JP2017001147A - 被覆切削工具 - Google Patents

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秀峰 小関
Hidemine Koseki
秀峰 小関
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Abstract

【課題】 耐久性に優れる被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 基材と、前記基材の上に設けられた中間皮膜と、前記中間皮膜の上に設けられた硬質皮膜とを備える被覆切削工具であって、前記中間皮膜は、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物からなり、膜厚が1nm以上10nm以下であり、前記硬質皮膜は、結晶構造が面心立方格子構造の窒化物または炭窒化物であって、少なくともアルミニウム(Al)とチタン(Ti)とイットリウム(Y)を含有し、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、アルミニウム(Al)の含有比率(原子%)が60%以上75%以下、チタン(Ti)の含有比率(原子%)が20%以上35%以下、イットリウム(Y)の含有比率(原子%)が1%以上5%以下である被覆切削工具。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼やNi基耐熱合金等の切削加工に適用される被覆切削工具に関する。
従来、切削工具の耐久性を向上させることを目的に、工具表面に硬質皮膜を被覆する表面処理が実施されている。例えば、特許文献1にあるAlとTiの複合窒化物皮膜(以下、AlTiNと記載する。)は耐摩耗性と耐熱性が優れるため広く適用されている。また、AlTiNの皮膜特性をより向上させるため、AlTiNをベースに周期律表の4a族、5a族、6a族の金属元素、SiおよびBからなる群より選択される1種または2種以上の元素を含有した硬質皮膜を被覆した被覆切削工具も広く適用されている。更には、特許文献2に開示されているように、硬質皮膜の耐酸化性を向上させるために、AlTiNをベースに希土類元素であるYを含有した硬質皮膜を被覆した被覆切削工具も提案されている。
特開平8−209333号公報 特開平8−199338号公報
Ni基超耐熱合金は鋼等に比べて熱伝導率が低く高温強度が高いため、切削加工時の温度や抵抗が高くなり易い。本発明者の検討によると、Ni基超耐熱合金の切削加工では、AlTiNをベースに金属(半金属を含む)元素を添加した硬質皮膜を設けた被覆切削工具であっても満足する耐久性が得られ難い場合があることを確認した。
本発明は、上記のような事情に鑑みて行われたものである。本発明は、耐久性に優れた被覆切削工具を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、基材と、前記基材の上に設けられた中間皮膜と、前記中間皮膜の上に設けられた硬質皮膜とを備える被覆切削工具であって、前記中間皮膜は、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物からなり、かつ膜厚が1nm以上10nm以下であり、前記硬質皮膜は、結晶構造が面心立方格子構造の窒化物または炭窒化物であって、少なくともアルミニウム(Al)とチタン(Ti)とイットリウム(Y)とを含有し、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、アルミニウム(Al)の含有比率(原子%)が60%以上75%以下、チタン(Ti)の含有比率(原子%)が20%以上35%以下、イットリウム(Y)の含有比率(原子%)が1%以上5%以下である被覆切削工具である。
本発明によれば、優れた耐久性を発揮する被覆切削工具を提供することができる。特に、Ni基超耐熱合金の切削加工に適用することで優れた耐久性を発揮できる。
本発明例に係る硬質皮膜の走査型電子顕微鏡による断面観察写真(15,000倍)の一例である。
本発明者は被覆切削工具の硬質皮膜の損傷状態について鋭意研究し、Ni基超耐熱合金の切削加工の場合、鋼の切削加工の場合に比べて切削負荷が大きくなり、硬質皮膜が塑性変形を起して早期に工具寿命に到達することを知見した。そして、特定の中間皮膜を介して、Yを含有したAlリッチのAlTiの窒化物または炭窒化物の硬質皮膜を適用することで、硬質皮膜の塑性変形が抑制され易くなり、鋼やNi基超耐熱合金の切削加工において優れた耐久性を発揮できる被覆切削工具が得られることを確認した。以下、本発明の詳細について説明する。
まず、本発明の硬質皮膜について説明する。
本発明の硬質皮膜は、AlとTiを含有し、更にYを含有した窒化物または炭窒化物である。AlとTiを含有した窒化物または炭窒化物は、耐熱性と耐摩耗性に優れるとともに基材との密着性にも優れており、被覆切削工具に優れた耐久性を付与することができる。特に、Ni基超耐熱合金の切削加工に用いる場合、耐熱性がより優れる窒化物を適用することが好ましい。Alは硬質皮膜に耐熱性を付与する重要な元素であり、半金属を含む金属元素の合計の含有比率(原子%)で、Alの含有比率(原子%)を最も大きくすることで、硬質皮膜の耐熱性が向上して被覆切削工具の耐久性が向上する。また、硬質皮膜のAlの含有量が増加すると、皮膜組織が微細化するとともに切削負荷が低下する傾向にあり、Ni基超耐熱合金の切削加工において硬質皮膜の塑性変形が抑制され易くなることを知見した。そのため、本発明に係る硬質皮膜は、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、Alの含有比率(原子%)を60%以上とする。更にはAlの含有比率(原子%)を65%以上とすることが好ましい。但し、Alの含有量が多くなり過ぎると、脆弱なZnS型の六方最密充墳(hcp;以下、単に「hcp」と省略することがある)構造のAlNが増加して被覆切削工具の耐久性が低下する。そのため、Alの含有比率(原子%)を75%以下とする。更には70%以下とすることが好ましい。
Tiは硬質皮膜に高い耐摩耗性を付与する元素である。Tiの含有量が少なくなると、硬質皮膜の硬度が低下して耐摩耗性が低下するとともに、脆弱なhcp構造のAlNが増加して被覆切削工具の耐久性が低下する。硬質皮膜により高い耐摩耗性を付与して、硬質皮膜の結晶構造を面心立方格子(fcc;以下、単に「fcc」と省略することがある)構造とするには、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、Tiの含有比率(原子%)を20%以上とする。更には、Tiの含有比率(原子%)を25%以上とすることがより好ましい。一方、Tiの含有量が多くなり過ぎると、相対的にAlの含有比率が低下するため被覆切削工具の耐久性が低下する。そのため、Tiの含有比率(原子%)を35%以下とする。より優れた耐久性を付与するには、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、AlとTiの合計の含有比率(原子%)を90%以上とすることが好ましい。
AlリッチのAlTiの窒化物または炭窒化物に、更にYを含有させた硬質皮膜とすることで、硬質皮膜の耐酸化性が向上するとともに、高温下での安定性が向上する。このため、例えば、切削負荷が大きいNi基超耐熱合金の切削加工の場合、硬質皮膜の塑性変形が抑制され易くなり、優れた耐久性の被覆切削工具を得ることができる。Yの添加効果を得るには、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、Yの含有比率(原子%)を1%以上とする。更には2%以上とすることが好ましい。但し、AlリッチのAlTiの窒化物または炭窒化物は、Yの含有量が多くなると硬質皮膜の硬さが低下するとともに、hcp構造のAlNが増加して被覆切削工具の耐久性が低下し易くなる。そのため、Alリッチの本発明に係る硬質皮膜は、皮膜硬度を高めて皮膜中のhcp構造のAlNを低減するために、Yの含有量を5%以下とする。
本発明に係る硬質皮膜は、AlとTiとYとの含有量を考慮して、結晶構造が面心立方格子構造となる範囲で、半金属を含む他の金属元素を含有することができる。この場合、周期律表の4a族、5a族、6a族の元素およびSi、Bから選択される1種または2種以上の元素を含有することが好ましい。これらの元素は、硬質皮膜に耐摩耗性や耐熱性を付与するものであり、適量を含有するのであれば被覆切削工具の耐久性は著しく低下し難い傾向にある。但し、半金属を含む他の金属元素を含有する場合でも、被覆切削工具が優れた耐久性を発揮するためには、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、その合計の含有比率(原子%)が5%以下であることが好ましい。
製造コストの点では、本発明の硬質皮膜は、Al、Ti、Yのみからなる窒化物または炭窒化物であることがより好ましい。
本発明に係る硬質皮膜はfcc構造であり、例えば、市販のX線回折装置(株式会社リガク製 RINT2500V−PSRC/MDG)を用いて測定した場合に、hcp構造のAlNに起因するピーク強度が確認されず、fcc構造に起因するピーク強度のみが確認される。但し、皮膜の被験面積が小さい場合や多層とした場合には、X線回折による結晶構造の同定が困難な場合がある。このような場合、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた制限視野回折パターンを評価することで、結晶構造を評価することができる。
X線回折ではhcp構造のAlNに起因するピーク強度が確認されなくても、透過型電子顕微鏡(TEM)による制限視野回折パターンでは、hcp構造のAlNや非晶質相が確認される場合がある。この場合、本発明に係る硬質皮膜は、透過型電子顕微鏡(TEM)による制限視野回折パターンの輝度から求められる強度プロファイルにおいて、hcp構造のAlN(010)面に起因するピーク強度をIhとし、fcc構造のAlN(111)面、TiN(111)面、AlN(200)面、TiN(200)面、AlN(220)面およびTiN(220)面に起因するピーク強度と、hcp構造のAlN(010)面、AlN(011)面、およびAlN(110)面に起因するピーク強度との合計をIsとした場合、Ih×100/Is≦20の関係を満たすことが好ましい。更には、Ih×100/Is≦15の関係を満たすことが好ましい。この関係をみたすことで、硬質皮膜のミクロ組織に存在するhcp構造のAlNが低減して、耐久性がより優れる被覆切削工具を得ることができる。
硬質皮膜の粒子構成において、硬質皮膜を形成する柱状粒子が粗大になると硬質皮膜の塑性変形量が大きくなり、大きな皮膜損傷が発生し易くなる。従って、硬質皮膜の塑性変形を抑制するには、硬質皮膜を形成する柱状粒子が微細であることが好ましい。具体的には、本発明に係る硬質皮膜は、透過型電子顕微鏡による断面観察において、基材と平行方向の柱状粒子の平均幅が60nm以下であることが好ましい。一方、硬質皮膜の柱状粒子が微細になり過ぎるとアモルファス状になり、硬質皮膜の耐久性が著しく低下する。そのため、基材と平行方向の柱状粒子の平均幅が10nm以上であることが好ましい。
硬質皮膜が薄くなり過ぎると、優れた耐久性が十分に発揮されない場合がある。そのため、硬質皮膜は0.5μm以上であることが好ましい。また、硬質皮膜が厚くなり過ぎると、皮膜剥離が発生する場合がある。更には、Ni基超耐熱合金を切削加工する場合、硬質皮膜の膜厚が厚くなると刃先のシャープさが低減し切削抵抗がより増大するため、工具寿命が低下し易くなる。そのため、硬質皮膜は5μm以下であることが好ましい。
続いて中間皮膜について説明する。中間皮膜は基材の直上に設けられることが好ましい。そして、中間皮膜はナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)を含有する炭化物であれば基材である超硬合金との親和性が強くなり密着性が優れると考えられる。また、中間皮膜はチタン(Ti)を含有することで、中間皮膜の直上に設けられる硬質皮膜がfcc構造となり易くなり、硬質皮膜にミクロレベルで含まれるhcp構造のAlNが低減すると考えられる。中間皮膜は、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、Tiの含有比率(原子%)が10%以上30%以下であることが好ましい。尚、硬質皮膜は中間皮膜の直上に設けることが好ましい。
また、中間皮膜は、薄くなり過ぎても厚くなり過ぎても、基材との密着性を向上させるのに好ましくない。よって、中間皮膜の膜厚は、1nm以上10nm以下の範囲とする。中間皮膜の膜厚は、2nm以上であることが好ましく、更には3nm以上が好ましい。また、中間皮膜の膜厚は、7nm以下であることが好ましく、更には6nm以下が好ましい。
本発明に係る硬質皮膜は、ターゲット中央付近の垂直方向成分の平均磁束密度が18mT以上のカソードを用いて被覆することが好ましい。ターゲット中心付近の垂直方向成分の平均磁束密度が高いカソードを用いて硬質皮膜を被覆することで、硬質皮膜のミクロ組織に存在するhcp構造のAlN量が低下して被覆切削工具の耐久性が向上する傾向にある。但し、硬質皮膜の被覆時に基材に印加する負のバイアス電圧の絶対値が小さいと、硬質皮膜に存在するhcp構造のAlN量が増加する傾向にある。また、基材に印加する負のバイアス電圧の絶対値が大きくなり過ぎると、硬質皮膜が自己破壊を起し易くなる。そのため、基材に印加する負のバイアス電圧を−200V〜−70Vとして硬質皮膜を被覆すること好ましい。より好ましくは−150V〜−100Vである。
本発明の中間皮膜は、WおよびTi以外に硬質皮膜の成分および基材成分や酸素等の不可避的不純物を含有しても良い。本発明の中間皮膜には、基材側のCoや硬質皮膜側のAl、Y、Nが拡散して含まれ得るが、中間皮膜がナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物であることで本発明の効果を発揮することができる。中間皮膜は、工具刃先を透過型電子顕微鏡観察による断面観察、組成分析、ナノビーム回折パターンより確認することができる。
本発明では、Yを含有するAlTiの窒化物または炭窒化物からなる硬質皮膜の上に、更に別の層を被覆してもよい。この場合、Yを含有するAlTiの窒化物または炭窒化物からなる硬質皮膜の上には、保護皮膜として、耐熱性と耐摩耗性に優れた窒化物または炭窒化物からなる別の硬質皮膜が被覆されていることが好ましい。保護皮膜は、窒化物からなる層であることが好ましい。例えば、TiSiN、TiAlSiN、AlCrN、CrSiN、AlCrSiN、AlTiN、AlTiCrN等を設けることができる。
保護皮膜は、耐熱衝撃性に優れる残留圧縮応力を有する硬質皮膜であることが好ましい。特に湿式加工においては、加熱冷却のサイクルにより硬質皮膜が剥離し易くなることから、高い残留圧縮応力を有する硬質皮膜を保護皮膜として設けることが好ましい。特に、残留圧縮応力が高い皮膜種である点で、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、Tiの含有比率(原子%)を50%以上、Siの含有比率(原子%)を1%〜40%含有する窒化物又は炭窒化物であることが好ましい。
続いて中間皮膜の製造方法について説明する。基材の上にナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物を1nm以上10nm以下で形成するには、ターゲットの外周にコイル磁石を配備してアークスポットをターゲット内部に閉じ込めるような磁場構成としたカソードを用いてTiボンバードを実施することが好ましい。このようなカソードを用いてTiボンバード処理することで、基材表面の酸化物が除去されて清浄化されると共に、ボンバードされたTiイオンが基材表面のWCに拡散し、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物が形成され易くなる。
また、Tiボンバードの際に基材に印加する負のバイアス電圧およびターゲットへ投入する電流が低いと、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物が形成され難い。そのため、基材に印加する負のバイアス電圧は−1000V〜−700Vとすることが好ましい。また、ターゲットへ投入する電流は80A〜150Aとすることが好ましい。また、ボンバード処理前の基材の加熱温度が低くなると、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物が形成され難くなるため、基材と硬質皮膜の密着性が低下する傾向にある。そのため、基材の加熱温度を450℃以上として、その後のボンバード処理をすることが好ましい。また、Tiボンバード処理の時間が短いと、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物が形成され難くなり密着性が低下する傾向にある。一方、Tiボンバード処理の時間が長すぎると、中間皮膜の膜厚が厚くなり過ぎて密着性が低下する傾向にある。そのため、Tiボンバード処理は3分〜7分とすることが好ましい。
Tiボンバードはアルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、炭化水素系ガス等を導入しながら実施してもよいが、炉内雰囲気を1.0×10−2Pa以下の真空下で実施することで基材表面の清浄化および拡散層の形成が容易になり好ましい。
本発明の被覆切削工具は、外周刃を主に使用するラジアスエンドミルまたはスクエアエンドミルに適用するのが特に有効である。本発明の被覆切削工具は特に被削材を限定するのもではないが、特にNi基超耐熱合金の切削加工に適用することで優れた耐久性が発揮され易くなり有効である。
<基材>
中間皮膜の解析および切削評価の基材には、組成が、WC(bal.)−Co(11質量%)−TaC(0.4質量%)−Cr(0.9質量%)、WC平均粒径0.6μm、硬度92.4HRA、である超硬合金製のスクエアエンドミルを準備した。
物性評価の基材には、組成が、WC(bal.)−Co(11質量%)−TaC(0.4質量%)−Cr(0.9質量%)からなる、寸法が12.7mm×12.7mm、厚さ4.8mmの試験片を準備した。
<成膜装置>
成膜にはアークイオンプレーティング方式の成膜装置を用いた。
真空容器内部は真空ポンプにより排気され、ガスは供給ポートより導入される。真空容器内に設置した各基材にはバイアス電源が接続され、独立して各基材に負のDCバイアス電圧を印加する。
基材回転機構は、プラネタリーとプラネタリー上のプレート状治具、プレート状治具上のパイプ状治具が取り付けられ、プラネタリーが毎分3回転の速さで回転し、プレート状治具、パイプ状治具は夫々自公転する。
本発明の硬質皮膜を被覆するには、ターゲットの外周および背面に永久磁石を配備し、ターゲット中央付近の垂直方向成分の平均磁束密度が20.2mTであるカソードを用いた。メタルボンバード処理には、ターゲットの外周にコイル磁石を配備したカソードを用いた。
<成膜工程>
真空容器内に設置したヒーターにより、基材を加熱して真空排気を行った。そして、真空容器内の圧力を8×10−3Pa以下とした。その後、Arプラズマによるクリーニングを行い、続いて、Tiボンバード処理をした。真空容器内のガスを窒素に置き換え、真空容器内の圧力を5Paとした。そして、カソードに150Aの電流を供給して硬質皮膜を被覆した。成膜条件を表1に示す。なお、本発明例4については、Yを含有する硬質皮膜を被覆した後に保護皮膜であるTiSiNを連続して被覆した。
<組成分析>
株式会社日本電子製の電子プローブマイクロアナライザー装置(型番:JXA−8500F)を用いて、硬質皮膜の組成を波長分散型電子プローブ微小分析(WDS−EPMA)により測定した。測定条件は、加速電圧10kV、照射電流5×10−8A、取り込み時間10秒、分析領域直径0.5μm、分析深さが略0.5μmで5点測定してその平均から求めた。
<X線回折>
X線回折を用いて硬質皮膜の結晶構造を評価した。株式会社リガク製のX線回折装置(型番:RINT2500V−PSRC/MDG)を用い、管電圧40kV、管電流300mA、X線源Cukα(λ=0.15418nm)、2θが30〜70度の測定条件で実施した。本発明例および比較例ともに、hcp構造のAlNに起因するピーク強度は確認されず、fcc構造であることを確認した。
<硬度測定>
株式会社エリオニクス製のナノインデンテーション装置を用い、皮膜表面の硬度を測定した。押込み荷重9.8mN、最大荷重保持時間1秒、荷重負荷後の除去速度0.49mN/秒の測定条件で10点測定し、値の大きい2点と値の小さい2点を除いて6点の平均値から求めた。
<中間皮膜のTEM観察>
中間皮膜を評価するため、工具刃先部分について、膜面に垂直な面で切断した場合の切断面をTEMで解析した。中間皮膜の組成は付属のUTW型Si(Li)半導体検出器を用いてビーム径1nmで分析した。ナノビーム回折は、カメラ長50cmとし、2nm以下のビーム径で分析した。EDSスペクトル分析およびナノビーム回折パターンから、基材、硬質皮膜、中間皮膜の確認を行った。EDSスペクトル分析結果から、本発明例に係る中間皮膜は、金属元素の含有比率(原子%)でWを最も多く含有し、次いでTiを多く含有することを確認した。金属元素の含有比率(原子%)でWの含有比率(原子%)は約80%であった。また、Tiの含有比率(原子%)は約15%であった。また、WおよびTi以外には硬質皮膜の成分であるAl、Y、Nを含有していた。また、母材成分であるCoも僅かに含有していた。そして、本発明例に係る中間皮膜はナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けが可能であった。EDSスペクトル分析およびナノビーム回折パターンから、本発明例に係る中間皮膜はWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物であることを確認した。中間皮膜の膜厚は断面観察における5視野以上の平均から求めた。各試料の物性評価の結果を表2に示す。
<硬質皮膜の断面観察>
物性評価用の試験片を断面加工して、走査型電子顕微鏡により本発明例に係る硬質皮膜の断面観察を行った。図1に本発明例1の断面観察写真(15,000倍)を示す。本発明例1の皮膜組織は、明確な柱状粒子は確認されず、極めて微細な組織形態であることが確認される。更に、断面観察の試料を鏡面加工して、透過型電子顕微鏡により柱状粒子の平均幅を測定した。柱状粒子の平均幅は連続する50個以上の柱状粒子から求めた。そして、本発明に係る硬質皮膜は、基材の垂直方向に成長した柱状粒子の集合からなり、基材と平行方向の柱状粒子の平均幅が10nm以上60nm以下であることを確認した。
<硬質皮膜のTEM解析>
本発明に係る硬質皮膜を鏡面加工して、カメラ長:100cm、制限視野領域:φ750nmで制限視野回折パターンを求めた。そして、制限視野回折パターンから求められる強度プロファイルによりhcp構造およびfcc構造のピーク強度を求めた。本発明に係る硬質皮膜は、hcp構造のAlNに起因するピーク強度が僅かに確認された。そして、hcp構造のAlN(010)面に起因するピーク強度をIhとし、fcc構造のAlN(111)面、TiN(111)面、AlN(200)面、TiN(200)面、AlN(220)面およびTiN(220)面に起因するピーク強度と、hcp構造のAlN(010)面、AlN(011)面、およびAlN(110)面に起因するピーク強度との合計をIsとした場合、Ih×100/Is≦15の関係を満たすことを確認した。
<切削試験>
以下の条件で切削評価を実施し、逃げ面の摩耗幅を評価した。試験結果を表2に示す。
切削方法:側面切削
被削材:質量%で、Ni−19%Cr−18.7%Fe−3.0%Mo−5.0%(Nd+Ta)−0.8%Ti−0.5%Al−0.03%Cの組成を有するNi基合金(時効硬化処理済み)
切込み:軸方向6mm、径方向0.3mm
切削速度:40m/min
一刃送り量:0.04mm/tooth
切削油:水溶性切削油
切削距離:0.4m
Yを含有した本発明例は比較例よりも工具損傷が抑制された。Alの含有量が多い本発明例1、4は工具損傷が抑制される傾向にあった。また、硬質皮膜の膜厚が薄い本発明例3も工具損傷が抑制される傾向にあった。
比較例1は、Yを含有していないため、本発明例よりも硬質皮膜の塑性変形量が多くなり工具損傷が大きくなった。比較例2は、中間皮膜を設けていないため、工具損傷が大きくなった。

Claims (1)

  1. 基材と、前記基材の上に設けられた中間皮膜と、前記中間皮膜の上に設けられた硬質皮膜とを備える被覆切削工具であって、前記中間皮膜は、ナノビーム回折パターンがWCの結晶構造に指数付けされ、タングステン(W)とチタン(Ti)を含有する炭化物からなり、かつ膜厚が1nm以上10nm以下であり、前記硬質皮膜は、結晶構造が面心立方格子構造の窒化物または炭窒化物であって、少なくともアルミニウム(Al)とチタン(Ti)とイットリウム(Y)とを含有し、半金属を含む金属元素の含有比率(原子%)の合計を100%とした場合、アルミニウム(Al)の含有比率(原子%)が60%以上75%以下、チタン(Ti)の含有比率(原子%)が20%以上35%以下、イットリウム(Y)の含有比率(原子%)が1%以上5%以下である被覆切削工具。

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