JP2008043102A - 積層鉄心及びこの積層鉄心を用いた回転電機の固定子鉄心 - Google Patents
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【解決手段】抜きかしめ2(第1凹凸部)はコアバック部4のみに設け、ティース部5には第2凹凸部3を設ける。第2凹凸部3はエッジ部分がない形状なので、磁性板20の絶縁層26が破壊されることがない。また、第2凹凸部3の凹部3aの半径rよりも、凸部3bの半径Rのほうが大きく、互いに積み重ねたとき、板と板の間に適当な隙間27が生じる。これにより積層間の絶縁を維持しながら積層された磁性板20の間隙を確保できる。
【選択図】図1
Description
以下、本発明の説明は回転電機の固定子を例として説明する。
界磁コアを積層鉄心(互いに絶縁された薄い磁性板を重ねてコアとする)で構成することは、コアの渦流損を低減するためのよく知られた方法である。以下、説明の都合上、分割鉄心構造と呼ばれる構造(複数の界磁磁極を円筒の内側の円周上に配置する)の電動機の場合を例として説明するが、この発明はもちろん、分割鉄心でない場合にも適用できる。
積層する磁性板20はその表面を処理して、図12に示すように表層に絶縁層26(酸化皮膜など)を構成したものが用いられる。また、積層後、磁性板20が互いにずれたり、励磁によって板が振動してうなり音を発生したりすることを防止するために、積み重ねられた磁性板20同士の位置関係を固定する目的で、いわゆる抜きかしめ2が用いられる。図12は抜きかしめ2の断面説明図である。抜きかしめ2は磁性板20にプレスで、板厚の1/3〜1/2程度の深さのくぼみ2aを設けるとともに、このくぼみ2a内の板を打ち抜かずに残しておく(当然一方側に突起2abとして出っ張った状態になる)ものであり、板を積み重ねるとき、この突起2abを隣接板のくぼみ2aに圧入することで、互いの動きは固定される。図12では絶縁層26は抜きかしめ2の壁の部分には存在しないことが示されている。
くぼみ2aは第1凹部、突起2abは第1凸部とも言う。
抜きかしめ2は、積層した磁性板同士の固定を安価に実現できるため広く用いられており、分割鉄心1の1個当たり2〜3箇所の抜きかしめ2が施される。図11では、3個の抜きかしめ2を施した例を示している。コアバック部4は図の横方向に広がっているので両端に1個づつ、計2個の抜きかしめが設けられている。しかし、抜きかしめ2はその部分の絶縁層を破壊するとともに、くぼみ2aの内壁部と、突起2abの周囲の壁(図に向かって垂直の部分)の部分は絶縁層26が形成されていないため、図13のように積み重ねたとき、図中、8で示すようなループ状の通電経路が形成されてしまう。そして、ティース部5の抜きかしめ2はティース部5の中央にあるが、コアバック部4の抜きかしめ2はコアバック部4の端の方にあるため、この通電経路8のループの面を横切って磁束の一部が通ることとなる。即ち、磁束はティース部5からコアバック部4を経由して、図示しない隣の鉄心のコアバック部4を経由して隣の鉄心のティース部5へと流れている。そしてこの磁束の時間変化により通電経路8に渦電流が流れてしまうという課題があった。
渦電流を低減するために、抜きかしめ2のうち、ティース部5の抜きかしめ2を無くしてしまうことも考えられる。しかし、ティース部5の部分のみに巻き線を行ういわゆる集中巻の場合、ティース部5にインシュレータを介して巻線21が施されるため、積層した磁性板20を圧縮する方向に力(図13の7)が働く。その際、ティース部5の積層隙間27が押しつぶされる。一方コアバック部4には抜きかしめ2があるため積層隙間27が維持され、結果として鉄心1が図14に示すように、コアバック部4の厚みtに対して、ティース部5の厚みはt−αとなり、ティース部5がつぶされたように変形してしまう。ティース部5がつぶされることで内・外径とも扇形に変形する。
即ち、抜きかしめ2は磁性板20の横方向のずれを防止するだけでなく、積み重ねを圧縮する縦方向に対しても圧縮されて板同士が互いに密着することをも防止しているのである。
また、ティース部の抜きかしめを無くした場合、集中巻の場合、ティース部に直接巻線が施されるため、積層を圧縮する方向に力が働く。そしてティース部の積層隙間が押しつぶされる。一方コアバック部には抜きかしめがあるため積層隙間が維持され、結果として積層された鉄心の形が変形してしまう。したがって積層の組み立て寸法精度が低下するという課題がある。
この磁性板の一面に形成された第1凹部と、他面に形成された第1凸部とを有し、互いに隣接する磁性板の前記第1凹部と第1凸部とが嵌合する第1凹凸部、
前記ティース部の一面に形成され、内面が前記絶縁層で覆われた第2凹部と、他面に形成され表面が前記絶縁層で覆われた第2凸部とを有し、互いに隣接する磁性板の前記第2凹部と第2凸部とが、間隙を残して嵌合する第2凹凸部、
前記第1凹凸部と、前記第2凹凸部とを、それぞれ互いに嵌合させて前記磁性板を積層して鉄心を形成するとともに、この鉄心のティース部に巻線を配置したものである。
実施の形態1.
図1に実施の形態1における積層鉄心の磁性板20を示す。回転電機の固定子の分割鉄心1を構成する磁性板20はコアバック部4とこれに磁気的に接続されたティース部5とを有する。コアバック部4には、積層された磁性板20を互いに固定するための抜きかしめ2(第1凹凸部)が設けられている。抜きかしめ2は円筒形状の第1凹部と、他の面に突出し、直径が第1凹部の直径とほぼ等しいか、わずかに大きい円柱状の第1凸部とからなり、第1凸部は磁性板を積み重ねたとき、第1凹部に圧入することで互いが固定されるものである。また、ティ−ス部5の中央にはプレス加工によって形成したほぼ円形状の第2凹凸部3(一面に第2凹部、他面に第2凸部)が設けられている。第2凹凸部3の形状と機能については詳細を後述する。この磁性板20を回転電機の固定子として用いた場合の磁束の流れの一部を矢印6で示している。
図2に第2凹凸部3を含む磁性板20の部分断面を示す。図において、図1の符号と同一符号は同一、または相当部分を示す。第2凹凸部3は磁性板20の表面側には、図示しない雄型によりプレス成型された開口径2rの皿状の第2凹部3aを持ち、裏面側には図示しない雌型によりプレス成型された底部の直径が2Rの円錐状(又は皿を伏せた形状)の第2凸部3bを持つ。第2凹部3aは第1凹部のような角部がないので、その内面は絶縁層26で覆われている。第2凸部3bも第1凸部のような角部がないので、その表面は絶縁層26で覆われている。磁性板20は第2凸部3bの頂部では板が引き伸ばされているので必然的に薄くなっている。その結果、必然的にr<Rとなる。第2凹部3aの形(凸部の高さなど)はこの成型によって磁性板20の絶縁皮膜26にひび割れや、はがれが生じない範囲の値を用いる。具体的には、例えば、第2凹部3aの直径は板厚の2〜5倍、第2凹部3aの深さは板厚以下、好ましくは板厚の1/3〜1/2程度である。第2凸部3bの直径は第2凹部の直径より大きく、高さは第2凹部3aの深さと同程度か、又はより小さい。
本実施の形態では第2凹凸部3の側面断面形状について説明する。実施の形態1の図2では、第2凹凸部3の形状は、その側面断面形状がほぼ円形であるとして図示説明した。しかし、第2凹凸部3は成型時に絶縁層26にひび割れ、はがれが生じないよう、鋭利なエッジを持たない形、積み重ねたときに適度な隙間27ができる形であって、凹凸の形状を調整すれば隙間27の間隔の調節が出来る形状であれば良いのであるから、以下に例をしめすようなものであれば良い。
例えば、図4に示すような凸部/凹部ともに先端が球面状の円錐形状3X,3Yにしておくと、積み重ねたとき円錐の斜面の部分3Zで面接触となることで、接触部に残った電磁鋼板の絶縁層27にかかる単位面積あたりの圧力を大きくせずに接触させることが出来るため、積層間の電気的絶縁状態をより安定的に維持できる。図において、図1の符号と同一符号は同一、または相当部分を示す。また図4は理解を助けるため縦寸法を横寸法よりも拡大して図示している。
本実施の形態では第2凹凸部3の平面形状について説明する。実施の形態1、実施の形態2では第2凹凸部3の平面形状は円形である。しかし、例えば楕円、長円、小判型でもよく、また、絶縁皮膜27が破壊されない範囲なら多角形でもよい。
図5は実施の形態4の回転電機固定子の積層鉄心の外形形状を示す図である。図において、図1の符号と同一符号は同一、または相当部分を示す。図5では第2凹凸部30は長く続く山脈型の凹凸部、即ち第2凹部3は溝状、第2凸部は第2凹部に係合する形状となっており、その方向はティース部5の中央に長手方向(回転機の直径方向)に向かって設けられている。図5では第2凹凸部30はティース部5の端まで設けてあるが、無論、途中までとしても良い。第2凹凸部30の側面断面は図4と類似する形状、例えば円錐状としてよい。
実施の形態4で説明した第2凹凸部30の配置方向は図6に示すように、ティース部5に対して直交する方向としても良い。
図7に実施の形態5の積層鉄心の磁性板20の図を示す。図において、図1の符号と同一符号は同一、または相当部分を示す。図7では、ティース部5に巻締まり防止用の第2凹凸部3を2箇所設けた例を示している。図示しないが第2凹凸部は3個以上でも良い。ただし、このとき、第2凹凸部3の位置については、巻線後の積層鉄心の変形が出来るだけ小さくなるよう配慮すべきで、そのためには、複数個の第2凹凸部3を設けるに際し、その位置をティース部5の中心線に対して対称な位置に配置すべきである。また、ティース部5での内径−外径側方向における第2凹凸部の配置位置については、コアバック部4の抜きかしめ2の図示位置を前提に考えると、ティース部5の半分より内径側に配置することが望ましい。具体的には、ティース部の直線部の長さをLtとしたとき、その内径側のLt/2の領域に配置することが望ましい。
なお、実施の形態1〜5で説明した各凹凸部についても、その数を複数個としてもよく、その位置は本実施の形態で示す位置としてよい。
図8に、実施の形態7における、積層鉄心の磁性板20の概略図を示す。図において、図1の符号と同一符号は同一、または相当部分を示す。図では、積層した磁性板20の互いの固定をより強固にするため、コアバック部4に抜きかしめ2を3箇所(2a,2b,2c)設けた例を示した。これにより、磁性板20の固定がより強固にできるとともに、図に示す磁束の通り道6との位置関係から、抜きかしめ2aと2bおよび2cと2b間に流れる磁束の量は少ないことがわかる。そのため、抜きかしめ2aと2bの間,2bと2cの間で生じる渦電流損は少なく、かつ巻締まり防止用の第2凹凸部3が巻線による積層鉄心1の変形を抑制できることは言うまでもない。
なお、図では抜きかしめの個数が3個の例を示したが、4個以上でも同様の効果を発揮する。また、抜きかしめ2はその個数にかかわらず、できるだけコアバック部4の外周側に配置することが、仮に抜きかしめを介した通電ループが形成された場合でも、そのループを貫く磁束が少ないので、渦流損が小さくなるという点で望ましい。
以上の各実施の形態で説明した鉄心に巻き線を施した場合、第2凹凸部3は巻き線21と鉄心の間に設けられたインシュレータで隠された部分に設けられているので外見上は図10の従来の図とまったく変わりがない。
図9は、複数のティース部5を薄肉部40で互いに連結したもので、薄肉部40の位置で折り曲げ、折り曲げた部分を溶接して複数のティースを固定することによって回転機の固定子鉄心として完成させるものである。このような形式の積層鉄心でも本願の第2凹凸部3は同様の効果を発揮することは言うまでもない。
なお、図示しないが、薄肉部40に代えて、ヒンジ形式で接合されるものでも同様の効果が得られる。
3a 第2凹部、 3b 第2凸部、 3X 円錐型凹部、
3Y 円錐型凸部、 3Z 直線部、 4 コアバック部、 5 ティース部、
6 ティース部における磁束の流れを示す説明補助線、
7 巻線により積層鉄心に働く力、 8 抜きかしめを介して流れる渦電流、
18 穴、 20 磁性板、 21 巻き線、 26絶縁層、
27 隙間、 30 山脈型凹凸部、 40 薄肉部、 100 外枠。
Claims (7)
- ティース部と、このティース部に連続するコアバック部とを有し、表面に絶縁層が形成された磁性板、
この磁性板の一面に形成された第1凹部と、他面に形成された第1凸部とを有し、互いに隣接する磁性板の前記第1凹部と第1凸部とが嵌合する第1凹凸部、
前記ティース部の一面に形成され、内面が前記絶縁層で覆われた第2凹部と、他面に形成され表面が前記絶縁層で覆われた第2凸部とを有し、互いに隣接する磁性板の前記第2凹部と第2凸部とが、間隙を残して嵌合する第2凹凸部、
前記第1凹凸部と、前記第2凹凸部とを、それぞれ互いに嵌合させて前記磁性板を積層して鉄心を形成するとともに、この鉄心のティース部に巻線を配置したことを特徴とする積層鉄心。 - 前記第2凹凸部は溝状であることを特徴とする請求項1記載の積層鉄心。
- 前記第2凹凸部は円錐状であることを特徴とする請求項1記載の積層鉄心。
- 前記第2凹凸部は、前記ティース部の長手方向の中央と先端との間で、前記ティース部の幅方向のほぼ中心に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層鉄心。
- 前記第1凹凸部は前記コアバック部に2箇所以上設けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層鉄心。
- 前記磁性板は、互いに連結された複数のティース部を備えたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層鉄心。
- 回転電機の固定子として、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層鉄心を用いたことを特徴とする回転電機の固定子鉄心。
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