JP5206845B2 - 車両用操舵制御装置 - Google Patents
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そして、例えば、反力アクチュエータの失陥時は、転舵アクチュエータの制御ゲインを低下またはゼロにすることで、失陥検出後からバックアップクラッチが締結するまでの所定時間、転舵アクチュエータの動作を制限し、車両の挙動が不安定になることを抑えるようにしている。前記所定時間は、クラッチ締結時間を予め実験などにより計測しておき、複数データの最大値など、確実にバックアップクラッチが締結する時間に設定される(例えば、特許文献1参照。)。
運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、前記操作部の操作状態に応じて操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部と前記転舵部とを締結により機械的に連結するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放状態で、前記バックアップクラッチの締結条件が成立すると、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力するクラッチ締結指令手段と、
前記操作部に操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記バックアップクラッチに対し締結指令が出力された後、前記操舵トルク検出手段からの操舵トルク検出値がクラッチ締結判定閾値を超えたとき、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
を備え、
前記クラッチ締結判定手段は、前記クラッチ締結判定閾値を、前記操作部と前記転舵部の相対回転角速度が速いほど小さな値に設定することを特徴とする。
すなわち、バックアップクラッチに対し締結指令が出力された場合、反力制御を中止した状態でバックアップクラッチが締結されていない間は、操作部の操舵トルクはほぼゼロとなる。しかし、バックアップクラッチが締結されると、路面からのトルクがバックアップクラッチを介して操作部側へ伝達されるため、操作部の操舵トルクが増加する。
したがって、バックアップクラッチが締結されると操作部の操舵トルクが増加するという関係を利用すれば、バックアップクラッチの締結を判定することができる。
しかも、このクラッチ締結判定では、操舵状態によって変動し易いバックアップクラッチの締結所要時間の終点を、バックアップクラッチを介したトルク伝達の有無を監視することで判定するため、クラッチ締結時間の変動にかかわらずバックアップクラッチが実際に締結されたことを的確に判定することができる。
そして、クラッチ締結判定結果に基づき、バックアップクラッチが実際に締結された直後から、例えば、電動パワーステアリング制御モードなどのように、スムーズなハンドル操作モードへ移行することができる。
この結果、クラッチ締結時間の変動にかかわらずバックアップクラッチが実際に締結されたことを的確に判定することで、バックアップクラッチが実際に締結された直後からスムーズなハンドル操作モードへ移行することができる。
〔実施例1〕
[全体構成]
図1は、実施例1の車両用操舵制御装置を適用したステアバイワイヤ(SBW)システムの構成図である。
実施例1のSBWシステムは、図1に示すように、操舵ハンドル1(操作部)と、操舵角センサ2と、トルクセンサ3(操舵トルク検出手段)と、反力モータ4(反力アクチュエータ)と、バックアップクラッチ5と、転舵モータ6(転舵アクチュエータ)と、転舵角度センサ7と、舵取り機構8(転舵部)と、左右前輪9,9(操向輪)と、反力コントローラ10と、転舵コントローラ11と、通信ライン12と、を備えている。
ただし、機械的なバックアップ機構として、バックアップクラッチ5を備えており、操舵ハンドル1と舵取り機構8との間を機械的に連結することが可能である。つまり、SBWシステムに何らかの異常が発生した場合、バックアップクラッチ5を連結することで安全な走行が可能となる。
転舵コントローラ11の角度サーボ系は、例えば、図2の転舵角制御ブロック図に示すように、ロバストモデルマッチング手法を用いた方法で構成される。この方法では、予め与えておいた所望の特性に一致させるためのモデルマッチング補償器により、指令転舵角に対し所定の規範応答特性を実現するための電流指令値を演算し、ロバスト補償器により外乱成分に応じた補償電流が演算される。これにより、外乱発生時においても実転舵角が規範応答特性で追従可能な、耐外乱性に優れた制御系が実現できる。
図3は、実施例1の反力コントローラ10および転舵コントローラ11にて実行される反力失陥時の制御モード切り替え制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、各コントローラ10,11においてSBW制御演算周期(例えば、5msec)毎に実行される。
ここで、反力コントローラ10では、反力失陥を検出すると、SBW制御モードでの反力制御を中止すると共に、通信ライン12を通じて転舵コントローラ11へ反力失陥であると伝える。
ここで、所定値Aは、トルクセンサ3の検出誤差、操舵ハンドル1の慣性力、反力モータ4の慣性力、を考慮し、誤判定しない値に設定する。
前記所定値Aは、図4に示すように、操舵ハンドル1(操作部)と舵取り機構8(転舵部)の相対回転角速度(=バックアップクラッチ5を挟んだ上下の回転角速度差)が速いほど小さな値に設定する。なお、この相対回転角速度は、操舵角センサ2からの操舵角微分値と転舵角度センサ7からの転舵角度微分値により演算する。
この転舵保持制御モードでは、転舵モータ6への電流指令値が、
今回指令転舵角δf=前回指令転舵角δf(1)
の式により算出される。
このEPS制御モードに入ると、転舵モータ6への電流指令値として、転舵保持制御モードでの電流指令値に代え、転舵アシスト用の電流指令値の演算を開始する。
上記のような構成のSBWシステムにおいて、反力制御系に何らかの異常(例えば、反力モータ4の故障など)が発生した場合は、バックアップクラッチ5を締結し、反力コントローラ10による反力制御を中止し、転舵コントローラ11ではトルクセンサ3の値に基づき操舵アシスト力となる転舵モータ6の電流を演算し、電動パワーステアリング装置(EPS装置)としての機能を実現する。
また、バックアップクラッチ5が、インナレースとアウタレースにより形成される楔空間をローラが噛み合うことで締結状態とする噛み合い構造のものでは、締結指令後に、ハンドル側と転舵側とで相対回転が生じたときに、噛み合い状態となりクラッチ締結が完了してしまうため、締結指令を出力してから実際にバックアップクラッチ5が締結するまでの時間は、操舵状態によりさらに変動する。
クラッチ締結時間と、予め設定した所定時間Ta(EPS制御開始時T2と反力異常検出時T0との差)が一致すると仮定した場合、図5のタイムチャートに示すように、反力異常検出時T0からEPS制御開始時T2(=クラッチ締結時)までは、操舵トルクが低い値に保持され、EPS制御が開始された時点T2から操舵トルクが出る特性を示し、ドライバーの操舵が妨げられるようなことはない。
しかも、このクラッチ締結判定では、操舵状態によって変動し易いバックアップクラッチ5の締結所要時間の終点を、バックアップクラッチ5を介したトルク伝達の有無を監視することで判定するため、クラッチ締結時間の変動にかかわらずバックアップクラッチ5が実際に締結されたことを的確に判定することができる。
そして、クラッチ締結判定結果に基づき、バックアップクラッチ5が実際に締結された直後から、例えば、EPS制御モードなどのように、スムーズなハンドル操作モードへ移行することができる。
この結果、クラッチ締結時間の変動にかかわらずバックアップクラッチ5が実際に締結されたことを的確に判定することで、バックアップクラッチ5が実際に締結された直後からスムーズなハンドル操作モードへ移行することができる。
以下、実施例1の車両用操舵制御装置における、[反力失陥時の制御モード切り替え制御作用]、[反力失陥時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作]について説明する。
反力制御系が正常時には、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS102へと進む流れとなり、ステップS102では、バックアップクラッチ5を開放したままで、正常時のSBW制御モードによる反力制御と転舵制御が実行される。
反力制御系に失陥が発生すると初回の制御周期では、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS103→ステップS104へと進む流れとなり、SBW制御モードによる反力制御が中止され、ステップS104では、バックアップクラッチ5に対しクラッチ締結指令が出力される。
そして、クラッチ締結指令開始直後は、操舵トルクが所定値A以下であるため、図3のフローチャートにおいて、ステップS104からステップS105→ステップS106へと進む流れとなり、ステップS106では、SBW制御モードでの転舵制御からクラッチ締結指令が出力された時点での転舵角を保持する転舵保持制御モードへと切り替えられる。
さらに、ステップS105のクラッチ締結判定条件が成立しない限り、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS103→ステップS105→ステップS106へと進む流れが繰り返され、転舵保持制御が維持される。
その後、バックアップクラッチ5が締結状態に移行することで操舵トルクが増加し、操舵トルクが所定値Aを超えると、図3のフローチャートにおいて、ステップS101→ステップS103→ステップS105→ステップS107へと進む流れとなり、ステップS107では、転舵保持制御モードから転舵モータ6をアシスト力付与手段とするEPS制御モードへと切り替えられる。
反力失陥時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作を図7に示すタイムチャートに基づき説明する。なお、図7は、ドライバーが操舵ハンドル1を回し、操舵角が増えている状況で、バックアップクラッチ5が所定時間Taよりも短い時間で締結した場合の実施例1の動作を示す。
まず、時刻T0で反力異常を検出すると、クラッチ締結指令をonにする。さらに、その時の転舵角を保持するように指令転舵角を出力する。バックアップクラッチ5が締結すると、前述のように、路面からの力が締結されたバックアップクラッチ5を介して操舵ハンドル1に伝わるため、操舵トルクが増加する。反力異常検出時刻T0〜クラッチ締結時刻T1までの間は、反力異常を検出して反力制御を中止しているため、操舵トルクはほぼゼロとなっている。しかし、バックアップクラッチ5の締結により操舵トルクが増加し、時刻T1の時点で、操舵トルクが所定値Aを超えると、クラッチ締結と判定し、転舵保持制御モードからEPS制御モードへ切り替え、指令転舵角は、保持した値からEPS制御に基づいて算出される値に変更される。これにより、クラッチ締結時刻T1以降は、ドライバーの操舵動作が転舵角に反映され、さらに、操舵反力も正常に発生されるため、通常のスムーズな操舵動作が可能になる。
これらの動作により、クラッチ締結時間が変動した場合においても、バックアップクラッチ5の締結を操舵トルクに基づいて判定するため、従来技術の問題点であるドライバーの操舵を妨げるという問題点を解消することができる。
また、時刻T0〜時刻T1までの間で反力トルクが発生しない状況において、ドライバーの意に反して操舵量が大きく変動しても、転舵角は保持されているため、車両挙動が不安定になることを抑制できる。
例えば、操舵トルクが僅かに増加したことを検出したら、バックアップクラッチの締結判定を行う場合、ドライバーのハンドル操作等により操舵トルクが増加すると、バックアップクラッチが締結であると誤判定する。また、操舵トルクが大幅に増加したことを検出したら、バックアップクラッチの締結判定を行う場合、判定タイミングが遅れ、一時的に操舵反力が増大し、操舵違和感を与えてしまう。
これに対し、実施例1では、上記のように、所定値Aをクラッチ締結判定閾値とし、操舵トルクが所定値Aを超えたときバックアップクラッチ5が締結状態になったと判定するため、バックアップクラッチ5の締結誤判定の防止と、判定タイミングの遅れ防止と、の両立を図ることができる。
例えば、上述のように、バックアップクラッチが噛み合い構造のものでは、締結指令後にハンドル側と転舵側とで相対回転が生じると、噛み合い状態となりクラッチ締結が完了してしまう。このように、締結指令を出力してから実際にバックアップクラッチが締結するまでに要する時間は、バックアップクラッチを挟んだ上下での相対回転が速いか遅いかで変動する。
これに対し、実施例1では、上記のように、所定値Aを操作部と転舵部の相対回転角速度が速いほど小さな値に設定するため、バックアップクラッチ5として噛み合い構造のクラッチを適用した場合、バックアップクラッチ5を挟んだ上下での相対回転角速度が速いか遅いかにかかわらず、精度良くバックアップクラッチ5の締結が完了したタイミングを判定することができる。
例えば、バックアップクラッチを締結した場合、SBW制御モードから操舵ハンドルと舵取り機構を直結するだけの直結ステアリングモードに切り替えるようにした場合、据え切り時などのように、路面からの操舵反力が大きなときにはドライバーへの操舵負担が過大となってしまう。
これに対し、実施例1では、上記のように、バックアップクラッチ5が締結状態になったと判定されるとEPS制御モードに切り替えるため、バックアップクラッチ5が実際に締結された直後から操舵負担の低いハンドル操作モードであるEPS制御モードへ移行することができる。
例えば、反力失陥時でバックアップクラッチが締結されるまではSBW制御を継続するようにした場合、反力トルクが発生しない状況であるため、ドライバーの意思に反して操舵量が大きく変動する可能性が高くなる。この場合、SBW制御により操舵量の変動に応じて転舵角も変動することになり、車両挙動を不安定にさせてしまう。
これに対し、実施例1では、上記のように、締結指令を出力から締結判定までの間、SBW制御での転舵制御を車両挙動抑制転舵制御に切り替えるため、反力トルクが発生しない状況において、ドライバーの意に反して操舵量が大きく変動しても車両挙動が不安定になることを抑制することができる。
このため、バックアップクラッチ5に対し締結指令を出力してからクラッチ締結が判定されるまでの間、転舵角の保持により安定した車両挙動を維持することができる。
実施例1の車両用操舵制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
〔実施例2〕
なお、全体構成については、図1及び図2に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
図8(a)は、実施例2の反力コントローラ10および転舵コントローラ11にて実行される反力失陥時の制御モード切り替え制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、各コントローラ10,11においてSBW制御演算周期(例えば、5msec)毎に実行される。また、ステップS201〜ステップS205およびステップS207のそれぞれのステップは、図3のフローチャートのステップS101〜ステップS105およびステップS107のそれぞれのステップと同様の処理を行うので説明を省略する。
ここで、操舵角θoは、操舵角センサ2で検出した値である。記憶した操舵角θoは、ステップS206の転舵スロー制御における指令転舵角の演算に用いる。
ここで、操舵角速度は、例えば、操舵角センサ2の出力の時間微分値を算出する。
ここで、図9に示す操舵角速度−ギア比マップは、操舵角速度が速いほどスローなギア比とする特性を持つ。なお、スローギア比とは、操舵角が変化しても操舵角の変化勾配に対し転舵角の変化勾配が小さい、つまり、操舵ハンドル1に与えた回転角に対し左右前輪9,9の転舵角が小さく抑えられるギア比をいう。
指令転舵角の算出式は、
指令転舵角変化量dδf=ステアリングギア比N×(操舵角θ−締結指令時操舵角θo)
今回指令転舵角δf=前回指令転舵角δf(1)+指令転舵角変化量dδf
である。
以下、実施例2の車両用操舵制御装置における、[反力失陥時の制御モード切り替え制御作用]、[反力失陥時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作]について説明する。
反力制御系が正常時には、図8(a)のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS202へと進む流れとなり、ステップS202では、バックアップクラッチ5を開放したままで、正常時のSBW制御モードによる反力制御と転舵制御が実行される。
反力制御系に失陥が発生すると初回の制御周期では、図8(a)のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS203→ステップS204→ステップS208へと進む流れとなり、スSBW制御モードによる反力制御が中止され、ステップS204では、バックアップクラッチ5に対しクラッチ締結指令が出力され、ステップS208では、クラッチ締結指令開始時の操舵角θoが記憶される。
そして、クラッチ締結指令開始直後は、操舵トルクが所定値A以下であるため、図8(a)のフローチャートにおいて、ステップS208からステップS205→ステップS206へと進む流れとなり、ステップS206では、SBW制御モードでの転舵制御からステアリングギア比をスローギア比とする転舵スロー制御モードへと切り替えられる。なお、転舵スロー制御では、図8(b)のフローチャートにしたがって、設定されたスローギア比に基づき転舵モータ6が制御される。
さらに、ステップS205のクラッチ締結判定条件が成立しない限り、図8(a)のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS203→ステップS205→ステップS206へと進む流れが繰り返され、転舵スロー制御が維持される。
その後、バックアップクラッチ5が締結状態に移行することで操舵トルクが増加し、操舵トルクが所定値Aを超えると、図8(a)のフローチャートにおいて、ステップS201→ステップS203→ステップS205→ステップS207へと進む流れとなり、ステップS207では、転舵スロー制御モードから転舵モータ6をアシスト力付与手段とするEPS制御モードへと切り替えられる。
反力失陥時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作を図10に示すタイムチャートに基づき説明する。なお、図10は、ドライバーが操舵ハンドル1を回し、操舵角が増えている状況で、バックアップクラッチ5が所定時間Taよりも短い時間で締結した場合の実施例2の動作を示す。
まず、時刻T0で反力異常を検出すると、クラッチ締結指令をonにする。さらに、操舵角:転舵角が1:1のステアリングギア比からスローギア比に変更し、ゆっくりと転舵角を変化させるように指令転舵角を出力する。バックアップクラッチ5が締結すると、前述のように、路面からの力が締結されたバックアップクラッチ5を介して操舵ハンドル1に伝わるため、操舵トルクが増加する。反力異常検出時刻T0〜クラッチ締結時刻T1までの間は、反力異常を検出して反力制御を中止しているため、操舵トルクはほぼゼロとなっている。しかし、バックアップクラッチ5の締結により操舵トルクが増加し、時刻T1の時点で、操舵トルクが所定値Aを超えると、クラッチ締結と判定し、転舵保持制御モードからEPS制御モードへ切り替え、指令転舵角は、転舵スロー制御による値からEPS制御に基づいて算出される値に変更される。これにより、クラッチ締結時刻T1以降は、ドライバーの操舵動作が転舵角に反映され、さらに、操舵反力も正常に発生されるため、通常のスムーズな操舵動作が可能になる。
これらの動作により、クラッチ締結時間が変動した場合においても、バックアップクラッチ5の締結を操舵トルクに基づいて判定するため、従来技術の問題点であるドライバーの操舵を妨げるという問題点を解消することができる。
また、時刻T0〜時刻T1までの間のクラッチ締結動作中にもスローギア比による転舵動作が行われるため、ドライバーの意思を反映した車両コントロールが可能となる。
さらに、操舵速度に応じてギア比をスローにすることで、反力トルク不足でドライバーが意に反して操舵量が大きく変動するような場合でも、車両挙動が不安定になることを抑制できる。
実施例2の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果(1)〜(5)に加え、下記に列挙する効果が得られる。
〔実施例3〕
なお、全体構成については、図1及び図2に示した実施例1の構成と同様であるため、図示並びに説明を省略する。
図11は、実施例3の転舵コントローラ11にて実行される電源電圧低下時の制御モード切り替え制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この処理は、各コントローラ10,11においてSBW制御演算周期(例えば、5msec)毎に実行される。また、ステップS302〜ステップS307のそれぞれのステップでの処理は、図3に示すフローチャートのステップS102〜ステップS107のそれぞれのステップでの処理と同様であるので説明を省略する。
ここで、所定値Cは、例えば、9Vとする。
なお、ステップS304でのバックアップクラッチ5に対するクラッチ締結指令の出力により、クラッチ締結動作が開始される。このクラッチ締結指令on情報は、通信ライン12を通じて反力コントローラ10へ伝達される。
図12は、実施例3の反力コントローラ10にて実行される反力制御停止処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する(反力制御停止手段)。
ここで、操作部と転舵部との相対回転角速度は、例えば、操舵角センサ2の出力の時間微分値と転舵角度センサ7の出力の時間微分値の差を算出する。この場合、両角度センサ2,7の出力は、各ギア比を考慮して同じ軸(例えば、ステアリングシャフト軸)の角度となるように換算して演算に用いる。
ここで、所定時間Bは、測定データなどに基づき、クラッチ締結指令が出されてからクラッチ締結するまでに要する時間より短い時間に設定される。そして、例えば、図13のマップに示すように、相対回転角速度が速いほど所定時間Bは短い時間に設定される。
すなわち、ステップS326で所定時間Bを経過したと判断されるまではSBW制御モードでの反力制御を継続し、ステップS326で所定時間Bを経過したと判断されるとSBW制御モードでの反力制御を停止する。これにより、操舵トルクはほぼゼロになる。
以下、実施例3の車両用操舵制御装置における、[電源電圧低下時の制御モード切り替え制御作用]、[SBW制御モードでの反力制御停止作用]、[電源電圧低下時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作]について説明する。
電源電圧が正常レベルの時には、図11のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS302へと進む流れとなり、ステップS302では、バックアップクラッチ5を開放したままで、正常時のSBW制御モードによる反力制御と転舵制御が実行される。
電源電圧が低下し、所定値C未満になると初回の制御周期では、図11のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS303→ステップS304へと進む流れとなり、ステップS304では、バックアップクラッチ5に対しクラッチ締結指令が出力される。
そして、クラッチ締結指令開始直後は、操舵トルクが所定値A以下であるため、図11のフローチャートにおいて、ステップS304からステップS305→ステップS306へと進む流れとなり、ステップS306では、SBW制御モードでの転舵制御からクラッチ締結指令が出力された時点での転舵角を保持する転舵保持制御モードへと切り替えられる。
さらに、ステップS305のクラッチ締結判定条件が成立しない限り、図11のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS303→ステップS305→ステップS306へと進む流れが繰り返され、転舵保持制御が維持される。
その後、バックアップクラッチ5が締結状態に移行することで操舵トルクが増加し、操舵トルクが所定値Aを超えると、図11のフローチャートにおいて、ステップS301→ステップS303→ステップS305→ステップS307へと進む流れとなり、ステップS307では、転舵保持制御モードから転舵モータ6をアシスト力付与手段とするEPS制御モードへと切り替えられる。
図11のステップS304にてバックアップクラッチ5に対しクラッチ締結指令が出力されると、初回の制御周期では、図12のフローチャートにおいて、ステップS321→ステップS323→ステップS324→ステップS325へと進む流れとなり、ステップS325では、操作部と転舵部との相対回転角速度に応じ、クラッチ締結指令が出力から反力制御の維持を継続する所定時間Bが設定される。
そして、所定時間Bの設定直後は、まだ所定時間Bを経過していないため、図12のフローチャートにおいて、ステップS325からステップS326→ステップS322へと進む流れとなり、ステップS322では、SBW制御モードでの反力制御が維持される。
さらに、ステップS326の時間条件が成立するまでは、図12のフローチャートにおいて、ステップS321→ステップS323→ステップS326→ステップS322へと進む流れが繰り返され、SBW制御モードでの反力制御が維持される。
そして、ステップS326の時間条件が成立すると、図12のフローチャートにおいて、ステップS321→ステップS323→ステップS326→ステップS327へと進み、ステップS327では、SBW制御モードでの反力制御が停止される。
従来技術での電源電圧低下時におけるSBW制御からEPS制御への移行動作を図14に示すタイムチャートに基づき説明する。
ドライバーが操舵ハンドルを回し、操舵角が増えている状況で、バックアップクラッチ5が所定時間Taよりも短い時間で締結した場合、クラッチ締結後も転舵角が保持されるため、操舵ハンドルが保持されるように反力が発生して(操舵トルク特性での突出特性部分)、ドライバーの操舵が妨げられる様子を示している。また、電力温存を目的にSBW制御からEPS制御へ移行するにもかかわらず、時刻T1〜時刻T2において、転舵コントローラは転舵角を保持するように転舵モータへの電流指令値を増加するため、電源電圧がさらに低下する様子も示している。
まず、時刻T0で電源電圧が所定値C未満となると、クラッチ締結指令をoffからonにする。さらに転舵角を保持するように指令転舵角を出力する。そして、時刻T1において、クラッチ締結指令onから所定時間Bが経過すると、反力コントローラ10はそれまでの反力制御を停止する。これにより時刻t1以降は操舵トルクがほぼゼロになる。バックアップクラッチ5が締結すると、前述のように、路面からの力が締結されたバックアップクラッチ5を介して操舵ハンドル1に伝わるため、操舵トルクが増加する。そして、操舵トルクが時刻T2の時点で所定値Aを超えると、クラッチ締結と判定し、転舵保持制御モードからEPS制御モードへ切り替え、指令転舵角は、保持した値からEPS制御に基づいて算出される値に変更される。これにより、クラッチ締結時刻T2以降は、ドライバーの操舵動作が転舵角に反映され、さらに、操舵反力も正常に発生されるため、通常のスムーズな操舵動作が可能になる。
また、クラッチ締結指令を出してから所定時間Bを経過した後、反力制御を停止させることで、クラッチ締結指令を出してから所定時間Bを経過するまでの間にて反力抜けを防止し、かつ、所定時間Bを経過すると反力制御によるトルク変動の影響を考慮せずに、クラッチ締結によるトルク変動を検出することができる。
さらに、所定時間Bを相対回転角速度に基づき、クラッチ締結時間の変化に対応して設定することで、クラッチ締結の所要時間に対し反力を発生しない時間を適切に設定できる。これにより、ドライバーの意に反して操舵量が大きくなる可能性がある反力抜け時間が最小の時間となり、ドライバーに与える違和感を抑えることができる。
実施例3の車両用操舵制御装置にあっては、実施例1の効果に加え、下記に列挙する効果が得られる。
2 操舵角センサ
3 トルクセンサ(操舵トルク検出手段)
4 反力モータ(反力アクチュエータ)
5 バックアップクラッチ
6 転舵モータ(転舵アクチュエータ)
7 転舵角度センサ
8 舵取り機構(転舵部)
9,9 左右前輪(操向輪)
10 反力コントローラ
11 転舵コントローラ
12 通信ライン
Claims (6)
- 運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、前記操作部の操作状態に応じて操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部と前記転舵部とを締結により機械的に連結するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放状態で、前記バックアップクラッチの締結条件が成立すると、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力するクラッチ締結指令手段と、
前記操作部に操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、
前記バックアップクラッチに対し締結指令が出力された後、前記操舵トルク検出手段からの操舵トルク検出値がクラッチ締結判定閾値を超えたとき、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
を備え、
前記クラッチ締結判定手段は、前記クラッチ締結判定閾値を、前記操作部と前記転舵部の相対回転角速度が速いほど小さな値に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、前記操作部の操作状態に応じて操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部と前記転舵部とを締結により機械的に連結するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放状態で、前記バックアップクラッチの締結条件が成立すると、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力するクラッチ締結指令手段と、
前記バックアップクラッチに対し締結指令が出力された後、前記操作部のトルク増加が検出されたとき、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
転舵制御系を除く部位に失陥が発生しているか否かを判定する第1の失陥判定手段と、
前記クラッチ締結指令手段にて、転舵制御系を除く部位に失陥が発生したとの判定に基づき前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力した場合、締結指令を出力した後、前記クラッチ締結判定手段により前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定されるまでの間、ステアバイワイヤ制御での転舵制御を車両挙動抑制転舵制御に切り替えるクラッチ締結過渡期転舵制御手段と、
を備え、
前記クラッチ締結過渡期転舵制御手段は、前記クラッチ締結指令手段により前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力した場合、ステアリングギア比をスローギア比とする転舵スロー制御に切り替えると共に、操舵角速度が速いほどステアリングギア比をスロー側のギア比とすることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 運転者が操作する操作部と、
前記操作部とは機械的に切り離され、前記操作部の操作状態に応じて操向輪を転舵する転舵部と、
前記操作部と前記転舵部とを締結により機械的に連結するバックアップクラッチと、
前記バックアップクラッチの開放状態で、前記バックアップクラッチの締結条件が成立すると、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力するクラッチ締結指令手段と、
前記バックアップクラッチに対し締結指令が出力された後、前記操作部のトルク増加が検出されたとき、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定するクラッチ締結判定手段と、
反力制御系を除く部位に失陥が発生しているか否かを判定する第2の失陥判定手段と、
前記クラッチ締結指令手段にて、反力制御系を除く部位に失陥が発生したとの判定に基づき、前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力した場合、締結指令を出力した後、所定時間を経過したら、ステアバイワイヤ制御での反力制御を停止する反力制御停止手段と、
を備えたことを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項3に記載された車両用操舵制御装置において、
前記反力制御停止手段は、前記所定時間を、前記操作部と前記転舵部との相対回転角速度が速いほど短い時間に設定することを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1乃至4の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、
前記操作部に操舵反力を付与する反力アクチュエータと、
前記転舵部に転舵力を付与する転舵アクチュエータと、
を設け、
前記クラッチ締結判定手段は、前記バックアップクラッチが締結状態になったと判定したとき、前記バックアップクラッチに対し締結指令が出力される前の反力制御と転舵制御によるステアバイワイヤ制御から、前記反力アクチュエータと前記転舵アクチュエータの少なくとも一方をアシスト力付与手段とする電動パワーステアリング制御に切り替えることを特徴とする車両用操舵制御装置。 - 請求項1、3乃至5の何れか1項に記載された車両用操舵制御装置において、
前記クラッチ締結過渡期転舵制御手段は、前記クラッチ締結指令手段により前記バックアップクラッチに対し締結指令を出力した時の転舵角を保持する転舵保持制御に切り替えることを特徴とする車両用操舵制御装置。
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