JP2008044929A - 2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法およびその中間体 - Google Patents

2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法およびその中間体 Download PDF

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Abstract

【課題】効率のよい2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸の製造方法を提供すること。
【解決手段】銅化合物の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水または1級アルコールとを反応させる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法。該製造方法に用いる4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールは、チアゾリウム塩および塩基の存在下、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させることにより、容易に製造できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法およびその中間体に関する。
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸は、必須アミノ酸であるL−メチオニンのアナローグであり、飼料添加剤に用いられる重要な化合物である。その製造方法としては、アクロレインにメタンチオールを付加させて得られる3−メチルチオプロピオンアルデヒドとシアン化水素とを反応させて2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルを得、これを硫酸などの強酸で加水分解する方法(例えば、特許文献1参照。)が知られている。しかしながら、この方法は比較的毒性の高いシアン化水素を用いる必要があったり、大量の硫酸アンモニウムが副生したりする点において、問題があった。
そこで、シアン化水素を用いることなく2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸を製造する方法が提案されている。例えば、1,2−エポキシ−3−ブテンを出発原料とする方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法は、一般的には入手が容易でない原料を用いて、少なくとも3つの工程を有する製造方法であり、さらに効率のよい製造方法の開発が求められていた。
特公平5−1787号公報 特開2006−136317号公報
このような状況の下、本発明者は、さらに効率のよい2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸の製造方法について鋭意検討したところ、銅化合物の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水とを反応させることにより、上述のような問題を生じることなく2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸を製造できることを見出した。ここで、水の代わりに1級アルコールを反応させれば、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸エステルも製造でき、さらに、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの酸化中間体として、新規な化合物である4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが得られることも見出した。また、上記反応に用いる4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールは、新規な化合物であり、かかる化合物は、チアゾリウム塩および塩基の存在下、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させることにより容易に得られることも見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、
1)銅化合物の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水または1級アルコールとを反応させる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法、
2)4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール、
3)4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール、
4)チアゾリウム塩および塩基の存在下、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させる4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの製造方法、
等を提供するものである。
本発明によれば、毒性の高い反応試剤を使用したり大量の廃棄物を副生させたりすることなく、比較的入手の容易な3−メチルチオプロピオンアルデヒドを出発原料とし、少ない工程で2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルを得ることができるため、有利である。
以下、本発明を詳細に説明する。まず、新規な化合物である4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの製造方法について説明する。
4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールは、チアゾリウム塩および塩基の存在下、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させることにより得ることができる。
3−メチルチオプロピオンアルデヒドは、市販のものを用いてもよいし、例えば、触媒量の酢酸/ピリジンの存在下にアクロレインとメタンチオールとを付加反応させる方法(例えば、米国特許第5250743号公報参照。)等の公知の方法に準じて製造したものを用いてもよい。
ホルムアルデヒドは、一般には、メタノールの酸化反応により合成されるが、市販のものを使用することもできる。ホルムアルデヒド水溶液を用いてもよいし、トリオキサン、パラホルムアルデヒド等のオリゴマー状のホルムアルデヒドを用いてもよい。オリゴマ−状のホルムアルデヒドを用いることが好ましく、なかでもパラホルムアルデヒドが、より好ましい。
ホルムアルデヒドの使用量は、3−メチルチオプロピオンアルデヒドに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、10モル倍以下である。ここで、オリゴマー状のホルムアルデヒドを使用する場合、上記使用量は、−CHO−ユニット基準のモル数である。例えば、トリオキサン(C)1モルは、−CHO−ユニット基準でホルムアルデヒド3モルと換算するものとする。
本発明において、チアゾリウム塩とは、アルデヒド類とホルムアルデヒドのカルボニル炭素同士のカップリング反応によりケトールを与えるものならば、特に限定されず、例えば、Helv. Chim. Acta, 79, 61 (1996)、Chem. Eur. J., 8, 5288 (2002)等に記載のチアゾリウム塩を用いることができる。
かかるチアゾリウム塩としては、1,3−チアゾール環を構成する窒素原子上に、置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基が結合した構造を有するカチオンと、任意のアニオンとから構成される化合物であれば、特に限定されず、例えば、式(1)
Figure 2008044929
(式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、Xは1価のアニオンを表す。また、RとRとが結合して、各結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
で示されるチアゾリウム塩(以下、チアゾリウム塩(1)と略記する。)が挙げられる。
〜Rで示されるアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。これらのアルキル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フッ素原子等のハロゲン原子;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;エテニル基、プロペニル基等のアルケニル基;プロピニル基等のアルキニル基;ホルミル基;カルボキシ基;アミノ基;ヒドロキシ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、3−オキソブチル基、メトキシエチル基、メトキシカルボニルメチル基、ベンジル基、アリル基、2−プロピニル基、アミノメチル基、1−カルボキシブチル、2−ヒドロキシメチル基等が挙げられる。
およびRで示されるアルケニル基としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、1−メチルエテニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−デセニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数2〜12のアルケニル基が挙げられる。これらのアルケニル基上に有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フェノキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等のアリールオキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアルケニル基の具体例としては、3−フルオロ−1−プロペニル基、3−メトキシ−1−プロペニル基、3−フェノキシ−1−ブテニル基、スチリル基等が挙げられる。
〜Rで示されるアリール基としては、例えばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。これらのアリール基上に有していてもよい置換基としては、例えば、前記置換基を有していてもよいアルキル基;前記置換基を有していてもよいアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等のアリール基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等のアシル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;シアノ基;ニトロ基;等が挙げられる。かかる置換基で置換されたアリール基の具体例としては、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−アセチルフェニル基等が挙げられる。
およびRで示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
で示される1価のアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオン;ホウ酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン等のホウ酸イオン類;リン酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等のリン酸イオン類;アンチモン酸アニオン、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン等のアンチモン酸イオン類;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン等のスルホン酸イオン類;ビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン等のアミドイオン類;等が挙げられる。
また、RとRとが結合して、各結合炭素原子とともに形成してなる式(2)
Figure 2008044929
で示される環構造の具体例としては、シクロペンテノチアゾール環、シクロヘキセノチアゾール環、ベンゾチアゾール環、ナフトチアゾール環等が挙げられる。また、式(2)においてAで示される環上が、上記R〜Rで示されるアリール基上に有していてもよい基で置換されていてもよい。
かかるチアゾリウム塩(1)としては、例えば3−メチルチアゾリウムブロマイド、3−エチルチアゾリウムブロマイド、3−プロピルチアゾリウムブロマイド、3−ブチルチアゾリウムブロマイド、3,5−ジメチルチアゾリウムクロライド、3−エチル−5−(2−ヒドロキシメチル)−4−メチルチアゾリウムブロマイド、3−ベンジルチアゾリウムブロマイド、3−ベンジルチアゾリウムクロライド、3−ベンジル−4−メチルチアゾリウムブロマイド、3−ベンジル−4−メチルチアゾリウムクロライド、3−ベンジル−5−メチルチアゾリウムブロマイド、3−ベンジル−5−メチルチアゾリウムクロライド、3−エチルベンゾチアゾリウムブロマイド、3−エチルベンゾチアゾリウムクロライド、3−ベンジルベンゾチアゾリウムブロマイド、3−ベンジルベンゾチアゾリウムクロライド、3−アリルベンゾチアゾリウムブロマイド、3−ベンジルチアゾリウム トリフルオロメタンスルホネート、3−ベンジルチアゾリウム ヘキサフルオロフォスフェート、3−ベンジルチアゾリウム ヘキサフルオロアンチモネート、3−ベンジルチアゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド等が挙げられる。
チアゾリウム塩の使用量は、3−メチルチオプロピオンアルデヒドに対して、通常、0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、0.2モル倍以下である。
塩基としては、第3級アミン、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基が好ましく用いられる。
第3級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;が挙げられる。金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。
塩基の使用量は、チアゾリウム塩に対して、通常0.1〜1モル倍、好ましくは0.5〜1モル倍の範囲である。
3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応は、溶媒を用いることなく実施してもよいが、通常、溶媒の存在下で実施される。溶媒としては、反応に不活性な溶媒であれば、特に限定されず、例えば、水;ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;イソプロパノール、tert−ブタノール等のアルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素溶媒;等の単独または混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、3−メチルチオプロピオンアルデヒドに対して100重量倍以下である。
反応温度は、用いるチアゾリウム塩や塩基の種類や量により異なるが、あまり低過ぎると反応が進行しにくく、また反応温度があまり高過ぎると副反応が進行する恐れがあるため、通常、−10〜200℃、好ましくは20〜120℃の範囲である。
反応は、減圧、常圧、加圧いずれでも実施可能であるが、通常、常圧で実施する。
3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとの反応は、チアゾリウム塩および塩基の存在下に、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを接触、混合することにより実施され、その混合方法は特に限定されないが、通常、溶媒、3−メチルチオプロピオンアルデヒド、ホルムアルデヒドおよびチアゾリウム塩を予め混合し、得られる混合物中に塩基を加える方法により実施される。
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、例えば反応混合物に、必要に応じて、水や水に不溶の有機溶媒を加えて、抽出処理し、有機層を濃縮処理することにより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールが得られる。水に不溶の有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル等のエステル溶媒;tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒;等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。得られた4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールは、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ、晶析等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。
次に、銅化合物の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水または1級アルコールとを反応させる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法(以下、酸化反応と略記することもある。)について説明する。
銅化合物は、1価、2価いずれも用いることができる。1価の銅化合物としては、たとえば、酸化銅(I)、塩化銅(I)等が挙げられる。2価の銅化合物としては、例えば、酢酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、炭酸銅(II)、塩化銅(II)、硫酸銅(II)、水酸化銅(II)、酸化銅(II)等が挙げられる。好ましくは2価の銅化合物が用いられる。銅化合物は、水和物であっても無水物であっても用いることができる。
銅化合物の使用量は、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールに対して、通常0.001モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールに対して、0.2モル倍以下である。
酸素は、酸素ガスをそのまま用いてもよいし、窒素等の不活性ガスで希釈して用いてもよいし、空気を用いてもよい。
酸素の使用量は、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールに対して、通常1モル倍以上であればよく、その上限は特にない。
1級アルコールは、市販のものを使用することができる。1級アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール等の炭素数1〜6のアルコールが用いられる。
水または1級アルコールの使用量は、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールに対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、溶媒を兼ねて大過剰に使用することもできる。
本発明の酸化反応において、水を用いれば、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸が得られ、1級アルコールを用いれば、対応する2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸のエステルが得られる。
水を用いる場合、塩基の存在下に酸化反応を実施することが好ましい。塩基としては、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基が用いられる。金属水酸化物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;が挙げられる。金属炭酸塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;が挙げられる。金属炭酸水素塩としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられる。
塩基の使用量は、銅化合物に対して、通常0.1〜10モル倍である。
本発明の酸化反応は、通常、溶媒中で実施される。溶媒としては、酸化反応を阻害しないものであれば特に制限されず、例えば、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;イソプロパノール、tert−ブタノール等の2級または3級アルコール溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル溶媒;等の単独または混合溶媒が挙げられる。また、上述したとおり、水または1級アルコールを溶媒として使用してもよい。水または1級アルコールを溶媒として用いることが好ましい。かかる溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールに対して100重量倍以下である。
反応温度は、銅化合物やその他の反応条件により異なるが、あまり低過ぎると酸化反応が進行しにくく、またあまり高過ぎると副反応が進行する恐れがあるため、通常−10〜120℃、好ましくは0〜80℃の範囲である。
反応は、減圧、常圧、加圧いずれでも実施可能であるが、通常、常圧で実施する。
本発明の酸化反応は、銅化合物および必要に応じて塩基の存在下に、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水または1級アルコールとを、接触、混合することにより実施され、その混合方法は特に限定されない。通常、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、水または1級アルコールと、銅化合物および必要に応じて塩基と溶媒とを混合し、該混合物中を酸素雰囲気下で攪拌するか、もしくは該混合物中に酸素を吹き込むことにより実施される。
反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
本発明の酸化反応の反応機構は明らかではないが、まず、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールが酸化されて、新規な化合物である4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールが生成し、次いで、水または1級アルコールが反応することにより2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルを与えると考えられる。
反応終了後、例えば反応混合物に、必要に応じて、水や水に不溶の有機溶媒を加え、さらに必要であれば中和処理した後、抽出処理を施すことにより、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルを含む有機層が得られる。かかる有機層を濃縮処理することにより、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸類を取り出すことができる。得られた2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸類は、蒸留、カラムクロマトグラフィ、晶析等の通常の精製手段によりさらに精製してもよい。
水に不溶の有機溶媒としては、例えば酢酸エチル等のエステル溶媒、例えばメチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の炭化水素溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
かくして得られる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルとしては、例えば2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸メチル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸エチル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸プロピル、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸ブチル等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、各実施例において、純度分析はガスクロマトグラフィ面積百分率法(以下、GC面百法と略記する。)にて実施した。
実施例1
200mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド23.7g、パラホルムアルデヒド17.7g、3−エチルベンゾチアゾリウムブロマイド4gおよびtert−ブタノール100gを仕込み、攪拌した。この混合液にトリエチルアミン1.3gを加えた後、内温80℃まで昇温し、同温度で24時間攪拌した。反応後、酢酸エチル100gを加え、水20gで2回洗浄処理し、得られた有機層を濃縮処理した。得られたオイルを減圧蒸留し、留出温度45〜50℃(0.5〜0.6kPa)の留分として3−メチルチオプロピオンアルデヒド15gを回収した後、留出温度85〜95℃(0.3kPa)の留分15g(以下、留分A)を得た。留分Aを、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールが40%含まれていた。留分Aをシリカゲルカラムにて、さらに精製した。酢酸エチル:n−ヘキサン=1:4の溶出液にて、低極性不純物を追い出した後、酢酸エチル:n−ヘキサン=2:4の溶出液にて、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを溶出させた。溶媒を留去して、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール純度91%(ガスクロマトグラフィ面積百分率法)の留出分1.4gと、純度82%(ガスクロマトグラフィ面積百分率法)の留出分2.0gを得た。これらの留出分はいずれも室温で固化した。
<4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールのスペクトルデータ>
H−NMR(δppm,DMSO−d,TMS基準):2.05(s,3H),
2.62(m,2H),2.70(m,2H),4.06(s,2H),
5.13(bs,1H)
MS(m/z):134(M),106,103,86,75,61
実施例2
200mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド25.0g、パラホルムアルデヒド20.0g、3−ベンジルチアゾリウムブロマイド3gおよびエチレングリコールジメチルエーテル100gを仕込み、攪拌した。この混合液に炭酸カリウム800mgを加えた後、内温50℃まで昇温し、同温度で6時間攪拌した。反応後、エチレングリコールジメチルエーテルを留去したのち、トルエン50gと水50gを加え、攪拌後、静置すると2層に分離した。上層であるトルエン層と水層を分液したのち、水層にトルエン50gを加え、再度、攪拌、静置分液した。トルエン層を合一後、濃縮処理し、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールを含むオイルを得た。得られたオイルを減圧蒸留し、留出温度72〜75℃(0.7〜0.8kPa)の留分として3−メチルチオプロピオンアルデヒド1.6gを回収した後、留出温度110〜115℃(0.7kPa)の留分7.0gを得た。この留分を、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールが86%含まれていた。
実施例3
50mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド300mg、パラホルムアルデヒド300mg、3−エチルベンゾチアゾリウムブロマイド60mgおよびtert−ブタノール3gを仕込み、攪拌した。この混合液にトリエチルアミン40mgを加えた後、内温80℃まで昇温し、同温度で24時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gを加え、水5gで2回洗浄処理した後、得られた有機層を濃縮処理し、淡黄色オイル400mgを得た。得られたオイルを、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールが40重量%含まれていた。収率41%。
原料の3−メチルチオプロピルアルデヒドが45%残存していた。
実施例4
50mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド500mg、パラホルムアルデヒド400mg、3−ベンジルチアゾリウムブロマイド61mgおよびtert−ブタノール3gを仕込み、攪拌した。この混合液に炭酸カリウム16mgを加えた後、内温50℃まで昇温し、同温度で6時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gを加え、水5gで2回洗浄処理した後、得られた有機層を濃縮処理し、淡黄色オイル680mgを得た。得られたオイルを、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)―2−オキソ−1−ブタノールが49重量%含まれていた。収率52%。
原料の3−メチルチオプロピルアルデヒドが32%残存していた。
実施例5
50mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド500mg、パラホルムアルデヒド400mg、3−ベンジルチアゾリウムブロマイド61mgおよびtert−ブタノール3gを仕込み、攪拌した。この混合液に水酸化カリウム14mgを加えた後、内温80℃まで昇温し、同温度で6時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gを加え、水5gで2回洗浄処理した後、得られた有機層を濃縮処理し、淡黄色オイル670mgを得た。得られたオイルを、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)―2−オキソ−1−ブタノールが32重量%含まれていた。収率34%。
原料の3−メチルチオプロピルアルデヒドが28%残存していた。
実施例6
50mLフラスコに、室温で3−メチルチオプロピオンアルデヒド500mg、パラホルムアルデヒド400mg、3−ベンジルチアゾリウムブロマイド61mgおよびトルエン3gを仕込み、攪拌した。この混合液に炭酸カリウム16mgを加えた後、内温110℃まで昇温し、同温度で2時間攪拌した。反応後、酢酸エチル10gを加え、水5gで2回洗浄処理した後、得られた有機層を濃縮処理し、淡黄色オイル650mgを得た。得られたオイルを、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、4−(メチルチオ)―2−オキソ−1−ブタノールが51重量%含まれていた。収率52%。
原料の3−メチルチオプロピルアルデヒドが5%残存していた。
実施例7
50mLフラスコに、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール100mg、酢酸銅(II)10mgおよび水5gを仕込み攪拌した。この混合液に水酸化カリウム30mgを加えた後、空気雰囲気下、室温で2時間攪拌した。反応液に5重量%硫酸水を加えて、反応系を酸性にした後、酢酸エチル10gを加えて攪拌し、静置後、分液処理した。有機層を濃縮処理し、残渣130mgを得た。この残渣を、内部標準を用いてH−NMR分析したところ、2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸が40重量%含まれていた。収率46%。
実施例8
50mLフラスコに、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール100mg、酢酸銅(II)20mgおよびメタノール5gを仕込み、空気雰囲気下、室温で2時間攪拌した。反応液の一部をサンプリングし、ガスクロマトグラフ質量分析装置を用いて分析したところ、ガスクロマトグラフ上の面積比13%の生成物を確認した。この生成物はマスフラグメントパターンより、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナールと同定された。
MS(m/z):132(M)103,87,75,61
反応液を、さらに空気雰囲気下、室温で3日間攪拌後、反応液に5重量%硫酸水を加えて、反応系を酸性にした後、酢酸エチル10gを加えて攪拌し、静置後、分液処理した。有機層を濃縮処理し、残渣110mgを得た。この残渣を、ガスクロマトグラフィ面積百分率法にて分析したところ、収率は以下のとおりであった。
2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸メチル:12%
4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール:23%
原料が34%残存していた。

Claims (9)

  1. 銅化合物の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水または1級アルコールとを反応させる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸またはそのエステルの製造方法。
  2. 銅化合物および塩基の存在下、4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールと、酸素と、水とを反応させる2−ヒドロキシ−4−(メチルチオ)酪酸の製造方法。
  3. 4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノール。
  4. チアゾリウム塩および塩基の存在下、3−メチルチオプロピオンアルデヒドとホルムアルデヒドとを反応させる4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタノールの製造方法。
  5. チアゾリウム塩が、式(1)
    Figure 2008044929
    (式中、Rは置換基を有していてもよいアルキル基または置換基を有していてもよいアリール基を表し、RおよびRはそれぞれ同一または相異なって、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルケニル基、ハロゲン原子または水素原子を表し、Xは1価のアニオンを表す。また、RとRとが結合して、各結合炭素原子とともに環を形成していてもよい。)
    で示されるチアゾリウム塩である請求項4に記載の製造方法。
  6. 式(1)におけるXで示される1価のアニオンが、ハロゲン化物イオン、ホウ酸イオン類、リン酸イオン類、アンチモン酸イオン類、スルホン酸イオン類またはアミドイオン類である請求項5に記載の含窒素へテロ環化合物。
  7. 塩基が、第3級アミン、金属水酸化物、金属炭酸塩および金属炭酸水素塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基である請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. ホルムアルデヒドが、パラホルムアルデヒドである請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. 4−(メチルチオ)−2−オキソ−1−ブタナール。
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