JP5098341B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
具体的には、モータ電流が最大推力以下のラック推力範囲内では、トルクセンサの検出出力を基にモータをフィードバック制御したり、操舵角又はチルト角に応じた補正係数を求め、モータ電流値を補正係数で補正したりすることで、操舵者の操舵による手入力にうねりが発生することはない。しかし、ジョイント角(交差角)の変化が検出できない場合や、必要なラック推力が、モータの最大推力を超えた場合、推力不足により、操舵者の操舵によるうねりが発生する。さらにラックエンド付近ではジョイントのトルク変動によって電動パワーステアリング装置の最大ラック推力を超えた推力Fmaxを超えた推力がラックに出力されることがある。すなわち、近年の電動パワーステアリング装置搭載車両の大型化に伴いモータも高出力化しているので、ラックの強度も限界付近で設計されている。このため、トルク変動による推力オーバーがラックを含めた電動パワーステアリング装置のトルク伝達部材の強度に大きな影響を及ぼすことになるという未解決の課題がある。
本発明の他の目的は、チルト角の変換に伴うトルク変動によって推力不足が発生した場合でも、操舵者の操舵による手入力の変動を低減することができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。本発明のさらに他の目的は、電動パワーステアリング装置の最大ラック推力を超えた推力がラックに出力されないように、トルク変動に応じたモータ制御を行うことができる電動パワーステアリング装置を提供することにある。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記電流指令値補正部は、前記トルク変動検出部で検出したトルク変動と前記操舵角検出部で検出した操舵角とに基づいて当該トルク変動による最大トルクが前記ステアリング機構のトルク伝達系における許容最大トルク以下となるように前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、請求項2に係る発明において、前記電流指令値補正手段は、算出した電流指令補正値を電流指令値に加算することを特徴としている。
また、電動パワーステアリング装置の最大許容トルクを超えた推力がトルク伝達系に出力されことを確実に防止しながら電動モータで発生する操舵補助力を最大まで有効に使用することかできるという効果が得られる。
図1は、本発明に一実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、ラック軸8cの両端にボールジョイント9aを介してタイロッド9が連結されていると共に、ギヤハウジング8aのラック軸8cを覆う筒状部8dの内周面にラック軸8cが操舵限界位置即ちラックストロークエンドに達したときに、ラック軸8cに取付けたボールジョイント9aの内側端面に形成した緩衝部材8eが当接するストッパ部材8fが形成されている。
このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図5に示して説明する。
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・αm(s) + Fr・sign(ωm(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ωm、回転角加速度αm、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを検出することができる。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Itに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Itを適用する。
一般に、2つのユニバーサルジョイント4及び6を使用する態様としては、図6(a)に示すように、軸心が平行な駆動軸S1及び被駆動軸S2を中間シャフトS3で連結する場合と、図6(b)に示すように、所定角度で交差する駆動軸S1及び被駆動軸S2を中間シャフトS3で連結する場合とがある。
しかしながら、図1に示すようなコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置においては、図7に模式的に示すように、ステアリングシャフト2を回転自在に支持するステアリングコラム3が手動又は自動のチルト機構18によってピボット位置Pを中心に垂直面内で所定のチルト角θtの範囲で上下動可能に構成されている。
このため、駆動軸S1に対する被駆動軸S2の角速度比は図9に示すように操舵角θに対して余弦波状に変化し、操舵角θが0°〜90°の範囲で加速し、90°〜180°の範囲で減速し、180°〜270°の範囲で再度加速し、270°〜360°の範囲で減速し、交差角αが大きい程振幅が大きくなる。
T2={ (1−sin2θ*sin2α)/(cosα)}*T1 ……(4)
したがって、トルク変動を示す変化量εは、入力軸トルクT1と出力軸トルクT2との比から下記(5)式で表される。
この(5)式から明らかなように、交差角αと操舵角θとを用いればトルク変動を求めることができる。このため、電動チルト機構を搭載した場合には、チルト角センサを備えているので、このチルト角センサで検出したチルト角θtを、例えばCAN(Controller Area Network)通信やその他の通信方式を用いて制御ユニットで受信するか、あるいは、チルトセンサで検出したチルト角θtを直接コントローラ15に入力し、コントローラ15でチルト角θtに基づいてジョイント角としての交差角αを推定することができ、推定した交差角αと操舵角θとに基づいて前述した(5)式からトルク変動を示す変化量εを求めることができる。
そこで、本実施形態では、チルト角θtの変化に伴うトルク変動を操舵トルクTと操舵角θとに基づいて検出して、検出したトルク変動と操舵トルクTとに基づいてトルク変動補正を実施する。
このため、操舵トルクTと操舵角θとを入力して操舵角に対するトルク変化量dT/dθを演算する。このdT/dθは、
dT/dθ=(∂T/∂t)(∂t/∂θ)=(∂T/∂t)(1/ω)……(6)
と表されるので、所定時間毎のトルクの変化量dT/dtを操舵角速度ωで割れば求めることができる。
トルク変動の変化量εは前述した(5)式で表されるので、このトルク変動の変化量εを下記(7)式で近似する。
ε=(cosα)/(1−sin2θ*sin2α)
≒Acos(θ+B)+C …………(7)
この(7)式のように前記(5)式を単純化して、最小自乗法等で係数である振幅を表すA及び位相を表すBと、必要に応じて係数Cを求める。ここで、操舵角θに対するトルク変動位置が予め分かっている場合にはトルク変動の振幅Aだけを算出するようにしてもよい。
振幅位相検出部42は、操舵角θに対するトルク変化量dT/dθに基づいて前述した(7)式の近似式に最小自乗法等を適用することにより、少なくともトルク変動の振幅Aと位相Bを求める。
モータ電流制御部25は、電動モータ12の各相コイルLu、Lv及びLwに供給されるモータ電流Iu、Iv及びIwを検出するモータ電流検出部60と、d−q軸電流指令値演算部24のから入力される電流指令値Iu*,Iv*及びIw*からモータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu、Iv及びIwを個別に減算して各相電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwを求める減算器61u、61v及び61wと求めた各相電流偏差ΔIu、ΔIv及びΔIwに対して比例積分制御を行って電圧指令値Vu、Vv及びVwを算出するPI電流制御部62とを備えている。
今、車両の走行を開始するために、イグニッションスイッチIGをオン状態とすることにより、コントローラ15に電源が投入されて、操舵補助制御処理が実行開始される。
このため、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクT、車速センサ16で検出した車速V、モータ電流検出部60u〜60wで検出したモータ電流検出値Iu〜Iw、回転角センサ17で検出したモータ回転角θmがコントローラ15に供給される。
一方、回転角センサ17で検出したモータ回転角θmが角速度演算部31に入力されてモータ角速度ωmが算出され、このモータ角速度ωmが角加速度演算部32に入力されてモータ角加速度αmが算出される。
このとき、車両が停止状態にあって、ステアリングホイール1が操舵されていない状態では、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが“0”であり、車速センサ16で検出される車速Vも“0”であるので、操舵補助トルク指令値演算部21で算出される操舵補助トルク指令値Irも“0”となっている。
このため、補償後操舵補助トルク指令値Itcが“0”であり、この補償後トルク指令値Itcがd−q軸電流指令値演算部24に供給されるので、このd−q軸電流指令値演算部24でモータ回転角θm及びモータ角速度ωmに基づいてd−q軸座標系での指令値演算が行われて、d軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*が算出され、これらd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*が2相/3相変換されて夫々“0”の3相電流指令値Iu*〜Iw*に変換されてモータ電流制御部25に出力される。
この第2の実施形態においては、上記第1の実施形態のようにトルク変動を抑制するように電流指令値を補正する場合に代えて、ユニバーサルジョイントで発生するトルク変動がトルク伝達系の最大許容トルク範囲内となるように電流指令値を制限するようにしたものである。
また、上記第2の実施形態のように、補償後電流指令値Itcの最大値だけを制限したい場合には、トルク変動の振幅Aを求めなくても、実験で求めた最大の振幅値を設定し、図15に示すように、トルク変化量算出部41で算出したトルク変化量dT/dθの符号を符号判定部81で判定し、符号が正であるか負であるか即ちトルク変動の振幅の向きに応じて電流制限値演算部82で位相の90度異なる電流制限値Iltを算出するようにしてもよい。この場合、トルク変動量dT/dθの符号によって電流制限値Iltの位相を90度変化させる理由は、ステアリングコラム3のチルト位置に応じてユニバーサルジョイント4及び6の交差角αが正負に変動すると、図9に示すトルク変動特性が“1.0”を中心に上下反転することになるため、図16に示すように、電流制限値Iltの位相もこれに応じて90°変更することにより、電流制限値Iltを反転させることができる(なお、ユニバーサルジョイントのトルク変動は図9のとおり、180°で1周期であるので、90°位相をずらすことによって上下反転する)。
さらに、上記実施形態においては、d−q軸電流指令値演算部24で算出したd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*を2相2相/3相変換した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2相/3相変換を省略し、これに代えてモータ電流検出部60の出力側に3相/2相変換部を設け、d軸電流Id及びq軸電流Iqに変換し、2つの減算部でd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*とモータのd軸電流Id及びq軸電流Iqとの偏差を算出し、電流制御部62で電流制御してから2相/3相変換するようにしてもよい。
次いで、ステップS8に移行して、操舵補助トルク指令値IrにステップS4〜S6で算出した収斂性補償値Ic、慣性補償値Ii及びセルフアライニングトルクSATを加算して補償後操舵補助電流指令値Itcを算出し、次いでステップS9で算出した補償後操舵補助電流指令補償値Itcに後述する電流指令補正値演算処理で算出した電流指令補正値Iaを加算してからステップS10に移行して、d−q軸電流指令値演算部24と同様のd−q軸指令値演算処理を実行してd軸目標電流Id*及びq軸目標電流Iq*を算出し、次いでステップS11に移行して2相/3相変換処理を行ってモータ電流指令値Iu*〜Iw*を算出する。
このステップS24では、前述した振幅位相検出部42と同様にトルク変動量dT/dθを前述した(7)式で近似し、最小自乗法等によって振幅A、位相Bを検出してからステップS25に移行して、前述した(7)式の演算を行って電流指令補正値Iaを算出してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
ここで、Rmはモータ巻線抵抗、K0はモータの起電力定数である。
さらに、上記各実施形態においては、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクTと操舵角センサ18で検出した操舵角θとに基づいて操舵角に対するトルク変動量dT/dθを検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、操舵トルクTに代えてトルク指令値演算部21で算出される操舵トルクTに応じた電流指令値Itと操舵角θとに基づいて操舵角に対するトルク変動量dT/dθを推定するようにしてもよい。
また、上記各実施形態においては、トルク変動量を精度良く推定するために、操舵トルクTが所定値以上(トルク変動も大きくなり検出しやすい)、且つ操舵角θが±1回転の範囲(操舵限界付近はトルクが急変するため除く)という条件のもとでトルク変動量を推定してもよい。
Claims (6)
- トルク伝達系にユニバーサルジョイントを有し転舵輪を転舵するステアリングホイールに入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、少なくとも前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータを駆動制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記ステアリング機構の操舵角を検出する操舵角検出部と、前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルク、前記電流指令値及びセルフアライニングトルクの何れか1つと、前記操舵角検出部で検出した操舵角とに基づいて前記ユニバーサルジョイントの交差角によるトルク変動を検出するトルク変動検出部と、該トルク変動検出部で検出したトルク変動と前記操舵角検出部で検出した操舵角とに基づいて前記電流指令値を補正する電流指令値補正部とを備えていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記電流指令値補正部は、前記トルク変動検出部で検出したトルク変動と前記操舵角検出部で検出した操舵角とに基づいて前記トルク変動を抑制する電流指令補正値を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値補正部は、前記トルク変動検出部で検出したトルク変動と前記操舵角検出部で検出した操舵角とに基づいて当該トルク変動による最大トルクが前記ステアリング機構のトルク伝達系における許容最大トルク以下となるように前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記トルク変動検出手段は、所定の操舵角範囲におけるトルク変動の振幅及び位相を検出し、前記電流指令値補正部は前記トルク変動の振幅及び位相と前記操舵角とに基づいて電流指令補正値を算出することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値補正手段は、算出した電流指令補正値を電流指令値に加算することを特徴とする請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記トルク変動検出手段は、操舵角に対するトルク変動位置が既知である場合に、所定の操舵角範囲におけるトルク変動の方向を検出し、前記電流指令値補正部は前記トルク変動の方向と操舵角とに基づいて電流指令制限値を算出することを特徴とする請求項3に記載の電動パワーステアリング装置。
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