JP6142659B2 - 車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 - Google Patents

車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法 Download PDF

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Description

本発明は、ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、ステアリングホイールの操舵操作に応じて転舵モータ等のアクチュエータを介して転舵させる、車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法に関する。
従来から、ステアリングホイール(操舵輪)と転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で、転舵輪を、ステアリングホイールの操作に応じた目標転舵角に転舵モータ等のアクチュエータを介して転舵させる操舵制御装置がある。このような操舵制御装置は、一般的に、ステア・バイ・ワイヤ(SBW:Steer By Wire、以降の説明では、「SBW」と記載する場合がある)と呼称するシステム(SBWシステム)を形成する装置であり、例えば、特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載のSBWシステムでは、転舵輪の実際の転舵角(以降の説明では、「実転舵角」と記載する場合がある)を検出するセンサ(ロータリーエンコーダ等)を備えない構成を実現するとともに、転舵輪の転舵角を算出することを目的としている。このため、ステアリングホイールの操舵角度範囲内の絶対角度と、転舵輪の転舵角度範囲内の角度を複数の周期に亘って検出した転舵絶対角度との偏差との和と、転舵角度範囲内の角度を複数の周期で検出した初期値との差をオフセット量として求める。そして、転舵輪の転舵角度範囲内の角度を複数の周期に亘って検出した転舵絶対角度とオフセット量の和を、相対的な転舵輪の転舵角として算出し、転舵輪の転舵角を算出する。
特開2011‐005933号公報
ところで、特許文献1に記載されている技術も含め、従来のSBWシステムでは、ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を、ユニバーサルジョイントを備えた構成とする場合がある。これは、ステアリングホイールと転舵輪との間における各種構成部品のレイアウト等に応じて構成する。
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、ステアリングホイールにより入力された操舵角の、トルク伝達経路でユニバーサルジョイントにより伝達される変化を考慮することなく、相対的な転舵輪の転舵角を算出して、転舵輪の転舵角を算出する。
したがって、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点で記憶した相対的な転舵輪の転舵角と、イグニッションスイッチがオン状態となった時点における実転舵角とが異なる状態が発生し、SBWシステムの適切な制御が困難となるという問題がある。この問題は、ユニバーサルジョイントを用いて連結した二つのシャフトには、ユニバーサルジョイントの不等速性により、回転角の位相が互いに異なる状態となる場合が発生することに起因する。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、SBWシステムを適切に制御することが可能な車両用操舵制御装置及び車両用操舵制御方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、ステアリングホイールの操舵角を入力して転舵輪の転舵角を算出するためのモデル式である全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に、演算上で用いる演算用操舵角に換算して設定した増減閾値に応じて設定した補正指令値を加算する。ここで、位相角に補正指令値を加算するか否かの判定は、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する操舵角を予め設定した範囲内で変化させたときの転舵角の変化幅である実機入出力角偏差最大変化幅と、補正要否判定用入出力角偏差と、の比較に基づいて行なう。
また、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵角にユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を加算した角度と、ユニバーサルジョイントを介して操舵角を転舵輪側へ出力した出力角の関係を示すモデル式である。
補正要否判定用入出力角偏差は、演算上で用いるユニバーサルジョイントである演算用ユニバーサルジョイントのジョイント角と演算上で用いる入出力角偏差との関係と演算用操舵角、及び演算用操舵角に換算して設定した増減閾値とを用いて演算する。
本発明によれば、トルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントに予め設定した範囲内で変化させた操舵角を入力して算出した実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
このため、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差を推定することが可能となり、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
本発明の第一実施形態の車両用操舵制御装置を備えた車両の概略構成を示す図である。 本発明の第一実施形態の車両用操舵制御装置の概略構成を示すブロック図である。 SBWシステムのステアリング構造を示す図である。 指令演算部の構成を示すブロック図である。 クラッチ角偏差算出部がクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。 波形マップを示す図である。 転舵角算出部が転舵輪の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。 補正角算出ブロックの構成を示すブロック図である。 相関マップを示す図である。 現在操舵角に応じて変化する転舵角を算出する手順を示す図である。 現在操舵角に応じて変化する実機入出力角偏差を算出する手順を示す図である。 位相角補正要否判定部が行なう処理を示す図である。 位相角補正要否判定部が行なう処理を示す図である。 クラッチ角偏差算出部が、位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いてクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。 転舵角算出部が、位相角を補正したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて転舵輪の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。 単体のユニバーサルジョイントが有する回転軸と、回転軸周りの回転運動との関係を示す図である。 ユニバーサルジョイントにおける入力側の軸と出力側の軸との関係を示す図である。 ユニバーサルジョイントにおける入力側の軸及び出力側の軸と、位相角との関係を示す図である。 車両の出荷前に行なう処理を示すフローチャートである。 出荷後の車両に対して行なう処理のうち、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理を示すフローチャートである。 出荷後の車両に対して行なう処理のうち、転舵輪の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理を示すフローチャートである。 本発明の第一実施形態の車両用操舵制御装置を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両の概略構成を示す図である。また、図2は、本実施形態の車両用操舵制御装置1の概略構成を示すブロック図である。
本実施形態の車両用操舵制御装置1を備えた車両は、SBWシステムを適用した車両である。
ここで、SBWシステムでは、車両の運転者が操舵操作するステアリングホイール(操舵輪)の操作に応じてアクチュエータ(例えば、転舵モータ)を駆動制御して、転舵輪を転舵する制御を行うことにより、車両の進行方向を変化させる。転舵モータの駆動制御は、ステアリングホイールと転舵輪との間に介装するクラッチを、通常状態である開放状態に切り替えて、ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を機械的に分離した状態で行う。
そして、例えば、断線等、SBWシステムの一部に異常が発生した場合には、開放状態のクラッチを締結状態に切り替えて、トルク伝達経路を機械的に接続することにより、運転者によるステアリングホイールの操作状態に応じて、転舵輪の転舵を継続する。
図1及び図2中に示すように、本実施形態の車両用操舵制御装置1は、転舵モータ2と、転舵モータ制御部4と、クラッチ6と、反力モータ8と、反力モータ制御部10を備える。
転舵モータ2は、転舵モータ制御部4が出力する転舵モータ駆動電流に応じて駆動する電動モータであり、ステアリングホイールの操作に応じた目標転舵角に応じて回転して、転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータを形成する。また、転舵モータ2は、転舵モータ駆動電流に応じて駆動することにより、転舵輪を転舵させるための転舵トルクを出力する。なお、転舵アクチュエータとしては、電動モータ以外に、動力シリンダーや、ソレノイドを備えた油圧回路等を用いることが可能である。
また、転舵モータ2は、回転可能な転舵モータ出力軸12を有する。
転舵モータ出力軸12の先端側には、ピニオンギヤを用いて形成した転舵出力歯車12aを設けてある。
転舵出力歯車12aは、ステアリングラック14に挿通させたラック軸18の両端部間に設けたラックギヤ18aと噛合する。
また、転舵モータ2には、転舵モータ角度センサ16と、転舵モータトルクセンサ2tを設ける。
転舵モータ角度センサ16は、転舵モータ2の回転角である転舵モータ回転角を検出し、この検出した転舵モータ回転角を含む情報信号を、転舵モータ制御部4を介して、反力モータ制御部10へ出力する。
転舵モータトルクセンサ2tは、転舵モータ2が駆動時に発生させるトルクである転舵モータトルクを検出する。そして、転舵モータトルクセンサ2tは、検出した転舵モータトルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、転舵モータトルクを、「トルクセンサ値Vtm」と記載する場合がある。また、転舵モータトルクセンサ2tが検出した転舵モータトルクは、操舵トルクに変換してもよい。
なお、本実施形態では、転舵モータトルクセンサ2tが検出した転舵モータトルクを、運転者がステアリングホイール32に加えているトルクである操舵トルクに変換する。そして、この変換した操舵トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する場合について説明する。
ステアリングラック14は、円筒形状に形成してあり、転舵モータ出力軸12の回転、すなわち、転舵出力歯車12aの回転に応じて車幅方向へ変位するラック軸18を挿通させる。
また、ステアリングラック14の内部には、ラック軸18の外径面を全周から覆うストッパ部14aを二つ設ける。二つのストッパ部14aは、それぞれ、ステアリングラック14の内部において、転舵出力歯車12aよりも車幅方向右側及び左側に設ける。なお、図1中では、二つのストッパ部14aのうち、転舵出力歯車12aよりも車幅方向右側に設けたストッパ部14aの図示を省略する。
ラック軸18の、ステアリングラック14に挿通させて内部に配置した部分のうち、ストッパ部14aよりも車幅方向右側及び左側の部分には、それぞれ、ストッパ部14aとラック軸18の軸方向で対向する端当て部材18bを設ける。なお、図1中では、二つの端当て部材18bのうち、ストッパ部14aよりも車幅方向右側に設けた端当て部材18bの図示を省略する。
ラック軸18の両端は、それぞれ、タイロッド20及びナックルアーム22を介して、転舵輪24に連結する。また、ラック軸18とタイロッド20との間には、タイヤ軸力センサ26を設ける。
タイヤ軸力センサ26は、ラック軸18の軸方向(車幅方向)に作用する軸力を検出し、この検出した軸力(以降の説明では、「タイヤ軸力」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
転舵輪24は、車両の前輪(左右前輪)であり、転舵モータ出力軸12の回転に応じてラック軸18が車幅方向へ変位すると、タイロッド20及びナックルアーム22を介して転舵し、車両の進行方向を変化させる。なお、本実施形態では、転舵輪24を、左右前輪で形成した場合を説明する。これに伴い、図1中では、左前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Lと示し、右前輪で形成した転舵輪24を、転舵輪24Rと示す。
転舵モータ制御部4は、反力モータ制御部10と、CAN(Controller Area Network)等の通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。
また、転舵モータ制御部4は、転舵位置サーボ制御部30と、転舵側前回処理内容記憶部MAを有する。
転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ2を駆動させるための転舵モータ駆動電流を演算し、この演算した転舵モータ駆動電流を、転舵モータ2へ出力する。
ここで、転舵モータ駆動電流は、上述した転舵トルクを制御して、ステアリングホイールの操作に応じた目標転舵角を算出し、この算出した目標転舵角に応じて転舵モータ2を駆動制御するための電流である。
転舵モータ駆動電流の演算は、反力モータ制御部10が出力する転舵モータ電流指令と、実際に転舵モータ2へ通電している電流(転舵モータ実電流)の指令値(以降の説明では、「転舵モータ実電流指令It」と記載する場合がある)に基づいて行う。具体的には、転舵モータ実電流指令Itを用いて転舵モータ電流指令を補正し、転舵モータ駆動電流を演算する。
また、転舵位置サーボ制御部30は、転舵モータ実電流指令Itを計測し、この計測した転舵モータ実電流指令Itに基づいて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。そして、推定した転舵モータ2の温度Ttを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。これは、電流の通電による抵抗発熱に起因するモータ類(転舵モータ2、反力モータ8)の過熱を推定するためである。
なお、転舵モータ実電流指令Itは、例えば、転舵モータ2に基板温度センサ(図示せず)を内蔵し、この内蔵した基板温度センサを用いて計測する。
ここで、転舵モータ実電流指令Itに基づいて転舵モータ2の温度Ttを推定する方法としては、例えば、大電流域では、計測した実際の電流値を用いて転舵モータ実電流指令Itを求める。具体的には、計測した実際の電流値と予め記憶している電流閾値とを比較し、計測した実際の電流値が電流閾値よりも大きい場合は、計測した実際の電流値を、転舵モータ実電流指令Itとして採用する。
一方、小電流域では、転舵モータ2の回転数とトルクとの関係を定めたモータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて、転舵モータ実電流指令Itを推定する。具体的には、計測した実際の電流値を転舵モータ実電流指令Itとして採用せず、モータNT特性を用い、転舵モータ2の回転数に基づいて推定した電流値を、転舵モータ実電流指令Itとして採用する。
そして、上記のように採用した転舵モータ実電流指令Itを用いて、転舵モータ2の温度Ttを推定する。
なお、転舵側前回処理内容記憶部MAに関する説明は、後述する。
クラッチ6は、運転者が操作するステアリングホイール32と転舵輪24との間に介装し、反力モータ制御部10が出力するクラッチ駆動電流に応じて、開放状態または締結状態に切り替わる。なお、クラッチ6は、通常状態では、開放状態である。
ここで、クラッチ6の状態を開放状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達されない状態とする。一方、クラッチ6の状態を締結状態に切り替えると、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に連結させて、ステアリングホイール32の操舵操作が転舵輪24へ伝達される状態とする。
また、ステアリングホイール32とクラッチ6との間には、操舵角センサ34と、操舵トルクセンサ36と、反力モータ8と、反力モータ角度センサ38を配置する。
操舵角センサ34は、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵角センサ34は、ステアリングホイール32の現在の回転角(操舵角)である現在操舵角を検出する。そして、操舵角センサ34は、検出したステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、現在操舵角を、「現在操舵角θH」と記載する場合がある。
ここで、近年の車両は、ステアリングホイール32の操舵角を検出可能なセンサを、標準的に備えている場合が多い。このため、本実施形態では、操舵角センサ34として、車両に既存のセンサである、ステアリングホイール32の操舵角を検出可能なセンサを用いた場合について説明する。
操舵トルクセンサ36は、操舵角センサ34と同様、例えば、ステアリングホイール32を回転可能に支持するステアリングコラムに設ける。
また、操舵トルクセンサ36は、運転者がステアリングホイール32に加えているトルクである操舵トルクを検出する。そして、操舵トルクセンサ36は、検出した操舵トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、操舵トルクを、「トルクセンサ値Vts」と記載する場合がある。
なお、反力モータ8及び反力モータ角度センサ38に関する説明は、後述する。
また、クラッチ6は、開放状態で互いに離間し、締結状態で互いに噛合する一対のクラッチ板40を有する。なお、図1中及び以降の説明では、一対のクラッチ板40のうち、ステアリングホイール32側に配置するクラッチ板40を、「操舵輪側クラッチ板40a」とし、転舵輪24側に配置するクラッチ板40を、「転舵輪側クラッチ板40b」とする。
操舵輪側クラッチ板40aは、ステアリングホイール32と共に回転するステアリングシャフト42に取り付けてあり、ステアリングシャフト42と共に回転する。
転舵輪側クラッチ板40bは、ピニオン軸44の一端に取り付けてあり、ピニオン軸44と共に回転する。
ピニオン軸44の他端は、ピニオン46内に配置してある。
ピニオン46には、ラックギヤ18aと噛合するステアリングギヤ(図示せず)を内蔵する。これに加え、ピニオン46には、ピニオン軸トルクセンサ46tを設ける。
ピニオン軸トルクセンサ46tは、ピニオン軸44に加わるトルクであるピニオン軸トルクを検出する。そして、ピニオン軸トルクセンサ46tは、検出したピニオン軸トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。なお、以降の説明では、ピニオン軸トルクを、「トルクセンサ値Vtp」と記載する場合がある。
なお、本実施形態では、ピニオン軸トルクセンサ46tが検出したピニオン軸トルクを、運転者がステアリングホイール32に加えているトルクである操舵トルクに変換する。そして、この変換した操舵トルクを含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する場合について説明する。
ステアリングギヤは、ピニオン軸44と共に回転する。すなわち、ステアリングギヤは、ピニオン軸44を介して、転舵輪側クラッチ板40bと共に回転する。
反力モータ8は、反力モータ制御部10が出力する反力モータ駆動電流に応じて駆動する電動モータであり、ステアリングホイール32へ操舵反力を出力可能な反力アクチュエータを形成する。なお。操舵反力の出力は、ステアリングホイール32と共に回転するステアリングシャフト42を回転させて行なう。ここで、反力モータ8がステアリングホイール32へ出力する操舵反力は、転舵輪24に作用しているタイヤ軸力やステアリングホイール32の操舵状態に応じて演算する。この演算は、クラッチ6を開放状態に切り替えて、ステアリングホイール32と転舵輪24との間のトルク伝達経路を機械的に分離させている状態で行なう。これにより、ステアリングホイール32を操舵する運転者へ、適切な操舵反力を伝達する。すなわち、反力モータ8がステアリングホイール32へ出力する操舵反力は、運転者がステアリングホイール32を操舵する操作方向とは反対方向へ作用する反力である。なお、反力アクチュエータとしては、電動モータ以外に、動力シリンダーや、ソレノイドを備えた油圧回路等を用いることが可能である。
反力モータ角度センサ38は、反力モータ8に設けるセンサである。
また、反力モータ角度センサ38は、反力モータ8の回転角を検出し、この検出した回転角(以降の説明では、「反力モータ回転角」と記載する場合がある)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
反力モータ制御部10は、転舵モータ制御部4と、通信ライン28を介して、情報信号の入出力を行う。これに加え、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して、車速センサ50及びエンジンコントローラ52が出力する情報信号の入力を受ける。
また、反力モータ制御部10は、通信ライン28を介して入力を受けた情報信号や、各種センサから入力を受けた情報信号に基づき、反力モータ8を駆動制御する。
車速センサ50は、例えば、公知の車速センサであり、車両の車速を検出し、この検出した車速を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
エンジンコントローラ52(エンジンECU)は、エンジン(図示せず)の状態(エンジン駆動、または、エンジン停止)を含む情報信号を、反力モータ制御部10へ出力する。
また、反力モータ制御部10は、指令演算部54と、反力サーボ制御部56と、クラッチ制御部58と、反力側前回処理内容記憶部MBを有する。
指令演算部54は、車速センサ50、操舵角センサ34、エンジンコントローラ52、操舵トルクセンサ36、反力モータ角度センサ38、タイヤ軸力センサ26及び転舵モータ角度センサ16が出力した情報信号の入力を受ける。
なお、指令演算部54の詳細な構成についての説明は、後述する。
反力サーボ制御部56は、反力モータ8を駆動させるための反力モータ駆動電流を反力モータ8へ出力する。
また、反力サーボ制御部56は、実際に反力モータ8へ通電している電流(反力モータ実電流)の値(以降の説明では、「反力モータ電流値Ih」と記載する場合がある)を計測する。
ここで、反力モータ駆動電流の演算は、指令演算部54が出力する反力モータ電流指令(後述)と、反力モータ電流値Ihに基づいて行う。具体的には、反力モータ電流値Ihを用いて反力モータ電流指令を補正し、反力モータ駆動電流を演算する。
また、反力サーボ制御部56は、計測した反力モータ電流値Ihに基づいて、反力モータ8の温度Thを推定する。なお、反力モータ8の温度Thの推定は、例えば、転舵位置サーボ制御部30が行う転舵モータ2の温度Ttの推定と、同様の手順で行う。
クラッチ制御部58は、指令演算部54が出力するクラッチ電流指令(後述)に基づいて、開放状態のクラッチ6を締結状態へ切り替えるために必要な電流を、クラッチ駆動電流として演算する。そして、演算したクラッチ駆動電流を、クラッチ6へ出力する。
なお、反力側前回処理内容記憶部MBに関する説明は、後述する。
次に、図1及び図2を参照しつつ、図3を用いて、詳細なステアリング構造について説明する。
図3は、SBWシステムのステアリング構造を示す図である。
ステアリングホイール32は、ステアリングシャフト42の一端に連結してある。
ステアリングシャフト42は、ステアリングコラム5によって回転自在に保持されている。
また、ステアリングシャフト42の他端は、ユニバーサルジョイント7を介して操舵側中間シャフト9の一端に連結している。
ステアリングコラム5には、ステアリングシャフト42に連結した反力モータ8を設けている。
反力モータ8は、転舵角に応じて転舵輪側からステアリングホイール方向へ伝達される路面反力に応じた反力トルクをステアリングシャフト42へ付与する。これにより、クラッチ6が解放されているときであっても、運転者は、転舵状態に応じた路面反力を把握できる。
操舵側中間シャフト9の他端は、ユニバーサルジョイント11を介してクラッチ入力軸13の一端に連結してある。
クラッチ入力軸13の他端は、クラッチ6を介してクラッチ出力シャフト17の一端に同軸で対向しており、クラッチ6は、クラッチ入力軸13とクラッチ出力シャフト17との断続(締結及び遮断)を行う。
クラッチ出力シャフト17の他端は、ユニバーサルジョイント19を介して転舵側中間シャフト21の一端に連結してある。
転舵側中間シャフト21の他端は、ユニバーサルジョイント23を介してピニオンシャフト25の一端に連結してあり、ピニオンシャフト25の他端は、ラック&ピニオン式のステアリングギヤ27に連結してある。なお、図示は省略するが、ステアリングギヤ27の出力側となるラックの両端は、夫々、左右のタイロッドの一端に連結してあり、タイロッドの他端は、車輪に連結してある。
したがって、クラッチ6を締結した状態では、ステアリングホイール32を回転させると、ピニオン46及びピニオンシャフト25が回転する。ここで、ピニオン46及びピニオンシャフト25は、ステアリングシャフト42、操舵側中間シャフト9、クラッチ入力軸13、クラッチ出力シャフト17及び転舵側中間シャフト21を介して回転する。ピニオンシャフト25の回転運動は、ステアリングギヤ27によってラックの進退運動となり、ラックの進退に応じてタイロッドを押したり引いたりすることで、車輪が転舵される。
ステアリングシャフト42には、反力モータ8を連結してあり、クラッチ6を遮断した状態で、反力モータ8を駆動すると、ステアリングシャフト42に反力トルクが付与される。したがって、車輪を転舵したときに路面から受ける反力を検出又は推定し、検出又は推定した反力に応じて反力モータ8を駆動制御することで、運転者のステアリング操作に対して操作反力が付与される。
通常は、クラッチ6を遮断した状態で、転舵モータ31を駆動制御すると共に、反力モータ8を駆動制御することで、ステア・バイ・ワイヤを実行し、所望のステアリング特性や旋回挙動特性を実現し、且つ良好な操作フィーリングを実現する。一方、システムに異常が生じた場合には、ステア・バイ・ワイヤを中止し、フェールセーフとしてクラッチ6を締結状態に戻すことで、機械的なバックアップを確保する。
ステアリングコラム5は、チルトピボット41を介して揺動可能な状態で車体に支持してある。車体横方向から見て、ステアリングシャフト42及び操舵側中間シャフト9間のユニバーサルジョイント7の中心位置と、チルトピボット41の中心位置とは相違させたレイアウトとしている。
操舵側中間シャフト9、及び転舵側中間シャフト21は、夫々、軸方向に伸縮可能に構成してある。
クラッチ6は、ブラケット43を介してダッシュパネル45に固定してある。
以上により、ユニバーサルジョイント7及びユニバーサルジョイント11は、ステアリングホイール32とクラッチ6との間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントを形成する。また、ユニバーサルジョイント19及びユニバーサルジョイント23は、転舵輪24とクラッチ6との間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントを形成する。すなわち、トルク伝達経路は、ステアリングホイール32とクラッチ6との間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、転舵輪24とクラッチ6との間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントを備える。
(指令演算部54の詳細な構成)
次に、図1から図3を参照しつつ、図4を用いて、指令演算部54の詳細な構成について説明する。
図4は、指令演算部54の構成を示すブロック図である。
図4中に示すように、指令演算部54は、中立位置記憶部60と、転舵モータ電流指令演算部62と、クラッチ状態切り替え部64を備える。これに加え、指令演算部54は、操舵側クラッチ角算出部66と、転舵側クラッチ角算出部68と、クラッチ角偏差算出部70と、クラッチ角偏差記憶部72と、転舵角記憶部74と、転舵角算出部76と、補正処理ブロック78を備える。
中立位置記憶部60は、例えば、車両の製造時や、車両の出荷前に行なう調整工程等において、ステアリングホイール32の操舵角と転舵輪24の実転舵角を共に中立位置:0[°]へ調整した状態における、操舵角と転舵モータ回転角との関係を記憶する。なお、ステアリングホイール32の操舵角と転舵輪24の実転舵角を共に中立位置へ調整した状態における、操舵角と転舵モータ回転角との関係とは、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差(偏差角[deg])である。本実施形態では、一例として、ステアリングホイール32の操舵角と転舵輪24の実転舵角を共に中立位置へ調整した状態における、操舵角と転舵モータ回転角との関係を、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差が0[°]とした場合を説明する。
また、中立位置記憶部60は、転舵角算出部76が算出した転舵輪24の転舵角に応じて、記憶している操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正(上書き)する処理を行う。この処理は、例えば、転舵角算出部76が算出した転舵輪24の転舵角が、右回り(車両を右旋回させる方向)へ10[°]である場合、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差を、左回りへ10[°]に補正(上書き)する処理である。
転舵モータ電流指令演算部62は、中立位置記憶部60が記憶している操舵角と転舵モータ回転角との関係と、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHと、車速センサ50が検出した車速に基づき、転舵モータ電流指令を演算する。そして、演算した転舵モータ電流指令を含む情報信号を、転舵位置サーボ制御部30へ出力する。
クラッチ状態切り替え部64は、エンジンコントローラ52からエンジンの状態を含む情報信号の入力を受ける。
そして、クラッチ状態切り替え部64は、エンジンの状態を含む情報信号が、エンジン駆動の状態を含む場合、車両のイグニッションスイッチがオン状態であると判定し、クラッチ6を開放状態に切り替えるためのクラッチ電流指令を生成する。そして、生成したクラッチ電流指令を含む情報信号を、クラッチ角偏差算出部70と、クラッチ角偏差記憶部72及びクラッチ制御部58へ出力する。なお、車両のイグニッションスイッチがオン状態であるとの判定は、エンジンの状態を含む情報信号がエンジン駆動の状態を含む場合に限定するものではない。この場合、運転者等によりイグニッションスイッチが操作されたことを検出すると、エンジンが停止していても、車両のイグニッションスイッチがオン状態であると判定してもよい。これは、以降の説明においても同様である。また、エンジンが停止していても、車両のイグニッションスイッチがオン状態であるとは、例えば、イグニッションスイッチの操作位置が、ACC(アクセサリーポジション)となっている場合である。
また、クラッチ状態切り替え部64は、エンジンの状態を含む情報信号が、エンジン停止の状態を含む場合、車両のイグニッションスイッチがオフ状態であると判定し、クラッチ6を連結状態に切り替えるためのクラッチ電流指令を生成する。そして、生成したクラッチ電流指令を含む情報信号を、操舵側クラッチ角算出部66と、転舵側クラッチ角算出部68と、クラッチ角偏差算出部70と、クラッチ角偏差記憶部72及びクラッチ制御部58へ出力する。
操舵側クラッチ角算出部66は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、操舵側クラッチ角算出部66は、操舵角センサ34から、ステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号の入力を受ける。さらに、操舵側クラッチ角算出部66は、操舵トルクセンサ36から、トルクセンサ値Vtsを含む情報信号の入力を受ける。
そして、操舵側クラッチ角算出部66は、クラッチ6を連結状態へ切り替えると、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHに基づいて、トルク伝達経路のステアリングホイール32側における回転角である操舵側クラッチ角を算出する。さらに、算出した操舵側クラッチ角を含む情報信号を、クラッチ角偏差算出部70へ出力する。
ここで、本実施形態の操舵側クラッチ角算出部66は、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が、操舵側ユニバーサルジョイントを介してクラッチ6へ伝達された回転角である操舵側出力角に基づいて、操舵側クラッチ角を算出する。なお、操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
転舵側クラッチ角算出部68は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵側クラッチ角算出部68は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。さらに、転舵側クラッチ角算出部68は、操舵トルクセンサ36から、トルクセンサ値Vtsを含む情報信号の入力を受ける。
そして、転舵側クラッチ角算出部68は、クラッチ6を連結状態へ切り替えると、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角に基づいて、トルク伝達経路の転舵輪24側における回転角である転舵側クラッチ角を算出する。さらに、算出した転舵側クラッチ角を含む情報信号を、クラッチ角偏差算出部70へ出力する。なお、転舵側クラッチ角算出部68が転舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
ここで、本実施形態の転舵側クラッチ角算出部68は、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角が、転舵側ユニバーサルジョイントを介してクラッチ6へ伝達された回転角である転舵側逆出力角に基づいて、操舵側クラッチ角を算出する。なお、操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理については、後述する。
また、転舵側クラッチ角算出部68は、補正処理ブロック78から入力を受けた補正指令値に応じて、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いるパラメータを補正する。なお、転舵側クラッチ角算出部68が補正処理ブロック78から入力を受けた補正指令値に応じて行う処理については、後述する。
クラッチ角偏差算出部70は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、クラッチ角偏差算出部70は、操舵側クラッチ角算出部66から、操舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。さらに、クラッチ角偏差算出部70は、転舵側クラッチ角算出部68から、転舵側クラッチ角を含む情報信号の入力を受ける。
そして、クラッチ角偏差算出部70は、操舵側クラッチ角と転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出し、この算出したクラッチ角偏差を含む情報信号を、クラッチ角偏差記憶部72及び転舵角算出部76へ出力する。なお、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する具体的な処理については、後述する。
クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受ける。
そして、クラッチ角偏差記憶部72は、クラッチ6を連結状態へ切り替えた時点の、クラッチ角偏差を記憶する。
転舵角記憶部74は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角記憶部74は、転舵モータ角度センサ16から、転舵モータ回転角を含む情報信号の入力を受ける。
そして、転舵角記憶部74は、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点の、転舵輪24の転舵角を記憶する。
転舵角算出部76は、クラッチ状態切り替え部64から、クラッチ電流指令を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵角算出部76は、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受ける。また、転舵角算出部76は、操舵トルクセンサ36から、トルクセンサ値Vtsを含む情報信号の入力を受ける。
そして、転舵角算出部76は、イグニッションスイッチがオン状態となると、クラッチ6を開放状態へ切り替える前に、クラッチ角偏差算出部70が算出したクラッチ角偏差とユニバーサルジョイント変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。さらに、算出した転舵輪24の転舵角を含む情報信号を、転舵位置サーボ制御部30へ出力する。
ここで、上記のユニバーサルジョイント変化角とは、操舵角センサ34が検出した現在操舵角に基づき、トルク伝達経路上で、予め転舵角算出部76が記憶したモデルを用いて算出した角度である。なお、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理と、転舵角算出部76が記憶したモデルについては、後述する。
ここで、本実施形態では、一例として、転舵角算出部76の構成を、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が変化しない場合、転舵角記憶部74が記憶した転舵角を、転舵輪24の転舵角として算出する構成とする。なお、転舵角記憶部74が記憶した転舵角は、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、操舵角センサ34が検出した現在操舵角が変化しない場合に、転舵角記憶部74から取得する。
また、転舵角算出部76は、補正処理ブロック78から入力を受けた補正指令値に応じて、転舵輪24の転舵角を算出する処理で用いるパラメータを補正する。なお、転舵角算出部76が補正処理ブロック78から入力を受けた補正指令値に応じて行う処理については、後述する。
補正処理ブロック78は、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を、例えば、出荷前の調整工程で行う処理や、車両の出荷後に整備工場等で行う処理等において補正する処理を行う処理ブロックである。なお、補正処理ブロック78の構成については、後述する。
(クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する処理)
以下、図1から図4を参照しつつ、図5及び図6を用いて、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する具体的な処理について説明する。
図5は、クラッチ角偏差算出部70がクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。
クラッチ角偏差を算出する処理では、操舵側クラッチ角算出部66により操舵側クラッチ角θcl_inを算出し、転舵側クラッチ角算出部68により転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。そして、転舵側クラッチ角θcl_outから操舵側クラッチ角θcl_inを減算した値を、クラッチ角偏差dθCLとして算出(図5中に示す「dθCL=θcl_out−θcl_in」)する。
以下、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する処理と、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理を具体的に説明する。
・操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理
操舵側クラッチ角算出部66が操舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、操舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、操舵側クラッチ角算出部66に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、操舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
そして、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であると判定すると、以下の処理を行う。
イグニッションスイッチがオフ状態となると、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして以下の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。なお、以下の式(1)は、各ユニバーサルジョイントの出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを示す式である。また、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理については、後述する。
ここで、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、操舵側クラッチ角算出部66及び転舵角算出部76に記憶させておく。
Figure 0006142659
ここで、上記の式(1)中に示す「α」は、予め設定した平面(例えば、上下方向及び車両前後方向に平行な平面)への平面視における、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)の入力側の軸と出力側の軸がなす角度である。
したがって、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵輪側入力角と転舵輪側出力角の関係を示すモデル式となる。ここで、操舵輪側入力角は、ユニバーサルジョイントへステアリングホイール32側から入力した角度であり、転舵輪側出力角は、ユニバーサルジョイントを介して操舵輪側入力角を転舵輪24側へ出力した角度である。
すなわち、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する際には、上記の式(1)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント7の入力側の軸(ステアリングシャフト42)とユニバーサルジョイント7の出力側の軸(操舵側中間シャフト9)がなす角度となる。なお、以降の説明では、ステアリングシャフト42と操舵側中間シャフト9とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント7のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α」と記載する場合がある。
ジョイント角αは、例えば、現在操舵角θHと、予め生成した波形マップを用いて、車両の出荷前に行なう調整工程等において算出し、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶する。なお、ジョイント角αの算出及び記憶は、車両の出荷後は、例えば、整備工場等において行なってもよい。
また、ジョイント角αの算出は、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)で行なう。
ここで、波形マップは、図6中に示すマップであり、例えば、クラッチ角偏差算出部70に記憶させておく。なお、図6は、波形マップを示す図であり、車両の諸元等に因らず、数式等により規定されるマップである。
また、図6中では、横軸に操舵角(図中では、「操舵角[deg]」と記載する)を示し、縦軸にピニオン46の角度(ピニオン角)と操舵角との偏差(図中では、「偏差角[deg]」と記載する)を示す。
ここで、各ユニバーサルジョイントには不等速性が有るため、図6中に示すように、例えば、操舵角が0[deg]の状態等を除き、操舵角とピニオン角との関係は一定の関係とはならず、ピニオン角と操舵角との偏差は、操舵角に応じて変化する。
そして、ジョイント角α1を算出する際には、例えば、ステアリングホイール32の操舵角を変化させて、波形マップ中の偏差角[deg]を変化させる。この場合、操舵角を変化させて偏差角[deg]の上限値及び下限値を検出し、これらの検出した上限値及び下限値に基づいて、ジョイント角αを算出する。
また、上記の式(1)中に示す「θoffset」は、トルク伝達経路における、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)の、入力側の軸に対する出力側の軸のねじれ角を示す位相角である。
したがって、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵輪側入力角にユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を加算した角度と、転舵輪側出力角の関係を示すモデル式となる。
また、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、操舵輪側入力角に位相角を加算した角度と、転舵輪側出力角と、平面視におけるユニバーサルジョイントの入力側の軸と出力側の軸がなす角度であるジョイント角αの関係を示すモデル式となる。
すなわち、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetを算出する際には、上記の式(1)中に示す「θoffset」が、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、ステアリングシャフト42に対する操舵側中間シャフト9のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント7の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset1」と記載する場合がある。
位相角θoffsetは、車両の設計事項であるため、例えば、車両の製造時等において、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶する。なお、位相角θoffsetは、例えば、車両の出荷前に検出及び記憶してもよい。また、位相角θoffsetの検出及び記憶は、車両の出荷後は、例えば、整備工場等において行なってもよい。
また、位相角θoffsetを検出する際には、ステアリングホイール32の現在操舵角と転舵輪24の実転舵角とを、互いに対応する角度に調整した状態(例えば、現在操舵角及び実転舵角を、共に中立位置:0[°]に調整した状態)とする。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント7の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント11の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。
ここで、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する際には、上記の式(1)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント11の入力側の軸(操舵側中間シャフト9)とユニバーサルジョイント11の出力側の軸(クラッチ入力軸13)がなす角度となる。なお、以降の説明では、操舵側中間シャフト9とクラッチ入力軸13とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント11のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α」と記載する場合がある。
また、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する際には、上記の式(1)中に示す「θoffset」が、操舵側中間シャフト9に対するクラッチ入力軸13のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、操舵側中間シャフト9に対するクラッチ入力軸13のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント11の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset2」と記載する場合がある。
以上により、操舵側クラッチ角算出部66は、予め設定した操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに、操舵角センサ34が検出した現在操舵角を入力して、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する。
ここで、操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、以下に示す二つのモデル式(E1、E2)である。
E1.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角αを入力し、「θoffset」として位相角θoffset1を入力したモデル式
E2.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角αを入力し、「θoffset」として位相角θoffset2を入力したモデル式
・転舵側クラッチ角算出部68が転舵側クラッチ角を算出する処理
転舵側クラッチ角算出部68が転舵側クラッチ角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵側クラッチ角算出用トルク閾値は、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵側クラッチ角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
そして、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であると判定すると、以下の処理を行う。
イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして以下の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する。なお、以下の式(2)は、各ユニバーサルジョイントの逆出力角を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを示す式である。
ここで、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵側クラッチ角算出部68に記憶させておく。
Figure 0006142659
ここで、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する際には、上記の式(2)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント23の入力側の軸(転舵側中間シャフト21)とユニバーサルジョイント23の出力側の軸(ピニオンシャフト25)がなす角度となる。なお、以降の説明では、転舵側中間シャフト21とピニオンシャフト25とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント23のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α」と記載する場合がある。
したがって、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、転舵輪側逆入力角と操舵輪側逆出力角の関係を示すモデル式となる。ここで、転舵輪側逆入力角は、転舵側ユニバーサルジョイントへ転舵輪24側から入力した角度であり、操舵輪側逆出力角は、転舵側ユニバーサルジョイントを介して転舵輪側逆入力角をステアリングホイール32側へ出力した角度である。
また、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する際には、上記の式(2)中に示す「θoffset」が、転舵側中間シャフト21に対するピニオンシャフト25のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、転舵側中間シャフト21に対するピニオンシャフト25のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント23の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset4」と記載する場合がある。
したがって、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、転舵輪側逆入力角からユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を減算した角度と、操舵輪側逆出力角の関係を示すモデル式となる。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを、ユニバーサルジョイント19の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを、転舵側クラッチ角θcl_outとして算出する。
ここで、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する際には、上記の式(2)中に示す「α」が、ユニバーサルジョイント19の入力側の軸とユニバーサルジョイント19の出力側の軸がなす角度となる。ここで、ユニバーサルジョイント19の入力側の軸は、クラッチ出力シャフト17であり、ユニバーサルジョイント19の出力側の軸は、転舵側中間シャフト21である。なお、以降の説明では、クラッチ出力シャフト17と転舵側中間シャフト21とのなす角度αを、ユニバーサルジョイント19のジョイント角αと規定し、「ジョイント角α」と記載する場合がある。
また、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する際には、上記の式(2)中に示す「θoffset」が、クラッチ出力シャフト17に対する転舵側中間シャフト21のねじれ角を示す位相角となる。なお、以降の説明では、クラッチ出力シャフト17に対する転舵側中間シャフト21のねじれ角を示す位相角を、ユニバーサルジョイント19の位相角θoffsetと規定し、「位相角θoffset3」と記載する場合がある。
以上により、転舵側クラッチ角算出部68は、予め設定したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルに、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角を入力して、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。
なお、上記の説明では、式(1)及び(2)を用いて処理を行ったが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、現在操舵角と操舵側クラッチ角θcl_inとの関係を示すマップと、転舵モータ回転角と転舵側クラッチ角θcl_outとの関係を示すマップを用いて処理を行ってもよい。
(転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理)
以下、図1から図6を参照しつつ、図7を用いて、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する具体的な処理について説明する。
図7は、転舵角算出部76が転舵輪24の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。
転舵輪24の転舵角を算出する処理では、まず、操舵トルクセンサ36から入力を受けたトルクセンサ値Vtsを含む情報信号を参照する。そして、トルクセンサ値Vtsが、予め設定した転舵角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する。ここで、転舵角算出用トルク閾値は、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクとなる値に設定し、転舵角算出部76に記憶する。したがって、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内であれば、運転者がステアリングホイール32に加えている操舵トルクが、転舵角を算出する処理を行うために適切なトルクである。
そして、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内であると判定すると、以下の処理を行う。
イグニッションスイッチをオン状態とした時点において操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、ユニバーサルジョイント7の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力する。これにより、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント7の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント11の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。
ここで、転舵輪24の転舵角を算出する処理では、クラッチ角偏差記憶部72が記憶しているクラッチ角偏差dθCLに、上記のように算出した操舵側クラッチ角θcl_inを加算する。これにより、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出(図7中に示す「Pθcl_out=θcl_in+dθCL」)する。すなわち、転舵角算出部76は、転舵輪24の転舵角を算出する際に、クラッチ角偏差記憶部72から記憶しているクラッチ角偏差dθCLの情報を取得する。
そして、上記のように算出した転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを、ユニバーサルジョイント19の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント19の出力角θoutを算出する。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント19の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント23の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出する。
ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出した後、この算出したユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を減算する。これにより、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分による影響を除去して、転舵輪24の転舵角を算出する。
ここで、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分は、以下の式(3)で示される。なお、以下の式(3)は、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分を算出するためのモデルとして用いることが可能な、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルを示す式である。また、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する原理については、後述する。
ここで、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵角算出部76に記憶させておく。
Figure 0006142659
したがって、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)の入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を示すモデル式となる。
これに加え、転舵輪24の転舵角を算出する処理では、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を除算したユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、上述したトルクセンサ値Vtpに基づいて補正する。
ここで、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutの補正には、トルクセンサ値Vtpに基づく各シャフト及び各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のねじれ角を用いる。なお、各シャフトとは、ステアリングシャフト42、操舵側中間シャフト9、クラッチ出力シャフト17、転舵側中間シャフト21、ピニオンシャフト25である。
また、各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじれ角は、以下の式(4)で示される。なお、以下の式(4)は、転舵輪24の転舵角を算出する際に、各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじれ角による補正を行うためのモデルとして用いることが可能な、トルクセンサモデルを示す式である。
ねじれ角=トルクセンサ値Vtp[Nm]/各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじり剛性[Nm/rad] … (4)
したがって、トルクセンサモデルは、ピニオン軸トルクセンサ46tが検出したピニオン軸トルクに基づく操舵トルクと、各ユニバーサルジョイントのねじり剛性と、各ユニバーサルジョイントの入力軸及び出力軸のねじり剛性との関係を示すモデル式となる。
ここで、トルクセンサモデルは、例えば、車両の出荷前に行なう調整工程等において設定し、転舵角算出部76に記憶させておく。
なお、本実施形態では、一例として、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、各シャフト及び各ユニバーサルジョイントのねじれ角を用いて補正する際に、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutにねじれ角を加算する場合を説明する。
以上により、転舵角算出部76は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、予め設定した転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを入力した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
ここで、転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、以下に示す二つのモデル式(E3、E4)である。
E3.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角αを入力し、「θoffset」として位相角θoffset3を入力したモデル式
E4.上記の式(1)に、「α」としてジョイント角αを入力し、「θoffset」として位相角θoffset4を入力したモデル式
したがって、操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルと、転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、上記の式(1)で示すユニバーサルジョイント出力角算出モデルに基づくモデル式である。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角から、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分を減算した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
また、本実施形態の転舵角算出部76は、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、トルクセンサモデルを用いて算出したトルク伝達経路のねじれ角を用いて補正する。そして、この補正した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
(補正角算出ブロック78の構成)
以下、図1から図7を参照しつつ、図8から図13を用いて、補正角算出ブロック78の構成について説明する。
図8は、補正角算出ブロック78の構成を示すブロック図である。
図8中に示すように、補正角算出ブロック78は、相関マップ記憶部80と、実機入出力角偏差演算部84と、位相角補正要否判定部94と、補正指令値出力部96を備える。
相関マップ記憶部80は、車両の製造時等に生成した相関マップを記憶する。
ここで、相関マップは、図9中に示すように、演算上で用いるユニバーサルジョイント(以降の説明では、「演算用ユニバーサルジョイント」と記載する場合がある)のジョイント角αxと、演算上で用いる入出力角偏差との関係を示すマップである。なお、図9は、相関マップを示す図であり、車両の諸元等に因らず、数式等により規定されるマップである。また、以降の説明では、演算上で用いる入出力角偏差を、「演算用入出力角偏差」と記載する場合がある。
また、図9中では、横軸に演算上で用いる操舵角である演算用操舵角θHx(図中では、「θHx」と記載する)を示し、縦軸に演算用入出力角偏差(図中では、「θoutx−θHx」と記載する)を示す。さらに、図9中では、演算用入出力角偏差の最大値(図中では、「max」と記載する)と演算用入出力角偏差の最小値(図中では、「min」と記載する)との変化幅である演算用入出力角偏差最大変化幅を、「PPx」と示す。
このとき、演算用操舵角θHxを、−180[deg]から+180[deg]の範囲内で変化させて、相関マップを生成するために用いるユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力し、演算用ユニバーサルジョイントの出力角θoutxを算出する。さらに、演算用ユニバーサルジョイントの出力角θoutxから演算用操舵角θHxを減算して、演算用入出力角偏差を算出する。また、演算用ユニバーサルジョイントの出力角θoutxを算出する際には、オフセット成分を除去する。
なお、相関マップを生成するために用いるユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、上記の式(1)で示すユニバーサルジョイント出力角算出モデルと同様のモデル式である。
また、相関マップを生成するために用いるユニバーサルジョイント出力角算出モデルには、演算用ユニバーサルジョイントのジョイント角αxとして、0〜90[deg]の範囲内で変化させたジョイント角αを入力する。
また、図9中に示す相関マップは、車両の設計値が製造時の人的要因等により変更されずに反映された状態に基づいて生成する。すなわち、図9中に示す相関マップは、車両の製造時等にトルク伝達経路を構成する部材に組み付け誤差が発生していない状態において、演算用操舵角θHx及びジョイント角αxに応じた演算用入出力角偏差最大変化幅PPxを算出することが可能なマップである。
上記の処理により生成した相関マップは、図9中に示すように、ジョイント角αxが大きくなるほど、演算用操舵角θHxの変化に応じた演算用入出力角偏差の変化量が大きくなる関係を示すマップとなる。
実機入出力角偏差演算部84は、実際の車両(実機)を用い、操舵角(現在操舵角θH)を−180[deg]から+180[deg]の範囲内で変化させた状態において、ユニバーサルジョイントの出力角θoutから現在操舵角θHを減算する。これにより、実機入出力角偏差演算部84は、実機入出力角偏差最大変化幅を算出する。
具体的には、例えば、整備場等において、車両の状態を、ステアリングホイール32の操舵角、トルク伝達経路、転舵輪24の実転舵角を共に中立位置へ調整した状態とし、さらに、クラッチ6の状態を完全締結状態とする。そして、実機入出力角偏差演算部84が行う処理を開始する指令値を含む情報信号の入力を受けると、人員等によるステアリングホイール32の操作により、操舵角を−180[deg]から+180[deg]の範囲内で変化させる。
さらに、−180[deg]から+180[deg]の範囲内で変化させた操舵角に応じて、転舵角算出部76により転舵角を算出し、この算出した転舵角から現在操舵角θHを減算した値を検出する。
ここで、本実施形態では、一例として、図10中に示すように、以下の順番で、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する場合について説明する。なお、図10は、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する手順を示す図である。また、図10中では、横軸に現在操舵角θH(図中では、「θH」と記載する)を示し、縦軸に転舵角算出部76が算出した転舵角(図中では、「転舵角」と記載する)を示す。
まず、図10中に矢印S1で示すように、操舵角を0[deg]から+180[deg]へ増加させる状態において、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する。
次に、図10中に矢印S2で示すように、操舵角を+180[deg]から0[deg]へ減少させる状態において、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する。
そして、図10中に矢印S3で示すように、操舵角を0[deg]から−180[deg]へ減少させる状態において、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する。
最後に、図10中に矢印S4で示すように、操舵角を−180[deg]から0[deg]へ増加させる状態において、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する。
上記の順番で転舵角を算出する際に、算出した転舵角から現在操舵角θHを減算した実機入出力角偏差の変化から、図11中に示すように、最大値の平均と最小値の平均を算出する。そして、算出した最大値の平均と最小値の平均との変化幅を、実機入出力角偏差最大変化幅として演算する。
なお、図11は、現在操舵角θHに応じて変化する実機入出力角偏差を算出する手順を示す図である。また、図11中では、横軸に現在操舵角θH(図中では、「θH」と記載する)を示し、縦軸に実機入出力角偏差を示す。また、図11中では、実機入出力角偏差の最大値の平均を「max_ave」と示し、実機入出力角偏差の最小値の平均を「min_ave」と示す。これに加え、図11中では、max_aveとmin_aveとの変化幅である実機入出力角偏差最大変化幅を、「PPr」と示す。また、図11中では、操舵角の増加に伴って変化する実機入出力角偏差を実線で示し、操舵角の減少に伴って変化する実機入出力角偏差を破線で示す。
すなわち、本実施形態では、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する現在操舵角θHを、中立位置(0[deg])を基準として、予め設定した範囲(±180[deg])内で変化させた後に、中立位置へ戻す。そして、このときの転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する。
また、本実施形態では、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する現在操舵角θHを、中立位置(0[deg])を基準として、予め設定した範囲の上限値(+180[deg])まで変化させた後に中立位置へ戻す。さらに、予め設定した範囲の下限値(−180[deg])まで変化させた後に中立位置へ戻したときの、転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する。
位相角補正要否判定部94は、以下に記載する処理を行い、予め設定した補正指令値を用いた位相角の補正の要否を判定する。なお、補正指令値の説明は、後述する。
まず、−180[deg]から+180[deg]の範囲内で変化させた演算用操舵角θHxを、ジョイント角αxとして車両の設計値のジョイント角(α、α、α、α)を用いた相関マップに入力する。これにより、図12中に示すように、基準補正要否判定用入出力角偏差を演算する。なお、図12は、位相角補正要否判定部94が行なう処理を示す図である。また、図12中では、基準補正要否判定用入出力角偏差を実線L1で示す。また、図12中では、横軸に演算用操舵角θHxを示し、縦軸に基準補正要否判定用入出力角偏差を示す。
さらに、基準補正要否判定用入出力角偏差に対し、演算用操舵角θHxに換算して予め設定した増減閾値を加算した、加算補正要否判定用入出力角偏差を演算する。これに加え、基準補正要否判定用入出力角偏差に対し、演算用操舵角θHxに換算して予め設定した増減閾値を減算した、減算補正要否判定用入出力角偏差を演算する。
ここで、本実施形態では、一例として、増減閾値を、演算用操舵角θHxに換算して5[deg]とした場合を説明する。なお、増減閾値は、例えば、車両の諸元等に応じて、適宜設定可能な値である。
また、図12中では、加算補正要否判定用入出力角偏差を破線L2で示し、減算補正要否判定用入出力角偏差を一点差線L3で示す。また、図12中では、加算補正要否判定用入出力角偏差L2の最大値を「maxL2」と示し、減算補正要否判定用入出力角偏差L3の最大値を「maxL3」と示す。
ここで、図12中に示すように、基準補正要否判定用入出力角偏差、加算補正要否判定用入出力角偏差、減算補正要否判定用入出力角偏差は、最大値と最小値との変化幅が同一である。
次に、位相角補正要否判定部94は、加算補正要否判定用入出力角偏差L2の最大値maxL2と、減算補正要否判定用入出力角偏差L3の最大値maxL3と、実機転舵角最大値を比較する。
ここで、実機転舵角最大値とは、実機入出力角偏差演算部84が演算した実機入出力角偏差最大変化幅PPrの最大値である。
そして、図13中に示すように、実機転舵角最大値が、最大値maxL2と最大値maxL3との間の値である場合は、補正指令値を用いた位相角の補正が不要であると判定する。なお、図13は、位相角補正要否判定部94が行なう処理を示す図である。また、図13中では、実機入出力角偏差最大変化幅を実線PPrで示し、実機転舵角最大値を「maxPPr」と示す。また、図13中では、図12中と同様、加算補正要否判定用入出力角偏差L2の最大値を「maxL2」と示し、減算補正要否判定用入出力角偏差L3の最大値を「maxL3」と示す。
一方、実機転舵角最大値maxPPrが、最大値maxL2と最大値maxL3との間の値ではない場合は、補正指令値を用いた位相角の補正が必要であると判定する。
ここで、補正指令値は、増減閾値に応じて予め設定した値であり、例えば、補正指令値出力部96に記憶させておく。なお、以降の説明では、補正指令値を「θoffsetX」と記載する場合がある。
補正指令値出力部96は、位相角補正要否判定部94による判定内容及び判定結果に応じて、転舵側クラッチ角算出部68へ、増減閾値に応じて位相角θoffset3から減算する補正指令値を出力する。これに加え、補正指令値出力部96は、位相角補正要否判定部94による判定内容及び判定結果に応じて、転舵角算出部76へ、増減閾値に応じて位相角θoffset1に加算する補正指令値を出力する。
具体的には、実機転舵角最大値maxPPrが最大値maxL3を超えており、位相角の補正が必要であると判定した場合には、転舵側クラッチ角算出部68へ、位相角θoffset3を増減閾値に応じて増加補正する補正指令値を出力する。これに加え、転舵角算出部76へ、位相角θoffset1を増減閾値に応じて増加補正する補正指令値を出力する。
一方、実機転舵角最大値maxPPrが最大値maxL2未満であり、補正指令値を用いた位相角の補正が必要であると判定した場合には、転舵側クラッチ角算出部68へ、位相角θoffset3を増減閾値に応じて減少補正する補正指令値を出力する。これに加え、転舵角算出部76へ、位相角θoffset1を増減閾値に応じて減少補正する補正指令値を出力する。
ここで、本実施形態では、増減閾値を、演算用操舵角θHxに換算して5[deg]としている。
このため、実機転舵角最大値maxPPrが最大値maxL3を超えており、位相角の補正が必要であると判定した場合には、転舵側クラッチ角算出部68へ、位相角θoffset3を演算用操舵角θHxに換算して5[deg]減少させる補正指令値を出力する。これに加え、転舵角算出部76へ、位相角θoffset1を演算用操舵角θHxに換算して5[deg]増加させる補正指令値を出力する。
すなわち、実機転舵角最大値maxPPrが、増減閾値の絶対値のうち正の値である最大値maxL3を超えている場合には、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角θoffset3から補正指令値θoffsetXとして+5[deg]を減算する処理を行う。これにより、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角θoffset3から減算する補正指令値θoffsetXを、増減閾値の正の値に設定する。
これに加え、実機転舵角最大値maxPPrが、増減閾値の絶対値のうち正の値である最大値maxL3を超えている場合には、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に補正指令値θoffsetXとして+5[deg]を加算する処理を行う。これにより、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に加算する補正指令値θoffsetXを、増減閾値の正の値に設定する。
一方、実機転舵角最大値maxPPrが最大値maxL2未満であり、位相角の補正が必要であると判定した場合には、転舵側クラッチ角算出部68へ、位相角θoffset3を演算用操舵角θHxに換算して5[deg]加算させる補正指令値を出力する。これに加え、転舵角算出部76へ、位相角θoffset1を演算用操舵角θHxに換算して5[deg]減少させる補正指令値を出力する。
すなわち、実機転舵角最大値maxPPrが、増減閾値の絶対値のうち負の値である最大値maxL2未満である場合には、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角θoffset3から補正指令値θoffsetXとして−5[deg]を減算する処理を行う。これにより、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角θoffset3から減算する補正指令値θoffsetXを、増減閾値の負の値に設定する。
これに加え、実機転舵角最大値maxPPrが、増減閾値の絶対値のうち負の値である最大値maxL2未満である場合には、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に補正指令値θoffsetXとして−5[deg]を加算する処理を行う。これにより、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に加算する補正指令値θoffsetXを、増減閾値の負の値に設定する。
以上により、補正角算出ブロック78は、実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かを判定する。これに加え、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正すると判定すると、補正指令値を、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に加算する。
また、補正角算出ブロック78は、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、増減閾値に応じて設定した補正指令値θoffsetXを、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffsetに加算する処理を行う。
また、補正角算出ブロック78は、補正指令値θoffsetXを、ユニバーサルジョイント7に対応するユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に加算する処理を行う。すなわち、補正角算出ブロック78は、全ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のうち、最もステアリングホイール32側のユニバーサルジョイント7に対応するユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に補正指令値を加算する処理を行う。この処理は、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の絶対値の範囲外である場合に行なう。
また、補正角算出ブロック78は、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、補正指令値θoffsetXを、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角θoffset3から減算する処理を行う。
(位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いてクラッチ角偏差を算出する処理)
以下、図5を参照しつつ、図14を用いて、クラッチ角偏差算出部70が、位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いてクラッチ角偏差を算出する具体的な処理について説明する。
図14は、クラッチ角偏差算出部70が、位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いてクラッチ角偏差を算出する処理を示すブロック図である。
以下、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理を具体的に説明する。なお、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する処理は、上述した処理と同様であるため、その説明を省略する。
まず、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力し、ユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを算出する。
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント23の逆出力角θoutを、ユニバーサルジョイント19の逆入力角tanθInとして、下記のモデル式E5に入力し、ユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを算出する。さらに、算出したユニバーサルジョイント19の逆出力角θoutを、転舵側クラッチ角θcl_outとして算出する。
E5.上記の式(2)に、「θoffset」として、位相角θoffset3に補正指令値θoffsetX(+5[deg]、または、−5[deg])を加算した値(「θoffset3+θoffsetX」)を入力したモデル式
そして、転舵側クラッチ角θcl_outから操舵側クラッチ角θcl_inを減算した値を、クラッチ角偏差dθCLとして算出(図14中に示す「dθCL=θcl_out−θcl_in」)する。
(位相角を補正したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて転舵輪24の転舵角を算出する処理)
以下、図7を参照しつつ、図15を用いて、転舵角算出部76が、位相角を補正したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて転舵輪24の転舵角を算出する処理について説明する。
図15は、転舵角算出部76が、位相角を補正したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて転舵輪24の転舵角を算出する処理を示すブロック図である。なお、図7を用いて説明した転舵輪24の転舵角を算出する処理と同様の内容については、説明を省略する場合がある。
イグニッションスイッチをオン状態とした時点において操舵角センサ34が検出した現在操舵角を、下記のモデル式E6に入力し、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。
E6.上記の式(1)に、「θoffset」として、位相角θoffset1に補正指令値θoffsetX(+5[deg]、または、−5[deg])を加算した値(「θoffset1+θoffsetX」)を入力したモデル式
次に、上記のように算出したユニバーサルジョイント7の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント11の入力角tanθInとして上記の式(1)に入力し、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出する。そして、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。
そして、操舵側クラッチ角θcl_inに、クラッチ角偏差記憶部72が記憶しているクラッチ角偏差dθCLを加算して、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出(図7中に示す「Pθcl_out=θcl_in+dθCL」)する。
また、上記のように算出した転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを、ユニバーサルジョイント19の入力角tanθInとして上記のモデル式E3に入力し、ユニバーサルジョイント19の出力角θoutを算出する。さらに、算出したユニバーサルジョイント19の出力角θoutを、ユニバーサルジョイント23の入力角tanθInとして上記のモデル式E4に入力し、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出する。
ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出した後、この算出したユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を減算する。これにより、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分による影響を除去して、転舵輪24の転舵角を算出する。
ここで、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分は、例えば、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルに補正指令値θoffsetXを入力して算出する。
これに加え、転舵角を算出する処理では、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を除算したユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、上述したトルクセンサモデルを用いて補正する。
(ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理)
以下、図1から図15を参照しつつ、図16から図18を用いて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する原理について説明する。
図16は、単体のユニバーサルジョイントが有する回転軸と、回転軸周りの回転運動との関係を示す図である。なお、図16中には、説明のために、ステアリングホイール32を模式的に示している。すなわち、図16中に示す単体のユニバーサルジョイントは、ユニバーサルジョイント7を示す。
図16中に示すように、ユニバーサルジョイントは、三本の回転軸(x軸、y軸、z軸)を有しており、各回転軸周りの回転行列Rは、それぞれ、以下の式(5)〜(7)で示される。なお、式(5)は、x軸周りの回転行列R(x,θ)を示す式であり、式(6)は、y軸周りの回転行列R(y,θ)を示す式であり、式(7)は、z軸周りの回転行列R(z,θ)を示す式である。
Figure 0006142659
そして、上記の式(5)〜(7)中に示す各回転軸周りの回転行列R(x,θ)、R(y,θ)、R(z,θ)は、以下の式(8)に示すように、一つの回転行列Rに変換することが可能である。
Figure 0006142659
また、図17中に示すように、入力側の軸の回転を図16中に示すθから記号「φ」で置き換え、z軸を基準とした出力側の軸の傾斜角を記号「θ」で規定し、出力側の軸の回転角(以降の説明では、「出力角」と記載する場合がある)を記号「Ψ」で規定する。これにより、ユニバーサルジョイントにおける姿勢角の定義は、以下の式(9)〜(11)で示される。なお、図17は、ユニバーサルジョイントにおける入力側の軸と出力側の軸との関係を示す図である。また、図17中には、説明のために、入力側の軸から出力側の軸への力の流れを、直線の矢印で示している。
Figure 0006142659
ここで、上記の式(9)〜(11)に、以下の式(12)及び(13)で示す拘束条件を追加すると、ユニバーサルジョイントへの入力角tanθと出力角Ψとの関係は、以下の式(14)で示される。
Figure 0006142659
そして、上記の式(14)において、出力角Ψをユニバーサルジョイントの出力角θoutに置き換え、入力角tanθをユニバーサルジョイントの入力角tanθInに置き換えると、以下の式(15)が成立する。
Figure 0006142659
ここで、上記の式(15)は、ユニバーサルジョイントの位相角θoffsetが存在していない状態における、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの関係を示す式となる。
また、車両の構成としては、ステアリングホイール32と転舵輪24との間における各種構成部品のレイアウト等に応じて、各ユニバーサルジョイントの入力軸と出力軸を直列に配列することは少ない。このため、ユニバーサルジョイントの位相角θoffsetが存在する構成が一般的である。
すなわち、図18中に示すように、一般的な構成の車両では、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの間に、位相角θoffsetが存在することとなる。なお、図18は、ユニバーサルジョイントにおける入力側の軸及び出力側の軸と、位相角との関係を示す図である。また、図18中には、説明のために、入力側の軸から出力側の軸への力の流れを、直線の矢印で示している。
したがって、上記の式(15)で示す、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの関係に対して、入力角tanθInに位相角θoffsetを加算すると、上記の式(1)で示されるユニバーサルジョイント出力角算出モデルが成立する。
(ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する原理)
以下、図1から図18を参照して、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する原理について説明する。
転舵輪24の転舵角を算出する際には、上述したように、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。したがって、上記の式(15)において、ユニバーサルジョイントの入力角tanθIn及び出力角θoutを0[°]とすると、以下の式(16)からオフセット成分を減算することにより、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去する。
Figure 0006142659
したがって、上記の式(15)で示す、ユニバーサルジョイントの入力角tanθInと出力角θoutとの関係から、ユニバーサルジョイントのオフセット成分を減算すると、上記の式(3)で示されるユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルが成立する。
(転舵側前回処理内容記憶部MA、反力側前回処理内容記憶部MB)
以下、図1から図18を参照して、転舵側前回処理内容記憶部MAの構成と、反力側前回処理内容記憶部MBの構成について説明する。
転舵側前回処理内容記憶部MAは、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read‐Only Memory)を用いて形成する。
また、転舵側前回処理内容記憶部MAは、エンジンコントローラ52から、エンジンの状態を含む情報信号の入力を受け、さらに、操舵角センサ34から、ステアリングホイール32の現在操舵角を含む情報信号の入力を受ける。これに加え、転舵側前回処理内容記憶部MAは、クラッチ角偏差算出部70から、クラッチ角偏差を含む情報信号の入力を受け、さらに、転舵角算出部76から、転舵輪24の転舵角を含む情報信号の入力を受ける。
そして、転舵側前回処理内容記憶部MAは、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、例えば、EEPROMを用いて形成する。
また、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、エンジンコントローラ52、操舵角センサ34、クラッチ角偏差算出部70、転舵角算出部76から、それぞれ、情報信号の入力を受ける。
そして、反力側前回処理内容記憶部MBは、転舵側前回処理内容記憶部MAと同様、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における、現在操舵角と、クラッチ角偏差と、転舵輪24の転舵角を記憶する。
(指令演算部54が行なう処理)
次に、図1から図18を参照しつつ、図19から図21を用いて、指令演算部54が行なう処理について説明する。
指令演算部54が行なう処理としては、例えば、車両の出荷前に行なう処理と、出荷後の車両に対して行なう処理がある。
・車両の出荷前に行なう処理
図19は、車両の出荷前に行なう処理を示すフローチャートである。
指令演算部54が車両の出荷前に行なう処理としては、ジョイント角αを算出及び記憶する処理と、位相角θoffsetを記憶する処理と、記憶した位相角θoffsetを補正する処理がある。
図19中に示すように、車両の出荷前に行なう処理を開始(START)すると、まず、ステップS10の処理を行う。
ステップS10では、例えば、整備工場等において、ステアリングホイール32の操舵角と転舵輪24の実転舵角を、共に中立位置へ調整(図中に示す「操舵角と実転舵角を中立位置に調整」)する。ステップS10において、操舵角及び実転舵角を中立位置へ調整すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS20へ移行する。
ステップS20では、ジョイント角α〜α4を算出し、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶(図中に示す「ジョイント角αを算出・記憶」)する。ステップS20において、ジョイント角αを算出及び記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS30へ移行する。
ステップS30では、位相角θoffset1〜θoffset4を、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76に記憶(図中に示す「位相角θoffsetを記憶」)する。ステップS30において、位相角θoffsetを記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS40へ移行する。
ステップS40では、操舵角に対する転舵モータ回転角の偏差を、操舵角と転舵モータ回転角との関係として、中立位置記憶部60に記憶(図中に示す「中立位置を記憶」)する。ステップS40において、操舵角と転舵モータ回転角との関係を記憶すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS50へ移行する。
ステップS50では、ステップS10で操舵角及び実転舵角を中立位置へ調整した状態を維持し、実機入出力角偏差演算部84により、実機入出力角偏差最大変化幅を算出(図中に示す「実機入出力角偏差最大変化幅を算出」)する。ステップS50において、実機入出力角偏差最大変化幅を算出すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS60へ移行する。
ステップS60では、位相角補正要否判定部94により、補正指令値を用いた位相角の補正の要否を判定する処理(図中に示す「位相角の補正が必要?」)を行う。
ステップS60において、補正指令値を用いた位相角の補正が必要である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS70へ移行する。
一方、ステップS60において、補正指令値を用いた位相角の補正が必要ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は、ステップS80へ移行する。
ステップS70では、補正指令値出力部96により、転舵側クラッチ角算出部68及び転舵角算出部76へ補正指令値を出力する。これにより、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いる位相角θoffset3と、転舵輪24の転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1を補正(図中に示す「位相角を補正」)する。ステップS70において、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いる位相角θoffset3と、転舵輪24の転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1を補正すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
ステップS80では、補正指令値出力部96から補正指令値を出力せず、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いる位相角θoffset3と、転舵輪24の転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1を補正せずに維持(図中に示す「位相角を維持」)する。ステップS80において、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いる位相角θoffset3と、転舵輪24の転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1を維持すると、車両の出荷前に指令演算部54が行なう処理は終了(END)する。
・出荷後の車両に対して行なう処理
出荷後の車両に対して指令演算部54が行なう処理としては、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理と、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理がある。
図20は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、クラッチ角偏差を算出・記憶する処理を示すフローチャートである。なお、指令演算部54は、予め設定した周期(例えば、5[ms])で、以下に説明する処理を行う。
図20中に示すように、クラッチ角偏差を算出する処理を開始(START)すると、まず、ステップS100の処理を行う。
ステップS100では、イグニッションスイッチがオフ状態であるか否かを判定する処理(図中に示す「IGN−OFF?」)を行う。
ステップS100において、イグニッションスイッチがオフ状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110へ移行する。
一方、ステップS100において、イグニッションスイッチがオフ状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS100の処理を繰り返す。
ステップS110では、クラッチ状態切り替え部64により、クラッチ6を連結状態に切り替えるためのクラッチ電流指令をクラッチ6へ出力する。これに加え、クラッチ6へ出力したクラッチ駆動電流を参照して、クラッチ6が締結状態(滑り締結状態を含まない完全締結状態)であるか否かを判定する処理(図中に示す「クラッチ締結?」)を行う。
ステップS110において、クラッチ6が締結状態である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS120へ移行する。
一方、ステップS110において、クラッチ6が締結状態ではない(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS110の処理を繰り返す。
ステップS120では、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する処理(図中に示す「Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内?」)を行う。
ステップS120において、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS130へ移行する。
一方、ステップS120において、トルクセンサ値Vtsが操舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲外である(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS120の処理を繰り返す。
ステップS130では、操舵側クラッチ角算出部66により、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて、操舵側クラッチ角θcl_inを算出(図中に示す「操舵側クラッチ角θcl_inを算出」)する処理を行う。ステップS130において、操舵側クラッチ角θcl_inを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS140へ移行する。
ステップS140では、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する処理(図中に示す「Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内?」)を行う。
ステップS140において、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS150へ移行する。
一方、ステップS140において、トルクセンサ値Vtsが転舵側クラッチ角算出用トルク閾値の範囲外である(図中に示す「No」)と判定した場合、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS140の処理を繰り返す。
ステップS150では、転舵側クラッチ角算出部68により、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵側クラッチ角θcl_outを算出(図中に示す「転舵側クラッチ角θcl_outを算出」)する処理を行う。ステップS150において、転舵側クラッチ角θcl_outを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS160へ移行する。
ここで、上述したステップS70の処理を行っている場合、ステップS150では、位相角θoffset3から補正指令値θoffsetXを減算したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。
ステップS160では、ステップS150で算出した転舵側クラッチ角θcl_outから、ステップS130で算出した操舵側クラッチ角θcl_inを減算する。これにより、ステップS160では、クラッチ角偏差算出部70が、クラッチ角偏差dθCLを算出(図中に示す「クラッチ角偏差dθCLを算出」)する処理を行う。ステップS160において、クラッチ角偏差dθCLを算出すると、クラッチ角偏差を算出する処理は、ステップS170へ移行する。
ステップS170では、クラッチ角偏差記憶部72が、ステップS160で算出したクラッチ角偏差dθCLを記憶(図中に示す「クラッチ角偏差dθCLを記憶」)する処理を行う。ステップS170において、クラッチ角偏差dθCLを記憶すると、クラッチ角偏差を算出する処理は終了(END)する。
・転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理
図21は、出荷後の車両に対して行なう処理のうち、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理を示すフローチャートである。
図21中に示すフローチャートは、イグニッションスイッチがオフ状態からオン状態となると開始(START)し、まず、ステップS200の処理を行う。
ステップS200では、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内であるか否かを判定する処理(図中に示す「Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内?」)を行う。
ステップS200において、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲内である(図中に示す「Yes」)と判定した場合、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS210へ移行する。
一方、ステップS200において、トルクセンサ値Vtsが転舵角算出用トルク閾値の範囲外である(図中に示す「No」)と判定した場合、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS200の処理を繰り返す。
ステップS210では、イグニッションスイッチをオン状態とした時点の現在操舵角を、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを、操舵側クラッチ角θcl_inとして算出する。これにより、ステップS210では、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出(図中に示す「操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出」)する処理を行う。ステップS210において、操舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS220へ移行する。
ここで、上述したステップS70の処理を行っている場合、ステップS210では、位相角θoffset1に補正指令値θoffsetXを加算したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いて、ユニバーサルジョイント7の出力角θoutを算出する。さらに、算出したユニバーサルジョイント7の出力角θoutを用いて、ユニバーサルジョイント11の出力角θoutを算出し、操舵側クラッチ角θcl_inを算出する。
ステップS220では、ステップS210で算出した操舵側ユニバーサルジョイントの出力角である操舵側クラッチ角θcl_inに、ステップS170で記憶したクラッチ角偏差dθCLを加算する。これにより、ステップS220では、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出(図中に示す「転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出」)する処理を行う。ステップS220において、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを算出すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS230へ移行する。
ステップS230では、ステップS220で算出した転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outを、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutを算出する。これにより、ステップS230では、転舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出(図中に示す「転舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出」)する処理を行う。ステップS230において、転舵側ユニバーサルジョイントの出力角を算出すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS240へ移行する。
ステップS240では、ステップS230で算出したユニバーサルジョイント23の出力角θoutから、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルに基づくオフセット成分を減算(図中に示す「オフセット成分を減算」)する処理を行う。これにより、ステップS240では、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutから各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分による影響を除去する。ステップS240において、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutからオフセット成分を減算すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS250へ移行する。
ステップS250では、ステップS240オフセット成分を減算したユニバーサルジョイント23の出力角θoutを、トルクセンサモデルを用いて補正(図中に示す「トルクセンサモデルにより補正」)する処理を行う。ステップS250において、ユニバーサルジョイント23の出力角θoutをトルクセンサモデルにより補正すると、転舵輪24の転舵角を算出する処理は、ステップS260へ移行する。そして、転舵輪24の転舵角を算出する処理から、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理へ移行する。
ステップS260では、ステップS210で用いた現在操舵角とステップS250で補正した出力角θoutとの関係と、上述したステップS40で中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を参照する。そして、ステップS210で用いた現在操舵角とステップS250で補正した出力角θoutとの偏差である出荷後偏差と、中立位置記憶部60に記憶した偏差である出荷前偏差が異なるか否かを判定(図中に示す「出荷後偏差≠出荷前偏差?」)する処理を行う。
ステップS260において、出荷後偏差と出荷前偏差が異なる(図中に示す「Yes」)と判定した場合、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS270へ移行する。
一方、ステップS260において、出荷後偏差と出荷前偏差が等しい(図中に示す「No」)と判定した場合、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS280へ移行する。
ステップS270では、ステップS40で中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を、ステップS250で補正した出荷後偏差に基づく関係に補正(図中に示す「中立位置を補正」)する処理を行う。ステップS270において、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正すると、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS290へ移行する。
ステップS280では、ステップS40で中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正せずに維持(図中に示す「中立位置を維持」)する処理を行う。ステップS280において、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係を維持すると、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は、ステップS290へ移行する。
ステップS290では、クラッチ状態切り替え部64により、クラッチ6を開放状態に切り替えるためのクラッチ電流指令をクラッチ6へ出力(図中に示す「クラッチ開放指令を出力」)を行う。ステップS290において、クラッチ6を開放状態に切り替えるためのクラッチ電流指令をクラッチ6へ出力すると、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正する処理は終了(END)する。
(動作)
次に、図1から図21を参照しつつ、図22を用いて、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いて行なう動作の一例を説明する。なお、図22は、本実施形態の車両用操舵制御装置1を用いた車両の動作を示すタイムチャートである。
図22中に示すタイムチャートは、車両の走行中等、イグニッションスイッチがオン状態であり、トルク伝達経路を機械的に分離させて、SBWシステムの制御を実施している状態(図中に示す「SBWシステム制御中」)からスタートする。なお、SBWシステムの制御とは、例えば、高速走行時には低速走行時よりも操舵角に対する転舵角の変化度合いを減少させる制御(可変ギヤ制御)等、車速に応じた転舵角の制御である。また、SBWシステムの制御は、中立位置記憶部60に記憶した操舵角と転舵モータ回転角との関係と、操舵角センサ34が検出した現在操舵角θHと、車速センサ50が検出した車速を用いて行なう。
そして、車両の駐車時等、イグニッションスイッチをオン状態からオフ状態に切り替えた(図中に示す「IGN OFF」)時点t1で、SBWシステムの制御を終了する。さらに、SBWシステム制御の終了時における処理(図中に示す「SBWシステム終了時の処理」)を行う。
時点t1で行なう処理は、クラッチ6を連結状態(図中に示す「クラッチ締結」)に切り替えてトルク伝達経路を機械的に連結し、さらに、クラッチ角偏差dθCLを算出・記憶する処理である。
ここで、転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1と、転舵側クラッチ角を算出する処理で用いる位相角θoffset3を、増減閾値に応じて補正している場合、時点t1では、補正している位相角を用いて、クラッチ角偏差dθCLを算出する。これにより、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のジョイント角αに誤差が発生している場合であっても、この誤差を減少させることが可能となる。これは、位相角θoffset1に補正指令値θoffsetXを加算したユニバーサルジョイント出力角算出モデルと、位相角θoffset3から補正指令値θoffsetXを減算したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いた演算により可能となる。
また、トルク伝達経路を機械的に連結すると、ステアリングホイール32の操作が、転舵輪24へ機械的に伝達される(図中に示す「ManualSteer」)状態となる。なお、クラッチ6を連結状態に切り替える状況としては、イグニッションスイッチをオン状態からオフ状態に切り替える状況以外に、例えば、転舵モータ2が過熱している状況も含む。
トルク伝達経路を機械的に連結している状態から、例えば、駐車している車両を発進させる場合等には、イグニッションスイッチをオン状態に切り替える。
このとき、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えた(図中に示す「IGN OFF」)時点t2で、SBWシステム制御の起動時における処理(図中に示す「SBWシステム起動時の処理」)を行う。
時点t2で行なう処理は、クラッチ6を開放状態(図中に示す「クラッチ開放」)に切り替える前に行なう処理であり、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理である。
ここで、転舵角を算出する処理で用いる位相角θoffset1を増減閾値に応じて補正している場合、時点t2では、補正している位相角θoffset1を用いて、転舵輪24の転舵角を算出する。これにより、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のジョイント角αに誤差が発生している場合であっても、この誤差を、位相角θoffset1を補正したユニバーサルジョイント出力角算出モデルを用いた演算により減少させることが可能となる。
そして、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理を終了すると、連結状態のクラッチ6を開放状態に切り替え、SBWシステムの制御を開始(図中に示す「SBWシステム制御中」)する。
なお、時点t2では、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えて、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理を開始しているが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、車両のドア(フロントドア)を開錠する動作により、指令演算部54等を起動させて、転舵輪24の転舵角を算出する処理と、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正または維持する処理を開始してもよい。
以上により、本実施形態の車両用操舵制御装置1では、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、ステアリングホイール32の操舵角が変化している場合であっても、以下に説明するように、車速に応じた転舵角の制御を、適切に実施することが可能となる。
すなわち、車速に応じた転舵角の制御を行なう際には、操舵角に対する転舵角の変化度合いが、車速に応じて異なる(操舵角:転舵角=1:X 低速時には1<X、高速時にはX<1)。これに対し、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、ステアリングホイール32の操舵角が変化している場合、クラッチ6が連結状態であるため、操舵角の変化度合いと転舵角の変化度合いは等しい(操舵角:転舵角=1:1)。
したがって、例えば、車両の駐車時等の低速走行時においては、操舵角に対する転舵角の変化度合いを増加させて、転舵角の変化量が少なくても転舵角の変化量を増加させる。この場合、イグニッションスイッチがオフ状態となってクラッチ6を連結状態としている間に、ステアリングホイール32の操舵角が変化すると、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵角と操舵角との関係が変化する。これは、転舵角を中立位置から転舵した状態で発生する。そして、転舵角と操舵角との関係が変化した状態を基準として、車速に応じた転舵角の制御を行なうと、転舵角と操舵角との関係が変化したままでSBWシステムを制御することとなり、SBWシステムの制御が不適切となる。
これに対し、本実施形態の車両用操舵制御装置1では、イグニッションスイッチをオン状態に切り替えると、クラッチ6を開放状態へ切り替える前に、ステアリングホイール32の操舵角と、クラッチ角偏差dθCLに基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。このため、操舵角と実転舵角を共に中立位置へ調整した状態における、操舵角と転舵モータ回転角との関係を、ステアリングホイール32の操舵角と、クラッチ角偏差dθCLと、各モデルに基づき、適切に算出・記憶することが可能となる。
これにより、イグニッションスイッチがオフ状態である間に、ステアリングホイール32の操舵角が変化している場合であっても、上述した車速に応じた転舵角の制御を、適切に実施することが可能となる。
このため、例えば、駐車している車両を旋回させながら発進させる(旋回発進)場合、すなわち、駐車している車両を、ステアリングホイール32を操舵しながら発進させる場合であっても、操舵角と転舵モータ回転角との関係を補正することが可能となる。これにより、駐車している車両を、ステアリングホイール32を操舵しながら発進させる場合であっても、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
この場合、例えば、車両の構成が、イグニッションスイッチがオフ状態である間に変化した操舵角の変化分を、直進走行により補正する構成である場合であっても、上述した旋回発進時に対して、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
なお、上述した操舵角センサ34は、操舵角検出部に対応する。
また、上述した転舵モータ角度センサ16は、転舵アクチュエータ回転角検出部に対応する。
また、上述したピニオン軸トルクセンサ46tは、操舵トルク検出部に対応する。
また、上述した補正処理ブロック78は、ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部と、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデル補正部と、補正指令値設定部に対応する。
また、上述した操舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルと転舵側ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに対応する。
また、上述したモデル式E1は、最もステアリングホイール32側のユニバーサルジョイント7に対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに対応する。
また、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)それぞれ対応する複数の個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルE1〜E4に基づくモデル式は、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに対応する。
また、上述したように、本実施形態の車両用操舵制御装置1の動作で実施する車両用操舵制御方法は、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正すると判定すると、補正指令値を位相角に加算する方法である。ここで、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かの判定は、実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて行なう。
(第一実施形態の効果)
本実施形態では、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)補正処理ブロック78が、実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かを判定する。これに加え、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正すると判定すると、補正指令値を、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に加算する。
このため、トルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントに予め設定した範囲内で変化させた操舵角を入力して算出した実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
その結果、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差を推定することが可能となり、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
これに加え、トルク伝達経路を構成する部材に組み付け誤差が発生した場合であっても、組み付け誤差に応じて転舵角を算出することが可能となり、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
これは、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点の転舵角と、イグニッションスイッチがオン状態となった時点の実転舵角が異なる状態は、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差に起因して発生するためである。これに加え、車両の製造時において、ステアリングホイールの取り付け時等、トルク伝達経路を構成する部材に組み付け誤差が発生すると、上記の不等速性が変化して、シャフト間に発生する回転角の位相差を推定することが困難であることに起因する。
(2)補正処理ブロック78が、実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出し、さらに、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に、補正指令値θoffsetXを加算する。
このため、トルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントに予め設定した範囲内で変化させた操舵角を入力して算出した実機入出力角偏差最大変化幅PPrに基づいて、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
その結果、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差を推定することが可能となり、トルク伝達経路を構成する部材に組み付け誤差が発生した場合であっても、組み付け誤差に応じて転舵角を算出することが可能となる。これにより、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
(3)補正処理ブロック78が、最もステアリングホイール32側のユニバーサルジョイント7に対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角θoffset1に、補正指令値θoffsetXを加算する。
このため、トルク伝達経路を構成する部材のうち、組み付け誤差の発生により転舵角の算出に与える影響が大きいステアリングホイール32の、組み付け誤差による影響を、効率的に抑制することが可能となる。
その結果、トルク伝達経路を構成する部材のうち、転舵角の算出に与える影響が大きいステアリングホイール32に組み付け誤差が発生した場合であっても、組み付け誤差に応じて転舵角を算出することが可能となる。
(4)補正処理ブロック78が、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の正の値を超えている場合は、補正指令値θoffsetXを増減閾値の正の値に設定する。これに加え、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の負の値未満である場合は、補正指令値θoffsetXを増減閾値の負の値に設定する。
このため、増減閾値の絶対値により形成される領域に対し、実機転舵角最大値maxPPrが範囲外となっている状態に応じて、補正指令値θoffsetXを、増減閾値の正の値または負の値に設定することが可能となる。
その結果、実機転舵角最大値maxPPrと増減閾値との関係に応じて、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
(5)転舵角算出部76が、各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)に対する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する現在操舵角θHが各ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を算出する。これに加え、算出した変化角から、ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルを用いて算出した各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)のオフセット成分を減算した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。
このため、現在操舵角θHが各ユニバーサルジョイント(7、11、19、23)を介して変化した変化角から、各ユニバーサルジョイントのオフセット成分による影響を除去することが可能となる。
その結果、各ユニバーサルジョイントの位相角に因らず、現在操舵角θHがトルク伝達経路で各ユニバーサルジョイントにより伝達される操舵角の変化に応じて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
(6)補正処理ブロック78が、実機転舵角最大値maxPPrが増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、補正指令値θoffsetXを、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角から減算する。これに加え、転舵側クラッチ角算出部68が、補正処理ブロック78が位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルに、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角を入力して、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する。
このため、ユニバーサルジョイントに基づく実機転舵角最大値maxPPrに応じて、ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
その結果、転舵モータ角度センサ16が検出した転舵モータ回転角と、実機転舵角最大値maxPPrに応じて位相角を補正したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを用いて、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。これにより、転舵側クラッチ角θcl_outの算出精度を向上させて、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outの算出精度を向上させ、転舵角の算出精度を向上させることが可能となる。
(7)補正処理ブロック78が、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する現在操舵角θHを、中立位置を基準として予め設定した範囲内で変化させる。そして、予め設定した範囲内で変化させた後に現在操舵角θHを中立位置へ戻したときの転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する。
このため、現在操舵角θHを一方向のみに変化させて実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する場合と比較して、算出した実機入出力角偏差最大変化幅PPrを、ヒステリシスによる影響を抑制した値とすることが可能となる。
その結果、実機入出力角偏差最大変化幅PPrの算出精度を向上させることが可能となり、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差の推定精度を向上させることが可能となる。
(8)補正処理ブロック78が、ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する現在操舵角θHを、中立位置を基準として予め設定した範囲の上限値まで変化させた後に中立位置へ戻す。さらに、予め設定した範囲の下限値まで現在操舵角θHを変化させた後に、現在操舵角θHを中立位置へ戻したときの、転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する。
このため、現在操舵角θHを予め設定した範囲の一方の限界値のみに変化させて実機入出力角偏差最大変化幅PPrを算出する場合と比較して、算出した実機入出力角偏差最大変化幅PPrを、ヒステリシスによる影響を抑制した値とすることが可能となる。
その結果、実機入出力角偏差最大変化幅PPrの算出精度を向上させることが可能となり、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差の推定精度を向上させることが可能となる。
(9)転舵角算出部76が、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、トルク伝達経路のねじれ角を用いて補正した値に基づいて、転舵輪24の転舵角を算出する。ここで、トルク伝達経路のねじれ角は、トルクセンサモデルを用いて算出する。
このため、イグニッションスイッチがオフ状態である間に操舵角が変化し、トルク伝達経路にねじれが発生した場合であっても、トルク伝達経路に発生したねじれを、トルクセンサモデルを用いて補正することが可能となる。
その結果、転舵角算出用転舵側クラッチ角Pθcl_outが転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角から、トルク伝達経路に発生したねじれによる影響を除去して、転舵輪24の転舵角を算出することが可能となる。
(10)本実施形態の車両用操舵制御方法では、実機入出力角偏差最大変化幅に基づいて、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かを判定する。これに加え、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正すると判定すると、増減閾値に応じて設定した補正指令値を、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に加算する。
このため、トルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントに予め設定した範囲内で変化させた操舵角を入力して算出した実機入出力角偏差最大変化幅PPrに基づいて、全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正することが可能となる。
その結果、ユニバーサルジョイントを用いて連結したシャフト間に発生する回転角の位相差を推定することが可能となり、トルク伝達経路を構成する部材に組み付け誤差が発生した場合であっても、組み付け誤差に応じて転舵角を算出することが可能となる。これにより、実転舵角の推定精度を向上させて、SBWシステムを適切に制御することが可能となる。
(変形例)
(1)本実施形態では、トルク伝達経路が四つのユニバーサルジョイント(7,11,19,23)を備える構成としたが、これに限定するものではなく、ユニバーサルジョイントの数は、例えば、車両のレイアウト等に応じた数であればよい。
この場合、例えば、操舵側ユニバーサルジョイントと転舵側ユニバーサルジョイントを、共に一つのユニバーサルジョイントのみで形成した場合、転舵輪24の転舵角は、以下の式(17)を用いて算出する。
Figure 0006142659
(2)本実施形態では、車両に、操舵側クラッチ角算出部66、転舵側クラッチ角算出部68、クラッチ角偏差算出部70、補正処理ブロック78を備える構成としたが、これに限定するものではない。すなわち、例えば、車両の出荷後に、整備工場において、現在操舵角及び実転舵角を共に中立位置に調整した状態で、車外の設備を用いて、操舵側クラッチ角、転舵側クラッチ角及びクラッチ角偏差を算出してもよい。これに加え、算出したクラッチ角偏差を、ケーブル接続等によりクラッチ角偏差記憶部72へ入力してもよく、また、不揮発性メモリ(Non‐volatile Memory)等の記憶媒体を介してクラッチ角偏差記憶部72に記憶させてもよい。
(3)本実施形態では、ピニオン軸トルクセンサ46tにより、操舵トルク検出部を形成したが、操舵トルク検出部の構成は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、操舵トルクセンサ36及び転舵モータトルクセンサ2tのうち少なくとも一方により、操舵トルク検出部を形成してもよい。ここで、転舵モータトルクセンサ2tにより操舵トルク検出部を形成する場合には、転舵モータトルクセンサ2tが検出した転舵モータトルクを、運転者がステアリングホイール32に加えているトルクである操舵トルクに変換する処理を行う。
(4)本実施形態では、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理において、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力した。しかしながら、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理は、これに限定するものではない。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角に、転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のオフセット成分を加算した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。
(5)本実施形態では、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理において、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力した。しかしながら、転舵側クラッチ角θcl_outを算出する処理は、これに限定するものではない。
すなわち、イグニッションスイッチがオフ状態となった時点における転舵モータ回転角から、トルクセンサ値Vtp及びトルクセンサモデルに基づき、転舵側シャフト及び転舵側ユニバーサルジョイント(19、23)のねじれ角を減算した値を算出する。そして、この算出した値を、ユニバーサルジョイント23の逆入力角tanθInとして上記の式(2)に入力してもよい。なお、上記の転舵側シャフトとは、クラッチ出力シャフト17、転舵側中間シャフト21、ピニオンシャフト25である。
(6)本実施形態では、実機入出力角偏差最大変化幅を算出するために現在操舵角θHを変化させる範囲を、予め、中立位置(0[deg])を基準として±180[deg]内に設定したが、これに限定するものではない。すなわち、実機入出力角偏差最大変化幅を算出するために現在操舵角θHを変化させる範囲を、中立位置(0[deg])を基準として±180[deg]未満に設定してもよい。また、実機入出力角偏差最大変化幅を算出するために現在操舵角θHを変化させる範囲を、中立位置(0[deg])を基準として±180[deg]を超える範囲に設定してもよい。
この場合、現在操舵角θHを変化させる範囲は、例えば、操舵角を変化させる状態において、現在操舵角θHに応じて変化する転舵角を算出する際に、実機入出力角偏差の変化から最大値と最小値が少なくとも一つ算出可能な範囲とすればよい(例えば、図11参照)。これは、例えば、中立位置(0[deg])を基準として±90[deg]内の範囲等である。
1 車両用操舵制御装置
2 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
2t 転舵モータトルクセンサ
4 転舵モータ制御部
6 クラッチ
7,11 ユニバーサルジョイント(操舵側ユニバーサルジョイント)
19,23 ユニバーサルジョイント(転舵側ユニバーサルジョイント)
8 反力モータ(反力アクチュエータ)
10 反力モータ制御部
16 転舵モータ角度センサ
24 転舵輪
32 ステアリングホイール
34 操舵角センサ
40 クラッチ板
42 ステアリングシャフト
44 ピニオン軸
46 ピニオン
46t ピニオン軸トルクセンサ
50 車速センサ
52 エンジンコントローラ
54 指令演算部
56 反力サーボ制御部
58 クラッチ制御部
60 中立位置記憶部
62 転舵モータ電流指令演算部
64 クラッチ状態切り替え部
66 操舵側クラッチ角算出部
68 転舵側クラッチ角算出部
70 クラッチ角偏差算出部
72 クラッチ角偏差記憶部
74 転舵角記憶部
76 転舵角算出部
78 補正処理ブロック
80 相関マップ記憶部
84 実機入出力角偏差演算部
94 位相角補正要否判定部
96 補正指令値出力部
MA 転舵側前回処理内容記憶部
MB 反力側前回処理内容記憶部

Claims (10)

  1. ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路を連結するユニバーサルジョイントを備えた車両用操舵制御装置であって、
    前記ステアリングホイールの操舵角を検出する操舵角検出部と、
    前記操舵角検出部が検出した操舵角を、前記ユニバーサルジョイントに対応する予め設定したモデル式である全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、前記転舵輪の転舵角を算出する転舵角算出部と、
    前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを補正するユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部と、を備え、前記ステアリングホイールの操舵角に応じて前記転舵輪を転舵制御し、
    前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部は、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する前記操舵角を予め設定した範囲内で変化させたときの前記転舵角の変化幅である実機入出力角偏差最大変化幅と、演算上で用いるユニバーサルジョイントである演算用ユニバーサルジョイントのジョイント角と演算上で用いる入出力角偏差との関係と演算上で用いる演算用操舵角及び前記演算用操舵角に換算して設定した増減閾値とを用いて演算した補正要否判定用入出力角偏差と、の比較に基づいて、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かを判定し、前記位相角を補正すると判定すると、前記増減閾値に応じて設定した補正指令値を前記位相角に加算し、
    前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記操舵角検出部が検出した操舵角に前記ユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す前記位相角を加算した角度と、前記ユニバーサルジョイントを介して前記操舵角検出部が検出した操舵角を前記転舵輪側へ出力した角度である出力角と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする車両用操舵制御装置。
  2. 前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部は、前記実機入出力角偏差最大変化幅を算出し、当該算出した実機入出力角偏差最大変化幅の最大値である実機転舵角最大値が前記増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、前記補正指令値を前記位相角に加算することを特徴とする請求項1に記載した車両用操舵制御装置。
  3. 前記トルク伝達経路を、複数のユニバーサルジョイントで連結し、
    前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記複数のユニバーサルジョイントにそれぞれ対応する複数の個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに基づくモデル式であり、
    前記転舵角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角を前記複数の個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルのうち最も前記ステアリングホイール側のユニバーサルジョイントに対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力し、さらに、前記操舵角検出部が検出した操舵角に基づく角度を前記ステアリングホイール側のユニバーサルジョイントに対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルを介して出力した角度である転舵輪側出力角を、前記最もステアリングホイール側のユニバーサルジョイント以外のユニバーサルジョイントに対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力して、前記転舵輪の転舵角を算出し、
    前記最もステアリングホイール側のユニバーサルジョイントに対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記操舵角検出部が検出した操舵角に前記最もステアリングホイール側の個別ユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を加算した角度と、前記最もステアリングホイール側の個別ユニバーサルジョイントを介して前記操舵角検出部が検出した操舵角に基づく角度を前記転舵輪側へ出力した角度である出力角と、の関係を示すモデル式であり、
    前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部は、前記実機入出力角偏差最大変化幅を算出し、当該算出した実機入出力角偏差最大変化幅の最大値である実機転舵角最大値が前記増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、前記最もステアリングホイール側のユニバーサルジョイントに対応する個別ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角に前記補正指令値を加算することを特徴とする請求項1または請求項2に記載した車両用操舵制御装置。
  4. 前記補正指令値を設定する補正指令値設定部を備え、
    前記補正指令値設定部は、前記実機入出力角偏差最大変化幅の最大値である実機転舵角最大値が前記増減閾値の正の値を超えている場合は前記補正指令値を前記増減閾値の正の値に設定し、前記実機転舵角最大値が前記増減閾値の負の値未満である場合は前記補正指令値を前記増減閾値の負の値に設定することを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  5. 前記転舵角算出部は、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力した前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角から、予め設定したユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルを用いて算出した前記ユニバーサルジョイントのオフセット成分を減算した値に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
    前記ユニバーサルジョイントオフセット成分算出モデルは、前記ユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す位相角を示すモデル式であることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  6. 前記トルク伝達経路を機械的に分離する開放状態とトルク伝達経路を機械的に連結する連結状態に切り替わるクラッチと、
    前記ステアリングホイールと前記クラッチとの間を機械的に連結する操舵側ユニバーサルジョイントと、
    前記転舵輪と前記クラッチとの間を機械的に連結する転舵側ユニバーサルジョイントと、
    前記転舵輪を転舵制御する転舵アクチュエータの回転角である転舵アクチュエータ回転角を検出する転舵アクチュエータ回転角検出部と、
    予め設定したユニバーサルジョイント出力角算出モデルに前記操舵角検出部が検出した操舵角を入力して、前記トルク伝達経路の前記ステアリングホイール側における回転角である操舵側クラッチ角を算出する操舵側クラッチ角算出部と、
    予め設定したユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルに前記転舵アクチュエータ回転角検出部が検出した転舵アクチュエータ回転角を入力して、前記トルク伝達経路の前記転舵輪側における回転角である転舵側クラッチ角を算出する転舵側クラッチ角算出部と、
    前記ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルを補正するユニバーサルジョイント逆出力角算出モデル補正部と、
    前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角と前記転舵側クラッチ角算出部が算出した転舵側クラッチ角との偏差であるクラッチ角偏差を算出するクラッチ角偏差算出部と、を備え、
    前記転舵角算出部は、前記連結状態の前記クラッチが前記開放状態に切り替わる前に、前記操舵側クラッチ角算出部が算出した操舵側クラッチ角に前記クラッチ角偏差算出部が算出したクラッチ角偏差を加算した転舵角算出用転舵側クラッチ角が前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
    前記ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルは、前記転舵側ユニバーサルジョイントへ前記転舵輪側から入力した角度である転舵輪側逆入力角から前記位相角を減算した角度と、前記転舵側ユニバーサルジョイントを介して前記転舵輪側逆入力角を前記ステアリングホイール側へ出力した角度である操舵輪側逆出力角と、の関係を示すモデル式であり、
    前記ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデル補正部は、前記実機入出力角偏差最大変化幅の最大値である実機転舵角最大値が前記増減閾値の絶対値の範囲外である場合に、前記補正指令値を前記ユニバーサルジョイント逆出力角算出モデルの位相角から減算することを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  7. 前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部は、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する前記操舵角を、中立位置を基準として前記予め設定した範囲内で変化させた後に前記中立位置へ戻したときの前記転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、前記実機入出力角偏差最大変化幅を算出することを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  8. 前記ユニバーサルジョイント出力角算出モデル補正部は、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する前記操舵角を、中立位置を基準として前記予め設定した範囲の上限値まで変化させた後に前記中立位置へ戻し、さらに、前記予め設定した範囲の下限値まで変化させた後に前記中立位置へ戻したときの前記転舵角の最大値及び最小値に基づく変化幅に基づいて、前記実機入出力角偏差最大変化幅を算出することを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  9. 前記ステアリングホイールに加わるトルクである操舵トルクを検出する操舵トルク検出部を備え、
    前記転舵角算出部は、前記操舵角検出部が検出した操舵角が前記ユニバーサルジョイントを介して変化した変化角を、予め設定したトルクセンサモデルを用いて算出した前記トルク伝達経路のねじれ角を用いて補正した値に基づいて、前記転舵輪の転舵角を算出し、
    前記トルクセンサモデルは、前記操舵トルク検出部が検出した操舵トルクと、前記ユニバーサルジョイントのねじり剛性と、前記ユニバーサルジョイントの入力軸及び出力軸のねじり剛性と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか1項に記載した車両用操舵制御装置。
  10. ステアリングホイールと転舵輪との間のトルク伝達経路をユニバーサルジョイントにより連結し、前記ステアリングホイールの操舵角に応じて前記転舵輪を転舵制御する車両用操舵制御方法であって、
    前記ステアリングホイールの操舵角を検出し、
    前記ユニバーサルジョイントに対応する予め設定したモデル式である全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに入力する前記操舵角を予め設定した範囲内で変化させたときの前記転舵輪の転舵角の変化幅である実機入出力角偏差最大変化幅と、演算上で用いるユニバーサルジョイントである演算用ユニバーサルジョイントのジョイント角と演算上で用いる入出力角偏差との関係と演算上で用いる演算用操舵角及び前記演算用操舵角に換算して設定した増減閾値とを用いて演算した補正要否判定用入出力角偏差と、の比較に基づいて、前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルの位相角を補正するか否かを判定し、前記位相角を補正すると判定すると、前記増減閾値に応じて設定した補正指令値を前記位相角に加算し、
    前記補正指令値を前記位相角に加算した全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルに前記検出した操舵角を入力して、前記転舵輪の転舵角を算出し、
    前記全体ユニバーサルジョイント出力角算出モデルは、前記検出した操舵角に前記ユニバーサルジョイントの入力軸に対する出力軸のねじれ角を示す前記位相角を加算した角度と、前記ユニバーサルジョイントを介して前記検出した操舵角を前記転舵輪側へ出力した角度である出力角と、の関係を示すモデル式であることを特徴とする車両用操舵制御方法。
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