JP6028576B2 - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、ステアリングホイールにより入力された操舵角の、トルク伝達経路でユニバーサルジョイントにより伝達される変化を考慮することなく、相対的な転舵輪の転舵角を算出して、転舵輪の転舵角を算出する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、実転舵角を検出する構成を備えていない構成であっても、SBWシステムを適切に制御することが可能な車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法を提供することを課題とする。
ここで、操舵側クラッチ角は、トルク伝達経路のステアリングホイール側における回転角であり、クラッチ角偏差は、操舵側クラッチ角と、トルク伝達経路の転舵輪側における回転角である転舵側クラッチ角との偏差である。また、転舵側ユニバーサルジョイントは、転舵輪とクラッチとの間を機械的に連結する構成である。また、転舵輪の転舵角は、イグニッションスイッチがオン状態となると、連結状態のクラッチを開放状態に切り替える前に算出する。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化した場合であっても、ユニバーサルジョイントの不等速性に応じて転舵角を算出することが可能となり、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態の車両用操舵制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両は、SBWシステムを適用した車両である。
そして、例えば、断線等、SBWシステムの一部に異常が発生した場合には、開放状態のクラッチを締結状態に切り替えて、トルク伝達経路を機械的に接続することにより、運転者によるステアリングホイールの操作状態に応じて、転舵輪の転舵を継続する。
転舵モータ2は、転舵モータ制御部4が出力する転舵モータ駆動電流に応じて駆動する電動モータであり、ステアリングホイールの操作に応じた目標転舵角に応じて回転して、転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータを形成する。また、転舵モータ2は、転舵モータ駆動電流に応じて駆動することにより、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する。なお、転舵アクチュエータとしては、電動モータ以外に、動力シリンダーや、ソレノイドを備えた油圧回路等を用いることが可能である。
転舵モータ出力軸12の先端側には、ピニオンギヤを用いて形成した転舵出力歯車12aを設けてある。
転舵出力歯車12aは、ステアリングラック14に挿通させたラック軸18の両端部間に設けたラックギヤ18aと噛合する。
また、転舵モータ2には、転舵モータ角度センサ16と、転舵モータトルクセンサ2tを設ける。
転舵モータトルクセンサ2tは、転舵モータ2が駆動時に発生させるトルクである転舵モータトルクを検出する。そして、転舵モータトルクセンサ2tは、検出した転舵モータトルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、転舵モータトルクを、「トルクセンサ値Vtm」と記載する場合がある。また、転舵モータトルクセンサ2tが検出した転舵モータトルクは、操舵トルクに変換してもよい。
ステアリングラック14は、円筒形状に形成してあり、転舵モータ出力軸12の回転、すなわち、転舵出力歯車12aの回転に応じて車幅方向へ変位するラック軸18を挿通させる。
タイヤ軸力センサ26は、ラック軸18の軸方向(車幅方向)に作用する軸力を検出し、この検出した軸力(以降の説明では、「タイヤ軸力」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
転舵モータ制御部4は、反力モータ制御部10と、CAN(Controller Area Network)等の通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。
転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ2を駆動させるための転舵モータ駆動電流を演算し、この演算した転舵モータ駆動電流を、転舵モータ2へ出力する。
ここで、転舵モータ駆動電流は、上述した転舵トルクを制御して、ステアリングホイールの操作に応じた目標転舵角を算出し、この算出した目標転舵角に応じて転舵モータ2を駆動制御するための電流である。
なお、転舵モータ実電流指令Itは、例えば、転舵モータ2に基板温度センサ(図示せず)を内蔵し、この内蔵した基板温度センサを用いて計測する。
そして、上記のように採用した転舵モータ実電流指令Itを用いて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。
なお、転舵側前回処理内容記憶部MAに関する説明は、後述する。
ここで、クラッチ6の状態を開放状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達されない状態とする。一方、クラッチ6の状態を締結状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に連結させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達される状態とする。
操舵角センサ34は、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵角センサ34は、ステアリングホイール32の現在の回転角(操舵角)である現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ34は、検出したステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θH」と記載する場合がある。
操舵トルクセンサ36は、操舵角センサ34と同様、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
なお、反力モータ8及び反力モータ角度センサ38に関する説明は、後述する。
転舵輪側クラッチ板40bは、ピニオン軸44の一端に取り付けてあり、ピニオン軸44と共に回転する。
ピニオン軸44の他端は、ピニオン46内に配置してある。
ピニオン軸トルクセンサ46tは、ピニオン軸44に加わるトルクであるピニオン軸トルクを検出する。そして、ピニオン軸トルクセンサ46tは、検出したピニオン軸トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、ピニオン軸トルクを、「トルクセンサ値Vtp」と記載する場合がある。
ステアリングギヤは、ピニオン軸44と共に回転する。すなわち、ステアリングギヤは、ピニオン軸44を介して、転舵輪側クラッチ板40bと共に回転する。
また、反力モータ角度センサ38は、反力モータ8の回転角を検出し、この検出した回転角(以降の説明では、「反力モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ制御部10は、転舵モータ制御部4と、通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。これに加え、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して、車速センサ50及びエンジンコントローラ52が出力する情報信号の入力を受ける。
車速センサ50は、例えば、公知の車速センサであり、車両の車速を検出し、この検出した車速を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
エンジンコントローラ52(エンジンECU)は、エンジン(図示せず)の状態(エンジン駆動、または、エンジン停止)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
指令演算部54は、車速センサ50、操舵角センサ34、エンジンコントローラ52、操舵トルクセンサ36、反力モータ角度センサ38、タイヤ軸力センサ26及び転舵モータ角度センサ16が出力した情報信号の入力を受ける。
なお、指令演算部54の詳細な構成についての説明は、後述する。
また、反力サーボ制御部56は、実際に反力モータ8へ通電している電流(反力モータ実電流)の値(以降の説明では、「反力モータ電流値Ih」と記載する場合がある)を計測する。
ここで、反力モータ駆動電流の演算は、指令演算部54が出力する反力モータ電流指令(後述)と、反力モータ電流値Ihに基づいて行う。具体的には、反力モータ電流値Ihを用いて反力モータ電流指令を補正し、反力モータ駆動電流を演算する。
クラッチ制御部58は、指令演算部54が出力するクラッチ電流指令(後述)に基づいて、開放状態のクラッチ6を締結状態へ切り替えるために必要な電流を、クラッチ駆動電流として演算する。そして、演算したクラッチ駆動電流を、クラッチ6へ出力する。
なお、反力側前回処理内容記憶部MBに関する説明は、後述する。
図3は、SBWシステムのステアリング構造を示す図である。
ステアリングホイール32は、ステアリングシャフト42の一端に連結してある。
ステアリングシャフト42は、ステアリングコラム5によって回転自在に保持されている。
また、ステアリングシャフト42の他端は、ユニバーサルジョイント7を介して操舵側中間シャフト9の一端に連結している。
ステアリングコラム5には、ステアリングシャフト42に連結した反力モータ8を設けている。
操舵側中間シャフト9の他端は、ユニバーサルジョイント11を介してクラッチ入力軸13の一端に連結してある。
クラッチ入力軸13の他端は、クラッチ6を介してクラッチ出力シャフト17の一端に同軸で対向しており、クラッチ6は、クラッチ入力軸13とクラッチ出力シャフト17との断続(締結及び遮断)を行う。
転舵側中間シャフト21の他端は、ユニバーサルジョイント23を介してピニオンシャフト25の一端に連結してあり、ピニオンシャフト25の他端は、ラック&ピニオン式のステアリングギヤ27に連結してある。なお、図示は省略するが、ステアリングギヤ27の出力側となるラックの両端は、夫々、左右のタイロッドの一端に連結してあり、タイロッドの他端は、車輪に連結してある。
操舵側中間シャフト9、及び転舵側中間シャフト21は、夫々、軸方向に伸縮可能に構成してある。
クラッチ6は、ブラケット43を介してダッシュパネル45に固定してある。
次に、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、指令演算部54の詳細な構成について説明する。
図4は、指令演算部54の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、指令演算部54は、中立位置記憶部60と、転舵モータ電流指令演算部62と、クラッチ状態切り替え部64を備える。これに加え、指令演算部54は、操舵側クラッチ角算出部66と、転舵側クラッチ角算出部68と、クラッチ角偏差算出部70と、クラッチ角偏差記憶部72と、転舵角記憶部74と、転舵角算出部76を備える。
クラッチ状態切り替え部64は、エンジンコントローラ52からエンジンの状態を含む情報信号の入力を受ける。
ここで、本実施形態の操舵側クラッチ角算出部66は、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、操舵側ユニバーサルジョイントを介してクラッチ6へ伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、操舵側クラッチ角を算出する。なお、操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
ここで、本実施形態の転舵側クラッチ角算出部68は、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角が、転舵側ユニバーサルジョイントを介してクラッチ6へ伝達された回転角である転舵側逆出力角に基づいて、操舵側クラッチ角を算出する。なお、操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
そして、クラッチ角偏差算出部70は、操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出し、この算出したクラッチ角偏差を含む情報信号を、クラッチ角偏差記憶部72及び転舵角算出部76へ出力する。なお、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する具体的な処理については、後述する。
そして、クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時点の、クラッチ角偏差を記憶する。
転舵角記憶部74は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角記憶部74は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
転舵角算出部76は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角算出部76は、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受ける。また、転舵角算出部76は、操舵トルクセンサ36から、トルクセンサ値Vtsを含む情報信号の入力を受ける。
ここで、上記のユニバーサルジョイント変化角とは、操舵角センサ34が検出した現在操舵角に基づき、トルク伝達経路上で、予め転舵角算出部76が記憶したモデルを用いて算出した角度である。なお、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理と、転舵角算出部76が記憶したモデルについては、後述する。
以下、図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する具体的な処理について説明する。
図5は、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。
クラッチ角偏差を算出する処理では、操舵側クラッチ角算出部66により操舵側クラッチ角θcl_inを算出し、転舵側クラッチ角算出部68により転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。そして、転舵側クラッチ角θcl_outから操舵側クラッチ角θcl_inを減算した値を、クラッチ角偏差dθCLとして算出(図5中に示す「dθCL=θcl_out−θcl_in」)する。
・操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理
操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、操舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、操舵側クラッチ角算出部66に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチがオフ状態となると、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして以下の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。なお、以下の式(1)は、各ユニバーサルジョイントの出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを示す式である。また、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理については、後述する。
ここで、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、操舵側クラッチ角算出部66及び転舵角算出部76に記憶させておく。
したがって、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵輪側入力角と転舵輪側出力角の関係を示すモデル式となる。ここで、操舵輪側入力角は、ユニバーサルジョイントへステアリングホイール32側から入力した角度であり、転舵輪側出力角は、ユニバーサルジョイントを介して操舵輪側入力角を転舵輪24側へ出力した角度である。
また、ジョイント角α1の算出は、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)で行なう。
また、図6中では、横軸に操舵角(図中では、「操舵角[deg]」と記載する)を示し、縦軸にピニオン46の角度(ピニオン角)と操舵角との偏差(図中では、「偏差角[deg]」と記載する)を示す。
そして、ジョイント角α1を算出する際には、例えば、ステアリングホイール32の操舵角を変化させて、波形マップ中の偏差角[deg]を変化させる。この場合、操舵角を変化させて偏差角[deg]の上限値及び下限値を検出し、これらの検出した上限値及び下限値に基づいて、ジョイント角α1を算出する。
すなわち、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetを算出する際には、上記の式(1)中に示す「θoffset」が、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset1」と記載する場合がある。
また、位相角θoffsetを検出する際には、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)とする。
ここで、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する際には、上記の式(1)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント11の入力側の軸(操舵側中間シャフト9)とユニバーサルジョイント11の出力側の軸(クラッチ入力軸13)がなす角度となる。なお、以降の説明では、操舵側中間シャフト9とクラッチ入力軸13とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント11のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α2」と記載する場合がある。
以上により、操舵側クラッチ角算出部66は、予め設定した操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を入力して、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する。
E1.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α1を入力し、「θoffset」として位相角θoffset1を入力したモデル式
E2.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α2を入力し、「θoffset」として位相角θoffset2を入力したモデル式
転舵側クラッチ角算出部68が転舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして以下の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する。なお、以下の式(2)は、各ユニバーサルジョイントの逆出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを示す式である。
ここで、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶させておく。
ここで、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する際には、上記の式(2)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント19の入力側の軸とユニバーサルジョイント19の出力側の軸がなす角度となる。ここで、ユニバーサルジョイント19の入力側の軸は、クラッチ出力シャフト17であり、ユニバーサルジョイント19の出力側の軸は、転舵側中間シャフト21である。なお、以降の説明では、クラッチ出力シャフト17と転舵側中間シャフト21とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント19のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α3」と記載する場合がある。
なお、上記の説明では、式(1)及び(2)を用いて処理を行ったが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、現在操舵角と操舵側クラッチ角θcl_inとの関係を示すマップと、転舵モータ回転角と転舵側クラッチ角θcl_outとの関係を示すマップを用いて処理を行ってもよい。
以下、図1から図6を参照しつつ、図7を用いて、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する具体的な処理について説明する。
図7は、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。
転舵輪24の転舵角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵角算出用トルク閾値は、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵角算出部76に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
イグニッションスイッチをオン状態とした時点において操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力する。これにより、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント7の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント11の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。
そして、上記のように算出した転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを、ユニバーサルジョイント19の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント19の出力角θoutを算出する。
ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出した後、この算出したユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を減算する。これにより、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分による影響を除去して、転舵輪24の転舵角を算出する。
ここで、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵角算出部76に記憶させておく。
これに加え、転舵輪24の転舵角を算出する処理では、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を除算したユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、上述したトルクセンサ値Vtpに基づいて補正する。
ねじれ角=トルクセンサ値Vtp[Nm]/各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじり剛性[Nm/rad] … (4)
したがって、トルクセンサモデルは、ピニオン軸トルクセンサ46tが検出したピニオン軸トルクに基づく操舵トルクと、各ユニバーサルジョイントのねじり剛性と、各ユニバーサルジョイントの入力軸及び出力軸のねじり剛性との関係を示すモデル式となる。
なお、本実施形態では、一例として、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじれ角を用いて補正する際に、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutにねじれ角を加算する場合を説明する。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、予め設定した転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを入力した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
E3.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α3を入力し、「θoffset」として位相角θoffset3を入力したモデル式
E4.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角α4を入力し、「θoffset」として位相角θoffset4を入力したモデル式
したがって、操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルと、転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、上記の式(1)で示すユニバーサルジョイント出力角算出モデルに基づくモデル式である。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、トルクセンサモデルを用いて算出したトルク伝達経路のねじれ角を用いて補正する。そして、この補正した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
以下、図1から図7を参照しつつ、図8から図10を用いて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理について説明する。
図8は、単体のユニバーサルジョイントが有する回転軸と、回転軸周りの回転運動との関係を示す図である。なお、図8中には、説明のために、ステアリングホイール32を模式的に示している。すなわち、図8中に示す単体のユニバーサルジョイントは、ユニバーサルジョイント7を示す。
また、車両の構成としては、ステアリングホイール32と転舵輪24との間における各種構成部品のレイアウト等に応じて、各ユニバーサルジョイントの入力軸と出力軸を直列に配列することは少ない。このため、ユニバーサルジョイントの位相角θoffsetが存在する構成が一般的である。
したがって、上記の式(15)で示す、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの関係に対して、入力角tanθInに位相角θoffsetを加算すると、上記の式(1)で示されるユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する。
以下、図1から図10を参照して、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する原理について説明する。
転舵輪24の転舵角を算出する際には、上述したように、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。したがって、上記の式(15)において、ユニバーサルジョイントの入力角tanθIn及び出力角θoutを0[°]とすると、以下の式(16)からオフセット成分を減算することにより、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。
以下、図1から図10を参照して、転舵側前回処理内容記憶部MAの構成と、反力側前回処理内容記憶部MBの構成について説明する。
転舵側前回処理内容記憶部MAは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read‐Only Memory)を用いて形成する。
そして、転舵側前回処理内容記憶部MAは、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
また、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、エンジンコントローラ52、操舵角センサ34、クラッチ角偏差算出部70、転舵角算出部76から、それぞれ、情報信号の入力を受ける。
そして、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
次に、図1から図10を参照しつつ、図11から図13を用いて、指令演算部54が行なう処理について説明する。
指令演算部54が行なう処理としては、例えば、車両の出荷前に行なう処理と、出荷後の車両に対して行なう処理がある。
図11は、車両の出荷前に行なう処理を示すフローチャートである。
指令演算部54が車両の出荷前に行なう処理としては、ジョイント角αを算出及び記憶する処理と、位相角θoffsetを記憶する処理がある。
図11中に示すように、車両の出荷前に行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS10の処理を行う。
ステップS20では、ジョイント角α1〜α4を算出し、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶(図中に示す「ジョイント角αを算出・記憶」)する。ステップS20において、ジョイント角αを算出及び記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS30へ移行する。
ステップS40では、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差を、操舵角と転舵モータ回転角との関係として、中立位置記憶部60に記憶(図中に示す「中立位置を記憶」)する。ステップS40において、操舵角と転舵モータ回転角との関係を記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
出荷後の車両に対して指令演算部54が行なう処理としては、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理と、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理がある。
図12は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理を示すフローチャートである。なお、指令演算部54は、予め設定した周期(例えば、5[ms])で、以下に説明する処理を行う。
ステップS100では、イグニッションスイッチがオフ状態であるか否かを判定する処理(図中に示す「IGN−OFF?」)を行う。
ステップS100において、イグニッションスイッチがオフ状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110へ移行する。
ステップS110では、クラッチ状態切り替え部64により、クラッチ6を連結状態に切り替えるためのクラッチ電流指令をクラッチ6へ出力する。これに加え、クラッチ6へ出力したクラッチ駆動電流を参照して、クラッチ6が締結状態(滑り締結状態を含まない完全締結状態)であるか否かを判定する処理(図中に示す「クラッチ締結?」)を行う。
一方、ステップS110において、クラッチ6が締結状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110の処理を繰り返す。
ステップS120において、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS130へ移行する。
ステップS130では、操舵側クラッチ角算出部66により、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて、操舵側クラッチ角θcl_inを算出(図中に示す「操舵側クラッチ角θcl_inを算出」)する処理を行う。ステップS130において、操舵側クラッチ角θcl_inを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS140へ移行する。
ステップS140において、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS150へ移行する。
ステップS150では、転舵側クラッチ角算出部68により、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵側クラッチ角θcl_outを算出(図中に示す「転舵側クラッチ角θcl_outを算出」)する処理を行う。ステップS150において、転舵側クラッチ角θcl_outを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS160へ移行する。
ステップS170では、クラッチ角偏差記憶部72が、ステップS160で算出したクラッチ角偏差dθCLを記憶(図中に示す「クラッチ角偏差dθCLを記憶」)する処理を行う。ステップS170において、クラッチ角偏差dθCLを記憶すると、クラッチ角偏差を算出する処理は終了(END)する。
図13は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理を示すフローチャートである。
図13中に示すフローチャートは、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態となると開始(START)し、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200において、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS210へ移行する。
ステップS210では、イグニッションスイッチをオン状態とした時点の現在操舵角を、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。これにより、ステップS210では、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出(図中に示す「操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出」)する処理を行う。ステップS210において、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS220へ移行する。
一方、ステップS260において、出荷後偏差と出荷前偏差が等しい(図中に示す「No」)と判定した場合、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS280へ移行する。
次に、図1から図13を参照しつつ、図14を用いて、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。なお、図14は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
図14中に示すタイムチャートは、車両の走行中等、イグニッションスイッチがオン状態であり、トルク伝達経路を機械的に分離させて、SBWシステムの制御を実施している状態(図中に示す「SBWシステム制御中」)からスタートする。なお、SBWシステムの制御とは、例えば、高速走行時には低速走行時よりも操舵角に対する転舵角の変化度合いを減少させる制御(可変ギヤ制御)等、車速に応じた転舵角の制御である。また、SBWシステムの制御は、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係と、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHと、車速センサ50が検出した車速を用いて行なう。
時点t1で行なう処理は、クラッチ6を連結状態(図中に示す「クラッチ締結」)に切り替えてトルク伝達経路を機械的に連結し、さらに、クラッチ角偏差dθCLを算出・記憶する処理である。
このとき、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えた(図中に示す「IGN OFF」)時点t2で、SBWシステム制御の起動時における処理(図中に示す「SBWシステム起動時の処理」)を行う。
そして、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理を終了すると、連結状態のクラッチ6を開放状態に切り替え、SBWシステムの制御を開始(図中に示す「SBWシステム制御中」)する。
すなわち、車速に応じた転舵角の制御を行なう際には、操舵角に対する転舵角の変化度合いが、車速に応じて異なる(操舵角:転舵角=1:X 低速時には1<X、高速時にはX<1)。これに対し、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、ステアリングホイール32の操舵角が変化している場合、クラッチ6が連結状態であるため、操舵角の変化度合いと転舵角の変化度合いは等しい(操舵角:転舵角=1:1)。
このため、例えば、駐車している車両を旋回させながら発進させる(旋回発進)場合、すなわち、駐車している車両を、ステアリングホイール32を操舵しながら発進させる場合であっても、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正することが可能となる。これにより、駐車している車両を、ステアリングホイール32を操舵しながら発進させる場合であっても、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
なお、上述した操舵角センサ34は、操舵角検出部に対応する。
また、上述した転舵モータ角度センサ16は、転舵アクチュエータ回転角検出部に対応する。
また、上述したように、本実施形態の車両用操舵制御装置1の動作で実施する車両用操舵制御方法は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する方法である。ここで、転舵角の算出は、イグニッションスイッチがオン状態となると、クラッチ6を開放状態に切り替える前に行なう。
本実施形態では、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)クラッチ角偏差算出部70が、操舵側クラッチ角θcl_inと転舵側クラッチ角θcl_outとの偏差であるクラッチ角偏差dθCLを算出する。これに加え、イグニッションスイッチがオン状態となると、クラッチ6を開放状態に切り替える前に、転舵角算出部76が、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて転舵角を算出する。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化した場合であっても、トルク伝達経路で各ユニバーサルジョイントにより伝達される操舵角の変化に応じて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。これにより、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
このため、モデル式であり操舵側クラッチ角算出部66が記憶しているユニバーサルジョイント出力角算出モデルと、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を用いて、操舵側クラッチ角θcl_inと、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
その結果、操舵角センサ34が検出した現在操舵角と、予め設定したパラメータであるユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となるため、実転舵角の推定精度を向上させることが可能となる。
その結果、各ユニバーサルジョイントの位相角に因らず、操舵角センサ34が検出した現在操舵角がトルク伝達経路で各ユニバーサルジョイントにより伝達される操舵角の変化に応じて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化し、トルク伝達経路にねじれが発生した場合であっても、トルク伝達経路に発生したねじれを、トルクセンサモデルを用いて補正することが可能となる。
その結果、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角から、トルク伝達経路に発生したねじれによる影響を除去して、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
このため、モデル式であり転舵側クラッチ角算出部68が記憶しているユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルと、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角を用いて、転舵側クラッチ角θcl_outを算出することが可能となる。
その結果、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角と、予め設定したパラメータであるユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となるため、実転舵角の推定精度を向上させることが可能となる。
このため、クラッチ6が連結状態である間に発生した操舵角の変化に基づくクラッチ角偏差dθCLと、転舵側ユニバーサルジョイントの不等速性に応じて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
その結果、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化した場合であっても、トルク伝達経路で各ユニバーサルジョイントにより伝達される操舵角の変化に応じて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。これにより、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
(1)本実施形態では、トルク伝達経路が四つのユニバーサルジョイント(7,11,19,23)を備える構成としたが、これに限定するものではなく、ユニバーサルジョイントの数は、例えば、車両のレイアウト等に応じた数であればよい。
この場合、例えば、操舵側ユニバーサルジョイントと転舵側ユニバーサルジョイントを、共に一つのユニバーサルジョイントのみで形成した場合、転舵輪24の転舵角は、以下の式(17)を用いて算出する。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角に、転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のオフセット成分を加算した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角から、トルクセンサ値Vtp及びトルクセンサモデルに基づき、転舵側シャフト及び転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のねじれ角を減算した値を算出する。そしてこの算出した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。なお、上記の転舵側シャフトとは、クラッチ出力シャフト17、転舵側中間シャフト21、ピニオンシャフト25である。
2 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
2t 転舵モータトルクセンサ
4 転舵モータ制御部
6 クラッチ
7,11 ユニバーサルジョイント(操舵側ユニバーサルジョイント)
19,23 ユニバーサルジョイント(転舵側ユニバーサルジョイント)
8 反力モータ(反力アクチュエータ)
10 反力モータ制御部
16 転舵モータ角度センサ
24 転舵輪
32 ステアリングホイール
34 操舵角センサ
40 クラッチ板
42 ステアリングシャフト
44 ピニオン軸
46 ピニオン
46t ピニオン軸トルクセンサ
50 車速センサ
52 エンジンコントローラ
54 指令演算部
56 反力サーボ制御部
58 クラッチ制御部
60 中立位置記憶部
62 転舵モータ電流指令演算部
64 クラッチ状態切り替え部
66 操舵側クラッチ角算出部
68 転舵側クラッチ角算出部
70 クラッチ角偏差算出部
72 クラッチ角偏差記憶部
74 転舵角記憶部
76 転舵角算出部
MA 転舵側前回処理内容記憶部
MB 反力側前回処理内容記憶部
Claims (6)
- ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する連結状態と、を切り替えるクラッチを備え、前記クラッチを開放状態に切り替えた状態で前記ステアリングホイールの操舵角に応じた目標転舵角を算出し、当該算出した目標転舵角に応じて前記転舵輪を転舵制御する車両用操舵制御装置であって、
車両のイグニッションスイッチがオン状態となると前記クラッチを前記開放状態に切り替え、前記イグニッションスイッチがオフ状態となると前記クラッチを前記連結状態に切り替えるクラッチ状態切り替え部と、
前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記目標転舵角に応じて回転して前記転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータの回転角である転舵アクチュエータ回転角を検出する転舵アクチュエータ回転角検出部と、
前記操舵角検出部が検出した操舵角が操舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチへ伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記ステアリングホイール側における回転角である操舵側クラッチ角を算出する操舵側クラッチ角算出部と、
前記転舵アクチュエータ回転角検出部が検出した転舵アクチュエータ回転角が転舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチへ伝達された回転角である転舵側逆出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記転舵輪側における回転角である転舵側クラッチ角を算出する転舵側クラッチ角算出部と、
前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角と前記転舵側クラッチ角算出部が算出した転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出するクラッチ角偏差算出部と、
前記イグニッションスイッチがオン状態となると、前記クラッチ状態切り替え部が前記クラッチを前記開放状態に切り替える前に、前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角に前記クラッチ角偏差算出部が算出したクラッチ角偏差を加算した転舵角算出用転舵側クラッチ角が前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出する転舵角算出部と、を備えることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 前記操舵側クラッチ角算出部は、予め設定した操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに前記操舵角検出部が検出した操舵角を入力して前記操舵側クラッチ角を算出し、
前記転舵角算出部は、予め設定した転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに前記転舵角算出用転舵側クラッチ角を入力した値に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
前記各ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記ユニバーサルジョイントへ前記ステアリングホイール側から入力した角度である操舵輪側入力角と、前記ユニバーサルジョイントを介して前記操舵輪側入力角を前記転舵輪側へ出力した角度である転舵輪側出力角と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記転舵角算出部は、前記転舵角算出用転舵側クラッチ角が前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角から、予め設定したユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルを用いて算出した前記操舵側ユニバーサルジョイント及び前記転舵側ユニバーサルジョイントのオフセット成分を減算した値に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
前記ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、前記各ユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を示すモデル式であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記ステアリングホイールに加わるトルクである操舵トルクを検出する操舵トルク検出部を備え、
前記転舵角算出部は、前記転舵角算出用転舵側クラッチ角が前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、予め設定したトルクセンサモデルを用いて算出した前記トルク伝達経路のねじれ角を用いて補正した値に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
前記トルクセンサモデルは、前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクと、前記各ユニバーサルジョイントのねじり剛性と、前記各ユニバーサルジョイントの入力軸及び出力軸のねじり剛性と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。 - 前記転舵側クラッチ角算出部は、予め設定したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルに前記転舵アクチュエータ回転角検出部が検出した転舵アクチュエータ回転角を入力して前記転舵側クラッチ角を算出し、
前記ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、前記転舵側ユニバーサルジョイントへ前記転舵輪側から入力した角度である転舵輪側逆入力角と、前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して前記転舵輪側逆入力角を前記ステアリングホイール側へ出力した角度である操舵輪側逆出力角と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。 - ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離する開放状態と、前記トルク伝達経路を機械的に連結する連結状態と、を切り替えるクラッチを開放状態に切り替えた状態で前記ステアリングホイールの操舵角に応じた目標転舵角を算出し、当該算出した目標転舵角に応じて前記転舵輪を転舵制御する車両用操舵制御方法であって、
車両のイグニッションスイッチがオン状態となると前記クラッチを前記開放状態に切り替え、前記イグニッションスイッチがオフ状態となると前記クラッチを前記連結状態に切り替え、
前記ステアリングホイールの操舵角と、前記目標転舵角に応じて回転して前記転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータの回転角である転舵アクチュエータ回転角と、を検出し、
前記検出した操舵角が操舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチに伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記ステアリングホイール側における回転角である操舵側クラッチ角を算出し、
前記検出した転舵アクチュエータ回転角が転舵側ユニバーサルジョイントを介して前記クラッチに伝達された回転角である転舵側逆出力角に基づいて、前記トルク伝達経路の前記転舵輪側における回転角である転舵側クラッチ角を算出し、
前記算出した操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出し、
前記イグニッションスイッチがオン状態となると、前記クラッチを前記開放状態に切り替える前に、前記算出した操舵側クラッチ角に前記算出したクラッチ角偏差を加算した転舵角算出用転舵側クラッチ角が前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出することを特徴とする車両用操舵制御方法。
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