JP2008023954A - 発泡体を含む繊維成形体の製造方法 - Google Patents

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【課題】型成形で、クッション性に優れ、仕上がり精度の高い、コストパフォーマンスに優れた発泡体含有繊維成形体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】所定形状の弾性変形可能な発泡体と所定形状の接着剤を含有する繊維集積体を成形型内に配置する配置工程と、前記成形型を閉じ該成形型の型面で前記接着剤を含有する前記繊維集積体及び前記該発泡体を該発泡体の圧縮変形量が10%以下となる加圧力で成形する加圧工程と、前記繊維集積体を硬化処理して前記接着剤を硬化して三次元繊維からなる繊維成形体とする硬化工程と、得られた発泡体含有繊維成形体を前記成形型より取り出す脱型工程と、を有することを特徴とする発泡体含有繊維成形体の製造方法。発泡体の圧縮変形量が10%以下の低い加圧力で成型しているため仕上がり精度の高い発泡体を含む繊維成形体が得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、航空機、鉄道車両、自動車などの乗物の椅子やベッドなどに用いられる発泡体含有繊維成形体の製造方法に関する。
従来から、椅子や布団、ベッドなどのクッション材としては、様々な部材が使用されている。椅子のクッション材としては例えばポリウレタン発泡体や、密度の異なるウレタン発泡体を複数個組み合わせた部材、ポリエステル発泡体などが、使用されている。また布団には綿や羽毛などが使用され、ベッドには綿や化学繊維(例えばポリエステル繊維、ポリウレタン繊維等)と機械バネとを組み合わせた部材などが使用されている。
しかしこれらのクッション材では、長時間の使用で繰り返し荷重がかかるとへたりが生じ、比較早い段階で、クッション性が低下する。
布団に見られるように繊維のクッション材としては単繊維を無配行に集積したものが用いられ、袋状の内部に詰め込まれた状態で使用される。
一方、シート状の繊維集積体を型成形した繊維成形体が知られているが型で押圧されているために板状の硬いものとなりクッション材としては柔軟性に欠けている。
最近、巻縮した炭素短繊維を使用したシート状の繊維集積体を僅かに厚さ方向に押圧した状態で繊維同士を接着固定して三次元繊維構造体とした繊維マットが報告されている。この三次元繊維マット、特に炭素繊維で構成された三次元繊維マットは、難燃性であると共に、100万回の繰り返し圧縮に対しても数%のへたりが生じるに過ぎず、長期の安定性も優れたものとなっている。しかし形状がマット状で所定形状のクッション性のあるものは知られていない。
特開2003−125902号公報では、炭素繊維からなる三次元編み目構造体の繊維マットを所定形状に裁断し、この表面を炭素繊維のウェブで覆って接合一体化することにより、クッション性が優れ、底付き感の解消されたクッション材としている。
特開平9−294649号公報には炭素繊維で構成された三次元網目構造体の繊維マットを裁断して所定形状とし、発泡ウレタン及び/またはポリエステル弾性体を補助構成材として構成された椅子のクッション材が開示されている。
特開2003−125902号公報 特開平9−294649号公報
所定形状の三次元網目状の繊維構造体からなるクッション材はマット状の三次元網目状繊維構造体を裁断して所定形状としている。しかし、この方法では生産性が低く、多量の裁断くずがでるため、多量生産にはむかない。本発明は、型成形で、クッション性に優れ、仕上がり精度の高い、コストパフォーマンスに優れた、発泡体含有繊維成形体の製造方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段、作用及び効果
本発明者は、型成形で所定形状のクッション性に優れた三次元網目状の繊維構造体からなるクッション材とするためには、成形時に繊維集積体に大きな押圧力を付与せず、即ち、圧密化を抑制して嵩高い状態を維持しつつ、しかも、所定形状に変形した状態とする必要があることに思い到った。また、繊維集積体は嵩高く繊維同士の一体性が低いため所定形状のものとするのが困難でシート状での使用に限られることにも思い到った。そこで、成形体に発泡体を用い、型のキャビティ形状による押し型方向の成形体の厚さの変化を発泡体で吸収し、成形型を閉じることによる型面での繊維集積体の押圧をできるだけ一定になるようにすることにより優れたクッション材が得られると考え、試行錯誤を繰り返し、本発明を完成したものである。
即ち、本発明の発泡体含有繊維成形体の製造方法は、所定形状の弾性変形可能な発泡体と所定形状の接着剤を含有する繊維集積体を成形型内に配置する配置工程と、前記成形型を閉じ該成形型の型面で前記接着剤を含有する前記繊維集積体及び前記該発泡体を該発泡体の圧縮変形量が10%以下となる加圧力で成形する加圧工程と、前記繊維集積体を硬化処理して前記接着剤を硬化して三次元繊維からなる繊維成形体とする硬化工程と、得られた発泡体含有繊維成形体を前記成形型より取り出す脱型工程と、を有することを特徴とする。
本発明の発泡体含有繊維成形体の製造方法では、加圧工程で成形型を閉じることによる型面での押圧を発泡体の圧縮変形量が10%以下となる低い押圧力とすることにより、繊維集積体の嵩高さを維持しつつ柔軟性に富む三次元繊維からなる所定形状の繊維成形体を製造することができる。
本発明の発泡体含有繊維成形体の製造方法は、配置工程と、加圧工程と、硬化工程と脱型工程とからなる。
配置工程は、所定形状の弾性変形可能な発泡体と所定形状の接着剤を含有する繊維集積体を成形型内に配置する工程である。この配置工程では、発泡体と繊維集積体と、成形型を使用する。
発泡体は、所定形状とされた弾性変形可能な発泡体であり、クッション材としても機能する。この発泡体の形状は、成形型のキャビティ形状から成形された繊維成形体の形状を除去した残りの空間形状のものとするのが好ましい。繊維成形体となる繊維集積体は、通常、シート状のものを所定形状に裁断したものとなるため、得られる繊維成形体も所定厚さのものとなるように成形されるのが好ましい。従って、発泡体の形状は成形型のキャビティ形状より所定厚さの部分を取り除いた形状とするのが好ましい。
成形型内に配置される繊維集積体は型面により厚さ方向に押圧されて厚さが1/2〜1/10程度に圧密化されるような厚さとするのが好ましい。圧密化の程度が大きくなるほど得られる繊維成形体の部分の堅さが硬くなる。
発泡体の材質は、各種硬さのウレタン樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等公知の発泡樹脂を採用できる。そしてこれら発泡樹脂を公知の方法で所定形状に成形することにより得られる。なお、得られる繊維成形体との一体性を高めるために繊維集積体と接触する発泡体の表面に接着剤を塗布し、硬化工程で接着剤を硬化させ一体化させるのが好ましい。
繊維集積体は接着剤を含有し、所定形状を持つ。繊維成形体を構成する繊維としては弾性にとむ炭素繊維、合成樹脂繊維を使用できる。得られる成形体を不燃性とするためには炭素繊維を使用するのが好ましい。不燃性の程度によっては合成樹脂繊維を一部配合することも可能である。
繊維形状としては公知の巻縮形状のものが、成形体の嵩高さを保ち易いために好ましい。巻縮繊維100%とするものでも一部に巻縮繊維を使用するものでも良い。繊維の太さ、弾性率等は、得られるクッション材の目的によって適宜選択することができる。
繊維の配行は、シート状繊維集積体の厚さ方向に繊維の配行が多いものが好ましい。ウエブとして供給されるシート状の繊維集積体は通常シートの長手方向に繊維が配行し、厚さ方向に配行する繊維は少ない。このような繊維集積体で得られる繊維成形体は押圧に対する抵抗が低くなる。配行の観点から、単繊維がランダムに配行した無配行の繊維集積体あるいは厚さ方向に繊維が配行した繊維集積体が好ましい。
接着剤は熱硬化性接着剤を使用するのが好ましい。接着剤の含浸は液状接着剤を薄いシート状の繊維集積体に吹きつけて繊維の表面に接着剤を付着させる。そしてこの薄いシート状の繊維集積体を所定枚数積層して所定厚さの繊維集積体とすることができる。また、所定厚さの繊維集積体を接着剤が溶解している溶液に漬け、溶媒を乾燥して接着剤を含ませても良い。接着剤含有の繊維成形体は通常の公知の方法で得られる。
シート状の繊維成形体を打ち抜き型で所定形状とすることにより成形型に配置される所定形状の繊維成形体とすることができる。なお、複数の繊維成形体を組み合わせて用いることもできる。例えば製造される発泡体含有繊維成形体の上側部分を形成する繊維集積体部分と下側部分を形成する繊維集積体部分で構成することもできる。厚い部分には所定形状に裁断された薄いシート状の繊維集積体部分を積層配置することもできる。
得られる繊維成形体で発泡体を覆い、繊維成形体内に発泡体を埋設するためには、三次元形状の繊維成形体の形状を二次元的に展開した形状を持つシート材とすることもできる。
成形型は製造する発泡体含有繊維成形体の同じ形状のキャビティを持つ。この成形型は2分割した分割型とするのが好ましい。また、この成形型に要求される押圧力が小さいため鋼板等で製造することができる。接着剤の硬化に蒸気等の気体を使用する場合には気体の入脱が容易な穴あき鋼板で型を作るのが好ましい。また、型を閉じた状態を維持するためには型締めのロック装置を備えたものとすることもできる。
本発明の発泡体含有繊維成形体の配置工程は、成形型のキャビティに所定形状の発泡体及び繊維集積体を配置する工程である。キャビティ内に所定形状でシート状の接着剤含有の繊維集積体を配置し、その上に所定形状の発泡体を配置することもできる。また、シート状の繊維集積体で発泡体を包むようにしても良い。さらには、複数個の繊維集積体の部分を発泡体の周囲に配置して、発泡体を包み込むようにすることもできる。繊維成形体は部分的に重ならないように、また、不足の無いように注意する必要がある。繊維集積体は繊維同士が固定されていないために、手で引っ張ることにより伸ばしたり、抑えて所定方向の寸法を短くその方向と直行する方向の寸法を長くすることもできる。さらには補修用の繊維集積体を手でちぎりとり不足部分に張り付けることもできる。
本発明の発泡体含有繊維成形体の加圧工程は成形型を閉め、キャビティ内に配置された発泡体及び繊維集積体を型面で押圧し、所定形状に圧縮変形させる工程である。この工程で発泡体の圧縮変形量が10%以下の変形量となるようにする。より好ましくは発泡体の圧縮変形量が5%以下とする。発泡体の圧縮変形量が大きすぎる場合には、発泡体の形状を薄いものとすることにより圧縮変形量を小さくすることができる。
本発明の発泡体含有繊維成形体の硬化工程は成形型のキャビティ内に加圧されて所定形状とされた繊維集積体の接着剤を硬化させて繊維同士を接合して三次元網目状の繊維構造体とする工程である。この硬化工程では加熱により接着剤を硬化させるのが容易である。・加熱としては蒸気あるいは加熱蒸気を使用するのが好ましい。蒸気が繊維集積体の繊維間隙に入り容易に繊維集積体を硬化温度以上に加熱することができる。加熱により接着剤が硬化し、繊維同士が接触部分で接着剤により固定される。複数個に分割された繊維集積体も、繊維集積体の合わせ面も一体的に接合される。
発泡体の表面に接着剤が塗布されている場合には成形された繊維成形体と発泡体とが接着剤で一体化される。
蒸気加熱の場合、型閉めされた成形型を蒸気室に運び入れ、蒸気を導入して加熱することができる。なお、一定時間経過して接着剤の硬化が完了した後で、蒸気室を脱気して蒸気を繊維成形体より除くことが好ましい。加熱蒸気を使用する場合には水蒸気が凝縮して水となることが無いため脱気が容易で乾燥した成形品が得られる。
脱型工程は、成形型を開き、キャビティ内より成形品を取り出す工程である。
本発明の発泡体含有繊維成形体の製造方法の、配置工程、加圧工程、硬化工程及び脱型工程を一列に配置して型を移動させて各工程を実施するようにすることもできる。
本発明の製造方法で得られた発泡体含有繊維成形体は、発泡体の長所と三次元繊維構造体の長所を併せ持つているためより優れたクッション材となる。さらに型成形しているため製品寸法精度も高く、生産性も高いため経済性にも優れている。なお、繊維成形体として炭素繊維を使用する場合には優れた不燃性を持つ。成形体を構成する発泡体が炭素繊維の繊維成形体で覆われていたり、繊維成形体及び金属板等で覆われている場合には、火炎は発泡体に作用しないため、発泡体が燃えたり熱で分解して分解ガスが発生する等の不都合を避けることができる。
本発明の製造方法で得られた発泡体含有繊維成形体は、椅子の座部とか背部のクッション材、飛行機、列車、自動車等の車両用の座席のクッション材として最適である。
[実施例]
本発明の実施例の製造方法で得られたクッション材の一部切断斜視図を図1に示す。このクッション材は発泡体1と炭素繊維成形体2とで構成されている。発泡体1は通常の二液混合型成形された軟質ウレタン発泡体であり微細な連通孔をもつ嵩密度が5Kg/m3の多孔質のものであり、発泡体1を覆う炭素繊維成形体2は50Kg/m3のものである。この成形体2は平均繊維径13μm、平均長さ30mmの巻縮炭素繊維短繊維のシート状集積体(ウエブ)を熱硬化性のウレタン樹脂接着剤を溶解した溶媒中に浸漬し、溶媒を乾燥して短繊維の接触交差部分に接着剤を介在させたシート状の接着剤含有繊維集積体を用いた。
成形型3としては図2に示す穴あき鋼板で製作したクッション材の上側部分を成形する下型31と下側部分を成形する上型32の2分割型を用いた。
まず、シート状の接着剤含有繊維集積体をクッション材の上面及びこの上面を囲む側壁面を展開した形状に切り取り、図3に示すシート状の主部材21とクッション材の下面と同じ形状のシート状の副部材22とを形成した。
次に下型31の型面を上にし、型面上に主部材21を配置し、この主部材21上に全ての表面に熱硬化性ウレタン接着剤を塗布した前記の発泡体1を配置し、この発泡体1を型面方向に押しつけ、主部材21の周縁部分が上方に立ち上がる状態となるように主部材21及び発泡体1を下型31に配置した。この後、発泡体1の上に副部材22を配置し、発泡体1の周縁を囲む主部材21の周縁部分と副部材22の当接部分を手で一体化して発泡体1の全表面を接着剤含有繊維集積体で覆った。
この状態で上側から上型32を被せ、上型32を下型31に押しつけ、接着剤含有繊維集積体を圧密化した状態で型閉めし、下型31および上型32を閉じてクランプ(図示せず)で固定した。この工程が本発明の加圧工程であり、接着剤含有繊維集積体の圧密は厚さ方向に約1/5程度としている。
この成形型3を図示しない蒸気缶に入れ約120℃に加熱した加熱蒸気を蒸気缶内に吹き込み接着剤を熱硬化させて巻縮繊維同士をそれらの交差部で接着固定して炭素繊維成形体2とすると共に、発泡体1と成形された炭素繊維成形体2とを発泡体1の表面に塗布された接着剤を同時に加熱硬化させて一体的に接合した。
その後、成形型3を開き、成形された発泡体含有繊維成形体からなるクッション材を型から取りだした。
得られた発泡体含有繊維成形体の形状は成形型3のキャビティー形状と同一のものであり、離型後、変形する等の不都合は無かった。また、炭素繊維成形体2の材料として用いられた主部材21及び副部材22は一体化し、合わせ面も分からない状態であった。
本実施例ではシート状の接着剤含有繊維集積体を図3に示すシート状の主部材21とシート状の副部材22との2部分とした。この2部分に代えて、クッション材の全面を展開した1部品とすることもできる。さらには、クッション材の角部分に繊維集積体か密集する場合には手で適宜繊維集積体を引きちぎり角部の嵩密度を低下させることもできる。
実施例で得られた発泡体含有巻縮炭素繊維成形体の断面図である。 実施例で用いられた分割型の断面図である。 実施例で用いられたシート状の接着剤含有繊維集積体の斜視図である。
符号の説明
1:発泡体 2:巻縮炭素繊維成形体 3:成形型 21:主部材
22:副部材 31:下型 32:上型

Claims (9)

  1. 所定形状の弾性変形可能な発泡体と所定形状の接着剤を含有する繊維集積体を成形型内に配置する配置工程と、
    前記成形型を閉じ該成形型の型面で前記接着剤を含有する前記繊維集積体及び前記該発泡体を該発泡体の圧縮変形量が10%以下となる加圧力で成形する加圧工程と、
    前記繊維集積体を硬化処理して前記接着剤を硬化して三次元繊維からなる繊維成形体とする硬化工程と、
    得られた発泡体含有繊維成形体を前記成形型より取り出す脱型工程と、
    を有することを特徴とする発泡体含有繊維成形体の製造方法。
  2. 前記発泡体の圧縮変形量が5%以下である請求項1記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  3. 前記繊維集積体は炭素繊維を含む繊維で構成されている請求項1又は2に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  4. 前記繊維集積体は巻縮繊維を含む繊維で構成されている請求項1〜3に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  5. 前記繊維集積体は単繊維がランダムに配行した非配行繊維集積体である請求項1〜4に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  6. 前記繊維集積体はシート状であり、繊維が該シートの厚さ方向に配行している請求項1〜4に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  7. 前記接着剤は熱硬化性であり、前記硬化処理は蒸気吹き込み処理である請求項1〜6に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  8. 前記接着剤は熱硬化性のウレタン接着剤であり、前記硬化処理は加熱蒸気吹き込み処理である請求項7に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
  9. 前記配置工程は前記発泡体をシート状の前記接着剤を含有する前記繊維集積体の中央に配置し該発泡体を包み込む工程である請求項1〜8に記載の発泡体含有難燃繊維成形体の製造方法。
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