JP4393657B2 - 電動ポンプにおけるオイル室内軸封装置摺動面の潤滑油保持装置 - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、電動ポンプにおけるオイル室内軸封装置摺動面の潤滑油保持装置に関するものである。
【0002】
【従来技術とその問題点】
電動ポンプにおいてオイル室内に封入する潤滑油量は、回転時における軸封装置の摺動面の発熱やモータの発熱による膨張率を見込んで、一般にオイル室全容積の80%程度としてオイル室内の上方部に空気溜りを保有させている。そして軸封装置の回転による遠心力作用で、潤滑油はオイル室内周壁方向へ渦流状に押し付けられて中央部に空気溜りが集中し、肝心の軸封装置摺動面を潤滑油が浸さなくなり、摺動面の潤滑と冷却機能が損なわれることになる。
【0003】
軸封摺動面の潤滑保持対策として図3に示すよう、軸封装置111の外側を環状壁体110で囲繞して、オイルの流れを軸心方向へ向けるための仕切板Pを環状壁体110の内周面に介装させ、環状壁体110の下縁部が下部摺動面とほぼ等高位置で開口して下縁全周でオイル室103と導通するオイル流入口113bを形成し、環状壁体110の上縁部をオイル室上壁101aの下面に定着させ、上部メイティリング105aとシールリング106aとの摺動面112aよりも上方において環状壁体110の壁面要所に複数個のオイル流出孔113aを配設する、という構造が提案されている。
【0004】
しかしながら実験結果によれば、下部摺動面とほぼ等高位置において環状壁体110の下縁全周でオイル室103と導通するオイル流入口113bが形成された構造では、軸封装置111の回転による遠心力がオイル流入口113bにも発生して環状壁体110内の潤滑油を外側へ押し出そうとする作用が働くため、潤滑油の吸込みおよび押し上げ作用が著しく阻害されることになる。また、環状壁体110の上方部に穿設された複数個のオイル流出孔113aから直接潤滑油が外側へ飛散して、結局上部摺動面112aを潤滑油が浸さなくなるというマイナスの効果を生じることになり、且つ飛散した潤滑油は油面114上における空気溜り115から空気を巻き込み易くなる。更に各流出孔113aごとに、或いは流出孔113aの部位によっても流出量の差が生じるので、流出量の少ない部位から空気が環状壁体110内に巻き込まれ、油・気混合状態となって上部摺動面112aに介入するため潤滑効果は減殺され、環状壁体110の内側と外側との潤滑油の流通作用が阻害されることになり、これが前記油・気混合状態と相まって上部摺動面112aの冷却効率を著しく低下させる結果となっている。
【0005】
【発明の目的】
本発明の目的は、電動ポンプにおけるオイル室内中央部から周壁方向への潤滑油の散逸を防止すると共に潤滑油中への空気の混合を生じさせることなく、オイル室内の油面が極度に低下した場合でも潤滑油を円滑に循環させて、軸封装置摺動面の有効な潤滑と冷却作用が行われる潤滑油保持装置を提供することにある。
【0006】
【発明の構成】
本発明に係る電動ポンプにおけるオイル室内軸封装置摺動面の潤滑油保持装置では、モータ室とポンプ室との間に介在するオイル室内において、オイル室の上壁下面に凹設された上部環溝にダブル型軸封装置の上部メイティリングを嵌着させ、オイル室の下壁上面に凹設された下部環溝にダブル型軸封装置の下部メイティリングを嵌着させ、ダブル型軸封装置の外側を環状壁体で囲繞し、環状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、環状壁体の下縁には外側方向へ突出する取付用フランジを付設して該フランジ下面を下部環溝周壁の上面へ直接または環状押え板を介して定着させ、ガイドベーンの下端部裏側に接近して環状壁体の内側から外側へ通じオイル室内の下方へ向けて開口される流入路を設け、環状壁体の上縁部を上部メイティリングとシールリングとの摺動面よりも上方において上部環溝周壁の下面へ接近させて内側方向へ突出する空気巻き込み防止用フランジを付設し、該フランジ上面と上部環溝周壁下面との対向面間に環状のオイル流出溝を形成させた。
【0007】
【作用】
ポンプ運転時には、環状壁体の外側におけるオイル室内の潤滑油が下部のオイル流入路から環状壁体内へ流入し、下部の摺動面を潤滑させると共にその発熱を吸収しつつガイドベーンの傾斜面に沿って押し上げられ、空気巻き込み防止用フランジの裏面に沿って軸心方向へ移動して上部の摺動面を潤滑させると共にその発熱を吸収し、上記フランジ内周縁から環状のオイル流出溝の至り該オイル流出溝内で油膜を形成して空気の侵入を阻止しつつ環状壁体外側のオイル室内へ移動する。そしてこの循環作用はオイル室内の油面の変化には関係なく有効に機能する。
【0008】
【実施例】
以下実施例の図1および図2により説明をする。
【0009】
1はモータ室、2はポンプ室、3は両室1,2の間に介在するオイル室、4はモータ室1から導出されオイル室3内を貫通してポンプ室2内へ導入されるポンプ軸、1aはオイル室上壁、1bはオイル室上壁1aの下面に凹設させた環溝、1cは環溝1bの周壁、2aはオイル室下壁、2bはオイル室下壁2aの上面に凹設させた環溝、2cは環溝2bの周壁、5aはオイル室3内においてポンプ軸4と遊合しオイル室上壁1aの環溝1b内に嵌着された上部メイティリング、5bはオイル室3内においてポンプ軸4と遊合しオイル室下壁2aの環溝2b内に嵌着された下部メイティリング、16は該メイティリング5bの回り止め用環状押え板であり、内周縁部に下方へ打ち出された係止爪17を下部メイティリング5b上面の切り込み部18へ係止させた状態で環状周壁2cの上面へ定着させる。6aは上部メイティリング5aと摺接する上部シールリング、6bは下部メイティリング5bと摺接する下部シールリング、7aは上部シールリング6aを背面から支承するベローズ、7bは下部シールリング6bを背面から支承するベローズ、8aは上部シールリング6aおよびベローズ7aの外周に嵌着されて両者6a,7aを一体に結合させる上部リテーナ、8bは下部シールリング6bおよびベローズ7bの外周に嵌着されて両者6b,7bを一体に結合させる下部リテーナ、9はポンプ軸4の回転方向と反対方向に巻き上げれたコイルスプリングであって、上下シールリング6a,6bの背向方向にそれぞれ上下リテーナ8a,8bを介して張設される。10はオイル室3内において上述の構成からなるダブル型軸封装置11の外側を囲繞する環状壁体であり、その内周面にポンプ軸4の回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンGが定着されている。そして環状壁体10の下縁には外側方向へ突出する取付用フランジF2を付設して該フランジF2の下面を下部環溝周壁2cの上面へ直接または環状押え板16を介して定着させ、ガイドベーンGの下端部裏側に接近して環状壁体10の内側から外側へ通じオイル室3内の下方へ向けて開通され下面開口状に形成されたオイル流入路13bが設けられている。また、環状壁体10の上縁部を上部メイティリング5aとシールリング6aとの摺動面12aよりも上方において、上部環溝周壁1cの下面へ接近させて内側方向へ突出する空気巻き込み防止用フランジF1を付設し、該フランジF1の上面と上部環溝周壁1cの下面との対向面間に環状のオイル流出溝13aを形成させる。
【0010】
オイル室3内には潤滑油が封入されるが、その封入量はオイル室3の全容積の80%程度とし、油面14上には空気溜り15が形成されている。そしてポンプ運転時にはポンプ軸4の回転に伴い、上下シールリング6a,6bの背向面間に張設されたコイルスプリング9も環状壁体10内で回転し、環状壁体10の外側におけるオイル室3内の潤滑油が下部のオイル流入路13bから環状壁体10の内部へ流入し、下部の摺動面12bを潤滑させると共に該摺動面12bに発生する摺動熱を吸収しつつガイドベーンGの傾斜面に沿って押し上げられ、空気巻き込み防止用フランジF1の裏面に沿って軸心方向へ移動して上部の摺動面12aを潤滑させると共に該摺動面12aに発生する摺動熱を吸収し、上記フランジF1の内周縁から環状のオイル流出溝13aに至り該流出溝13a内で表面張力により油膜を形成して空気の侵入を阻止しつつ環状壁体10外側のオイル室3内へ移送されるのであるが、上記オイル流出溝13aは、空気巻き込み防止用フランジF1の上面と環状壁体1cの下面とが環状平面同士で対向することにより構成されているため、ポンプ軸4の回転速度変化に関係なく油膜の形成によって空気の巻き込み防止機能を生じるので、オイル室3内の潤滑油が減少した場合でもポンプ軸4の回転中は環状壁体10内は潤滑油で満たされた状態に保たれる。従って例えばオイル室3内の油面14’が図2に示すよう極度に低下したとしても、オイル室3内の下底部に僅かに残存する潤滑油中にオイル流入路13bの下面開口下縁部Eが浸せきしている限りは、オイルの循環作用とそれに伴う摺動面の潤滑および冷却作用が持続されることになる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、電動ポンプにおけるオイル室内中央部から周壁方向への潤滑油の散逸を確実に防止できると共に、オイル流出溝内への油膜形成作用によってポンプ軸の回転数変化には関係なく潤滑油中への空気の混合を阻止することができ、ダブル型軸封装置の潤滑と冷却作用が効果的に行われる。しかもその潤滑と冷却作用は、オイル室内の油面が極度に低下した場合でも有効に機能し得るので、長期間に亘りオイル補給を必要としないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明装置を施した電動ポンプのオイル室の縦断側面図である。
【図2】 図1におけるオイル吸込路部分の拡大図である。
【図3】 従来の電動ポンプにおけるオイル室の縦断側面図である。
【符号の説明】
1 モータ室
1a オイル室上壁
1b 上部環溝
1c 上部環溝の周壁
2 ポンプ室
2a オイル室下壁
2b 下部環溝
2c 下部環溝の周壁
3 オイル室
4 ポンプ軸
5a 上部メイティリング
5b 下部メイティリング
6a 上部シールリング
10 環状壁体
11 ダブル型軸封装置
12a 上部摺動面
13a 環状のオイル流出溝
13b オイル流入路
16 環状押え板
F1 空気巻き込み防止用フランジ
F2 取付用フランジ
G ガイドベーン
Claims (2)
- モータ室とポンプ室との間に介在するオイル室内において、オイル室の上壁下面に凹設された上部環溝にダブル型軸封装置の上部メイティリングを嵌着させ、オイル室の下壁上面に凹設された下部環溝にダブル型軸封装置の下部メイティリングを嵌着させ、ダブル型軸封装置の外側を環状壁体で囲繞し、環状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、環状壁体の下縁には外側方向へ突出する取付用フランジを付設して該フランジ下面を下部環溝周壁の上面に定着させ、ガイドベーンの下端部裏側に接近して環状壁体の内側から外側へ通じオイル室内の下方へ向けて開口されるオイル流入路を設け、環状壁体の上縁部を上部メイティリングとシールリングとの摺動面よりも上方において上部環溝周壁の下面へ接近させて内側方向へ突出する空気巻き込み防止用フランジを付設し、該フランジ上面と上部環溝周壁下面との対向面間に環状のオイル流出溝を形成させたことを特徴とする、電動ポンプにおけるオイル室内軸封装置摺動面の潤滑油保持装置。
- モータ室とポンプ室との間に介在するオイル室内において、オイル室の上壁下面に凹設された上部環溝にダブル型軸封装置の上部メイティリングを嵌着させ、オイル室の下壁上面に凹設された下部環溝にダブル型軸封装置の下部メイティリングを嵌着させ、下部メイティリングの回り止め用環状押え板を下部環溝周壁の上面に定着させ、ダブル型軸封装置の外側を環状壁体で囲繞し、環状壁体の内周面にポンプ軸の回転方向に向って上り勾配の傾斜面を形成するようガイドベーンを定着させ、環状壁体の下縁には外側方向へ突出する取付用フランジを付設して該フランジ下面を上記環状押え板の上面へ定着させ、ガイドベーンの下端部裏側に接近して環状壁体の内側から外側へ通じオイル室内の下方へ向けて開口されるオイル流入路を設け、環状壁体の上縁部を上部メイティリングとシールリングとの摺動面よりも上方において上部環溝周壁の下面へ接近させて内側方向へ突出する空気巻き込み防止用フランジを付設し、該フランジ上面と上部環溝周壁下面との対向面間に環状のオイル流出溝を形成させたことを特徴とする、電動ポンプにおけるオイル室内軸封装置摺動面の潤滑油保持装置。
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Publication Number | Publication Date |
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JP7161876B2 (ja) * | 2018-07-17 | 2022-10-27 | 株式会社クボタ | オイルリフター、ポンプ装置およびオイルリフターの製造方法 |
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- 2000-02-18 JP JP2000040953A patent/JP4393657B2/ja not_active Expired - Lifetime
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