JP6040778B2 - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、ステアリングホイールにより入力された操舵角の、トルク伝達経路でユニバーサルジョイントにより伝達される変化を考慮することなく、相対的な転舵輪の転舵角を算出して、転舵輪の転舵角を算出する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、アシストトルクを出力するアクチュエータを適切に制御することが可能な車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法を提供することを課題とする。
このため、トルク変動に応じた入出力トルク比に基づいて、アシストトルクの指令値を算出することが可能となり、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、運転者の操舵操作に対してアクチュエータを適切に制御することが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態の車両用操舵制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両は、SBWシステムを適用した車両である。
転舵モータ2は、転舵モータ制御部4が出力する転舵モータ駆動電流に応じて駆動する電動モータであり、上述した目標転舵角に応じて回転して、転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータを形成する。また、転舵モータ2は、転舵モータ駆動電流に応じて駆動することにより、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する。なお、転舵アクチュエータとしては、電動モータ以外に、動力シリンダーや、ソレノイドを備えた油圧回路等を用いることが可能である。
転舵モータ出力軸12の先端側には、ピニオンギヤを用いて形成した転舵出力歯車12aを設けてある。
転舵出力歯車12aは、ステアリングラック14に挿通させたラック軸18の両端部間に設けたラックギヤ18aと噛合する。
転舵モータ角度センサ16は、転舵モータ2の回転角である転舵モータ回転角を検出し、この検出した転舵モータ回転角を含む情報信号を、転舵モータ制御部4を介して、反力モータ制御部10へ出力する。
ステアリングラック14は、円筒形状に形成してあり、転舵モータ出力軸12の回転、すなわち、転舵出力歯車12aの回転に応じて車幅方向へ変位するラック軸18を挿通させる。
タイヤ軸力センサ26は、ラック軸18の軸方向(車幅方向)に作用する軸力を検出し、この検出した軸力(以降の説明では、「タイヤ軸力」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
また、転舵モータ制御部4は、転舵位置サーボ制御部30と、転舵側前回処理内容記憶部MAを有する。
転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ2を駆動させるための転舵モータ駆動電流を演算し、この演算した転舵モータ駆動電流を、転舵モータ2へ出力する。
転舵モータ駆動電流の演算は、反力モータ制御部10が出力する転舵モータ電流指令と、実際に転舵モータ2へ通電している電流(転舵モータ実電流)の指令値(以降の説明では、「転舵モータ実電流指令It」と記載する場合がある)に基づいて行う。具体的には、転舵モータ実電流指令Itを用いて転舵モータ電流指令を補正し、転舵モータ駆動電流を演算する。
なお、転舵モータ実電流指令Itは、例えば、転舵モータ2に基板温度センサ(図示せず)を内蔵し、この内蔵した基板温度センサを用いて計測する。
そして、上記のように採用した転舵モータ実電流指令Itを用いて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。
なお、転舵側前回処理内容記憶部MAに関する説明は、後述する。
ここで、クラッチ6の状態を開放状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達されない状態とする。一方、クラッチ6の状態を締結状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に連結させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達される状態とする。
操舵角センサ34は、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵角センサ34は、ステアリングホイール32の現在の回転角(操舵角)である現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ34は、検出したステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θH」と記載する場合がある。
操舵トルクセンサ36は、操舵角センサ34と同様、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
なお、反力モータ8及び反力モータ角度センサ38に関する説明は、後述する。
転舵輪側クラッチ板40bは、ピニオン軸44の一端に取り付けてあり、ピニオン軸44と共に回転する。
ピニオン軸44の他端は、ピニオン46内に配置してある。
ピニオン軸トルクセンサ46tは、ピニオン軸44に加わるトルクであるピニオン軸トルクを検出する。そして、ピニオン軸トルクセンサ46tは、検出したピニオン軸トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、ピニオン軸トルクを、「トルクセンサ値Vtp」と記載する場合がある。
ステアリングギヤは、ピニオン軸44と共に回転する。すなわち、ステアリングギヤは、ピニオン軸44を介して、転舵輪側クラッチ板40bと共に回転する。
また、反力モータ角度センサ38は、反力モータ8の回転角を検出し、この検出した回転角(以降の説明では、「反力モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ制御部10は、転舵モータ制御部4と、通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。これに加え、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して、車速センサ50及びエンジンコントローラ52が出力する情報信号の入力を受ける。
また、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して入力を受けた情報信号や、各種センサから入力を受けた情報信号に基づき、反力モータ8を駆動制御する。
エンジンコントローラ52(エンジンECU)は、エンジン(図示せず)の状態(エンジン駆動、または、エンジン停止)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
また、反力モータ制御部10は、指令演算部54と、反力サーボ制御部56と、クラッチ制御部58と、反力側前回処理内容記憶部MBを有する。
なお、指令演算部54の詳細な構成についての説明は、後述する。
反力サーボ制御部56は、反力モータ8を駆動させるための反力モータ駆動電流を反力モータ8へ出力する。
また、反力サーボ制御部56は、実際に反力モータ8へ通電している電流(反力モータ実電流)の値(以降の説明では、「反力モータ電流値Ih」と記載する場合がある)を計測する。
また、反力サーボ制御部56は、計測した反力モータ電流値Ihに基づいて、反力モータ8の温度Thを推定する。なお、反力モータ8の温度Thの推定は、例えば、転舵位置サーボ制御部30が行う転舵モータ2の温度Ttの推定と、同様の手順で行う。
クラッチ制御部58は、指令演算部54が出力するクラッチ電流指令(後述)に基づいて、開放状態のクラッチ6を締結状態へ切り替えるために必要な電流を、クラッチ駆動電流として演算する。そして、演算したクラッチ駆動電流を、クラッチ6へ出力する。
なお、反力側前回処理内容記憶部MBに関する説明は、後述する。
図3は、SBWシステムのステアリング構造を示す図である。
ステアリングホイール32は、ステアリングシャフト42の一端に連結してある。
ステアリングシャフト42は、ステアリングコラム5によって回転自在に保持されている。
また、ステアリングシャフト42の他端は、ユニバーサルジョイント7を介して操舵側中間シャフト9の一端に連結している。
反力モータ8は、転舵角に応じて転舵輪側からステアリングホイール方向へ伝達される路面反力に応じた反力トルクをステアリングシャフト42へ付与する。これにより、クラッチ6が解放されているときであっても、運転者は、転舵状態に応じた路面反力を把握できる。
クラッチ入力軸13の他端は、クラッチ6を介してクラッチ出力シャフト17の一端に同軸で対向しており、クラッチ6は、クラッチ入力軸13とクラッチ出力シャフト17との断続(締結及び遮断)を行う。
クラッチ出力シャフト17の他端は、ユニバーサルジョイント19を介して転舵側中間シャフト21の一端に連結してある。
操舵側中間シャフト9、及び転舵側中間シャフト21は、夫々、軸方向に伸縮可能に構成してある。
クラッチ6は、ブラケット43を介してダッシュパネル45に固定してある。
次に、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、指令演算部54の詳細な構成について説明する。
図4は、指令演算部54の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、指令演算部54は、中立位置記憶部60と、転舵モータ電流指令演算部62と、クラッチ状態切り替え部64を備える。これに加え、指令演算部54は、操舵側クラッチ角算出部66と、転舵側クラッチ角算出部68と、クラッチ角偏差算出部70と、クラッチ角偏差記憶部72と、転舵角記憶部74と、転舵角算出部76と、EPS制御ブロック78を備える。
クラッチ状態切り替え部64は、エンジンコントローラ52からエンジンの状態を含む情報信号の入力を受ける。
ここで、本実施形態の操舵側クラッチ角算出部66は、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、操舵側ユニバーサルジョイントを介してクラッチ6へ伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、操舵側クラッチ角を算出する。なお、操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
クラッチ角偏差算出部70は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、クラッチ角偏差算出部70は、操舵側クラッチ角算出部66から、操舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。さらに、クラッチ角偏差算出部70は、転舵側クラッチ角算出部68から、転舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。
クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受ける。
転舵角記憶部74は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角記憶部74は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
転舵角算出部76は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角算出部76は、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受ける。また、転舵角算出部76は、操舵トルクセンサ36から、トルクセンサ値Vtsを含む情報信号の入力を受ける。
ここで、上記のユニバーサルジョイント変化角とは、操舵角センサ34が検出した現在操舵角に基づき、トルク伝達経路上で、予め転舵角算出部76が記憶したモデルを用いて算出した角度である。なお、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理と、転舵角算出部76が記憶したモデルについては、後述する。
ここで、転舵モータ電流指令の演算は、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHと、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角と、車速センサ50が検出した車速と、転舵モータトルクセンサ2tが検出したトルクセンサ値Vtmに基づいて行なう。
なお、EPS制御ブロック78の詳細な構成については、後述する。
以下、図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する具体的な処理について説明する。
図5は、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。
クラッチ角偏差を算出する処理では、操舵側クラッチ角算出部66により操舵側クラッチ角θcl_inを算出し、転舵側クラッチ角算出部68により転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。そして、転舵側クラッチ角θcl_outから操舵側クラッチ角θcl_inを減算した値を、クラッチ角偏差dθCLとして算出(図5中に示す「dθCL=θcl_out−θcl_in」)する。
・操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理
操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、操舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、操舵側クラッチ角算出部66に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチがオフ状態となると、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして以下の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。なお、以下の式(1)は、各ユニバーサルジョイントの出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを示す式である。また、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理については、後述する。
したがって、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵輪側入力角と転舵輪側出力角の関係を示すモデル式となる。ここで、操舵輪側入力角は、ユニバーサルジョイントへステアリングホイール32側から入力した角度であり、転舵輪側出力角は、ユニバーサルジョイントを介して操舵輪側入力角を転舵輪24側へ出力した角度である。
また、ジョイント角α1の算出は、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)で行なう。
また、図6中では、横軸に操舵角(図中では、「操舵角[deg]」と記載する)を示し、縦軸にピニオン46の角度(ピニオン角)と操舵角との偏差(図中では、「偏差角[deg]」と記載する)を示す。
そして、ジョイント角α1を算出する際には、例えば、ステアリングホイール32の操舵角を変化させて、波形マップ中の偏差角[deg]を変化させる。この場合、操舵角を変化させて偏差角[deg]の上限値及び下限値を検出し、これらの検出した上限値及び下限値に基づいて、ジョイント角α1を算出する。
すなわち、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetを算出する際には、上記の式(1)中に示す「θoffset」が、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset1」と記載する場合がある。
また、位相角θoffsetを検出する際には、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)とする。
ここで、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する際には、上記の式(1)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント11の入力側の軸(操舵側中間シャフト9)とユニバーサルジョイント11の出力側の軸(クラッチ入力軸13)がなす角度となる。なお、以降の説明では、操舵側中間シャフト9とクラッチ入力軸13とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント11のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α2」と記載する場合がある。
以上により、操舵側クラッチ角算出部66は、予め設定した操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を入力して、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する。
E1.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α1を入力し、「θoffset」として位相角θoffset1を入力したモデル式
E2.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α2を入力し、「θoffset」として位相角θoffset2を入力したモデル式
転舵側クラッチ角算出部68が転舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして以下の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する。なお、以下の式(2)は、各ユニバーサルジョイントの逆出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを示す式である。
ここで、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶させておく。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを、ユニバーサルジョイント19の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを、転舵側クラッチ角θcl_outとして算出する。
なお、上記の説明では、式(1)及び(2)を用いて処理を行ったが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、現在操舵角と操舵側クラッチ角θcl_inとの関係を示すマップと、転舵モータ回転角と転舵側クラッチ角θcl_outとの関係を示すマップを用いて処理を行ってもよい。
以下、図1から図6を参照しつつ、図7を用いて、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する具体的な処理について説明する。
図7は、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。
転舵輪24の転舵角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵角算出用トルク閾値は、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵角算出部76に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチをオン状態とした時点において操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力する。これにより、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。
ここで、転舵輪24の転舵角を算出する処理では、クラッチ角偏差記憶部72が記憶しているクラッチ角偏差dθCLに、上記のように算出した操舵側クラッチ角θcl_inを加算する。これにより、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出(図7中に示す「Pθcl_out=θcl_in+dθCL」)する。すなわち、転舵角算出部76は、転舵輪24の転舵角を算出する際に、クラッチ角偏差記憶部72から記憶しているクラッチ角偏差dθCLの情報を取得する。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント19の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント23の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出する。
ここで、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵角算出部76に記憶させておく。
これに加え、転舵輪24の転舵角を算出する処理では、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を除算したユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、上述したトルクセンサ値Vtpに基づいて補正する。
ねじれ角=トルクセンサ値Vtp[Nm]/各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじり剛性[Nm/rad] … (4)
ここで、トルクセンサモデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵角算出部76に記憶させておく。
なお、本実施形態では、一例として、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじれ角を用いて補正する際に、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutにねじれ角を加算する場合を説明する。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、予め設定した転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを入力した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
E3.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α3を入力し、「θoffset」として位相角θoffset3を入力したモデル式
E4.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α4を入力し、「θoffset」として位相角θoffset4を入力したモデル式
したがって、操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルと、転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、上記の式(1)で示すユニバーサルジョイント出力角算出モデルに基づくモデル式である。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、トルクセンサモデルを用いて算出したトルク伝達経路のねじれ角を用いて補正する。そして、この補正した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
以下、図1から図7を参照しつつ、図8及び図9を用いて、EPS制御ブロック78の詳細な構成について説明する。
図8中に示すように、EPS制御ブロック78は、トルク比推定部80と、トルク比マップ生成部82と、トルク比マップ記憶部84と、アシストトルク算出部86を備える。なお、図8は、EPS制御ブロック78の構成を示すブロック図である。
トルク比推定部80は、ステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号と、転舵モータ回転角を含む情報信号と、トルクセンサ値Vtpを含む情報信号の入力を受ける。
また、トルク比推定部80は、位相補正値算出部88と、トルク変動抑制電流演算部90を備える。
トルク変動抑制電流演算部90は、位相補正値算出部88が算出した位相補正値及びトルクセンサ値Vtpに基づき、入出力トルク比を演算するために位相補正値に掛ける電流値であるトルク変動抑制電流を演算する。なお、トルク変動抑制電流演算部90がトルク変動抑制電流を演算する処理については、後述する。
そして、トルク比マップ生成部82は、トルク伝達経路に入力された現在操舵角と、現在操舵角に対応する入出力トルク比との関係を示す入出力トルク比マップを生成する。
また、図9中に示すように、入出力トルク比マップは、現在操舵角が0[°]〜180[°]まで変化する間で、入出力トルク比の変化が一周期となるマップである。すなわち、現在操舵角に対する入出力トルク比は、現在操舵角が0[°]〜180[°]まで変化する間で一周期分の変動を生じる。
トルク比マップ記憶部84は、トルク比マップ生成部82から、入出力トルク比マップを含む情報信号の入力を受ける。これに加え、トルク比マップ記憶部84は、クラッチ角偏差記憶部72から、クラッチ角偏差を更新した内容を含む情報信号の入力を受ける。
また、トルク比マップ記憶部84は、クラッチ角偏差を更新した内容を含む情報信号の入力を受けると、トルク比マップ生成部82から入力を受けた情報信号に基づいて、記憶している入出力トルク比マップを更新する。
アシストトルク算出部86は、ステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号と、転舵モータ回転角を含む情報信号と、トルクセンサ値Vtpを含む情報信号と、車速を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、アシストトルク算出部86は、トルク比推定部80から、入出力トルク比を含む情報信号の入力を受ける。さらに、アシストトルク算出部86は、トルク比マップ記憶部84から、記憶している入出力トルク比マップを含む情報を取得する。
ここで、アシストトルクは、EPS制御中に、ステアリングホイール32の操舵状態に応じて、転舵輪24の転舵を転舵モータ2により補助(アシスト)するためのトルクである。
すなわち、アシストトルク算出部86は、トルクセンサ値Vtpと、トルク比推定部80が演算した入出力トルク比及びトルク比マップ記憶部84が記憶している入出力トルク比マップのうち、少なくとも一方に基づいて、アシストトルクの指令値を算出する。
また、本実施形態のアシストトルク算出部86は、トルクセンサ値Vtpをトルク比推定部80が演算した入出力トルク比により補正して、アシストトルクの指令値を算出する。
以下、図1から図9を参照しつつ、図10から図12を用いて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理について説明する。
図10は、単体のユニバーサルジョイントが有する回転軸と、回転軸周りの回転運動との関係を示す図である。なお、図10中には、説明のために、ステアリングホイール32を模式的に示している。すなわち、図10中に示す単体のユニバーサルジョイントは、ユニバーサルジョイント7を示す。
また、車両の構成としては、ステアリングホイール32と転舵輪24との間における各種構成部品のレイアウト等に応じて、各ユニバーサルジョイントの入力軸と出力軸を直列に配列することは少ない。このため、ユニバーサルジョイントの位相角θoffsetが存在する構成が一般的である。
したがって、上記の式(15)で示す、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの関係に対して、入力角tanθInに位相角θoffsetを加算すると、上記の式(1)で示されるユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する。
以下、図1から図12を参照して、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する原理について説明する。
転舵輪24の転舵角を算出する際には、上述したように、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。したがって、上記の式(15)において、ユニバーサルジョイントの入力角tanθIn及び出力角θoutを0[°]とすると、以下の式(16)からオフセット成分を減算することにより、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。
以下、図1から図12を参照して、転舵側前回処理内容記憶部MAの構成と、反力側前回処理内容記憶部MBの構成について説明する。
転舵側前回処理内容記憶部MAは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read‐Only Memory)を用いて形成する。
そして、転舵側前回処理内容記憶部MAは、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
また、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、エンジンコントローラ52、操舵角センサ34、クラッチ角偏差算出部70、転舵角算出部76から、それぞれ、情報信号の入力を受ける。
そして、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
次に、図1から図12を参照しつつ、図13から図15を用いて、指令演算部54が行なう処理について説明する。
指令演算部54が行なう処理としては、例えば、車両の出荷前に行なう処理と、出荷後の車両に対して行なう処理がある。
図13は、車両の出荷前に行なう処理を示すフローチャートである。
指令演算部54が車両の出荷前に行なう処理としては、ジョイント角αを算出及び記憶する処理と、位相角θoffsetを記憶する処理がある。
図13中に示すように、車両の出荷前に行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS10の処理を行う。
ステップS20では、ジョイント角α1〜α4を算出し、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶(図中に示す「ジョイント角αを算出・記憶」)する。ステップS20において、ジョイント角αを算出及び記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS30へ移行する。
ステップS40では、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差を、操舵角と転舵モータ回転角との関係として、中立位置記憶部60に記憶(図中に示す「中立位置を記憶」)する。ステップS40において、操舵角と転舵モータ回転角との関係を記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
出荷後の車両に対して指令演算部54が行なう処理としては、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理と、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理がある。
図14は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理を示すフローチャートである。なお、指令演算部54は、予め設定した周期(例えば、5[ms])で、以下に説明する処理を行う。
図14中に示すように、クラッチ角偏差を算出する処理を開始(START)すると、まず、ステップS100の処理を行う。
ステップS100において、イグニッションスイッチがオフ状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110へ移行する。
一方、ステップS100において、イグニッションスイッチがオフ状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS100の処理を繰り返す。
ステップS110において、クラッチ6が締結状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS110において、クラッチ6が締結状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110の処理を繰り返す。
ステップS120において、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS130へ移行する。
ステップS130では、操舵側クラッチ角算出部66により、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて、操舵側クラッチ角θcl_inを算出(図中に示す「操舵側クラッチ角θcl_inを算出」)する処理を行う。ステップS130において、操舵側クラッチ角θcl_inを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS140へ移行する。
ステップS140において、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS150へ移行する。
ステップS150では、転舵側クラッチ角算出部68により、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵側クラッチ角θcl_outを算出(図中に示す「転舵側クラッチ角θcl_outを算出」)する処理を行う。ステップS150において、転舵側クラッチ角θcl_outを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS160へ移行する。
ステップS170では、クラッチ角偏差記憶部72が、ステップS160で算出したクラッチ角偏差dθCLを記憶(図中に示す「クラッチ角偏差dθCLを記憶」)する処理を行う。ステップS170において、クラッチ角偏差dθCLを記憶すると、クラッチ角偏差を算出する処理は終了(END)する。
図15は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理を示すフローチャートである。
図15中に示すフローチャートは、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態となると開始(START)し、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200において、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS210へ移行する。
ステップS210では、イグニッションスイッチをオン状態とした時点の現在操舵角を、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。これにより、ステップS210では、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出(図中に示す「操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出」)する処理を行う。ステップS210において、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS220へ移行する。
ステップS260において、出荷後偏差と出荷前偏差が異なる(図中に示す「Yes」)と判定した場合、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS270へ移行する。
ステップS270では、ステップS40で中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を、ステップS250で補正した出荷後偏差に基づく関係に補正(図中に示す「中立位置を補正」)する処理を行う。ステップS270において、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正すると、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS290へ移行する。
以下、図1から図15を参照しつつ、図16から図19を用いて、EPS制御ブロック78が行なう処理のうち、トルク比推定部80が行なう処理について説明する。
図16は、トルク比推定部80が行なう処理を示すフローチャートである。
図16中に示すフローチャートを開始(START)すると、まず、ステップS300の処理として、イグニッションスイッチをオン状態に維持しつつ、クラッチ6を締結状態(図中に示す「クラッチ締結」)とする処理を行う。なお、ステップS300では、クラッチ6を、滑り締結状態を含まない完全締結状態とする処理を行う。ステップS300において、クラッチ6を締結状態とすると、トルク比推定部80が行なう処理は、ステップS310へ移行する。
ステップS310において、クラッチ角偏差dθCLが更新されていない(図中に示す「No」)と判定した場合、トルク比推定部80が行なう処理は、ステップS320へ移行する。
ステップS320では、クラッチ角偏差算出部70によりクラッチ角偏差dθCLを算出(図中に示す「クラッチ角偏差算出」)する処理を行う。ステップS320において、クラッチ角偏差dθCLを算出すると、トルク比推定部80が行なう処理は、ステップS330へ移行する。なお、クラッチ角偏差dθCLを算出する処理としては、例えば、イグニッションスイッチをオン状態としてクラッチ6を締結状態とした時点の現在操舵角及び転舵モータ回転角を用いる点を除き、上述したステップS120〜S160と同様の処理を用いる。
ステップS340では、操舵角センサ34により、クラッチ6を締結状態とした時点の現在操舵角θHを検出(図中に示す「現在操舵角検出」)する処理を行う。ステップS340において、現在操舵角θHを検出すると、トルク比推定部80が行なう処理は、ステップS350へ移行する。
また、ステップS360で算出したトルクセンサ推定入力角f(θH)は、トルク伝達経路から出力される出力角であり、全ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のピニオン角を形成する。
また、操舵トルクと入出力角偏差との間に発生する45[deg]の位相遅れは、電気角に換算すると90[deg]の位相遅れである。また、操舵トルクと入出力角偏差との間に発生する45[deg]の位相遅れは、ステアリングホイール32から入力した操舵角を、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)を介してピニオン46に伝達する際に発生する。
そして、トルクセンサ推定入力角f(θH)に基づいて算出した位相補正値は、図18中に示すように、その最大値(ピーク値)点P3が、操舵トルクの最大値と近似することとなる。
また、図18中では、横軸に操舵角(図中では、「操舵角[deg]」と記載する)を示す。さらに、図18中では、右側の縦軸に操舵トルク(図中では、「操舵トルク[Nm]」と記載する)を示し、左側の縦軸に入出力角偏差(図中では、「入出力角偏差[deg]」と記載する)を示す。また、図18中では、位相補正値を一点鎖線L3で示す。
そして、ステップS390で演算したトルク変動抑制電流は、図19中に示すように、ステップS370で算出した位相補正値に対して、操舵角に応じた互いの最大値(ピーク値)が近似することとなる。また、トルク変動抑制電流の変位幅(図中における上下方向への変位幅)は、位相補正値の変位幅よりも小さいものとなる。
また、図19中では、横軸に操舵角(図中では、「操舵角[deg]」と記載する)を示す。さらに、図19中では、右側の縦軸に操舵トルク(図中では、「操舵トルク[Nm]」と記載する)を示し、左側の縦軸に入出力角偏差(図中では、「入出力角偏差[deg]」と記載する)を示す。また、図19中では、トルク変動抑制電流を二点鎖線L4で示し、補正操舵トルクを点線L5で示す。なお、補正操舵トルクに関する説明は、後述する。
ステップS410では、ステップS400で生成した補正操舵トルクを用いて、入出力トルク比を演算(図中に示す「入出力トルク比を演算」)する処理を行う。ステップS410において、入出力トルク比を演算すると、トルク比推定部80が行なう処理は終了(END)する。
本実施形態では、位相補正値算出部88が、全ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のピニオン角を、機械角で45[deg]遅延させて、位相補正値を算出する。
これに加え、トルク比推定部80は、トルクセンサ推定入力角f(θH)と位相補正値との差分を算出し、この算出した差分に基づいて、入出力トルク比を演算する。
また、トルク比推定部80は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outをユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力した値に基づいて、入出力トルク比を演算する。
また、アシストトルク算出部86は、クラッチ6を連結状態に切り替えた状態でトルク比推定部80が演算した入出力トルク比に基づいて、アシストトルクの指令値を算出する。
次に、図1から図19を参照しつつ、図20を用いて、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。なお、図20は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
図20中に示すタイムチャートは、車両の走行中等、イグニッションスイッチがオン状態であり、トルク伝達経路を機械的に分離させて、SBWシステムの制御を実施している状態(図中に示す「SBWシステム制御中」)からスタートする。なお、SBWシステムの制御とは、例えば、高速走行時には低速走行時よりも操舵角に対する転舵角の変化度合いを減少させる制御(可変ギヤ制御)等、車速に応じた転舵角の制御である。また、SBWシステムの制御は、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係と、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHと、車速センサ50が検出した車速を用いて行なう。
時点t1で行なう処理は、クラッチ6を連結状態(図中に示す「クラッチ締結」)に切り替えてトルク伝達経路を機械的に連結し、さらに、クラッチ角偏差dθCLを算出・記憶する処理である。これに加え、時点t1では、入出力トルク比を演算する処理を行なう。
EPS制御を実施している状態(図中に示す「EPSシステム制御中」)から、EPS制御からSBWシステムによる制御へ切り替えた時点t2で、SBWシステム制御の起動時における処理(図中に示す「SBWシステム起動時の処理」)を行う。
なお、EPS制御からSBWシステムによる制御へ切り替えは、例えば、運転者が制御切り替えスイッチを操作すると行なう。
そして、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理を終了すると、連結状態のクラッチ6を開放状態に切り替え、SBWシステムの制御を開始(図中に示す「SBWシステム制御中」)する。
そして、算出した入出力トルク比と、トルク比マップ記憶部84が記憶している入出力トルク比マップのうち、少なくとも一方を用いてアシストトルクの指令値を算出し、算出したアシストトルクの指令値に基づいてEPS制御を実施する。
したがって、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、トルク伝達経路へ入力する操舵角の変化に応じた入出力トルク比を算出することが可能となる。このため、ユニバーサルジョイントの不等速性によりトルク伝達経路に発生するトルク変動を推定することが可能となり、EPS制御において、運転者の操舵操作に対して転舵角を適切に制御することが可能となる。
また、上述した転舵モータ角度センサ16は、転舵アクチュエータ回転角検出部に対応する。
また、上述したピニオン軸トルクセンサ46tは、操舵トルク検出部に対応する。
また、上述したように、本実施形態の車両用操舵制御装置1の動作で実施する車両用操舵制御方法は、トルクセンサ値Vtpと入出力トルク比に基づいて、アシストトルクの指令値を算出する方法である。ここで、入出力トルク比は、トルクセンサ推定入力角f(θH)を、さらに、機械角で45[deg]位相変位させて算出した位相補正値に基づいて演算する。
本実施形態では、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)位相補正値算出部88が、トルクセンサ推定入力角f(θH)を、さらに、機械角で45[deg]位相変位させてなる位相補正値を算出する。これに加え、トルク比推定部80が、位相補正値算出部が算出した位相補正値に基づいて、入出力トルク比を演算し、アシストトルク算出部86が、トルクセンサ値Vtpと入出力トルク比に基づいて、アシストトルクの指令値を算出する。
その結果、EPS制御において、トルク変動に応じた入出力トルク比に基づき、アシストトルクの指令値を算出することが可能となる。これにより、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、運転者の操舵操作に対して転舵モータ2を適切に制御することが可能となる。
このため、操舵トルクと入出力角偏差との間に発生する機械角で45[deg]の位相遅れに対し、操舵角の変化に応じた位相補正値の最大値と操舵トルクの最大値を近似させることが可能となる。
その結果、互いに近似した操舵トルクと位相補正値の最大値(ピーク値)に応じて、トルク変動を推定することが可能となる。
その結果、互いに近似した操舵トルクと位相補正値の最大値(ピーク値)の差分に応じて、トルク変動を推定することが可能となる。
その結果、クラッチ6の連結状態における締結角度が変化した場合であっても、トルク伝達経路に発生したトルク変動に応じて、運転者の操舵操作に対して転舵モータ2を適切に制御することが可能となる。
その結果、クラッチ6の連結状態における締結角度が変化した場合であっても、入出力トルク比マップの特性に応じて、運転者の操舵操作に対して転舵モータ2を適切に制御することが可能となる。
その結果、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、入出力トルク比の一周期分の変動を示す入出力トルク比マップに基づいて、トルク変動を推定することが可能となる。
その結果、EPS制御において、操舵角の変化に応じた最大値がトルクセンサ値Vtpと近似しているとともに、操舵角の変化に応じた変位量が抑制された操舵トルクを用いて演算した入出力トルク比に基づき、アシストトルクの指令値を算出することが可能となる。
このため、運転者がステアリングホイール32に加えているトルクをトルク伝達経路に発生したトルク変動に応じて補正し、アシストトルクの指令値を算出することが可能となる。
その結果、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、運転者がステアリングホイール32に加えているトルク及びトルク変動に応じて、運転者の操舵操作に対して転舵モータ2を適切に制御することが可能となる。
このため、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、操舵角に応じて変化する最大値(ピーク値)が操舵トルクと近似する位相補正値に基づいて演算した入出力トルク比に応じて、トルク変動を推定することが可能となる。
その結果、EPS制御において、トルク変動に応じた入出力トルク比に基づき、アシストトルクの指令値を算出することが可能となる。これにより、トルク伝達経路にトルク変動が発生した場合であっても、運転者の操舵操作に対して転舵モータ2を適切に制御することが可能となる。
(1)本実施形態では、トルク伝達経路が四つのユニバーサルジョイント(7,11,19,23)を備える構成としたが、これに限定するものではなく、ユニバーサルジョイントの数は、例えば、車両のレイアウト等に応じた数であればよい。
この場合、例えば、操舵側ユニバーサルジョイントと転舵側ユニバーサルジョイントを、共に一つのユニバーサルジョイントのみで形成した場合、転舵輪24の転舵角は、以下の式(17)を用いて算出する。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角に、転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のオフセット成分を加算した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角から、トルクセンサ値Vtp及びトルクセンサモデルに基づき、転舵側シャフト及び転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のねじれ角を減算した値を算出する。そしてこの算出した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。なお、上記の転舵側シャフトとは、クラッチ出力シャフト17、転舵側中間シャフト21、ピニオンシャフト25である。
この場合、トルク比推定部80が入出力トルク比を演算する処理は、ステップS300からステップS330の処理を行なわない(図16参照)。すなわち、トルク比推定部80が入出力トルク比を演算する処理を開始すると、ステップS340の処理を行う。
2 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
2t 転舵モータトルクセンサ
4 転舵モータ制御部
6 クラッチ
7,11 ユニバーサルジョイント(操舵側ユニバーサルジョイント)
19,23 ユニバーサルジョイント(転舵側ユニバーサルジョイント)
8 反力モータ(反力アクチュエータ)
10 反力モータ制御部
16 転舵モータ角度センサ
24 転舵輪
32 ステアリングホイール
34 操舵角センサ
40 クラッチ板
42 ステアリングシャフト
44 ピニオン軸
46 ピニオン
46t ピニオン軸トルクセンサ
50 車速センサ
52 エンジンコントローラ
54 指令演算部
56 反力サーボ制御部
58 クラッチ制御部
60 中立位置記憶部
62 転舵モータ電流指令演算部
64 クラッチ状態切り替え部
66 操舵側クラッチ角算出部
68 転舵側クラッチ角算出部
70 クラッチ角偏差算出部
72 クラッチ角偏差記憶部
74 転舵角記憶部
76 転舵角算出部
78 EPS制御ブロック
80 トルク比推定部
82 トルク比マップ生成部
84 トルク比マップ記憶部
86 アシストトルク算出部
88 位相補正値算出部
90 トルク変動抑制電流演算部
MA 転舵側前回処理内容記憶部
MB 反力側前回処理内容記憶部
Claims (9)
- ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントと、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて回転し前記転舵輪の転舵を補助するためのトルクであるアシストトルクを出力するアクチュエータと、を備える車両用操舵制御装置であって、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記ステアリングホイールに加わるトルクである操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、
前記操舵角検出部が検出した操舵角を予め設定したユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力した値に基づいて算出される前記ユニバーサルジョイントのピニオン角を、さらに機械角で45[deg]位相変位させてなる位相補正値を算出する位相補正値算出部と、
前記位相補正値算出部が算出した位相補正値に基づいて、前記ユニバーサルジョイントに入力された操舵角と、前記入力された操舵角に基づき前記ユニバーサルジョイントから出力される出力角と、の比に基づく入出力トルク比を演算するトルク比推定部と、
前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクと、前記トルク比推定部が演算した入出力トルク比と、に基づいて前記アシストトルクの指令値を算出するアシストトルク算出部と、を備え、
前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記ユニバーサルジョイントへ前記ステアリングホイール側から入力した角度である操舵輪側入力角と、前記ユニバーサルジョイントを介して前記操舵輪側入力角を前記転舵輪側へ出力した角度である転舵輪側出力角と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 前記位相補正値算出部は、前記ピニオン角を、さらに機械角で45[deg]遅延させて、前記位相補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
- 前記トルク比推定部は、前記ピニオン角と前記位相補正値算出部が算出した位相補正値との差分を算出し、当該算出した差分に基づいて、前記入出力トルク比を演算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両用操舵制御装置。
- 前記アシストトルクを出力するアクチュエータを、前記転舵輪を転舵させる転舵アクチュエータとし、
前記トルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する連結状態と、を切り替えるクラッチと、
前記操舵角検出部が検出した操舵角が操舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチへ伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記ステアリングホイール側における回転角である操舵側クラッチ角を算出する操舵側クラッチ角算出部と、
前記転舵アクチュエータの回転角である転舵アクチュエータ回転角を検出する転舵アクチュエータ回転角検出部と、
前記転舵アクチュエータ回転角検出部が検出した転舵アクチュエータ回転角が転舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチへ伝達された回転角である転舵側逆出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記転舵輪側における回転角である転舵側クラッチ角を算出する転舵側クラッチ角算出部と、
前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角と前記転舵側クラッチ角算出部が算出した転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出するクラッチ角偏差算出部と、を備え、
前記トルク比推定部は、前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角に前記クラッチ角偏差算出部が算出したクラッチ角偏差を加算した転舵角算出用転舵側クラッチ角を前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力した値に基づいて、前記入出力トルク比を演算し、
前記アシストトルク算出部は、前記クラッチを連結状態に切り替えた状態で前記トルク比推定部が演算した入出力トルク比に基づいて、前記アシストトルクの指令値を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記操舵角検出部が検出した操舵角と、当該操舵角に対応する前記入出力トルク比と、の関係を示す入出力トルク比マップを生成するトルク比マップ生成部と、
前記トルク比マップ生成部が生成したトルク比マップを記憶するトルク比マップ記憶部と、を備え、
前記トルク比マップ記憶部は、前記クラッチ角偏差算出部が算出したクラッチ角偏差が変化すると、前記記憶しているトルク比マップを前記変化したクラッチ角偏差に対応する入出力トルク比マップに変更し、
前記アシストトルク算出部は、前記トルク比マップ記憶部が記憶している入出力トルク比マップに基づいて、前記アシストトルクの指令値を算出することを特徴とする請求項4に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記操舵角検出部が検出した操舵角と、当該操舵角に対応する前記入出力トルク比と、の関係を示す入出力トルク比マップを生成するトルク比マップ生成部を備え、
前記トルク比マップ生成部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が180度の変化幅で変化する間に前記トルク比推定部が演算した入出力トルク比の変動と、前記操舵角検出部が検出した操舵角と、を対応させて、前記入出力トルク比マップを生成し、
前記アシストトルク算出部は、前記トルク比マップ生成部が生成した入出力トルク比マップに基づいて、前記アシストトルクの指令値を算出することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記トルク比推定部は、前記入出力トルク比を演算するために前記位相補正値に掛ける電流値であるトルク変動抑制電流を演算するトルク変動抑制電流演算部を備え、
前記トルク変動抑制電流演算部は、前記ピニオン角と前記位相補正値算出部が算出した位相補正値との差分に前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクに応じて予め設定したゲインを掛けて、前記トルク変動抑制電流を演算することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記アシストトルク算出部は、前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクを前記トルク比推定部が演算した入出力トルク比により補正して、前記アシストトルクの指令値を算出することを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
- ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路をユニバーサルジョイントで連結し、前記ステアリングホイールの操舵状態に応じて回転するアクチュエータから前記転舵輪の転舵を補助するためのトルクであるアシストトルクを出力する車両用操舵制御方法であって、
前記ステアリングホイールの操舵角と、前記ステアリングホイールに加わるトルクである操舵トルクと、を検出し、
前記検出した操舵角を予め設定したユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力した値に基づいて算出される前記ユニバーサルジョイントのピニオン角を、さらに機械角で45[deg]位相変位させてなる位相補正値を算出し、
前記算出した位相補正値に基づいて、前記ユニバーサルジョイントに入力された操舵角と、前記入力された操舵角に基づき前記ユニバーサルジョイントから出力される出力角と、の比に基づく入出力トルク比を演算し、
前記検出した操舵トルクと、前記演算した入出力トルク比と、に基づいて前記アシストトルクの指令値を算出し、
前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記ユニバーサルジョイントへ前記ステアリングホイール側から入力した角度である操舵輪側入力角と、前記ユニバーサルジョイントを介して前記操舵輪側入力角を前記転舵輪側へ出力した角度である転舵輪側出力角と、の関係を示すモデル式とすることを特徴とする車両用操舵制御方法。
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