JP2008030712A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】別途舵角センサ等を追加することなく、電動パワーステアリング装置が操舵限界位置到達時のトルク伝達部材に伝達されるピークトルクを抑制する。
【解決手段】ステアリング機構に操舵補助トルクを伝達する電動モータ12と、操舵トルクに基づく電流指令値に応じて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部24とを備え、前記モータ制御部24は、セルフアライニングトルク検出部35で算出されるセルフアライニングトルクの変化率を演算する微分回路68と、前記微分回路68で演算したセルフアライニングトルク変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときに前記パルス幅変調信号のデューティ比を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するデューティ比制限部64とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、ステアリング機構に操舵補助力を与える電動モータと、前記電流指令値に基づいて電動モータを制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリング装置として運転者がステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じて電動モータ駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
一般に、ステアリング機構では、ステアリングホイールを中立位置から左及び右の何れの操舵方向に操舵を続けると、ステアリングホイールの操作量がその最大値に相当する最大舵角に達すると、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接してそれ以上の操舵ができない操舵限界位置となる。このような操舵限界位置となって、メカニカルストッパに当接する状態となることを所謂端当てと称している。
そして、ステアリングホイールが素早く操作される場合即ち操舵速度が大きい場合には、電動パワーステアリング装置で発生する操舵補助力も大きくなり、端当ての際に生じる衝撃力が大きなものとなり、その結果、ステアリング機構の耐久性が低下したり、操舵操作において運転者が不快感を覚えたりすることがある。
このため、従来、端当て時の衝撃を緩和するように構成された電動パワーステアリング装置として、舵角が最大舵角近傍の所定舵角を超えると電動機の操舵補助トルクを低減補正するアンローダ補正部を有し、このアンローダ補正部は、操舵速度が速いほど前記補助操舵トルクの低減補正量を増大修正することを特徴とする電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵輪が所定の最大舵角に接近して減衰開始舵角を超えたことが検出された場合に、電動モータの駆動力を減衰させる減衰手段と、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて前記減衰開始舵角を設定する減衰開始舵角設定手段とを備えた電気式パワーステアリング装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
ところが、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、最大舵角近傍において操舵補助トルクの低減補正量を増大修正するようにしているので、舵角を検出するセンサが必要となると共に、操舵速度が速い場合には、電動機の慣性により、必ずしも端当て時の衝撃を十分に緩和することができないという未解決の課題がある。
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて減衰開始舵角を設定するので、操舵速度が高速である場合には、最大舵角と減衰開始舵角との差を大きくする(電動モータの駆動力を減衰させる時点を早める)ことで、モータ慣性によって端当て時に大きな衝撃が発生することを防止することが可能となるものであるが、操舵輪の操舵速度を検出するセンサが必要になると共に、ステアリングホイールを最大舵角近傍から中立位置へ向かって切り戻す場合には、電動モータの駆動力の減衰により、操舵補助力が不十分となって操舵フィーリングが悪化するという未解決の課題がある。
これらの未解決の課題を解決するために、機械的に端当ての衝撃を低減することが考えられている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載の発明では、電動モータから操舵輪への操舵力伝達系の途中であって、電動モータから伝えられるトルクが作用する部分に、該部分に作用するトルクが所定値に達した場合に当該トルクの伝達を制限するトルクリミッタを設けることにより、操舵輪がステアリングエンドに達した時等、操舵輪の操舵動作が急激に停止した場合に瞬間的に増加する電動モータの回転エネルギによるトルクをトルクリミッタにより制限し、所定値以上のトルクの操舵輪側への電動を阻止して大きな衝撃力の発生を防止するようにしている。
特開2001−253356号公報(第1頁、図2、図7) 特開2001−30933号公報(第1頁、図2、図3) 特開2000−335431号公報(第1頁、図2、図3)
ところで、端当て時やタイヤが縁石に当接した時のように操舵限界位置に達した時の衝撃荷重が及ぼす影響のうち、ステアリングシャフトとステアリングギヤとの間に介挿されたトルク伝達部材としての中間シャフトに与える影響が大きな問題となり、この中間シャフトの耐久性が低下するという問題がある。
上記各従来例にあっては、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接する端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時の衝撃を緩和できるものであるが、第1及び第2の従来例のようにソフトウェアによる対策では、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用するため、高精度の舵角センサ又は絶対舵角推定機能が必要となり、横滑り防止装置用の低精度の舵角センサを流用することはできず、高価な舵角センサや絶対舵角推定機能を必要とするので、製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
また、第3の従来例のように、端当て時の衝撃をトルクリミッタを使用して機械的に防止するには、トルクリミッタを組込む必要があり、同様に製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、別途舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、転舵輪を転舵するステアリング機構にステアリングホイールから入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記転舵輪側からステアリングシャフトに入力されるセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク検出部を備え、前記モータ制御部は、前記セルフアライニングトルク検出部で検出されたセルフアライニングトルクの変化率を演算するセルフアライニングトルク変化率検出部と、該セルフアライニングトルク変化率検出部で演算したセルフアライニングトルクの変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときにデューティ比制限条件を満足したものと判断して前記パルス幅変調信号のデューティ比を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するデューティ比制限部とを有することを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記デューティ比制限部は、前記セルフアライニングトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記セルフアライニングトルク検出部で検出したセルフアライニングトルクの絶対値が所定値以上であるときにデューティ比制限条件を満足したものと判断してデューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記デューティ比制限部は、前記セルフアライニングトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記セルフアライニングトルク検出部で検出したセルフアライニングトルクの絶対値が所定値以上である状態を所定時間以上継続したときにデューティ比制限条件を満足したものと判断して前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記セルフアライニングトルクの変化率の符号とセルフアライニングトルク演算値の符号とが一致した場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出手段を備え、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出手段で検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項6に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出手段を備え、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出手段で所定時間前に検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項7に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至4の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部とを備え、前記セルフアライニングトルク検出部は、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルク、前記電流指令値演算部で演算した電流指令値、前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度及び前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度に基づいてセルフアライニングトルクを演算するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項8に係る電動パワーステアリング装置は、請求項6又は7に係る発明において、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部を備え、前記セルフアライニングトルク検出部は、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルク、前記電流指令値演算部で演算した電流指令値、前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度及び前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度に基づいてセルフアライニングトルクを演算するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項9に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至8の何れか1つに係る発明において、前記デューティ比制限部は、デューティ比を前記所定値に固定してから所定時間が経過したときにデューティ比の前記所定値への固定を解除するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項10に係る電動パワーステアリング装置は、請求項9に係る発明において、前記デューティ比の前記所定値への固定を解除する所定時間はモータ角速度に基づいて設定されることを特徴としている。
また、請求項11に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至10の何れか1つに係る発明において、車速を検出する車速検出手段を有し、前記デューティ比制限部は、前記操舵限界を判断する閾値を前記車速検出手段で検出した車速の増加に応じて増加させる閾値設定手段を備えていることを特徴としている。
さらに、請求項12に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至11の何れか1つの発明において、前記モータ制御部は、前記パルス幅変調信号によって駆動されて電動モータにモータ電流を供給するインバータを有し、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したときに前記インバータの上アーム及び下アームの何れか一方を同時にオン状態として電磁ブレーキモードに制御するようにしたことを特徴としている。
さらにまた、請求項13に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至12の何れか1つの発明において、前記ステアリング機構のトルク伝達部材は、ステアリングシャフトにプレス成形によって製作されたヨークを有するジョイントを介して接続された中間シャフトを有することを特徴としている。
なおさらに、請求項14に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至13の何れか1つの発明において、前記ステアリング機構は、ステアリングギヤのラックストロークエンドに緩衝材を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、セルフアライニングトルク検出部で検出したセルフアライニングトルクの変化率が操舵限界位置を判断する閾値以上であるときに、デューティ比制限条件を満足したものと判断して前記パルス幅変調信号のデューティ比を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するようにしたので、ステアリングシャフト及びステアリングギヤ間に介挿された中間シャフト等のトルク伝達部材に過大なトルクが伝達される前に電動モータで発生する操舵補助トルクを制限することができ、別途舵角センサやトルクリミッタ等を設けることなく、端当り時やタイヤが縁石に当接した時などの操舵限界位置に達した時にトルク伝達部材に伝達される衝撃力を確実に抑制することができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に一実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって転舵輪Wを転舵させる。
ここで、ステアリングギヤ8は、図2に示すように、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで直進運動に変換している。
そして、ラック軸8cの両端にボールジョイント9aを介してタイロッド9が連結されていると共に、ギヤハウジング8aのラック軸8cを覆う筒状部8dの内周面にラック軸8cが操舵限界位置即ちラックストロークエンドに達したときに、ラック軸8cに取付けたボールジョイント9aの内側端面に形成した緩衝部材8eが当接するストッパ部材8fが形成されている。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
そして、操舵トルクセンサ3から出力される操舵トルク検出値Tは、図3に示すように、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値V、電動モータ12に流れるモータ電流Iu〜Iw及びレゾルバ、エンコーダ等で構成される回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θも入力され、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる電流指令値としての操舵補助トルク指令値IM *を算出し、算出した操舵補助指令値IM *に対して回転角θに基づいて算出するモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいて各種補償処理を行ってからd−q軸指令値に変換した後2相/3相変換して3相電流指令値Iu*〜Iw*を算出し、これら3相電流指令値Iu*〜Iw*とモータ電流Iu〜Iwとに基づいて電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック制御処理して電動モータ12を駆動制御するモータ電流Iu、Iv及びIwを出力する。
すなわち、コントローラ15は、操舵トルクT及び車速Vに基づいて電流指令値としての操舵補助トルク指令値IM *を演算するトルク指令値演算部21と、このトルク指令値演算部21で算出した操舵補助トルク指令値IM *を補償する指令値補償部22と、この指令値補償部22で補償された補償後トルク指令値IM *′に基づいてd−q軸電流指令値を算出するd−q軸電流指令値演算部23と、このd−q軸電流指令値演算部23から出力される指令電流に基づいてモータ電流Iu〜Iwを生成するモータ電流制御部24とで構成されている。
操舵補助トルク指令値演算部21は、操舵トルクT及び車速Vをもとに図4に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して電流指令値でなる操舵補助トルク指令値IM *を算出する。
この操舵補助トルク指令値算出マップは、図4に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助トルク指令値IM *をとると共に、車速Vをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが“0”からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助トルク指令値IM *が“0”を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値IM *が操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助トルク指令値IM *が急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
指令値補償部22は、回転角センサ17で検出されるモータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出する角速度演算部31と、この角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する角加速度演算部32と、角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償部33と、角加速度演算部32で算出されたモータ角加速度αに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償部34と、セルフアライニングトルク(SAT)を検出するセルフアライニングトルク検出部(以下、SAT検出部と称す)35とを少なくとも有する。
ここで、収斂性補償部33は、車速センサ16で検出した車速V及び角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωに車速Vに応じて変更される収斂性制御ゲインKvを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
また、SAT検出部35は、操舵トルクT、角速度ω、角加速度α及び操舵補助トルク指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値IM *が入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを演算により検出する。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図5に示して説明する。
すなわち、ドライバがステアリングホイール1を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ12がアシストトルクTmを発生する。その結果、転舵輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。
また、その際、電動モータ12の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
J・α+ Fr・sign(ω) + SAT = Tm + T …(1)
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・α(s) + Fr・sign(ω(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ω、回転角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを検出することができる。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値IM *に比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値IM *を適用する。
そして、慣性補償部34で算出された慣性補償値Ii及びSAT検出部35で算出されたセルフアライニングトルクSATが加算器36で加算され、この加算器36の加算出力と収斂性補償部33で算出された収斂性補償値Icとが加算器37で加算されて指令補償値Icomが算出され、この指令補償値Icomが操舵補助トルク指令値演算部21から出力される操舵補助トルク指令値IM *に加算器38で加算されて補償後トルク指令値IM *′が算出され、この補償後トルク指令値IM *′がd−q軸電流指令値演算部23に出力される。
また、d−q軸電流指令値演算部23は、補償後操舵補助トルク指令値IM *′とモータ角速度ωとに基づいてd軸目標電流Id*を算出するd軸目標電流算出部51と、モータ回転角θ及びモータ角速度ωに基づいてd−q軸誘起電圧モデルEMF(Electro Magnetic Force)のd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)を算出する誘起電圧モデル算出部52と、この誘起電圧モデル算出部52から出力されるd軸EMF成分ed(θ)及びq軸EMF成分eq(θ)とd軸目標電流算出部51から出力されるd軸目標電流Id*と補償後操舵補助トルク指令値IM *′とモータ角速度ωとに基づいてq軸目標電流Iq*を算出するq軸目標電流算出部53と、d軸目標電流算出部51から出力されるd軸目標電流Id*とq軸目標電流算出部53から出力されるq軸目標電流Iq*とを3相電流指令値Iu*、Iv*及びIw*に変換する2相/3相変換部54とを備えている。
モータ電流制御部24は、電動モータ12の各相コイルLu、Lv及びLwに供給されるモータ電流Iu、Iv及びIwを検出するモータ電流検出部60と、d−q軸電流指令値演算部23の2相/3相変換部54から入力される電流指令値Iu*,Iv*及びIw*からモータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu、Iv及びIwを個別に減算して各相電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwを求める減算器61u、61v及び61wと求めた各相電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwに対して比例積分制御を行って電圧指令値Vu、Vv及びVwを算出するPI電流制御部62とを備えている。
また、モータ電流制御部24は、PI電流制御部62から出力される電圧指令値Vu、Vv及びVwが入力されて、これら電圧指令値Vu、Vv及びVwに基づいてデューティ演算を行って各相のデューティ比DuB、DvB及びDwBを算出すると共に、デューティ比DuB、DvB及びDwBを所定値例えば3%に制限した制限デューティ比DuL、DvL及びDwLを算出し、これらを後述する選択信号形成部69から入力される選択信号SLによって選択するデューティ比制限部としてのデューティ演算/制限演算部64u、64
v及び64wを備えている。
ここで、ディーティ演算/制限演算部64uは、図3に示すように、PI電流制御部62から出力される電圧指令値Vuに基づいて正負のデューティ比DuBを演算するデューティ比演算部64aと、このデューティ比演算部64aで算出されたデューティ比DuBを所定値例えば3%に制限するリミッタ64bと、デューティ比演算部64aから出力されるテューティ比DuB及びリミッタ64bから出力される制限デューティ比DuLが入力され、これらを入力される選択信号SLが論理値“0”であるときにデューティ比DuBを選択し、論理値“1”であるときに制限デューティ比DuLを選択する選択スイッチ部64cとで構成されている。また、他のデューティ演算/制限演算部64v及び64wも上記デューティ演算/制限演算部64uと同様の構成を有する。
さらに、モータ電流制御部24は、デューティ演算/制限演算部64u、64v及び64wから出力されるデューティ比に基づいてパルス幅変調を行ってパルス幅変調信号を出力するパルス幅変調部65と、このパルス幅変調部65から出力される選択パルス幅変調信号が入力されて3相モータ電流Iu、Iv及びIwを電動モータ12に出力するインバータ66と、SAT検出部35で算出されるセルフアライニングトルクSATに基づいてセルフアライニングトルク変化率ΔSATを演算するセルフアライニングトルク変化率検出部としての微分回路68と、この微分回路68で演算したセルフアライニングトルク変化率ΔSATが操舵限界を判断する閾値ΔTth未満であるときに論理値“0”の選択信号SLを出力し、閾値ΔTth以上であるときに論理値“1”の選択信号SLを出力する選択信号形成部69とを備えている。
また、選択信号形成部69は、微分回路68で算出したセルフアライニングトルク変化率ΔSATがステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界位置となったときに生じる通常の操舵では発生することがない大きな傾きのセルフアライニングトルクを判別する閾値ΔTth(例えば3000Nm/sec)以上であるか否かを判定し、ΔSAT<ΔTthであるときには操舵限界位置に達していないものと判断して論理値“0”の選択信号SLを出力し、ΔSAT≧ΔTthであるときには操舵限界位置に達したものと判断して論理値“1”の選択信号SLを出力する。
ここで、ラック軸8cが操舵限界位置に到達したときのSAT検出部35から出力されるセルフアライニングトルク波形は、図6に示すように、時点t1でラック軸8cが操舵限界位置となったものとすると、ラック軸8cの車幅方向の移動が停止され、これによってピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bを介し、さらに減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転が停止されるので、セルフアライニングトルクSATが通常の操舵では発生しないような大きな傾きで増加し(図6の例では3500Nm/sec程度)、その後過電流保護回路の動作によってモータ電流Iu〜Iwが徐々に減少されることにより、セルフアライニングトルクSATが徐々に減少する。このため、セルフアライニングトルク変化率ΔSATの閾値ΔTthを所定値(例えば3000Nm/sec程度)に設定することにより、操舵限界位置を確実に検出することができる。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両の走行を開始するために、イグニッションスイッチIGをオン状態とすることにより、コントローラ15に電源が投入されて、操舵補助制御処理が実行開始される。
このため、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクT、車速センサ16で検出した車速V、モータ電流検出部60u〜60wで検出したモータ電流検出値Iu〜Iw、回転角センサ17で検出したモータ回転角θがコントローラ15に供給される。
したがって、操舵補助トルク指令値演算部21で、操舵トルクTと車速Vとに基づいて図4に示す操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値IM *を算出する。
一方、回転角センサ17で検出したモータ回転角θが角速度演算部31に入力されてモータ角速度ωが算出され、このモータ角速度ωが角加速度演算部32に入力されてモータ角加速度αが算出される。
そして、収斂性補償部33でモータ角速度ωに基づいて収斂性補償値Icが算出され、慣性補償部34でモータ角加速度に基づいて慣性補償値Iiが算出され、さらにSAT検出部35でモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいてセルフアライニングトルクSATが検出され、これらが加算器36及び37で加算されて指令値補償値Icomが算出され、これが加算器38で操舵補助トルク指令値IM *に加算されて補償後操舵補助トルク指令値補償値IM *′が算出される。
そして、算出された補償後操舵補助トルク指令値補償値IM *′がd−q軸電流指令値演算部23に供給される。
このとき、車両が停止状態にあって、ステアリングホイール1が操舵されていない状態では、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが“0”であり、車速センサ16で検出される車速Vも“0”であるので、操舵補助トルク指令値演算部21で算出される操舵補助トルク指令値IM *も“0”となっている。
また、角速度演算部31で演算される回転角速度ωも“0”となっており、角加速度演算部32で演算される回転角加速度αも“0”である。このため、SAT検出部35で検出されるセルフアライニングトルクSATも“0”となり、微分回路68で演算されるセルフアライニングトルク変化率ΔSATも“0”であり、これが選択信号形成部69に供給され、セルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth未満であるので、論理値“0”の選択信号SLがデューティ演算/制限演算部64u〜64wに出力される。
このため、デューティ演算/制限演算部64u〜64wでデューティ比演算部64aから出力されるデューティ比DuB〜DwBが選択されて、これらデューティ比DuB〜DwBがパルス幅変調部65に入力されることにより、このパルス幅変調部65からインバータ66を構成する上アーム部及び下アーム部の各スイッチング素子のゲートを駆動するパルス幅変調信号がインバータ66に供給される。
このとき、前述したように、補償後操舵補助トルク指令値IM *′が“0”であり、この補償後トルク指令値IM *′がd−q軸電流指令値演算部23に供給されるので、このd−q軸電流指令値演算部23でモータ回転角θ及びモータ角速度ωに基づいてd−q軸座標系での指令値演算が行われて、d軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*が算出され、これらd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*が2相/3相変換部54で夫々“0”の3相電流指令値Iu*〜Iw*に変換されてモータ電流制御部24に出力される。
このモータ電流制御部24では、モータ電流検出部60で検出されるモータ電流Iu〜Iwも“0”であることから、減算器61u〜6wから出力される電流偏差ΔIu〜ΔIwも“0”となり、PI電流制御部62から出力される電圧指令値Vu〜Vwも“0”となって、デューティ演算/制限演算部64から出力されるデューティ比DuB〜DwBが0%となり、これに応じたパルス幅変調信号がパルス幅変調部65からインバータ66に供給されるので、このインバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwも“0”となって、電動モータ12が停止状態を継続する。
この電動モータ12の停止状態で、ステアリングホイール1を右切り(又は左切り)操舵する所謂据え切りを行うと、操舵トルクセンサ14で操舵方向に応じた操舵トルクTが検出され、この操舵トルクTがコントローラ15に供給されることにより、操舵補助トルク指令値演算部21で、車速Vが“0”であるので、一番内側の特性曲線が選択されて操舵トルクTの増大に応じて早めに大きな値となる操舵補助トルク指令値IM *が算出され、この操舵補助指令値IM *が加算器38に出力される。また、操舵により回転角速度ωと回転角加速度αが出力される。
このため、加算器38によって、指令値補償部22で算出された指令補償値Icomが加算されて補償後操舵補助トルク指令値IM *′が算出され、この補償後操舵補助トルク指令値IM *′がd−q軸電流指令値演算部23に供給される。
このd−q軸電流指令値演算部23で、補償後トルク指令値IM *′に応じた値のd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*が算出され、これらが2相/3相変換部54で3相の電流指令値Iu*〜Iw*に変換されてモータ電流制御部24に出力される。
したがって、モータ電流制御部24では、モータ電流検出部60で検出されるモータ電流Iu〜Iwが“0”であるので、減算器61u〜61wから出力される電流偏差ΔIu〜ΔIwは電流指令値Iu*〜Iw*がそのままPI電流制御部62に供給されることにより、このPI電流制御部62にPI制御処理が行われて、電圧指令値Vu〜Vwがデューティ演算/制限演算部64u〜64wに出力される。
この状態では、微分回路68で演算されるセルフアライニングトルク変化率ΔSATは、操舵限界位置到達時のセルフアライニングトルク変化率よりは小さく、選択信号形成部69では論理値“0”の選択信号SLの出力を継続しており、デューティ演算/制限演算部64u〜64wでは選択スイッチ部64cでデューティ比演算部64aから出力される電圧指令値Vu〜Vwに応じたデューティ比DuB〜DwBを選択しているので、これらデューティ比DuB〜DwBに応じたパルス幅変調信号がパルス幅変調部65からインバータ66に供給される。
このため、インバータ66からモータ電流Iu〜Iwが出力されて電動モータ12が回転駆動されて、操舵トルクTに応じた操舵補助トルクが発生され、これが減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2の出力軸2bに伝達されるので、据え切り状態での操舵を軽く行うことができる。
このとき、操舵により、セルフアライニングトルクSATが急激に増加しているが、この場合のセルフアライニングトルク変化率ΔSATは、前述したように操舵限界位置到達時のセルフアライニングトルク変化率よりは小さく、閾値ΔTthより小さい値となるので、選択信号形成部69では論理値“0”の選択信号SLを継続して出力することにより、デューティ演算/制限演算部64の選択スイッチ部64cでデューティ比演算部64aから出力される電圧指令値Vu〜Vwに応じたデューティ比DuB〜DwBを選択する状態が継続される。
その後、車両を発進させると、車速センサ16で検出される車速Vが増加することにより、走行中にステアリングホイール1を操舵したときに、操舵補助トルク指令値演算部21で算出される操舵補助トルク指令値は図4のマップで車速Vが速くなるほど外側の特性曲線が選択されることになるので、操舵トルクTの増加に対応する操舵補助トルク指令値IM *の増加量が少なくなることにより、電動モータ12で発生される操舵補助トルクも据え切り時に比較して小さい値となり、車速Vに応じた最適の操舵補助トルクを発生させることができる。
ところで、前述した据え切り状態や車庫入れ等の極低速走行状態でステアリングホイール1を右又は左に操舵限界位置まで比較的速い操舵を行うと、操舵限界位置に達するまでは、前述したように、コントローラ15で、そのときの操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTに応じたモータ電流Iu〜Iwが形成されて、これらが電動モータ12に供給されて、軽い操舵を行うことができる。
このとき、据え切り状態や極低速走行状態での操舵であるので、操舵トルクTが大きく、パルス幅変調部63から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比は略100%に近い状態となっている。
この状態で、ラック軸8cの緩衝部材8eがストッパ部材8fに当接するラックストロークエンドに達したり、タイヤが縁石等に接触したりして操舵限界位置に達すると、ラック軸8cの移動が停止されることにより、ピニオン8b、ピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bの回転が停止し、これに応じて減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転も停止される。
このとき、操舵トルクの急増により、操舵補助指令値IM *も急増し、ステアリングシャフト2の出力軸2bの回転が停止することにより、モータの慣性モーメントによるトルクが加わる。そのため、急増したセルフアライニングトルクSATがSAT検出部から微分回路68に供給される。このときの、SAT検出部35から出力されるセルフアライニングトルクSATは図6に示すように急勾配で増加する状態となり、微分回路68から出力されるセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上となる。
この閾値ΔTth以上となるセルフアライニングトルク変化率ΔSATが選択信号形成部69に供給されることにより、この選択信号形成部69で論理値“1”の選択信号SLがデューティ演算/制限演算部64の選択スイッチ部64cに出力される。このため、選択スイッチ部64cでリミッタ64bから出力される低デューティ比の制限デューティ比DuL〜DwLが選択されてパルス幅変調部65に供給され、このパルス幅変調部65で制限デューティ比DuL〜DwLに応じたパルス幅変調信号がインバータ66に供給される。
したがって、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwが減少されて、電動モータ12で発生する操舵補助トルクが減少し、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値が図7で実線図示の特性曲線L1で示すように、デューティ比制限制御を行わない場合の破線図示の特性曲線L2に比較してトルクのピーク値を抑制することができ、中間シャフト等のトルク伝達部材の耐久性を向上させることができる。
しかも、SAT検出部35で検出されたセルフアライニングトルクSATに基づいてセルフアライニングトルク変化率ΔSATを演算し、その演算結果と閾値ΔTthと比較することにより、端当て状態やタイヤが縁石に接触した状態の操舵限界位置を検出するので、操舵限界位置に達した時点から短時間(例えば10msec程度)で操舵限界位置状態を検出することができる。
この操舵限界位置検出時から短時間(例えば20msec程度)で電動モータ12によって発生する操舵補助トルクを制限することができるので、ラック軸8cに緩衝部材8eを設けない場合の操舵限界位置到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間(約30msec程度)内に操舵補助トルク制限を行うことが可能となり、中間シャフトに発生するトルクを低減して、中間シャフト5の耐久性を向上させることができる。しかも、この効果を別途舵角センサ等のセンサを設けることなく発揮することができる。
また、上記実施形態では、ラック軸8cに緩衝部材8eが設けられているので、ラックエンドストロークに達した端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界到達時に、緩衝部材8eの縮み代分中間シャフト5にピークトルクが発生する時間を遅延させることができ、中間シャフト5に発生するトルクをより確実に低減させることができる。
なお、上記実施形態においては、ラック軸8cに緩衝部材8eを設けることにより、操舵限界到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を遅延させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、中間シャフト5の両端に取付けたユニバーサルジョイント4及び6のヨーク4a,4b及び6a,6bをプレス成形することにより、高強度の鍛造成形ヨークに対して剛性を低下させて、操舵限界到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くすることができる。この場合には、ヨークをプレス成形するので、鍛造成形ヨークより低コストで製作することができると共に、操舵限界到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くできるので、演算処理能力の低いマイクロコンピュータ等の演算処理装置を適用することができ、よりコストを低減することができる利点がある。
また、上記実施形態においては、セルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であるときに、操舵限界位置であると判断して、デューティ演算/制限演算部64のデューティ比演算部64aから出力される操舵トルクに応じたデューティ比DuB〜DwBに代えてリミッタ64bから出力される低デューティ比の制限デューティ比DuL〜DwLを選択する場合について説明したが、これに限定されるものでなく、図8に示すように、SAT検出部35で検出したセルフアライニングトルクSATも選択信号形成部69に入力して、セルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であり、且つセルフアライニングトルクSATが所定値(例えば40Nm)以上であるときを操舵限界位置検出条件としたり、セルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であり、且つセルフアライニングトルクSATが所定値(例えば40Nm)以上を所定時間(例えば10msec)継続したときを操舵限界位置検出条件としたりすることにより、より正確に端当て状態を検出することができる。この場合には、通常操舵時に、車両が例えばベルジアン路(石畳路)等で制動を行うことにより、タイヤから大きな振動荷重が入力されるときがあり、この振動荷重が大きいと電動モータ12のモータ電流の傾きが大きくなる傾向があるが、タイヤからの振動荷重に対して継続して大きな電流が流れることはないので、この走行状態を誤検出することを確実に防止することができる。
また、操舵限界位置が生じるのは、ステアリングホイール1を切り増し方向に操舵する場合のみであることから、セルフアライニングトルクSATの符号とセルフアライニングトルク変化率ΔSATの符号とが一致する切り増し状態であり、且つセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であるときを操舵限界位置検出条件とするようにしてもよく、この場合には、ラックエンドから離れる方向への操舵時にセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上となった場合の誤検出を確実に防止することができる。
さらに、上記実施形態においては、選択信号形成部69でセルフアライニングトルクSATの変化率ΔSATと比較する閾値ΔTthが固定値である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、車速センサ16で検出した車速Vを選択信号形成部69に入力し、この選択信号形成部69で図10に示す閾値設定処理を実行して、操舵限界を判断する閾値ΔTthを車速Vに応じて変更するようにしてもよい。
すなわち、図10の閾値設定処理では、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS31で、車速センサ16で検出した車速Vを読込み、次いでステップS32に移行して、読込んだ車速Vをもとに図11に示す閾値算出テーブルを参照して閾値ΔTthを算出し、次いでステップS33に移行して、算出した閾値ΔTthを後述する操舵限界位置検出処理で参照可能なRAM等の所定の記憶領域に記憶してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
ここで、図11の閾値算出テーブルは、車速Vが“0”のときに、所定値ΔTth1となり、これより車速Vが増加するに従って閾値ΔTthが増加するように設定されている。
この図10の処理が閾値設定手段に対応している。
このように、操舵限界を判断する閾値ΔTthを車速Vの増加に応じて増加させることにより、車速が速くなるに応じて端当て状態まで操舵することはなくなるので、端当て状態の誤検出を確実に防止することができる。なお、図10の閾値設定処理では、図11に示す閾値算出テーブルを使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11の特性線を一次方程式で表し、この方程式に車速Vを代入して閾値ΔTthを算出するようにしてもよい。また、閾値の設定をソフトウェアで行う場合に限らず、関数発生器等のハードウェアを使用して車速Vに応じた閾値ΔTthの設定を行うようにしてもよい。
さらに、図12に示すように、セルフアライニングトルクSATに代えて角速度演算部31で算出されるモータ角速度ωを選択信号形成部69に供給することにより、モータ角速度ωが所定値以上で且つセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であるときを操舵限界位置検出条件とすることもできる。
この場合には、モータ角速度ωとして操舵限界位置到達時のモータ角速度ωは図13に示すように急激に角速度が低下するので、操舵限界位置となる直前のモータ角速度(所定時間前(例えば20msec程度前)のモータ角速度)を使用する。
このように、モータ角速度ωを操舵限界位置検出条件に入れることにより、モータ角速度ωが所定値より小さい状態では、操舵限界到達時の衝撃荷重も小さく、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値も小さいので、小さい値の固定デューティ比を使用する操舵補助トルク制限を行う必要がないが、モータ角速度ωが所定値以上である場合には、操舵限界位置到達時の衝撃荷重が大きくなるので、中間シャフト5に伝達され伝達トルクのピーク値も大きくなることから操舵補助トルク制限を行って中間シャフト5に伝達されるピークトルクを確実に減少させる。
さらにまた、上記実施形態においては、セルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であるときに、制限デューティ比Du〜Dwを選択する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、制限デューティ比Du〜Dwの継続時間を所定時間(例えば20msec程度)に設定し、制限デューティ比状態を所定時間継続した後にデューティ演算/制限演算部64の選択スイッチ部64cを通常時のデューティ比演算部64aから出力される電圧指令値Vu〜Vwに応じたデューティ比Du〜Dwを選択する状態に復帰させるようにしてもよい。この場合には、長い時間制限デューティ比Du〜Dwによる操舵補助トルク制限を継続すると、運転者に違和感を与えることになるおそれがあるので、中間シャフト5に発生する伝達トルクのピークを低減するに十分な短い時間だけ制限デューティ比Du〜Dwによる操舵補助トルク制限を継続させて運転者に与える違和感を抑制することが好ましい。このため、モータ角速度ωが大きいときには衝撃荷重も大きいので、制限デューティ比Du〜Dwによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的長く設定し、逆にモータ角速度ωが小さいときには衝撃荷重が小さいので、制限デューティ比Du〜Dwによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的短く設定することが好ましい。
なおさらに、上記実施形態においては、操舵限界位置検出時に、比較的小さい値の制限デューティ比Du〜Dwのパルス幅変調信号をインバータ66に供給して電動モータ12を制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、パルス幅変調部65でインバータ66の上アーム部(又は下アーム部)を構成する3つのスイッチング素子に対するパルス幅変調信号のデューティ比を0%とし、下アーム部(又は上アーム部)を構成する3つのスイッチング素子に対するパルス幅変調信号のデューティ比を100%に固定することにより、電動モータ12の各コイルを短絡状態の閉回路とすることにより、電磁ブレーキモードとし、電動モータ12のロータの慣性力が中間シャフト5に伝達されないようにすることもできる。
また、上記実施形態においては、制限デューティ比Du〜Dwを例えば3%に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータ12の特性に合わせて任意の固定デューティ比を設定することができる。
さらに、上記実施形態においては、d−q軸電流指令値演算部23に2相/3相変換部54を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2相/3相変換部54を省略し、これに代えてモータ電流検出部60の出力側に3相/2相変換部を設け、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換し、2つの減算部でd軸目標電流Id及びq軸目標電流Iqとモータのd軸電流Id及びq軸電流Iqとの偏差を算出するようにしてもよい。
さらにまた、上記実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、マイクロコンピュータを適用して操舵補助トルク指令値演算部21、指令値補償部22、d−q軸電流指令値演算部23及びモータ制御部24の減算器61u〜61w、PI電流制御部62、デューティ制御/制限演算部64、パルス幅変調部65、微分回路68及び選択信号形成部69の機能をソフトウェアで処理することもできる。この場合の処理としては、マイクロコンピュータで図14に示す操舵補助制御処理及び図15に示す操舵限界位置検出処理を実行するようにすればよい。
ここで、操舵補助制御処理は、図14に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS0で、後述する操舵限界位置検出処理で設定される端当て検出フラグFが操舵限界位置に到達したことを検出したことを表す“1”にセットされているか否かを判定し、操舵限界位置検出フラグFが“0”にリセットされているときにはステップS1に移行する。このステップS1では、操舵トルクセンサ14、車速センサ16、回転角センサ17、モータ電流検出部60等の各種センサの検出値を読込み、次いでステップS2に移行して、操舵トルクTをもとに前述した図4に示す操舵補助トルク指令値算出マップを参照して操舵補助トルク指令値I を算出してからステップS3に移行する。
このステップS3では、モータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出し、次いでステップS4に移行して、モータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出し、次いでステップS5に移行して、収斂性補償部33と同様にモータ角速度ωに車速Vに応じて設定された補償係数Kvを乗算して収斂性補償値Icを算出してからステップS6に移行する。
このステップS6では、慣性補償部34と同様に、モータ角加速度αに基づいて慣性補償値Iiを算出し、次いでステップS7に移行してSAT検出部35と同様にモータ角速度ω、モータ角加速度α、操舵トルクT及び操舵補助トルク指令値I をもとに前述した(2)式の演算を行ってセルフアライニングトルクSATを算出する。
次いで、ステップS8に移行して、操舵補助トルク指令値I にステップS4〜S6で算出した収斂性補償値Ic、慣性補償値Ii及びセルフアライニングトルクSATを加算して補償後操舵補助トルク指令値I ′を算出し、次いでステップS9で算出した操舵補助トルク指令補償値I ′にd−q軸電流指令値演算部23と同様のd−q軸指令値演算処理を実行してd軸目標電流Id及びq軸目標電流Iqを算出し、次いでステップS10に移行して2相/3相変換処理を行ってモータ電流指令値Iu〜Iwを算出する。
次いで、ステップS11に移行して、モータ電流指令値Iu〜Iwからモータ電流Iu〜Iwを減算して電流偏差ΔIu〜ΔIwを算出し、次いでステップS12に移行して、電流偏差ΔIu〜ΔIwについてPI制御処理を行って電圧指令値Vu〜Vwを算出し、次いでステップS13に移行して算出した電圧指令値Vu〜Vwに基づいてデューティ比Du〜Dwを演算してからパルス幅変調処理を行ってインバータゲート信号を形成し、次いでステップS14に移行して、形成したインバータゲート信号をインバータ66に出力してから操舵補助制御処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
一方、ステップS0の判定結果が、操舵限界位置検出フラグFが“1”にセットされているときには、操舵限界位置到達時であるものと判断してステップS15に移行して、前述したリミッタ64bと同様の例えば3%に設定した制限デューティ比Du〜Dwを算出してからパルス幅変調処理を行ってインバータゲート信号を形成してから前記ステップS14に移行する。
また、操舵限界位置検出処理は、図15に示すように、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、図14の操舵補助制御処理におけるステップS7で算出したセルフアライニングトルクSATを読込んでからステップS22に移行する。
このステップS22では、読込んだセルフアライニングトルクSATを微分してセルフアライニングトルク変化率ΔSATを算出し、次いでステップS23に移行して、算出したセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth以上であるか否かを判定し、ΔSAT≧ΔTthであるときには操舵限界位置であると判断してステップS24に移行して、操舵限界位置検出フラグFを“1”にセットしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰し、ΔSAT<ΔTthであるときには操舵限界位置ではないと判断してステップS25に移行して、操舵限界位置検出フラグFを“0”にリセットしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
この図14及び図15の処理において、図14のステップS2の処理が電流指令値演算部に対応し、ステップS3〜S14の処理及びインバータ66がモータ制御部に対応し、このうちステップS7の処理がセルフアライニングトルク検出部に対応し、図15のステップS21及びS22の処理がセルフアライニングトルク変化率検出部に対応し、ステップS23〜S25の処理及び図14のステップS0、S16の処理がデューティ比制限部に対応している。
マイクロコンピュータで、図14の操舵補助制御処理及び図15の操舵限界位置検出処理を実行することにより、前述した実施形態と同様にラック軸8cがラックストロークエンドに達した端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置に達した時に、インバータ66に供給するインバータゲート信号のデューティ比を小さい値に制限することにより、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwを小さい値として電動モータ12で発生する操舵補助トルクを減少させて、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値を低減させることができ、中間シャフト5の耐久性を向上させることができる。
なおさらに、上記実施形態においては、モータ角速度ω、回転角加速度α、操舵トルクT及び操舵補助トルク指令値I に基づいてセルフアライニングトルクSATを検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、操舵補助トルク指令値I に代えて、モータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換してq軸電流Iqを算出し、このq軸電流Iqと回転角加速度αとに基づいて下記(3)式の演算を行って算出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
Tma= Kt・Iq−Jm・α ……(3)
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
この他、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設し、このトルクセンサで検出したモータアシストトルクTmaを適用するようにしてもよい。
また、上記実施形態においては、本発明をブラシレスモータに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラシ付きモータに適用する場合には、図16に示すように、角速度演算部31でモータ電流検出部60から出力されるモータ電流検出値Im及び端子電圧検出部70から出力されるモータ端子電圧Vmに基づいて下記(4)式の演算を行ってモータ角速度ωを算出すると共に、d−q軸指令値演算部23を省略して補償後トルク指令値I ′を直接モータ制御部24に供給し、さらにモータ制御部24を夫々1つの減算部61、PI電流制御部62、デューティ演算/制限演算部64で構成し、SAT検出部35で検出したセルフアライニングトルクSATを、セルフアライニングトルク変化率検出部としての微分回路68で微分してセルフアライニングトルク変化率ΔSATを算出するようにし、選択信号形成部69でセルフアライニングトルク変化率ΔSATが閾値ΔTth未満であるか否かに応じて“0”及び“1”の選択信号SLを出力するようにし、さらにインバータ66をHブリッジ回路71に変更すればよい。
ω=(Vm−Im・Rm)/K …………(4)
ここで、Rmはモータ巻線抵抗、Kはモータの起電力定数である。
また、上記各実施形態においては、デューティ演算/制限演算部64u〜64w及び64のデューティ比演算部64aでデューティ比Duを演算してからリミッタ64bで制限デューティ比Duを算出し、これらを選択スイッチ部64cで選択する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電圧指令値Vu〜Vw、Vをリミッタで所定値に制限して制限電圧指令値Vu〜Vw、V を算出し、電圧指令値Vu〜Vw、Vと制限電圧指令値Vu〜Vw、V とを選択スイッチ部で選択し、選択されて指令値にデューティ比演算部でデューティ比Du〜Dw、Dを演算するようにしてもよい。
本発明の第1の実施形態に係る電動パワーステアリング装置の概略構成を示す図である。 ステアリングギヤの具体的構成を示す一部を断面とした正面図である。 本発明に係るコントローラの具体例を示すブロック図である。 車速をパラメータとした操舵補助トルク指令値との関係を示す操舵補助トルク指令値算出マップを示す特性線図である。 セルフアライニングトルクの説明に供する模式図である。 操舵限界到達時のセルフアライニングトルク変化を示す信号波形図である。 中間シャフトに伝達されるトルク特性を示す特性線図である。 本発明の他の実施形態を示すブロック図である。 本発明のさらに他の実施形態を示すブロック図である。 図9の選択信号形成部で実行する閾値設定処理手順の一例を示すフローチャートである。 図10の閾値設定処理で使用する閾値算出テーブルを示す特性線図である。 本発明のさらに他の実施形態を示すブロック図である。 操舵限界到達時のセルフアライニングトルク及びモータ角速度を示す特性線図である。 マイクロコンピュータで実行する操舵補助制御処理手順の一例を示すフローチャートである。 マイクロコンピュータで実行する操舵限界位置検出処理手順の一例を示すフローチャートである。 ブラシ付きモータを適用した場合の実施形態を示すブロック図である。
符号の説明
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…出力軸、3…ステアリングコラム、4,6…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、8…ステアリングギヤ、8a…ギヤハウジング、8b…ピニオン、8c…ラック軸、8e…緩衝部材、8f…ストッパ部材、9…タイロッド、W…転舵輪、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントロールユニット、16…車速センサ、17…回転センサ、21…操舵補助トルク指令値演算部、22…指令値補償部、23…d−q軸電流指令値演算部、24…モータ電流制御部、31…角速度演算部、32…角速度演算部、33…収斂性補償部、34…慣性補償部、35…セルフアライニングトルク(SAT)検出部、36〜38…乗算器、60…モータ電流検出部、61u〜61w…減算部、62…PI電流制御部、63…パルス幅変調部、64…固定デューティ比パルス幅変調部、65…信号選択部、66…インバータ、68…微分回路、69…選択信号形成部

Claims (14)

  1. 転舵輪を転舵するステアリング機構にステアリングホイールから入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
    前記転舵輪側からステアリングシャフトに入力されるセルフアライニングトルクを検出するセルフアライニングトルク検出部を備え、前記モータ制御部は、前記セルフアライニングトルク検出部で検出されたセルフアライニングトルクの変化率を演算するセルフアライニングトルク変化率検出部と、該セルフアライニングトルク変化率検出部で演算したセルフアライニングトルクの変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときにデューティ比制限条件を満足したものと判断して前記パルス幅変調信号のデューティ比を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制する所定値に固定するデューティ比制限部とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。
  2. 前記デューティ比制限部は、前記セルフアライニングトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記セルフアライニングトルク検出部で検出したセルフアライニングトルクの絶対値が所定値以上であるときにデューティ比制限条件を満足したものと判断してデューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記デューティ比制限部は、前記セルフアライニングトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記セルフアライニングトルク検出部で検出したセルフアライニングトルクの絶対値が所定値以上である状態を所定時間以上継続したときにデューティ比制限条件を満足したものと判断して前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  4. 前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記セルフアライニングトルクの変化率の符号とセルフアライニングトルク演算値の符号とが一致した場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  5. 前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出手段を備え、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出手段で検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  6. 前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出手段を備え、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出手段で所定時間前に検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記デューティ比を前記所定値に固定するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  7. 前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部とを備え、前記セルフアライニングトルク検出部は、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルク、前記電流指令値演算部で演算した電流指令値、前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度及び前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度に基づいてセルフアライニングトルクを演算するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  8. 前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部を備え、前記セルフアライニングトルク検出部は、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルク、前記電流指令値演算部で演算した電流指令値、前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度及び前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度に基づいてセルフアライニングトルクを演算するように構成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動パワーステアリング装置。
  9. 前記デューティ比制限部は、デューティ比を前記所定値に固定してから所定時間が経過したときにデューティ比の前記所定値への固定を解除するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  10. 前記デューティ比の前記所定値への固定を解除する所定時間はモータ角速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項9に記載の電動パワーステアリング装置。
  11. 車速を検出する車速検出手段を有し、前記デューティ比制限部は、前記操舵限界を判断する閾値を前記車速検出手段で検出した車速の増加に応じて増加させる閾値設定手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  12. 前記モータ制御部は、前記パルス幅変調信号によって駆動されて電動モータにモータ電流を供給するインバータを有し、前記デューティ比制限部は、前記デューティ比制限条件を満足したときに前記インバータの上アーム及び下アームの何れか一方を同時にオン状態として電磁ブレーキモードに制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  13. 前記ステアリング機構のトルク伝達部材は、ステアリングシャフトにプレス成形によって製作されたヨークを有するジョイントを介して接続された中間シャフトを有することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
  14. 前記ステアリング機構は、ステアリングギヤのラックストロークエンドに緩衝材を備えていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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