面の研磨にこのような強酸性の研磨液を用いると、層の表面が不均一に溶出し、層の表面を平坦化できず、また腐食により、リン酸ニッケルが再析出して黒い被膜を形成してしまうという問題が生じる。
このため、従来、軟磁性層の表面の研磨に、pH8以上のアルカリ性の研磨液を用いたり、研磨スラリー中に含まれる砥粒の大きさを選定していたが(例えば、特許文献8〜12を参照)、十分に高い研磨レートが得られず、また軟磁性層を腐食させてしまい、軟磁性層の表面を高い研磨レートで高精度に平坦化できないという問題がある。
特開2004−362746号公報 特開平5−266455号公報 特開平6−103554号公報 特開2004−335068号公報 特開2005−353177号公報 特開2006−21259号公報 特開2006−63438号公報 特開2004−259378号公報 特開2004−342294号公報 特開2005−149603号公報 特開2005−216465号公報 特開2005−302137号公報
したがって、本発明の目的は、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を、過度に腐食させず、高い研磨レートで高精度に平坦化できる研磨スラリー及び方法を提供することである。
<研磨スラリー> 上記本発明の目的を達成する研磨スラリーは、研磨粒子、研磨促進剤、防腐食剤、pH調整剤、及び水を含む。
研磨粒子として、シリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の平均粒径は5nm以上、300nm以下の範囲にあり、好適に、シリカ粒子は、平均粒径20nm以上、100nm以下の範囲にあるコロイダルシリカである。
研磨促進剤として、カルボン酸を含んだ化合物、アミノポリカルボン酸を含んだ化合物、及び酸化剤が含まれる。このカルボン酸を含んだ化合物及びアミノポリカルボン酸を含んだ化合物のうちの少なくとも一方の化合物はアンモニウム塩である。また、この研磨促進剤に含まれる酸化剤は、過酸化水素水である。
防腐食剤として、有機リン酸化合物、無機リン酸化合物、窒化化合物、亜硝酸化合物から選択される一種又は二種以上の化合物が含まれる。
pH調整剤により、本発明の研磨スラリーの液性がpH4以上、11以下の範囲に調整される。
本発明の研磨スラリーの液性がpH7以下の範囲にあるとき、防腐食剤として、有機リン酸化合物又は無機リン酸化合物が含まれ、pH調整剤として、ヒドロキシ酸類が含まれる。
一方、本発明の研磨スラリーの液性がpH7を超える範囲にあるとき、防腐食剤として、窒化化合物が含まれ、pH調整剤として、アミンが含まれる。
本発明の研磨スラリーの全量を基準として、シリカ粒子の含有量は、1重量%以上、30重量%以下の範囲にあり、研磨促進剤のカルボン酸を含んだ化合物とポリアミノカルボン酸を含んだ化合物との合計含有量は、0.01重量%以上、20重量%以下の範囲にあり、研磨促進剤の酸化剤の含有量は、0.1重量%以上、20重量%以下の範囲にあり、防腐食剤の含有量は、0.001重量%以上、5重量%以下の範囲にある。
<研磨方法> 本発明に従って、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための方法は、基板の軟磁性層の表面と研磨工具との間に上記本発明の研磨スラリーを介在させる工程、及びこの基板の軟磁性層の表面と研磨工具とを相対的に移動させる工程を含む。好適に、研磨工具は研磨パッドである。
本発明が以上のように構成されるので、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を、過度に腐食させず、高い研磨レートで高精度に平坦化(すなわち、平均表面粗さ(Ra)0.2μm以下、表面うねり(Wa)0.1μm以下)できるという効果を奏する。
<研磨スラリー> 本発明の研磨スラリーは、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するためのであり、研磨粒子、研磨促進剤、防腐食剤、pH調整剤、及び水を含む。
研磨粒子として、シリカ粒子が含まれ、その平均粒径は5nm以上、300nm以下の範囲にある。シリカ粒子として、金属アルコキシド、ケイ酸ナトリウムなどの加水分解で得られるコロイダルシリカ、又はスプレードライ法等により得られるヒュームドシリカが使用できる。好適に、シリカ粒子は、平均粒径20nm以上、100nm以下の範囲にあるコロイダルシリカである。
研磨促進剤として、カルボン酸を含んだ化合物、アミノポリカルボン酸を含んだ化合物、及び酸化剤が含まれる。
カルボン酸を含んだ化合物として、蓚酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、マロン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マイレン酸、ギ酸、酢酸、酪酸、吉草酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、オキソカルボン酸などのカルボン酸又は多価カルボン酸の化合物が含まれる。カルボン酸を含んだ化合物は、好適に、蓚酸アンモニウムである。
アミノカルボン酸を含んだ化合物として、エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン2酢酸、トリエチレンテトラアミン6酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、1−3プロパンジアミン4酢酸などの化合物が含まれる。この化合物と同様の効果を発揮し得るものとして、アミノポリホスホン酸が含まれ得る。アミノカルボン酸を含んだ化合物は、好適に、ジエチレントリアミン5酢酸2アンモニウムである。
カルボン酸を含んだ化合物及びアミノポリカルボン酸を含んだ化合物のうちの少なくとも一方の化合物はアンモニウム塩である。
研磨促進剤に含まれる酸化剤として、過酸化水素水、オゾン水、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜塩素酸カルシウムなどが含まれる。酸化剤は、好適に、過酸化水素水である。
防腐食剤として、有機リン酸化合物、無機リン酸化合物、窒化化合物、亜硝酸化合物から選択される一種又は二種以上の化合物が含まれる。
有機及び無機のリン酸化合物として、リン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、ホスホン酸などの化合物が含まれる。
窒化化合物として、ベンゾトリアゾール、トリアゾール、イミタゾール、トリルトリアゾールなどのトリアゾール類及びイミダゾール類が含まれる。
亜硝酸化合物として、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸エチル、亜硝酸イソアミル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸イソプロピルなどの亜硝酸塩及び亜硝酸エステルが含まれる。
本発明の研磨スラリーの液性をpH7以上に調整するときは、防腐食剤として、好適に、無機リン酸が含まれる。
本発明の研磨スラリーの液性をpH7未満に調整するときは、防腐食剤として、好適に、窒化化合物が含まれる。
pH緩衝剤として、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、4ホウ酸アンモ四水和水まどのリン酸塩及びホウ酸塩が含まれる。
本発明の研磨スラリーの液性をpH7以上に調整するときは、pH調整剤として、アルカリ性のものが含まれ、望ましくは、アンモニア水、炭酸アンモニウム、エチルアミン、メチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルアミンなどのアミンが含まれる。好適に、pH調整剤として、リン酸塩が含まれる。
本発明の研磨スラリーの液性をpH7未満に調整するときは、pH調整剤として、酸性のものが含まれ、望ましくは、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸類が含まれる。
<研磨方法> 本発明に従って、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための方法は、基板の軟磁性層の表面と研磨工具との間に上記本発明の研磨スラリーを介在させる工程、及びこの基板の軟磁性層の表面と研磨工具とを相対的に移動させる工程を含む。好適に、研磨工具は研磨パッドである。
好適に、図1A及び図1Bに示すような両面研磨装置を使用して、垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨して平坦化する。図示のように、基板15の両面の研磨は、表面に研磨パッド10を張り付けた下定盤12の太陽ギヤ17とインターナルギヤ16とに噛み合う遊星ギヤ13の開口14に基板15を配置し、これを、表面に研磨パッド10´を張り付けた上定盤11で上側から押え付け、上定盤11の穴18を通じて、上定盤11と下定盤12との間に上記本発明の研磨スラリーを供給しつつ、外部の駆動モータにより太陽ギヤ17を矢印Wの方向に回転させて、遊星ギヤ13を矢印Xの方向に自転させるとともに矢印Yの方向に公転させて行なわれる。
研磨パッド10、10´として、スェード、織布、不織布、植毛布、発泡体などからなるシートをパッド状にカットした既知のものが使用される。好適に、スウェードタイプの研磨パッドが使用される。
<研磨試験1> 実施例(1−1)〜(1−12)及び比較例(1−1)〜(1−5)の研磨スラリー(液性は、比較例(1−5)を除き、いずれもpH7未満の酸性である)を用いて、表面に軟磁性層を形成した垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面(両面)を研磨して、研磨レート、及び研磨後の平均表面粗さ(Ra)、表面うねり、腐食数、スクラッチ数並びにパーティクル数を比較した。
基板は、直径95mmのアルミニウム基板の両面に非磁性のNi−P膜(P濃度12%以上)を無電解メッキ法により形成し、その上に、厚さ約3.0μmのNi−Co−P層(軟磁性層)を無電解メッキ法により形成したものであった。この基板の研磨前の平均表面粗さ(Ra)(軟磁性層の平均表面粗さ)は0.50nm〜0.10nmであり、表面うねり(Wa)は0.10nm〜0.15nmであった。
研磨装置として、図1に示すような両面研磨装置(製品名:9BF、浜井産業株式会社)を使用した。両面研磨装置の上下定盤にはスウェードタイプの研磨パッドを貼り付け、10枚の基板の両面を同時に研磨した。研磨条件は下記の表1に示すとおりであった。
Figure 2008074990
研磨レート(単位時間あたりの研磨量)(mg/分)は、研磨前後の基板の重量差を研磨時間で割ったものである。基板の重量は、市販の計測器(製品名:HF−20、A&M社)を使用して計測した。
平均表面粗さ(Ra)(nm)は、AFM(原子力間顕微鏡)(製品名:ナノスコープDimension3100シリーズ、デジタルインスツルメント社)を使用し、測定視野10μm角で測定した。
表面うねり(Wa)(nm)は、非接触三次元表面形状測定器(製品名:NewView5000、ザイコ社)を使用し、対物レンズ10倍、中間レンズ0.8倍、カットオフフィルタ0.05mm〜0.5mmで測定した。
腐食数(個/面)、スクラッチ数(本/面)及びパーティクル数(個/面)は、それぞれ、研磨後の基板の両面を片面ずつ、ディスク表面外観目視装置(製品名:MicroMAX VMX−2100、有限会社ビジョンサイテック)を使用して計数し、この計数値を平均したものである。
<実施例(1−1)〜(1−12)> 実施例(1−1)〜(1−12)の研磨スラリーのそれぞれの組成を下記の表2及び表3に示す。実施例(1−1)は、研磨スラリーの液性がpH4〜pH5における好適実施例であり、実施例(1−2)は、実施例(1−1)において、pH調整剤として、リン酸塩を添加しなかったものである。実施例(1−3)は、研磨スラリーの液性がpH5〜pH6における好適実施例であり、実施例(1−4)は、研磨スラリーの液性がpH7未満付近における好適実施例である。実施例(1−5)は、実施例(1−4)においてシリカ粒子の平均粒径を80nmとしたものである。実施例(1−6)は、防腐食剤として亜硝酸を添加したものである。実施例(1−7)は、防腐食剤として窒化化合物(ベンゾトリアゾール)を添加したものである。実施例(1−8)は、アミノポリカルボン酸の量(濃度)を低くしたものである。実施例(1−9)は、酸化剤(過酸化水素水)の濃度(量)を高くしたものである。実施例(1−10)は、カルボン酸化合物(蓚酸アンモニウム)の濃度(量)を高くしたものである。実施例(1−11)は、カルボン酸化合物として蓚酸カリウムを使用したものであり、実施例(1−12)は、カルボン酸化合物としてギ酸アンモニウムを使用したものである。
Figure 2008074990
Figure 2008074990
<比較例(1−1)〜(1−5)> 比較例(1−1)〜(1−5)の研磨スラリーのそれぞれの組成を下記の表4に示す。比較例(1−1)は、研磨スラリーの液性をpH3.5に調製したものであり、比較例(1−2)は、防腐食剤を使用せずに、研磨スラリーの液性をpH4.5に調製したものである。比較例(1−3)は、研磨スラリーの液性をpH3以下に調製したものである。比較例(1−4)は、研磨スラリーの液性をpH4.6に調製したものであり、比較例(1−5)は、研磨スラリーの液性をpH9.3のアルカリ性にしたものである。
Figure 2008074990
<試験結果1> 研磨試験1の結果を下記の表5及び表6に示す。表中、腐食数、スクラッチ数及びパーティクル数に関し、◎は10個/面(又は本/面)未満であり、○は10個/面(又は本/面)以上、20個/面(又は本/面)未満であり、△は、20個/面(又は本/面)以上、40個/面(又は本/面)未満であり、×は、40個/面(又は本/面)以上であることを示す。
Figure 2008074990
Figure 2008074990
表5及び表6に示すように、本発明に従ったいずれの実施例においても、平均表面粗さ0.2nm以下及び表面うねり0.1nm以下の高精度の平坦化が達成されており、いずれの比較例と比較しても、腐食、スクラッチ及びパーティクルについて同等又はより良い結果が得られている。
ここで、比較例(1−5)において、本発明に従った実施例と平坦性などについて同等の結果が得られているが、この比較例(1−5)は、酸性ではなくアルカリ性の研磨スラリーであり、研磨レートにおいて、いずれの実施例による研磨レートよりも低下している(1/2以下である)。
また、研磨試験1の結果は、軟磁性層がNi−Co−P層を研磨した場合のものであり、軟磁性層の材料により異なってくるが、このNi−Co−P層の場合においては、研磨スラリーの液性がpH4以下では、比較例(1−1)及び比較例(1−3)の結果からわかるように、防腐食剤を添加しても腐食することがわかる。
一方、比較例(1−1)と比較例(1−2)の結果から、研磨スラリーの液性がpH4を超えても(液性がpH4を超え、pH7以下の弱酸性である場合)、防腐食剤を添加しなければ腐食することがわかる。すなわち、Ni−Co−P層の場合においては、研磨スラリーの液性がpH4を超え、pH7以下の弱酸性であり且つ防腐食剤の添加が必要であることがわかる。
さらに、比較例(1−4)及び比較例(1−5)の結果から、比較例(1−1)〜(1−3)と比較して、研磨促進剤として、アンモニウム塩を含まない研磨スラリーでは、研磨レートが著しく低下することがわかる。(本発明に従ったいずれの実施例の研磨スラリーもアンモニウム塩を含んでいる。)
<研磨試験2> 実施例(2−1)〜(2−11)及び比較例(1−1)〜(1−6)の研磨スラリー(液性は、いずれもpH8以上のアルカリ性である)を用いて、表面に軟磁性層を形成した垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面(両面)を研磨して、研磨レート、及び研磨後の平均表面粗さ(Ra)、表面うねり、腐食数、スクラッチ数並びにパーティクル数を比較した。
基板は、上記の<研磨試験1>で使用したものと同様のものであり、直径95mmのアルミニウム基板の両面に非磁性のNi−P膜(P濃度12%以上)を無電解メッキ法により形成し、その上に、厚さ約3.0μmのNi−Co−P層(軟磁性層)を無電解メッキ法により形成したものであった。この基板の研磨前の平均表面粗さ(Ra)(軟磁性層の平均表面粗さ)は0.50nmから0.10nmであり、表面うねり(Wa)は0.10nm〜0.15nmであった。
研磨装置として、上記の<研磨試験1>と同様に、図1に示すような両面研磨装置(製品名:9BF、浜井産業株式会社)を使用した。両面研磨装置の上下定盤にはスウェードタイプの研磨パッドを貼り付け、10枚の基板の両面を同時に研磨した。研磨条件は上記の表1に示すとおりであった。
研磨レート(単位時間あたりの研磨量)(mg/分)、平均表面粗さ(Ra)(nm)及び表面うねり(Wa)(nm)は、それじれ、上記の<研磨試験1>と同様にして測定した。
腐食数(個/面)、スクラッチ数(本/面)及びパーティクル数(個/面)は、それぞれ、上記の<研磨試験1>と同様にして計数し、この計数値を平均したものである。
<実施例(2−1)〜(2−11)> 実施例(2−1)〜(2−11)の研磨スラリーのそれぞれの組成を下記の表7及び表8に示す。実施例(2−1)は、研磨スラリーの液性がpH9付近における好適実施例であり、実施例(2−2)は、実施例(2−1)の研磨スラリーにおいて防腐食剤を添加しなかったものであり、実施例(2−3)は、実施例(2−1)の研磨スラリーにおいて防腐食剤として無機リン酸塩を用いたものである。実施例(2−4)は、pH調整剤として炭酸アンモニウムを添加したものであり、実施例(2−5)は、pH調整剤としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシドを添加したものであり、実施例(2−6)は、pH調整剤としてホウ酸塩を添加したものである。実施例(2−7)は、pH調整剤を使用しなかったものである。実施例(2−8)は、研磨促進剤としてフタル酸を添加したものであり、実施例(2−9)は、研磨促進剤として酒石酸を添加したものであり、実施例(2−10)は、研磨促進剤としてホウ酸を添加したものであり、実施例(2−11)は、研磨促進剤としてマロン酸を添加したものである。
Figure 2008074990
Figure 2008074990
<比較例(2−1)〜(2−6)> 比較例(2−1)〜(2−6)の研磨スラリーのそれぞれの組成を下記の表9に示す。比較例(2−1)は、研磨スラリーの液性をpH11以上に調製したものである。比較例(2−2)は、研磨促進剤としてEDTA4Naを添加し、比較例(2−3)は、研磨促進剤としてHEDP4Naを添加し、比較例(2−4)は、研磨促進剤としてDTPA5Naを添加したものである。比較例(2−5)は、pH調整剤として苛性ソーダを添加し、比較例(2−6)は、pH調整剤を添加せず、アルキレングリコールとグリセリンを添加したものである。
Figure 2008074990
<試験結果2> 研磨試験2の結果を下記の表10及び表11に示す。上記試験結果1の表4及び表5と同じく、表中、腐食数、スクラッチ数及びパーティクル数に関し、◎は10個/面(又は本/面)未満であり、○は10個/面(又は本/面)以上、20個/面(又は本/面)未満であり、△は、20個/面(又は本/面)以上、40個/面(又は本/面)未満であり、×は、40個/面(又は本/面)以上であることを示す。
Figure 2008074990
Figure 2008074990
表10及び表11に示すように、本発明に従ったいずれの実施例においても、平均表面粗さ0.2nm以下及び表面うねり0.1nm以下の高精度の平坦化が達成されており、いずれの比較例と比較しても、腐食、スクラッチ及びパーティクルについて同等又はより良い結果が得られている。
ここで、比較例(2−6)において、本発明に従った実施例と平坦性などについて同等の結果が得られているが、この比較例(2−6)は、pH調整剤を含んでおらず、研磨レートにおいて、いずれの実施例(pH調整剤を含んでいる)(及びpH調節剤を含んでいる比較例(2−1)〜(2−5))による研磨レートよりも低下している(約1/2以下である)。
また、研磨試験2の結果は、軟磁性層がNi−Co−P層を研磨した場合のものであり、軟磁性層の材料により異なってくるが、このNi−Co−P層の場合においては、研磨スラリーの液性がpH11を超えると、比較例(2−1)(及び液性がpH11.0である比較例(2−5))の結果からわかるように、防腐食剤を添加しても腐食することがわかる。すなわち、Ni−Co−P層の場合においては、研磨スラリーの液性がpH11以下である必要があることがわかる。
さらに、アミノポリカルボン酸化合物として、DTPAのアンモニウム塩を含む実施例(2−1)〜(2−11)と、EDTA、HEDP及びDTPAのナトリウム塩を含む比較例(2−2)〜(2−4)との結果から、研磨促進剤のアミノポリカルボン酸化合物として、アンモニウム塩を含む研磨スラリーは、ナトリウム塩を含むものよりも研磨レートが同等又は高くなることがわかる。また、比較例(2−1)と比較例(2−5)から、pH調整剤としてアンモニア水(アミン)を添加すると、苛性ソーダを添加した場合よりも研磨レートが高くなることがわかる。
図1A及び図1Bは、両面研磨装置を示し、図1Aは、下定盤を示し、図1Bは上定盤を示す。
符号の説明
10、10´・・・研磨パッド
11・・・上定盤
12・・・下定盤
13・・・遊星ギヤ
14・・・開口
15・・・基板
16・・・インターナルギヤ
17・・・太陽ギヤ
18・・・穴
W、X、Y・・・回転方向

Claims (12)

  1. 垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための研磨スラリーであって、
    研磨粒子、
    研磨促進剤、
    防腐食剤、
    pH調整剤、及び
    水、
    を含み、
    前記研磨粒子として、シリカ粒子が含まれ、
    前記研磨促進剤として、カルボン酸を含んだ化合物、アミノポリカルボン酸を含んだ化合物、及び酸化剤が含まれ、
    前記防腐食剤として、有機リン酸化合物、無機リン酸化合物、窒化化合物、亜硝酸化合物から選択される一種又は二種以上の化合物が含まれ、
    前記pH調整剤により、当該研磨スラリーの液性がpH4以上、11以下の範囲に調整される、
    ところの研磨スラリー。
  2. 請求項1の研磨スラリーであって、
    前記のカルボン酸を含んだ化合物及び前記のアミノポリカルボン酸を含んだ化合物のうちの少なくとも一方の化合物がアンモニウム塩である、
    ところの研磨スラリー。
  3. 前記研磨促進剤に含まれる酸化剤が、過酸化水素水である、
    ところの研磨スラリー。
  4. 請求項1の研磨スラリーであって、
    当該研磨スラリーの液性がpH7以下の範囲にあり、
    前記防腐食剤として、有機リン酸化合物又は無機リン酸化合物が含まれる、
    ところの研磨スラリー。
  5. 請求項1の研磨スラリーであって、
    当該研磨スラリーの液性がpH7を超える範囲にあり、
    前記防腐食剤として、窒化化合物が含まれる、
    ところの研磨スラリー。
  6. 請求項1の研磨スラリーであって、
    当該研磨スラリーの液性がpH7以下の範囲にあり、
    前記pH調整剤として、ヒドロキシ酸類が含まれる、
    ところの研磨スラリー。
  7. 請求項1の研磨スラリーであって、
    当該研磨スラリーの液性がpH7を超える範囲にあり、
    前記pH調整剤として、アミンが含まれる、
    ところの研磨スラリー。
  8. 請求項1の研磨スラリーであって、
    前記シリカ粒子の平均粒径が、5nm以上、300nm以下の範囲にあるコロイダルシリカである、
    ところの研磨スラリー。
  9. 請求項1の研磨スラリーであって、
    前記シリカ粒子が、平均粒径20nm以上、100nm以下の範囲にあるコロイダルシリカである、
    ところの研磨スラリー。
  10. 請求項1の研磨スラリーであって、
    前記シリカ粒子の含有量が、当該研磨スラリーの全量を基準として、1重量%以上、30重量%以下の範囲にあり、
    前記研磨促進剤のカルボン酸を含んだ化合物とポリアミノカルボン酸を含んだ化合物との合計含有量が、当該研磨スラリーの全量を基準として、0.01重量%以上、20重量%以下の範囲にあり、
    前記研磨促進剤の酸化剤の含有量が、当該研磨スラリーの全量を基準として、0.1重量%以上、20重量%以下の範囲にあり、
    前記防腐食剤の含有量が、当該研磨スラリーの全量を基準として、0.001重量%以上、5重量%以下の範囲にある、
    ところの研磨スラリー。
  11. 垂直磁気記録ハードディスク用の基板の表面に形成した軟磁性層の表面を研磨するための方法であって、
    前記基板の軟磁性層の表面と研磨工具との間に研磨スラリーを介在させる工程、及び
    前記基板の軟磁性層の表面と研磨工具とを相対的に移動させる工程、
    を含み、
    前記研磨スラリーが、
    研磨粒子、
    研磨促進剤、
    防腐食剤、
    pH調整剤、及び
    水、
    を含み、
    前記研磨粒子として、シリカ粒子が含まれ、
    前記研磨促進剤として、カルボン酸を含んだ化合物、アミノポリカルボン酸を含んだ化合物、及び酸化剤が含まれ、
    前記防腐食剤として、有機リン酸化合物、無機リン酸化合物、窒化化合物、亜硝酸化合物から選択される一種又は二種以上の化合物が含まれ、
    前記pH調整剤により、当該研磨スラリーの液性がpH4以上、11以下の範囲に調整される、
    ところの方法。
  12. 請求項11の方法であって、
    前記研磨工具が、研磨パッドである、
    ところの方法。
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