JP2008024976A - 除膜性に優れた硬質皮膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】金型を再生使用するときに、損傷した皮膜を容易に除去できるような除膜性に優れた硬質皮膜を提供する。
【解決手段】本発明の硬質皮膜は、下記一般式(1)で示される硬質皮膜であって、
(W,Mo)aCrb1-a-b(C1-xx) …(1)
[但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字a,b,xは、夫々(W,Mo),CrおよびNの原子比を示す。]
0.05≦a≦0.4、0.5≦b、0≦x≦1
である。
【選択図】なし

Description

本発明は、鍛造加工用金型、プレス成形用金型、打抜きパンチ等の塑性加工用治工具の鉄系基材表面に保護目的で形成される硬質皮膜に関するものである。
上記のような各種塑性加工用治工具を用いた成形加工においては、生産性向上のためにより高速で且つ高面圧下での成形が行なわれており、しかも環境問題の観点からより少ない潤滑剤を使用して加工される傾向にある。特に、近年の鋼板の高強度化に伴い、鋼板のプレス成形時に使用される金型の損傷が著しいものとなっている。
こうした状況下では、金型の鉄系基材(高速度鋼や冷間、熱間金型鋼等)だけでは、表面の損傷が著しくなるので、窒化等の表面硬化処理を施したり、表面に硬質皮膜を被覆して表面の特性強化を図るのが一般的である。またこうした皮膜としては、所定量のVを含有させた炭化膜、窒化膜若しくは炭窒化膜が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
また特許文献3には、CrN系皮膜に3〜20原子%程度のWを含有させることによって、硫酸や硝酸などの腐食環境下における耐食性の向上を図った皮膜について提案されている。
これまで提案されている硬質皮膜は、損傷を抑制するために、通常の工具等で適用されている膜厚(数μm程度)に比べて、比較的厚い状態(合計膜厚で2〜50μm程度)で使用されているのが一般的である。
一方、上記した金型では、その一部が損傷したときに、電気化学的方法によって、皮膜だけを選択的に溶解・除去し、金型を補修した後に再度コーティングを施すことによって、再生使用することが行なわれている。しかしながら、上記のように比較的厚い皮膜が形成されている場合には、除膜に時間がかかることになって問題となっている。特に、金型に摺動耐摩耗性を付与するために形成されるCrN系膜では、耐食性が良好であることから、除膜が困難であり、金型を再生使用するときの障害となっている。
特開2002−371352号公報 特開2005−46975号公報 特開2003−064469号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、金型を再生使用するときに、損傷した皮膜を容易に除去できるような除膜性に優れた硬質皮膜を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明の硬質皮膜は、下記一般式(1)で示される硬質皮膜であって、
(W,Mo)aCrb1-a-b(C1-xx) …(1)
[但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字a,b,xは、夫々(W、Mo),CrおよびNの原子比を示す。]
0.05≦a≦0.4、
0.5≦b、
0≦x≦1
である点に要旨を有するものである。
上記硬質皮膜においては、0.1≦a≦0.3およびa+b=1.0の要件を満足することが好ましい。また、こうした硬質皮膜は、カソード放電型アークイオンプレーティング法によって成膜されたものであることが好ましい。
本発明の硬質皮膜の一形態として、上記のような硬質皮膜と鉄系基材との間に、下記一般式(2)または(3)で示されるいずれかの中間層AまたはBが形成されたものが挙げられる。
(中間層A)
(W,Mo)M’ …(2)
m+n=1.0、0.1≦m≦1.0
[但し、M’は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字m,nは、夫々(W,Mo)およびM’の原子比を示す。]
(中間層B)
(W,Mo)M”(C1-y) …(3)
p+q=1.0、0.1≦p≦1.0、0≦y≦1.0
[但し、M”は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字p,q,yは、夫々(W,Mo),M”およびNの原子比を示す。]
また上記中間層AまたはBは、スパッタリング法によって成膜されたものであることが好ましい。
本発明の硬質皮膜は、所定の式で示される硬質皮膜構造とすることによって、除膜性に優れたものとなり、こうした硬質皮膜は、鍛造金型、プレス成形用金型、打抜きパンチ等の塑性加工用治工具の基材表面に形成されるものとして極めて有用である。
所定量のCrを含む皮膜は耐食性が良好であり、こうした皮膜では除膜が困難となるのであるが、本発明者らは、こうした硬質皮膜の除膜性を向上させるべく、様々な角度から検討した。その結果、皮膜中に適正な量のWやMoを含有させてやれば、電気化学的手法を用いた除膜において、除皮用溶液中における皮膜の溶解速度が格段に速くなって、除膜性に優れたものとなることを見出し、本発明を完成した。
本発明の硬質皮膜は、下記一般式(1)で示されるものであるが、本発明の硬質皮膜における各元素を選定した理由と、その組成範囲の限定理由について説明する。
(W,Mo)aCrb1-a-b(C1-xx) …(1)
[但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字a,b,xは、夫々(W、Mo),CrおよびNの原子比を示す。]
0.05≦a≦0.4、
0.5≦b、
0≦x≦1
本発明の硬質皮膜は、WやMo(Wおよび/またはMo)を必須成分として含むものであるが、これらの元素は硬質皮膜の除膜性を向上させるための必須元素である。こうした効果を発揮させるためには、硬質皮膜中の金属元素(W,Mo,CrおよびM)に対する原子割合で、0.05以上(0.05≦a)とする必要がある。しかしながら、WやMoを過剰に含有させた合金では、皮膜が脆くなって厚膜での摺動膜とするには適さないことから、0.4を上限とする(即ち、a≦0.4)。WやMoの含有量の好ましい下限は原子比で0.1(即ち、0.1≦a)であり、好ましい上限は0.3(即ち、a≦0.3)である。
尚、WとMoの比率については、除膜特性に与える両者の影響はほぼ同じであることから、特に限定されず、任意の比率で併用しても良い。但し、複数の元素を添加することは、成膜用ターゲット製造上からも煩雑になるという観点からすれば、好ましくはWまたはMoを単独添加とするのが良い。
WやMoを硬質皮膜に含有することによって、硬質皮膜の除膜性が向上する理由についてはその全てを解明し得た訳ではないが、おそらく次のような現象によるものと考えられる。即ち、WやMoを含む化合物は、アルカリ中で溶解してタングステン酸塩、モリブデン酸塩等を形成し、これがアルカリ中にて溶解し易いことから、WやMoを含有させることによって、除膜に通常使用されるアルカリ溶液中にて、皮膜の溶解速度が速くなるものと考えられる。
本発明の硬質皮膜は、Crを必須成分として含むものであるが、こうしたCrを含有する皮膜の除膜性が低下するのは、Crの含有量が原子比で0.5以上(即ち、0.5≦b)のときであるので、その下限を原子比で0.5とした。即ち、Crを原子比で0.5以上含んでいる場合であっても、WやMoを含有させることによって除膜性に優れた硬質皮膜となる。Cr含有量の好ましい範囲は、原子比で0.6〜0.9の範囲(0.6≦b≦0.9)である。
金属元素Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素であるが、この金属元素Mは、皮膜を高硬度化し、摺動膜として使用した場合、耐摩耗性を向上させる作用を発揮する。これらの元素については、WやMoが上記の割合で含有されていれば、Mの種類や組合せについては問わない。また、上記耐摩耗性がそれほど要求されない、或は後述するように下地膜として使用する場合には、金属元素Mは必ずしも含有させる必要はない(即ち、a+b=1.0)。
本発明の硬質皮膜は、窒化物、炭化物、炭窒化物のいずれの形態をも含むものである[前記一般式(1)で0≦x≦1.0]。こうした硬質皮膜では、Cの含有量が増加するにつれて(即ち、xが0に近くなるにつれて)、皮膜の耐食性が劣化する傾向にあり、除膜速度は向上するが、皮膜の耐酸化性が低下する傾向を示す。従って、Cの含有割合は、皮膜の使用目的に応じて、調整することが好ましく、例えば除膜性を主に付与したい場合には、窒化物もしくは炭窒化物の形態とし(例えば、x≦0.7)、耐酸化性を主に付与したい場合には、炭化物、炭窒化物の形態(例えば、x>0.7)とすることになる。
本発明の硬質皮膜は、単体にて摺動部等に使用される硬質皮膜として適用できるが、こうした硬質皮膜の上に更に、別の皮膜を積層して使用することもできる。積層する皮膜としては、TiAlN、TiCrAlN、CrAlN、VAlN等の硬質皮膜が挙げられる。
本発明の硬質皮膜の厚さについては、特に限定されるものではないが、皮膜損傷を抑制するという観点からすれば、5μm以上であることが好ましいが、20μm以上になると、除膜に時間がかかり過ぎることになる。換言すれば、5μm以上の比較的厚い状態で皮膜を形成しても、本発明の硬質皮膜では良好な除膜性が実現できることになる。
本発明の硬質皮膜を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、固体ターゲットを用いたPVD法が推奨され、特にカソード放電型アークイオンプレーティング法(AIP法)を適用することが好ましい。即ち、上記のような5μm以上の厚膜を形成する場合には、成膜速度の速いカソード放電型アークイオンプレーティング法が有利だからである。
本発明者らが、硬質皮膜の使用形態について検討したところ、次のような知見も得られている。即ち、本発明の硬質皮膜をカソード放電型アークイオンプレーティング法で形成した場合に、この硬質皮膜と鉄系基材との間に、下記一般式(2)または(3)で示される皮膜を形成すれば、硬質皮膜の除膜性が更に向上し得ることが判明したのである。
(中間層A)
(W,Mo)M’ …(2)
m+n=1.0、0.5≦m≦1.0
[但し、M’は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字m,nは、夫々(W、Mo)およびM’の原子比を示す。]
(中間層B)
(W,Mo)M”(C1-y) …(3)
p+q=1.0、0.5≦p≦1.0、0≦y≦1.0
[但し、M”は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字はp,q,yは、夫々(W、Mo),M”およびNの原子比を示す。]
上記一般式(2)で示される皮膜は、皮膜を構成する元素が上記金属元素M’からなる金属膜であり、上記一般式(3)式で示される皮膜は、上記金属元素M”を含む炭・窒化膜(炭化膜、窒化膜若しくは炭窒化膜)である。
前記一般式(1)で示される硬質皮膜を、AIP法によって形成すれば、当該皮膜は一般にパーティクルを多く含むので、ポーラスなものとなり、これに起因する欠陥を通して溶液が基材まで侵入しやすいものとなる。こうした特性を生かして、基材と硬質皮膜の界面にWおよび/またはMoを多く含む金属若しくは炭・窒化膜を形成することによって、界面に到達した溶液によって中間層が早期に溶解し、その上の硬質皮膜の脱落・除膜を容易にすることができる。こうした効果を発揮させるためには、金属膜[前記一般式(2)で示される中間層A]或は炭・窒化膜[前記一般式(3)で示される中間層B]におけるWおよび/またはMoの金属元素に対する割合は、原子比で0.5以上(即ち、0.5≦m、または0.5≦p)とすることが好ましく、より好ましくは0.7以上(即ち、0.7≦m、または0.7≦p)である。これらの中間層A,Bを構成する金属元素M’、M”は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素であり、鉄基材中にこれらの元素が含まれる場合に、基材との親和性を高め、使用時における密着性を向上させる作用を発揮させるものであるが、除膜性だけを考慮すれば、これらの元素は必ずしも含有させる必要はない(即ち、m=1.0またはp=1.0のとき)。
上記中間層A,Bの厚みについては、数nm以上であれば、中間層の溶解によって、上層の硬質皮膜の脱落が加速されるが、厚過ぎる場合には、中間層の溶解に時間がかかるので、100nm以下であることが好ましい。このようにWやMoを多く含む金属ターゲットは、高融点なものとなるので、AIP法による成膜は困難となり、スパッタリング法の成膜が必須となる。
図1は、本発明の硬質皮膜を製造するための成膜装置の構成例を示す概略説明図であり、この装置はAIP法とスパッタリング法を同時に行なえるように構成されたものである。図1に示した装置では、真空チャンバー1内に回転盤2が配置されており、この回転盤2に4個の回転テーブル3が対称に取り付けられる。各回転テーブル3には、被処理体(基材)5が取り付けられている。回転盤2の周囲には、複数(図1では2つ)のアーク蒸発源6a,6b(カソード側)、複数(図1では2つ)のスパッタ蒸発源6c,6d(カソード側)およびヒータ7a,7b,7c,7dが配置されている。各アーク蒸発源6a,6bおよびスパッタ蒸発源6c,6dには、夫々を蒸発させるためのアーク電源8a,8bおよびスパッタ電源8c,8dが配置されている。
また図中11はフィラメント型イオン源、12はフィラメント加熱用交流電源、13は放電用直流電源であり、フィラメント加熱用交流電源12からの電流によりフィラメント(W製)を加熱し、放出される熱電子を放電用直流電源13によって真空チャンバーに誘導し、フィラメント−チャンバー間にプラズマ(Ar)を発生し、Arイオンを発生する。このArイオンを用いて、被処理体(基材)のクリーニングを実施する。真空チャンバー1内は、真空ポンプPによって、その内部が真空にされると共に、各種成膜用ガスがマスフローコントローラー9a,9b,9c,9dから導入されるように構成される。
そして、各アーク蒸発源6a,6bおよびスパッタ蒸発源6c,6dに、各種組成のターゲットを用い、これらを成膜用ガス(C源含有ガス、およびN源含有ガス、またはこれらを不活性ガスで希釈したもの等)中で蒸発させながら、回転盤2および回転テーブル3を回転させれば、被処理体5の表面に硬質皮膜を形成することができる。尚、図中10は、基材5に負の電圧(バイアス電圧)を印加するために備えられたバイアス電源である。
また、硬質皮膜を積層型にするには、(1)異なる複数のアーク蒸発源6a,6bを用いることによって実現できるが、(2)被処理体5に印加する負の電圧(バイアス電圧)を周期的に変化させたり、(3)雰囲気ガスを変化させることによっても実現できる。また、基材と硬質皮膜間に中間層を形成するには、先ず異なる複数のスパッタ蒸発源6c,6dを用いて中間層を形成したあと、上記のようにして硬質皮膜を形成することによって実現できる。
本発明の硬質皮膜を形成する基材としては、前述した冷間工具鋼、熱間工具鋼、高速度工具鋼(例えば、SKH51やSKD11、SKD61等)等が代表的な鉄系基材として挙げられるが、超硬合金等にも適用できるものである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
[実施例1]
前記図1に示した成膜装置のアーク蒸発源6a,6bに、(M,WおよびCr)を各種割合で含有するターゲットを配置し、回転テーブル3上に被処理体5として冷間ダイス鋼(SKD11:HRC硬度60、φ50mm×5mm厚み)、および超硬合金製チップ(皮膜組成分析用)を使用した。これらの基材を、回転テーブル3上に配置し、真空チャンバー1内を1×10-3Pa以下の真空まで排気しつつ、ヒータ7a,7b,7c,7dで被処理体5の温度を400℃まで加熱した。1時間加熱後に、図1に示したフィラメント型イオン源11を使用し、Ar圧力:0.6Pa、放電電流:5Aとして、基材に500Vの電圧を印加して、5分間Arクリーニングを実施した。
その後、チャンバー1内の圧力(全圧力)を4.0Paで、N2または(N2+CH4)雰囲気とし、アーク放電を開始した。アーク放電電流は150Aとし、約60分で10μmの各種硬質皮膜を形成した。尚、成膜中に、アース電位に対して被処理体5がマイナス電位となるように30〜50Vのバイアス電圧を基板に印加した。
また、上記のような硬質皮膜を形成するに先立って、(M’、M”およびW)を各種割合で含有するターゲットをスパッタ蒸発源6c,6dとして配置し、基材上に中間層を形成したものも作製した。中間層を形成するに際して、Arクリーニング後、チャンバー1内の圧力(全圧力)を0.6Paで、Ar雰囲気(金属層)、Ar−30vol%N2雰囲気(窒化物層)或はAr−30vol%N2−CH4雰囲気(炭窒化物層)としてスパッタリングを開始し、各種中間層を形成した後、硬質皮膜を形成した。
得られた各種硬質皮膜について、膜中の金属成分組成をエネルギー分散形X線分析装置(EDX)によって測定すると共に、下記の条件によって、除膜速度を測定した。また、Wを添加させたものの一部(試料No.2〜17)については、ビッカース硬度(荷重:0.25N、保持時間:15秒)を測定した。
[除膜速度]
上記実施例で得られたサンプルを、10mol%の水酸化ナトリウムを含む水溶液(温度:50℃)に浸漬し、皮膜が全面除去される時間tから除膜速度(皮膜全厚さ/時間t)を算出した。
これらの結果を、皮膜の組成と共に、下記表1、2(表1は硬質皮膜だけのもの、表2は中間層上に硬質皮膜を形成したもの)に示す。
Figure 2008024976
Figure 2008024976
表1の試料No.3〜22、および表2の試料No.23〜44のものは、本発明で規定する要件を満足する硬質皮膜であり、これらの硬質皮膜は、従来の硬質皮膜(No.1)や本発明で規定する要件を外れる硬質皮膜(No.2)に比べ、除膜速度が速いことが分かる。
[実施例2]
前記図1に示した装置のアーク蒸発源6a,6bに、(M,MoおよびCr)を各種割合で含有するターゲットを配置する以外は、実施例1と同様にして各種硬質皮膜を形成した。また、実施例1と同様にして、各種中間層を形成した硬質皮膜についても形成した。
得られた各種硬質皮膜について、膜中の金属成分組成をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)によって測定すると共に、実施例1同じ条件にて除膜速度を測定した。
これらの結果を、皮膜の組成と共に、下記表3、4(表3は硬質皮膜だけのもの、表4は中間層上に硬質皮膜を形成したもの)に示す。
Figure 2008024976
Figure 2008024976
表3の試料No.46〜59、および表4の試料No.60〜79のものは、本発明で規定する要件を満足する硬質皮膜であり、これらの硬質皮膜は、本発明で規定する要件を外れる硬質皮膜(No.45)に比べ、除膜速度が速いことが分かる。
[実施例3]
前記図1に示した装置のアーク蒸発源6a,6bに、(M,W,MoおよびCr)を各種割合で含有するターゲットを配置する以外は、実施例1と同様にして各種硬質皮膜を形成した。また、実施例1と同様にして、各種中間層を形成した硬質皮膜についても形成した。
得られた各種硬質皮膜について、膜中の金属成分組成をエネルギー分散形X線分析装置(EDX)によって測定すると共に、実施例1同じ条件にて除膜速度を測定した。
これらの結果を、皮膜の組成と共に、下記表5、6(表5は硬質皮膜だけのもの、表6
は中間層上に硬質皮膜を形成したもの)に示す。
Figure 2008024976
Figure 2008024976
表5の試料No.81〜93、および表6の試料No.94〜109のものは、本発明で規定する要件を満足する硬質皮膜であり、これらの硬質皮膜は、本発明で規定する要件を外れる硬質皮膜(No.80)に比べ、除膜速度が速いことが分かる。
本発明の硬質皮膜を製造するための成膜装置の構成例を示す概略説明図である。
符号の説明
1 真空チャンバー
2 回転盤
3 回転テーブル
5 被処理体(基材)
6a,6b アーク蒸発源
6c,6d スパッタ蒸発源
7a,7b,7c,7d ヒータ
8a,8b アーク電源
8c,8d スパッタ電源
9a,9b,9c,9d マスフローコントローラー
10 バイアス電源
11 フィラメント型イオン源
12 フィラメント加熱用交流電源
13 放電用直流電源

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で示される硬質皮膜であって、
    (W,Mo)aCrb1-a-b(C1-xx) …(1)
    [但し、Mは、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字a,b,xは、夫々(W、Mo),CrおよびNの原子比を示す。]
    0.05≦a≦0.4、
    0.5≦b、
    0≦x≦1
    であることを特徴とする除膜性に優れた硬質皮膜。
  2. 0.1≦a≦0.3および、
    a+b=1.0
    である請求項1に記載の硬質皮膜。
  3. カソード放電型アークイオンプレーティング法によって成膜されたものである請求項1または2に記載の硬質皮膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の硬質皮膜と鉄系基材との間に、下記一般式(2)または(3)で示されるいずれかの中間層AまたはBが形成されたものであることを特徴とする除膜性に優れた硬質皮膜。
    (中間層A)
    (W,Mo)M’ …(2)
    m+n=1.0、0.5≦m≦1.0
    [但し、M’は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字m,nは、夫々(W,Mo)およびM’の原子比を示す。]
    (中間層B)
    (W,Mo)M”(C1-y) …(3)
    p+q=1.0、0.5≦p≦1.0、0≦y≦1.0
    [但し、M”は、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Al,Siから選択される少なくとも1種の元素:添字p,q,yは、夫々(W,Mo),M”およびNの原子比を示す。]
  5. 前記中間層AまたはBは、スパッタリング法によって成膜されたものである請求項4に記載の硬質皮膜。
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