JP2008057045A - 酸化物焼結体スパッタリングターゲット - Google Patents

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Takuji Oyama
卓司 尾山
Kenichi Sasaki
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【課題】二酸化チタンを主成分とした高屈折率の薄膜をDCスパッタリング法で形成する際に、従来有していた成膜速度が極めて遅く生産性が非常に悪いという欠点を解消しようとするスパッタリングターゲット。
【解決手段】主成分がTiOX (1<X<2)で、かつ、室温での比抵抗が0.65Ωcm以下であり、二酸化チタン粉末を非酸化雰囲気でホットプレスして焼結することにより形成される酸化物焼結体スパッタリングターゲット。
【選択図】なし

Description

本発明は、高屈折率を有する酸化物透明薄膜をスパッタリング法で形成する場合に用いるスパッタリングターゲットとその製造方法に関する。
酸化物薄膜の光学的な応用は、単層の熱線反射ガラスや反射防止膜から始まり、さらに特定の波長の光が選択的に反射または透過するような分光特性が優れるように設計した多層膜系の反射防止コート、反射増加コート、干渉フィルタ、偏光膜など多分野にわたっている。また、多層膜の一部に透明導電膜や金属、導電性セラミックス膜等の導電性や熱線反射などの各種機能をもった膜をはさむことにより、帯電防止や熱線反射、電磁波カットなどの機能をもたせた多層膜が検討されている。
多層膜の分光特性は各層の屈折率と膜厚をパラメータとして光学的に設計されるが、一般的に、高屈折率膜と低屈折率膜を組み合わせて用いる。優れた光学特性を実現するには、高屈折率膜と低屈折率膜の屈折率の差が大きい方がよく、高屈折率膜として二酸化チタン(n=2.4)、二酸化セリウム(n=2.3)、三酸化ニオブ(n=2.1)、五酸化タンタル(n=2.1)などが知られている。また、低屈折率膜としては二酸化珪素(n=1.46)、フッ化マグネシウム(n=1.38)などが知られている。これらは、真空蒸着法や塗布法等で成膜できる。しかし、これらの成膜法は、大面積の基板上への均一な成膜は困難であり、建築用ガラス、自動車用ガラス、CRT、フラットディスプレイ等の大面積基板が必要な場合にはスパッタリング法が用いられることが多い。さらに、スパッタリング法の中でも特に直流放電を利用したDCスパッタリング法が大面積の成膜には最適である。
高屈折率膜には、屈折率が高く、材料費も比較的安価な二酸化チタンが広く用いられているが、これをDCスパッタリング法で成膜する場合、導電性を有する金属Tiターゲットを酸素を含む雰囲気でスパッタリングする、いわゆる反応性スパッタリングを用いているのが現状である。しかし、この方法で得られる二酸化チタン薄膜の成膜速度は極めて遅く、このため生産性が悪く、コストが高くつくということが製造上の大きな問題となっていた。
本発明の目的は、二酸化チタンを主成分とした高屈折率の薄膜をDCスパッタリング法で形成する際に、従来有していた成膜速度が極めて遅く生産性が非常に悪いという欠点を解消しようとするものである。
本発明は、前述の課題を解決するためものである。
本発明は、主成分がTiOX である酸化物焼結体スパッタリングターゲットにおいて、室温での比抵抗値が0.65Ωcm以下であり、Xが1<X<2の範囲であり、かつ、酸素含有量が35重量%以上であり、二酸化チタン粉末を焼結することにより形成されることを特徴とする酸化物焼結体スパッタリングターゲットを提供する。
本発明のターゲットを用いることにより、高屈折率を有する透明膜を、DCスパッタリング法において高速に成膜できる。また、本発明のターゲットを用いることによりスパッタリング雰囲気中の酸素分圧を低くできるのでアーキング等の異常放電を少なくできるという効果もある。したがって、本発明のターゲットを用いることにより、高屈折率の膜が高速でしかも安定に生産できる。
本発明のターゲットを用いて、アルゴン雰囲気中またはアルゴンと酸素の混合雰囲気中で1×10-3〜1×10-2Torr程度の真空中でスパッタリングすると均一な透明膜を高速で成膜できる。より高速で成膜を行うためには雰囲気中の酸素分圧を低く調節したほうがよいが、本発明のターゲットを用いて透明な膜を作製するには、スパッタリング雰囲気中に酸素の供給源となる若干の酸素または水分が必要である。
しかし、本発明のターゲットを用いた場合、現実的にはスパッタリング装置中に真空ポンプで排出されずに残存した酸素や水分量で透明膜を得るための酸素量は十分である。したがって、本発明のターゲットを用いた場合、導入ガスはアルゴンガスだけで十分透明な膜が得られる。
また、基板となる板ガラスがエアロックチャンバなどを通して連続的に供給され成膜が行われるような量産に適した連続式のスパッタリング装置を用いる場合には、必要な酸素や水分はエアロックチャンバを通して供給され、たとえば、導入ガスがアルゴンのみであっても透明な膜が得られる。したがって、本発明のターゲットを用いることにより、スパッタリング雰囲気中に反応性スパッタリングでは必要である酸素ガスを導入しない、あるいは非常に少なくできるので、従来のTiターゲットを用いる反応性スパッタリングに比較して、高速で成膜できる。
本発明のターゲットは導電性を有しているため、DCスパッタリング法を用いて成膜でき、大面積にわたり均一で透明な高屈折率の膜を高速で成膜できる。また、本発明のターゲットをRF(高周波)スパッタリング装置で用いることもできる。
本発明のターゲットの室温での比抵抗は、スパッタリング中の放電を安定に行うため、10Ωcm以下であることが好ましい。比抵抗が10Ωcmより大きいと放電が安定しないので好ましくない。酸化チタン(TiOX :1<X<2)質のターゲットにおいて、ターゲット(焼結体)中の酸素含有量は35重量%以上であることが好ましい。35重量%より小さいと、透明膜を作製するために、雰囲気中の酸素分圧を高くする必要があり、成膜速度が低下するので好ましくない。
本発明のターゲットにおいて、上記の酸化チタンにチタン以外の金属酸化物を50重量%未満を加えることにより、高速成膜を維持したまま、屈折率、機械的特性、化学的特性などの膜質を改善できる。
特に、クロム、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、タンタルの酸化物は比較的高い屈折率を有しており、成膜速度も比較的速いので、これら酸化物を添加することにより、高い屈折率を維持したまま、より高速で成膜できる。また、珪素、アルミニウム、ホウ素の酸化物の添加することにより、ターゲットの機械的強度を高くできるため、より高い電力をスパッタリング時に投入でき、実質的にさらに高速で成膜できる。
本発明のターゲットはたとえば次のようにして作製できる。たとえば、酸化チタン質ターゲットの場合、二酸化チタン粉末をホットプレス(高温高圧プレス)して焼結することにより、本発明のターゲットが形成される。この場合、粉末の粒径は0.05〜40μmが適当である。なお、ホットプレスの雰囲気は非酸化雰囲気であり、アルゴンや窒素の雰囲気とするとターゲット中の酸素含有量を調整できるので好ましい。また、さらにアルゴンや窒素に水素を添加しても差し支えない。
また、ホットプレスの条件は、特に限定されないが、温度としては、1000〜1300℃が好ましく、1150〜1200℃が特に好ましい。また、圧力としては50〜100Kg/cm2 が好ましい。
また、たとえば、クロムを含む酸化チタンターゲットの場合、酸化クロム粉末と酸化チタン粉末をたとえばボールミルなどで混合して混合粉末を調製して、前記と同様にホットプレスすることにより本発明のターゲットが形成される。ターゲットはスパッタリング時の割れ等が起こりにくいように、銅製のバッキングプレートにメタルボンディングしたほうがよい。
本発明のターゲットは、酸化物で構成されているため、スパッタリング雰囲気中に反応性スパッタリングでは必要である酸素ガスを導入しない、または非常に少なくしても透明膜が形成できる。このため成膜速度の低下の要因と考えられる酸素原子のターゲット表面上への付着を小さくできるので、成膜速度を速くできると考えられる。
また、酸素分圧が極めて低い雰囲気中での焼結により、酸化物から雰囲気への酸素の移動が起こり、結果として、酸素欠陥を有する酸化物焼結体が得られ、こうした酸素欠陥を有する構造とすることにより酸化物でありながら導電性を有することとなり、大面積の成膜が可能なDCスパッタリング法が使用できる。
[実施例1〜7]
市販されている高純度のTiO2 粉末を準備し、カーボン製のホットプレス用型に充填し、アルゴン雰囲気中1100℃〜1400℃で1時間保持の条件でホットプレスを行った。このときのホットプレス圧力は50kg/cm2 とした。得られた焼結体の密度、比抵抗を測定した。また、得られた焼結体をメノウ乳鉢で粉砕し、空気中で1100℃に加熱し、その重量増加を測定した。この空気中での加熱後には粉末が完全に酸化したTiO2 になっているとして、その重量増加分から、ホットプレス後の焼結体の酸素量を求めた。これらの結果を表1に示す。
[実施例8〜11および比較例1〜2]
また、1200℃でホットプレスした焼結体を直径6インチ、厚さ5mmの寸法に機械加工し、ターゲットを作製した。ターゲットは銅製のバッキングプレートにメタルボンディングで接着して用いた。
つぎに、このターゲットをマグネトロンスパッタリング装置に取り付けて、TiO2 膜の成膜を行った。このときの条件は投入電力:DC1kW、背圧:1×10-5Torr、スパッタリング圧力:2×10-3Torrで行った。スパッタリングガスには、アルゴンまたはアルゴンと酸素の混合ガスを用いた。基板にはソーダライムガラスを用いた。また、基板に対する意図的な加熱は特に行わなかった。膜厚はおよそ100nmとなるように行った。スパッタリング中の放電はきわめて安定しておりDCスパッタリングでも安定して成膜ができた。
成膜後、膜厚を触針式の膜厚測定装置を用いて測定した。さらに、エリプソメーターで膜の屈折率を測定した。このとき用いた光の波長は633nmである。表2に、成膜速度および膜の屈折率を示す。また、得られた膜はすべて透明で膜の光吸収は無かった。
表2には、比較例として、一般的な金属Tiターゲットおよび一酸化チタン(TiO)ターゲットを用いて、同様のスパッタリング成膜を行った。ただ、このときのスパッタリングガスはアルゴンと酸素の混合ガスを用い、酸素の割合は20〜30体積%とした。Tiターゲットの場合、酸素が30%より低いと膜は吸収性となり、透明な膜を得るには酸素が30%以上必要であった。また、TiOターゲットの場合、酸素が20%より低いと膜は吸収性となり、透明な膜を得るには酸素が20%以上必要であった。したがって、透明膜が得られ、Tiターゲットを用いた場合では、もっとも成膜速度の速い酸素割合30%の場合を選び、また、TiOターゲットを用いた場合では、もっとも成膜速度の速い酸素割合20%の場合を選び、行った。
表1、表2の結果から明らかなように、本発明のターゲットを用いることにより高屈折率を有する透明なTiO2 膜が高速で成膜できた。
[実施例12〜16]
市販されている高純度のTiO2 粉末と添加物としてCr23 粉末、CeO2 粉末、Nb25 粉末、Al23 粉末,SiO2 粉末、を準備し、Cr23 粉末、CeO2 粉末、Nb25 粉末がそれぞれ20重量%、またAl23 粉末,SiO2 粉末がそれぞれ5重量%になるように、TiO2 粉末とボールミルで混合した。これら3種類の混合粉末をカーボン製のホットプレス用型に充填し、アルゴン雰囲気中1200℃で1時間保持の条件でホットプレスを行った。このときのホットプレス圧力は50kg/cm2 とした。得られた焼結体の密度、比抵抗を測定した。これらの結果を表3に示す。
また、それぞれの焼結体を直径6インチ、厚さ5mmの寸法に機械加工し、ターゲットを作製した。ターゲットは銅製のバッキングプレートにメタルボンディングして用いた。
また、これらのターゲットとなる焼結体の一部を酸溶解あるいはアルカリ溶融して、水溶液を調製し、ICP装置で焼結体の組成を分析した結果、混合粉末の仕込組成と焼結体の組成はほぼ一致していることを確認している。
[実施例17〜31]
つぎに、このターゲットをマグネトロンスパッタリング装置に取り付けて、TiO2 膜の成膜を行った。このときの条件は投入電力:DC1kW、背圧:1×10-5Torr、スパッタリング圧力:2×10-3Torrで行った。スパッタリングガスには、アルゴンまたはアルゴンと酸素の混合ガスを用いた。基板にはソーダライムガラスを用いた。また、基板に対する意図的な加熱は特に行わなかった。膜厚はおよそ100nmとなるように行った。スパッタリング中の放電はきわめて安定しておりDCスパッタリングでも安定して成膜ができた。成膜後、膜厚を触針式の膜厚測定装置を用いて測定した。さらに、エリプソメーターで膜の屈折率を測定した。表4に、成膜速度および膜の屈折率を示す。また、得られた膜はすべて透明で膜の光吸収は無かった。
表3、表4の結果から明らかなように、本発明のターゲットを用いることにより高屈折率を有する透明なTiO2 膜が高速で成膜できた。
Figure 2008057045
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本発明は、高屈折率を有する酸化物透明薄膜をスパッタリング法で形成する場合に用いるスパッタリングターゲットに関するものである。

Claims (3)

  1. 主成分がTiOである酸化物焼結体スパッタリングターゲットにおいて、室温での比抵抗値が0.65Ωcm以下であり、Xが1<X<2の範囲であり、かつ、酸素含有量が35重量%以上であり、二酸化チタン粉末を焼結することにより形成されることを特徴とする酸化物焼結体スパッタリングターゲット。
  2. TiO以外の金属酸化物を50重量%未満を含む請求項1記載の酸化物焼結体スパッタリングターゲット。
  3. 前記金属酸化物が、クロム、セリウム、ジルコニウム、イットリウム、ニオブ、タンタル、珪素、アルミニウム、およびホウ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物である請求項2記載の酸化物焼結体スパッタリングターゲット。
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