JP2008025491A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】ノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができる内燃機関を提供する。
【解決手段】ピストン3が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う内燃機関において、ピストン3の往復運動により容積が変化する燃焼室4と、前記ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の前記燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の前記燃焼室4の容積よりも大きくする容積変更手段26と、前記燃焼室4に供給する空気を加圧可能な加圧手段とを備えるので、ノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができる。
【選択図】図2
【解決手段】ピストン3が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う内燃機関において、ピストン3の往復運動により容積が変化する燃焼室4と、前記ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の前記燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の前記燃焼室4の容積よりも大きくする容積変更手段26と、前記燃焼室4に供給する空気を加圧可能な加圧手段とを備えるので、ノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができる。
【選択図】図2
Description
本発明は、内燃機関に関し、特に、ピストンが2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う内燃機関に関するものである。
乗用車、トラックなどの車両に搭載される内燃機関として、シリンダ内に設けられるピストンが2往復運動する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクル内燃機関が知られている。このような内燃機関の効率を向上させるためには、排気効率を向上したり、圧縮比(圧縮比=吸気行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積)、膨張比(膨張比=膨張行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積)を大きくしたりするなどの方法がよく知られている。しかしながら、圧縮比、膨張比を大きくする場合、実際には圧縮比が大きすぎると圧縮行程上死点における圧縮端での混合気温度が高くなりすぎて、異常燃焼によるノッキングが起こりやすくなる。したがって、圧縮比は、このノッキングの回避のためその上限が制約される。通常、ピストンが2往復して1サイクルする間において、ピストンの上死点、下死点の位置は変わらないので、圧縮比の上限が決定されると、吸気行程下死点、圧縮上死点、膨張行程下死点での燃焼室容積も決定され、膨張比も決定される。
ところで、上記のような圧縮比を可変とする内燃機関として、例えば、特許文献1に記載の内燃機関は、スライド機構を用いることによってシリンダブロックをロアケースに対して軸線方向にスライド可能な構成とし、これにより、燃焼室の容積を可変とし圧縮比を可変制御することで、運転状態において最適な圧縮比を得て燃費性能や出力性能を向上させている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている内燃機関では、燃焼室の容積を変更することで、運転状態に応じた最適な圧縮比に適宜変更することができる。ところが、圧縮比を変更することで、これに伴って1サイクル内における膨張比も結局のところ変わってしまうことから、さらなる運転効率の向上が望まれていた。
なお、上記のような機械的に定まる圧縮比自体を可変とするのではなく、実質的な圧縮比、いわゆる実圧縮比を小さくし、圧縮端での混合気温度を低く抑制することで、ノッキングを回避すると共にこの実圧縮比と比較して高い膨張比を確保する内燃機関がある。このような内燃機関では、吸気弁を閉じるタイミングを吸気行程下死点の前後に一定量ずらし、実際の排気量より少ない空気を吸気することで実圧縮比を小さく抑え、この実圧縮比よりも膨張比を大きくしている。しかしながら、この場合、吸気行程でピストンが下死点に達する前に吸気弁を閉じることで実圧縮比を小さくすると、その後の吸気行程における断熱膨張により燃焼室内の空気(混合気)温度が低下するため、燃焼室壁面とこの空気(混合気)との温度差が大きくなり、吸入空気(混合気)が燃焼室壁面等から受熱しやすくなる。これにより、結果として圧縮端での混合気温度が高くなってしまう。また、吸気行程でピストンが下死点に達した後、圧縮行程に入ってから吸気弁を閉じることで実圧縮比を小さくすると、一度燃焼室内で暖められた空気が吸気管に戻されることになり、燃焼室への吸気前の時点ですでに少し温度が上昇した空気を吸気することになる。これにより、結果として圧縮端での混合気温度が高くなってしまう。したがって、両者とも期待ほどの大きな効果が得られていなかった。
そこで本発明は、ノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができる内燃機関を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による内燃機関は、ピストンの往復運動により容積が変化する燃焼室と、前記ピストンが膨張行程下死点に位置する際の前記燃焼室の容積を吸気行程下死点に位置する際の前記燃焼室の容積よりも大きくする容積変更手段と、前記燃焼室に供給する空気を加圧可能な加圧手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による内燃機関では、前記容積変更手段は、前記ピストンが吸気行程上死点に位置する際の前記燃焼室の容積を圧縮行程上死点に位置する際の前記燃焼室の容積よりも小さくすることを特徴とする。
請求項3に係る発明による内燃機関では、前記燃焼室に供給する空気を冷却可能な冷却手段を備えることを特徴とする。
請求項4に係る発明による内燃機関では、前記容積変更手段は、回転可能な出力軸と、前記出力軸に固定されて外周面に所定形状のカム面を有するカムと、ピストンに設けられてカム面に接触するカムフォロワとを有し、前記カム面により前記カムフォロワを介して前記ピストンを往復運動可能であると共に、前記ピストンの各下死点位置及び各上死点位置をそれぞれ変更可能であることを特徴とする。
請求項5に係る発明による内燃機関では、前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材と、前記カム面と前記転動部材との接触状態を保持する係合部材とを有することを特徴とする。
請求項6に係る発明による内燃機関では、前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材を有し、前記転動部材又は前記カム面の一方に他方を吸引可能な磁石が設けられることを特徴とする。
請求項7に係る発明による内燃機関では、前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材と、前記転動部材を前記カム面に押し付ける方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする。
請求項8に係る発明による内燃機関では、前記カム面は、膨張行程下死点に応じた位置から排気行程上死点に応じた位置までの長さが吸気行程下死点に応じた位置から圧縮行程上死点に応じた位置までの長さよりも長く設定されることを特徴とする。
本発明に係る内燃機関によれば、ピストンが膨張行程下死点に位置する際の燃焼室の容積を吸気行程下死点に位置する際の燃焼室の容積よりも大きくする容積変更手段と、燃焼室に供給する空気を加圧可能な加圧手段とを備えるので、ノッキングを回避できる圧縮比に抑えつつ、膨張比を大きくすることができ、さらに、加圧手段により燃焼室に供給する空気が加圧されるので、吸気行程下死点での燃焼室容積が小さくなっても、燃焼室への空気の充填効率を高めることができることから、ノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができる。
以下に、本発明に係る内燃機関の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施例1に係るエンジンの模式的断面図、図2は、本発明の実施例1に係るエンジンの各行程における燃焼室の容積変化を説明する模式図、図3は、本発明の実施例1に係るエンジンのカムの概略側面図、図4は、本発明の実施例1に係るエンジンのサイクルを説明するための線図、図5は、本発明の実施例1に係るエンジンの実圧縮比を下げた場合のサイクルを説明するための線図である。なお、図4、図5では横軸をピストンのストローク、縦軸を燃焼室内の空気(混合気)圧力としている。
図1に示すように、実施例1に係る内燃機関としてのエンジン1は、乗用車、トラックなどの車両に搭載されるエンジンであり、シリンダボア2内に往復運動可能に設けられるピストン3が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。
このエンジン1は、前述のシリンダボア2内に往復運動可能に設けられるピストン3と、燃焼室4と、この燃焼室4に連通する吸気ポート5及び排気ポート6を備える。さらに、エンジン1は、燃焼室4内に燃料を直接噴射することが可能なインジェクタ7と、燃焼室4の上方に位置して混合気に着火する点火プラグ8を備える。さらに、エンジン1は、シリンダヘッド9、シリンダブロック10及びカムケース11を備える。
シリンダヘッド9は、シリンダブロック10上に締結される。シリンダブロック10は、内部に円筒形状のシリンダボア2が形成される。ピストン3は、このシリンダボア2に上下移動自在に嵌合する。
燃焼室4は、シリンダヘッド9の下面9a、シリンダボア2の壁面2a及びピストン3の一方の端面である頂面3aにより画成される。この燃焼室4の上部、つまり、シリンダヘッド9の下面に上述した吸気ポート5及び排気ポート6が各々2つずつ形成される。この吸気ポート5及び排気ポート6の開口には吸気弁15及び排気弁16が設けられる。この吸気弁15及び排気弁16は、吸気ポート5及び排気ポート6をそれぞれ開閉可能とし、吸気ポート5と燃焼室4、燃焼室4と排気ポート6とをそれぞれ連通することができる。
カムケース11は、シリンダブロック10の下部に締結される。このシリンダブロック10とカムケース11は、内部に回転可能に支持される出力軸12と、カム13を収容する。カム13は、出力軸12に固定され、出力軸12と共に回転可能である。さらに、カム13は、楕円形状の中央部がくびれたような形状をしており、外周面に所定形状のカム面14を有する。また、上述のピストン3は、頂面3aと対向する他方の端面にカムフォロワ17が設けられる。このカムフォロワ17は、カム面14に接触しこのカム面14上を転動可能な転動部材としてのコロ17aを有する。これにより、コロ17aがカム面14に接触しながら転動し、カム13の回転に伴って従動することで、ピストン3のシリンダボア2内での往復運動が可能となる。なお、カム13のカム面14の所定形状については、後述の図3で詳細に説明する。
吸気ポート5は、その吸気方向上流側に吸気通路(吸気管)18が接続される。この吸気通路18上には、吸気方向上流側から順に、エアクリーナ19と、後述する加圧手段としての加圧機20と、後述する冷却手段としてのインタークーラ21と、スロットルバルブ22と、サージタンク23が設置される。エアクリーナ19は、吸気通路18の入口部に配置されて吸入空気中のゴミや塵などを除去するフィルタである。スロットルバルブ22は、燃焼室4に供給される空気量(吸入空気量)を調整する流量調整弁であり、例えば、アクセルペダルの操作により駆動される。サージタンク23は、吸入空気を一時的に溜めて吸気脈動を抑制するタンクである。また、排気ポート6は、その排気方向下流側に排気通路(排気管)24が接続され、この排気通路(排気管)24上には、触媒装置25が配置される。この触媒装置25は、通過する排気ガスを触媒により浄化する機能を有する。
インジェクタ7は、シリンダヘッド9の吸気ポート5側に装着される。また、インジェクタ7は、先端をシリンダボア2の中心線に向けて上下方向に対して所定角度傾斜して設けられる。このインジェクタ7は、ピストン3の頂面3aに向けて燃料噴霧を噴射する。点火プラグ8は、燃焼室4の天井部分の吸気ポート5と排気ポート6の間に装着される。
このエンジン1では、図2に示すように、ピストン3がシリンダボア2内を下降することで、吸気通路18および吸気ポート5を介して燃焼室4内に空気が吸入され(吸気行程)、この空気とインジェクタ7から燃焼室4内へ噴射される燃料とが混合して混合気を形成する。そして、このピストン3が吸気行程下死点を経てシリンダボア2内を上昇することで混合気が圧縮され(圧縮行程)、ピストン3が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ8により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン3を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン3が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート6、排気通路24、触媒装置25等を介して排気ガスとして大気中へ放出される(排気行程)。このピストン3のシリンダボア2内での往復運動は、カムフォロワ17を介してカム13の回転運動に変換され、出力軸12を介して出力として取り出されると共に、このピストン3は、カム13が慣性力によりさらに回転することで、カムフォロワ17を介してこのカム13の回転に伴ってシリンダボア2内を往復する。出力軸12と一体のカム13が1回転することでピストン3が2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室4内で1回の爆発が行われる。
ところで、エンジン1の効率を向上させるために、排気効率を向上したり、圧縮比(圧縮比=吸気行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積)、膨張比(膨張比=膨張行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積)を大きくしたりすることが知られている。しかしながら、圧縮比が大きすぎると圧縮行程上死点における圧縮端での混合気温度が高くなりすぎて、異常燃焼によるノッキングが起こりやすくなる。したがって、この圧縮比は、ノッキング等の回避によりその上限が制約され、通常のエンジンではこの圧縮比の上限が決定されると、膨張比も決定されてしまう。
そこで、本実施例に係るエンジン1は、図2に示すように、ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも大きくすると共に、ピストン3が吸気行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積を圧縮行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも小さくする容積変更手段としての容積変更部26と、図1に示すように、燃焼室4に供給する空気を加圧可能な加圧手段としての加圧機20を備えることで、ノッキングを回避すると共に機関の効率の向上を図っている。ここで、各死点における燃焼室4の容積とは、各死点位置にあるピストン3の頂面3a、シリンダヘッド9の下面9a及びシリンダボア2の壁面2aにより画成される空間の容積である。
容積変更部26は、上述した回転可能な出力軸12と、外周面に所定形状のカム面14を有するカム13と、カムフォロワ17により構成され、カム面14によりカムフォロワ17を介してピストン3を往復運動可能であると共に、ピストン3の各下死点位置及び各上死点位置をそれぞれ変更可能である。すなわち、容積変更部26は、ピストン3が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程からなる1つのサイクル内において、ピストン3の吸気行程下死点位置と膨張行程下死点位置とをピストン3の往復運動の方向に対して異なる位置とし、吸気行程下死点位置を膨張行程下死点位置よりも高い位置(シリンダヘッド9側に近い位置)とすることで、ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも大きくしている。
同様に、容積変更部26は、1つのサイクル内において、ピストン3の吸気行程上死点位置と圧縮行程上死点位置とをピストン3の往復運動の方向に対して異なる位置とし、吸気行程上死点位置を圧縮行程上死点位置よりも高い位置(シリンダヘッド9側に近い位置)とすることで、ピストン3が吸気行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積を圧縮行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも小さくしている。
具体的には、カム13が有するカム面14の所定形状(いわゆる、カムプロフィール)が図3に示すような形状に形成されることで、1つのサイクル内におけるピストン3の各下死点位置及び各上死点位置をそれぞれ変更可能となる。このカム13は、上述したように楕円形状の中央部がくびれたような形状をしており、回転中心12aからカム面14までの長さが該カム面14に沿って徐々に変化する。ピストン3は、上述したように、このカム13が1回転することで2往復し、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うことから、カム13の1回転(360度)の範囲内に各行程に応じた回転角度の範囲及び各下死点位置、各上死点位置に応じた回転角度が設定されている。つまり、カム面14が4つの行程に応じた角度範囲に分割されることで、カム13が図中時計回りに1回転すると、ピストン3は吸気行程上死点、吸気行程、吸気行程下死点、圧縮行程、圧縮行程上死点、膨張行程、膨張行程下死点、排気行程、再び吸気行程上死点を経てシリンダボア2(図1参照)を2往復運動する。なお、ここでは、各行程に応じた回転角度の範囲は、各々ほぼ均等(90度)である。
そして、このエンジン1では、ピストン3の各死点に応じた位置で出力軸12(カム13)の回転中心12aからカム面14までの長さを異ならせることで、1つのサイクル内におけるピストン3の各下死点位置及び各上死点位置が変更可能となる。つまり、吸気行程下死点位置における回転中心12aからカム面14までの長さr1を膨張行程下死点位置における回転中心12aからカム面14までの長さr2よりも長くすることで、図2に示すように、ピストン3の吸気行程下死点位置が膨張行程下死点位置よりも高い位置となる。同様に、吸気行程上死点位置における回転中心12aからカム面14までの長さr3を圧縮行程上死点位置における回転中心12aからカム面14までの長さr4よりも長くすることで、ピストン3の吸気行程上死点位置が圧縮行程上死点位置よりも高い位置となる。
このようにピストン3の各下死点に応じた位置で回転中心12aからカム面14までの長さr1、r2(図3参照)を異ならせて、1つのサイクル内におけるピストン3の吸気行程下死点位置と膨張行程下死点位置とを変更することで、機械的な圧縮比を変えずに膨張比だけを大きくすることができる。すなわち、圧縮比=吸気行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積、膨張比=膨張行程下死点燃焼室容積/圧縮上死点燃焼室容積で定まる圧縮比、膨張比は、ノッキングを回避することができる大きさに圧縮比を固定しつつ、膨張行程下死点燃焼室容積が吸気行程下死点燃焼室容積よりも大きくなることで、膨張比だけを圧縮比から独立して大きくすることができる。
また、ノッキングを回避することができる大きさに圧縮比を固定することで、圧縮上死点燃焼室容積は決まるが、ピストン3の各上死点に応じた位置で回転中心12aからカム面14までの長さr3、r4(図3参照)を異ならせて、1つのサイクル内におけるピストン3の吸気行程上死点位置と圧縮行程上死点位置とを変更することで、吸気行程上死点燃焼室容積が圧縮上死点燃焼室容積よりも小さくなるので、排気行程で排気ガスを十分に排気することができる。
ところで、ここで膨張行程下死点燃焼室容積を吸気行程下死点燃焼室容積よりも大きくする、言い換えれば、吸気行程下死点燃焼室容積を膨張行程下死点燃焼室容積よりも小さくすることで、吸気される空気の量が相対的に少なくなり、結果的に、機関の効率が低下してしまうおそれがある。
そこで、本実施例に係るエンジン1は、図1に示すように、燃焼室4に供給する空気を加圧可能な加圧機20を備える。加圧機20は、ターボチャージャ、スーパーチャージャ等の種々の過給機を用いることができ、ピストン3の移動に伴って燃焼室4内に発生する負圧により空気を燃焼室4に吸入するだけでなく、吸気通路18内の空気を圧縮して圧力を高め(過給圧)、その高圧空気を燃焼室4へ送り込んで、同燃焼室4への空気の充填効率を高める。これにより、吸気行程下死点燃焼室容積が膨張行程下死点燃焼室容積よりも小さくても、吸気される空気の量が相対的に少なくなることを防止し、燃焼室4に多量の空気を吸気することができるようになる。
また、本実施例に係るエンジン1は、上述したように、吸気通路18上の加圧機20とスロットルバルブ22との間に燃焼室4に供給する空気を冷却可能なインタークーラ21を備える。インタークーラ21は、加圧機20により圧縮された空気を冷却する装置である。これにより、加圧機20による圧縮過程で高圧空気の温度が上昇しても、この高圧空気の温度を常温近くまで冷却することができる。
上記のように構成されるエンジン1では、図4に示すように、a→b→cで示す吸気行程において、吸気行程上死点位置aにあるピストン3がシリンダボア2内を下降し、吸気行程下死点位置cに達するまで燃焼室4内に空気が吸入される。このとき吸入される空気は、加圧機20により圧力が上昇され、インタークーラ21により冷却されている。そして、c→dで示す圧縮行程では、このピストン3がシリンダボア2内を圧縮行程上死点位置dまで上昇することで混合気が圧縮され、燃焼室4内の混合気温度も上昇する。ここで、圧縮行程上死点位置dにおける圧縮端での混合気温度は、断熱圧縮される圧縮行程における吸気行程下死点位置cから圧縮行程上死点位置dまでの相対的な圧縮比によって決まり、この相対的な圧縮比が大きくなるほど吸気温度から圧縮端での混合気温度までの温度上昇が大きくなる。しかしながら、このエンジン1では、吸気行程下死点燃焼室容積<膨張行程下死点燃焼室容積とすることで、ピストン3の吸気行程下死点位置cが膨張行程下死点位置fよりも高い位置となり、圧縮行程におけるピストン3のストローク(ピストン3の移動距離)が短くなり、吸気行程下死点位置cから圧縮行程上死点位置dまでの相対的な圧縮比が小さくなることから、圧縮行程での混合気の温度上昇が抑制され、圧縮端での混合気温度が低く抑えられる。また、吸入行程で吸入される空気は、加圧機20により圧力が上昇され、インタークーラ21により冷却されていることから、燃圧縮端での混合気温度がより低く維持される。
そして、d→e→fで示す膨張行程では、ピストン3が圧縮行程上死点位置dに近づくと点火プラグ8により点火され燃焼し、その燃焼圧力によりピストン3を往復運動させる。このとき、上記のように吸気行程下死点燃焼室容積<膨張行程下死点燃焼室容積とすることで、ピストン3の膨張行程下死点位置fが吸気行程下死点位置cよりも低い位置となることから、ノッキングを回避することができる大きさに圧縮比を固定しつつ、膨張比だけが圧縮比から独立して大きくなる。そして、f→g→aで示す排気行程では、吸気行程上死点燃焼室容積<圧縮行程上死点燃焼室容積とすることで、ピストン3の吸気行程上死点位置aを圧縮行程上死点位置dよりも高い位置となることから、排気ガスが十分に排気される。
ここで、上記のように構成されるエンジン1は、吸気弁を閉じるタイミングを吸気行程下死点の前後に一定量ずらし、実際の排気量より少ない空気を吸気することで実圧縮比を小さく抑え、この実圧縮比よりも膨張比を大きくするような内燃機関と比較しても、極めて優れている。すなわち、このような内燃機関では、吸気行程でピストンが下死点に達する前に吸気弁を閉じることで実圧縮比を小さくすると、その後の吸気行程における断熱膨張により燃焼室内の空気(混合気)温度が低下するため、燃焼室壁面とこの空気との温度差が大きくなり、吸入空気(混合気)が燃焼室壁面等から受熱しやすくなる。これにより、結果として圧縮端での混合気温度が高くなってしまう。また、吸気行程でピストンが下死点に達した後、圧縮行程に入ってから吸気弁を閉じることで実圧縮比を小さくすると、一度燃焼室内で暖められた空気が吸気管に戻されることになり、燃焼室への吸気前の時点ですでに温度が上昇した空気を吸気することになる。これにより、結果として圧縮端での混合気温度が高くなってしまう。この点、上記のように構成されるエンジン1では、吸気弁の早閉じによりその後の吸気行程において燃焼室壁面等から受熱することがないし、吸気弁の遅閉じによりすでに温度が上昇した空気を吸気してしまうこともないので、より効率的に圧縮端温度の上昇を防ぐことができる。
本実施例に係るエンジン1を上記のように吸気弁を閉じるタイミングを吸気行程下死点の前後に一定量ずらすことで、筒内に供給される空気量を変化させエンジン1の負荷制御が可能であり、その場合にも吸気弁の早閉じによるその後の吸気行程における燃焼室壁面等からの受熱を低減することは可能である。すなわち、本実施例のエンジン1では、図5に示すように、a→b→cで示す吸気行程において、ピストン3が吸気行程下死点位置cに達する前の位置c1で吸気弁15を閉じて実圧縮比を小さく抑えた場合、ピストン3の吸気行程下死点位置cが膨張行程下死点位置fよりも高い位置であることから、吸気行程における吸気弁15の閉弁後のピストン3のストローク(c1→c)が短くなり、断熱膨張による燃焼室4内の空気(混合気)温度の低下をできる限り小さく押さえることができる。このため、断熱膨張時(c1→c)において空気(混合気)が燃焼室4の壁面等から受熱する熱量を極力小さく抑えることができる。これにより、圧縮端温度を低く抑えることができる。
以上で説明した本発明の実施例1に係るエンジン1によれば、ピストン3の往復運動により容積が変化する燃焼室4と、ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも大きくする容積変更部26と、燃焼室4に供給する空気を加圧可能な加圧機20を備える。
したがって、容積変更部26により吸気行程下死点燃焼室容積<膨張行程下死点燃焼室容積とするので、1つのサイクル内におけるピストン3の吸気行程下死点位置cが膨張行程下死点位置fよりも高い位置となり、これにより圧縮端温度を低く抑えてノッキングを回避することができる大きさに圧縮比を固定しつつ、膨張比だけを圧縮比から独立して大きくすることができ、機関の効率を向上することができる。さらに、加圧機20により燃焼室4に供給される空気が加圧されるので、吸気行程下死点での燃焼室4の容積が小さくなっても、燃焼室4への空気の充填効率を高めることができ、機関の出力を向上し、効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例1に係るエンジン1によれば、容積変更部26は、ピストン3が吸気行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積を圧縮行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも小さくする。したがって、容積変更部26により吸気行程上死点燃焼室容積<圧縮行程上死点燃焼室容積とするので、1つのサイクル内におけるピストン3の吸気行程上死点位置aが圧縮行程上死点位置dよりも高い位置となり、混合気が燃焼した後の排気ガスが十分に排気されることで排気効率が向上し、燃焼室4内の残留ガスが低減され、燃焼安定性の向上、ノッキングの抑制による効率向上、出力向上を可能とすることができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例1に係るエンジン1によれば、燃焼室4に供給する空気を冷却可能なインタークーラ21を備える。したがって、加圧機20による圧縮過程で高圧空気の温度が上昇しても、このインタークーラ21により高圧空気の温度は常温近くまで冷却されるので、空気の圧縮率が良くなり、また、圧縮端温度も低くすることができるので、ノッキングの回避が可能な圧縮比をより大きく設定することができ、機関の効率を向上することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施例1に係るエンジン1によれば、容積変更部26は、回転可能な出力軸12と、前記出力軸12に固定されて外周面に所定形状のカム面14を有するカム13と、ピストン3に設けられてカム面14に接触するカムフォロワ17とを有し、カム面14によりカムフォロワ17を介してピストン3を往復運動可能であると共に、1つのサイクル内におけるピストン3の吸気行程下死点位置と膨張行程下死点位置、吸気行程上死点位置と圧縮行程上死点位置とをそれぞれ変更可能である。したがって、カム13は出力軸12と共に回転し、カムフォロワ17はこのカム面14に接触することで、ピストン3の往復運動がカム13の回転運動に変換されると共に、カム13が慣性力によりさらに回転することで、ピストン3は、このカム面14の形状に応じて、このカム13の回転に伴ってシリンダボア2内を往復運動するので、カム13の回転中心12aからカム面14までの長さr1、r2、r3、r4を変えることで、1つのサイクル内における吸気行程下死点燃焼室容積と膨張行程下死点燃焼室容積、吸気行程上死点燃焼室容積と圧縮行程上死点燃焼室容積とを簡明な構成で自由に変えることができる。
図6は、本発明の実施例2に係るエンジンの模式的断面図である。実施例2に係るエンジンは、実施例1に係るエンジンと略同様の構成であるが、カムフォロワが係合部材を有する点で実施例1に係るエンジンとは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
図6に示すように、この実施例2に係るエンジン201では、カムフォロワ217は、カム面14上を転動可能な転動部材としてのコロ17aを有し、さらに、カム面14とこのコロ17aとの接触状態を保持する係合部材217bを有する。
このエンジン201のカム13は、カム面14に垂直な両側面13a、13bにそれぞれ溝13c、13dが形成される。この溝13c、13dは、カム面14に沿って形成される。係合部材217bは、コロ17aの回転軸217eの両端を基端としてこの溝13c、13d方向に突出するように設けられる。さらに、係合部材217bは、両先端217c、217dがカム13に向かって折れ曲がっている。そして、係合部材217bは、先端217cが溝13c、先端217dが溝13dに係合することで、カム面14とこのコロ17aとの接触状態を保持し、コロ17aがカム面14から離間することを防止する。
以上で説明した本発明の実施例2に係るエンジン201によれば、カムフォロワ217は、カム面14上を転動可能なコロ17aと、カム面14とコロ17aとの接触状態を保持する係合部材217bとを有する。したがって、係合部材217bによりコロ17aがカム面14から離間することが防止され、簡単な構成でピストン3を確実にカム13に追従させることができる。
なお、以上の説明では、係合部材217bの両先端217c、217dは、溝13c、13dに係合するものとして説明したが、カム面14に沿って両側面13a、13bから突出するようにリムを設けることで段差を形成し、係合部材217bの両先端217c、217dは、この段差に係合するようにしてもよい。
図7は、本発明の実施例3に係るエンジンの模式的断面図である。実施例3に係るエンジンは、実施例1に係るエンジンと略同様の構成であるが、カム面に磁石が設けられる点で実施例1に係るエンジンとは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
図7に示すように、この実施例3に係るエンジン301では、カムフォロワ17は、カム面14上を転動可能な転動部材としてのコロ17aを有し、カム面14にこのカム面14の周方向に沿って磁石327が設けられる。ここでは、コロ17aは、金属製のものを適用し、磁石327は、この金属製のコロ17aを吸引する。磁石327がコロ17aを吸引することにより、カム面14とこのコロ17aとの接触状態が保持され、コロ17aがカム面14から離間することが防止される。
以上で説明した本発明の実施例3に係るエンジン301によれば、カムフォロワ17は、カム面14上を転動可能なコロ17aを有し、カム面14にコロ17aを吸引可能な磁石327が設けられる。したがって、磁石327がコロ17aを吸引するので、コロ17aがカム面14から離間することが防止され、少ない部材数でピストン3を確実にカム13に追従させることができる。
なお、以上の説明では、磁石327は、カム面14に設けるものとして説明したが、コロ17a側に設け、カム13側を吸引するようにしてもよいし、両方に磁石327を設けるようにしてもよい。また、以上の説明のように、磁石327をカム面14に設ける場合、この磁石327は、必ずカム面14の全周に設ける必要はなく、例えば、吸気行程に対応した位置だけに設けるようにしてもよく、この場合、無駄に磁石327を設ける必要が無くなる。
図8は、本発明の実施例4に係るエンジンの模式的断面図である。実施例4に係るエンジンは、実施例1に係るエンジンと略同様の構成であるが、カムフォロワが付勢手段を有する点で実施例1に係るエンジンとは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
図8に示すように、この実施例4に係るエンジン401では、カムフォロワ417は、カム面14上を転動可能な転動部材としてのコロ17aを有し、さらに、コロ17aをカム面14に押し付ける方向に付勢する付勢手段としてのスプリング417cを有する。スプリング417cは、ピストン3の底面とシリンダボア2の壁面2aとを連結し、該ピストン3をカム13の方向に付勢することで、コロ17aを前記カム面14に押し付ける方向に付勢する。スプリング417cによりコロ17aをカム面14に押し付ける方向に付勢することにより、カム面14とこのコロ17aとの接触状態が保持され、コロ17aがカム面14から離間することが防止される。
以上で説明した本発明の実施例4に係るエンジン401によれば、カムフォロワ417は、カム面14上を転動可能なコロ17aと、コロ17aをカム面14に押し付ける方向に付勢するスプリング417cとを有する。したがって、スプリング417cがコロ17aをカム面14に押し付ける方向に付勢するので、コロ17aがカム面14から離間することが防止され、ピストン3を確実にカム13に追従させることができる。さらに、カム13に細工を施す必要が無いので、例えば、製造時にカム面14が損傷され、ピストン3の各死点位置が設計時に想定した位置からずれてしまうようなことを防止することができる。
なお、以上の説明では、スプリング417cは、ピストン3とシリンダボア2とを連結するものとして説明したが、これに限らず、コロ17aをカム面14に押し付ける方向に付勢すればどこに設けてもよい。
図9は、本発明の実施例5に係るエンジンを説明する模式図である。実施例5に係るエンジンは、実施例1に係るエンジンと略同様の構成であるが、カムの形状が実施例1に係るエンジンとは異なる。その他、上述した実施例と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
ここで、図2で説明したように実施例1のエンジン1は、ピストン3の吸気行程下死点位置を膨張行程下死点位置よりも高くし、吸気行程上死点位置を圧縮行程上死点位置よりも高くしていることから、少なくとも、排気行程におけるピストン3のストロークが最大となり、圧縮行程におけるピストン3のストロークが最小となる。ところで、上述の実施例1のエンジン1では、図3に示したように、360度あるカム13の回転角度の範囲に対して各行程に応じた回転角度の範囲は、各々ほぼ均等(90度)であるものとした。つまり、出力軸12及びカム13が一定速度で回転するとき、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の各行程に要する時間はほぼ等しい。したがって、等しい長さの移動時間でストロークが最大となる排気行程と、ストロークが最小となる圧縮行程とでは、ピストン3の移動速度が異なることとなり、すなわち、圧縮行程における移動速度が最小となり、排気行程における移動速度が最大となる。
そこで、図9に示す実施例5に係るエンジン501では、カム513のカム面514は、膨張行程下死点に応じた位置から排気行程上死点に応じた位置までの長さL1が吸気行程下死点に応じた位置から圧縮行程上死点に応じた位置までの長さL2よりも長くなるように設定している。言い換えれば、360度あるカム513の回転角度の範囲に対する各行程に応じた回転角度の範囲をそれぞれ変えて、排気行程に応じた回転角度の範囲を大きくし、圧縮行程に応じた回転角度の範囲を小さくしている。これにより、圧縮行程に要する時間が短くなる一方、排気行程に要する時間が長くなるので、排気行程におけるピストン3の移動速度が相対的に遅くなってピストン3の最高速度が抑制され、各行程におけるピストン3の移動速度が平均化される。
以上で説明した本発明の実施例5に係るエンジン501によれば、カム面514は、膨張行程下死点に応じた位置から排気行程上死点に応じた位置までの長さL1が吸気行程下死点に応じた位置から圧縮行程上死点に応じた位置までの長さL2よりも長く設定される。したがって、圧縮行程に要する時間が短くなる一方、排気行程に要する時間が長くなるので、排気行程におけるピストン3の移動速度が相対的に遅くなってピストン3の最高速度が抑制され、各行程におけるピストン3の移動速度を平均化することができ、これにより、耐磨耗性が向上しフリクションが低減され、高回転化が可能となり、機関の効率をさらに向上させることができる。
なお、実施例5に係るエンジン501では、ピストン3のストロークが排気行程についで大きくなる膨張行程に応じた部分のカム面514の長さ、すなわち、圧縮行程上死点に応じた位置から膨張行程下死点に応じた位置までの長さL3も、吸気行程、圧縮行程に応じた部分のカム面514の長さよりも長く設定している。これも、上記で説明したように、ピストン3の移動速度の平均化を図るためである。
また、図9の圧縮行程上死点位置を示す図に点線で示したように、カム面514を圧縮行程上死点に応じた位置に向かって傾斜がなだらかになるように設定することで、時間損失の低減を図ることができる。これは、実際のエンジンにおいては、混合気に点火してから燃焼が終了するまでにはある程度の時間がかかり、ピストン3が下降し始めてから燃焼が終了することから、実際には理論値と比較して効率が低下する。しかしながら、カム面514を圧縮行程上死点に応じた位置に向かって傾斜がなだらかになるように設定することで、圧縮行程から膨張行程にかけて、ピストン3を圧縮行程上死点位置の近傍に長い時間滞在させることができるので、時間損失を低減することができる。
なお、上述した本発明の実施例に係るエンジンは、上述した実施例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、エンジン1、201、301、401、501は、直噴型エンジンとして説明したがポート噴射型のエンジンでもよい。また、以上の説明では、加圧手段としてのターボチャージャ、スーパーチャージャ等の種々の過給機を適用するものとして説明したが、燃焼室4に高圧空気を供給可能な手段であればなんでもよい。また、以上の説明では、冷却手段としてのインタークーラ21を設けるものとして説明したが、空気の吸気温度が所定以下(例えば300k以下)となるのであれば必ずしも設ける必要はない。
以上の説明では、容積変更手段は、外周面に所定形状のカム面14、514を有するカム13、513を含んで構成されるものとして説明したが、シリンダヘッド9やシリンダブロック10を動かすことで1つのサイクル内の各死点位置における燃焼室容積を変更してもよい。また、複数のリンクや偏心軸等を組み合わせることで1つのサイクル内の各死点位置における燃焼室容積を変更するようにしてもよい。また、容積変更部26は、ピストン3が吸気行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積を圧縮行程上死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも小さくするものとして説明したが、単に、ピストン3が膨張行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積を吸気行程下死点に位置する際の燃焼室4の容積よりも大きくするだけでもよい。
また、本実施例に係るエンジン1、201、301、401、501は、上述したような吸気弁を閉じるタイミングを吸気行程下死点の前後に一定量ずらすことで、実圧縮比を小さく抑える内燃機関としてもよい。すなわち、本実施例に係るエンジン1、201、301、401、501は、例えば、図1に示すように、吸気弁15及び排気弁16を最適な開閉タイミングに制御すると共に吸気弁15の早閉じや遅閉じにより実圧縮比を変更可能な吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)101、102と、マイクロコンピュータを中心として構成され、エンジンの各部を制御すると共にエンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構101、102を制御可能な制御手段としての電子制御ユニット(以下「ECU」という)103を備えてもよい。この場合、図5で上述したように、ピストン3の吸気行程下死点位置cが膨張行程下死点位置fよりも高い位置であることから、吸気行程における吸気弁15の閉弁後のピストン3のストローク(c1→c)が短くなり、断熱膨張による燃焼室4内の空気(混合気)温度の低下をできる限り小さく押さえることができる。このため、断熱膨張時(c1→c)において空気(混合気)が燃焼室4の壁面等から受熱する熱量を極力小さく抑えることができ、圧縮端温度を低く抑えることができる。
以上のように、本発明に係る内燃機関は、1つのサイクル内の各死点位置における燃焼室の容積を変えて、膨張比だけを圧縮比から独立して大きくすることでノッキングを回避すると共に機関の効率を向上することができるものであり、通常の内燃機関や運転状態に応じて最適な圧縮比を設定する可変圧縮比機構を備えた内燃機関など種々の内燃機関に用いて好適である。
1、201、301、401、501 エンジン
2 シリンダボア
3 ピストン
4 燃焼室
5 吸気ポート
6 排気ポート
7 インジェクタ
8 点火プラグ
9 シリンダヘッド
10 シリンダブロック
11 カムケース
12 出力軸
13、513 カム
14、514 カム面
15 吸気弁
16 排気弁
17、217、417 カムフォロワ
17a コロ(転動部材)
20 加圧機(加圧手段)
21 インタークーラ(冷却手段)
26 容積変更部(容積変更手段)
217b 係合部材
327 磁石
417c スプリング(付勢手段)
2 シリンダボア
3 ピストン
4 燃焼室
5 吸気ポート
6 排気ポート
7 インジェクタ
8 点火プラグ
9 シリンダヘッド
10 シリンダブロック
11 カムケース
12 出力軸
13、513 カム
14、514 カム面
15 吸気弁
16 排気弁
17、217、417 カムフォロワ
17a コロ(転動部材)
20 加圧機(加圧手段)
21 インタークーラ(冷却手段)
26 容積変更部(容積変更手段)
217b 係合部材
327 磁石
417c スプリング(付勢手段)
Claims (8)
- ピストンの往復運動により容積が変化する燃焼室と、
前記ピストンが膨張行程下死点に位置する際の前記燃焼室の容積を吸気行程下死点に位置する際の前記燃焼室の容積よりも大きくする容積変更手段と、
前記燃焼室に供給する空気を加圧可能な加圧手段とを備えることを特徴とする、
内燃機関。 - 前記容積変更手段は、前記ピストンが吸気行程上死点に位置する際の前記燃焼室の容積を圧縮行程上死点に位置する際の前記燃焼室の容積よりも小さくすることを特徴とする、
請求項1に記載の内燃機関。 - 前記燃焼室に供給する空気を冷却可能な冷却手段を備えることを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関。 - 前記容積変更手段は、回転可能な出力軸と、前記出力軸に固定されて外周面に所定形状のカム面を有するカムと、ピストンに設けられてカム面に接触するカムフォロワとを有し、前記カム面により前記カムフォロワを介して前記ピストンを往復運動可能であると共に、前記ピストンの各下死点位置及び各上死点位置をそれぞれ変更可能であることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関。 - 前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材と、前記カム面と前記転動部材との接触状態を保持する係合部材とを有することを特徴とする、
請求項4に記載の内燃機関。 - 前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材を有し、
前記転動部材又は前記カム面の一方に他方を吸引可能な磁石が設けられることを特徴とする、
請求項4に記載の内燃機関。 - 前記カムフォロワは、前記カム面上を転動可能な転動部材と、前記転動部材を前記カム面に押し付ける方向に付勢する付勢手段とを有することを特徴とする、
請求項4に記載の内燃機関。 - 前記カム面は、膨張行程下死点に応じた位置から排気行程上死点に応じた位置までの長さが吸気行程下死点に応じた位置から圧縮行程上死点に応じた位置までの長さよりも長く設定されることを特徴とする、
請求項4乃至請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関。
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-
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