JPS6337513Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （技術分野） この考案は、漏洩した潤滑油が飛散されること
を防止したコンプレツサのシール構造に関する。

（従来技術） 一般に、コンプレツサにおいては、ハウジング
とこのハウジングに軸支されたロータシヤフトと
の間に潤滑油が供給されており、この潤滑油はシ
ール部材によつて封止されている。しかしなが
ら、この潤滑油は、完全に封止されることができ
ず、シール部材から漏洩してしまう。このため、
この漏洩した潤滑油は、ロータシヤフトの先端に
取り付けられた電磁クラツチに悪影響を与えた
り、コンプレツサを収納する室を汚したりするの
で、ハウジングの外に流出することがないように
対処されていることが好ましい。

従来のこの種のコンプレツサのシール構造とし
ては、例えば、第１図に示すようなものが知られ
ている。同図において、１は図外のハウジングの
開口部に位置するサイドプレートであり、このサ
イドプレート１はロータシヤフト２をニードルベ
アリング３を介して回転可能に軸支している。ロ
ータシヤフト２とニードルベアリング３との間に
は潤滑油が供給されている。サイドプレート１に
嵌合されたカバー４は、前記ハウジングの開口部
を覆つている。カバー４にはリング状のメカニカ
ルシート５が嵌合され、このメカニカルシート５
にはロータシヤフト２が遊挿されている。メカニ
カルシート５とニードルベアリング３との間のロ
ータシヤフト２にはメカニカルシール６が摺動可
能に外嵌されており、このメカニカルシール６は
スプリング７のバネ力に付勢されることによつて
メカニカルシート５に圧接している。メカニカル
シート５、メカニカルシール６、およびスプリン
グ７はシール部材８を構成する。この結果、シー
ル部材８は、ロータシヤフト２とカバー４との間
に介装され、ロータシヤフト２の軸支された部分
の潤滑を行う油を封止することになる。メカニカ
ルシート５より前方のカバー４とロータシヤフト
２との間にはフエルト９が介装されている。カバ
ー４の前側側面にはコイル１１を有するコイルケ
ース１２が固定されており、このコイルケース１
２にはロータシヤフト２と同軸にロータ１３がベ
アリング１４を介して回転可能に取付けられてい
る。ロータ１３は図外のＶベルトを介してエンジ
ンによつて回転される。カバー４より前方に突出
するロータシヤフト２にはフランジ体１６の軸部
１７が半月キー１８を介して嵌合されボルト１９
によつて固定されており、この軸部１７はコイル
ケース１２に遊挿されている。フランジ体１６の
フランジ部２０には板バネ２１を介してアマチユ
ア２２が取付けられており、このアマチユア２２
は、コイル１１が励磁されていない間はロータ１
３の前端に形成された摩擦面２３との間に所定の
隙間Ｃを保ち、コイル１１が励磁されるとコイル
１１に吸引されることによつて摩擦面２３に密着
する。アマチユア２２が摩擦面２３に密着する
と、ロータ１３の回転は、アマチユア２２、板バ
ネ２１、フランジ体１６を経てロータシヤフト２
に伝達される。メカニカルシール６はロータシヤ
フト２とともに回転し、メカニカルシート５に摺
接している。一方、前記潤滑油の一部はメカニカ
ルシート５とメカニカルシール６との間から漏洩
し、ロータシヤフト２を伝わつてフエルト９に吸
収される。こうして、前記潤滑油のカバー４から
の流出は防止されることができる。

しかしながら、このような従来のコンプレツサ
のシール構造にあつては、フエルト９をロータシ
ヤフト２とカバー４との間に介装しているため、
フエルト９を大きくすることができない。このた
め、フエルト９は多くの潤滑油を吸収することが
できない。したがつて、吸収しきれなくなつた潤
滑油は、軸部２とコイルケース１２との間を通過
し、コイルケース１２より前方の軸部１７のまわ
りに流出する。この流出した潤滑油は、フランジ
体１６の回転によつて遠心力を受け、放射外方に
飛散する。このため、コンプレツサを収納してい
る室が潤滑油によつて汚れるという問題があつ
た。しかも、飛散した潤滑油が摩擦面２３に付着
した場合、アマチユア２２とロータ１３との間に
滑りが発生してしまい。ロータ１３の回転がロー
タシヤフト２に十分に伝達されないという問題点
があつた。また、ロータシヤフト２はフエルト９
に接触しながら回転するため、フエルト９の摩耗
が生ずる。このため、フエルト９とロータシヤフ
ト２との間に隙間が生じ、この隙間から潤滑油が
漏洩するという問題点があつた。さらに、ロータ
シヤフト２がフエルト９に接触しながら回転する
ことにより、フエルト９が毟れ、屑となつてメカ
ニカルシート５とメカニカルシール６との間に侵
入することがある。このため、メカニカルシート
５とメカニカルシール６との間に大きな隙間が形
成されてしまい、この隙間から多量の潤滑油が漏
洩する。この結果、フエルト９を通してカバー４
の外に多量の潤滑油が漏洩するという問題点があ
つた。

（考案の目的） この考案は、前述の問題点に着目してなされた
もので、油溜をコンプレツサのカバーと電磁クラ
ツチのコイルプレートと吸収部材とによつて構成
することによりコンプレツサ全体の占有空間の増
大を防止すると共に、スリンガーとガイド体と吸
収部材とによつて漏洩油を効率的に油溜に導き貯
溜し、漏洩油がシヤフトを伝わり外方に流出する
ことを阻止するコンプレツサのシール構造を提供
することを目的とする。

（考案の構成） この目的を達成するために、この考案は、ハウ
ジングに軸支され電磁クラツチで回転駆動される
ロータシヤフトと、ハウジングの開口を覆うカバ
ーと、ロータシヤフトとカバーとの間に介装され
ロータシヤフトの軸支された部分の潤滑を行う油
を封止するシール部材と、を備えたコンプレツサ
のシール構造において、前記シール部材より外側
の前記ロータシヤフトに固定され前記シール部材
から漏洩した油を放射外方に飛散させるスリンガ
ーと、該スリンガーを包囲し該スリンガーによつ
て飛散された油を下方に導くガイド体と、該ガイ
ド体下方のカバーに軸方向に開口形成された凹所
と、該凹所に挿嵌されて漏洩油を吸収する吸収部
材と、前記凹所の開口部を電磁クラツチのコイル
ケースで閉塞して凹所内に形成された油溜と、を
備えた構成にしてある。

（実施例） 以下、この考案の第１実施例を図面に基づいて
説明する。尚、従来技術と同一部分構成について
は同一符号を付し、その説明を省略する。

第２図において、３１は軸部１７とメカニカル
シート５との間のロータシヤフト２に圧入された
リング状のスリンガーであり、このスリンガー３
１の後端には外方に向かうに従つて前方に傾斜す
る円錐面３２が形成されている。カバー４の前端
には前方に突出する筒状のガイド体としてのボス
３３が形成されており、このボス３３はスリンガ
ー３１を包囲している。ボス３３の内周面前側に
は前方に向かうに従つて拡径する円錐面３４が形
成されている。ボス３３より下側のカバー４には
軸方向に開口する凹所３７が形成され、該凹所３
７に吸収部材としてのフエルト３６を挿嵌し、開
口部を電磁クラツチのコイルケース１２にて閉塞
して油溜を形成している。コイルケース１２とボ
ス３３の先端部および下方部との間には間隙が設
けられ、これがボス部から油溜３５へ漏洩油を導
く通路３８となつている。

次に、この考案の第１実施例の作用について説
明する。

まず、ロータ１３が前記エンジンによつて回転
されている状態において、コイル１１が励磁され
ると、アマチユア２２はコイル１１に吸引されて
摩擦面２３に密着する。したがつて、ロータ１３
の回転はアマチユア２２、板バネ２１、フランジ
体１６、半月キー１８を経てロータシヤフト２に
伝達する。メカニカルシール６はメカニカルシー
ト５に摺接している。一方、ニードルベアリング
３とロータシヤフト２との間に供給されていた前
記潤滑油の一部はメカニカルシート５とメカニカ
ルシール６との間から漏洩し、メカニカルシート
５に遊挿されたロータシヤフト２の外周を伝わつ
て、スリンガー３１の円錐面３２の内端部に達す
る。スリンガー３１はロータシヤフト２と一体で
回転しているので、円錐面３２の内端部に達した
潤滑油は、遠心力を受けることによつて円錐面３
２に沿つて外方に流れ円錐面３２の外端部から放
射外方に飛散する。スリンガー３１はボス３３に
包囲されているので、飛散した潤滑油はボス３３
の内周面および円錐面３４に付着する。この付着
した潤滑油は、ボス３３内周面と円錐面３４とメ
カニカルシート５とに案内されながら下方に導か
れ、円錐面３４の下部から通路３８に排出され
る。したがつて、メカニカルシート５とメカニカ
ルシール６との間から漏洩した潤滑油はスリンガ
ー３１により、ロータシヤフト２にそつて前方に
流出することがない。このため、潤滑油がフラン
ジ体１６によつて放射外方に飛散されることがな
く、この結果、コンプレツサを収納する室が潤滑
油によつて汚されることもない。しかも、摩擦面
２３に潤滑油が付着することもないので、アマチ
ユア２２とロータ１３とが滑ることもなく、この
結果、ロータ１３の回転はロータシヤフト２に確
実に伝達されることができる。また、第１図に示
すようなメカニカルシート５と軸部１７との間に
位置するフエルト９の使用を廃止したので、フエ
ルト９の摩耗による油漏れが発生することがな
い。さらに、フエルト９の屑がメカニカルシート
５とメカニカルシール６との間に侵入することも
なくなり、この結果、メカニカルシート５とメカ
ニカルシール６との隙間の増大による多量の油漏
れが発生することもない。一方、通路３８に排出
された潤滑油は油溜３５に収納されたフエルト３
６に吸収される。油溜３５はボス３３より下方の
比較的余裕空間の取りやすいカバー４に形成され
た凹所３７にフエルト３６を挿嵌し、コイルケー
ス１２で凹所３７の開口を閉塞して構成している
ので、コンプレツサ全体の占有空間を広くするこ
となく多量の潤滑油を収容することができる。

第３図はこの考案の第２実施例を示す要部拡大
断面図である。尚、第１実施例と同一構成部分に
ついては同一符号を付し説明を省略する。４５は
前記ボス３３の内周面前側に形成されたフランジ
であり、このフランジ４５は前記スリンガー３１
の外周面より前側に位置し内方に突出している。
前記ボス３３の内周面の下部にはフランジ４５よ
り後方に位置し前記通路３８に連通する排出口４
６が形成されている。この実施例の場合、スリン
ガー３１の外周面はフランジ４５より後方に位置
しているため、飛散した潤滑油はフランジ４５よ
り後方のボス３３内周面に確実に付着する。この
付着した潤滑油は、フランジ４５とボス３３内周
面とメカニカルシート５とに案内されながら下方
に導かれ、排出口４６から通路に排出される。こ
の実施例の場合、潤滑油をボス３３より前方に流
出させることなく通路３８に排出させることがで
きる。なお、前記第１、第２実施例においては、
軸部１７と、スリンガー３１とを別個にしたもの
について説明したが、この軸部１７をスリンガー
３１とを一体に成形しても良い。の場合には部品
点数が削減されるのでコスト低減が図れる。

（考案の効果） 以上説明したように、この考案によれば、シー
ル部材より外側のロータシヤフトに固定され前記
シール部材から漏洩した油を放射外方に飛散させ
るスリンガーと、該スリンガーを包囲し該スリン
ガーによつて飛散された油を下方に導くガイド体
と、該ガイド体下方のカバーに軸方向に開口形成
された凹所と、該凹所に挿嵌されて漏洩油を吸収
する吸収部材と、前記凹所の開口部を電磁クラツ
チのコイルケースで閉塞して凹所内に形成された
油溜と、を備えたので、部品点数を増加させるこ
となく、かつ、コンプレツサ全体の占有空間を増
大させることなく油溜を構成することができると
共に、漏洩油を効率的に油溜に導いて貯溜するこ
とができるので、漏洩油がコンプレツサを収納し
ている室に飛散することを防止することにより、
コンプレツサを収納する室を清潔に保つことがで
き、さらに、ロータシヤフトが確実に回転される
という効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のコンプレツサのシール構造を示
す断面図、第２図はこの考案に係るコンプレツサ
のシール構造の第１実施例を示す断面図、第３図
はこの考案に係るコンプレツサのシール構造の第
２実施例を示す要部拡大断面図である。 ２……ロータシヤフト、４……カバー、８……
シール部材、１２……コイルケース、３１……ス
リンガー、３３……ガイド体、３５……油溜、３
６……吸収部材、３７……凹所。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) ハウジングに軸支され電磁クラツチで回転駆
   動されるロータシヤフトと、ハウジングの開口
   を覆うカバーと、ロータシヤフトとカバーとの
   間に介装されロータシヤフトの軸支された部分
   の潤滑を行う油を封止するシール部材と、を備
   えたコンプレツサのシール構造において、前記
   シール部材より外側の前記ロータシヤフトに固
   定され前記シール部材から漏洩した油を放射外
   方に飛散させるスリンガーと、該スリンガーを
   包囲し該スリンガーよつて飛散された油を下方
   に導くガイド体と、該ガイド体下方のカバーに
   軸方向に開口形成された凹所と、該凹所に挿嵌
   されて漏洩油を吸収する吸収部材と、前記凹所
   の開口部を電磁クラツチのコイルケースで閉塞
   して凹所内に形成された油溜と、を備えたこと
   を特徴とするコンプレツサのシール構造。 (2) 前記ガイド体の下部に下方に導かれた前記油
   を排出する排出口を形成したことを特徴とする
   実用新案登録請求の範囲第１項記載のコンプレ
   ツサのシール構造。