JP2008036233A - ミシン - Google Patents

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Abstract

【課題】正負圧の発生時にのみ潤滑室の内外間の十分な通気を確保し、潤滑室の内部への塵埃の侵入、及び潤滑室の外部への潤滑剤の漏れ出しを最小限に抑えながら正負圧の発生に伴う不具合を解消することができるようにする。
【解決手段】摺動部材としての上ルーパ棒4の潤滑室の前部を覆う蓋板3に弁手段5,5を設け、一方の弁手段5が、潤滑室の内部の正圧の作用により、他方の弁手段5が、潤滑室の内部の負圧の作用により夫々開放動作をなす構成とし、通常時における潤滑室内外の連通を遮断する。
【選択図】図2

Description

本発明は、針棒、ルーパ棒等の摺動部材の摺動を伴う運転中にハウジングの内部に発生する正圧又は負圧の抑制を図るようにしたミシンに関する。
近年の工業用ミシンおいては、縫製作業の能率向上を図るべく運転速度の高速化が進められている。このような高速化の実現のためには、ミシンの各部に存在する可動部材を良好に潤滑することが重要であり、夫々の可動部材に応じた潤滑構造が採用されている。
ミシンの可動部材として、オーバロックミシンの上ルーパ棒、各種ミシンの針棒等、ハウジングの周壁を内外に貫通するように支持され、ハウジングの内部の可動機構からの伝動により軸長方向に大ストロークの摺動動作をなす摺動部材がある。この種の摺動部材の潤滑は、高速化の実現のために特に重要であり、従来、ハウジング内部の前記可動機構の配設部位を、ハウジングの他部及び外部に対して封止された潤滑室とし、この潤滑室に適量の潤滑剤(グリス、ミシン油等)を封入して、摺動部材と可動機構との連結部、摺動部材の支持部に供給するようにした潤滑構造が採用されている。
ところが、このような潤滑構造において、潤滑剤の外部への漏れ出しを防止するためには、前記潤滑室を外部に対して密閉された密閉室とする必要がある一方、完全な密閉室とした場合、連続運転に伴う昇温により潤滑室の内部に正圧が発生し、また摺動部材の出入りに応じて潤滑室の内部に正圧及び負圧が発生し、摺動部材の滑らかな動作に影響を及ぼすという不具合がある。
この不具合を解消することを目的として、従来、前記潤滑室の一部、具体的には、潤滑室を封止する蓋板の一部に、内外を連通する小径の通気孔を形成し、この通気孔により、内から外、又は外から内への通気を可能として、潤滑室の内部における正負圧の発生を防止するようにしたミシンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−97423号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたミシンにおいては、潤滑室内部の潤滑剤の漏れ出しを防止するために、また外部からの塵芥の侵入を防止するために、前記通気孔を可及的に小径とする必要があり、運転中に発生する正負圧を緩和するための十分な通気を確保することが難しいという問題がある。
また運転の停止中においても前記通気孔による通気が可能であることから、外気中の塵埃が潤滑室内に侵入し、潤滑室内部の潤滑剤に混入して潤滑性能の低下を引き起こす虞れがある。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、正負圧の発生時にのみ潤滑室の内外間の十分な通気を確保し、潤滑室の内部への塵埃の侵入、及び潤滑室の外部への潤滑剤の漏れ出しを最小限に抑えながら正負圧の発生に伴う不具合を解消することができる潤滑構造を有するミシンを提供することを目的とする。
本発明の第1発明に係るミシンは、ハウジングを内外に貫通して支持され、前記ハウジングの内部に配した可動機構に連結された摺動部材を、前記可動機構の周囲を封止して設けた潤滑室内に封入した潤滑剤により潤滑するミシンにおいて、前記潤滑室の一部を前記ハウジングの外部に連通する通気孔と、該通気孔に付設してあり、前記潤滑室内の正圧又は負圧の作用により前記通気孔を開放する弁手段とを備えることを特徴とする。
また本発明の第2発明に係るミシンは、第1発明における通気孔及び弁手段が、前記潤滑室を封止する蓋板に設けてあることを特徴とする。
また本発明の第3発明に係るミシンは、第1又は第2発明における弁手段が、ばね力に抗した移動により前記通気孔を開放する弁体を備えることを特徴とする。
また本発明の第4発明に係るミシンは、第1又は第2発明における弁手段が、前記通気孔の外側又は内側開口部を覆うように設けられた弾性材料製のフラップであることを特徴とする。
更に本発明の第5発明に係るミシンは、第1又は第2発明における弁手段が、前記ハウジング内部の正圧又は負圧の作用により自重に抗して移動して前記通気孔を開放する弁体を備えることを特徴とする。
本発明の第1発明に係るミシンにおいては、潤滑室の内外を連通する通気孔を、潤滑室内の正圧又は負圧の作用により動作する弁手段により開放するから、正負圧の発生時にのみ潤滑室の内外間の十分な通気を確保することができ、正負圧が発生しない通常時には通気孔を閉止して、潤滑室の内部への塵埃の侵入及び潤滑室の外部への潤滑剤の漏れ出しを最小限に抑えることができる。
また第2発明に係るミシンにおいては、通気孔及び弁手段を潤滑室の蓋板に設けたから、簡易な設計変更により目的を達成することができる。
また第3発明に係るミシンにおいては、ばね力に抗して移動する弁体により通気孔を開閉するから、確実な開放及び閉止状態を実現することができる。
また第4発明に係るミシンにおいては、通気孔を開閉する弁手段を弾性材料製のフラップとしたから、更に第5発明に係る弁手段においては、自重に抗して移動する弁体により通気孔を開閉するから、簡素な構成により目的を達成することができる等、本発明は優れた効果を奏する。
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係るミシンの一例としてのオーバロックミシンの外観斜視図である。オーバロックミシン1は、下面の四隅にゴム製の支持脚20,20…(3つのみ図示)を有し、オイルパンを兼ねる基台21を備えており、この基台21の上部に、図示しないミシン主軸及び各部の駆動機構を内蔵する中空の機枠2が固定されている。
機枠2は、下側左部を外向きに張り出して設けた受け台を備えており、この受け台の上面に縫製布を載置するためのクロスプレート22が取付けてある。クロスプレート22を下側から支える前記受け台は、クロスプレート22の前、後及び左縁の夫々に沿って垂下するカバー板23により覆ってあり、図中に示されていない。また機枠2の上部前面には、糸調子器24が設けてある。更に機枠2の上面は、略全面に亘って開口しており、上カバー25により液密を保って覆ってある。
機枠2の下部前面には、クロスプレート22の右位置に前開きカバー26が取付けてある。前開きカバー26は、左側に一体化された切り屑落とし板27と共に、下縁を枢軸として回動し、上縁を前方に倒すように開放することができる。
図2は、前開きカバー26の内側部位の構成を示す前面図であり、前開きカバー26により覆われた機枠2の前面には、複数本の固定ねじ30,30…によりルーパ室40(図3参照)の蓋板3がねじ止め固定してある。
図3は、蓋板3を取り外して示すルーパ室40の断面図である。本図に示す如く蓋板3の後側には、機枠2の前部に一体形成されたルーパ室(潤滑室)40が設けてあり、前記蓋板3は、ルーパ室40の前部全面を液密に覆うように取付けてある。ルーパ室40の上部には、外部に連通する開口が設けてあり、この開口を覆うようにルーパ台41が固定されている。ルーパ台41には、前記開口に整合する位置を上下に貫通するガイド孔42が設けてあり、このガイド孔42の内部には、円筒形をなすルーパガイド43が、紙面と直交する水平軸回りでの回動自在に支持されている。
ルーパガイド43は、径方向に貫通形成された支持孔を備えており、この支持孔には上ルーパ棒4が、軸長方向への摺動自在に支持されている。上ルーパ棒4の一端(上端)は、ルーパ台41の上側に突出しており、この突出端に上ルーパ44が固定されている。また上ルーパ棒4の他端(下端)は、ルーパ室40の内部に延設されており、この延設端は、ルーパ駆動軸45に基端を固定されたルーパクランク46の先端にピン結合されている。
ルーパ駆動軸45は、図示しないミシン主軸からの伝動により所定の角度範囲内にて反復回動する回動軸として構成されており、このルーパ駆動軸45に基端を固定されたルーパクランク46は、ルーパ駆動軸45の反復回動に応じて上下に揺動する。この揺動により、ルーパクランク46の先端に連結された上ルーパ棒4は上下に押し引きされる。
ルーパクランク46の先端の揺動は、図3中に矢符により示す如く、ルーパ駆動軸45を中心とする円弧状の軌跡に沿って左右に振れ幅を伴って揺動するから、上ルーパ棒4の上端に取り付けた上ルーパ44は、図2に示す上位置にて左進し、下位置にて右退する運動軌跡を描き、該上ルーパ44にセットされる図示しない上ルーパ糸を糸繰りする公知の動作をなす。上ルーパ棒4の上下動は、ルーパガイド43に設けた支持孔内での摺動を伴って生じ、この上下動に伴う上ルーパ棒4の左右の振れは、水平軸回りのルーパガイド43の回動により許容される。
ルーパ室40の内部には、上ルーパ棒4の支持部、ルーパクランク46との連結部等を潤滑するために、底面、右側面及び天面に沿うように、コの字形をなして導油芯47が配してある。導油芯47の下端は、ルーパ室40の底面の一部に設けた潤滑剤の溜まり部48内に位置しており、導油芯47の上端は、上ルーパ棒4の支持部近傍に当接させてある。
ルーパ室40の内部の潤滑には、ミシン油、合成エステル又はこれらの混合体を潤滑剤として用いる。なお、潤滑剤として用いる合成エステルは、本願出願人による特願2005−290108号に提案されている。このような潤滑剤は、導油芯47に予め含侵保持させてルーパ室40の内部に配して使用することができ、運転中に発生するルーパ室40の内部温度下にて液化して、導油芯47の上端に接触する上ルーパ棒4の支持部に供給され、下方に落下して溜まり部48に集まり、導油芯47の下端に吸収されて循環使用される。
以上の如きルーパ室40の前面を覆う蓋板3は、図2に示すようにルーパ駆動軸45の先端を支持する支持部31を略中央に備えている。蓋板3の上部に設けた左右に長い長孔32は、図示しない上ルーパ糸道の取付孔である。また蓋板3の前面には、上ルーパ糸及び下ルーパ糸夫々の糸道を形成する部材等の適宜の周辺部材が取付けてあるが、図2中には、これらの部材の図示を省略してある。
このような蓋板3には、ルーパ駆動軸45の支持部31の右側に、上下に並べて一対の弁手段5,5が配してある。これらの弁手段5,5は、ルーパ室40の内部における正圧又は負圧の作用により夫々開放し、ルーパ室40の内外を連通して、前記正圧又は負圧を抑制する作用をなすものである。ルーパ室40内の正圧は、運転中の発生熱による温度上昇に伴って発生し、また上ルーパ棒4の下動に伴うルーパ室40の内容積の減少によって発生する。ルーパ室40内の負圧は、上ルーパ棒4の下動に伴うルーパ室40の内容積の増加によって発生する。
図4は、図2のIV−IV線による拡大断面図であり、弁手段5の構成例が示してある。本図に示す如く弁手段5は、円筒形をなすホルダ50と、該ホルダ50の一側に固着された底板51と、ホルダ50の内部に収納され、底板51との間の介装された押しばね52によりホルダ50の開口縁に押し付けられた球形の弁体53とを備えており、底板51の中央には、小径の通気孔54が形成されている。
このように構成された弁手段5は、蓋板3を内外に貫通する装着孔33にホルダ50を嵌め込み、接着等の適宜の固着手段により一体に固着してある。上下の弁手段5,5は、同一の構成を有するが、夫々の装着孔33,33への嵌め込みの向きを逆にしてある。図4においては、蓋板3の左側がルーパ室40の内側となっており、上位置の弁手段5は、通気孔54を有する底板51をルーパ室40の内側に向けて固定され、下位置の弁手段5は、弁体53の側をルーパ室40の外側に向けて固定されている。
以上の如き弁手段5,5は、ルーパ室40の内外に圧力差が存在しない場合、夫々の押しばね52,52により付勢された弁体53,53をホルダ50,50の開口部に押し付けた図4に示す状態にある。このとき、各別の底板51,51に設けた通気孔54,54は閉止状態にあり、ルーパ室40の内外間の通気は遮断される。
上位置にある弁手段5の弁体52には、図4中に矢符により示す如く、ルーパ室40の外圧が押しばね52の付勢に抗して作用する。従ってこの弁体52は、ルーパ室40の内部に発生する負圧の作用により内向きに移動してホルダ50の開口縁から離れることとなり、底板51設けた通気孔54が開放されて、ルーパ室40内に外気が導入される。このようにルーパ室40内の負圧は、上位置にある弁手段5の動作によって解消される。
下位置にある弁手段5の弁体52には、図4中に矢符により示す如く、ルーパ室40の内圧が押しばね52の付勢に抗して作用する。従ってこの弁体52は、ルーパ室40の内部に発生する正圧の作用により外向きに移動してホルダ50の開口縁から離れることとなり、底板51設けた通気孔54が開放されて、ルーパ室40の内気が外部に放出される。このようにルーパ室40内の正圧は、下位置にある弁手段5の動作によって解消される。
このように弁手段5,5は、ルーパ室40の内部に発生する正、負圧の作用により開放され、前記正圧及び負圧を解消する作用をなし、正圧又は負圧の影響により、ルーパ室40内における上ルーパ棒4の前述した動作が阻害される虞れはなく、高速度での滑らかな動作が保障される。一方、弁手段5,5は、正圧又は負圧が発生しない限り閉止状態を保っており、ルーパ室40の内外の通気が遮断されるから、運転停止時等の通常状態下においてルーパ室40の内部に塵埃が侵入する虞れがなく、ルーパ室40内における前述した潤滑に悪影響を及ぼす虞れもない。
図1に示すように機枠2は、クロスプレート22の上方に張り出すように上側左部に連設されたヘッド部6を備えている。ヘッド部6の左側は、略全面に亘って開口しており、蓋板60により液密を保って覆ってある。
蓋板60には、上下方向への摺動可能に押え棒7が支持されている。ヘッド部6の下方に突出する押え棒7の下端には、押え腕70が連結されている。押え腕70は、後端を枢軸として上下方向に揺動する揺動腕であり、前方に延びる押え腕70の先端には押え71が取り付けてある。この押え71は、押え棒7の下動に伴って下降し、クロスプレート22との間に縫製対象布を挾持する作用をなす。
図5は、ヘッド部6の左側面図であり、図6は、ヘッド部6の内部構成を示す左側断面図である。蓋板60を取り外した状態を示す左前面図である。図5、図6中の8は針棒であり、該針棒8は、下方を前として傾斜するヘッド部6の前縁に沿って後述する如く支持してある。
図6に示す如くヘッド部6の内側には、潤滑室としての針棒室61が設けてあり、前記蓋板60は、針棒室61の開口部全面を液密に覆うように取付けてある。針棒室61の底板及び天板には、夫々の前部を内外に貫通し、同軸上に整合するように下ブッシュ80及び上ブッシュ81が固設してある。図5、図6中の8は針棒であり、該針棒8は、下ブッシュ80及び上ブッシュ81に挿通され、下方を前として傾斜するヘッド部6の前縁に沿って上下動自在に支持してある。
針棒8の下端は、下ブッシュ80を経てヘッド部6の下側に突出しており、押え棒7の前位置に突出する針棒8の突出端には、針止め82を介して針83が取り付けてある。また針棒8の中途には、針棒抱き84が固設してあり、この針棒抱き84は、針棒室61内に突出する針棒駆動軸85に基端を固定された針棒クランク86の先端に、針棒リンク87を介して連結されている。
針棒駆動軸85は、図示しないミシン主軸からの伝動により所定の角度範囲内にて反復回動する回動軸として構成されており、この針棒駆動軸85に基端を固定された針棒クランク86は、針棒駆動軸85の反復回動に応じて上下に揺動する揺動アームとしての動作をなす。このような揺動により、針棒クランク86の先端に針棒リンク87を介して連結された針棒抱き84が上下に押し引きされ、針棒8は、下ブッシュ80及び上ブッシュ81による案内下にて軸長方向に摺動し、該針棒8の下端に取付けられた針83は、所定のストローク内での上下動を繰り返す。なお図6には、針棒クランク86が下位置に揺動している状態が示されている。
針棒室61の内部には、針棒4の支持部、針棒クランク86との連結部等の潤滑のために、底面、後側面及び天面に沿うように導油芯62が配してある。導油芯62の下端は、針棒室61の底面の一部に設けた潤滑剤の溜まり部63内を経て下ブッシュ80の近傍に臨ませてあり、導油芯62の上端は、上ブッシュ81の近傍に臨ませてある。
針棒室61内の潤滑には、ルーパ室40におけると同様の潤滑剤が使用される。この潤滑剤は、導油芯62に予め含侵保持させて針棒室61の内部に配してあり、運転中における針棒室61の内部温度下にて液化して、導油芯62の両端に近接する針棒8の上下の支持部に供給され、これらの支持部を潤滑する。潤滑を終えた潤滑剤は、下方に落下して溜まり部63に集まり、導油芯62に吸収されて循環使用される。
以上の如き針棒室61の前面を覆う蓋板60の略中央部には、図5に示すように、上下に並べて一対の弁手段5,5が配してある。これらの弁手段5,5は、ルーパ室40の蓋板3に設けられた弁手段5,5と同様,図4に示す構成を有しており、針棒室61の内部ににおける正圧又は負圧の作用により夫々開放し、針棒室61の内外を連通して、前記正圧又は負圧を抑制する作用をなすものである。従って、針棒室61内における針棒8の前述した動作が阻害される虞れはなく、高速度での滑らかな動作が保障される。また弁手段5,5は、正圧又は負圧が発生しない限り閉止状態を保ち、針棒室61の内外の通気を遮断するから、運転停止時等の通常状態下において針棒室61内に塵埃が侵入し、針棒室61内での前述した潤滑に悪影響を及ぼす虞れもない。
以上の実施の形態においては、正圧又は負圧の作用により開放動作をなす2つの弁手段5,5を設けてあるが、いずれか一方のみを設ける構成であってもよい。また弁手段5は、図4に示す構成に限らず、正圧又は負圧の発生時に内外間の圧力差により開放動作をなす適宜の構成とすることができる。
図7は、弁手段の他の実施の形態を示す断面図である。本図に示す如く弁手段5は、蓋板3(又は蓋板60)を内外に貫通する通気孔34の一側の開口をゴム製のフラップ55により覆った構成となっている。フラップ55は、通気孔34の開口部の上位置に固着され、下方に垂下されて通気孔34を覆っており、図中に矢符により示す如く通気孔34の側から圧力が加わることにより、図中に2点鎖線により示すように、上部の固着縁を支えとして弾性変形して通気孔34を開放する。この弁手段5は、図4に示す弁手段5に比較して簡素な構成にて実現することができる一方、確実な開閉を実現するためには、フラップ55の弾性の適正な選定が必要である。
図8は、弁手段の他の実施の形態を示すルーパ室の断面図である。本図においてルーパ室40の構成は、ルーパ棒4の支持構造、ルーパ棒4の可動機構を含めて図3に示す実施の形態と同様であり、対応する構成部材に図3と同一の参照符号を付し、夫々の構成及び動作についての説明を省略する。
ルーパ室40には、ルーパ駆動軸45の右上部の天板を内外に貫通する貫通孔49が形成してあり、この貫通孔49に弁手段5が装着してある。図9は、弁手段5の装着部近傍の拡大図であり、本図に示す如く弁手段5は、貫通孔49に嵌め込み固定された円筒形のハウジング56を備えている。ハウジング56には、軸心部を貫通する通気孔57を備えている。ハウジング56の下端は、前記導油芯47を貫通してルーパ室40の内部に突出している。前記通気孔57は、ハウジング56の下端においてルーパ室40の内部に連通する小径部と、該小径部の上位置に連続し、上部に向けてテーパ状に拡径する弁座孔とを備えており、この弁座孔の内部にボール形の弁体58が収納されている。弁座孔の上部は、更に拡径されてルーパ室40の外部に連通しており、通気が可能なフィルタ59により覆ってある。
図9には組立て時、即ち、運転停止時の状態が示されており、弁体58は、自重により下降して弁座孔に着座し、通気孔57は閉止状態にある。運転中にルーパ室40の内部に正圧が発生した場合、弁体58は、図中に矢符により示す如く上向きに押されて弁座孔から離反する結果、通気孔57は開放されルーパ室40の内圧は外気に放出される。
前記フィルタ59は、通気孔57の開放時にルーパ室40の内外間の通気のみを許容し、外から内への塵埃の侵入、及び内から外への潤滑剤の漏れ出しを防止する作用をなす。また前記フィルタ59は、正圧発生時における弁体58の上動を規制し、弁座孔からの抜け出しを防止するストッパとしての機能も果たす。
この実施の形態の弁手段5は、ルーパ室40を封止する蓋板3ではなく、ルーパ室40の周壁に直接的に装着してある。同様の弁手段5は、針棒8を支持する針棒室61においても同様にして設けることができる。
また以上の実施の形態においては、オーバロックミシンへの適用例について述べたが、本発明は、偏平縫いミシン、二重環縫いミシン等、他のミシンへの適用が可能であることは言うまでもない。
本発明に係るミシンの一例としてのオーバロックミシンの外観斜視図である。 前開きカバーの内側部位の前面図である。 蓋板を取り外して示すルーパ室の断面図である。 図2のIV−IV線による拡大断面図である。 ヘッド部の左側面図である。 ヘッド部の内部構成を示す左側断面図である。 弁手段の他の実施の形態を示す断面図である。 弁手段の他の実施の形態を示すルーパ室の断面図である。 弁手段の装着部近傍の拡大図である。
符号の説明
3 蓋板
4 上ルーパ棒(摺動部材)
5 弁手段
8 針棒(摺動部材)
40 ルーパ室(潤滑室)
61 針棒室(潤滑室)
54 通気孔
34 通気孔
52 弁体
55 フラップ

Claims (5)

  1. ハウジングを内外に貫通して支持され、前記ハウジングの内部に配した可動機構に連結された摺動部材を、前記可動機構の周囲を封止して設けた潤滑室内に封入した潤滑剤により潤滑するミシンにおいて、
    前記潤滑室の一部を前記ハウジングの外部に連通する通気孔と、該通気孔に付設してあり、前記潤滑室内の正圧又は負圧の作用により前記通気孔を開放する弁手段とを備えることを特徴とするミシン。
  2. 前記通気孔及び弁手段は、前記潤滑室を封止する蓋板に設けてある請求項1記載のミシン。
  3. 前記弁手段は、ばね力に抗した移動により前記通気孔を開放する弁体を備える請求項1又は請求項2記載のミシン。
  4. 前記弁手段は、前記通気孔の外側又は内側開口部を覆うように設けられた弾性材料製のフラップである請求項1又は請求項2記載のミシン。
  5. 前記弁手段は、前記ハウジング内部の正圧又は負圧の作用により自重に抗して移動して前記通気孔を開放する弁体を備える請求項1又は請求項2記載のミシン。
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