JP2008201338A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】別途舵角センサ等を追加することなく、電動パワーステアリング装置が操舵限界位置到達時のトルク伝達部材に伝達されるピークトルクを抑制する。
【解決手段】ステアリング機構に操舵補助トルクを伝達する電動モータ12と、操舵トルクに基づく電流指令値に応じて前記電動モータ12をパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部25と、前記電動モータ12のモータトルクを検出するモータトルク検出部26aと、検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出部26bと、演算したモータトルク変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制するように制限する電流指令値制限部23とを有する。
【選択図】図3
【解決手段】ステアリング機構に操舵補助トルクを伝達する電動モータ12と、操舵トルクに基づく電流指令値に応じて前記電動モータ12をパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部25と、前記電動モータ12のモータトルクを検出するモータトルク検出部26aと、検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出部26bと、演算したモータトルク変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制するように制限する電流指令値制限部23とを有する。
【選択図】図3
Description
本発明は、少なくとも操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、ステアリング機構に操舵補助力を与える電動モータと、前記電流指令値に基づいて電動モータを制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置に関する。
従来、ステアリング装置として運転者がステアリングホイールを操舵する操舵トルクに応じて電動モータ駆動することによりステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置が普及している。
一般に、ステアリング機構では、ステアリングホイールを中立位置から左及び右の何れの操舵方向に操舵を続けると、ステアリングホイールの操作量がその最大値に相当する最大舵角に達すると、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接してそれ以上の操舵ができない操舵限界位置となる。このような操舵限界位置となって、メカニカルストッパに当接する状態となることを所謂端当てと称している。
一般に、ステアリング機構では、ステアリングホイールを中立位置から左及び右の何れの操舵方向に操舵を続けると、ステアリングホイールの操作量がその最大値に相当する最大舵角に達すると、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接してそれ以上の操舵ができない操舵限界位置となる。このような操舵限界位置となって、メカニカルストッパに当接する状態となることを所謂端当てと称している。
そして、ステアリングホイールが素早く操作される場合即ち操舵速度が大きい場合には、電動パワーステアリング装置で発生する操舵補助力も大きくなり、端当ての際に生じる衝撃力が大きなものとなり、その結果、ステアリング機構の耐久性が低下したり、操舵操作において運転者が不快感を覚えたりすることがある。
このため、従来、端当て時の衝撃を緩和するように構成された電動パワーステアリング装置として、舵角が最大舵角近傍の所定舵角を超えると電動機の操舵補助トルクを低減補正するアンローダ補正部を有し、このアンローダ補正部は、操舵速度が速いほど前記補助操舵トルクの低減補正量を増大修正することを特徴とする電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このため、従来、端当て時の衝撃を緩和するように構成された電動パワーステアリング装置として、舵角が最大舵角近傍の所定舵角を超えると電動機の操舵補助トルクを低減補正するアンローダ補正部を有し、このアンローダ補正部は、操舵速度が速いほど前記補助操舵トルクの低減補正量を増大修正することを特徴とする電動パワーステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、操舵輪が所定の最大舵角に接近して減衰開始舵角を超えたことが検出された場合に、電動モータの駆動力を減衰させる減衰手段と、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて前記減衰開始舵角を設定する減衰開始舵角設定手段とを備えた電気式パワーステアリング装置も知られている(例えば、特許文献2参照)。
ところが、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、最大舵角近傍において操舵補助トルクの低減補正量を増大修正するようにしているので、舵角を検出するセンサが必要となると共に、操舵速度が速い場合には、電動機の慣性により、必ずしも端当て時の衝撃を十分に緩和することができないという未解決の課題がある。
ところが、上記特許文献1に記載の従来例にあっては、最大舵角近傍において操舵補助トルクの低減補正量を増大修正するようにしているので、舵角を検出するセンサが必要となると共に、操舵速度が速い場合には、電動機の慣性により、必ずしも端当て時の衝撃を十分に緩和することができないという未解決の課題がある。
また、上記特許文献2に記載の従来例にあっては、操舵輪の負荷及び操舵輪の操舵速度に応じて減衰開始舵角を設定するので、操舵速度が高速である場合には、最大舵角と減衰開始舵角との差を大きくする(電動モータの駆動力を減衰させる時点を早める)ことで、モータ慣性によって端当て時に大きな衝撃が発生することを防止することが可能となるものであるが、操舵輪の操舵速度を検出するセンサが必要になると共に、ステアリングホイールを最大舵角近傍から中立位置へ向かって切り戻す場合には、電動モータの駆動力の減衰により、操舵補助力が不十分となって操舵フィーリングが悪化するという未解決の課題がある。
これらの未解決の課題を解決するために、機械的に端当ての衝撃を低減することが考えられている(例えば、特許文献3参照)。この特許文献3に記載の発明では、電動モータから操舵輪への操舵力伝達系の途中であって、電動モータから伝えられるトルクが作用する部分に、該部分に作用するトルクが所定値に達した場合に当該トルクの伝達を制限するトルクリミッタを設けることにより、操舵輪がステアリングエンドに達した時等、操舵輪の操舵動作が急激に停止した場合に瞬間的に増加する電動モータの回転エネルギによるトルクをトルクリミッタにより制限し、所定値以上のトルクの操舵輪側への電動を阻止して大きな衝撃力の発生を防止するようにしている。
特開2001−253356号公報(第1頁、図2、図7)
特開2001−30933号公報(第1頁、図2、図3)
特開2000−335431号公報(第1頁、図2、図3)
ところで、端当て時やタイヤが縁石に当接した時のように操舵限界位置に達した時の衝撃荷重が及ぼす影響のうち、ステアリングシャフトとステアリングギヤとの間に介挿されたトルク伝達部材としての中間シャフトに与える影響が大きな問題となり、この中間シャフトの耐久性が低下するという問題がある。
上記各従来例にあっては、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接する端当てやタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時の衝撃を緩和できるものであるが、第1及び第2の従来例のようにソフトウェアによる対策では、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用するため、高精度の舵角センサ又は絶対舵角推定機能が必要となり、横滑り防止装置用の低精度の舵角センサを流用することはできず、高価な舵角センサや絶対舵角推定機能を必要とするので、製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
上記各従来例にあっては、ステアリング機構がメカニカルストッパに当接する端当てやタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時の衝撃を緩和できるものであるが、第1及び第2の従来例のようにソフトウェアによる対策では、ステアリングホイールの絶対角度情報を使用するため、高精度の舵角センサ又は絶対舵角推定機能が必要となり、横滑り防止装置用の低精度の舵角センサを流用することはできず、高価な舵角センサや絶対舵角推定機能を必要とするので、製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
また、第3の従来例のように、端当て時の衝撃を、トルクリミッタを使用して機械的に防止するには、トルクリミッタを組込む必要があり、上記と同様に製造コストが嵩むという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、別途舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、別途舵角センサやトルクリミッタ等を追加することなく、端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置となった時に中間シャフト等のトルク伝達部材に伝達される衝撃力を緩和することができる電動パワーステアリング装置を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1に係る電動パワーステアリング装置は、ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、少なくとも前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置であって、前記電動モータと前記ステアリングシャフト間に発生しているモータトルクを検出するモータトルク検出部と、該モータトルク検出部で検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出部と、該モータトルク変化率検出部で演算したモータトルクの変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制するように制限する電流指令値制限部とを有することを特徴としている。
また、請求項2に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記モータトルク検出部は、前記電動モータの駆動電流を検出する駆動電流検出部と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部と、前記駆動電流検出部で検出したモータ駆動電流と前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度から前記電動モータと前記ステアリングシャフトとの間に発生しているトルクを演算するモータトルク演算部とを備えていることを特徴としている。
さらに、請求項3に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1に係る発明において、前記モータトルク検出部は、前記電動モータの出力軸から前記ステアリングシャフトに至る間のトルク伝達軸に配設した磁歪式トルクセンサで構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、前記電流指令値制限部は、前記モータトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記モータトルク検出部で検出したモータトルクの絶対値が所定値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項4に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、前記電流指令値制限部は、前記モータトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記モータトルク検出部で検出したモータトルクの絶対値が所定値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項5に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至3の何れか1つに係る発明において、前記電流指令値制限部は、前記モータトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記モータトルク検出部で検出したモータトルクの絶対値が所定値以上である状態を所定時間以上継続したときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項6に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至5の何れか1つに係る発明において、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータトルクの変化率の符号とモータトルク演算値の符号とが一致した場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至5の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部を備え、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
さらに、請求項7に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至5の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部を備え、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
さらにまた、請求項8に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至5の何れか1つに係る発明において、前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部を備え、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出部で所定時間前に検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴としている。
なおさらに、請求項9に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至8の何れか1つの発明において、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値を制限してから所定時間が経過したときに当該電流指令値の制限を解除するように構成されていることを特徴としている。
また、請求項10に係る電動パワーステアリング装置は、請求項9に係る発明において、前記電流指令値の前記制限を解除する所定時間はモータ角速度に基づいて設定されることを特徴としている。
また、請求項10に係る電動パワーステアリング装置は、請求項9に係る発明において、前記電流指令値の前記制限を解除する所定時間はモータ角速度に基づいて設定されることを特徴としている。
さらに、請求項11に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至10の何れか1つに係る発明において、前記電流指令値制限部で、前記電流指令値が制限されたときに、当該電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部の応答性を変更する応答性変更部を備えていることを特徴としている。
さらにまた、請求項12に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至11の何れか1つに係る発明において、前記電流指令値制限部で、前記電流指令値の制限が解除されたときに、当該電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部の応答性を変更する応答性変更部を備えていることを特徴としている。
さらにまた、請求項12に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至11の何れか1つに係る発明において、前記電流指令値制限部で、前記電流指令値の制限が解除されたときに、当該電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部の応答性を変更する応答性変更部を備えていることを特徴としている。
なおさらに、請求項13に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至12の何れか1つの発明において、前記ステアリング機構のトルク伝達部材は、ステアリングシャフトにプレス成形によって製作されたヨークを有するジョイントを介して接続された中間シャフトを有することを特徴としている。
また、請求項14に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至13の何れか1つの発明において、前記ステアリング機構は、ステアリングギヤのラックストロークエンドに緩衝材を備えていることを特徴としている。
また、請求項14に係る電動パワーステアリング装置は、請求項1乃至13の何れか1つの発明において、前記ステアリング機構は、ステアリングギヤのラックストロークエンドに緩衝材を備えていることを特徴としている。
本発明によれば、モータトルク検出部で検出したモータトルクの変化率が操舵限界位置を判断する閾値以上であるときに、電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制するように制限するので、ステアリングシャフト及びステアリングギヤ間に介挿された中間シャフト等のトルク伝達部材に過大なトルクが伝達される前に電動モータで発生する操舵補助トルクを制限することができ、別途舵角センサやトルクリミッタ等を設けることなく、端当り時やタイヤが縁石に当接した時などの操舵限界位置に達した時にトルク伝達部材に伝達される衝撃力を確実に抑制することができるという効果が得られる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
図1は、本発明の一実施形態を示す概略構成図であって、図中、SMはステアリング機構である。このステアリング機構SMは、ステアリングホイール1に運転者から作用される操舵力が伝達される入力軸2aとこの入力軸2aに図示しないトーションバーを介して連結された出力軸2bとを有するステアリングシャフト2を備えている。このステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3に回転自在に内装され、入力軸2aの一端がステアリングホイール1に連結され、他端は図示しないトーションバーに連結されている。
そして、出力軸2bに伝達された操舵力は、2つのヨーク4a,4bとこれらを連結する十字連結部4cとで構成されるユニバーサルジョイント4を介して中間シャフト5に伝達され、さらに、2つのヨーク6a,6bとこれらを連結する十字連結部6cとで構成されるユニバーサルジョイント6を介してピニオンシャフト7に伝達される。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、図2に示すように、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで直進運動に変換している。
このピニオンシャフト7に伝達された操舵力はステアリングギヤ8を介して左右のタイロッド9に伝達され、これらタイロッド9によって図示しない転舵輪を転舵させる。ここで、ステアリングギヤ8は、図2に示すように、ギヤハウジング8a内に、ピニオンシャフト7に連結されたピニオン8bとこのピニオン8bに噛合するラック軸8cとを有するラックアンドピニオン形式に構成され、ピニオン8bに伝達された回転運動をラック軸8cで直進運動に変換している。
そして、ラック軸8cの両端にボールジョイント9aを介してタイロッド9が連結されていると共に、ギヤハウジング8aのラック軸8cを覆う筒状部8dの内周面にラック軸8cが操舵限界位置即ちラックストロークエンドに達したときに、ラック軸8cに取付けたボールジョイント9aの内側端面に形成した緩衝部材8eが当接するストッパ部材8fが形成されている。
ステアリングシャフト2の出力軸2bには、操舵補助力を出力軸2bに伝達する操舵補助機構10が連結されている。この操舵補助機構10は、出力軸2bに連結した減速ギヤ11と、この減速ギヤ11に連結された操舵補助力を発生する電動機としての例えばブラシレスモータで構成される電動モータ12とを備えている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
また、減速ギヤ11のステアリングホイール1側に連接されたハウジング13内に操舵トルクセンサ14が配設されている。この操舵トルクセンサ14は、ステアリングホイール1に付与されて入力軸2aに伝達された操舵トルクを検出するもので、例えば、操舵トルクを入力軸2a及び出力軸2b間に介挿した図示しないトーションバーの捩れ角変位に変換し、この捩れ角変位を非接触の磁気センサで検出するように構成されている。
そして、操舵トルクセンサ14から出力される操舵トルク検出値Tは、図3に示すように、コントローラ15に入力される。このコントローラ15には、トルク検出値Tの他に車速センサ16で検出した車速検出値V、電動モータ12に流れるモータ電流Iu〜Iw及びレゾルバ、エンコーダ等で構成される回転角センサ17で検出した電動モータ12の回転角θも入力され、入力されるトルク検出値T及び車速検出値Vに応じた操舵補助力を電動モータ12で発生させる操舵補助電流指令値Irefを算出し、算出した操舵補助電流指令値Irefに対して回転角θに基づいて算出するモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいて各種補償処理を行ってからd−q軸指令値に変換し、これらd−q軸指令値とモータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換して算出したd−q軸検出値とに基づいて電動モータ12に供給する駆動電流をフィードバック制御処理してから2相/3相変換して2相電動モータ12を駆動制御するモータ電流Iu、Iv及びIwを出力する。
すなわち、コントローラ15は、操舵トルクT及び車速Vに基づいて操舵補助電流指令値Irefを演算する操舵補助電流指令値演算部21と、この操舵補助電流指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値Irefを補償する指令値補償部22と、この指令値補償部22で補償された補償後電流指令値Iref′を電流制限する電流指令値制限部23と、この電流指令値制限部23で電流制限した制限電流指令値Iref″に基づいてd−q軸電流指令値を算出するd−q軸電流指令値演算部24と、このd−q軸電流指令値演算部24から出力されるd−q軸指令値に基づいてモータ電流Iu〜Iwを生成するモータ制御部25とで構成されている。
操舵補助電流指令値演算部21は、操舵トルクT及び車速Vをもとに図4に示す操舵補助電流指令値算出マップを参照して電流指令値でなる操舵補助電流指令値Irefを算出する。
この操舵補助電流指令値算出マップは、図4に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速Vをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが"0"からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助電流指令値Irefが"0"を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値Irefが操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助電流指令値Irefが急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
この操舵補助電流指令値算出マップは、図4に示すように、横軸に操舵トルクTをとり、縦軸に操舵補助電流指令値Irefをとると共に、車速Vをパラメータとした放物線状の曲線で表される特性線図で構成され、操舵トルクTが"0"からその近傍の設定値Ts1までの間は操舵補助電流指令値Irefが"0"を維持し、操舵トルクTが設定値Ts1を超えると最初は操舵補助指令値Irefが操舵トルクTの増加に対して比較的緩やかに増加するが、さらに操舵トルクTが増加すると、その増加に対して操舵補助電流指令値Irefが急峻に増加するように設定され、この特性曲線が車速の増加に従って傾きが小さくなるように設定されている。
指令値補償部22は、回転角センサ17で検出されるモータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出する角速度演算部31と、この角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出する角加速度演算部32と、角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωに基づいてヨーレートの収斂性を補償する収斂性補償部33と、角加速度演算部32で算出されたモータ角加速度αに基づいて電動モータ12の慣性により発生するトルク相当分を補償して慣性感又は制御応答性の悪化を防止する慣性補償部34と、セルフアライニングトルク(SAT)を推定するSAT推定フィードバック部35とを少なくとも有する。
ここで、収斂性補償部33は、車速センサ16で検出した車速V及び角速度演算部31で算出されたモータ角速度ωが入力され、車両のヨーの収斂性を改善するためにステアリングホイール1が振れ回る動作に対して、ブレーキをかけるように、モータ角速度ωに車速Vに応じて変更される収斂性制御ゲインKvを乗じて収斂性補償値Icを算出する。
また、SAT推定フィードバック部35は、操舵トルクT、角速度ω、角加速度α及び操舵補助電流指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値Irefが入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図5に示して説明する。すなわち、ドライバがステアリングホイール1を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ12がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ12の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
また、SAT推定フィードバック部35は、操舵トルクT、角速度ω、角加速度α及び操舵補助電流指令値演算部21で算出した操舵補助電流指令値Irefが入力され、これらに基づいてセルフアライニングトルクSATを推定演算する。このセルフアライニングトルクSATを算出する原理は、路面からステアリングまでの間に発生するトルクの様子を図5に示して説明する。すなわち、ドライバがステアリングホイール1を操舵することによって操舵トルクTが発生し、その操舵トルクTに従って電動モータ12がアシストトルクTmを発生する。その結果、車輪Wが転舵され、反力としてセルフアライニングトルクSATが発生する。また、その際、電動モータ12の慣性J及び摩擦(静摩擦)Frによってステアリングホイール1の操舵の抵抗となるトルクが生じる。これらの力の釣り合いを考えると、下記(1)式のような運動方程式が得られる。
J・α+ Fr・sign(ω) + SAT = Tm + T …(1)
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・α(s) + Fr・sign(ω(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ω、回転角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
ここで、上記(1)式を初期値ゼロとしてラプラス変換し、セルフアライニングトルクSATについて解くと下記(2)式が得られる。
SAT(s) = Tm(s) + T(s) − J・α(s) + Fr・sign(ω(s)) …(2)
上記(2)式から分かるように、電動モータ12の慣性J及び静摩擦Frを定数として予め求めておくことで、モータ角速度ω、回転角加速度α、アシストトルクTm及び操舵トルクTよりセルフアライニングトルクSATを推定することができる。ここで、アシストトルクTmは操舵補助電流指令値Irefに比例するので、アシストトルクTmに代えて操舵補助電流指令値Irefを適用する。
そして、慣性補償部34で算出された慣性補償値Ii及びSAT推定フィードバック部35で算出されたセルフアライニングトルクSATが加算器36で加算され、この加算器36の加算出力と収斂性補償部33で算出された収斂性補償値Icとが加算器37で加算されて指令補償値Icomが算出され、この指令補償値Icomが操舵補助電流指令値演算部21から出力される操舵補助電流指令値Irefに加算器38で加算されて補償後電流指令値Iref′が算出され、この補償後電流指令値Iref′が電流指令値制限部23に出力される。
また、電流指令値制限部23は、後述する選択信号形成部26から入力される選択信号SLが例えば論理値“1”であるときに加算器38から出力される補償後操舵補助電流指令値Iref′を例えば最大値の3%程度に制限するリミッタ23aと、このリミッタ23aから出力される制限電流指令値Ilim及び補償後操舵補助電流指令値Iref′が入力され、これらを入力される選択信号SLが論理値“0”であるときに補償後操舵補助電流指令値Iref′を選択し、論理値“1”であるときに制限電流指令値Ilimを選択する選択スイッチ部23bとを備えている。
さらに、d−q軸電流指令値演算部24は、補償後操舵補助電流指令値Iref′と電気角演算部30で算出されるモータ回転角センサ17で検出したモータ回転角θに基づく電気角θe及びモータ角速度ωとに基づいてd軸指令電流Id*を算出するd軸指令電流算出部51と、電気角θeに基づいてd−q軸誘起電圧モデルEMF(ElectroMotive Force)のd軸EMF成分ed(θe)及びq軸EMF成分eq(θe)を算出する誘起電圧モデル算出部52と、この誘起電圧モデル算出部52から出力されるd軸EMF成分ed(θe)及びq軸EMF成分eq(θe)とd軸指令電流算出部51から出力されるd軸指令電流Id*と補償後操舵補助電流指令値Iref′とに基づいてq軸指令電流Iq*を算出するq軸指令電流算出部53とを備えている。
モータ制御部25は、電動モータ12の各相コイルLu、Lv及びLwに供給されるモータ電流Iu、Iv及びIwを検出するモータ電流検出部60と、このモータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu、Iv及びIwを3相/2相変換してd軸電流検出値Id及びq軸電流検出値Iqを算出する3相/2相変換部61と、d−q軸電流指令値演算部24から入力されるd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*から3相/2相変換部61から入力されるd軸電流検出値Id及びq軸電流指令値Iqを個別に減算して各相電流偏差ΔId及びΔIqを求める減算器62d及び62qと、求めた各相電流偏差ΔId及びΔIqに対して比例積分制御を行って電圧指令値Vd及びVqを算出するPI電流制御部63と、このPI電流制御部63から出力される電圧指令値を2相/3相変換して電動モータ12の各相に対応する電圧指令値Vu、Vv及びVwを算出する2相/3相変換部64とを備えている。
ここで、PI電流制御部63は、後述する選択信号形成部26から供給される選択信号SLが論理値“0”であるときには比例ゲイン及び積分ゲインが通常ゲインに設定されるが、選択信号SLが論理値“1”であるときには比例ゲイン及び積分ゲインが夫々通常ゲインより大きい高応答性ゲインに設定されて、応答性が高められる。
また、モータ制御部25は、PI電流制御部63から出力された電圧指令値Vd,Vqが2相/3相変換部64で3相電圧指令値Vu、Vv及びVwに変換されて入力され、これら電圧指令値Vu、Vv及びVwに基づいてデューティ演算を行って各相のデューティ比DuB、DvB及びDwBを算出して各相に対応するパルス幅変調信号を出力するパルス幅変調部65と、このパルス幅変調部65から出力される選択パルス幅変調信号が入力されて3相モータ電流Iu、Iv及びIwを電動モータ12に出力するインバータ66とを備えている。
また、モータ制御部25は、PI電流制御部63から出力された電圧指令値Vd,Vqが2相/3相変換部64で3相電圧指令値Vu、Vv及びVwに変換されて入力され、これら電圧指令値Vu、Vv及びVwに基づいてデューティ演算を行って各相のデューティ比DuB、DvB及びDwBを算出して各相に対応するパルス幅変調信号を出力するパルス幅変調部65と、このパルス幅変調部65から出力される選択パルス幅変調信号が入力されて3相モータ電流Iu、Iv及びIwを電動モータ12に出力するインバータ66とを備えている。
さらに、電流指令値制限部23及びPI電流制御部63に選択信号SLを供給する選択信号形成部26は、3相/2相変換部61で変換したq軸電流検出値Iqと、角加速度演算部32で演算される回転角加速度αから下記(3)式の演算を行ってモータトルクTmaを算出するモータトルク検出部としてのモータトルク演算部26aと、算出したモータトルクTmaを微分してトルク変化率ΔTmaを算出するモータトルク変化率検出部としての微分回路26bと、この微分回路26bから出力されるトルク変化率ΔTmaに基づいて選択信号を生成する選択信号生成部26cとを備えている。
Tma= Kt・Iq−Jm・α ……(3)
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
選択信号生成部26cは、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界位置となったときに生じる通常の操舵では発生することがない大きな傾きのモータトルクを判別する閾値ΔTth(例えば150Nm/sec)以上であるか否かを判定し、ΔTma<ΔTthであるときにはラックストロークエンドに達していないものと判断して論理値"0"の選択信号SLを出力し、ΔTma≧ΔTthであるときにはラックストロークエンドに達したものと判断して論理値"1"の選択信号SLを出力する。
ここで、Ktはモータのトルク定数、Jmはモータのロータ部の慣性モーメントである。
選択信号生成部26cは、ステアリングギヤ8のラック軸8cがラックストロークエンドに達するか又はタイヤが縁石等に接触してこれ以上の転舵ができない操舵限界位置となったときに生じる通常の操舵では発生することがない大きな傾きのモータトルクを判別する閾値ΔTth(例えば150Nm/sec)以上であるか否かを判定し、ΔTma<ΔTthであるときにはラックストロークエンドに達していないものと判断して論理値"0"の選択信号SLを出力し、ΔTma≧ΔTthであるときにはラックストロークエンドに達したものと判断して論理値"1"の選択信号SLを出力する。
ここで、ラック軸8cが操舵限界位置に到達したときのモータトルク演算部26aから出力されるモータトルク波形は、図6に示すように、時点t1でラック軸8cが操舵限界位置となったものとすると、ラック軸8cの車幅方向の移動が停止され、これによってピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bを介し、さらに減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転が停止されるので、電動モータ12に供給されるモータ電流Iu〜Iwが急増し、且つモータの慣性モーメントによるトルクが加わることにより、モータトルクTmaが通常の操舵では発生しないような大きな傾きで増加し(図6の例では175Nm/sec程度)、その後過電流保護回路の動作によってモータ電流Iu〜Iwが徐々に減少されることにより、モータトルクTmaが徐々に減少する。このため、モータトルク変化率ΔTmaの閾値ΔTthを所定値(例えば150Nm/sec程度)に設定することにより、操舵限界位置を確実に検出することができる。
なお、モータ電流検出部60及び3相/2相変換部61とで駆動電流検出部が構成され、この駆動電流検出部、角加速度演算部32及びモータトルク演算部26aでモータトルク検出部が構成されている。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両の走行を開始するために、イグニッションスイッチIGをオン状態とすることにより、コントローラ15に電源が投入されて、操舵補助制御処理が実行開始される。
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、車両の走行を開始するために、イグニッションスイッチIGをオン状態とすることにより、コントローラ15に電源が投入されて、操舵補助制御処理が実行開始される。
このため、操舵トルクセンサ14で検出した操舵トルクT、車速センサ16で検出した車速V、モータ電流検出部60で検出したモータ電流検出値Iu〜Iw、回転角センサ17で検出したモータ回転角θがコントローラ15に供給される。
したがって、操舵補助電流指令値演算部21で、操舵トルクTと車速Vとに基づいて図4に示す操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出する。
したがって、操舵補助電流指令値演算部21で、操舵トルクTと車速Vとに基づいて図4に示す操舵補助指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出する。
一方、回転角センサ17で検出したモータ回転角θが角速度演算部31に入力されてモータ角速度ωが算出され、このモータ角速度ωが角加速度演算部32に入力されてモータ角加速度αが算出される。
そして、収斂性補償部33でモータ角速度ωに基づいて収斂性補償値Icが算出され、慣性補償部34でモータ角加速度に基づいて慣性補償値Iiが算出され、さらにSAT推定フィードバック部35でモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいてセルフアライニングトルクSATが算出され、これらが加算器36及び37で加算されて指令値補償値Icomが算出され、これが加算器38で操舵補助電流指令値Irefに加算されて補償後操舵補助電流指令値補償値Iref′が算出される。
そして、収斂性補償部33でモータ角速度ωに基づいて収斂性補償値Icが算出され、慣性補償部34でモータ角加速度に基づいて慣性補償値Iiが算出され、さらにSAT推定フィードバック部35でモータ角速度ω及びモータ角加速度αに基づいてセルフアライニングトルクSATが算出され、これらが加算器36及び37で加算されて指令値補償値Icomが算出され、これが加算器38で操舵補助電流指令値Irefに加算されて補償後操舵補助電流指令値補償値Iref′が算出される。
そして、算出された補償後操舵補助電流指令値補償値Iref′が電流指令値制限部23に供給される。
このとき、車両が停止状態にあって、ステアリングホイール1が操舵されていない状態では、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが"0"であり、車速センサ16で検出される車速Vも"0"であるので、操舵補助電流指令値演算部21で算出される操舵補助電流指令値Irefも"0"となっている。また、角加速度演算部32で演算される回転角加速度αも"0"となっている。
このとき、車両が停止状態にあって、ステアリングホイール1が操舵されていない状態では、操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTが"0"であり、車速センサ16で検出される車速Vも"0"であるので、操舵補助電流指令値演算部21で算出される操舵補助電流指令値Irefも"0"となっている。また、角加速度演算部32で演算される回転角加速度αも"0"となっている。
一方、電動モータ12が停止状態にあるので、モータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu〜Iwも"0"であり、このモータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換部61で変換したq軸電流検出値Iqも"0"となる。このため、モータトルク演算部26aで検出されるモータトルクTmaも"0"となり、微分回路26bで演算されるモータトルク変化率ΔTmaも"0"であり、これが選択信号生成部26cに供給され、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth未満であるので、論理値"0"の選択信号SLが電流指令値制限部23及びPI電流制御部63に供給される。
このため、電流指令値制限部23では、補償後操舵補助電流指令値Iref′がそのまま選択されてd−q軸電流指令値演算部24に出力される。このd−q軸電流指令値演算部24では、モータ回転角θ及びモータ角速度ωに基づいてd−q軸座標系での指令値演算が行われて、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*が算出され、これらd軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*がモータ制御部25の減算器62d及び62qに出力される。
このモータ制御部25は、モータ電流検出部60で検出されるモータ電流Iu〜Iwが"0"であり、3相/2相変換部61から出力されるd軸電流検出値Id及びq軸電流検出値Iqが共に0となり、減算器61d及び61qから出力される電流偏差ΔId及びIqも"0"となる。このため、PI電流制御部63から出力される電圧指令値Vd,Vqも"0"となって、これら電圧指令値Vd,Vqが2相/3相変換部64で3相電圧指令値に変換されてパルス幅変調部65に供給される。このパルス幅変調部65でデューティ比0%のパルス幅変調信号がパルス幅変調部65からインバータ66に供給されるので、このインバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwも"0"となって、電動モータ12が停止状態を継続する。このとき、PI電流制御部63では、選択信号形成部26から入力される選択信号SLが論理値“0”であるので、比例ゲイン及び積分ゲインが通常ゲインに設定されて、通常の操舵補助制御時に最適な応答性を維持する。
この電動モータ12の停止状態で、ステアリングホイール1を右切り(又は左切り)操舵する所謂据え切りを行うと、操舵トルクセンサ14で操舵方向に応じた操舵トルクTが検出され、この操舵トルクTがコントローラ15に供給されることにより、操舵補助電流指令値演算部21で、車速Vが"0"であるので、一番内側の特性曲線が選択されて操舵トルクTの増大に応じて早めに大きな値となる操舵補助電流指令値Irefが算出され、この操舵補助指令値Irefが加算器38に出力される。また、操舵により回転角加速度αが出力される。
このため、加算器38によって、指令値補償部22で算出された指令補償値Icomが加算されて補償後操舵補助電流指令値Iref′が算出され、この補償後操舵補助電流指令値Iref′が電流指令値制限部23を介してd−q軸電流指令値演算部24に供給される。
このd−q軸電流指令値演算部24で、補償後電流指令値Iref′に応じた値のd軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*が算出され、これらがモータ制御部25に出力される。
このd−q軸電流指令値演算部24で、補償後電流指令値Iref′に応じた値のd軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*が算出され、これらがモータ制御部25に出力される。
このとき、電動モータ12がまだ停止状態であるので、モータ電流検出部60で検出されるモータ電流Iu〜Iwが"0"であり、これを3相/2相変換したd軸電流検出値Id及びq軸電流検出値Iqも“0”となるので、減算器61d及び61qから出力される電流偏差ΔId及びΔIqはd軸電流指令値Id*及びq軸電流指令値Iq*のままとなり、これら電流偏差ΔId及びΔIqがPI電流制御部63に供給される。
このため、PI電流制御部63でPI制御処理が行われて、電圧指令値Vd及びVqが算出され、これらが電圧指令値Vd及びVqが2相/3相変換されて3相電圧指令値Vu〜Vwに変換されてパルス幅変調部65に出力される。このパルス幅変調部65から電圧指令値Vu〜Vwに応じたデューティ比のパルス幅変調信号がインバータ66に供給され、インバータ66からモータ電流Iu〜Iwが出力されて電動モータ12が回転駆動されて、操舵トルクTに応じた操舵補助トルクが発生され、これが減速ギヤ11を介してステアリングシャフト2の出力軸2bに伝達されるので、据え切り状態での操舵を軽く行うことができる。
この状態では、微分回路26bで演算されるモータトルク変化率ΔTmaは回転角加速度αによる変化率のみなので、操舵限界位置到達時のモータトルク変化率よりは小さく、選択信号生成部26cでは論理値"0"の選択信号SLの出力を継続しており、電流指令値制限部23では、選択スイッチ部23bで補償後操舵補助電流指令値Iref′の選択を継続していると共に、PI電流制御部63でも比例ゲイン及び積分ゲインが通常ゲインに設定されている。
このとき、モータ電流Iu〜Iwが急激に増加し、回転角加速度αが発生しているが、この場合のモータトルク変化率ΔTmaは、前述したように操舵限界位置到達時のモータトルク変化率よりは小さく、閾値ΔTthより小さい値となるので、選択信号形成部26では論理値"0"の選択信号SLを継続して出力することにより、電流指令値制限部23の選択スイッチ部23bで補償後操舵補助電流指令値Iref′を選択する状態が継続される。
その後、車両を発進させると、車速センサ16で検出される車速Vが増加することにより、走行中にステアリングホイール1を操舵したときに、操舵補助電流指令値演算部21で算出される操舵補助電流指令値は図4のマップで車速Vが速くなるほど外側の特性曲線が選択されることになるので、操舵トルクTの増加に対応する操舵補助電流指令値Irefの増加量が少なくなることにより、電動モータ12で発生される操舵補助トルクも据え切り時に比較して小さい値となり、車速Vに応じた最適の操舵補助トルクを発生させることができる。
ところで、前述した据え切り状態や車庫入れ等の極低速走行状態でステアリングホイール1を右又は左に操舵限界位置まで比較的速い操舵を行うと、操舵限界位置に達するまでは、前述したように、コントローラ15で、そのときの操舵トルクセンサ14で検出される操舵トルクTに応じたモータ電流Iu〜Iwが形成されて、これらが電動モータ12に供給されて、軽い操舵を行うことができる。
このとき、据え切り状態や極低速走行状態での操舵であるので、操舵トルクTが大きく、パルス幅変調部65から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比は略100%に近い状態となっている。
この状態で、ラック軸8cの緩衝部材8eがストッパ部材8fに当接するラックストロークエンドに達したり、タイヤが縁石等に接触したりして操舵限界位置に達すると、ラック軸8cの移動が停止されることにより、ピニオン8b、ピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bの回転が停止し、これに応じて減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転も停止される。
この状態で、ラック軸8cの緩衝部材8eがストッパ部材8fに当接するラックストロークエンドに達したり、タイヤが縁石等に接触したりして操舵限界位置に達すると、ラック軸8cの移動が停止されることにより、ピニオン8b、ピニオンシャフト7、ユニバーサルジョイント6、中間シャフト5、ユニバーサルジョイント4、ステアリングシャフト2の出力軸2bの回転が停止し、これに応じて減速ギヤ11を介して電動モータ12の回転も停止される。
このとき、コントローラ15では、パルス幅変調部65から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比が100%に近い状態であるため、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwが急増し、且つモータの慣性モーメントによるトルクが加わる。このときのモータ電流Iu〜Iwがモータ電流検出部60で検出され、回転角加速度αが角加速度演算部32で演算されて選択信号形成部26に供給される。このため、選択信号形成部26のモータトルク演算部26aから出力されるモータトルクTmaが図6に示すように急勾配で増加する状態となり、微分回路26bから出力されるモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上となる。
この閾値ΔTth以上となるモータトルク変化率ΔTmaが選択信号生成部26cに供給されることにより、この選択信号生成部26cで論理値"1"の選択信号SLが電流指令値制限部23の選択スイッチ部23b及びPI電流制御部63に出力される。このため、選択スイッチ部23bで、リミッタ23aから出力される補償後操舵補助電流指令値Irefが約3%に制限された制限電流指令値Ilimが選択され、これがd−q軸電流指令値演算部24に供給されることにより、モータ制御部25の減算器62d及び62qから出力される電流偏差ΔId及びΔIqが共に負の値となり、PI電流制御部63の比例ゲイン及び積分ゲインが通常ゲインより大きい高応答性ゲインに変更されるので、このPI電流制御部63から出力される電圧指令値Vd及びVqが小さい値となるが応答性は高められる。
したがって、2相/3相変換部64から出力される3相電圧指令値Vu〜Vwも小さい値となることにより、パルス幅変調部65から出力されるパルス幅変調信号のデューティ比が小さくなって、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwの振幅が小さくなる。このため、電動モータ12で発生する操舵補助トルクが減少し、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値が図7で実線図示の特性曲線L1で示すように、電流指令値制限制御を行わない場合の破線図示の特性曲線L2に比較してトルクのピーク値を抑制することができ、中間シャフト等のトルク伝達部材の耐久性を向上させることができる。
しかも、モータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu〜Iwと、角加速度演算部32で演算された回転角加速度αとに基づいてモータトルク演算部26aでモータトルク値Tmaを演算し、これを微分回路26bで微分してモータトルク変化率ΔTmaを演算し、その演算結果と閾値ΔTthとを選択信号生成部26cで比較することにより、端当て状態やタイヤが縁石に接触した状態の操舵限界位置を検出するので、操舵限界位置に達した時から短時間(例えば10msec程度)で操舵限界位置状態を検出することができる。
この操舵限界位置検出時から短時間(例えば20msec程度)で電動モータ12によって発生する操舵補助トルクを制限することができるので、ラック軸8cに緩衝部材8eを設けない場合の操舵限界位置到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間(約30msec程度)内に操舵補助トルク制限を行うことが可能となり、中間シャフトに発生するトルクを低減して、中間シャフト5の耐久性を向上させることができる。しかも、この効果を別途舵角センサ等のセンサを設けることなく発揮することができる。
また、上記実施形態では、ラック軸8cに緩衝部材8eが設けられているので、ラックエンドストロークに達した端当て時に、緩衝部材8eの縮み代分中間シャフト5にピークトルクが発生する時間を遅延させることができ、中間シャフト5に発生するトルクをより確実に低減させることができる。
なお、上記実施形態においては、ラック軸8cに緩衝部材8eを設けることにより、端当て時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を遅延させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、中間シャフト5の両端に取付けたユニバーサルジョイント4及び6のヨーク4a,4b及び6a,6bをプレス成形することにより、高強度の鍛造成形ヨークに対して剛性を低下させて、操舵限界位置への到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くすることができる。この場合には、ヨークをプレス成形するので、鍛造成形ヨークより低コストで製作することができると共に、操舵限界位置への到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くできるので、演算処理能力の低いマイクロコンピュータ等の演算処理装置を適用することができ、よりコストを低減することができる利点がある。
なお、上記実施形態においては、ラック軸8cに緩衝部材8eを設けることにより、端当て時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を遅延させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、中間シャフト5の両端に取付けたユニバーサルジョイント4及び6のヨーク4a,4b及び6a,6bをプレス成形することにより、高強度の鍛造成形ヨークに対して剛性を低下させて、操舵限界位置への到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くすることができる。この場合には、ヨークをプレス成形するので、鍛造成形ヨークより低コストで製作することができると共に、操舵限界位置への到達時から中間シャフト5にピークトルクが発生するまでの時間を長くできるので、演算処理能力の低いマイクロコンピュータ等の演算処理装置を適用することができ、よりコストを低減することができる利点がある。
また、上記実施形態においては、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であるときに、操舵限界位置であると判断して、電流指令値制限部23で補償後操舵補助電流指令値Iref′をリミッタ23aで制限した制限電流指令値Ilimを選択する場合について説明したが、これに限定されるものでなく、図8に示すように、モータトルク演算部26aで演算したモータトルクTmaも選択信号生成部26cに入力して、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であり、且つモータトルクTmaが所定値(例えば2.0Nm)以上であるときを操舵限界位置検出条件としたり、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であり、且つモータトルクTmaが所定値(例えば2.0Nm)以上を所定時間(例えば10msec)継続したときを操舵限界位置検出条件としたりすることにより、より正確に操舵限界位置到達状態を検出することができる。
この場合には、通常操舵時に、車両が例えばベルジアン路(石畳路)等で制動を行うことにより、タイヤから大きな振動荷重が入力されるときがあり、この振動荷重が大きいと電動モータ12のモータ電流の傾きが大きくなる傾向があるが、タイヤからの振動荷重に対して継続して大きな電流が流れることはないので、この走行状態を誤検出することを確実に防止することができる。
さらに、上記実施形態においては、選択信号生成部26cでモータトルク変化率ΔTmaと比較する閾値ΔTthが固定値である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図9に示すように、車速センサ16で検出した車速Vを選択信号形成部26に入力し、この選択信号形成部26で図10に示す閾値設定処理を実行して、操舵限界を判断する閾値ΔTthを車速Vに応じて変更するようにしてもよい。
すなわち、図10の閾値設定処理では、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS31で、車速センサ16で検出した車速Vを読込み、次いでステップS32に移行して、読込んだ車速Vをもとに図11に示す閾値算出テーブルを参照して閾値ΔTthを算出し、次いでステップS33に移行して、算出した閾値ΔTthを後述する操舵限界位置検出処理で参照可能なRAM等の所定の記憶領域に記憶してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
ここで、図11の閾値算出テーブルは、車速Vが“0”のときに、所定値ΔTth1となり、これより車速Vが増加するに従って閾値ΔTthが増加するように設定されている。
この図10の処理が閾値設定部に対応している。
このように、操舵限界を判断する閾値ΔTthを車速Vの増加に応じて増加させることにより、車速が速くなるに応じて端当て状態まで操舵することはなくなるので、端当て状態の誤検出を確実に防止することができる。
この図10の処理が閾値設定部に対応している。
このように、操舵限界を判断する閾値ΔTthを車速Vの増加に応じて増加させることにより、車速が速くなるに応じて端当て状態まで操舵することはなくなるので、端当て状態の誤検出を確実に防止することができる。
なお、図10の閾値設定処理では、図11に示す閾値算出テーブルを使用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図11の特性線を一次方程式で表し、この方程式に車速Vを代入して閾値ΔTthを算出するようにしてもよい。また、閾値の設定をソフトウェアで行う場合に限らず、関数発生器等のハードウェアを使用して車速Vに応じた閾値ΔTthの設定を行うようにしてもよい。
また、操舵限界位置が生じるのは、ステアリングホイール1を切り増し方向に操舵する場合のみであることから、モータトルクTmaの符号とモータトルク変化率ΔTmaの符号とが一致する切り増し状態であり、且つモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であるときを操舵限界位置検出条件とするようにしてもよく、この場合には、ラックエンドから離れる方向への操舵時にモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上となった場合の誤検出を確実に防止することができる。
さらに、図12に示すように、モータトルクTmaに代えて角速度演算部31で算出されるモータ角速度ωを選択信号生成部26cに供給することにより、モータ角速度ωが所定値以上で且つモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であるときを操舵限界位置検出条件とすることもできる。この場合には、モータ角速度ωとして操舵限界位置到達時のモータ角速度ωは図13に示すように急激に角速度が低下するので、操舵限界位置となる直前のモータ角速度(所定時間前(例えば20msec程度前)のモータ角速度)を使用する。このように、モータ角速度ωを操舵限界位置検出条件に入れることにより、モータ角速度ωが所定値より小さい状態では、操舵限界位置到達時の衝撃荷重も小さく、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値も小さいので、電流指令値を制限して操舵補助トルク制限を行う必要がないが、モータ角速度ωが所定値以上である場合には、操舵限界位置到達時の衝撃荷重が大きくなるので、中間シャフト5に伝達され伝達トルクのピーク値も大きくなることから、補償後操舵補助電流指令値Iref′に対して電流指令値制限部23で操舵補助トルク制限を行って中間シャフト5に伝達されるピークトルクを確実に減少させる。
さらにまた、上記実施形態においては、モータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であるときに、リミッタ23aで制限した制限電流指令値Ilimを選択する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、制限電流指令値Ilimの継続時間を所定時間(例えば20msec程度)に設定し、電流指令値制限状態を所定時間継続した後に電流指令値制限部23の選択スイッチ部23bを補償後操舵補助電流指令値Iref′を選択する状態に復帰させるようにしてもよい。
この場合には、長い時間制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続すると、運転者に違和感を与えることになるおそれがあるので、中間シャフト5に発生する伝達トルクのピークを低減するに十分な短い時間だけ制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続させて運転者に与える違和感を抑制することが好ましい。
このため、モータ角速度ωが大きいときには衝撃荷重も大きいので、制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的長く設定し、逆にモータ角速度ωが小さいときには衝撃荷重が小さいので、制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的短く設定することが好ましい。
このため、モータ角速度ωが大きいときには衝撃荷重も大きいので、制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的長く設定し、逆にモータ角速度ωが小さいときには衝撃荷重が小さいので、制限電流指令値Ilimによる操舵補助トルク制限を継続する時間を比較的短く設定することが好ましい。
また、上記実施形態においては、リミッタ23aで制限する制限電流指令値を例えば補償後操舵補助電流指令値Iref′の約3%に設定する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータ12の特性に合わせて任意の制限値に設定することができる。また、リミッタ23aに代えて1未満の所定値を乗算する乗算器を適用するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においては、モータ制御部25に2相/3相変換部64を設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、2相/3相変換部64を省略し、これに代えてd−q軸電流指令値演算部24のd軸指令電流算出部51及びq軸指令電流算出部53の出力側に2相/3相変換部を設けて3相電流指令値Iu*〜Iw*に変換し、モータ制御部25の減算器62d及び62qを減算器62u〜62wに置換して、これにモータ電流検出部60で検出したモータ電流Iu〜Iw及び2相/3相変換部で変換した3相電流指令値を供給し、PI電流制御部63で各相の電流偏差ΔIu〜ΔIwについてPI制御処理するようにしてもよい。
さらにまた、上記実施形態においては、コントローラ15をハードウェアで構成する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、マイクロコンピュータを適用して操舵補助電流指令値演算部21、指令値補償部22、電流指令値制限部23、d−q軸電流指令値演算部24及びモータ制御部25のインバータを除く機能をソフトウェアで処理することもできる。この場合の処理としては、マイクロコンピュータで図14に示す操舵補助制御処理及び図15に示す操舵限界位置検出処理を実行するようにすればよい。
ここで、操舵補助制御処理は、図14に示すように、所定時間(例えば1msec)毎にタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で、操舵トルクセンサ14、車速センサ16、回転角センサ17、モータ電流検出部60等の各種センサの検出値を読込み、次いでステップS2に移行して、モータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換処理してd軸電流検出値Id及びq軸電流検出値Iqを算出してからステップS3に移行する。
このステップS3では、操舵トルクTをもとに前述した図4に示す操舵補助電流指令値算出マップを参照して操舵補助電流指令値Irefを算出し、次いでステップS4に移行して、モータ回転角θを微分してモータ角速度ωを算出し、次いでステップS5に移行して、モータ角速度ωを微分してモータ角加速度αを算出してからステップS6に移行する。
このステップS6では、収斂性補償部33と同様にモータ角速度ωに車速Vに応じて設定された収斂性制御ゲインKvを乗算して収斂性補償値Icを算出し、次いでステップS7に移行して、慣性補償部34と同様に、モータ角加速度αに基づいて慣性補償値Iiを算出し、次いでステップS8に移行してSAT推定フィードバック部35と同様にモータ角速度ω及びモータ角加速度αをもとに前述した(2)式の演算を行ってセルフアライニングトルクSATを算出してからステップS9に移行する。
このステップS9では、操舵補助電流指令値IrefにステップS6〜S8で算出した収斂性補償値Ic、慣性補償値Ii及びセルフアライニングトルクSATを加算して補償後操舵補助電流指令値Iref′を算出し、次いでステップS10に移行して、後述する図15の操舵限界位置検出処理で設定された端当て検出フラグFが端当て状態を表す“1”にセットされているか否かを判定し、端当て検出フラグFが“1”にセットされているときにはステップS11に移行して、電流指令値制限部23のリミッタ23aと同様の電流制限処理を行って制限電流指令値Ilimを補償後操舵補助電流指令値Iref′として算出してからステップS12に移行し、端当て検出フラグFが“0”にリセットされているときには直接ステップS12に移行する。
このステップS12では、ステップS9又はステップS11で算出した操舵補助トルク指令補償値Iref′に対してd−q軸電流指令値演算部24と同様のd−q軸指令値演算処理を実行してd軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*を算出する。
次いで、ステップS13に移行して、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*からモータ電流検出値Id及びIqを減算して電流偏差ΔId及びΔIqを算出し、次いでステップS14に移行して、電流偏差ΔId及びΔIqについてPI制御処理を行って電圧指令値Vd及びVqを算出し、次いでステップS15に移行して算出した電圧指令値Vd及びVqを2相/3相変換処理して3相電圧指令値Vu〜Vwを算出してからステップS16に移行する。
次いで、ステップS13に移行して、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*からモータ電流検出値Id及びIqを減算して電流偏差ΔId及びΔIqを算出し、次いでステップS14に移行して、電流偏差ΔId及びΔIqについてPI制御処理を行って電圧指令値Vd及びVqを算出し、次いでステップS15に移行して算出した電圧指令値Vd及びVqを2相/3相変換処理して3相電圧指令値Vu〜Vwを算出してからステップS16に移行する。
このステップS16では、3相電圧指令値Vu〜Vwに基づいてデューティ比を演算してからパルス幅変調処理を行ってインバータゲート信号を形成し、次いでステップS17に移行して、形成したインバータゲート信号をインバータ66に出力してから操舵補助制御処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
また、操舵限界位置検出処理は、図15に示すように、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、モータ電流検出部60から入力されるモータ電流Iu〜Iwを読込み、次いでステップS22に移行して、読込んだモータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換処理してq軸電流Iqを算出してからステップS23に移行する。
また、操舵限界位置検出処理は、図15に示すように、所定時間(例えば1msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、モータ電流検出部60から入力されるモータ電流Iu〜Iwを読込み、次いでステップS22に移行して、読込んだモータ電流Iu〜Iwを3相/2相変換処理してq軸電流Iqを算出してからステップS23に移行する。
このステップS23では、算出したq軸電流IqとステップS4で求められたモータ角加速度αから前述した(3)式に基づき、モータトルクTmaを算出する。次いで、ステップS23′に移行して、算出したモータトルクTmaを微分してモータトルク変化率ΔTmaを算出し、次いでステップS24に移行して、算出したモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth以上であるか否かを判定し、ΔTma≧ΔTthであるときには操舵限界位置であると判断してステップS25に移行して、操舵限界位置検出フラグFを"1"にセットしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰し、ΔTma<ΔTthであるときには操舵限界位置ではないと判断してステップS26に移行して、操舵限界位置検出フラグFを"0"にリセットしてからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
この図14及び図15の処理において、図14のステップS3の処理が電流指令値演算部に対応し、ステップS4〜S9及びS12〜S17の処理及びインバータ66がモータ制御部に対応し、図15のステップS21〜S23の処理がモータトルク検出部に対応し、ステップS23′の処理がモータトルク変化率検出部に対応し、ステップS24〜S26の処理及び図14のステップS10、S11の処理が電流指令値制限部に対応している。
マイクロコンピュータで、図14の操舵補助制御処理及び図15の操舵限界位置検出処理を実行することにより、前述した実施形態と同様にラック軸8cがラックストロークエンドに達した端当て時やタイヤが縁石等に当接した時などの操舵限界位置に到達した時に、補償後操舵補助電流指令値Iref′を小さい値に制限することにより、インバータ66から出力されるモータ電流Iu〜Iwを小さい値として電動モータ12で発生する操舵補助トルクを減少させて、中間シャフト5に伝達される伝達トルクのピーク値を低減させることができ、中間シャフト5の耐久性を向上させることができる。
なおさらに、上記実施形態においては、本発明をブラシレスモータに適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブラシ付きモータに適用する場合には、図16に示すように、角速度演算部31でモータ電流検出部60から出力されるモータ電流検出値Im及び端子電圧検出部70から出力されるモータ端子電圧Vmに基づいて下記(4)式の演算を行ってモータ角速度ωを算出すると共に、d−q軸電流指令値演算部24を省略して電流指令値制限部23の出力を直接モータ制御部25に供給し、さらにモータ制御部25を夫々1つの減算器62、PI電流制御部63、パルス幅変調部65及びHブリッジ回路71で構成し、選択信号形成部26でモータ電流Imと回転角加速度αからモータトルクTmaを求め、さらにモータトルクTmaを微分してモータトルク変化率ΔTmaを算出し、算出したモータトルク変化率ΔTmaが閾値ΔTth未満であるか否かに応じて"0"及び"1"の選択信号SLを電流指令値制限部23の選択スイッチ部23b及びPI制御部63へ出力するようにすればよい。
ω=(Vm−Im・Rm)/K0 …………(4)
ここで、Rmはモータ巻線抵抗、K0はモータの起電力定数である。
また、上記各実施形態においては、モータトルク演算部26aを、モータ電流Iqとモータ回転角加速度αとに基づいてモータトルクTmaを検出するように構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設して直接モータトルクTmaを検出するようにしてもよい。
ここで、Rmはモータ巻線抵抗、K0はモータの起電力定数である。
また、上記各実施形態においては、モータトルク演算部26aを、モータ電流Iqとモータ回転角加速度αとに基づいてモータトルクTmaを検出するように構成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、電動モータ12の出力軸、減速ギヤ11の入出力軸等のトルク伝達軸に磁歪式トルクセンサなどのトルクセンサを配設して直接モータトルクTmaを検出するようにしてもよい。
SM…ステアリング機構、1…ステアリングホイール、2…ステアリングシャフト、2a…入力軸、2b…出力軸、3…ステアリングコラム、4,6…ユニバーサルジョイント、5…中間シャフト、8…ステアリングギヤ、8a…ギヤハウジング、8b…ピニオン、8c…ラック軸、8e…緩衝部材、8f…ストッパ部材、10…操舵補助機構、11…減速ギヤ、12…電動モータ、14…操舵トルクセンサ、15…コントロールユニット、16…車速センサ、17…回転角センサ、21…操舵補助電流指令値演算部、22…指令値補償部、23…電流指令値制限部、24…d−q軸電流指令値演算部、25…モータ制御部、26…選択信号形成部、26a…モータトルク演算部、26b…微分回路(モータトルク変化率検出部)、26c…選択信号生成部、31…角速度演算部、32…角加速度演算部、33…収斂性補償部、34…慣性補償部、35…SAT推定フィードバック部、36〜38…加算器、60…モータ電流検出部、62d,62q…減算部、63…PI電流制御部、64…2相/3相変換部、65…パルス幅変調部、66…インバータ
Claims (14)
- ステアリング機構に入力される操舵トルクを検出する操舵トルク検出部と、少なくとも前記操舵トルク検出部で検出した操舵トルクに基づいて電流指令値を演算する電流指令値演算部と、前記ステアリング機構のステアリングシャフトに与える操舵補助トルクを発生する電動モータと、前記電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部とを備えた電動パワーステアリング装置であって、
前記電動モータと前記ステアリングシャフト間に発生しているモータトルクを検出するモータトルク検出部と、該モータトルク検出部で検出したモータトルクの変化率を演算するモータトルク変化率検出部と、該モータトルク変化率検出部で演算したモータトルクの変化率が操舵限界を判断する閾値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を前記ステアリング機構の前記ステアリングシャフト及び転舵輪間のトルク伝達部材に伝達されるトルクを抑制するように制限する電流指令値制限部とを有することを特徴とする電動パワーステアリング装置。 - 前記モータトルク検出部は、前記電動モータの駆動電流を検出する駆動電流検出部と、前記電動モータの回転角加速度を検出する回転角加速度検出部と、前記駆動電流検出部で検出したモータ駆動電流と前記回転角加速度検出部で検出した回転角加速度から前記電動モータと前記ステアリングシャフトとの間に発生しているトルクを演算するモータトルク演算部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記モータトルク検出部は、前記電動モータの出力軸から前記ステアリングシャフトに至る間のトルク伝達軸に配設した磁歪式トルクセンサで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部は、前記モータトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記モータトルク検出部で検出したモータトルクの絶対値が所定値以上であるときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部は、前記モータトルクの変化率が閾値以上で、且つ前記モータトルク検出部で検出したモータトルクの絶対値が所定値以上である状態を所定時間以上継続したときに電流指令値制限条件を満足したものと判断して前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータトルクの変化率の符号とモータトルク演算値の符号とが一致した場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部を備え、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出部で検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電動モータのモータ角速度を検出するモータ角速度検出部を備え、前記電流指令値制限部は、前記電流指令値制限条件を満足したものと判断し、且つ前記モータ角速度検出部で所定時間前に検出したモータ角速度が所定値以上である場合に、前記電流指令値を制限するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部は、前記電流指令値を制限してから所定時間が経過したときに当該電流指令値の制限を解除するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値の前記制限を解除する所定時間はモータ角速度に基づいて設定されることを特徴とする請求項9に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部で、前記電流指令値が制限されたときに、当該電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部の応答性を変更する応答性変更部を備えていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記電流指令値制限部で、前記電流指令値の制限が解除されたときに、当該電流指令値に基づいて前記電動モータをパルス幅変調信号によって駆動制御するモータ制御部の応答性を変更する応答性変更部を備えていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ステアリング機構のトルク伝達部材は、ステアリングシャフトにプレス成形によって製作されたヨークを有するジョイントを介して接続された中間シャフトを有することを特徴とする請求項1乃至12の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
- 前記ステアリング機構は、ステアリングギヤのラックストロークエンドに緩衝材を備えていることを特徴とする請求項1乃至13の何れか1項に記載の電動パワーステアリング装置。
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WO2016104570A1 (ja) * | 2014-12-25 | 2016-06-30 | 日本精工株式会社 | 電動パワーステアリング装置 |
JP2018024336A (ja) * | 2016-08-10 | 2018-02-15 | 株式会社ジェイテクト | 操舵制御装置 |
-
2007
- 2007-02-22 JP JP2007041905A patent/JP2008201338A/ja active Pending
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