JP5194740B2 - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Description
ところで、前置きエンジン前輪駆動(FF)車や4輪駆動(4WD)車のように、操舵用の車輪即ち転舵輪が走行用の駆動輪を兼ねる車両においは、エンジンルームにおけるレイアウトの制約が大きく、エンジンより出力されるトルクを左右輪に分配するディファレンシャル装置の左右における等剛性を成立させることが難しい。例えば、エンジンや変速機の配置上、ディファレンシャル装置に連結されたドライブシャフトの左右の軸の長さの差が大きく、左右のジョイント屈曲角に差が出ることがある。このため、車両進行の乱れを引き起し、ステアリング操舵力や保舵力が変化を起こしてしまったり、運転者に対して困難且つ煩雑なステアリング操作を強いることになってしまったりする。
このため、従来、操舵輪と駆動輪とが兼用された車両において発生するトルクステアを有効に抑制するために、前後加速度αを算出し、この前後加速度αが正の下限値α0を超え、トルクステアが発生する虞れがある場合に、前後加速度αの増加に応じて大となるアシスト補正量Aを算出し、このアシスト補正量Aにより、操舵補助用のモータの駆動制御の目標値となる目標補助力を増量補正するようにした電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、減速時車両片流れを最適に抑制することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
車両減速度を検出する減速度検出手段を備え、前記操舵補助力制御手段は、前記減速度検出手段で検出した減速度に基づいて減速時に生じる車両の不安定挙動を抑制する補正値を演算し、演算した補正値に基づいて前記電動モータで発生する操舵補助力を補正する操舵補助力補正手段を備え、前記操舵補助力補正手段は、減速度が車両片流れを生じる値を超えて大きくなったときに、前記補正値を零から減速度の増加に応じて負方向に大きくするように設定し、当該補正値を前記電流指令値に加算して前記操舵補助力を補正するように構成されていることを特徴としている。
図1は、本発明を前置きエンジン前輪駆動車に適用した場合の第1の実施形態を示す全体構成図であって、図中、1は通常の車両に搭載されているバッテリであって、このバッテリ1から出力されるバッテリ電圧Vbがヒューズ2を介して操舵補助力制御手段としての制御装置3に入力される。この制御装置3は、操舵系に対して操舵補助力を発生する電動モータ5を駆動制御する。
ステアリング装置10は、ステアリングホイール11が装着されたステアリングシャフト12を有し、このステアリングシャフト12が例えばラックピニオン形式のステアリングギヤ機構13に連結され、このステアリングギヤ機構13がタイロッド等の連結機構14を介してエンジン(図示せず)からの駆動力が伝達される左右の転舵輪15に連結されている。
また、ステアリングシャフト12には、ステアリングホイール11に入力された操舵トルクTを検出する操舵トルクセンサ17が配設されていると共に、電動モータ5にはモータ回転角θmを検出する回転角センサ18が配設され、操舵トルクセンサ17で検出した操舵トルクT及び回転角センサ18で検出したモータ回転角θmが制御装置3へ入力されている。
さらに、制御装置3には車両の車速Vxを検出する車速センサ19で検出した車速Vxが入力されている。
この操舵補助トルク指令値算出マップは、図3に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速Vxをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが"0"からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助トルク指令値Irefが"0"を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値Irefが操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助トルク指令値Irefが急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
減速度検出部41は、車速センサ19で検出した車速Vxを微分して車両前後方向の車両減速度αdxを算出する。
ここで、収斂性補償部51は、車速センサ19で検出した車速Vx及び角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωmが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール11が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωmに車速Vxに応じて変更される収斂性制御ゲインKvを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
今、車両がステアリングホイール11を例えば直進状態の中立位置として停車しているものとする。この状態でステアリングホイール11が操舵されていない場合には、操舵トルクセンサ17で検出される操舵トルクTが“0”であり、車速Vxも“0”であるので、操舵補助電流指令値演算部21で操舵トルクT及び車速Vxをもとに操舵補助電流指令値算出マップを参照したときに操舵補助電流指令値Irefが“0”となる。
このとき、操舵補助力補正部23では、車両が停止状態を継続しており、車両減速度αdxが“0”を継続するので、操舵補助力補正ゲイン算出部42で算出される操舵補助力補正ゲインGαが“0”を維持し、乗算器43の乗算出力は“0”となり、さらに操舵トルクTの絶対値|T|が大きな値となるので、操舵トルク補正ゲインGtは小さい値となり、乗算器37の乗算出力は“0”となり、操舵補助力補正値Asは“0”を維持する。
したがって、減算器71a、71b及び71cから3相電流指令値Iaref、Ibref及びIcrefがそのまま電流偏差ΔIa、ΔIb及びΔIcとして出力され、これが電流制御部72でPI制御されてから電圧指令値Varef、Vbref及びVcrefに変換されてパルス幅変調回路73に供給されることにより、このパルス幅変調回路73らかインバータ制御信号が出力され、これがインバータ74に供給されることにより、このインバータ74から三相モータ電流Ia、Ib及びIcが出力されて、電動モータ5が回転駆動され、操舵トルクTに応じた操舵補助力を発生する。
その後、車両を発進させた後、例えば車両の旋回走行状態で、比較的大きな制動力で制動状態とした場合には、車輪に伝達される制動力のアンバランスやタイヤ及びサスペンションへの様々な方向からの力によって、制動力の変化が大きく減速度が大きい急制動時に、走行進路を乱す車両偏向を引き起こす現象即ち制動時車両片流れが発生する。
この制動状態では、制動時車両片流れを抑制するために、保舵状態としており、操舵トルクセンサ17で検出される操舵トルクTの絶対値|T|は比較的小さい値となるため、操舵トルク補正ゲイン算出部45で算出される操舵トルク補正ゲインGtは“1”近傍の値となり、この操舵トルク補正ゲインGtが乗算器43に供給されることにより、乗算器43の乗算出力は−Gα×Gtとなり、これがリミッタ46に供給され、このリミッタ46で乗算出力−Gα×Gtが所定範囲内の値であるときにはそのまま出力され、負の最大値を超えている場合には負の最大値に抑制されて操舵補助力補正値Asとして加算器47に出力される。
この急制動時に発生する制動時車両片流れの抑制は、減速度検出部41で検出する車両減速度αdxが大きくなる程即ち負値の絶対値が大きくなる程操舵補助力補正ゲインGαが負値の大きな値となって、操舵補助力補正値Asが負値の大きな値となり、急制動時に生じる車両片流れが大きくなるに応じて操舵補助力補正値Asが大きくなって、操舵補助電流指令値Irefを補正した操舵補助電流補正値Iref′が小さいとなり、車両片流れを確実に抑制することができる。
この第2の実施形態においては、前述した第1の実施形態における操舵トルクに応じて操舵トルク補正ゲインGtを算出する場合に代えて、ステアリング装置10の操舵角を検出して操舵角に応じた補正ゲインを算出するようにしたものである。
すなわち、第2の実施形態では、図6に示すように、前述した第1の実施形態における図2の構成において、操舵トルクTを絶対値化する絶対値化回路44及び操舵トルクの絶対値|T|に基づいて操舵トルク補正ゲインGtを算出する操舵トルク補正ゲイン算出部45が省略され、これらに代えてステアリングシャフト12の操舵角φを検出する操舵角検出部81と、この操舵角検出部81で検出した操舵角φを絶対値化する絶対値化回路82と、この絶対値化回路82から出力される操舵角φの絶対値|φ|を基に図7に示す操舵角補正ゲイン算出マップを参照して操舵角補正ゲインGφを算出する操舵角補正ゲイン算出部83とが設けられ、操舵角補正ゲイン算出部83で算出された操舵角補正ゲインGφが乗算器43に供給されていることを除いては前述した図2と同様の構成を有し、図2との対応部分には同一符号を付し、その詳細説明はこれを省略する。
この第3の実施形態では、車両加減速度αxに基づいて補正ゲインを演算し、演算した補正ゲインを操舵補助電流指令値演算部21で演算した操舵補助電流指令値Irefに乗算することにより、減速時に操舵補助力を減少補正するようにしたものである。
すなわち、第3の実施形態においては、図8に示すように、操舵補助力補正部23が、前述した第1及び第2の実施形態とは異なり、車速センサ19で検出した車速Vxを微分して車両前後方向の車両加減速度αxを算出する加減速度検出部91を有し、この加減速度検出部91で検出した車両加減速度αxが操舵補助力補正ゲイン算出部92に供給される。この操舵補助力補正ゲイン算出部92では、車両加減速度αxをもとに図9に示す操舵補助力補正ゲイン算出マップを参照して操舵補助力補正ゲインGαを算出し、算出した操舵補助力補正ゲインGαを選択部93の一方の入力側に供給する。
今、車両が停止状態であるときには、加減速度検出部91で検出される車両加減速度αxが“0”であるので、操舵補助力補正ゲイン算出部92で算出される操舵補助力補正ゲインGαは“1”となる。
この車両の停止状態で、ステアリングホイール11を操舵していない非操舵状態では、操舵トルクセンサ17で検出される操舵トルクTが“0”であり、所定値T3以下であるので、選択信号形成部95で論理値“1”の選択信号SLが選択部93に出力されることにより、この選択部93で操舵補助力補正ゲイン算出部92から出力される操舵補助力補正ゲインGαが選択され、選択された操舵補助力補正ゲインGαが乗算器97に供給されて操舵補助電流指令値演算部21で演算された操舵補助電流指令値Irefに乗算され、操舵補助電流指令値Irefがそのまま操舵補助電流補正値Iref′となる。
この車両の停止状態で、ステアリングホイール11を操舵することにより据え切りを行うと、操舵トルクセンサ17で検出される操舵トルクTの絶対値|T|が大きな値となり、所定値T3を超えることになるので、選択信号形成部95で論理値“0”の選択信号が形成され、これが選択部93に供給されるので、この選択部93で操舵補助力補正ゲイン生成部94から出力される“1”の操舵補助力補正ゲインGα1が選択されて、乗算器97で操舵補助電流指令値演算部21によって演算された操舵補助電流指令値Irefに乗算され、この操舵補助電流指令値Irefがそのまま操舵補助電流補正値Iref′となる。
また、車両の停止状態から車両を発進させて加速状態となると、加減速度検出部91で検出される車両加減速度αxが正値となることにより、操舵補助力補正ゲイン算出部92で算出される操舵補助力補正ゲインGαが“1”を継続することにより、車両停止時と同様に、操舵補助電流指令値演算部21で演算された操舵補助電流指令値Irefがそのまま操舵補助電流補正値Iref′となる。
この減速状態で、直進路や緩やかなコーナーを走行している状態では、操舵トルクセンサ17で検出される操舵トルクTの絶対値|T|が所定値T3以下となるので、選択信号形成部95で論理値“1”の選択信号SLが選択部93に出力される。このため、選択部93で操舵補助力補正ゲイン算出部92から出力される操舵補助力補正ゲインGαが選択されて、これが乗算器97に供給される。
このステップS6では、収斂性補償部51と同様にモータ角速度ωmに車速Vxに応じて設定された補償係数Kvを乗算して収斂性補償値Icを算出してからステップS7に移行する。
次いで、ステップS11に移行して、モータ電流指令値Iaref〜Icrefからモータ電流Ia〜Icを減算して電流偏差ΔIa〜ΔIcを算出し、次いでステップS12に移行して、電流偏差ΔIa〜ΔIcについてPI制御処理を行って電圧指令値Varef〜Vcrefを算出し、次いでステップS13に移行して算出した電圧指令値Varef〜Vcrefに基づいてデューティ比を演算してからパルス幅変調処理を行ってインバータゲート信号を形成し、次いでステップS14に移行して、形成したインバータゲート信号をインバータ74に出力してから操舵補助制御処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
Iref″=Iref×As+Ic+Ii …………(1)
この図13の処理及び図10のステップS5及びS8の処理が操舵補助力補正部23に対応している。
ここで、Rmはモータ巻線抵抗、K0はモータの起電力定数である。
また、上記第1〜第3の実施形態においては、車速Vxを微分して車両減速度αdx又は車両加減速度αxを算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両の前後加減速度を検出する加速度センサを設けるようにしてもよい。
Claims (3)
- 転舵輪を転舵するステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出手段と、前記ステアリング機構に与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、少なくとも前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算して前記電動モータを駆動制御する操舵補助力制御手段とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
車両減速度を検出する減速度検出手段を備え、前記操舵補助力制御手段は、前記減速度検出手段で検出した減速度に基づいて減速時に生じる車両の不安定挙動を抑制する補正値を演算し、演算した補正値に基づいて前記電動モータで発生する操舵補助力を補正する操舵補助力補正手段を備え、
前記操舵補助力補正手段は、減速度が車両片流れを生じる値を超えて大きくなったときに、前記補正値を零から減速度の増加に応じて負方向に大きくするように設定し、当該補正値を前記電流指令値に加算して前記操舵補助力を補正するように構成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記操舵補助力補正手段は、前記補正値を前記操舵トルク検出手段で検出した操舵トルクに応じて変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ステアリング機構の操舵角を検出する操舵角検出手段を備え、前記操舵補助力補正手段は、前記補正値を前記操舵角検出手段で検出した操舵角に応じて変化させるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動パワーステアリング装置。
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