JP2015174196A - 被覆切削工具の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れる被覆切削工具の製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】基材の表面に硬質皮膜が被覆された被覆切削工具の製造方法であって、前記基材の表面をTiボンバード処理してWおよびTiを含む炭化物であるa層を形成する工程と、次いで、前記基材に印加するバイアス電圧を−220V〜−70V、前記基材の設定温度を500℃以下として、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が最も多く、Siの含有比率(原子%)が4%〜20%であるAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物からなるb層を被覆する工程とを有する被覆切削工具の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、基材の表面にAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物が被覆された被覆切削工具の製造方法に関する。
近年、室温での板材の曲げ、絞り、抜きなどのプレス成形に用いられる金型材の切削加工には、高硬度なプリハードン鋼の加工および高能率加工が求められている。切削工具にはより優れた耐久性が要求されており、切削工具の表面に耐熱性や耐摩耗性が優れる各種セラミックスからなる硬質皮膜を被覆した被覆切削工具が適用されている。例えば、耐熱性に優れる皮膜種であるAlCrの窒化物又は炭窒化物を主成分として含み、Siおよびその他の金属(半金属を含む)元素を添加して耐摩耗性や耐熱性を高めた、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物を被覆した被覆切削工具が適用されている(特許文献1〜3)。
更には、ミクロ組織を制御したAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物も提案されている(特許文献4)。特許文献4によれば、相対的にSiに富むアモルファス相と相対的にSiに乏しい結晶相とからなるミクロ組織を有するAlCrSi系の窒化物は、皮膜硬度が向上して、耐酸化性も改善され、これを適用することで被覆切削工具の耐久性が向上することが示されている。
被覆切削工具の耐久性を改善するためには、硬質皮膜の膜組成やミクロ組織を改良して被覆切削工具の耐久性を改善する一方で、基材と硬質皮膜の密着性を改善することも重要である。例えば、水素ガスを含有する雰囲気下でメタルボンバードを実施してW改質相を形成し、基材とAlCrSi系の窒化物との密着性を向上させる手法が開示されている(特許文献5)。特許文献5によれば、基材表面にあるWCのCがメタルボンバードによって照射される金属イオンと結合し、基材の表面側に金属WからなるW改質相、その直上に炭化物相が形成され、該炭化物相の直上に硬質皮膜を被覆することで基材と硬質皮膜の密着性が改善されるものである。
特開2006−239792号公報 特開2005−126736号公報 特開2004−337988号公報 特開2002−337007号公報 特開2009−220260号公報
近年、被削材の高硬度化および更なる高速加工化により、被覆切削工具には更なる耐久性が求められている。本発明者が詳細検討したところ、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物を被覆した被覆切削工具であっても耐久性を改善する余地があることを確認した。
本発明は上記の課題に鑑み、耐久性に優れる被覆切削工具の製造方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、基材の表面に硬質皮膜が被覆された被覆切削工具の製造方法であって、前記基材の表面をTiボンバード処理してWおよびTiを含む炭化物であるa層を形成する工程と、次いで、前記基材に印加するバイアス電圧を−220V〜−70V、前記基材の設定温度を500℃以下として、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が最も多く、Siの含有比率(原子%)が4%〜20%であるAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物からなるb層を被覆する工程とを有する被覆切削工具の製造方法である。
本発明によれば、耐久性に優れる被覆切削工具を得ることができる。
本発明者は、高硬度材の高能率加工における被覆切削工具の損傷要因について検討し、硬質皮膜を形成する柱状粒界が起点となり、皮膜破壊が発生し易いことを確認した。一方で、柱状粒界を低減するために、硬質皮膜の組織を微細化すると、硬質皮膜と基材との密着性が低下するため被覆切削工具の耐久性が低下する。本発明者は、高硬度材を高能率加工するためには、耐熱性と耐摩耗性を兼ね備えた皮膜種を適用した被覆切削工具が有効であることを確認し、耐熱性と耐摩耗性が優れる皮膜種であるAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物をベースに皮膜組織を微細化して破壊の起点となる柱状粒界を低減することを検討した。そして、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物の皮膜組織を微細化するには一定量のSi元素を含有することが有効であること、及び皮膜組織を微細化することに起因する密着性の低下を補完するには、特定の中間皮膜をTiボンバード処理により形成することが有効であることを知見した。更に、Tiボンバード処理後の、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物の被覆において、基材に印加するバイアス電圧に加えて成膜温度を適切に制御することで、被覆切削工具の耐久性をより高めることができることを確認して本発明に到達した。
まず、本発明に係るa層に関して説明する。本発明で被覆する硬質皮膜であるb層は微細な組織形態であるため基材との密着性が乏しく、従来の窒化物からなる中間皮膜を介しては密着性を改善するには十分でない。本発明者は様々な条件で切削試験を行い、WおよびTiを含む炭化物からなるa層を基材の上に設けることで、微細な組織形態であるb層との密着性が改善されて被覆切削工具の耐久性が向上することを確認した。つまり、基材と硬質皮膜との間に特定の中間皮膜を形成することにより、微細な組織形態であるb層の基材との密着性を改善したものである。
基材の上にあるa層がWを含んだ炭化物とすれば基材である超硬合金との親和性が強くなり密着性が優れると考えられる。また、a層がTiを含むことで、a層の上にある微細組織であるb層がNaCl型の結晶構造を維持し易くなる。そして、a層の近傍にある硬質皮膜の結晶性がより高まり、基材とb層の密着性がより高まると考えられる。a層の膜厚は2nm〜10nmとすることが好ましい。a層の膜厚が薄くなり過ぎれば基材との密着性が低下する場合がある。また、a層の膜厚が厚膜になり過ぎると皮膜剥離が発生する場合がある。a層の膜厚は2nm以上であることがより好ましい。a層の膜厚は7nm以下であることがより好ましい。
a層は、WおよびTi以外に皮膜成分および母材成分を含有しても良い。a層の実測定においては、基材側のCoや硬質皮膜側のAl、Cr、Si、Nが含まれ得るが、WおよびTiを含む炭化物とすることで本発明の効果は発揮される。
a層は、透過型電子顕微鏡観察による断面観察、組成分析、ナノビーム回折パターンより確認することができる。
本発明に係るa層の形成は、ターゲットの外周にコイル磁石を配備してアークスポットをターゲット内部に閉じ込めるような磁場構成としたカソードを用いてTiボンバードを実施することが好ましい。このようなカソードを用いて炭化物を形成し易い元素種であるTiでボンバード処理することで、基材表面の酸化物が除去されて清浄化されるだけでなく、ボンバードされたTiイオンが基材表面のWCに拡散してWおよびTiを含む炭化物が形成され易くなる。本発明において、WおよびTiを含む炭化物であるa層は、機能部である刃先に形成されることで、刃先における基材とb層の密着性が高まり被覆切削工具の耐久性を高める効果を得ることができる。
Tiボンバードの際に基材に印加する負圧のバイアス電圧およびカソードへ投入する電流が低いとWおよびTiを含む炭化物が形成され難い。そのため、基材に印加するバイアス電圧は−1000V〜−700Vとすることが好ましい。また、カソードへ投入する電流は80A〜150Aとすることが好ましい。
ボンバードはアルゴンガス、窒素ガス、水素ガス、炭化水素系ガス等を導入しながら実施してもよいが、炉内雰囲気を1.0×10−2Pa以下の真空下で実施することで基材表面が清浄化されるだけでなく、拡散層が形成され易くなり好ましい。
Tiボンバード処理の前には、Ar等のガスボンバード処理をしておくことが好ましい。
続いて本発明に係るb層について説明する。本発明では、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物からなるb層を被覆する。AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は被覆切削工具として優れた耐摩耗性と耐熱性が発揮できる膜種であり、より好ましくは窒化物である。そして、優れた耐熱性を確保するためには、b層の金属(半金属を含む)元素のうち原子比率(原子%)でAlの含有量を最も多くすることが重要である。Alは耐熱性を付与する元素であり、金属(半金属を含む)元素の含有比率(原子%)でAl以外の元素が最も多くなるとb層の耐熱性が低下する。
b層は、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)を50%以上とすることで耐熱性が高まるので好ましい。より好ましくは、Alの含有比率(原子%)は55%以上である。一方、Alの含有比率(原子%)が多くなり過ぎると、ZnS型の結晶構造が主体となり、被覆切削工具の耐久性が低下する傾向にある。そのため、b層の金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)を68%以下とすることが好ましい。なお、本発明における半金属とは、Si、Bである。
b層の結晶構造をNaCl型として被覆切削工具の耐久性を高めるためには、b層はCrの元素を含有する必要がある。b層の金属(半金属を含む)元素のうちCrの含有比率(原子%)が20%以上であることで、耐摩耗性および耐熱性が高いレベルで両立されて好ましい。Crの含有比率(原子%)が20%よりも少なくなると、ZnS型の結晶構造となり易くなるため被覆切削工具の耐久性が低下する場合がある。
b層は、金属(半金属を含む)元素のうちAlとCrの合計の含有比率(原子%)が85%以上であることで、耐熱性および耐摩耗性がより向上して好ましい。更には、AlとCrの合計の含有比率(原子%)は90%以上であることが好ましい。
Siは、b層の組織を微細化するために重要な元素である。Siの含有量が少ないとAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は粗大な柱状粒子が明確な組織形態となる。柱状粒子が明確な組織形態では、皮膜破壊の起点となる結晶粒界が多くなるため逃げ面摩耗が増大する傾向にある。一方、一定量のSiを含有量したAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は、組織が微細化しており断面観察において明確な柱状粒子が観察されない。このような組織形態の硬質皮膜は、破壊の起点となる柱状粒界が少なくなり逃げ面摩耗を抑制することができる。但し、Si含有量が多くなると非晶質およびZnS型の結晶構造が主体となり易くなり、被覆切削工具の耐久性が低下する。
よって、b層は、金属(半金属を含む)元素のうちSiの含有比率(原子%)を4%〜20%とすることが重要である。Siの含有比率(原子%)が4%未満であると、柱状粒子が粗大となって耐久性が低下する傾向にある。Siの含有比率(原子%)が20%を超えると、皮膜構造が非晶質となり易くなるため、NaCl型の結晶構造とすることが困難となり耐久性が低下する傾向にある。Siの含有比率(原子%)としては、より好ましくは5%以上であり、更に好ましくは6%以上である。また、Siの含有比率(原子%)の上限は、より好ましくは12%以下であり、更に好ましくは10%以下である。
b層は、NaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示す範囲であれば、Al、Cr、Siの含有量を考慮して、周期律表の4a族、5a族、6a族(Crを除く)の金属元素およびBから選択される1種または2種以上の元素の合計を、金属(半金属を含む)元素の原子比率(原子%)で0〜10%含有することができる。これ以上の添加は硬質皮膜の耐摩耗性及び耐熱性を低下させる傾向にある。
被覆切削工具が優れた耐久性を発揮するためには、b層はNaCl型の結晶構造であることが重要である。硬質皮膜がZnS型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すものは脆弱であるため被覆切削工具として耐久性が乏しくなる。特に湿式加工において耐久性が低下する傾向にある。硬質皮膜の結晶構造は皮膜組成だけでなく、被覆時の基材に印加するバイアス電圧の影響を大きく受ける。基材に印加する負圧のバイアス電圧の絶対値が小さくなると、ZnS型の結晶構造に起因する回折強度が大きくなって工具の耐久性が低下する。一方、基材に印加する負圧のバイアス電圧の絶対値が大きくなると、硬質皮膜に付与される残留圧縮応力が増加して工具刃先が損傷する場合がある。そのため、b層の被覆では、前記基材に印加するバイアス電圧を−220V〜−70Vとする。b層の被覆では、前記基材に印加するバイアス電圧を−200V〜−100Vとすることがより好ましい。
本発明においてNaCl型の結晶構造であるとは、例えば、X線回折においてNaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すものである。b層は、X線回折においてZnS型の結晶構造に起因する回折強度が確認されないことが好ましい。しかし、NaCl型の結晶構造に起因する回折強度が最大強度を示すのであれば、一部にZnS型の結晶構造および非晶質相を含有してもよい。但し、皮膜の被験面積が小さい場合には、上記X線回折によるNaCl型の結晶構造の同定が困難な場合がある。このような場合であっても、例えば、透過電子顕微鏡(TEM)を用いた制限視野回折法による結晶構造の同定を行うことができる。
b層の被覆では、基材に印加するバイアス電圧の制御に加えて基材の設定温度を500℃以下とする。本発明者の検討によると、成膜時の基材の設定温度を500℃以下とすることで、b層に付与される圧縮残留応力が増加して工具の耐久性がより向上することを確認した。一方、被覆時の基材の設定温度が低すぎると基材側から多量のガスが発生して、不純物を多く含んだ硬質皮膜となり、工具の耐久性が低下する傾向にある。また、圧縮残留応力が大きくなり過ぎるため、硬質皮膜が自身の残留圧縮応力で破壊してしまう。b層に適度な圧縮残留応力を付与するため、基材の設定温度を420℃以上で被覆することが好ましい。
一般的に、Si含有量が多くなるとAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物は、非晶質相が主体の組織形態となり易く、靱性が低下する傾向にある。b層の結晶性を高めるためには、ターゲット中心付近の平均磁束密度が14mT以上のカソードを用いることが好ましい。更に、ターゲット中心付近から基材付近まで磁力線が到達するよう調整したカソードを用いることが好ましい。このようなカソードを用いてb層を被覆することで、b層のミクロ組織は、全体的なSi量に対して相対的にSi含有量の多い結晶相に、全体的なSi量に対して相対的にSi含有量が少ない結晶相が分散する組織形態となり易い。b層がこのような組織形態になることで、皮膜により高い残留圧縮応力が付与されるとともに、クラックの進展がミクロレベルでも抑制される。これにより、より優れた耐久性が発揮できると考えられる。
本発明においては、b層の上に更に別の層を被覆しても本発明の効果を発揮する。そのため、本発明でb層を切削工具の最表面に形成する以外に、別の層を被覆しても良い。そしてこの場合、b層の上には保護皮膜として耐熱性と耐摩耗性に優れる窒化物又は炭窒化物からなるc層を被覆することが好ましい。より好ましくは窒化物である。保護皮膜は、耐熱衝撃性に優れる残留圧縮応力を有する硬質皮膜であることが好ましい。特に湿式加工においては加熱冷却のサイクルにより硬質皮膜が剥離し易くなることから、高い残留圧縮応力を有する硬質皮膜を保護皮膜として設けることが好ましい。
特に、金属(半金属を含む)元素のうちTiの原子比率(原子%)を50%以上、Siの原子比率(原子%)を1%〜30%有する窒化物又は炭窒化物皮膜は残留圧縮応力が高い皮膜種であることから、これらをb層の上層に設けることが好ましい。
本発明の被覆切削工具の製造方法は、ボールエンドミルに適用することで特に優れた耐久性を発揮することができる。工具の外周刃で被加工材を加工するスクエアエンドミルと違い、ボールエンドミルにおいては、チゼル部が被加工材と常に接触しながら加工を行っている。そのため、ボールエンドミルのチゼル部ではより優れた耐熱性と耐摩耗性が要求され、AlCrSi系の窒化物又は炭窒化物を適用することが有効であり、本発明を適用することでより優れた耐久性を発揮することができる。
本発明に適用する基材は、硬度は93.0HRA以上95.0HRA以下の超硬合金であることが好ましい。基材の硬度が低くなり過ぎれば耐摩耗性を改善するのに十分でない場合がある。また、基材の硬度が高くなり過ぎれば靱性が低下するためチッピングが発生する場合がある。優れた耐久性をより安定して発揮には、基材の硬度は93.5HRA以上であることがより好ましい。また、基材の硬度は、94.5HRA以下であることがより好ましい。
<成膜装置>
成膜には、アークイオンプレーティング方式の成膜装置を用いた。本装置は、複数のカソード(アーク蒸発源)、真空容器および基材回転機構を含む。
カソードは、ターゲット外周にコイル磁石を配備したカソードを1基(以下「C1」という。)と、ターゲット背面および外周に永久磁石を配備し、ターゲットに垂直方向の磁束密度がターゲット中央付近で14mT以上の磁場を有したカソードを2基(以下「C2」、「C3」という。)が搭載されている。
C1には金属Tiのターゲットを設置した。C2にはAlCrSi合金のターゲットを設置した。C3にはTiSi合金のターゲットを設置した。
真空容器内は、内部を真空ポンプにより排気され、ガスは供給ポートより導入される。真空容器内に設置した各基材にはバイアス電源が接続され、独立して各基材に負圧のDCバイアス電圧を印加する。
基材回転機構は、プラネタリーとプラネタリー上のプレート状治具、プレート状治具上のパイプ状治具が取り付けられ、プラネタリーが毎分3回転の速さで回転し、プレート状治具、パイプ状治具は夫々自公転する。
<基材>
物性評価用および切削試験用に、基材として、組成がWC(bal.)−Co(8質量%)−Cr(0.5質量%)−VC(0.3質量%)、WC平均粒度0.6μm、硬度93.9HRA、からなる超硬合金製の2枚刃ボールエンドミル(ボール半径0.5mm 日立ツール株式会社製)を準備した。
<加熱および真空排気工程>
各基材をそれぞれ真空容器内のパイプ状冶具に固定し、成膜前プロセスを以下にように実施した。まず、真空容器内を8×10−3Pa以下に真空排気した。その後、真空容器内に設置したヒーターにより、基材温度500℃まで加熱して真空排気を行った。そして、基材の設定温度を500℃とし、真空容器内の圧力を8×10−3Pa以下とした。
<Arボンバード工程>
その後、真空容器内にArガスを導入し、0.67Paとした。その後、フィラメント電極に20Aの電流を供給、基材に−150Vのバイアス電圧を印加し、Arボンバードを4分間実施した。
<Tiボンバード工程>
その後、真空容器内の圧力が8×10−3Pa以下になるように真空排気した。続いて、基材にバイアス電圧を印加して、C1に80Aのアーク電流を供給してTiボンバード処理を4分間実施した。
<成膜工程>
Tiボンバード処理後、直ちにC1への電流の供給を中断した。そして、真空容器内のガスを窒素に置き換え真空容器内の圧力を5Paとした。C2に100Aの電流を供給して、試料によって成膜時の基材温度とバイアス電圧を変化させて約2μmの硬質皮膜を被覆した。その後、C3に100Aの電流を供給し、基材に印加するバイアス電圧を−50VとしてTiSiNを約1μm被覆して、本発明例1〜3、比較例10〜12を作製した。
比較例13は、Arボンバード工程の後にTiボンバード処理を実施せずに、C2及びC3に電流を供給して硬質皮膜を被覆した。
比較例14は、Arボンバード工程の後に基材に印加するバイアス電圧を−650VとしてTiボンバードを3分間実施し、C2及びC3に電流を供給して硬質皮膜を被覆した。
比較例17は、Tiボンバード処理をせずに、Arボンバード工程の後にチタン窒化物を被覆し、C2及びC3に電流を供給して硬質皮膜を被覆した。表1に各試料の成膜条件を示す。
Figure 2015174196
株式会社日本電子製の電子プローブマイクロアナライザー装置(型番:JXA−8500F)を用いて、付属の波長分散型電子プローブ微小分析(WDS−EPMA)でb層の皮膜組成を測定した。この皮膜組成の分析は、分析用の被覆切削工具を断面観察して、各層を加速電圧10kV、照射電流5×10−8A、取り込み時間10秒、分析領域直径1μm、分析深さが略1μmで5点測定してその平均から組成を求めることにより行った。
分析用の被覆切削工具を用いてTEMによる断面解析を行った。装置は、日本電子株式会社製の電界放出型透過電子顕微鏡(型番:JEM−2010F型)を用いた。組成分析は付属のUTW型Si(Li)半導体検出器を用いてビーム径1nmで分析した。ナノビーム回折は、カメラ長50cmとし、2nm以下のビーム径で分析した。
本発明例のTEM観察により、基材と硬質皮膜の間には別層(a層)が形成されていることを確認した。EDSスペクトル分析結果から、基材の直上のa層には、WとTiが含まれていることを確認した。また、ナノビーム回折パターンからa層はWCの結晶構造に指数付けが可能であった。EDSスペクトル分析およびナノビーム回折パターンから、基材の直上にあるa層は、WCの一部にTiを含有した炭化物であることを確認した。また、a層は金属(半金属を含む)部分の原子比率でWを最も多く含有していた。なお、WおよびTi以外には硬質皮膜の成分であるAl、Cr、Si、Nを含有していた。また、基材成分であるCoも僅かに含有していた。
a層の直上は、EDSスペクトル分析結果およびナノビーム回折パターンから、立方晶構造の窒化物からなる硬質皮膜であることを確認した。本発明例1〜3および比較例10〜12には約7nmのa層が形成されていた。比較例14は、明確なa層は形成されていなかった。
TEMを用いた制限視野回折法で本発明のb層の制限視野回折パターンを確認した。b層の制限視野回折パターンには、NaCl型の結晶構造を示すデバイリングが確認された。
本発明で被覆したb層は、TEMを用いたナノビーム回折法で分析した結果、詳細には、全体的なSi量に対して、相対的にSi量が少ない部位と、相対的にSi量が多い部位とでなることを確認した。そして、相対的にSi量が少ない部位に対応したナノビーム回折パターンにNaCl型の結晶構造を示すスポットが確認された。また、相対的にSi量が多い部位についても、ナノビーム回折パターンでスポットが確認されることから結晶質であることが確認された。
作製した被覆切削工具を用いて切削試験を行った。表2に分析結果および切削試験結果を示す。切削条件は以下の通りである。
(条件)湿式加工
・工具:2枚刃超硬ボールエンドミル
・型番:EPDBE2010−6、ボール半径0.5mm、首下長さ6mm
・切削方法:底面切削
・被削材:HPM38(52HRC)(日立金属株式会社製)
・切り込み:軸方向、0.04mm、径方向、0.04mm
・切削速度:78.5m/min
・一刃送り量:0.0189mm/刃
・切削油:水溶性エマルション加圧供給
・切削距離:60m
・評価方法:切削加工後、走査型電子顕微鏡を用いて倍率150倍で観察し、工具と被削材が擦過した幅を実測し、そのうちの擦過幅が最も大きかった部分を最大摩耗幅とした。
Figure 2015174196
本発明例で作製した被覆切削工具は何れも最大摩耗幅が小さく優れた耐久性を示した。
比較例10は、C2への電力投入時の基材温度が高いため、b層に十分な圧縮残留応力が付与されていないため本発明例に比べて最大摩耗幅が大きくなった。比較例11は、b層被覆時の基材に印加する負圧のバイアス電圧の絶対値が小さいため、ZnS型の結晶構造が多くなって耐久性が低下した。比較例12は、b層のSi量が少ないため皮膜の柱状粒子が粗大となったため工具の耐久性が低下した。
比較例13は、Tiボンバード処理しなかったためa層が形成されておらず、工具の耐久性が低下した。比較例14は、Tiボンバード処理をしたが、a層が明確には形成されておらず工具の耐久性が低下した。比較例15は、中間皮膜にTiNを形成しているがb層の密着性を改善する十分でなく耐久性が低下した。

Claims (1)

  1. 基材の表面に硬質皮膜が被覆された被覆切削工具の製造方法であって、前記基材の表面をTiボンバード処理してWおよびTiを含む炭化物であるa層を形成する工程と、
    次いで、前記基材に印加するバイアス電圧を−220V〜−70V、前記基材の設定温度を500℃以下として、金属(半金属を含む)元素のうちAlの含有比率(原子%)が最も多く、Siの含有比率(原子%)が4%〜20%であるAlCrSi系の窒化物又は炭窒化物からなるb層を被覆する工程とを有することを特徴とする被覆切削工具の製造方法。

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