JP2008067642A - 製パン用油脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記のA成分100質量部に対して、B成分0.0001〜10質量部、およびC成分0.01〜2質量部を含む製パン用油脂組成物。
A成分:10℃におけるSFCが10〜40、25℃におけるSFCが10〜30である食用油脂、
B成分:難消化水溶性多糖類、または水溶性蛋白質、
C成分:糖質分解酵素。
【選択図】なし
Description
パンは老化し易く焼成後経時的に硬化したり、あるいはパサツクなど品質が劣化するため焼成後出来るだけ早く消費されることが望ましい。しかし、現在の生産・流通条件、あるいは消費者の消費形態において、いわゆる大量生産型のパンでは消費者の口に入るまでのタイムラグがあるために一定期間前記の品質劣化を抑制する技術の開発が望まれている。また、近年の消費者は硬いものを嫌う食嗜好から、パンにも従来以上のソフトさが望まれる傾向にあり、より高度の技術が求められている。
これらの課題を解決するために、食用油脂中にグリセリン脂肪酸エステルやプロピレングリコール脂肪酸エステル等の乳化剤および増粘多糖類を配合した製パン用油脂組成物が使用されている(特許文献1)。しかし、乳化剤を使用すると風味に悪影響を及ぼし、口溶けも悪くなる。
乳化剤を含まない製パン用油脂組成物として、分岐オリゴ糖等を使用する方法が提案されている(特許文献2)。しかし、これらの方法を用いても、パン生地物性の効果がまだ不十分であり焼成されたパンの比容積、老化抑制、食感等に課題が残っている。
例えば、澱粉類、糖質分解酵素の使用は、パンの食感、老化等の品質を改善するが、その効果は弱く、また糖質分解酵素を使用することによるパン生地のべたつきを十分に改善できていない(特許文献3)。
また、パンの品質を改善することを目的として、ジェランガムが使用されている。しかし、0〜20℃程度の温度で水に溶解しない非水溶性多糖類の使用ではパン生地調整中での生地改善効果が不十分となる。分散性が不十分なことから、多糖類の凝集物自身が食感に悪影響を及ぼし、ねとつき等を生じてしまい、口溶け感の低下が認められるなど問題があった(特許文献4)。
(1)下記のA成分100質量部に対して、B成分0.0001〜10質量部、およびC成分0.01〜2質量部を含む製パン用油脂組成物。
A成分:10℃におけるSFCが10〜40、25℃におけるSFCが10〜30である食用油脂、
B成分:難消化水溶性多糖類、または水溶性蛋白質、
C成分:糖質分解酵素。
(2)A成分の食用油脂が、液状油脂を50〜95質量%含む食用油脂である前記(1)の製パン用油脂組成物。
(3)A成分の食用油脂が、液状油脂を50〜95質量%、およびパーム油または菜種油の極度硬化油脂を1〜10質量部含む食用油脂である前記(1)の製パン用油脂組成物。
(4)前記(1)の油脂組成物を使用して製造されたパン類。
(A成分)
本発明で使用するA成分の食用油脂は、10℃におけるSFCが10〜40、25℃におけるSFCが10〜30である食用油脂である。
本発明において、A成分の食用油脂を使用することにより、B成分およびC成分を安定に分散でき、製パン時の作業性を向上でき、さらにパンをソフトにし、しっとりと口溶けの良好な食感を付与することができる。
本発明において、10℃におけるSFCが10未満または20℃におけるSFCが10未満の食用油脂を使用すると、粉体状態にあるB成分およびC成分を10℃以上で安定して固定分散させることが困難となり、10℃におけるSFCが40以上または20℃におけるSFCが30以上の食用油脂を使用すると、パン生地にB成分およびC成分を効率的に分散できず、B成分およびC成分の添加効果を十分に発揮させることができず、製パン性能が低下してしまう。
SFC測定時のサンプル調整法は、試料を70℃の恒温槽で加熱し試験管に入れ、ゴム栓をする。試験管に詰めた試料および対照試料(オリーブ油)を、60℃に30分間テンパリング後、それぞれの試料のNMRシグナルを測定する。これらの試料を、0℃で30分間保持し、さらに25℃で30分間保持する。再び0℃に移しで30間テンパリングを行った後、10℃又は25℃の測定温度で30分間テンパリングし、それぞれの試料のNMRシグナルを測定する。
本発明において、A成分の食用油脂には、融点が0℃以下の液状油脂が50〜95質量%配合されていることが好ましい。液状油脂が50質量%未満であると、油脂組成物の可塑性が十分でなく、配合したB成分、C成分がパン生地に効率的に分散できず、B成分およびC成分の添加効果を十分に発揮することができず、製パン性能が低下してしまう。
さらに、本発明において、A成分の食用油脂には、パーム油、菜種油等の極度硬化油が1〜10質量%含む食用油脂であることが好ましい。
極度硬化油は、水素添加により油脂の脂肪酸の二重結合がほぼ飽和した脂肪酸であり、ヨウ素価を1以下、好ましくは0.1以下にしたものである。
本発明においてB成分は、パン生地のべたつきやダレを防止し作業性を向上させるための成分であり、パン生地において水を保湿して、パンの食感にしっとり感、ソフト感を与え、しかも老化を抑制する成分である。
本発明で使用できるB成分としては、保湿剤として知られる、難消化水溶性多糖類、および水溶性蛋白質等が挙げられる。
さらに、B成分が非水溶性であり水に溶解しないと、パン生地中に均一に分散できなくなる。水を効率的に保湿できず、パン生地物性の改良効果が不十分となり、パンにくちゃつきが生じ、口溶けの悪い食感となる。
難消化水溶性多糖類としては、トラガントガム、キサンタンガム、プルラン、グァーガム、ラムダガラギナン、HMペクチン、LMペクチン、アラビアガム、アルギン酸Na、タマリンドガム、サイリウムシードガム、SSHC(水溶性大豆多糖類)およびヒアルロン酸等が挙げられる。これらの中から1種類を単独で用いても良いし、また異なる2種類以上を組み合わせても良い。
難消化多糖類であるが、ローガストビーンガム、タラガム、カッパーカラギナン、イオタカラギナン、ジェランガム等は、水に溶解しないので使用に適さない。
特に、生体系保湿成分であるヒアルロン酸、HMペクチン等を使用すると、パン生地物性の向上および食感の点で好ましい。
水溶性蛋白質としては室温で多量の水に溶解すればよく、例えばナトリウムカゼイン、カルシウムカゼイン、レンネットカゼイン、ミルクカゼイン、ミルクホエー、ラクトアルブミン、ラクトグロブリン、コラーゲン等が挙げられる。中でも、風味および食感の点よりコラーゲンが好ましい。
難消化水溶性多糖類、水溶性蛋白質はそれぞれを単独で使用することができるが、これらを混合して使用することもできる。特にヒアルロン酸とコラーゲンを1:99〜10:90の割合で配合すると、パン生地物性の改良および食感の点で好ましい。
B成分の添加量はA成分100質量部に対して0.0001〜10質量部、好ましくは0.001から5質量部である。添加量が0.001質量部未満であると十分な老化防止効果および生地物性改良効果が得られず、10質量部を超えると得られるベーカリー製品の食感が低下する。B成分は、粒子径が50μm〜2mmの粉体であればA成分に対して分散性がよいので好ましい。
本発明において、C成分を加えるとパンの老化を抑制できる。
C成分の糖質分解酵素とは、食品に用いられる糖質分解酵素であり、例えば、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等が使用できる。また酵素の起源すなわち、Bacillus等の細菌由来、Malt等の穀物由来、およびAspergillus等のカビ由来のいずれでもよく、これらの選択、および含有量は製パン用油脂組成物が使用されるパンの種類、或いは小麦粉の種類により異なる。例えばα−アミラーゼの場合、製パン用油脂組成物中からパン生地中へ添加される活性量が小麦粉100kgあたり50000〜200000SKB(SKBは酵素の活性単位)の範囲である場合に本発明の効果が最大となる。糖質分解酵素の含有量は、SKBにより変わるが、通常A成分100質量部に対し、0.01〜2質量部であり、好ましくは0.05〜0.5質量部である。0.01質量部未満であると十分な老化防止効果が得られず、2質量部を超えると生地物性が低下し、さらに得られるパン製品の食感が低下する。C成分は、粒子径が50μm〜800μmの粉体であればA成分に対して分散性がよいので好ましい。
油脂組成物の添加量が1質量部未満であると充分な老化防止効果は得られず、30質量部を超えると、生地の取り扱いが難しくなり、パン製品の食感が低下する。
本発明における油脂組成物には、保存料、pH調整剤、色素、香料等を適宜使用してもよい。
上記、冷却速度は速いほうが好ましい。即ち、冷却により融点の高い油脂が結晶化する際、徐冷よりも急冷の方がより結晶が微細化することにより、高融点油脂による細かなネットワーク構造が形成され、その中に低融点油脂を包み込むことにより、物性を安定化させることができる。
上記製造において、高温状態にある均一混合物を冷却する際には均一混合物を入れている容器自身を外部から冷却しても良いが、一般的にショートニング、マーガリン製造に用いられるチラー、ボテーター、コンビネーター等を用いて急冷する方が性能上好ましい。
本発明の製パン用油脂組成物を使用して製造するケーキ類としては、スポンジケーキ、バターケーキ、シフォンケーキ、ロールケーキ、スイスロール、ブッセ、バウムクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ、蒸しケーキ等が挙げられる。
本発明の製パン用油脂組成物を使用して製造する焼き菓子としては、ビスケット、クッキー等が挙げられる。
表1の配合組成で以下の方法により製パン用油脂組成物を製造した。パーム極度硬化油3kg(3質量部)、パーム硬化油(42℃)25kg(25質量部)、菜種硬化油(融点36℃)17kg(17質量部)、および菜種油55kg(55質量部)を配合し、70℃まで加熱溶解し油相部を製造した。次いで、難消化水溶性多糖類であるヒアルロン酸(商品名:ヒアルロンサンHA−LF:キューピー(株)製)5g(0.005質量部)、水溶性蛋白質であるコラーゲン(商品名:コラーゲンペプチドNCG−10:三栄源エフ・エフ・アイ(株))90g(0.09質量部)および糖質分解酵素としてα−アミラーゼ製剤(商品名:αアミラーゼ製剤:ダニスコ社製)10g(0.01質量部)を油相部に徐々に添加撹拌して製パン用油脂組成物Aを試作した。試作後、10℃にて一晩放置した後、状態の評価を行った。
表1に示した配合で実施例Aと同様の方法により製パン用油脂組成物B〜Hを試作し、状態の評価を行った。
なお、試作した製パン用油脂組成物は、下記の実施例における製パン工程おいて、下記の基準でパン生地中での油脂組成物の分散性を評価した。
○:油脂投入後、低速2分以内にパン生地にまんべんなく練り込まれる。
△:油脂投入後、低速2分、中速4分以内にパン生地にまんべんなく練り込まれる。
×:油脂投入後、低速2分、中速4分以内に混捏してもとり込まれない。
本発明のSFCの条件の範囲を満たさない比較例E、Fでは、状態は流動状で保湿剤、酵素が沈殿してしまい、製品として不良であった。比較例G、Hでは、パン生地への分散性が良くなかった。
実施例A、比較例Gの食用油脂合を用いて、さらに水溶性多糖類および水溶性蛋白質の種類、配合量を変え、表2に示した配合で、実施例Aに準じた方法により製パン用油脂組成物を試作し、それらを使用してパンを製造し、製パン性能を評価した。
強力粉700g、イースト20g、イーストフード1g、水420gをミキサーボウルに投入し、低速2分、中速2分混捏し、捏ね上げ温度24℃の中種を28℃で4時間醗酵させた。醗酵させた中種をミキサーボウルに投入し、さらに、強力粉300g、上白糖50g、脱脂粉乳20g、食塩17g、水250gを投入し、低速2分、中速4分混捏し、ここで、製パン用練り込み油脂として、実施例1〜5、比較例1〜6において得られた油脂組成物を50g投入し、さらに低速2分(2分以内に可塑性油脂組成物が練り込まれない場合は、練り込まれるまで延長した)、中速4分混捏し、捏ね上げ温度28℃の生地を得た。フロアタイムを20分取った後、210gに分割し、次いでベンチタイムを15分とった後、モルダーに生地を通し、プルマン食パン型に生地を型比率4.16になるようにつめた。さらに、38℃、相対湿度85%のホイロに35分入れて最終醗酵を行なった。最終醗酵後、上火、下火210℃のオーブンに入れて、34分焼成し、プルマン食パンを得た。このパンを1時間半室温で放冷した後、袋に入れ、20℃で保管した。
製パン性能評価、パンの硬さ、食感の評価を行なった。
パンの硬さは、レオメーター(山電社製)により測定した。測定方法は、3cmの厚さにスライスしたプルマン食パンの中心部を3cm四方に切り取り、直径3cmの円形のプランジャーを用いて、毎秒5mmでサンプルを圧縮し、1.5cm圧縮した際のプランジャーにかかる応力を測定した。
また、20℃で焼成後3日間保管したプルマン食パンを15人のパネラーにて食感の評価を行なった。ソフトである、口溶けが良い、しっとりとしているとの評価項目を設け、それぞれの項目に対し、ソフト、口溶け良好、しっとりと感じた人が12人以上であった場合を◎、8人以上11人以下の場合を○、4人以上7人以下の場合を△、3人以下の場合を×とした。
HMペクチン(商品名:ビストップD−2220:三栄源エフ・エフ・アイ(株))
キサンタンガム(商品名:サンエース:三栄源エフ・エフ・アイ(株))
ローカストビーンガム(商品名:ローカストビンガムF:三栄源エフ・エフ・アイ(株))
α化架橋澱粉(商品名:パインソフトS:松谷化学工業(株))
特に、難消化水溶性多糖類と水溶性蛋白質とを含む製パン用油脂組成物を使用する場合が良好であった(実施例3)。
難消化水溶性多糖類、または水溶性蛋白質の代わりに、非水溶性多糖類であるローカストビーンガム(比較例1)、消化水溶性多糖類であるα化架橋澱粉(比較例2)では、作業時の製パン性能が悪く、食感もよくなかった。
食用油脂のSFCが本発明の条件の範囲を満たさない場合は、難消化水溶性多糖類、水溶性蛋白質、糖質分解酵素を加えた効果を十分に発現できなかった(比較例3〜6)。
Claims (4)
- 下記のA成分100質量部に対して、B成分0.0001〜10質量部、およびC成分0.01〜2質量部を含む製パン用油脂組成物。
A成分:10℃におけるSFCが10〜40、25℃におけるSFCが10〜30である食用油脂、
B成分:難消化水溶性多糖類、または水溶性蛋白質、
C成分:糖質分解酵素。 - A成分の食用油脂が、液状油脂を50〜95質量部含む食用油脂である請求項1記載の製パン用油脂組成物。
- A成分の食用油脂が、液状油脂を50〜95質量部、およびパーム油または菜種油の極度硬化油脂を1〜10質量部含む食用油脂である請求項1記載の製パン用油脂組成物。
- 請求項1に記載の油脂組成物を使用して製造されたパン類。
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