JP5700171B2 - 被覆切削工具 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば、ボールエンドミル等の金型加工に適用される硬質皮膜を被覆した被覆切削工具に関する。
近年、室温での板材の曲げ、絞り、抜きなどのプレス成形に用いられる金型材の切削加工では、高硬度なプリハードン鋼の加工および高能率加工が求められている。切削工具にはより優れた耐久性が要求されており、切削工具の表面に耐熱性や耐摩耗性が優れる各種セラミックスからなる硬質皮膜を被覆した被覆切削工具が適用されている。例えば、耐熱性に優れる皮膜種であるAlCrの窒化物又は炭窒化物を主成分として含み、さらにSiおよびその他の金属(半金属を含む)元素を添加したAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物で被覆された被覆切削工具が適用されている(例えば、特開2006−239792号公報、特開2005−126736号公報、特開2004−337988号公報参照)。この被覆切削工具は、耐摩耗性や耐熱性が高められている。
更には、ミクロ組織を制御したAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物も提案されている(例えば、特開2002−337007号公報参照)。特開2002−337007号公報によれば、相対的にSiに富むアモルファス相と、相対的にSiに乏しい結晶相と、からなるミクロ組織を有するAlCrSi系の窒化物は、皮膜硬度が向上して、耐酸化性も改善されている。この窒化物を適用することで、被覆切削工具の耐久性が向上することが示されている。
被覆切削工具の耐久性を改善するためには、硬質皮膜の膜組成やミクロ組織を改良する一方で、基材と硬質皮膜の密着性を改善することも重要である。例えば、水素ガスを含有する雰囲気下でメタルボンバードを実施してW(タングステン)改質相を形成し、基材とAlCrSi系の窒化物との密着性を向上させる手法が開示されている(例えば、特開2009−220260号公報参照)。特開2009−220260号公報によれば、基材表面にあるWC(炭化タングステン)のCがメタルボンバードによって照射される金属イオンと結合し、基材の表面側に金属WからなるW改質相、その直上に炭化物相が形成され、該炭化物相の直上に硬質皮膜を被覆することで基材と硬質皮膜の密着性が改善されるものである。
近年、被削材の高硬度化および更なる高速加工化により、被覆切削工具には更なる耐久性が求められている。本発明者等が詳細検討したところ、上記した特許文献のような被覆切削工具を適用しても耐摩耗性や皮膜の密着性が不十分で満足する耐久性が得られ難いことを確認した。また、改質相を形成する目的でボンバード処理を実施しても、特開2009−220260号公報に開示されているようなW改質相は、母材の炭素が奪われることで形成されるものであるため、母材の炭素量が低減し、脱炭相が形成され易くなる。したがって、特開2009−220260号公報に記載の技術でも、工具の耐久性を改善するには十分でないことを確認した。
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものである。本発明は、耐久性に優れる被覆切削工具を提供する。
本発明者等は以下の知見を見出し、本発明に到達した。
本発明は、特定の中間皮膜を介して、Si含有量を調整したAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物からなる硬質皮膜を配設することで、被覆切削工具の耐久性が著しく改善されるとの知見に基づくものである。
すなわち本発明は、基材の表面が硬質皮膜で被覆された被覆切削工具であって、
前記硬質皮膜は、前記基材の上に配置され、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物からなるa層と、前記a層の上に配置され、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が最も多く、Alの含有比率(原子%)が50%以上、Crの含有比率(原子%)が20%以上、AlとCrの合計の含有比率(原子%)が85%以上、Siの含有比率(原子%)が5%〜15%である窒化物又は炭窒化物からなるb層と、を含み、前記b層はNaCl型の結晶構造であり、前記a層の膜厚は、1nm〜30nmである被覆切削工具である。
また、a層の厚みは、3nm以上10nm以下であることが好ましい。更に、a層の厚みは、3nm以上8nm以下であることが好ましい
層は、4a族、5a族、6a族(Crを除く)の金属元素およびBから選択される1種または2種以上の元素を、金属(半金属を含む)元素の含有比率(原子%)で10%以下で含有していることが好ましい。
また、b層は、Si量の全体に対して相対的にSi量が少ない結晶相と、Si量の全体に対して相対的にSi量が多い結晶相を有していることが好ましい。
また、b層の上には、窒化物又は炭窒化物からなるc層を更に有することが好ましい。
更に、c層は、金属(半金属を含む)元素のうちTiの含有比率(原子%)が50%以上であり、Siの含有比率(原子%)が1%〜30%である窒化物又は炭窒化物であることが好ましい。
また、被覆切削工具はボールエンドミルであることが好ましい。
本発明によれば、耐久性に優れる被覆切削工具が提供される。
すなわち、本発明では、硬質皮膜の密着性が格段に向上し、被覆切削工具の耐久性を大幅に改善することが可能となる。よって、例えば高硬度なプリハードン鋼の加工においても、金型製作のリードタイム短縮、金型の高精度化、調質による変寸の低減効果が期待され、産業上極めて有効である。
本発明例1の工具刃先部の透過電子顕微鏡写真である。図中の矢印1が示すポイントは基材、矢印2が示すポイントはa層、矢印3が示すポイントはb層である。 図1の矢印1が示すポイントのEDSスペクトル分析結果を示す図である。 図1の矢印2が示すポイントのEDSスペクトル分析結果を示す図である。 図1の矢印3が示すポイントのEDSスペクトル分析結果を示す図である。 図1の矢印1が示すポイントのナノビーム回折パターンを示す図である。 図1の矢印2が示すポイントのナノビーム回折パターンを示す図である。 図1の矢印3が示すポイントのナノビーム回折パターンを示す図である。 走査型電子顕微鏡によるAl70Cr30N(数値は金属(半金属を含む)元素に占める原子比である。以下同様。)の組成を有するb層の断面観察組織写真である。 走査型電子顕微鏡によるAl56Cr42SiNの組成を有するb層の断面観察組織写真である。 走査型電子顕微鏡によるAl63Cr31SiNの組成を有するb層の断面観察組織写真である。 走査型電子顕微鏡によるAl61Cr29Si10Nの組成を有するb層の断面観察組織写真である。 本発明のb層の皮膜構造を制限視野回折法で測定した制限視野回折パターンを、そのTEM像と合わせて示した一例である。 図12を拡大したTEM像と該TEM像におけるナノビーム回折パターンである。
本発明者等は、高硬度材の高能率加工における被覆切削工具の損傷要因について検討し、硬質皮膜を形成する柱状粒界を起点に皮膜破壊が発生し易いことを確認した。一方で、柱状粒界を低減するために硬質皮膜の組織を微細化すると基材との密着性が低下するため被覆切削工具の耐久性が低下する。更に本発明者等は、高硬度材を高能率加工するためには、耐熱性と耐摩耗性を兼ね備えた皮膜種を適用した被覆切削工具が有効であることを確認した。そして耐熱性と耐摩耗性が優れる皮膜種であるAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物をベースに皮膜組織を微細化して破壊の起点となる結晶粒界を低減することを検討した。本発明は、硬質皮膜の組織を微細化することに起因する基材と硬質皮膜の密着性の低下を十分に補完できる皮膜構造があることを見出して到達したものである。以下、本発明の詳細について説明する。
まず、本発明の硬質皮膜であるb層について説明する。
b層は、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物で構成される。AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は、被覆切削工具として優れた耐摩耗性と耐熱性が発揮できる膜種であり、より好ましくは窒化物である。そして、優れた耐熱性を確保するために、金属(半金属を含む)元素のうち原子%でAlの含有量を最も多く、Alの含有比率(原子%)を50%以上にすることが重要である。Alは、耐熱性を付与する元素であり、金属(半金属を含む)元素の含有比率(原子%)でAl以外の元素が最も多くなると耐熱性が十分でない。
b層は、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が50%以上であることで、耐熱性に優れて好ましい。より好ましくは、Alを55%以上含有することである。一方、Alの含有量が多くなり過ぎると、ZnS型の結晶構造が主体となり、被覆切削工具の耐久性が低下する傾向にある。そのため、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)を68%以下とすることが好ましく、50%以上60%以下の範囲とすることがより好ましい。なお、本発明における半金属とは、Si、Bである。
b層は、結晶構造をNaCl型の結晶構造とし、被覆切削工具としての耐摩耗性を向上させるために、金属(半金属を含む)元素のうちCrの含有比率(原子%)が20%以上とすることが必要である。金属(半金属を含む)元素のうちCrの含有比率(原子%)が20%以上であることで、耐摩耗性および耐熱性が高いレベルで両立されて好ましい。Cr含有量が20%よりも少なくなると、ZnS型の結晶構造が主体となり、被覆切削工具の耐久性が低下する傾向にある。
本発明において、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は、耐熱性および耐摩耗性の観点から、金属(半金属を含む)元素のうちAlとCrの合計の含有比率(原子%)が85%以上とする。更には、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物におけるAlとCrの合計の含有比率は、90%以上であることが好ましい。
Siは、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物の組織を微細化するために重要な元素である。図8〜図11に、AlCrNおよびAlCrSiNの断面観察写真(20,000倍)を示す。Siを含有していないAl70Cr30N(図8)およびSi含有量が少ないAl56Cr42SiN(図9)は、粗大な柱状粒子が明確に観察される。このような組織形態の硬質皮膜は、皮膜破壊の起点となる結晶粒界が多くなる。そのため、逃げ面摩耗が増大する傾向にある。一方、Si含有量を多くしたAl63Cr31SiN(図10)およびAl61Cr29Si10N(図11)では、組織が微細化しており、断面観察において明確な柱状粒子が観察されない。このような組織形態の硬質皮膜は、破壊の起点となる柱状粒界が少なくなり、逃げ面摩耗を抑制することができる。但し、Si含有量が多くなると非晶質およびZnS型の結晶構造が主体となり易くなり、被覆切削工具の耐久性が低下する。
よって、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物において、金属(半金属を含む)元素のうちSiの含有比率(原子%)を5%〜15%とすることが重要である。Siの含有比率が5%未満であると、柱状粒子が粗大になり、耐久性は低下する。Siの含有比率が15%を超えると、皮膜構造が非晶質となり易くなるため、NaCl型の結晶構造とすることが困難となり、耐久性が低下する傾向となる。
Siの含有比率としては、より好ましくは6%以上であり、更に好ましくは7%以上である。また、Siの含有比率の上限は、より好ましくは12%以下である。
本発明におけるb層は、NaCl型の結晶構造であることが重要である。本発明において、NaCl型の結晶構造であるとは、例えば、X線回折においてNaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すものである。ZnS型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すものは脆弱であるため、被覆切削工具として耐久性が乏しくなる。特に、湿式加工においては、耐久性が低下する傾向にある。
b層は、X線回折においてZnS型の結晶構造に起因する回折強度が確認されないことが好ましい。しかし、NaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すのであれば、一部にZnS型の結晶構造および非晶質相を含有してもよい。
但し、皮膜の被験面積が小さい場合や、b層の上に後述する別の皮膜を被覆している場合には、上記X線回折によるNaCl型の結晶構造の同定が困難な場合がある。このような場合であっても、例えば透過電子顕微鏡(TEM)を用いた制限視野回折法による結晶構造の同定を行うことができる。図12は、本発明におけるb層の皮膜構造を前記制限視野回折法で測定した制限視野回折パターンを、そのTEM像(500,000倍)と合わせて示した一例である。図12より、本発明におけるb層の制限視野回折パターンには、NaCl型の結晶構造を示すデバイリング2(111)、3(002)、4(022)が確認され、NaCl型の結晶構造を有していることがわかる。なお、図12においては、一部、ZnS型の結晶構造を示すデバイリング1(010)も確認される。
本発明におけるb層を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたナノビーム回折法で分析した結果を示しておく。図13は、図12のTEM像中に示した位置cを更に拡大した像(2,000,000倍)である。そして、前記拡大した像において、部位7、8の位置におけるナノビーム回折パターンである。図13より、本発明におけるb層は、詳細には、全体的なSi量に対して相対的にSi量が少ない部位7と、全体的なSi量に対して相対的にSi量が多い部位8とを有している。そして、この一例においては、相対的にSi量が少ない部位7に対応したナノビーム回折パターンにNaCl型の結晶構造を示すスポットが確認されている。また、相対的にSi量が多い部位8についても、ナノビーム回折パターンでスポットが確認されることから、結晶質であることが確認される。
本発明におけるb層のミクロ組織は、Si量の全体に対して相対的にSi含有量の多い結晶相に、Si量の全体に対して相対的にSi含有量が少ない結晶相が分散する組織形態である。b層がこのような組織形態になることで、皮膜により高い残留圧縮応力が付与されるとともに、クラックの進展がミクロレベルでも抑制される。これにより、優れた耐久性が発揮できると考えられる。一般的に、Si含有量が多くなると、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は、非晶質相が主体の組織形態となり易く、靱性が低下する傾向にある。本発明におけるb層は、結晶相を有する結晶構造の層であり、b層の結晶性を高めるため、基材付近の磁束密度を高めて被覆をしている。具体的には、ターゲット中心付近の平均磁束密度が14mT以上である。また、ターゲット背面および外周に永久磁石を配備し、基材付近まで磁力線が到達するよう調整したカソードを用いて、b層を被覆している。また、基材に印加する負圧のバイアス電圧が低くなると、非晶質相が増加する傾向にある。b層の被覆においては−250V〜−100Vで被覆することが好ましい。結晶相をより安定化させるには、−220V〜−150Vで被覆することがより好ましい。
また、後述するTiボンバード処理によって形成されるa層の直上に、b層を被覆していることも、b層のミクロ組織がSi含有量の異なる結晶相を含む組織形態になることに影響していると考えられる。
b層は、NaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示す範囲であれば、Al、Cr、Siの含有量を考慮して、他の元素(例えば、周期律表の4a族、5a族、6a族(Crを除く)の金属元素およびBから選択される1種または2種以上の元素)を、金属(半金属を含む)元素の含有比率(原子%)で0%〜10%含有することができる。これ以上の添加は、b層の耐摩耗性及び耐熱性を低下させる傾向にある。
b層の厚みが薄くなり過ぎると、優れた耐久性が十分に発揮されない場合がある。また、b層の厚みが厚くなり過ぎると、皮膜剥離が発生する場合がある。b層の厚みは、例えば、0.5μm〜10μmの範囲から適当な値を選択すればよい。b層の厚みは、より好ましくは1μm以上である。また、b層の厚みは、より好ましくは5μm以下である。
本発明においては、b層の上に更に別の層を被覆しても、本発明の効果を発揮する。そのため、本発明におけるa層とb層とで成る皮膜構造は、b層を工具の最表面とすること以外に、前記別の層を被覆してもよい。そしてこの場合、b層の上には、保護皮膜として耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物又は炭窒化物からなるc層が被覆されていることが好ましい。c層は、より好ましくは窒化物からなる層である。c層は、耐熱衝撃性に優れる残留圧縮応力を有する硬質皮膜であることが好ましい。特に湿式加工においては、加熱冷却のサイクルにより硬質皮膜が剥離し易くなることから、高い残留圧縮応力を有する硬質皮膜を保護皮膜として設けることが好ましい。
特に、残留圧縮応力が高い皮膜種である点で、金属(半金属を含む)元素のうち、原子%でTiを50%以上含有し、Siを1%〜30%含有する窒化物又は炭窒化物皮膜が好ましい。
b層よりもc層の厚みが厚いことが、湿式加工の耐久性が優れる傾向にある点で好ましい。
続いて、a層について説明する。
本発明における硬質皮膜であるb層は、微細な組織形態であるため、基材との密着性が乏しい。そのため、従来の窒化物からなる中間皮膜を介して行う方法では、密着性を改善するには十分でなかった。また、特開2009−220260号公報に記載のW改質相は、脱炭相が形成され易くなるだけでなく、工具基材の形状によっては形成され難い場合がある。エンドミルの場合、機能部である刃先には、W改質相は形成され難いことを確認した。
本発明者等は、様々な条件で切削試験を行い、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物からなるa層を基材の上に設けることで、微細な組織形態であるb層との密着性が改善されて被覆切削工具の耐久性が向上することを確認している。つまり、基材とb層との間にa層を形成することにより、微細な組織形態であるb層の基材との密着性を改善したものである。
基材の上にあるa層を、Wを含む炭化物とすれば、基材である超硬合金との親和性が強くなり、密着性に優れると考えられる。また、a層がTiを含むことで、a層の上にある微細組織であるb層がNaCl型の結晶構造を維持し易くなる。そして、a層の近傍にあるb層の結晶性がより高まり、基材とb層の密着性がより高まると考えられる。
a層の膜厚が薄くなり過ぎれば、基材との密着性が低下する。また、a層の膜厚が厚膜になり過ぎても、基材との密着性が低下する傾向にある。よって、a層の膜厚は、1nm〜30nmであることが好ましい。
工具刃先に形成されるa層は、工具形状や用途によって最適な膜厚が異なると考えられる。本発明者等の検討によれば、ボールエンドミルにおいてより優れた密着性を確保して工具の耐久性を高めるには、a層の膜厚の下限は、3nm以上とすることがより好ましい。また、a層の膜厚の上限は、10nm以下とすることが好ましい。更にはa層の上限は、8nm以下とすることがより好ましい。
a層は、WおよびTi以外に皮膜成分および母材成分を含有してもよい。a層の実測定においては、基材側のCoや硬質皮膜側のAl、Cr、Si、Nが含まれ得るが、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、WおよびTiを含む炭化物とすることで本発明の効果は発揮される。
a層は、透過型電子顕微鏡観察による断面観察、組成分析、ナノビーム回折パターンより確認することができる。
基材の上にナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物を形成するためには、ターゲットの外周にコイル磁石を配備してアークスポットをターゲット内部に閉じ込めるような磁場構成としたカソード用いて、Tiボンバードを実施することが好ましい。このようなカソードを用いて炭化物を形成し易い元素種であるTiでボンバード処理することで、基材表面の酸化物が除去されて清浄化される。また、この清浄化だけでなく、ボンバードされたTiイオンが基材表面のWCに拡散してWおよびTiを含む炭化物が形成され易くなる。本発明において、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物であるa層は、機能部である刃先に形成されることで、刃先における基材と硬質皮膜の密着性が高まり、被覆切削工具の耐久性を高める効果が得ることができる。
Tiボンバードの際に基材に印加する負圧のバイアス電圧およびターゲットへ投入する電流が低いと、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物が形成され難い。そのため、基材に印加する負圧のバイアス電圧は、−1000V〜−700Vとすることが好ましい。また、ターゲットへ投入する電流は、80A〜150Aとすることが好ましい。
ボンバードは、アルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、炭化水素系ガス等を導入しながら実施してもよいが、炉内雰囲気を1.0×10−2Pa以下の真空下で実施することで基材表面が清浄化されるだけでなく、拡散層が形成され易くなり好ましい。
なお、本発明者等の検討によると、工具径や刃先形状等の形状の違いによって、工具刃先に形成されるa層の厚みは影響を受けることを確認している。
工具の外周刃で被加工材を加工するスクエアエンドミルと違って、ボールエンドミルのチゼル部では、被加工材と常に接触しながら加工を行っているため、より優れた耐熱性と耐摩耗性が要求される。本発明の被覆切削工具は、ボールエンドミルに適用することで、特に優れた耐久性を示すため好ましい。特に40HRC以上の金型材の切削加工において、被覆切削工具の耐久性を向上させることができるので好ましい。更には、50HRC以上の金型材の切削加工に適用しても、優れた耐久性を発揮できるので好ましい。
本発明の被覆切削工具は、ボール半径が5mm以下のボールエンドミルに適用することが好ましい。特に、より優れた耐久性が発揮される点で、ボール半径3mm以下のような小径のボールエンドミルに適用することが好ましい。
本発明の基材に適用する超硬合金の硬度は、93.0HRA以上95.0HRA以下であることが好ましい。基材の硬度が低くなり過ぎれば、耐摩耗性を改善するのに十分でない場合がある。また、基材の硬度が高くなり過ぎれば、靱性が低下するため、チッピングが発生する場合がある。優れた耐久性をより安定して発揮には、基材の硬度は93.5HRA以上であることがより好ましい。また、基材の硬度は、94.5HRA以下であることがより好ましい。
(実施例1)
<成膜装置>
成膜には、アークイオンプレーティング方式の成膜装置を用いた。本装置は、複数のカソード(アーク蒸発源)、真空容器および基材回転機構を含む。
カソードは、ターゲット外周にコイル磁石を配備したカソードを1基(以下「C1」という。)と、ターゲット背面および外周に永久磁石を配備し、ターゲットに垂直方向の磁束密度がターゲット中央付近で14mT以上の磁場を有したカソードを2基(以下「C2」、「C3」という。)が搭載されている。
真空容器内は、内部を真空ポンプにより排気され、ガスは供給ポートより導入される。真空容器内に設置した各基材にはバイアス電源が接続され、独立して各基材に負圧のDCバイアス電圧を印加する。
基材回転機構は、プラネタリーとプラネタリー上のプレート状治具、プレート状治具上のパイプ状治具が取り付けられ、プラネタリーが毎分3回転の速さで回転し、プレート状治具、パイプ状治具は夫々自公転する。
<基材>
物性評価および切削試験用に、組成がWC(bal.)−Co(8質量%)−Cr(0.5質量%)−VC(0.3質量%)、WC平均粒度0.6μm、硬度93.9HRA、からなる超硬合金製の2枚刃ボールエンドミル(日立ツール株式会社製)を準備した。
なお、WCは炭化タングステンを、Coはコバルトを、Crはクロムを、VCは炭化バナジウムを、それぞれ表す。
<加熱および真空排気工程>
各基材をそれぞれ真空容器内のパイプ状冶具に固定し、成膜前プロセスを以下のように実施した。まず、真空容器内を8×10−3Pa以下に真空排気した。その後、真空容器内に設置したヒーターにより、基材温度が500℃になるまで加熱し、真空排気を行った。これにより、基材温度を500℃、真空容器内の圧力を8×10−3Pa以下とした。
<Arボンバード工程>
その後、真空容器内にArガスを導入し、容器内圧を0.67Paとした。その後、フィラメント電極に20Aの電流を供給し、基材に−200Vの負圧のバイアス電圧を印加し、Arボンバードを4分間実施した。
<Tiボンバード工程>
その後、真空容器内の圧力が8×10−3Pa以下になるように真空排気した。続いて、基材にバイアス電圧を印加して、C1に150Aのアーク電流を供給してTiボンバード処理を実施した。
<成膜工程>
Tiボンバード後、直ちにC1への電力供給を中断した。そして、真空容器内のガスを窒素に置き換え、真空容器内の圧力を5Pa、基材設定温度を520℃とした。C2に150Aの電力を供給し、基材に印加する負圧のバイアス電圧を変化させて硬質皮膜を約3μm被覆した。その後、略250℃以下に基材を冷却して真空容器から取り出した。表1に実施例1で使用したターゲット組成及び被覆条件を示す。

硬質皮膜の組成は、波長分散型電子線プローブ微小分析(WDS−EPMA)により測定した。測定条件は、加速電圧10kV、試料電流5×10−8A、取り込み時間10秒、分析領域直径1μm、分析深さが略1μmで5点測定してその平均値から求めた。
X線回折装置(株式会社リガク製 RINT2000 縦型ゴニオメーター 固定モノクロメーター)を用い、管電圧40kV、管電流300mA、X線源Cukα(λ=0.15418nm)、X線入射角5度、発散スリット0.5°、発散制限スリット10mm、散乱スリット0.73mm、受光スリット0.3mm、X線入射スリット0.4mm、2θ20〜70度の測定条件で実施して結晶構造を確認した。本発明例2については前記TEM解析による結晶構造の解析も行った。その結果は図12、13の通りである。全体としてのSi量(7at%)に対して、Si量の少ない部位として6at%の部位と、Si量の多い部位として10at%の部位と、があった。
皮膜構造を確認するため、電界放射型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製 JEM−2010F型)を用いてボールエンドミルの刃先部の断面観察を実施した。試料を切断しダミー基板上にエポキシ樹脂を用いて接着した。その後、切断、Mo製補強リング接着、研磨、ディンプリング、Arイオンミーリングを行って測定用の試料を準備した。測定前にはカーボン蒸着を施した。加速電圧を200kVで観察、組成分析、ナノビーム回折を実施した。
組成は付属のUTW型Si(Li)半導体検出器を用いてビーム径1nmで分析した。ナノビーム回折は、カメラ長50cmとし、2nm以下のビーム径で分析した。
本発明例1の透過電子顕微鏡写真(2,000,000倍)を、図1に示す。図中の矢印1が示すポイントが基材、矢印2が示すポイントがa層、矢印3が示すポイントがb層である。EDSスペクトル分析結果およびナノビーム回折パターンから、図1の矢印1は、WCであることを確認した。特開2002−337007号公報参照のような金属W相は形成されなかった。
a層は、EDSスペクトル分析結果からWとTi含んでいることを確認した。また、ナノビーム回折パターンからa層はWCの結晶構造に指数付けが可能であった。EDSスペクトル分析およびナノビーム回折パターンから、a層はWおよびTiを含有した炭化物であることが確認された。
a層は金属(半金属を含む)部分の原子%でWを最も多く含有していた。なお、WおよびTi以外には硬質皮膜の成分であるAl、Cr、Si、Nを含有していた。また、母材成分であるCoも僅かに含有していた。試料作製過程のコンタミの影響により、Cuが測定された。
断面観察、組成分析、ナノビーム回折パターンより、a層の厚みは5nm程度の薄膜であることを確認した。本発明例のa層はいずれもWおよびTiを含む炭化物が約5nm程度形成されていた。これについては同様の条件によるTiボンバード処理を実施した本発明例2〜10と比較例100〜104についても同様であった。Tiボンバード処理の時間が短い本発明例11は、WおよびTiを含む炭化物が約2nm程度形成されていた。Tiボンバード処理の時間が長い本発明例12は、WおよびTiを含む炭化物が約13nm程度形成されていた。
ただし、基材のクリーニングを目的として短時間のTiボンバード処理を実施した比較例107においては明確なa層の形成が確認されなかった。Tiボンバード処理自体を実施しなかった比較例105、106はa層が形成されていなかった。
乾式加工後の母材露出幅から被覆切削工具の耐久性を評価した。切削条件を以下に示す。
(条件)乾式加工
・工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
・型番:EPBTS2100、ボール半径5mm
・切削方法:底面切削
・被削材:SKD11(60HRC)
・切り込み:軸方向、0.2mm、径方向、0.2mm
・切削速度:251m/min
・一刃送り量:0.125mm/刃
・切削油:エアー加圧供給
・切削距離:150m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きかった部分を最大摩耗幅とした。

本発明例であるNo.1〜12は皮膜剥離が発生せず、安定した摩耗形態を示した。そしてその時の摩耗幅は小さく優れた耐久性を示した。なお、表2中、「fcc」は、面心立方格子構造を表す。
特に、a層の厚みが好ましい範囲にある本発明例1〜10は最大摩耗幅が小さくなる傾向にあった。
これに対して比較例であるNo.100〜107は著しい皮膜剥離が発生し、不安定な摩耗形態を示した。そして、その時の摩耗幅は大きかった。比較例であるNo.100〜103、108はa層が形成されているが、b層の結晶構造がNaCl型の結晶構造ではないため(hcp:六方最密充填構造)、耐久性が乏しかった。
比較例であるNo.104は硬質皮膜に含まれるSi量が少なく硬質皮膜の柱状粒子が粗大であるため耐久性が乏しかった。
比較例であるNo.105、106、107はa層を形成していないため、耐久性が乏しかった。
(実施例2)
実施例2では、組成がWC(bal.)−Co(8質量%)−Cr(0.5質量%)−VC(0.3質量%)、WC平均粒度0.6μm、硬度93.9HRA、からなるボール半径1mmのボールエンドミル(日立ツール株式会社製)で評価した。各試料ともArガスボンバードまでは実施例1と同様である。試料No.205〜209は、a層を形成する代わりに、C3に設置したカソードを用いて窒化物からなる中間皮膜を被覆した。各試料ともC2に設置したカソードを用いて硬質皮膜を約3μm被覆した。表3に実施例2で使用したターゲット組成及び被覆条件を示す。
なお、ボール半径が1mmのボールエンドミルを基材に用いた場合、実施例1と同様のTiボンバード条件では刃先に変形が生じることを確認した。そのため、実施例2では、ボンバード時間を短時間とし、基材に印加する負圧のバイアス電圧も下げてTiボンバード処理を実施した。
湿式加工後の最大摩耗幅から被覆切削工具の耐久性を評価した。切削条件を以下に示す。
(条件)湿式加工
・工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
・型番:EPDBE2010−6、ボール半径0.5mm、首下長さ6mm
・切削方法:底面切削
・被削材:HPM38(52HRC)(日立金属株式会社製)
・切り込み:軸方向、0.04mm、径方向、0.04mm
・切削速度:78.5m/min
・一刃送り量:0.0189mm/刃
・切削油:水溶性エマルション加圧供給
・切削距離:60m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きかった部分を最大摩耗幅とした。

本発明例であるNo.20、21及び比較例であるNo.200は、a層が約10nm形成されていた。本発明例であるNo.22は、a層が約7nm形成されていた。本発明例は、いずれも優れた耐久性を示した。本発明例の中でも、a層の厚みがより好ましい範囲にある本発明例であるNo.22は、最大摩耗幅がより小さくなり特に優れた耐久性を示した。
比較例であるNo.200は硬質皮膜に含まれるSi量が少なく硬質皮膜の柱状粒子が粗大であり、耐久性が乏しかった。
比較例であるNo.201、202はボンバードの際に基材に印加する負圧のバイアス電圧が低いため基材の上には金属Tiが形成されており、基材との密着性が不十分であり、耐久性が乏しかった。
比較例であるNo.203〜208は基材の上に窒化物を形成しているため基材との密着性が不十分であり、耐久性が乏しかった。
比較例であるNo.209は、a層を形成していないため密着性が不十分であり耐久性が乏しかった。
(実施例3)
実施例3では、b層の上層にc層を被覆した好ましい形態について評価した。各試料ともArガスボンバードまでは、実施例1と同様である。表5に実施例3で使用したターゲット組成及び被覆条件を示す。

加工後の母材露出幅から被覆切削工具の耐久性を評価した。切削条件を下記に示す。
(条件1)乾式加工
・工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
・型番:EPBTS2100、ボール半径5mm
・切削方法:底面切削
・被削材:SKD11(60HRC)
・切り込み:軸方向、0.2mm、径方向、0.2mm
・切削速度:251m/min
・一刃送り量:0.125mm/刃
・切削油:エアー加圧供給
・切削距離:150m
(条件2)湿式加工
・工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
・型番:EPBTS2100、ボール半径5mm
・切削方法:底面切削
・被削材:SKD11(60HRC)
・切り込み:軸方向、0.2mm、径方向、0.2mm
・切削速度:251m/min
・一刃送り量:0.125mm/刃
・切削油:水溶性エマルジョン加圧供給
・切削距離:20m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きかった部分を最大摩耗幅とした。

本発明例であるNo.30〜34は、b層の上に窒化物からなるc層を形成しているため、乾式加工だけでなく湿式加工においても優れた耐久性を示した。特にb層よりもc層の厚みが厚い方が湿式加工において優れた耐久性を示す傾向にあった。
比較例であるNo.300、301は、a層を形成していないため、湿式および乾式加工のいずれでも工具摩耗が大きく耐久性が乏しかった。なお、比較例No.300はb層から著しい剥離が生じていた。
比較例であるNo.302、303は、b層のSi含有量が少ないため乾式加工において耐久性が低下した。
日本出願2013−074112の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。

Claims (8)

  1. 基材の表面が硬質皮膜で被覆された被覆切削工具であって、
    前記硬質皮膜は、前記基材の上に配置され、ナノビーム回折パターンからWCの結晶構造に指数付けされ、C、Tiおよび不可避成分からなる炭化物からなるa層と、前記a層の上に配置され、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が最も多く、Alの含有比率(原子%)が50%以上、Crの含有比率(原子%)が20%以上、AlとCrの合計の含有比率(原子%)が85%以上、Siの含有比率(原子%)が5%〜15%である窒化物又は炭窒化物からなるb層と、を含み、前記b層はNaCl型の結晶構造であり、前記a層の膜厚は、1nm〜30nmである被覆切削工具。
  2. 前記a層の膜厚は、3nm以上10nm以下である請求項1に記載の被覆切削工具。
  3. 前記a層の膜厚は、3nm以上8nm以下である請求項2に記載の被覆切削工具。
  4. 前記b層は、4a族、5a族、6a族(Crを除く)の金属元素およびBから選択される1種または2種以上の元素を、金属(半金属を含む)元素の含有比率(原子%)で10%以下で含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  5. 前記b層は、Si量の全体に対して相対的にSi量が少ない結晶相と、Si量の全体に対して相対的にSi量が多い結晶相を有している請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  6. 前記b層の上には、窒化物又は炭窒化物からなるc層を更に有する請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
  7. 前記c層は、金属(半金属を含む)元素のうちTiの含有比率(原子%)が50%以上であり、Siの含有比率(原子%)が1%〜30%である窒化物又は炭窒化物からなる請求項6に記載の被覆切削工具。
  8. 前記被覆切削工具は、ボールエンドミルである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の被覆切削工具。
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